説明

圧力センサ

【課題】被測定圧力の変化を検出するダイアフラム構造を備えた圧力センサにおいて、圧力センサのパッケージにリードピンを気密封止するハーメチックシール部に作用する応力を大幅に低減する。
【解決手段】パッケージ10内部の基準真空室10Bと圧力導入部10Aとを隔絶するセンサチップ10と、一端がセンサチップ10に接続され他端が挿通孔13aを介してパッケージ10外部に露出しケーブル90に接続される複数のリードピン41と、挿通孔13aと各リードピン41との間を気密的に封止するハーメチックシール部43・60と、各リードピン41の他端とケーブル90との接続部を電磁シールドする電磁シールド部70と、を備える圧力センサ10である。電磁シールド部70は、複数のリードピン41を導入する複数の導入孔71bが設けられた板状部71aを有する。板状部71aに応力緩和部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関し、特に、真空に近い圧力を測定するのに適した圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被測定圧力の変化を静電容量の変化として検出するダイアフラム構造を備えた圧力センサが広く知られている。例えば、現在においては、基準真空室と圧力導入部とを隔絶するセンサダイアフラムを有するセンサチップと、このセンサチップを収容するハウジング及びカバーからなるパッケージと、を備えた圧力センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような圧力センサにおいては、基準真空室内の圧力と、圧力導入部を介して印加される測定対象ガスの圧力と、の差により基準真空室側にセンサダイアフラムの中央部が撓み、センサチップの固定電極と可動電極との間隔が変化する。これにより、固定電極と可動電極との間の静電容量が変化し、この静電容量の変化を電極リード部によって圧力センサのカバーを貫通して外部に取り出すことにより、測定対象ガスの圧力を測定するようになっている。
【0003】
ここで、前記した従来の圧力センサの電極リード部近傍の構成について、図10(A)を用いて説明する。従来の圧力センサ100の電極リード部400は、リードピン410及び金属製のシールド420を備えている。リードピン410は、ガラス等の絶縁性材料からなるハーメチックシール部430によってその中央部分が金属製のシールド420に埋設され、これにより、リードピン410の両端部間で気密状態が維持される。そして、リードピン410の一端はパッケージ110を構成するカバー130の外部に露出し、配線によって圧力センサ100の出力を外部の信号処理部に伝達するようになっている。なお、シールド420とカバー130との間にもハーメチックシール部600が介在しており、カバー130はアッパハウジング120の周壁の上端面と溶接等により接合されてパッケージ110を形成している。
【0004】
前記した従来の圧力センサ100のカバー130は、ハーメチックシール部430・600への熱応力の影響が大きくならないように、ガラスに近い熱膨張率を有するコバール(Kovar)で構成されるのが一般的である。一方、このような圧力センサ100のアッパハウジング120は、耐蝕性材料であるインコネル(Inconel)で構成される。この理由は、(図示されていない)ロアハウジングは内側に測定対象ガスを導く圧力導入部を有するために測定対象ガスが腐食性のガスであっても耐えられるようにする必要があり、かつ、圧力センサ100の温度特性を考慮するとアッパハウジング120とロアハウジングとを異種材料で構成するのは避けるべきだからである。このような構造においては、カバー130を構成するコバールの耐蝕性が低く、また、コバールとインコネルとでは熱膨張率が大きく異なるので、両者間に熱応力が発生し、その熱応力によってカバー130の中央部が大きく内側に撓み、それによって電極リード部400を互いに傾けるような応力が作用する。
【0005】
一方、カバー130を貫通してパッケージ110の外部に突出した複数の電極リード部400の各リードピン410には、外部配線が接続されるが、ノイズが混入しないように電磁シールド構造で覆う必要がある。シールド方式としては、(1)1個の電極リード部400に対して1個の電磁シールド構造でシールドする方式と、(2)複数個(ないし全て)の電極リード部400に対して図10(A)に示すように1個の電磁シールド構造500でシールドする方式と、が考えられ、これらのうち(2)の方式は部品点数が少なく、製造上も有利であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006―3234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記した(2)のシールド方式で採用される図10(A)の電磁シールド構造500は、図10(B)に示すような複数の導入孔520が設けられた板状のシールド部材510を有している。このように複数の導入孔520が設けられたシールド部材510を有する電磁シールド構造500採用すると、複数個の電極リード部400の先端部がシールド部材510の各導入孔520により固定されるため、各電極リード部400の先端部の相対的な位置が拘束されることとなる。このため、前記した熱応力によってカバー130の中央部が大きく内側に撓み、電極リード部400を互いに傾けるような応力が作用すると、ハーメチックシール部430・600が大きな応力を受けて破損する虞がある。
【0008】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、被測定圧力の変化を検出するダイアフラム構造を備えた圧力センサにおいて、圧力センサのパッケージにリードピンを気密封止するハーメチックシール部に作用する応力を大幅に低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る圧力センサは、筒状のハウジング及びこのハウジングの端部に接合される板状のカバーを有するパッケージと、パッケージの内部に形成される基準真空室と圧力導入部とを隔絶する圧力検出用のセンサチップと、一端がセンサチップに電気的に接続されるとともに他端がカバーの挿通孔を介してパッケージの外部に露出してシールドケーブルに接続される複数のリードピンと、挿通孔と各リードピンとの間を気密的に封止する封着用ガラスで構成されるハーメチックシール部と、各リードピンの他端とシールドケーブルとの接続部を電磁シールドする電磁シールド部と、を備える圧力センサであって、電磁シールド部は、複数のリードピンを導入する複数の導入孔が設けられた板状部を有し、板状部に応力緩和部が設けられるものである。
【0010】
なお、電磁シールド部としては、板状部を有する第一のシールド部材と、シールドケーブルを導入するとともに第一のシールド部材と結合してリードピンの他端とシールドケーブルとの接続部を電磁シールドする第二のシールド部材と、を有するものを採用することができる。
【0011】
かかる構成を採用すると、電磁シールド部の板状部に応力緩和部が設けられるので、板状部が変形し易くなる。このため、熱応力によってカバーの中央部が内側に撓みリードピンを互いに傾けるような応力が作用した場合においても、電磁シールド部の板状部の変形によるリードピン他端の位置変更が可能となる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を大幅に低減させることができる。
【0012】
前記圧力センサにおいて、板状部の各導入孔を区分するように形成されたスリットを有する応力緩和部を採用することができる。
【0013】
かかる構成を採用すると、板状部の各導入孔を区分するように形成されたスリットを応力緩和部として機能させることができるので、きわめて簡易な構成でハーメチックシール部に作用する応力を低減させることができる。
【0014】
また、前記圧力センサにおいて、板状部の中央部から縁部に向けて放射状に延在するようにスリットを形成し、板状部の縁部のスリット端部近傍部分を外方に突出させることもできる。
【0015】
かかる構成を採用すると、板状部縁部のスリット端部近傍部分が外方に突出しているため、板状部がより一層変形し易くなる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を一層低減させることができる。
【0016】
また、前記圧力センサにおいて、(板状部の各導入孔を区分するように形成されたスリットに加え)板状部に形成された溝をさらに有する応力緩和部を採用してもよい。
【0017】
かかる構成を採用すると、応力緩和部をスリットと溝との組合せで構成することができるので、板状部がより一層変形し易くなる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を一層低減させることができる。
【0018】
また、前記圧力センサにおいて、板状部の各導入孔を区分するように形成された溝を有する応力緩和部を採用することができる。
【0019】
かかる構成を採用すると、板状部の各導入孔を区分するように形成された溝を応力緩和部として機能させることができるので、きわめて簡易な構成でハーメチックシール部に作用する応力を低減させることができる。また、溝で応力緩和部を構成することにより、電磁シールド部の板状部の開口部を少なくして板状部の強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被測定圧力の変化を静電容量の変化として検出するダイアフラム構造を備えた圧力センサにおいて、圧力センサのパッケージにリードピンを気密封止するハーメチックシール部に作用する応力を大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧力センサの断面図である。
【図2】図1に示す圧力センサの電磁シールド部を構成する第一のシールド部材の斜視図である。
【図3】図2に示す第一のシールド部材の平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る圧力センサの電磁シールド部を構成する第一のシールド部材の平面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る圧力センサの電磁シールド部を構成する第一のシールド部材の平面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る圧力センサの電磁シールド部を構成する第一のシールド部材の平面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る圧力センサの電磁シールド部を構成する第一のシールド部材の平面図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係る圧力センサの電磁シールド部を構成する第一のシールド部材の平面図である。
【図9】本発明の各実施形態に係る圧力センサのハーメチックシール部に作用する熱応力と、従来の圧力センサのハーメチックシール部に作用する熱応力と、を示すグラフである。
【図10】(A)は従来の圧力センサの要部断面図であり、(B)は従来の圧力センサの電磁シールド部を構成するシールド部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
<第1実施形態>
まず、図1〜図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る圧力センサ1について説明する。本実施形態に係る圧力センサ1は、図1に示すように、パッケージ10と、パッケージ10内に収容された台座プレート20と、同じくパッケージ10内に収容され台座プレート20に接合されたセンサチップ30と、パッケージ10に直接取付けられパッケージ10内外を導通接続する複数の電極リード部40と、を備えている。また、台座プレート20は、パッケージ10の内壁から離隔しており、支持ダイアフラム50のみを介してパッケージ10に支持されている。
【0024】
パッケージ10は、ロアハウジング11、アッパハウジング12及びカバー13から構成されている。ロアハウジング11及びアッパハウジング12は耐食性の金属であるインコネルから構成され、カバー13はガラスに近い熱膨張率を有するコバールで構成されており、それぞれ溶接により接合されている。
【0025】
ロアハウジング11は、径の異なる円筒体を連結した形状を備える部材であり、その大径部11aは支持ダイアフラム50との接合部を有し、その小径部11bは被測定流体が流入する圧力導入部10Aを形成している。なお、大径部11aと小径部11bとの結合部にはバッフル11cが形成され、バッフル11cの周囲には周方向所定の間隔で圧力導入孔11dが形成されている。バッフル11cは、圧力導入部10Aからプロセスガスなどの被測定流体を後述するセンサチップ30に直接到達させずに迂回させる役目を果たすものであり、センサチップ30にプロセスガスの成分やプロセスガス中の不純物が堆積するのを防止するようになっている。
【0026】
アッパハウジング12は、略円筒体形状を有する部材であり、カバー13、支持ダイアフラム50、台座プレート20及びセンサチップ30とともに、パッケージ10内に真空の基準真空室10Bを形成している。基準真空室10Bは、センサチップ30によって、プロセスガスが導入される領域(圧力導入部10A)と隔てられている。基準真空室10Bには、いわゆる(図示されていない)ゲッターと呼ばれる気体吸着物質が設けられており、真空度を維持している。また、アッパハウジング12の支持ダイアフラム取付け側には、周方向適所にストッパ12aが突出形成されている。ストッパ12aは、被測定流体の急激な圧力上昇により台座プレート20が過度に変移するのを規制する役目を果たしている。
【0027】
カバー13は、所定厚さを有する上面視円形状の板状部材であり、その中央部には複数の電極リード挿通孔13aが形成されている。電極リード挿通孔13aには電極リード部40が埋め込まれており、電極リード部40と電極リード挿通孔13aとの間は、封着用ガラスで構成されるハーメチックシール部60によって気密的に封止されている。
【0028】
支持ダイアフラム50は、パッケージ10の形状に合わせた外形形状を有するインコネルの薄板からなり、周囲縁部は上述したロアハウジング11とアッパハウジング12の縁部に挟まれて溶接等により接合されている。支持ダイアフラム50の厚さは、例えば本実施形態の場合数十ミクロンであって、各台座プレート21・22より充分薄い厚さとなっている。また、支持ダイアフラム50の中央部分には、センサチップ30に圧力を導くための圧力導入孔50aが形成されている。支持ダイアフラム50の両面には、支持ダイアフラム50とパッケージ10の接合部から周方向全体にわたってある程度隔間した位置に酸化アルミニウムの単結晶体であるサファイアからなる薄いリング状のロア台座プレート(第1の台座プレート)21と、アッパ台座プレート(第2の台座プレート)22と、が接合されている。
【0029】
各台座プレート21・22は、支持ダイアフラム50の厚さに対して上述の通り十分に厚くなっており、かつ支持ダイアフラム50を両台座プレート21・22でいわゆるサンドイッチ状に挟み込む構造を有している。これによって、支持ダイアフラム50と台座プレート20の熱膨張率の違いによって発生する熱応力でこの部分が反るのを防止している。また、アッパ台座プレート22には、酸化アルミニウムの単結晶体であるサファイアでできた上面視矩形状のセンサチップ30が、酸化アルミニウムベースの接合材を介して接合されている。
【0030】
センサチップ30は、上面視で1cm角以下の大きさを有し四角角型の薄板からなるスペーサ31と、スペーサ31に接合されかつ圧力の印加に応じてひずみが生じるセンサダイアフラム32と、センサダイアフラム32に接合して真空の容量室(リファレンス室)30Aを形成するセンサ台座33と、を有している。また、真空の容量室30Aと基準真空室10Bとは、センサ台座33の適所に穿設された図示しない連通孔を介して、略同一の真空度を保っている。なお、スペーサ31、センサダイアフラム32及びセンサ台座33はいわゆる直接接合によって互いに接合され、一体化したセンサチップ30を構成している。
【0031】
また、センサチップ30の容量室30Aには、センサ台座33の凹み部33aに金又は白金等の導体でできた固定電極33b・33cが形成されているとともに、これと対向するセンサダイアフラム32の表面上に金又は白金等の導体でできた可動電極32b・32cが形成されている。また、センサチップ30の上面には、金又は白金からなるコンタクトパッド35・36が形成され、これらの固定電極33b・33cと可動電極32b・32cはコンタクトパッド35・36と図示しない配線によって接続されている。
【0032】
電極リード部40は、電極リードピン41と、金属製のシールド42と、を備えている。電極リードピン41は、金属製のシールド42にガラスなどの絶縁性材料からなるハーメチックシール部43によってその中央部分が埋設され、電極リードピン41の両端部間で気密状態を保っている。電極リードピン41の一端は、センサチップ30に電気的に接続されている。また、電極リードピン41の他端は、カバー13の挿通孔13aを介してパッケージ10の外部に露出し、シールドケーブル90に接続されて圧力センサ1の出力を外部の信号処理部に伝達するようになっている。なお、シールド42とカバー13との間にも、上述の通りハーメチックシール部60が介在している。また、電極リードピン41の一端には、導電性を有するコンタクトバネ45・46が接続されている。コンタクトバネ45・46は、圧力導入部10Aからプロセスガスなどの被測定流体が急に流れ込むことで発生する急激な圧力上昇により支持ダイアフラム50が若干変移しても、コンタクトバネ45・46の付勢力がセンサチップ30の測定精度に影響を与えない程度の十分な柔らかさを有している。
【0033】
電極リードピン41の他端とシールドケーブル90との接続部は、電磁シールド部70によって電磁シールドされる。電磁シールド部70は、板状部71aを有する第一のシールド部材71と、シールドケーブル90を導入するとともに第一のシールド部材71と結合して電極リードピン41の他端とシールドケーブル90との接続部を電磁シールドする第二のシールド部材72と、を有している。第一及び第二のシールド部材72は、SUSやコバール等の金属材料で構成することができる。
【0034】
第一のシールド部材71は、図2及び図3に示すように、平面視略矩形状の板状部71aを有している。板状部71aには、複数(本実施形態においては4本)の電極リード部40を導入する複数(4個)の導入孔71bが設けられている。また、板状部71aには、各導入孔71bを区分するように形成された平面視十字型のスリット部を有している。スリット部は、板状部71aを変形し易くする応力緩和部として機能するものである。本実施形態におけるスリット部は、図2及び図3に示すように、2本の直線状のスリット71cを板状部71aの中央部で交差させたものであり、板状部71aの中央部から4つの縁部に向けて四方に放射状に延在するように形成されている。直線状のスリット71cの幅や長さは、板状部71aの厚さや材料に応じて適宜設定することができる。本実施形態においては、2本の直線状のスリット71cの長さを略同一に設定している。また、第一のシールド部材71の板状部71aの一対の対向する縁部の中央部には、第二のシールド部材72と結合する際にカシメ部となる断面コ字状の延出部71dが設けられている。本実施形態におけるスリット71cは、延出部71dまでは到達していない。
【0035】
なお、各電極リード部40のパッケージ10外部に露出した部分の外周には、図1に示すように、径の異なる二つの絶縁用円環型部材であるテフロン(登録商標)ブッシュ81及びSUSブッシュ82が取り付けられている。
【0036】
続いて、本実施形態に係る圧力センサ1の作用について説明する。なお、本実施形態においては、圧力センサ1を例えば半導体製造装置の適当な場所に取付け、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)などの半導体製造プロセス中において、プロセスガスの真空に近い微小圧力(以下、「微圧」とする)を測定する際における圧力センサ1の作用について説明することとする。
【0037】
プロセスガスは、圧力センサ1の圧力導入部10Aから圧力導入孔11dを介してパッケージ内に流入する。この際、プロセスガスの急激な流入が生じても、バッフル11cと圧力導入孔11dを介してプロセスガスを迂回させてパッケージ10内に流入させるので、センサダイアフラム32にプロセスガスが直接当たることがない。そのため、センサダイアフラム32にプロセスガスの成分やプロセスガスに含まれる不純物の再堆積を防止できる。
【0038】
なお、プロセスガスが微圧であっても、センサチップ30の容量室内は真空のため、センサダイアフラム32が撓んで、センサチップ30の固定電極33b・33cと可動電極32b・32cとの間隔が変化する。これによって、固定電極33b・33cと可動電極32b・32cで構成されたコンデンサの容量値が変化する。かかる容量値の変化を電極リード部40によって圧力センサ1の外部に取り出すことにより、プロセスガスの微圧を測定することができる。
【0039】
一方、本実施形態においては、圧力センサ1は半導体製造プロセスに設置されており、プロセスガスは高温であるため、半導体製造装置へのプロセスガスの流入前と流入後とで圧力センサ1が取付けられた部分に大きな熱的変化が生じる。また、センサ自身も(例えば最大200℃程度まで)加熱して使うので熱的変化が生じる。さらに、圧力センサ1製作時の受圧部製作工程においては約300℃の加熱が必要となるため、圧力センサ1を構成する部品には大きな熱的変化が生じる。
【0040】
ここで、パッケージ10を構成するロアプレート11及びアッパプレート12はインコネルで構成されるのに対し、カバー13はコバールから構成されており、これら部材間の熱膨張率が異なる。このため、図10(A)に示すような従来のパッケージ110を採用すると、熱膨張率差による熱応力が発生し、この熱応力によってカバー130の中央部が内側に撓み電極リード部400を互いに傾けるような応力が作用する。一方、従来の圧力センサ100においては、複数個の電極リード部400の先端部の相対的な位置が、電磁シールド構造500のシールド部材510の各導入孔520(図10(B))により拘束される。この結果、前記した熱応力によって、ハーメチックシール部430・600が大きな応力が作用することとなる。
【0041】
これに対し、本実施形態における圧力センサ1の場合、熱応力によってカバー13の中央部が内側に撓み電極リード部40を互いに傾けるような応力が作用した場合においても、第一のシールド部材71の板状部71aが変形することにより、複数個の電極リード部40の先端部の相対的な位置を変更させることが可能となる。この結果、ハーメチックシール部43・60に作用する応力を大幅に低減させることができる。
【0042】
以上説明した実施形態に係る圧力センサ1においては、電磁シールド部70を構成する第一のシールド部材71の板状部71aに応力緩和部としてのスリット部が設けられるので、板状部71aが変形し易くなる。このため、熱応力によってカバー13の中央部が内側に撓み電極リードピン41を互いに傾けるような応力が作用した場合においても、第一のシールド部材71の板状部71aの変形による電極リードピン41の他端の位置変更が可能となる。この結果、ハーメチックシール部43・60に作用する応力を大幅に低減させることができる。また、本実施形態においては、板状部71aの各導入孔71bを区分するように形成された2本の直線状のスリット71cを応力緩和部として機能させることができるので、きわめて簡易な構成でハーメチックシール部43・60に作用する応力を低減させることができる。
【0043】
続いて、図4〜図8を用いて、本発明の第2〜第6実施形態に係る圧力センサについて説明する。以下の各実施形態に係る圧力センサは、第一実施形態に係る圧力センサ1の電磁シールド部70の第1のシールド部材71の構成のみを変更したものであり、その他の構成については実質的に第1実施形態と共通である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、共通する構成については第1実施形態と同様の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0044】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態における第一のシールド部材71Aは、図4に示すように、第1実施形態と同様に2本の直線状のスリット(第一のスリット71c及び第二のスリット71e)から形成された平面視十字型のスリット部を有している。スリット部は、板状部71aを変形し易くする応力緩和部として機能するものである。本実施形態におけるスリット部を構成する第一のスリット71cは、板状部71aの中央部から延出部71dが設けられていない一対の縁部に向けて延在するように形成されている。第二のスリット71eは、板状部71aの中央部から一対の延出部71dに向けて第一のスリット71cと直行する方向に延在するように形成されている。第二のスリット71eは、板状部71aの縁部を超えて延在し、延出部71dの端部付近まで到達している。すなわち、第二のスリット71eは、第一のスリット71cよりも若干長くなるように設定されている。
【0045】
以上説明した実施形態に係る圧力センサにおいても、電磁シールド部を構成する第一のシールド部材71Aの板状部71aに応力緩和部としてのスリット部が設けられるので、板状部71aが変形し易くなる。このため、熱応力によってカバーの中央部が内側に撓み電極リードピンを互いに傾けるような応力が作用した場合においても、第一のシールド部材71Aの板状部71aの変形による電極リードピンの他端の位置変更が可能となる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を大幅に低減させることができる。また、本実施形態においては、板状部71aの各導入孔71bを区分するように形成された第一及び第二のスリット71c・71eを応力緩和部として機能させることができるので、きわめて簡易な構成でハーメチックシール部に作用する応力を低減させることができる。
【0046】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態における第一のシールド部材71Bは、図5に示すように、長さの異なる2本の長尺スリット(第一のスリット71c及び第二のスリット71e)と、これら長尺スリットに直行する方向に延在する短尺スリット(第三のスリット71f及び第四のスリット71g)と、から形成されたスリット部を有している。スリット部は、板状部71aを変形し易くする応力緩和部として機能するものである。第一及び第二のスリット71c・71eは、第2実施形態で説明したものと実質的に同一であるので説明を省略する。第三のスリット71fは、第一のスリット71cの最端部に配置されており、これにより第一のスリット71cの端部付近ではT字型が形成されている。一方、第四のスリット71gは、第二のスリット71eの最端部よりも内側(延出部71dよりも内側)に配置されており、これにより第二のスリット71eの端部付近では十字型が形成されている。
【0047】
以上説明した実施形態に係る圧力センサにおいても、電磁シールド部を構成する第一のシールド部材71Bの板状部71aに応力緩和部としてのスリット部が設けられるので、板状部71aが変形し易くなる。このため、熱応力によってカバーの中央部が内側に撓み電極リードピンを互いに傾けるような応力が作用した場合においても、第一のシールド部材71Bの板状部71aの変形による電極リードピンの他端の位置変更が可能となる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を大幅に低減させることができる。また、本実施形態においては、板状部71aの各導入孔71bを区分するように形成された第一及び第二のスリット71c・71eと、これに直行する第三及び第四のスリット71f・71gと、を応力緩和部として機能させることができるので、きわめて簡易な構成でハーメチックシール部に作用する応力を低減させることができる。
【0048】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態における第一のシールド部材71Cにおいては、図6に示すように、板状部71aの縁部のスリット端部近傍部分を外方に突出させている。すなわち、延出部71dが設けられていない一対の縁部の中央部に、若干外方に突出した平面視半円形状の突出部71hが設けられている。また、本実施形態における第一のシールド部材71Cは、2本の直線状のスリット(第一のスリット71i及び第二のスリット71e)から形成された平面視十字型のスリット部を有している。スリット部は、板状部71aを変形し易くする応力緩和部として機能するものである。本実施形態におけるスリット部を構成する第一のスリット71iは、板状部71aの中央部から一対の突出部71hに向けて延在するように形成されている。第一のスリット71iは、板状部71aの縁部を超えて延在し、突出部71hの端部付近まで到達している。第二のスリット71eは、第2実施形態と同様に、板状部71aの中央部から一対の延出部71dに向けて第一のスリット71cと直行する方向に延在するように形成されており、板状部71aの縁部を超えて延在し、延出部71dの端部付近まで到達している。
【0049】
以上説明した実施形態に係る圧力センサにおいても、電磁シールド部を構成する第一のシールド部材71Cの板状部71aに応力緩和部としてのスリット部が設けられるので、板状部71aが変形し易くなる。このため、熱応力によってカバーの中央部が内側に撓み電極リードピンを互いに傾けるような応力が作用した場合においても、第一のシールド部材71Cの板状部71aの変形による電極リードピンの他端の位置変更が可能となる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を大幅に低減させることができる。また、本実施形態においては、板状部71aの各導入孔71bを区分するように形成された第一及び第二のスリット71i・71eを応力緩和部として機能させることができるので、きわめて簡易な構成でハーメチックシール部に作用する応力を低減させることができる。また、本実施形態においては、板状部71a縁部のスリット端部近傍部分が外方に突出している(突出部71h)ため、板状部71aがより一層変形し易くなる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を一層低減させることができる。
【0050】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態における第一のシールド部材71Dにおいても、図7に示すように、板状部71aの縁部のスリット端部近傍部分を外方に突出させている。すなわち、第4実施形態と同様に、延出部71dが設けられていない一対の縁部の中央部に、若干外方に突出した平面視半円形状の突出部71hが設けられている。また、本実施形態における第一のシールド部材71Dは、2本の長尺スリット(第一のスリット71i及び第二のスリット71e)と、これら長尺スリットの端部付近に形成されたスリット(第三のスリット71j及び第四のスリット71g)と、から形成されたスリット部を有している。スリット部は、板状部71aを変形し易くする応力緩和部として機能するものである。第一及び第二のスリット71i・71eは、第4実施形態で説明したものと実質的に同一であるので説明を省略する。第三のスリット71jは、突出部71hと同様に平面視半円形状に形成されたスリットであり、第一のスリット71iの最端部に配置されている。一方、第四のスリット71gは、第二のスリット71eの最端部よりも内側(延出部71dよりも内側)に配置されており、これにより第二のスリット71eの端部付近では十字型が形成されている。
【0051】
以上説明した実施形態に係る圧力センサにおいても、電磁シールド部を構成する第一のシールド部材71Dの板状部71aに応力緩和部としてのスリット部が設けられるので、板状部71aが変形し易くなる。このため、熱応力によってカバーの中央部が内側に撓み電極リードピンを互いに傾けるような応力が作用した場合においても、第一のシールド部材71Dの板状部71aの変形による電極リードピンの他端の位置変更が可能となる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を大幅に低減させることができる。また、本実施形態においては、板状部71aの各導入孔71bを区分するように形成された第一及び第二のスリット71i・71eと、これら第一及び第二のスリット71i・71eの端部付近に形成された第三及び第四のスリット71j・71gと、を応力緩和部として機能させることができるので、きわめて簡易な構成でハーメチックシール部に作用する応力を低減させることができる。また、本実施形態においては、板状部71a縁部のスリット端部近傍部分が外方に突出している(突出部71h)ため、板状部71aがより一層変形し易くなる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を一層低減させることができる。
【0052】
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態における第一のシールド部材71Eにおいても、図8に示すように、板状部71aの縁部のスリット端部近傍部分を外方に突出させている。すなわち、第4・第5実施形態と同様に、延出部71dが設けられていない一対の縁部の中央部に、若干外方に突出した平面視半円形状の突出部71hが設けられている。また、本実施形態における第一のシールド部材71Dは、2本の長尺スリット(第一のスリット71i及び第二のスリット71e)と、これら長尺スリットに直行する方向に延在する短尺スリット(第三のスリット71k及び第四のスリット71g)と、から形成されたスリット部を有している。スリット部は、板状部71aを変形し易くする応力緩和部として機能するものである。第一及び第二のスリット71i・71eは、第4・第5実施形態で説明したものと実質的に同一であるので説明を省略する。第三のスリット71kは、第一のスリット71iの最端部よりも内側(突出部71hよりも内側)に配置されており、これにより第一のスリット71iの端部付近では十字型が形成されている。一方、第四のスリット71gは、第二のスリット71eの最端部よりも内側(延出部71dよりも内側)に配置されており、これにより第二のスリット71eの端部付近においても十字型が形成されている。
【0053】
以上説明した実施形態に係る圧力センサにおいても、電磁シールド部を構成する第一のシールド部材71Eの板状部71aに応力緩和部としてのスリット部が設けられるので、板状部71aが変形し易くなる。このため、熱応力によってカバーの中央部が内側に撓み電極リードピンを互いに傾けるような応力が作用した場合においても、第一のシールド部材71Dの板状部71aの変形による電極リードピンの他端の位置変更が可能となる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を大幅に低減させることができる。また、本実施形態においては、板状部71aの各導入孔71bを区分するように形成された第一及び第二のスリット71i・71eと、これに直行する第三及び第四のスリット71k・71gと、を応力緩和部として機能させることができるので、きわめて簡易な構成でハーメチックシール部に作用する応力を低減させることができる。また、本実施形態においては、板状部71a縁部のスリット端部近傍部分が外方に突出している(突出部71h)ため、板状部71aがより一層変形し易くなる。この結果、ハーメチックシール部に作用する応力を一層低減させることができる。
【0054】
図9は、本発明の第1〜第6実施形態に係る圧力センサ(図1〜図8)を300℃で加熱した場合にハーメチックシール部に作用する熱応力と、従来の圧力センサ(図10)を300℃で加熱した場合にハーメチックシール部に作用する熱応力と、を示すグラフである。図9においては、圧力センサの電磁シールド部を構成する第一のシールド部材を「SUS」で構成した場合の熱応力を右下がり斜線の棒グラフで示している。また、従来及び第4〜第6実施形態に係る圧力センサにおいては、電磁シールド部を構成する第一のシールド部材を「コバール」で構成した場合の熱応力を右上がり斜線の棒グラフで示している。第一のシールド部材を「SUS」で構成した場合には、従来の圧力センサのハーメチックシール部に作用する熱応力よりも、本発明の各実施形態に係る圧力センサのハーメチックシール部に作用する熱応力が格段に小さくなり、特に第6実施形態に係る圧力センサを採用すると熱応力を約1/4に低減することができ、応力低減効果が顕著となることが図9から明らかである。また、第一のシールド部材を「コバール」で構成した場合においても同様に、ハーメチックシール部に作用する熱応力を低減することができる。
【0055】
なお、以上の各実施形態においては、応力緩和部としてスリットを採用した例を示したが、スリットに代えて「溝」を応力緩和部として採用することもできる。また、スリットと溝の組み合わせにより応力緩和部を構成してもよい。
【0056】
また、以上の各実施形態においては、支持ダイアフラム50はインコネルでできていたが、必ずしもこれに限定されず、ステンレスやコバールなどの耐食性金属でできていても良い。また、台座プレート20やセンサチップ30はサファイアできていたが、必ずしもこの材質に限定されず、シリコンやアルミナ、シリコンカーバイド、又は石英などでできていても良い。また、コンタクトパッド35・36と電極リード部40との接続部はいわゆるコンタクトバネ45・46の形態で構成されていたが、十分な可撓性を有すれば必ずしもこれに限定されず、板バネのような形態であっても良い。さらには、電極リード部40とコンタクトパッド35・36を十分に柔らかい導電ワイヤで繋いでいても良い。また、センサチップ30、台座プレート20、電極リード部40、パッケージ10の形状は上述の実施形態に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0057】
また、以上の各実施形態は、静電容量式のセンサチップを用いた場合について説明したが、このセンサチップの代わりに例えばシリコンでできたピエゾ抵抗式センサチップを備えた圧力センサであっても、上述した構成を有することによって、発生した熱応力をハーメチックシール部に伝わるのを効果的に防止できる。
【符号の説明】
【0058】
1…圧力センサ
10…パッケージ
10A…圧力導入部
10B…基準真空室
11…ロアハウジング
12…アッパハウジング
13・13A…カバー
13a…挿通孔
13b…環状溝(凹部)
13c・13cA…薄肉部
13d…凹部
30…センサチップ
41…電極リードピン
43…ハーメチックシール部
60…ハーメチックシール部
70…電磁シールド部
71・71A・71B・71C・71D・71E…第一のシールド部材
71a…板状部
71b…導入孔
71c・71e・71f・71g・71i・71j・71k…スリット(応力緩和部)
71h…突出部
72…第二のシールド部材
90…シールドケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジング及びこのハウジングの端部に接合される板状のカバーを有するパッケージと、前記パッケージの内部に形成される基準真空室と圧力導入部とを隔絶する圧力検出用のセンサチップと、一端が前記センサチップに電気的に接続されるとともに他端が前記カバーの挿通孔を介して前記パッケージの外部に露出してシールドケーブルに接続される複数のリードピンと、前記挿通孔と前記各リードピンとの間を気密的に封止する封着用ガラスで構成されるハーメチックシール部と、前記各リードピンの前記他端と前記シールドケーブルとの接続部を電磁シールドする電磁シールド部と、を備える圧力センサであって、
前記電磁シールド部は、前記複数のリードピンを導入する複数の導入孔が設けられた板状部を有し、前記板状部に応力緩和部が設けられる、
圧力センサ。
【請求項2】
前記応力緩和部は、前記板状部の前記各導入孔を区分するように形成されたスリットを有するものである、
請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記板状部の中央部から縁部に向けて放射状に延在するように前記スリットが形成されるとともに、前記板状部の前記縁部のスリット端部近傍部分が外方に突出されてなる、
請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記応力緩和部は、前記板状部に形成された溝をさらに有するものである、
請求項2又は3に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記応力緩和部は、前記板状部の前記各導入孔を区分するように形成された溝を有するものである、
請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記電磁シールド部は、前記板状部を有する第一のシールド部材と、前記シールドケーブルを導入するとともに前記第一のシールド部材と結合して前記リードピンの前記他端と前記シールドケーブルとの接続部を電磁シールドする第二のシールド部材と、を有するものである、
請求項1から5の何れか一項に記載の圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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