説明

圧力制御式液体濃縮方法および装置

【課題】加熱される液体の温度と圧力を制御して、沸騰すること無しに最大の効率で濃縮を行い、しかも、圧力制御を真空ポンプの動作とは関係なく正確に行うことが可能な圧力制御式液体濃縮方法およびその装置を提供する。
【解決手段】被濃縮液11を入れた加熱源14付きの濃縮槽12と、真空ポンプ19に連結された圧力変動吸収容器18とを制御弁17で連結し、濃縮槽12の圧力で決定される被濃縮液11の飽和蒸気温度より、加熱源14で加熱された被濃縮液11の温度がT℃低くなるように、制御弁17を制御して、被濃縮液11の沸騰を防止し、かつ、濃縮槽12内の被濃縮液11の表面に乾燥した気流を吹き付けて被濃縮液11の蒸発を促進する。なお、0<T≦12である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内部に液体または固体が溶けている液状物の濃縮方法およびその装置に係り、食品分野(例えば、天然果汁、コーヒー、紅茶、緑茶、動物エキス、魚介エキス、植物エキス、キノコ類エキス、アミノ酸、チーズ、クリーム)、医薬分野(例えば、抗生物質、酵素、蛋白水溶水、醗酵液、アミノ酸、生薬エキス、インターフェロン、ビタミン類)、機能性食品分野(例えば、クロレラ、漢方薬エキス、青汁)、または環境分野(例えば、焼酎廃液からのエキス回収、ビール廃液からのエキス回収、油脂の回収、有機溶剤の回収)において利用可能な圧力制御式液体濃縮方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、最も普及している大気圧下での加熱濃縮法は、濃縮時間が短いという長所がある一方、熱効率が悪く、味や香りが低下するとともに焦げつきや酸化するなど品質面での短所も多い。この短所を解決するために例えば、特許文献1に記載されているように、遠心式真空薄膜濃縮法が開発されている。
また、特許文献2には、液体を加熱する熱交換器と、熱交換器によって加熱された液体から比較的気化し易い成分の蒸気を分離する蒸発濃縮器を複数段連結して、廃水または製薬液などの液体から、低含水率の濃縮物と高純度の純水を得ることができる多重効用濃縮システムおよび方法が提案されている。
そして、特許文献3には、濃縮槽に海水を注入し、濃縮槽内を真空ポンプを介して減圧した状態で、濃縮槽内の海水を加熱して海水中の水分を蒸発させて残留した濃縮水を得る海水の濃縮方法が提案されている。そして、減圧工程においては真空ポンプを作動させ、圧力管を介して濃縮槽の上端部に設けられた圧力口から所望の圧力となるよう随時監視しながら排気している。更に、熱源室は高温であるので、空焚部分に水滴などが触れると一瞬で蒸発しと記載されているので、100℃以上の温度で海水を加熱している。
【0003】
【特許文献1】特開2000−271596号公報
【特許文献2】特開2003−236302号公報
【特許文献3】特開2006−43519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術においては、液体を平面板上に薄膜状に形成した後に高温加熱を行い瞬間的に濃縮するため高い熱効率を実現する反面、低圧力においては液体が低温で沸騰するため完全な品質改善までは至っていないという問題がある。
また、特許文献2の技術においては、複数段の熱交換器と蒸発濃縮器が必要であり、装置が複雑になるほか、食品を濃縮する場合には腐敗などの問題があるので、機器が複雑であると掃除などが容易でないという問題がある。
そして、特許文献3に記載されている技術は、減圧しながら加熱しているが、加熱温度と圧力の関係を厳密に制御しているわけではないので、蒸発速度も遅く、結果として濃縮に時間がかかるという問題があった。また、高温の熱源で加熱しているので、濃縮槽内の液が不足すると、壁面に付着した液が急速乾燥され、凝固物(塩)が固化して付着するという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、加熱される液の温度と圧力を制御して、沸騰すること無しに最大の効率で濃縮を行い、しかも、圧力制御を真空ポンプの動作とは関係なく正確に行うことが可能な圧力制御式液体濃縮方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る圧力制御式液体濃縮方法は、被濃縮液を入れた加熱源付きの濃縮槽と、真空ポンプに連結された圧力変動吸収容器とを制御弁で連結し、
前記濃縮槽の圧力で決定される前記被濃縮液の飽和蒸気温度より、前記加熱源で加熱された前記被濃縮液の温度がT℃低くなるように、前記制御弁を制御して、前記被濃縮液の沸騰を防止し、かつ、前記濃縮槽内の被濃縮液の表面に乾燥した気流を吹き付けて前記被濃縮液の蒸発を促進する。
なお、0<T≦12(より好ましくは、2≦T≦10)である。
【0007】
また、第2の発明に係る圧力制御式液体濃縮方法は、第1の発明に係る方法において、前記気流は前記被濃縮液に対して不活性ガスであって、しかも円筒状の前記濃縮槽内を旋回流として流れる。
第3の発明に係る圧力制御式液体濃縮方法は、第2の発明に係る方法において、前記濃縮槽の上部中央には排気孔が設けられ、該排気孔の開口率は前記濃縮槽の断面積の15〜40%である。なお、ここで、濃縮槽の被濃縮液の表面から排気孔までの高さは、例えば、濃縮槽の内径の0.5〜1.5倍程度としている。
【0008】
第4の発明に係る圧力制御式液体濃縮方法は、第1〜第3の発明に係る方法において、前記加熱源は前記被濃縮液内に浸漬されたヒータからなって、前記被濃縮液がその品質変性温度より低い所定温度以下になった場合に作動する。なお、加熱源としては、電熱ヒータの他、蒸気配管による加熱、加熱空気配管による加熱、赤外線ヒータによる加熱なども含むものである。
【0009】
第5の発明に係る圧力制御式液体濃縮方法は、第1〜第4の発明に係る方法において、前記被濃縮液は循環ポンプによって均一温度に攪拌保持されている。そして、加熱源表面の温度境界層を破壊して、被濃縮液の局部的な沸騰を防止している。
【0010】
また、前記目的に沿う第6の発明に係る圧力制御式液体濃縮装置は、被濃縮液を入れる濃縮槽と、
前記濃縮槽内の被濃縮液を加熱する加熱源と、
前記濃縮槽内の被濃縮液を攪拌して均一温度にする攪拌手段と、
前記濃縮槽に直接または間接的に制御弁を介して接続される圧力変動吸収容器と、
前記圧力変動吸収容器に接続されて該圧力変動吸収容器内を前記濃縮槽の圧力より低く減圧する真空ポンプと、
前記濃縮槽中の被濃縮液の温度を測定する温度計と、
前記濃縮槽のガス圧力を測定するガス圧力計と、
前記ガス圧力計で測定される圧力で決定される前記被濃縮液の飽和蒸気温度より、前記温度計で測定される前記被濃縮液の温度がT℃低くなるように、前記制御弁を制御する制御部とを有する。
なお、0<T≦12(より好ましくは、2≦T≦10)である。
【0011】
第7の発明に係る圧力制御式液体濃縮装置は、第6の発明に係る装置において、前記攪拌手段は前記被濃縮液を前記濃縮槽から取り出して再度前記濃縮槽に入れる循環ポンプである。
【0012】
第8の発明に係る圧力制御式液体濃縮装置は、第6および第7の発明に係る装置において、前記加熱源は、前記被濃縮液が所定温度以下になった場合に作動する。
【0013】
第9の発明に係る圧力制御式液体濃縮装置は、第6〜第8の発明に係る装置において、前記濃縮槽は断面円形となって、前記濃縮槽内の被濃縮液の表面には、該被濃縮液に対して不活性ガスが前記濃縮槽の内側接線方向に吹き込まれている。
そして、第10の発明に係る圧力制御式液体濃縮装置は、第6〜第9の発明に係る装置において、前記濃縮槽は減圧容器内に配置されて、前記圧力変動吸収容器に接続される排気口は前記減圧容器に設けられている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜5記載の圧力制御式液体濃縮方法においては、被濃縮液を入れた加熱源付きの濃縮槽と、真空ポンプに連結された圧力変動吸収容器とを制御弁で連結し、濃縮槽の圧力で決定される被濃縮液の飽和蒸気温度より、加熱源で加熱された被濃縮液の温度がT℃(なお、0<T≦12)低くなるように、制御弁を制御しているので、被濃縮液の沸騰が防止される。これによって、被濃縮液の沸騰による変性や変質を防止できる。
また、濃縮槽内の被濃縮液の表面に乾燥した気流を吹き付けているので、被濃縮液の表面に発生する高湿度の気体を積極的に除去して、被濃縮液の蒸発が促進される。
【0015】
特に、請求項2記載の圧力制御式液体濃縮方法においては、気流は被濃縮液に対して不活性ガス(例えば、窒素、炭酸ガスなど)であって、しかも濃縮槽内を旋回流として流れるので、気流が被濃縮液を酸化させたり、変質させることがない他、より万遍なく被濃縮液の表面を清浄化することが可能となる。
また、請求項3記載の圧力制御式液体濃縮方法は、排気孔の開口率が濃縮槽の断面積の15〜40%程度であるので、旋回流が濃縮槽の液面の周囲だけでなく、中央部にも流れ、被濃縮液の表面全体の湿度を下げることができる。
【0016】
請求項4記載の圧力制御式液体濃縮方法は、加熱源が被濃縮液内に浸漬されたヒータからなっているので、加熱効率を高めることができる。また、被濃縮液がその品質変性温度より低い所定温度以下になった場合に作動するので、加熱によって被濃縮液が変質または変性しない。
【0017】
請求項5記載の圧力制御式液体濃縮方法は、被濃縮液は循環ポンプによって均一温度に攪拌保持されているので、加熱源の周りが局部加熱されて沸騰などが起こったり、あるいは被濃縮液が局部的に加熱されて変質や変性が生じることがない。
【0018】
そして、請求項6〜10記載の圧力制御式液体濃縮装置においては、ガス圧力計で測定される圧力で決定される被濃縮液の飽和蒸気温度より、温度計で測定される被濃縮液の温度がT℃低くなるように、制御弁を制御する制御部を有するので、被濃縮液の沸騰が生じることなく、被濃縮液の急速濃縮を行うことができる。これによって、被濃縮液に沸騰や過度の加熱によって変性、変質が生じることがない。
【0019】
特に、請求項7記載の圧力制御式液体濃縮装置においては、攪拌手段は被濃縮液を濃縮槽から取り出して再度濃縮槽に入れる循環ポンプであるので、被濃縮液に過度な波立ちを発生させることなく、更に、加熱源の周りに積極的に被濃縮液の流れを形成させながら全体の被濃縮液の温度を均一にすることができる。
【0020】
請求項8記載の圧力制御式液体濃縮装置においては、加熱源は、被濃縮液が所定温度以下になった場合に作動するので、被濃縮液を必要以上に加熱することがなく、従って、熱に対して敏感に変質、変性する被濃縮液に対して特に有効である。
【0021】
そして、請求項9記載の圧力制御式液体濃縮装置においては、濃縮槽は断面円形となって、濃縮槽内の被濃縮液の表面には、被濃縮液に対して不活性ガスが濃縮槽の内側接線方向に吹き込まれているので、濃縮槽内で旋回流が発生し、より効率的に被濃縮液の表面を清浄化できる。
また、請求項10記載の圧力制御式液体濃縮装置においては、濃縮槽が減圧容器に収納されているので、濃縮槽の強度を下げることが可能となり、特に、濃縮槽を交換する場合には効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る圧力制御式液体濃縮装置の概略構成を示す説明図、図2は液体温度と飽和蒸気温度との関係を示すグラフ、図3は濃縮槽の圧力と飽和蒸気線との関係を示すグラフ、図4はコーヒー質量と温度の過渡変化を示すグラフ、図5は熱量と濃縮速度との関係を示すグラフ、図6は電熱ヒータの各ワット数に対する飽和蒸気線との比較を示すグラフ、図7は各湿度におけるコーヒーの質量と温度の過渡変化を示すグラフ、図8は開口率に対する濃縮速度と濃縮槽内湿度との関係を示すグラフ、図9は解析と実験との比較を示すグラフ、図10は圧力制御試験結果を示すグラフ、図11は生産試験時のコーヒーの質量と温度の過渡変化を示すグラフ、図12は濃縮槽内の圧力と飽和蒸気線との関係を示すグラフ、図13(A)、(B)はそれぞれ味および香りに関する官能検査結果を示す円グラフである。
【0023】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る圧力制御式液体濃縮装置10は、被濃縮液11を入れる濃縮槽12が内側に配置された減圧容器13と、濃縮槽12内の被濃縮液11を加熱する加熱源の一例である電熱ヒータ14と、濃縮槽12内の被濃縮液11を攪拌する攪拌手段の一例である循環ポンプ15と、減圧容器13の排気口16に制御弁17を介して接続される圧力変動吸収容器18と、圧力変動吸収容器18に接続される真空ポンプ19と、濃縮槽12内の被濃縮液11の温度およびその上側のガス温度をそれぞれ測定する温度計20、21と、減圧容器13中の圧力を測定するガス圧力計22と、これらの制御部23と、濃縮槽12の表面に被濃縮液11に対して乾燥した気流を作る不活性ガスの一例である窒素を吹き込む不活性ガス吹き込み手段24とを有している。以下、これらについて詳しく説明する。
【0024】
濃縮槽12は、例えば、直径が140mm、高さが200mm程度の容器からなっている。そして、被濃縮液11に対して十分耐蝕性を有する合成樹脂、金属、セラミックス等の円筒状容器からなって、上部には中央に排気孔25bを有する蓋25が被っている。この濃縮槽12の側部には入口と出口がそれぞれ濃縮槽12内の別の場所に向けられた循環ポンプ15が設けられているとともに、濃縮槽12の内部には浸漬型の電熱ヒータ14が設けられて、内部の被濃縮液11を被濃縮液11の例えば品質変性温度より低い所定の温度(例えば、10〜30℃)に保持するようにしている。即ち、被濃縮液11の濃縮が行われると、被濃縮液11の温度が下がるので、これを防止して所定温度になるように電熱ヒータ14が作動する。
【0025】
この濃縮槽12内には温度計(正確には温度センサー、熱電対)20、21が設けられ、一方は被濃縮液11内に浸漬され、他方は被濃縮液11の上方のガス温度を測定するようにしている。また、濃縮槽12と連通して同一圧力となった減圧容器13の内側壁面にはガス圧力計22が設けられ、内部の圧力を測定できるようになっている。そして、温度計20、21、ガス圧力計22の出力は制御部23に接続されている。濃縮槽12の上部には蓋25が設けられ、この蓋25の中央には、濃縮槽12の断面積の15〜40%の断面積(即ち、開口率)を有する排気孔25bが設けられている。なお、蓋25を除去すれば開口率100%となる。
【0026】
濃縮槽12はその直径の1.5〜3倍程度、高さが濃縮槽12の1.2〜2倍の減圧容器(例えば、例えば、直径が300mm、高さが350mm)13内に配置されている。これによって、濃縮槽12の簡略化ができる。減圧容器13は十分強度を有する金属(例えば、ステンレス)からなって、上部に開閉できる密閉蓋25aを備えている。この減圧容器13の側板を貫通して不活性ガス吹き込み手段24が設けられている。
不活性ガス吹き込み手段24は、減圧容器13外に配置されている窒素ガス供給源の一例である窒素ガスボンベ(最大圧力が例えば15MPa)26と、窒素ガスボンベ26から図示しない減圧弁などを介して接続される流量計27と、流量計27からの窒素ガスを濃縮槽12内に送るために減圧容器13の側壁を貫通して配置される配管28とを有している。
【0027】
配管28の先部29は、被濃縮液11の表面に斜め上方向からかつ濃縮槽12の内壁面の接線方向に向いて気流が吹き付けられるように、位置し、濃縮槽12の内部に旋回流を形成するようになっている。そして、旋回流となった窒素ガスによって被濃縮液11の表面に湿度の低い気流空間を形成し、最終的には濃縮槽12の上部の蓋25の排気孔25bから減圧容器13内に排出され、更に排気口16から制御弁17を介して圧力変動吸収容器18内に排気されるようになっている。
減圧容器13の外部には、電熱ヒータ14に例えば0〜100wの電力を送る電源部30と、ガス圧力計22の電源兼制御部31とが設けられている。また、制御弁17は電磁駆動型の流量調整弁からなって電気信号によって所定の開度となって、減圧容器13から圧力変動吸収容器18への気流の制御が可能となって、減圧容器13の内部を例えば、0.8kPa〜101kPaに調整できるようになっている。圧力変動吸収容器18は減圧容器13の体積の1/10〜1/2程度の容積を有し、内部に監視用の圧力計32が設けられている。なお、33は圧力計32の電源兼制御部を示す。圧力変動吸収容器18には真空ポンプ19が接続されて、常時圧力変動吸収容器18の内部圧力は、減圧容器13内の圧力より十分低い圧力(例えば、減圧容器13内の圧力をPとした場合、0.1P〜0.8P)になるようにしている。
【0028】
減圧容器13外には、制御部23が設けられているが、この制御部23には、温度計20、21、ガス圧力計22の出力値が入力され、制御弁17の開度を制御するようになっているとともに、電源部30を制御して電熱ヒータ14の供給電力を変えて、被濃縮液11の温度を所定値に制御している。
【0029】
ガス圧力計22の出力値によって、制御弁17を制御し、濃縮槽12内の圧力を所定範囲に保つようにしている。即ち、制御部23には、更にガス圧力計22で測定される圧力によって決定される被濃縮液11の飽和蒸気温度より、温度計20で測定される被濃縮液11の温度がT℃だけ低くなるように、制御弁17を制御して、濃縮槽12の圧力を調整する制御手段が設けられている。なお、この制御手段は、被濃縮液11の温度を温度計20が検知し、被濃縮液11の温度よりT℃高い温度の被濃縮液11の飽和蒸気圧に濃縮槽12内の圧力(即ち、減圧容器13内の圧力)がなるように、制御弁17を制御するとしてもよい。ここで、0<T≦12であるが、温度T℃が0に近づくと制御が難しく、12℃に近づくと、被濃縮液11からの蒸発量が減少するので、2℃〜10℃(更に好ましくは4℃〜7℃)とするのがよい。ここで、被濃縮液11は電熱ヒータ14によって加熱されているので、電熱ヒータ14の入熱に対応する量の蒸発が起こり、これによって被濃縮液11が更に濃縮される。
【0030】
図2には、この場合の被濃縮液11の温度と、飽和蒸気温度との関係を示すが、飽和蒸気温度よりT℃だけ被濃縮液11の温度を保持する、即ち、減圧容器13内の圧力を保持すると、被濃縮液11に沸騰などが生じることなく、被濃縮液11の濃縮を行うことができる。図2においては、被濃縮液11の温度が徐々に下がり、10℃近傍で維持するように電熱ヒータ14を制御しているが、被濃縮液11の種類に合わせて適切な温度とすることができる。図3は、被濃縮液11の濃縮槽12内での圧力と飽和蒸気線を示したもので、飽和蒸気線に対応する温度を被濃縮液11の温度が超えると沸騰を生じるが、飽和蒸気線に対応する温度以下では沸騰は生じず、濃縮のみが行われる。
【0031】
次に、この圧力制御式液体濃縮装置10の実験例を説明し、本発明の一実施の形態に係る圧力制御式液体濃縮方法について説明するが、この実験例では被濃縮液11としてコーヒーを使用した。
濃縮実験では、圧力約1500Pa、窒素導入量1.5L/minの条件で電熱ヒータ14の出力を20w、40w、60wと80wの4段階で行った。実験で使用するコーヒーの質量は500gとした。濃縮実験では、各電熱ヒータ14の出力に対する濃縮速度と温度を測定することにより濃縮特性を調べた。また液体表面近傍の窒素湿度を湿度計で計測して濃縮槽12内の湿度に対する物質伝達量を検討するとともに濃縮速度を向上させる濃縮槽12の構造の検討も行った。
【0032】
具体的には、コーヒー豆に熱湯を注ぎ抽出したコーヒーを冷凍機で約5℃まで冷却した後に濃縮槽12に500g入れて約1500Paまで減圧する。減圧容器13内の圧力が安定した後に電熱ヒータ14の出力(以下、ヒータ出力ともいう)を20〜80wの間で調整した。濃縮速度は、10分おきに減圧容器13内に設置した質量計でコーヒーの質量を測定することにより求めた。また液体表面近傍の湿度は、蓋25に孔を開け、濃縮槽12の内部に直径5mmの配管(チューブ)28を挿入して濃縮槽12に窒素を流入させ液体から発生する蒸気量および窒素量と排気量のバランスを調節することにより変化させる。
【0033】
濃縮槽12内の湿度は、20.5%、32.3%と76.5%とした。ただし湿度76.5%は、濃縮槽12外にチューブを配して開口面積100%で実施した。各湿度での濃縮実験は、コーヒー質量500g、圧力約1500Pa、窒素導入量1.5L/min、ヒータ出力60wで行った。また実験で得られたデータをもとに近似解析を行い、減圧状態での液体濃縮機構を検証した。各濃縮実験を行う際に突発的に発生した蒸気による圧力変動を圧力変動吸収容器18で吸収して高精度な圧力制御を実現する。そこで圧力吸収試験と生産試験を行い圧力変動吸収容器18の評価を行った。
【0034】
圧力変動吸収試験は、制御弁17と圧力変動吸収容器18による圧力制御と、圧力変動吸収容器18を使用しないで、制御弁17のみによる圧力制御を、減圧容器13内の圧力約1500Pa、窒素導入量約1.5L/min、ヒータ出力60wで行い圧力の吸収性能を比較した。具体的には、初期圧力を約1500Paで一定として電熱ヒータ14の出力60wを投入することにより急激な蒸発量の発生に伴う圧力変動を強制的に発生させた。その時の圧力吸収状態を濃縮槽12内の圧力と液体温度の時間変化を測定して評価を行った。
【0035】
生産試験では、約70℃の抽出コーヒーの温度に対して約5〜10℃高い飽和蒸気温度を維持できる飽和蒸気圧力に維持しながら温度を10℃以下に冷却させる。最終的には、濃縮槽12内の圧力を1500Paまで低下させた後にヒータ出力60wでコーヒー温度を10℃以下に維持させ5時間でコーヒー質量を約20分の1まで濃縮する。
本実験ではこの圧力制御式液体濃縮装置10で試作した濃縮コーヒーの評価としてPH測定と官能検査を行った。PH測定では、各濃縮試験を行った際に最終濃縮20BrixのコーヒーのPHを測定した。また、官能検査では、30人に濃縮コーヒーを試飲してもらい味と香りについて回答を得たアンケートの結果を集計した。
【0036】
以下に上記実験例の結果と考察を示す。
[液体の濃縮特性]
図4は、減圧容器13内の圧力が約1500Paの状態で電熱ヒータ14の各出力に対するコーヒー温度と質量の過渡変化である。図4から電熱ヒータ14の出力60wで濃縮時間5時間、濃縮温度10℃以下であった。また、電熱ヒータ14の出力80wでは濃縮時間が60wに比べて1時間20分速い。しかし濃縮温度が約12℃まで上昇する。電熱ヒータ14の出力40wでは濃縮時間が60wに比べて約1時間遅く、20wでは約2時間遅くなっている。濃縮温度は、10℃以下である。
【0037】
図5に電熱ヒータ14の各出力時の平均濃縮速度と平均濃縮速度に対する蒸発潜熱量を示す。図5から各電熱ヒータ14の出力時の平均濃縮速度と平均濃縮速度に対する蒸発潜熱量がほぼ等しいため電熱ヒータ14の出力がすべて蒸発潜熱量に使われていると考えられる。各電熱ヒータ14の出力時の平均濃縮速度が蒸発潜熱量に対する平均濃縮速度より少々速いのは濃縮槽12への窒素導入によるものと考えられる。また図6から電熱ヒータ14の各出力時の温度が、圧力1500Pa時の飽和蒸気温度約13℃を超えていないため、本圧力制御式液体濃縮装置10では電熱ヒータ14の出力20〜80wで沸騰が起きないことも確認した。つまり、圧力1500Pa下で電熱ヒータ14の出力80wまで蒸気発生量と排気量のバランスが取れているため沸騰を発生せずに濃縮を行うことができる。以上から本発明の目標である濃縮時間5時間以内、濃縮温度10℃以下を達成できるこの実験例の最適電熱ヒータ14の出力が60wであることを確認した。
【0038】
[液体表面近傍湿度変化試験と濃縮槽12の最適構造]
図7は、液体(コーヒー液)表面近傍の湿度に対するコーヒー質量とコーヒー温度の過渡変化である。図7から液体表面近傍の湿度約20.5%の濃縮時間は、湿度約32.3%に比べて約20分短く湿度約76.5%に比べて約2.5時間短い。またコーヒー温度は湿度約32.3%まで目標温度10℃以下に抑えられているのに対して、湿度約76.5%では目標温度10℃を大きく超えて約50℃まで上昇している。したがって液体表面近傍の湿度が低いほど蒸発量が多く、湿度が高いほど蒸発量が少なくなっていることが分かる。また湿度が高い場合は電熱ヒータ14による供給熱量の一部がコーヒーの顕熱に変換されるため、温度が上昇する。液体表面近傍の湿度は、電熱ヒータ14の出力とともに濃縮速度に影響を与える大きな要因である。
【0039】
そこで、本発明の圧力制御式液体濃縮装置10では、図1に示すように減圧容器13内に濃縮槽12を設置して二重容器として濃縮槽12に直接窒素をコーヒー表面に旋回できるように流入させ、また濃縮槽12上部に載せる蓋25に排気孔25bを設けてコーヒーから発生する蒸気を排出することにより、さらに旋回を増幅させてコーヒー全体に接触させるとともに導入窒素の対流時間を長くすることにより液体表面近傍の湿度を低下させている。図8は、濃縮槽12の上部の開口率に対して圧力約1500Paおよび電熱ヒータ14の出力60wでの濃縮速度を示している。また、図8は排気孔25bの濃縮槽12の断面積に対応する開口率に対する液体表面近傍の湿度も表している。ただし湿度76.5%は濃縮槽12の外に窒素チューブを配しているため図8から除外している。なお、濃縮槽12内の気流の旋回空間の高さは、濃縮槽12の内径の0.5〜1.5倍程度としている。
【0040】
各濃縮試験における窒素導入量は1.5L/minである。図8から濃縮速度の最大値は、開口面積率が25%であった。開口面積が25%より高い場合は導入した窒素の旋回力が弱いためにコーヒー表面全体に窒素が触れずに濃縮槽12から排気される。このため液体表面近傍の湿度が開口面積率25%の場合より高くなっていると考えられる。また、開口面積率が25%より低い場合はコーヒー表面に窒素が触れているが、濃縮槽12内での滞留時間が長くなるため湿度が開口面積率25%の場合より高くなっていると考えられる。このように液体表面近傍の湿度が上昇することにより濃縮速度が低下すると思慮する。
【0041】
[近似解析による濃縮特性の検証]
本発明の実験では、近似解析においても濃縮槽12内の湿度が濃縮速度に大きく関係していることを調べた。そこで濃縮試験の結果について簡単なモデル解析によりコーヒーの濃縮機構を検討した。その熱および物質伝達モデルは、集中定数系として取り扱いを仮定すれば、次式に表すことが出来る。
【0042】
【数1】

【0043】
ここにコーヒーへの入熱量Qin(w)は電熱ヒータ14による熱供給量である。物質伝達率K(m/s)は、図4の濃縮試験(濃縮圧力1500Pa、電熱ヒータ14の出力60w)で得られた蒸発速度からコーヒー表面での物質伝達に関する式(4)より算出した。
【0044】
【数2】

【0045】
ここでMはコーヒー質量(kg)、M1は水の分子量、M2は窒素の分子量、mは物質伝達量(kg/m2・s)、Lwは蒸発潜熱(kJ/kg)、ρnは窒素の密度(kg/m3)、Cはコーヒーの比熱(kJ/kg・k)、Aは濃縮槽12の蒸発面積(m2)、ω1cはコーヒーの蒸発表面の水分率、ω1zは遠方の水分率、φは湿度、Pは大気圧(Pa)、P1は濃縮槽12内圧力(Pa)である。
【0046】
コーヒー濃縮に関する近似解析と実験を比較したコーヒー質量と温度の過渡変化を図9に示す。図9から近似解析と実験結果とは比較的良く一致しており、コーヒー内の物質移動抵抗がほぼないことがわかる。また、近似解析においてもコーヒー温度が約9℃で一定に推移していることから式(1)よりコーヒーの入熱量Qinがすべて蒸発に使用されていると考えられる。さらに式(3)から水分率は湿度の影響を大きく受けることが分かる。また水分率は式(2)からコーヒーの質量変化の度合いに影響を与える。したがって濃縮槽12内の湿度を下げればコーヒーの質量変化を大きくすることが可能になると考えられる。
【0047】
実際の濃縮実験においても濃縮槽12内の湿度を20%程度まで低下させることにより蒸発量を増大させて濃縮時間を短縮している。したがってコーヒー等の液体を減圧で濃縮するには、濃縮槽12内の湿度が重要となる。また、今回の濃縮実験および近似解析は1500Paの圧力一定条件での結果であり、圧力変化が生じれば各物性値が変化して濃縮特性が大きく変化する。このため液体の減圧濃縮では精度良い圧力制御も重要である。
【0048】
[圧力吸収機構の効果について]
本発明の圧力制御式液体濃縮方法の特徴である圧力吸収機構は、濃縮時の蒸発によって圧力が急上昇した際に圧力変動吸収容器18で発生した蒸気を急速に吸収して圧力の変動を抑える。そこで、本試験では濃縮槽12内の圧力が1500Paから2000Paまで変動する時に発生した蒸気量を2Lと仮定して圧力変動吸収容器18の容積を2Lとした。
【0049】
図10は、圧力1500Pa時に蒸発量1.6g/minを発生させる場合の制御弁17と圧力変動吸収容器18による圧力制御と、圧力変動吸収容器18を使用しないで制御弁17のみによる圧力制御での圧力の過渡変化を示している。制御弁17のみの圧力制御では1.6g/minの蒸気が発生した後に圧力が約2000Paまで急上昇するとともに飽和蒸気温度も上昇するためコーヒー温度が約15℃まで上昇している。制御弁17のみの圧力制御では圧力変動に対する真空ポンプ19の追従に関して時間遅れが大きいため急激な圧力変動に対応できずに濃縮槽12内の圧力上昇を生じる結果に至ったと考えられる。
【0050】
これに対して制御弁17と圧力変動吸収容器18による圧力制御では蒸気発生後に濃縮圧力はほとんど変化がなく濃縮圧力1500Paを維持していることが分かる。圧力変動がないためコーヒー温度が約10℃で推移している。この試験結果から、発生蒸気量を考慮した小型容器(即ち、圧力変動吸収容器18)を濃縮槽12と真空ポンプ19の間に設置することで濃縮槽12内の圧力変動を吸収することが可能であることを確認した。
【0051】
[生産試験について]
濃縮コーヒーの生産は、コーヒー豆から抽出した約70℃のコーヒーから濃縮する必要がある。そのため減圧過程でコーヒーの持つ熱量を利用して蒸発を効率的に行いコーヒー温度を約70℃から10℃以下に冷却する。本濃縮法では、圧力制御により蒸発を積極的に行い蒸発潜熱で冷却を行う。具体的には、濃縮槽12内のコーヒー温度に対して約5℃高く飽和蒸気圧力を高精度に制御することにより沸騰を発生させることなくコーヒー温度を設定温度10℃以下まで低下させ10℃に達した後は濃縮槽12内の圧力を常に1500Paで維持させる。これによりコーヒーの品質を維持させながら濃縮を得ることが可能になった。また、濃縮試験と近似解析の結果から得られた最適な構造を用いて試験を行うことにより大幅な濃縮時間の短縮を可能にした。
【0052】
図11は抽出後のコーヒー温度70℃での生産試験時のコーヒーの質量と温度の過渡変化を示している。コーヒー温度は、圧力制御により1500Paに保ちながら蒸発を効率的に行い、短時間にコーヒー温度を目標温度10℃以下に低下させることが出来る。また、コーヒー温度が10℃以下に達した後は、圧力変動が生じても圧力変動吸収容器18で吸収して濃縮圧力を約1500Paで一定にすることでコーヒー温度を約9℃に一定に保っている。コーヒー温度が、飽和蒸気温度以下で一定に推移していることから電熱ヒータ14による供給熱量がすべて蒸発潜熱に使用されていることが分かる。このことから計画通りに濃縮時間が約5時間となり目標時間を達成することが出来た。
【0053】
図12は、濃縮槽12内の圧力と飽和蒸気線を示している。図12から濃縮コーヒーの飽和蒸気温度に対する濃縮槽12内の温度が常に飽和蒸気線より高いため、5時間の濃縮中に一度も沸騰していないことを確認した。
濃縮開始から約1時間40分は、電熱ヒータ14による熱供給を停止させ真空ポンプ19以外のエネルギーは使用していない。これはコーヒーの内部エネルギーを全て蒸発潜熱に活用してコーヒー温度を約8℃まで冷却しているためである。このため5時間の濃縮に必要なエネルギーを大幅に削減することが出来る。また、濃縮をコーヒー温度10℃以下で行うことが出来るためコーヒーの品質の劣化を防ぐことが出来る。
【0054】
[濃縮コーヒーの評価]
図13(A)、(B)はそれぞれ味と香りに関する官能検査の結果である。評価段階は1を不可、5を可とした。味に関しては焦げ付きによる苦みを5段階で評価した結果である。味に関しては、第3乃至5段階を苦みなしとし、第1乃至2段階を苦みありとすると、苦みなしとする味の評価は約90%に達した。しかし香りに関しては、第3乃至5段階が28%、第1乃至2段階が72%であった。香りは、濃縮を行う過程で香りの成分のほとんどが蒸気とともに排出されていると考えられる。今後は、濃縮コーヒーの成分分析を行い、香りの脱臭原因を追及し改善を図っていくことが必要である。
【0055】
酸化度合いの測定については、濃縮試験を約20回行った際に測定したPHの平均値がPH5.3であった。濃縮前のPHが5.5であるため濃縮工程中に窒素を濃縮槽12内に直接導入しているためコーヒーの酸化を抑制できた結果であると考えられる。
【0056】
従って、本発明では高精度な圧力制御を行い、抽出後のコーヒーの味と香りを維持したまま液体の状態で20倍以上に高速濃縮する新しい濃縮技術について検討を行った。その結果、次の知見を得た。
(1)突発的に発生する蒸気に対しては発生量に等しい容器の圧力変動吸収容器18を設けることにより発生蒸気を吸収し、濃縮槽12内の圧力変動を最小限に抑えることが出来た。
(2)濃縮速度を速くする要因として濃縮槽12内の湿度調整が重要である事が分かった。この結果をもとに減圧容器13内に濃縮槽12を設ける二重構造として、さらに窒素を濃縮槽12内に直接導き濃縮槽12の排気孔25bの面積率を約25%にすることで濃縮槽12内の湿度を約20%程度まで低下させることができた。
(3)圧力変動吸収容器18によって精度良く圧力を制御することと濃縮槽12の構造により容器内の湿度を制御することが可能になったため濃縮時間を約5時間に短縮することができた。
(4)また、本発明に係る圧力制御式液体濃縮方法と、遠心式真空薄膜圧縮法とを使用エネルギーの観点から対比すると、初期においては、コーヒーが初期温度70℃に持つエネルギーを使用することにより外部エネルギーを使うことなく濃縮ができることもあって、エネルギー効率が極めて高くなる(試算によれば、本発明方法は1/3.5となる)。
【0057】
前記実施の形態および実験例においては、被濃縮液11としてコーヒーを例にして本発明を説明したが、本発明の要旨を変更しない範囲で、前述した他の液体についても適用可能である。また、被濃縮液11から粉末や顆粒を製造する場合、被濃縮液11を濃縮し、最終的に水分を除去する必要があるが、この過程において、被濃縮液11から水分を蒸発させてより濃度の高い濃縮液とする場合も本発明は適用される。従って、最終的製品が必ずしも液体であることを要しない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態に係る圧力制御式液体濃縮装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】液体温度と飽和蒸気温度との関係を示すグラフである。
【図3】濃縮槽内の圧力と飽和蒸気線との関係を示すグラフである。
【図4】コーヒー質量と温度の過渡変化を示すグラフである。
【図5】熱量と濃縮速度との関係を示すグラフである。
【図6】電熱ヒータの各ワット数に対する飽和蒸気線との比較を示すグラフである。
【図7】各湿度におけるコーヒーの質量と温度の過渡変化を示すグラフである。
【図8】開口率に対する濃縮速度と濃縮槽内湿度との関係を示すグラフである。
【図9】解析と実験との比較を示すグラフである。
【図10】圧力制御試験結果を示すグラフである。
【図11】生産試験時のコーヒーの質量と温度の過渡変化を示すグラフである。
【図12】濃縮槽内の圧力と飽和蒸気線との関係を示すグラフである。
【図13】(A)、(B)はそれぞれ味および香りに関する官能検査結果を示す円グラフである。
【符号の説明】
【0059】
10:圧力制御式液体濃縮装置、11:被濃縮液、12:濃縮槽、13:減圧容器、14:電熱ヒータ、15:循環ポンプ、16:排気口、17:制御弁、18:圧力変動吸収容器、19:真空ポンプ、20、21:温度計、22:ガス圧力計、23:制御部、24:不活性ガス吹き込み手段、25:蓋、25a:密閉蓋、25b:排気孔、26:窒素ガスボンベ、27:流量計、28:配管、29:先部、30:電源部、31:電源兼制御部、32:圧力計、33:電源兼制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被濃縮液を入れた加熱源付きの濃縮槽と、真空ポンプに連結された圧力変動吸収容器とを制御弁で連結し、
前記濃縮槽の圧力で決定される前記被濃縮液の飽和蒸気温度より、前記加熱源で加熱された前記被濃縮液の温度がT℃低くなるように、前記制御弁を制御して、前記被濃縮液の沸騰を防止し、かつ、前記濃縮槽内の被濃縮液の表面に乾燥した気流を吹き付けて前記被濃縮液の蒸発を促進することを特徴とする圧力制御式液体濃縮方法。
なお、0<T≦12である。
【請求項2】
請求項1記載の圧力制御式液体濃縮方法において、前記気流は前記被濃縮液に対して不活性ガスであって、しかも円筒状の前記濃縮槽内を旋回流として流れることを特徴とする圧力制御式液体濃縮方法。
【請求項3】
請求項2記載の圧力制御式液体濃縮方法において、前記濃縮槽の上部中央には排気孔が設けられ、該排気孔の開口率は前記濃縮槽の断面積の15〜40%であることを特徴とする圧力制御式液体濃縮方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧力制御式液体濃縮方法において、前記加熱源は前記被濃縮液内に浸漬されたヒータからなって、前記被濃縮液がその品質変性温度より低い所定温度以下になった場合に作動することを特徴とする圧力制御式液体濃縮方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧力制御式液体濃縮方法において、前記被濃縮液は循環ポンプによって均一温度に攪拌保持されていることを特徴とする圧力制御式液体濃縮方法。
【請求項6】
被濃縮液を入れる濃縮槽と、
前記濃縮槽内の被濃縮液を加熱する加熱源と、
前記濃縮槽内の被濃縮液を攪拌して均一温度にする攪拌手段と、
前記濃縮槽に直接または間接的に制御弁を介して接続される圧力変動吸収容器と、
前記圧力変動吸収容器に接続されて該圧力変動吸収容器内を前記濃縮槽の圧力より低く減圧する真空ポンプと、
前記濃縮槽中の被濃縮液の温度を測定する温度計と、
前記濃縮槽のガス圧力を測定するガス圧力計と、
前記ガス圧力計で測定される圧力で決定される前記被濃縮液の飽和蒸気温度より、前記温度計で測定される前記被濃縮液の温度がT℃低くなるように、前記制御弁を制御する制御部とを有することを特徴とする圧力制御式液体濃縮装置。
なお、0<T≦12である。
【請求項7】
請求項6記載の圧力制御式液体濃縮装置において、前記攪拌手段は前記被濃縮液を前記濃縮槽から取り出して再度前記濃縮槽に入れる循環ポンプであることを特徴とする圧力制御式液体濃縮装置。
【請求項8】
請求項6および7のいずれか1項に記載の圧力制御式液体濃縮装置において、前記加熱源は、前記被濃縮液が所定温度以下になった場合に作動することを特徴とする圧力制御式液体濃縮装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の圧力制御式液体濃縮装置において、前記濃縮槽は断面円形となって、前記濃縮槽内の被濃縮液の表面には、該被濃縮液に対して不活性ガスが前記濃縮槽の内側接線方向に吹き込まれていることを特徴とする圧力制御式液体濃縮装置。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の圧力制御式液体濃縮装置において、前記濃縮槽は減圧容器内に配置されて、前記圧力変動吸収容器に接続される排気口は前記減圧容器に設けられていることを特徴とする圧力制御式液体濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−246327(P2008−246327A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89040(P2007−89040)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人科学技術振興機構、実用化のための可能性試験(FS)、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【Fターム(参考)】