説明

圧力センサ素子および圧力センサ

【課題】本発明は、圧力センサ素子の耐久性を向上させることを目的とする。
【解決手段】圧力センサ素子30は、センサ面331を有する板状のシリコン基板330と、シリコン基板330のセンサ面331に接合された第2平面322を有する板状のガラス基板320と、第2平面322に背向するガラス基板320の第1平面321に陽極接合された金属板310を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力を検出する圧力センサに関し、特に、圧力センサにおける圧力センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサとしては、シリコン基板のセンサ面にガラス基板の接合面を接合した圧力センサ素子を用いたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。シリコン基板にガラス基板を接合した圧力センサ素子では、検出すべき圧力に基づく圧力荷重を伝達する伝達部材をガラス基板の接合面に背向する背向面に当接させ、ガラス基板を介してシリコン基板のセンサ面に圧力荷重が伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−175447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような圧力センサは、ガラス基板に当接する伝達部材の面荒れや、ガラス基板と伝達部材との間に紛れ込んだゴミ等により、ガラス基板の背向面上に点荷重による応力集中が起こることによって、ガラス基板にクラック(ひび)や割れが発生してしまう場合があった。
【0005】
本発明は、上記した課題を踏まえ、圧力センサ素子の耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1] 適用例1の圧力センサ素子は、圧力を感知するセンサ面を有する板状のシリコン基板と、前記シリコン基板の前記センサ面に接合された接合面、および前記接合面に背向する背向面を有する板状のガラス基板とを備える圧力センサ素子であって、更に、前記背向面に陽極接合された金属板を備えることを特徴とする。適用例1の圧力センサ素子によれば、ガラス基板の背向面に金属板を接合することで、金属板に当接する伝達部材の面荒れや、金属板と伝達部材との間に紛れ込んだゴミ等により、金属板の面上に点荷重による応力集中が起こったとしても、ガラス基板にクラック(ひび)や割れが発生することを防止できる。その上、ガラス基板と金属板とが陽極接合されていることで、圧力センサが通常用いられる温度範囲(具体的には、マイナス40℃〜300℃)において、ガラス基板と金属板との熱膨張差により、ガラス基板と金属板との剥離が生じたり、ガラス基板が割れたりすることを防止できる。その結果、圧力センサ素子の耐久性を向上させることができる。
【0008】
[適用例2] 適用例1の圧力センサ素子において、前記金属板の材料は、コバールまたはアルミニウムであると良い。適用例2の圧力センサ素子によれば、ガラス基板に対して金属板を容易に陽極接合することができる。
【0009】
[適用例3] 適用例1または適用例2の圧力センサ素子において、前記金属板の厚さは、0.01〜1.0mmであると良い。適用例3の圧力センサ素子によれば、ガラス基板の背向面に対して金属板を容易に陽極接合することができる。なお、金属板の厚さが0.01mm未満であれば、金属板の材料の剛性が十分に確保できないため、圧力センサ素子の製造時における金属板の材料の取り扱いが困難であったり、金属板をガラス基板に接合したとしてもガラス基板のクラックを防止する効果が十分でないことがある。他方、金属板の厚さが1mmよりも大きいと、金属板に反りが発生するため、ガラス基板への陽極接合が困難となると共に、金属板の内部応力が大きく、ガラス基板との陽極接合ができたとしてもガラス基板から金属板が剥離する可能性が高くなってしまう。
【0010】
[適用例4] 適用例1ないし適用例3のいずれかの圧力センサ素子において、前記金属板の厚さは、前記シリコン基板と前記ガラス基板とを重ね合わせた厚さよりも薄いと良い。適用例4の圧力センサ素子によれば、使用環境温度に依存してゼロ点がばらつくことを抑制することができる。
【0011】
[適用例5] 適用例1ないし適用例4のいずれかの圧力センサ素子において、前記センサ面に直交する直交方向から見た前記金属板の形状は、前記直交方向から見た前記ガラス基板の形状よりも小さいと良い。適用例5の圧力センサ素子によれば、加工形成された、応力に対して弱いガラス基板の周縁部に、金属板とガラス基板との熱膨張差に起因したセンサ面に平行な応力が加わり、ガラス基板における周縁部が損傷することを防止することができる。
【0012】
[適用例6] 適用例6の圧力センサは、適用例1ないし適用例5のいずれかの圧力センサ素子を備えることを特徴とする。適用例6の圧力センサによれば、シリコン基板にガラス基板を接合した圧力センサ素子を用いた圧力センサの耐久性を向上させることができる。
【0013】
本発明の形態は、圧力センサ素子および圧力センサの形態に限るものではなく、例えば、圧力センサを備える内燃機関、圧力センサ素子を製造する方法などの種々の形態に適用することも可能である。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】圧力センサの構成を示す説明図である。
【図2】圧力検出機構の詳細構成を示す説明図である。
【図3】圧力センサ素子の詳細構成を示す斜視図である。
【図4】圧力センサ素子の詳細構成を示す部分断面図である。
【図5】圧力センサ素子の詳細構成を示す上面図である。
【図6】圧力センサ素子の製造工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明を適用した圧力センサについて説明する。
【0016】
A.実施例:
A−1.圧力センサの構成:
図1は、圧力センサ20の構成を示す説明図である。圧力センサ20は、棒状部材110を介して棒状部材110の中心軸CA1に沿った方向に伝達される圧力荷重に基づいて、棒状部材110に加わる圧力を検出する。圧力センサ20は、圧力検出機構210および配線基板220を備える。圧力センサ20の圧力検出機構210は、棒状部材110に加わる圧力変化を電気的特性(本実施例では電気抵抗)の変化に変換する機構である。圧力センサ20の配線基板220は、圧力検出機構210の電気的特性に基づいて、棒状部材110に加わる圧力に応じた電気信号を出力する。本実施例では、圧力センサ20の配線基板220は、圧力に応じた電気信号を、外部端子180を介して外部に出力する。
【0017】
図2は、圧力検出機構210の詳細構成を示す説明図である。圧力検出機構210は、圧力センサ素子30、伝達部材212、素子ケース214および台座218を備える。圧力検出機構210を構成する各部位は、棒状部材110から中心軸CA1に沿って、伝達部材212、圧力センサ素子30、台座218の順に配置され、これらの部材は、素子ケース214内に組み付けられている。素子ケース214は、棒状部材110の後端側に設けられたリング112に嵌め込まれている。
【0018】
圧力検出機構210の素子ケース214は、棒状部材110からの圧力荷重を圧力センサ素子30へと伝達する。素子ケース214の先端側は、リング112を介して棒状部材110と接続する凸部を備えると共に、素子ケース214の後端側は、伝達部材212および圧力センサ素子30を内包する筒状部を備える。素子ケース214の筒状部の伝達部材212に当接する面は平面である。素子ケース214は、金属(例えば、フェライト系ステンレス鋼(SUS430)、析出硬化系ステンレス鋼(SUS630))製である。
【0019】
圧力検出機構210の伝達部材212は、素子ケース214と協働して、棒状部材110からの圧力荷重を圧力センサ素子30へと伝達する。伝達部材212は、後述する金属板310の第1平面311に当接し、金属板310の第1平面311に当接する面は、平面となっている。一方、素子ケース214に当接する面は、素子ケース214に向けて突出し、中心軸CA1上を頂点とする球面となっている。伝達部材212は、金属(例えば、チタン合金(Ti−6Al−4V)、コバール)製である。
【0020】
圧力検出機構210の台座218は、伝達部材212との間に圧力センサ素子30を挟持すると共に、中心軸CA1方向への圧力センサ素子30の移動を抑制する。これによって、圧力センサ素子30は、棒状部材110から伝達される圧力荷重に応じて圧縮される。
【0021】
圧力検出機構210の圧力センサ素子30は、金属板310、ガラス基板320、シリコン基板330およびガラス基板340を備える。圧力センサ素子30を構成する各部位は、棒状部材110から中心軸CA1に沿って、金属板310、ガラス基板320、シリコン基板330,ガラス基板340の順に積層され、これらの隣り合う部材同士は陽極接合されている。本実施例では、圧力センサ20に用いられる圧力センサ素子30が使用される温度範囲は、マイナス40℃〜プラス300℃程度である。
【0022】
A−2.圧力センサ素子の詳細構成:
図3は、圧力センサ素子30の詳細構成を示す斜視図である。図4は、圧力センサ素子30の詳細構成を示す部分断面図である。図5は、圧力センサ素子30の詳細構成を示す上面図である。図3には、金属板310側の斜め方向から見た圧力センサ素子30を図示した。図4には、中心軸CA1に直交する方向から見た圧力センサ素子30を図示した。図4では、中心軸CA1から紙面左側には圧力センサ素子30の外観形状を図示し、中心軸CA1から紙面右側には圧力センサ素子30の断面形状を図示した。図5には、金属板310側から中心軸CA1に沿って見た圧力センサ素子30を図示した。
【0023】
圧力センサ素子30は、図3に示すように、紙面上側から金属板310、ガラス基板320、シリコン基板330、およびガラス基板340が順に積層配置された構造を有する。なお、本実施例では、圧力センサ素子30の構成として、金属板310、ガラス基板320、シリコン基板330、およびガラス基板340についてそれぞれ説明するが、ガラス基板340については、圧力センサ素子30に必須の構成ではなく、圧力センサ素子30は、少なくとも金属板310、ガラス基板320、シリコン基板330を有していればよい。
【0024】
圧力センサ素子30のシリコン基板330は、シリコン製の部材である。シリコン基板330は、中心軸CA1に直交する二つの平面であるセンサ面331および背向面332を有する板状を成す。本実施例では、中心軸CA1方向から見たシリコン基板330は正方形であり、シリコン基板330は、センサ面331および背向面332にそれぞれ直交する四つの端面333を有する。
【0025】
シリコン基板330のセンサ面331は、圧力を感知する平面であり、本実施例では、センサ面331には、圧力に応じて電気抵抗が変化する公知の抵抗体(図示しないが、具体的には、特開2010−175447号公報の図8を参照)が電極パッド411,412,413と共に形成されている。図5に示すように、シリコン基板330のセンサ面331において後述のガラス基板320から露出する四つの角のうちの三つの角の各々に、電極パッド411,412,413が個別に形成されている。シリコン基板330の電極パッド411,412,413は、それぞれ配線基板220へと電気的に接続される。本実施例では、シリコン基板330における電極パッドの数は三つであるが、他の実施形態において、二つであっても良いし、四つ以上であっても良く、用途に合わせて電極パッドの数を適宜設定すればよい。
【0026】
圧力センサ素子30のガラス基板320は、ガラス製の部材である。ガラス基板320は、中心軸CA1に直交する二つの平面である第1平面321および第2平面322を有する板状を成す。ガラス基板320の第2平面322は、シリコン基板330のセンサ面331に接合された接合面である。ガラス基板320の第1平面321は、第2平面322に背向する背向面であって、後述の金属板310に陽極接合された接合面でもある。本実施例では、中心軸CA1方向から見たガラス基板320の形状は、シリコン基板330と同じ大きさの正方形における四つの角を各角を中心とする円弧でそれぞれ切り欠いた形状であり、ガラス基板320は、第1平面321および第2平面322にそれぞれ直交する四つの端面323および四つの円弧面324を有する。
【0027】
圧力センサ素子30のガラス基板340は、ガラス製の部材である。ガラス基板340は、中心軸CA1に直交する二つの平面である第1平面341および第2平面342を有する板状を成し、第1平面341は、シリコン基板330の背向面332に接合された接合面である。本実施例では、中心軸CA1方向から見たガラス基板320の形状は、シリコン基板330と同じ大きさの正方形であり、ガラス基板340は、第1平面341および第2平面342にそれぞれ直交する四つの端面343を有する。
【0028】
圧力センサ素子30の金属板310は、金属製の部材であり、本実施例では、金属板310の材料は、コバール(Kovar)である。コバールは、鉄にニッケル、コバルト等を配合した合金である。金属板310は、中心軸CA1に直交する二つの平面である第1平面311および第2平面312を有する板状を成し、第2平面312は、ガラス基板320の第1平面321に接合された接合面でもある。本実施例では、中心軸CA1方向から見た金属板310の形状は、シリコン基板330と同じ大きさの正方形における四つの角を各角を中心とする円弧でそれぞれ切り欠いた形状であり、金属板310は、第1平面311および第2平面312にそれぞれ直交する四つの端面313および四つの円弧面314を有する。
【0029】
本実施例では、金属板310における円弧面314の曲率半径は、ガラス基板320における円弧面324の曲率半径よりも大きい。そのため、図5に示すように、中心軸CA1方向から見た金属板310の形状は、中心軸CA1方向から見たガラス基板320の形状よりも小さく、ガラス基板320の第1平面321を視認可能である。これによって、加工形成され応力に対して比較的に弱いガラス基板320の周縁部である円弧面324に、金属板310とガラス基板320との熱膨張差に起因したセンサ面331に平行な応力が加わり、ガラス基板320の円弧面324が損傷することを防止することができる。
【0030】
図4に示すように、圧力センサ素子30において、金属板310の第1平面311は、伝達部材212に当接する当接面を構成し、ガラス基板340の第2平面342は、台座218に当接する当接面を構成する。金属板310の端面313、ガラス基板320の端面323、シリコン基板330の端面333、およびガラス基板340の端面343は、同一平面上に位置する。金属板310の第2平面312とガラス基板320の第1平面321との間、ガラス基板320の第2平面322とシリコン基板330のセンサ面331との間、シリコン基板330の背向面332とガラス基板340との間は、それぞれ陽極接合されている。
【0031】
本実施例では、金属板310の厚さt1は、0.5mm(ミリメートル)である。金属板310の厚さt1が0.01mmよりも小さいと、金属板材料の剛性を十分に確保できないため、圧力センサ素子30の製造時における金属板材料の取り扱いが困難であったり、金属板310をガラス基板320に接合したとしてもガラス基板320のクラックを防止する効果が十分でないことがある。また、金属板310の厚さt1が1.0mmよりも大きいと、金属板310に反りが発生するため、ガラス基板320への陽極接合が困難となると共に、金属板310の内部応力が大きく、ガラス基板320との陽極接合ができたとしてもガラス基板320から金属板310が剥離する可能性が高くなってしまう。これらのことから、金属板310の厚さt1は、0.01〜1.0mmであることが好ましい。
【0032】
圧力センサ素子30に伝達される圧力荷重に対する金属板310における応力吸収の影響を低減し、使用環境温度に依存して圧力センサ素子30のゼロ点がばらつくことを抑制するために、金属板310の厚さt1は、ガラス基板320の厚さt2とシリコン基板330の厚さt3とを重ね合わせた厚さ(t2+t3)よりも薄いことが好ましい。本実施例では、圧力センサ素子30におけるガラス基板320、シリコン基板330およびガラス基板340の厚さt2,t3,t4は、それぞれ0.5mm程度である。
【0033】
A−3.圧力センサ素子の製造工程:
図6は、圧力センサ素子30の製造工程を示す工程図である。圧力センサ素子30の製造工程では、金属板310の元である金属円板510を用意する工程(プロセスP10)と、ガラス基板320の元であるガラスウェハ520を用意する工程(プロセスP20)とを実施する。
【0034】
金属円板510を用意する工程(プロセスP10)では、エッチング加工によって金属円板510に貫通孔およびダイシングラインを形成する。この工程(プロセスP10)で金属円板510に形成される貫通孔は、圧力センサ素子30における金属板310の円弧面314になる。本実施例では、金属円板510の材料は、コバールである。
【0035】
ガラスウェハ520を用意する工程(プロセスP20)では、サンドブラスト加工またはドリル加工によってガラスウェハ520に貫通孔およびダイシングラインを形成する。この工程(プロセスP20)でガラスウェハ520に形成される貫通孔は、圧力センサ素子30におけるガラス基板320の円弧面324になる。本実施例では、サンドブラスト加工によりガラスウェハ520に形成されるクラックを除去するために、サンドブラスト加工の後、ガラスウェハ520に対して、フッ酸によるエッチング加工を実施する。
【0036】
次に、シリコンウェハ530をガラスウェハ540に陽極接合する陽極接合工程(プロセスP30)を実施し、シリコンウェハ530をガラスウェハ540に陽極接合した接合体610を作成する。ガラスウェハ540は、ガラス基板340の元となるガラス製の円板である。シリコンウェハ530は、シリコン基板330の元となるシリコン製の円板であり、陽極接合工程(プロセスP30)に先立って抵抗対や電極パッドが予め形成されている。本実施例では、陽極接合工程(プロセスP30)では、シリコンウェハ530およびガラスウェハ540を重ね合わせて約400℃に加熱しながら約800Vの電圧を印加する。
【0037】
陽極接合工程(プロセスP30)の後、接合体610のシリコンウェハ530側に、プロセスP20で用意したガラスウェハ520を陽極接合する陽極接合工程(プロセスP40)を実施し、接合体610にガラスウェハ520を陽極接合した接合体620を作成する。本実施例では、陽極接合工程(プロセスP40)では、接合体610およびガラスウェハ520を重ね合わせて約400℃に加熱しながら約800Vの電圧を印加する。
【0038】
陽極接合工程(プロセスP40)の後、接合体620のガラスウェハ520側に、プロセスP10で用意した金属円板510を陽極接合する陽極接合工程(プロセスP50)を実施し、接合体620に金属円板510を陽極接合した接合体630を作成する。本実施例では、陽極接合工程(プロセスP50)では、接合体620および金属円板510を重ね合わせて約300℃に加熱しながら約500V(ボルト)の電圧を印加する。
【0039】
陽極接合工程(プロセスP50)の後、ダイシング加工により接合体630から複数の圧力センサ素子30を切り出すダイシング工程(プロセスP60)を実施する。ダイシング工程(プロセスP60)による接合体630の切り口は、圧力センサ素子30における各部材の端面313,323,333,324になる。
【0040】
A−4.効果:
以上説明した圧力センサ20によれば、圧力センサ素子30のガラス基板320には金属板310が陽極接合されているため、第1平面311に当接する伝達部材212の面荒れや、第1平面311と伝達部材212との間に紛れ込んだゴミ等により、第1平面311上に点荷重による応力集中が起こったとしても、ガラス基板320にクラック(ひび)や割れが発生することを防止できる。その上、圧力センサ20が通常用いられるマイナス40℃〜プラス300℃程度の温度範囲において、ガラス基板320と金属板310との熱膨張差により、ガラス基板320と金属板310との剥離が生じたり、ガラス基板320が割れたりすることを防止できる。その結果、圧力センサ素子30の耐久性を向上させることができ、ひいては圧力センサ20の耐久性を向上させることができる。
【0041】
また、金属板310の材料はコバールであるため、ガラス基板320に対して金属板310を容易に陽極接合することができると共に、マイナス40℃〜プラス300℃程度の温度範囲で、ガラス基板320との密着性を確保し、ガラス基板320との熱膨張率差による剥離や割れを起こすことなく、物理的特性を維持することができる。
【0042】
B.他の実施形態:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。例えば、圧力センサ素子30は、汎用的に用いられる圧力センサに組み込まれても良いし、特定の用途に用いられる圧力センサに組み込まれても良い。
【0043】
また、圧力センサ素子30における金属板310の材料は、圧力センサ素子30が使用される温度範囲において、ガラス基板320との密着性を確保し、ガラス基板320との熱膨張率差による剥離や割れを起こすことなく、物理的特性を維持することが可能な金属であれば良く、コバールの他、アルミニウムであっても良い。
【0044】
また、本実施例では、圧力センサ素子30における金属板310の形状は、ガラス基板320よりも小さいが、他の実施形態において、ガラス基板320と同じ大きさであっても良いし、ガラス基板320よりも大きくても良い。
【符号の説明】
【0045】
20…圧力センサ
30…圧力センサ素子
110…棒状部材
112…リング
180…外部端子
210…圧力検出機構
212…伝達部材
214…素子ケース
218…台座
220…配線基板
310…金属板
311…第1平面
312…第2平面
313…端面
314…円弧面
320…ガラス基板
321…第1平面
322…第2平面
323…端面
324…円弧面
330…シリコン基板
331…センサ面
332…背向面
333…端面
340…ガラス基板
341…第1平面
342…第2平面
343…端面
411,412,413…電極パッド
510…金属円板
520…ガラスウェハ
530…シリコンウェハ
540…ガラスウェハ
610…接合体
620…接合体
630…接合体
CA1…中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力を感知するセンサ面を有する板状のシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記センサ面に接合された接合面、および前記接合面に背向する背向面を有する板状のガラス基板と
を備える圧力センサ素子であって、
更に、前記背向面に陽極接合された金属板を備えることを特徴とする圧力センサ素子。
【請求項2】
前記金属板の材料は、コバールまたはアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ素子。
【請求項3】
前記金属板の厚さは、0.01〜1.0mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧力センサ素子。
【請求項4】
前記金属板の厚さは、前記シリコン基板と前記ガラス基板とを重ね合わせた厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の圧力センサ素子。
【請求項5】
前記センサ面に直交する直交方向から見た前記金属板の形状は、前記直交方向から見た前記ガラス基板の形状よりも小さいことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の圧力センサ素子。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の圧力センサ素子を備える圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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