説明

圧入装置

【課題】圧入及び抜き出しを確実にするため、構造をより簡便にして操作性とメンテナンス性を容易にし且つ、低コスト化した装置を提供する。
【解決手段】駆動部10上に水平に固定してなる第一の半割り状フランジベース19Aと、駆動部の連結部15の軸心側に工具ホルダ係止部22Aaを有する第一の半割り状枠体24Aと、連結部の軸心側に工具ホルダ係止溝22Baを有すると共に、水平方向外側に回動自在な第二の半割り状フランジベース19Bと、第二の半割り状フランジベースを装着する支柱18bに回動自在に連結する連結部材25とを有し、連結部材を介して支柱を中心にして水平方向外側に回動自在とされ、工具ホルダ装着時に下側フランジ23A、23Bを連結部に連結させるように第一の半割り状枠体と対向して第一の半割り状枠体と同じ高さで設けられる第二の半割り状枠体24Bとを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ホルダのように、先端部へ切削工具などの刃具を取り付ける際の、圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から圧入方式の工具ホルダが提案されている。
しかし、その圧入力が大きいため、通常の工具ホルダのようにスパナを用いて着脱操作することは困難である。そこで、そのための専用装置として、例えば本件出願人が提案した特許文献1等が使用されている。
【0003】
特許文献1の装置は、垂直な軸線を有する部材保持部本体31A、31Bを、軸線或いはその近傍を通る平面で2つ割り構造に構成し、この部材保持部本体31A、31B内部に、垂直方向に移動可能に収容した摺動部材60A、60Bと、摺動部材60A、60Bを摺動させる駆動機構と、保持部材内へ第1の部材収容部100A、100Bと第2の部材収容部110A、110Bとを垂直方向に並べて配置し、圧入或いは引き抜く部材を収容し、駆動機構により一方の部材収容部側を移動させることにより、圧入或いは引き剥がしをさせるように構成されている。
【0004】
そのため、駆動手段として駆動用ピストンをこれらの2つ割りにした部材保持部本体31A、31B内へ多数(この例では4個)内蔵し、且つこれらが同期作動するように内部連結する必要がある。従って、構造が複雑化してしまうものであった。しかも、これらは小さなピストンで大出力とするため、高圧油圧を使用する必要があり、油圧ポンプや切替え弁、高圧ホース等コストが高くなると共に一般的な工場にある圧縮空気のような動力源を直接利用できない等の問題点を有する。
【0005】
又、同様な装置として特許文献2に示すような装置がある。
この装置も先行する特許文献1と同様な装置であり、考え方も類似しており、異なるサイズのワークに対応できるように必要部品を交換できるものである。しかし、この装置も多数の駆動手段(加圧ピストン)が、同様な半割り状のハウジング内へ配置される構成のため、特許文献1と同様な問題点を有する。
【0006】
又、特許文献2と同じ出願人によるプレス装置が、特許文献3に発表されている。
この装置は、駆動装置が所謂半割り部材の片側のみに2台の油圧シリンダとして、中心に近い部分へ配置されている。従って、この装置においても、2台の油圧シリンダが同期作動する必要があり、且つ、作動中心により近い位置、すなわち加圧されるべき部材の軸により近づけて配置しなければならず、且つ、これらの油圧シリンダが装置の上部に配置される構成のため、装置として不安定であり、又構造の複雑化を免れないといった問題点を有する。
【特許文献1】特開2007−301694号公報
【特許文献2】特開2007−319935号公報
【特許文献3】特開2008−49401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上説明してきたように、従来例の夫々は、圧入及び抜き出しのための駆動手段が多数個の機構から構成され、又、それらの同期機構のために構造の複雑化、高価格化を招いていた。
又、特許文献1及び2では、内蔵するピストンが単動型のため、圧入、抜き取りの際に部材保持部全体を水平軸にて180°回転させて使用する必要があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、圧入及び抜き出しを確実にするため、駆動手段の中心をワーク中心と同心上で且つ装置の下部へ配置すると共に、構造をより簡便にして操作性とメンテナンス性を容易にし且つ、低コスト化した装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、軸心を上下方向に進退可能な連結部を有する駆動部と、前記連結部の軸心を挟んで所定間隔で前記駆動部に植立固定した複数の支柱と、前記連結部の軸心側に工具ホルダ係止溝を有すると共に、複数の貫通穴を有し、前記複数の支柱の上端側に水平に固定してなる第一の半割り状フランジベースと、前記第一の半割り状フランジベースの複数の貫通穴と対応する位置に同数の貫通穴を有すると共に、前記連結部の軸心側に工具ホルダ係止部を有し、前記第一の半割り状フランジベースの上方に位置する上側フランジと、前記連結部に常時連結される下側フランジと、前記上側フランジと前記下側フランジとを前記第一の半割り状フランジベースの貫通穴を介して連結する複数のシャフトとからなる第一の半割り状枠体と、前記連結部の軸心側に工具ホルダ係止溝を有すると共に、複数の貫通穴を有し、前記第一の半割り状フランジベースを装着する支柱と異なる一つの前記支柱の上端側に、前記支柱を中心にして水平方向外側に回動自在となるように前記第一の半割り状フランジベースと対向して前記第一の半割り状フランジベースと同じ高さで設けられる第二の半割り状フランジベースと、前記第二の半割り状フランジベースの複数の貫通穴と対応する位置に同数の貫通穴を有すると共に、前記連結部の軸心側に工具ホルダ係止部を有する上側フランジと、前記連結部に連結される下側フランジと、前記上側フランジと前記下側フランジとを前記第二の半割り状フランジベースの貫通穴を介して連結する複数のシャフトと、前記上側フランジと前記下側フランジとを前記第二の半割り状フランジベースの貫通穴を介して連結するシャフトを、前記第二の半割り状フランジベースを装着する支柱に回動自在に連結する連結部材とを有し、前記連結部材を介して前記支柱を中心にして水平方向外側に回動自在とされ、工具ホルダ装着時に前記下側フランジを前記連結部に連結させるように前記第一の半割り状枠体と対向して前記第一の半割り状枠体と同じ高さで設けられる第二の半割り状枠体とを備えてなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の圧入装置において、前記第一の半割り状フランジベースは、前記工具ホルダ係止溝の近傍にホルダ仮保持部を設け、前記工具ホルダ着脱時に所定位置へ前記工具ホルダを一時的に保持させることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の圧入装置において、前記駆動部は、単一のエアシリンダから構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の圧入装置において、前記エアシリンダは、ロッド側ピストン室を、オイルタンクを介して切換制御弁側へ接続し、前記工具ホルダを抜き取る際の速度を抑制するよう構成したことを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の圧入装置において、前記第一の半割り状フランジベースと前記第二の半割り状フランジベースとを環状に合体させたときに、前記駆動部の制御弁へ通電がされるよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る圧入装置は、圧入及び抜き出しを確実にするため、駆動手段の中心をワーク中心と同心上で且つ装置の下部へ配置すると共に、構造をより簡便にしてメンテナンスをし易くした。そのため、従来の圧入装置に比べて、圧入及び抜き出し駆動手段を1台で構成したので、全体構成の単純化が達成でき、作動の確実さも向上した。
又、本発明に係る圧入装置は、半割り状に構成してある枠体が環状に合体したときに装置中心部へ工具ホルダが配置され、且つ駆動手段との連結が同一軸線上で行なわれるように構成したので、駆動手段からの押圧力を確実に工具ホルダへ伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る圧入装置の対象ワークを示す。ここでは、本出願人が先に出願した特願2007−330538に示す工具ホルダを使用する場合について説明する。ホルダ本体W10の工具保持筒部W14のテーパ部W14aと、このテーパ部W14aに係合する締付用スリーブW20のテーパ穴W21を有した締付部W22とにより、工具保持部(第1の圧入固着部)WH1を構成しており、更にホルダ本体W10の軸部W13の円筒部W13aと締付用スリーブW20の大径筒部W24に形成した穴W25とにより第2の圧入固着部WH2を構成している。
【0014】
本発明の一実施形態に係る圧入装置Aは、このように構成した工具ホルダW1へ、切削工具Tを圧入装着するための圧入装置である。図中、W13b、W24aは環状溝、W24bは段部を示す。
本実施形態に係る圧入装置Aは、図2及び図3に示すように、装置下部へ、概略円筒状のシリンダ装置からなる駆動部10が配置されている。この駆動部10は、特に圧縮空気作動によるシリンダ装置で、上下ハウジング11、12と、上下ハウジング11、12間に配置されるチューブ13と、これらによって構成した内室へ内蔵するピストン14と、ピストン14へ連結するピストンロッド15とを備え、ピストンロッド15は、軸心上上側ハウジング11を貫通して突出し、連結部を構成している。これらの部品要素は、固定手段である8本のボルト16により組立固定されている。
【0015】
そして、駆動部10の上側ハウジング11の上面には、ピストンロッド15の両側に、夫々2本、計4本の支柱17a、17b、18a、18bが所定間隔で植立固定されている。
更に、ピストンロッド15の片側に配置された2本の支柱17a、17bの上端側には、第一の半割り状フランジベース19Aが水平固定されている。この第一の半割り状フランジベース19Aには、夫々所定間隔で3箇所に貫通穴20Aが設けてある。この貫通穴20Aには、夫々摺動自在な大きさのシャフト21a、21b、21cが嵌合し、両端に半円状のフランジ(上側フランジ22Aと下側フランジ23A)が固定された第一の半割り状枠体24Aが上下動可能に組み込まれている。
【0016】
この第一の半割り状枠体24Aを構成する下側フランジ23Aの内側には、ピストンロッド15の先端部の環状溝15aと結合して軸心長手方向に一体化される内側フランジ23Aaが形成されている。従って、ピストンロッド15が上下方向に移動すると、第一の半割り状枠体24Aも同時移動するように構成されている。又、第一の半割り状フランジベース19Aの中心部には内側フランジ19Aaが形成してある。又、第一の半割り状枠体24Aを構成する上側フランジ22Aの中心部には内側フランジ22Aaが形成してある。
【0017】
このように、2本の支柱17a,17bの上端側に水平固定した第一の半割り状フランジベース19Aに対して、第一の半割り状枠体24Aが上下動可能に組み込まれており、下側フランジ23Aと内側フランジ22Aaを介して連結したピストンロッド15を介して駆動部10と連動するように構成している。
【0018】
同様に、ピストンロッド15の下側フランジ23Aと反対側(図2手前側)に配置された2本の支柱18a、18bの上端側には、前述した第一の半割り状フランジベース19Aと同様な形状である第二の半割り状フランジベース19Bが水平に装着されている。そして、この第二の半割り状フランジベース19Bは、一方の支柱18bを回転中心にして水平方向のみ回動自在に装着され、他方の支柱18aとは、係止可能にU字溝19Bbが形成してあり、更に中心部には内側フランジ19Baが形成してある。
【0019】
この第二の半割り状フランジベース19Bは、一方の支柱18bを中心に回動させて、第一の半割り状フランジベース19A側へ合体させて環状に合体した時、U字溝19Baが他方の支柱18aへ係合する。
そして、第一の半割り状フランジベース19Aと同様に、夫々所定間隔で3箇所に貫通穴20Bが設けてあり、この貫通穴20Bへ夫々摺動自在な大きさのシャフト21d、21e、21fが嵌合し、両端に半円状のフランジ(上側フランジ22Bと下側フランジ23B)が固定された第二の半割り状枠体24Bが上下動可能に組み込まれている。
【0020】
この第二の半割り状枠体24Bを構成する下側フランジ23Bの内側には、ピストンロッド15の先端部と結合して軸心長手方向に一体化される内側フランジ23Baが形成されている。
このように、2本の支柱18a、18bの上端に水平固定した第二の半割り状フランジベース16Bへ、第二の半割り状枠体24Bが上下動可能に組み込まれており、第二の半割り状フランジベース19Bが回動して第一の半割り状フランジベース19Aと合体して環状に組まれたとき、下側フランジ23Bと連結したピストンロッド15を介して駆動部10と連動する、つまり、図5に示すように、第一の半割り状フランジベース19Aと合体して環状に組まれたときに、駆動部10の連結部であるピストンロッド15と第一及び第二の半割り状枠体24A、24Bとが連動するように構成されている。
【0021】
なお、図中25は、支柱18bとシャフト21fとの連結部材であり、シャフト21fとは図の位置に固定され、支柱18bとは摺動自在に嵌合している。
同様に、この連結部材25の下にもう1つの連結部材26が装着されている。この連結部材26は明示されていないが、略L字状で、支柱17b、18bが摺動する貫通孔と、シャフト21cが挿入して固定してあり、この連結部材26の下面は下側フランジ23Aの上面へ当接しており、上面は連結部材25の下面と当接している。
従って、第二の半割り状フランジベース19Bが回動した時にも第二の半割り状枠体24Bが上下方向に位置が変わらないように支持している。
【0022】
又、これらの各図に示す第一の半割り状フランジベース19Aには、中心部の内側フランジ19Aa部分の下部に、先端を丸く成形したピアノ線のような金属細棒が所定幅で2本固定され、ワーク仮保持手段27を構成している。ワークが装着される前の幅はワークである工具ホルダW1の円筒部W13aの直径より狭く形成してある。従って、ワークである工具ホルダW1を第一の半割り状フランジベース19Aの内側フランジ19Aaへ装着させると、このワーク仮保持手段27の内方へのばね力でワークを所定位置へ保持することができる。
【0023】
なお、図中、28は操作ハンドルで、第一の半割り状フランジベース19A側に取り付けてあり、第二の半割り状フランジベース19Bを合体させ、ワークの圧入或いは抜き出し作業をする際、その状態を固定させ、且つ作業完了時には、再び開放状態に固定を外すことができる。第二の半割り状フランジベース19B側に突起19Bcが形成してあると共に、第一の半割り状フランジベース19A側のブロック28a側にばね29が装着されて常時ブロック28aを中心側へ押しており、第二の半割り状フランジベース19Bを回動させて合体させるとき自動的にロックするように構成してある。又、第二の半割り状フランジベース19Bにも操作ハンドル30が取り付けてある。
図3において、10a、10bは駆動部10であるエアシリンダへの流体(空気圧)給排気口を示している。
【0024】
図6は、本実施形態に係る圧入装置Aの制御装置を示す回路図を示している。
圧入装置Aの駆動部10の給排気口10aは、電磁切換弁Vの接続口へ接続され、給排気口10bはオイルタンクHへ接続され、更にオイルタンクHの空気室側が電磁切換弁Vのもう一方の接続口へ接続されている。そして、この電磁切換弁Vの供給口は、空気圧源Pへ接続されて、流体制御回路を構成している。一方、電磁切換弁Vの電磁ソレノイド部(Sol1、Sol2)へは、切換スイッチSを介して電源Eが接続されて電気回路が構成されている。
【0025】
以下、本実施形態による圧入装置Aの動作制御について、説明していく。
[圧入動作]・・・図2、図3、図5、図6、図7
図2は、ワークである工具ホルダ本体W10へ締め付けスリーブW20を圧入する前の装置への仮保持状態を示している。即ち、ワーク仮保持手段27へワークである工具ホルダ本体W10が保持され、且つ、第一の半割り状フランジベース19Aの内側フランジ19Aaが環状溝W13bへ係合する。
【0026】
一方、締め付けスリーブW20は、作業者が手でホルダ本体W10へ嵌め込み、図3のような状態で設置する。即ち、締め付けスリーブW20は、第一の半割り状枠体24Aの上側フランジ22Aの内側フランジ22Aaの下側に段部W24bが位置するように取り付けられる。
そして、図2に示すように開放している第二の半割り状フランジベース19B側を、操作ハンドル30を持って回動し、図5に示すように第一の半割り状フランジベース19A側へ合体させる。これで第一及び第二の半割り状フランジベース19A、19Bが合体、更にピストンロッド15との間も一体連結され、準備が完了する。
【0027】
この時、図6に示す回路においては、切換スイッチSがONして、電磁切換弁VのソレノイドSol1を起動し流体(圧縮空気)は給排気口10aから駆動部10であるエアシリンダの下側室14aへ流入してピストン14を上方へ移動させた位置にあり、従って連結された第一及び第二の半割り状枠体24A、24Bが上端へ持ち上げられた位置にある。
【0028】
図3は、便宜上図5の状態で、手前の第二の半割り状フランジベース19B、第二の半割り状枠体24B、支柱18a、18bを除いて図示しており、この状態で説明していく。
この状態で、切換スイッチSを逆方向へ切り換える。すると、今度は電磁切換弁VのソレノイドSol1がOFFし、反対側のソレノイドSol2がONする。
今度は、空気圧源Pからの圧縮空気は、オイルタンクHへ流入してオイルタンクH内の油面を押圧する。それにより、オイルタンクH内の油が、給排気口10bから上側室14bへ流入する。
【0029】
その結果、ピストン14が下降し、ストンロッド15を介して第一及び第二の半割り状枠体24A、24Bが同時に下降する。従って、上側フランジ22A、22Bの内側フランジ22Aa、22Baによりワークである工具ホルダW1の締め付けスリーブW20が下方へ押し下げられ、圧入動作が行なわれる。
圧入が完了すると、切換スイッチSを上昇位置へ戻した後、図2のように手前の第二の半割り状枠部材24B側を開放して工具装着完了した工具ホルダ(ワーク)を取り外し、加工に供することができる。
【0030】
[抜き出し動作]・・・図8、図9
今度は、使用した工具ホルダW1から工具Tを取り外す場合の動作を説明する。
先ず、図2と同様に開放状態で図8に示すように、駆動部10のピストン14が下降した状態で工具ホルダW1を取り付ける。この時、ワーク保持手段27へ工具ホルダW1を保持させたときに、第一の半割り状フランジベース19Aの内側フランジ19Aaへ環状溝W13bが嵌り合い、且つ第一の半割り状枠体24Aの上側フランジ22Aの内側フランジ22Aaと締め付けスリーブW20の環状溝W24aとも嵌り合うように位置関係を設定してあり、図6においては、電磁切換弁VのソレノイドSol2に通電し、圧縮空気がオイルタンクHの油面を押圧してピストン14の上側室14bへ油が流入した状態にある。
【0031】
そして、手前の第二の半割り状フランジベース19Bを回動して図5のように合体させると、手前の第二の半割り状フランジベース19B側の内側フランジ19Ba、22Baも夫々ワークの環状溝W13b、W24aへ嵌り合い、抜き出しのためのワーク装着が完了する。
続いて、切換スイッチSを切り換え、電磁切換弁VのソレノイドSol1に通電する。圧縮空気が駆動部10の給排気10aからピストン14の下側室14aへ流入し、ピストン14を上昇させる。
【0032】
そして、図9に示すように、連結部材であるピストンロッド15と共に第一及び第二の半割り状枠体24A、24Bが上昇し、固定側に位置きめ配置されたホルダ本体W10に対して、内側フランジ22Aa、22Ba側に位置決め配置された締め付けスリーブW20は、強制的にホルダ本体W10側から抜き出される。ピストン14は更に上昇して、上ハウジング11下面へ図9に示すダンパー板14cを介して衝突して停止する。
この時、駆動部10のピストン14の上側室14bには、油が充填されているので、急激に上昇することなくスムーズに抜き動作が行われる。そして、又図2のように手前の第二の半割り状フランジベース19B側を開放して緩めた工具ホルダW1(ワーク)を取り外し、工具交換することができる。
【0033】
本実施形態に係る圧入装置Aは、以上のように構成したので、単一の駆動部10を圧入及び抜き出しに効率良く利用することができ、全体構成の単純化が達成でき、作動の確実さも向上させることが可能となった。
【0034】
なお、本実施形態に係る圧入装置Aは、第一の半割り状フランジベース19Aと第二の半割り状フランジベース19Bとを組み合わせ、合体或いは開放することでワークの着脱をするよう構成している。従って、第二の半割り状フランジベース19Bが開放状態で駆動部10が動作したりすると危険である。
そこで、第二の半割り状フランジベース19Bが回動して、図5のような合体化されたときに駆動部10が作動するように、例えば第一の半割り状フランジベース19Aと第二の半割り状フランジベース19Bとの接合面間へスイッチ手段(図示せず)を装着して、第二の半割り状フランジベース19Bが回動して図5のように合体化されたときに、このスイッチがONして、初めて電磁切換弁VのソレノイドSol1、2へ通電し、その後に駆動部10が動き始めるように構成することによって、ワークのセットが確実になり、且つ装置の安全性が向上できる。
【0035】
又、本実施形態に係る圧入装置Aにおいては、ワークの大きさは1種類しか説明していないが、第一及び第二の半割り状フランジベース19A、19B、更に第一及び第二の半割り状枠体24A、24Bを交換自在にして、夫々の内径フランジ形状をワーク形状に合わせて組み合わせることで、大きさの異なるワークに対応することができる。
【0036】
又、本実施形態に係る圧入装置Aにおいては、駆動部10であるエアシリンダのピストン14の上側室14b側にはオイルタンクHが接続している。これにより圧入されたワーク(工具ホルダ)を抜き出す際、ホルダ本体W10から締め付けスリーブW20が離れる時に、急激に抜き出す力が開放されるが、これらの可動機構が急激に上昇することを抑制している。
このように、オイルタンクHを設ける方法の他にも同様な制御は可能であり、例えば、反対側の給排気口10a側と電磁切換弁Vとの接続管路途中へ配置した速度制御弁(図示せず)を用いてピストン14の下側室14aへの圧縮空気の流入、即ちピストン上昇速度を制御することで同様の効果を得ることも可能である(メータイン制御)。
【0037】
又逆に、駆動部10であるエアシリンダのピストンロッド14の上側室14b側には、オイルタンクHを接続することなく、圧縮空気がそのまま給排するように電磁切換弁Vへ接続しておき、この管路途中へ速度制御弁を配置し、ピストン14の上側室14bから圧縮空気の排出を制御することにより、ピストン上昇速度を制御することで同様の効果を得ることも可能である(メータアウト制御)。
その他、低速で空気圧シリンダを制御するための種々の回路構成を採用して用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧入装置により圧入するワーク(工具ホルダ)斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る圧入装置全体の開放状態を示す斜視図である。
【図3】図2のX−X矢視図である。
【図4】図2に示す圧入装置を上面から見た平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る圧入装置全体の閉鎖(合体)状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る圧入装置の制御装置を示す回路図である。
【図7】図3に示す圧入装置の動作後(圧入終了時)を示す部分断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る圧入装置で抜き出し前のワーク装着状態を示す部分断面図である。
【図9】図6に示す圧入装置の動作後(抜き出し終了時)を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0039】
A 圧入装置
T 切削工具
W1 工具ホルダ
W10 ホルダ本体
W13 軸部
W13a 円筒部
W14 工具保持筒部
W14a テーパ部
W20 締付用スリーブ
W21 テーパ穴
W22 締付部
W24 大径筒部
W25 穴
WH1 工具保持部(第1の圧入固着部)
WH2 第2の圧入固着部
10 駆動部
11、12 上下ハウジング
13 チューブ
14 ピストン
15 ピストンロッド
15a 環状溝
16 ボルト
17a、17b、18a、18b 支柱
19A 第一の半割り状フランジベース
19B 第二の半割り状フランジベース
19Ba 内側フランジ
19Bb U字溝
20A、20B 貫通穴
21a、21b、21c、21d、21e、21f シャフト
22A、22B 上側フランジ
23A、23B 下側フランジ
24A 第一の半割り状枠体
23Aa、23Ba 内側フランジ
24B 第二の半割り状枠体
25、26 連結部材
27 ワーク仮保持手段
28、30 操作ハンドル
10a、10b 流体(空気圧)給排気口
V 電磁切換弁
H オイルタンク
P 空気圧源
Sol1、Sol2 電磁ソレノイド部
S 切換スイッチ
E 電源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心を上下方向に進退可能な連結部を有する駆動部と、
前記連結部の軸心を挟んで所定間隔で前記駆動部に植立固定した複数の支柱と、
前記連結部の軸心側に工具ホルダ係止溝を有すると共に、複数の貫通穴を有し、前記複数の支柱の上端側に水平に固定してなる第一の半割り状フランジベースと、
前記第一の半割り状フランジベースの複数の貫通穴と対応する位置に同数の貫通穴を有すると共に、前記連結部の軸心側に工具ホルダ係止部を有し、前記第一の半割り状フランジベースの上方に位置する上側フランジと、前記連結部に常時連結される下側フランジと、前記上側フランジと前記下側フランジとを前記第一の半割り状フランジベースの貫通穴を介して連結する複数のシャフトとからなる第一の半割り状枠体と、
前記連結部の軸心側に工具ホルダ係止溝を有すると共に、複数の貫通穴を有し、前記第一の半割り状フランジベースを装着する支柱と異なる一つの前記支柱の上端側に、前記支柱を中心にして水平方向外側に回動自在となるように前記第一の半割り状フランジベースと対向して前記第一の半割り状フランジベースと同じ高さで設けられる第二の半割り状フランジベースと、
前記第二の半割り状フランジベースの複数の貫通穴と対応する位置に同数の貫通穴を有すると共に、前記連結部の軸心側に工具ホルダ係止部を有する上側フランジと、前記連結部に連結される下側フランジと、前記上側フランジと前記下側フランジとを前記第二の半割り状フランジベースの貫通穴を介して連結する複数のシャフトと、前記上側フランジと前記下側フランジとを前記第二の半割り状フランジベースの貫通穴を介して連結するシャフトを、前記第二の半割り状フランジベースを装着する支柱に回動自在に連結する連結部材とを有し、前記連結部材を介して前記支柱を中心にして水平方向外側に回動自在とされ、工具ホルダ装着時に前記下側フランジを前記連結部に連結させるように前記第一の半割り状枠体と対向して前記第一の半割り状枠体と同じ高さで設けられる第二の半割り状枠体と
を備えてなることを特徴とする圧入装置。
【請求項2】
前記第一の半割り状フランジベースは、前記工具ホルダ係止溝の近傍にホルダ仮保持部を設け、前記工具ホルダ着脱時に所定位置へ前記工具ホルダを一時的に保持させることを特徴とする請求項1に記載の圧入装置。
【請求項3】
前記駆動部は、単一のエアシリンダから構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧入装置。
【請求項4】
前記エアシリンダは、ロッド側ピストン室を、オイルタンクを介して切換制御弁側へ接続し、前記工具ホルダを抜き取る際の速度を抑制するよう構成したことを特徴とする請求項3に記載の圧入装置。
【請求項5】
前記第一の半割り状フランジベースと前記第二の半割り状フランジベースとを環状に合体させたときに、前記駆動部の制御弁へ通電がされるよう構成したことを特徴とする請求項4に記載の圧入装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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