説明

圧力制御装置

【課題】精密かつ高速に圧力制御を行なうことができる圧力制御装置を提供すること。
【解決手段】ゲート開度を調整するバルブ21と、バルブに接続された第1の軸部13を介してバルブのゲート開度を調整するソレノイド部3と、第1の軸部と軸方向が平行な第2の軸部14が第1の軸部に接続された場合に第1および第2の軸部を介してバルブのゲート開度を調整するマイクロメータ4と、上流側ガス配管6P内または下流側ガス配管6Q内のガス圧力が所望のガス圧力となるよう、ソレノイド部およびマイクロメータを制御する制御部10Xと、制御部からの指示に基づいて、ソレノイド部によってバルブのゲート開度を調整させるかマイクロメータによってバルブのゲート開度を調整させるかの切替を行う切替機構2と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、圧力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造に用いられる半導体製造装置では、プロセスガスをプロセスチャンバ内に流す際のガス圧力を正確に制御する必要がある。
【0003】
しかしながら、ソレノイドバルブを用いた圧力制御では、半導体製造装置毎に圧力制御のばらつきが生じていたので、精密な圧力制御が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−116380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、精密かつ高速に圧力制御を行なうことができる圧力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、圧力制御装置が提供される。圧力制御装置は、上流側ガス配管と下流側ガス配管との間のゲート開度を調整することによって前記上流側ガス配管内または前記下流側ガス配管内のガス圧力を調整するバルブと、前記バルブに接続された第1の軸部と、を備えている。また、圧力制御装置は、前記第1の軸部をソレノイド駆動によって軸方向に移動させることにより、前記第1の軸部を介して前記バルブのゲート開度を調整するソレノイド部と、前記第1の軸部と軸方向が平行な第2の軸部に接続されるとともに、前記第2の軸部をねじ機構によって軸方向に移動させることにより、前記第1および第2の軸部を介して前記バルブのゲート開度を調整するマイクロメータと、を備えている。さらに、圧力制御装置は、前記上流側ガス配管内または前記下流側ガス配管内のガス圧力が所望のガス圧力となるよう、前記ソレノイド部および前記マイクロメータを制御する制御部と、前記制御部からの指示に基づいて、前記ソレノイド部によって前記バルブのゲート開度を調整させるか前記マイクロメータによって前記バルブのゲート開度を調整させるかの切替を行う切替部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る圧力制御装置を備えた半導体製造装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る圧力制御装置の構成を示す図である。
【図3】図3は、切替機構とピン部の構成を示す図である。
【図4】図4は、ソレノイドバルブを用いた圧力制御特性を示す図である。
【図5】図5は、第2の実施形態に係る圧力制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係る圧力制御装置を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る圧力制御装置を備えた半導体製造装置の構成を示す図である。半導体製造装置100は、プロセスチャンバCと、配管(上流側ガス配管)6Pと、圧力制御装置1Xと、配管(下流側ガス配管)6Qと、排気ポンプ30と、を備えている。本実施形態の圧力制御装置1Xは、配管内のガス圧力が所定値よりも低い場合には、マイクロメータによって配管内のガス圧力を制御し、配管内のガス圧力が所定値よりも高い場合には、ソレノイドコイルによって配管内のガス圧力を制御する。
【0010】
プロセスチャンバCは、半導体装置(半導体集積回路)が形成される基板(ウェハ)に対し、ウェハ上に薄膜を形成する処理室である。プロセスチャンバCへは、真空状態でプロセスガスが導入されてウェハ上に薄膜が形成される。そして、プロセスチャンバCからは、所定量のガスが排ガスとして排出される。プロセスチャンバCからの排ガスは、配管6P,6Qを介して排気ポンプ30に送られ、排気ポンプ30を介して外部(排ガス処理装置)などに送られる。
【0011】
半導体製造装置100では、配管6Pと配管6Qとの間に圧力制御装置1Xが設けられており、圧力制御装置1Xによって配管6P内のガス圧力が制御される。そして、配管6P内のガス圧力が制御されることにより、プロセスチャンバC内のプロセスガス圧力が制御される。
【0012】
本実施形態の圧力制御装置1Xは、バルブ21と、ソレノイドコイル3と、マイクロメータ4と、切替部5と、を有している。ソレノイドコイル3は、配管6P,6Q内のバルブ21をソレノイド駆動によって軸方向に移動させることにより、配管6Pから配管6Qへの排ガス流量を調整する。マイクロメータ4は、ねじ機構によってバルブ21を軸方向に移動させることにより、配管6Pから配管6Qへのガス排出量を調整する。
【0013】
切替部5は、ソレノイドコイル3によるバルブ21の制御と、マイクロメータ4によるバルブ21の制御と、を切替える。切替部5は、配管6Pから配管6Qへ少量の排ガスを排出させる場合にマイクロメータ4によってバルブ21を動作させ、配管6Pから配管6Qへ多量の排ガスを排出させる場合にソレノイドコイル3によってバルブ21を動作させる。
【0014】
この構成により、少量の排ガスを排出させる場合には、マイクロメータ4によって精密な排圧制御が可能となり、多量の排ガスを排出させる場合には、ソレノイドコイル3によって高速な排圧制御が可能となる。
【0015】
つぎに、圧力制御装置1Xの構成について説明する。図2は、第1の実施形態に係る圧力制御装置の構成を示す図である。圧力制御装置1Xは、配管6Pと配管6Qとの間に配置され、配管6Pから配管6Qへの排ガス流量を制御する。
【0016】
圧力制御装置1Xは、筐体25と、軸部11,12,13,14と、ソレノイドコイル3と、バルブ21と、真空シールド22と、切替機構2と、マイクロコンピュータ(マイコン)10Xと、マイクロメータ4と、モータMと、を備えている。
【0017】
軸部11,12,13は、同軸上に並ぶよう棒状部材で一体に形成されており、その一方の先端部(図2では軸部11の左端部)にバルブ21が配置されている。軸部11〜13は、軸部11〜13の軸方向(図内の左右方向)に移動することにより、バルブ21を軸部11の軸方向に移動させる。
【0018】
また、軸部14は、軸部11〜13と平行な方向に並ぶよう棒状部材で形成されている。軸部14は、軸部14の軸方向(図内の左右方向)に移動することにより、バルブ21を軸部11の軸方向に移動させる。
【0019】
バルブ21は、配管6P,6Q内で軸部11〜13の軸方向に移動することにより、配管6Pと配管6Qとの間の隙間量を調節する。例えば、バルブ21が図内の左側に移動することにより、配管6Pと配管6Qとの間の隙間(ゲート開度)は狭くなる。これにより、配管6Pから配管6Qに流れる排ガス流量が少なくなり、その結果、プロセスチャンバC内の圧力が上昇する。また、バルブ21が図内の右側に移動することにより、配管6Pと配管6Qとの間の隙間は広くなる。これにより、配管6Pから配管6Qに流れる排ガス流量が多くなり、その結果、プロセスチャンバC内の圧力が減少する。
【0020】
真空シールド22は、配管6P,6Qと筐体25とが接合される接合位置に配置されている。真空シールド22は、軸部11,12を貫通させる貫通孔を有しており、貫通孔に軸部11,12が貫通自在(挿入自在)に挿入されている。真空シールド22は、配管6P,6Qと筐体25との間で気体の流出入が起こらないよう気密を保ちつつ軸部11,12を軸方向に移動可能なよう構成されている。本実施形態では、説明の便宜上、軸部のうち真空シールド22とバルブ21との間の軸部を軸部11とし、真空シールド22と切替機構2との間の軸部を軸部12として説明する。
【0021】
切替機構2は、概略円板状の板状部材を用いて構成されている。切替機構2は、その主面が軸部12,13の軸方向に垂直に交わるよう、軸部12,13の間に配置されている。切替機構2は、軸部12,13を貫通させる第1の貫通孔を有しており、この第1の貫通孔に軸部12,13が挿入されるとともに、第1の貫通孔で軸部12,13に固定されている。軸部13の右端部には、ソレノイドコイル3が巻きつけられている。
【0022】
また、切替機構2は、軸部14を貫通させる第2の貫通孔(後述の貫通孔31)を有しており、貫通孔31に軸部14が貫通自在に挿入されている。貫通孔31は、軸部14よりも太く構成されている。軸部14の右端部にはマイクロメータ4が接続されている。
【0023】
切替機構2は、その内部にピン部Pを備えている。ピン部Pは、軸部14の軸方向に対して垂直な方向に移動可能なよう、切替機構2内に設けられている。切替機構2は、マイクロメータ4によってバルブ21を制御する場合には、軸部14を貫通孔31に挿入した状態で、軸部14に設けられた挿入孔(後述する挿入孔H)にピン部Pを挿入する。これにより、切替機構2は、軸部14と同じ方向に移動可能となる。また、切替機構2は、ソレノイドコイル3によってバルブ21を制御する場合には、軸部14に設けられた挿入孔Hからピン部Pを抜き出す。これにより、切替機構2は、軸部13と同じ方向に移動可能となる。
【0024】
ソレノイドコイル3は、ソレノイド駆動によって軸部11〜13を軸方向に移動させる。ソレノイドコイル3は、マイコン10Xからの指示(信号Bx)に従って、軸部13を軸方向に移動させる。ソレノイドコイル3は、信号Bxに応じた位置に軸部13を移動させる。
【0025】
モータMは、マイコン10Xからの指示(信号Ax)に従って、所定量だけマイクロメータ4を動作させる。マイクロメータ4は、モータMの回転動力を用いて軸部14を軸方向に移動させる。マイクロメータ4は、モータMへの信号Axに応じた位置に軸部14を移動させる。
【0026】
マイコン10Xは、バラトロンセンサSからの圧力値(ガス圧力)に基づいて、配管6P内が所望のガス圧力となるようソレノイドコイル3、モータM、切替機構2に指示を送る。バラトロンセンサSは、配管6P内に設けられており、配管6P内のガス圧力を計測する。
【0027】
筐体25は、概略筒状をなしており、軸部12〜14、ソレノイドコイル3、真空シールド22、切替機構2、マイクロメータ4、モータMを格納する。筐体25は、真空シールド22を介して配管6P,6Qに接続されている。
【0028】
圧力制御装置1Xでは、切替機構2が、マイクロメータ4の動作を伝えることによって移動エリアA1内を軸部11,12の軸方向に移動し、これにより、バルブ21が、移動エリアA2内を軸部11,12の軸方向に移動する。したがって、移動エリアA1内の距離と移動エリアA2内の距離は等しい。
【0029】
また、圧力制御装置1Xでは、切替機構2が、ソレノイドコイル3の動作によって移動エリアB1内を軸部11,12の軸方向に移動し、これにより、バルブ21が、移動エリアB2内を軸部11,12の軸方向に移動する。したがって、移動エリアB1内の距離と移動エリアB2内の距離は等しい。
【0030】
移動エリアA2は、配管6Pから配管6Qへの排ガス流量を少なくする場合にバルブ21が移動するエリアであり、移動エリアB2は、配管6Pから配管6Qへの排ガス流量を多くする場合にバルブ21が移動するエリアである。
【0031】
したがって、配管6Pから配管6Qへの排ガス流量を0〜所定量Xの何れかに設定する際には、マイクロメータ4の動作によってバルブ21が移動エリアA2内を移動する。例えば、移動エリアA2のうち一方の端部(図2の場合は左端部)にバルブ21が移動することにより、排ガス流量が0になる。また、移動エリアA2のうち他方の端部(図2の場合は右端部)(移動エリアB2との境界位置)にバルブ21が移動することにより、排ガス流量が所定量Xになる。
【0032】
また、配管6Pから配管6Qへの排ガス流量を所定量X〜最大値の何れかに設定する際には、ソレノイドコイル3の動作によってバルブ21が移動エリアB2内を移動する。例えば、移動エリアB2のうち一方の端部(図2の場合は左端部)(移動エリアB2との境界位置)にバルブ21が移動することにより、排ガス流量が所定量Xになる。また、移動エリアB2のうち他方の端部(図2の場合は右端部)にバルブ21が移動することにより排ガス流量が最大値になる。
【0033】
マイコン10Xは、バルブ21を移動エリアA2内で移動させる際に、移動エリアA2内での移動指示である信号Axをマイクロメータ4に送信する。また、マイコン10Xは、バルブ21を移動エリアB2内で移動させる際に、移動エリアB2内での移動指示である信号Bxをソレノイドコイル3に送信する。
【0034】
また、マイコン10Xは、モータM(マイクロメータ4)に信号Axを送信する際には、ピン部Pを軸部14の挿入孔Hに挿入する指示を切替機構2に送る。また、マイコン10Xは、ソレノイドコイル3に信号Bxを送信する際には、ピン部Pを軸部14の挿入孔Hから抜き出す指示を切替機構2に送る。
【0035】
このように、圧力制御装置1Xには、マイクロメータ4によって切替機構2やバルブ21を移動させるエリアを、それぞれ移動エリアA1,A2に設定しておく。また、圧力制御装置1Xには、ソレノイドコイル3によって切替機構2やバルブ21を移動させるエリアを、それぞれ移動エリアB1,B2に設定しておく。
【0036】
これにより、バルブ21は、マイコン10Xからの指示に応じた位置に移動する。そして、配管6P内の排ガスは、バルブ21の位置(移動エリアA2,B2)に応じて設けられた配管6Pと配管6Qとの間の隙間から配管6Qへ流れていく。
【0037】
図3は、切替機構とピン部の構成を示す図である。図3の(a)に示すように、切替機構2には、軸部14を貫通させる貫通孔31が設けられている。また、切替機構2は、一方の主面に軸部12が接続され、他方の主面に軸部13が接続されている。また、切替機構2の内部には、ピン部Pを格納する格納部Qが設けられている。格納部Qは、例えばピン部Pをピン部Pの軸方向(軸部14に垂直な方向)に移動可能な状態で格納する円筒状壁面を有している。格納部Qの円筒状壁面は、太さがピン部Pよりも太く、長さが貫通孔31の直径よりも2倍以上長くなるよう構成されている。
【0038】
この格納部Q内にピン部Pを格納しておくことにより、ピン部Pは、軸部12の軸方向に対しては軸部12とともに移動できる。さらに、ピン部Pは、軸部14に垂直な方向に対して移動可能となる。
【0039】
図3の(b)に示すように、軸部14には、先端部a(マイクロメータ4とは反対側の端部)の近傍に、ピン部Pを挿入するための挿入孔Hが設けられている。挿入孔Hは、例えば円筒状壁面をなしており、軸部14の軸方向に直交する方向に設けられている。
【0040】
マイクロメータ4によってバルブ21を移動させる際には、軸部14のうち挿入孔Hまで貫通孔31に挿入される。軸部14は、格納部Qの柱軸方向と挿入孔Hの柱軸方向とが同一方向となるよう、軸の回転方向が調整されている。軸部14の先端部aが貫通孔31に挿入されて、格納部Qの柱軸と挿入孔Hの柱軸が同じになった時点で、ピン部Pが挿入孔Hに挿入されて、軸部14が切替機構2に固定される。
【0041】
本実施形態では、バルブ21を移動エリアA2内で移動させる際にマイクロメータ4によってバルブ21の位置を調整するとともに、バルブ21を移動エリアB2内で移動させる際にソレノイドコイル3によってバルブ21の位置を調整できるよう、挿入孔Hの位置、軸部14の長さなどを調整しておく。具体的には、軸部14は、ピン部P、切替機構2の板状部材を介して軸部12に接続されるので、軸部14を軸方向に移動させると軸部12が軸部14と同様の移動を行う。
【0042】
つぎに、切替機構2の移動動作について説明する。まず、配管6Pから配管6Qへの排ガス流量を最大値(APC(Air Pressure Control)開度100%)〜0(APC開度0%)まで変化させる場合について説明する。
【0043】
排ガス流量が最大値の場合、切替機構2は、移動エリアB1の右端部に位置している。このとき、軸部14は、貫通孔31の奥深くまでに挿入された状態となっている。そして、挿入孔Hは、ピン部Pよりも左側に位置しており、ピン部Pは挿入孔Hに挿入されていない。
【0044】
この状態から、排ガス流量を減らす場合には、マイコン10Xからソレノイドコイル3に信号Bx(左側への移動指示)が送られる。これにより、ソレノイドコイル3は、切替機構2を、移動エリアB1内から移動エリアA1の方向に向けて移動させる。さらに、排ガス流量を所定量Xまで減らすために、切替機構2は、移動エリアB1と移動エリアA1の境界まで移動する。
【0045】
この時点で、マイコン10Xは、ソレノイドコイル3への信号Bxの送信を停止するとともに、切替機構2に対しピン部Pを挿入孔Hに挿入するよう指示を送る。これにより、ピン部Pは挿入孔Hに挿入される。その後、マイコン10Xは、モータMに信号Ax(左側への移動指示)を送信する。これにより、マイクロメータ4は、切替機構2を、移動エリアA1内の右端部から左端部に向けて移動させる。さらに、排ガス流量を0まで減らすために、切替機構2は、移動エリアA1の左端部まで移動する。
【0046】
つぎに、配管6Pから配管6Qへの排ガス流量を0〜最大値まで変化させる場合について説明する。排ガス流量が0の場合、切替機構2は、移動エリアA1の左端部に位置している。このとき、軸部14は、貫通孔31に挿入された状態となっており、挿入孔Hへはピン部Pが挿入されている。
【0047】
この状態から、排ガス流量を増やす場合には、マイコン10XからモータMに信号Ax(右側への移動指示)が送られる。これにより、マイクロメータ4は、切替機構2を、移動エリアA1内から移動エリアB1の方向に向けて移動させる。さらに、排ガス流量を所定量Xまで増やすために、切替機構2は、移動エリアA1と移動エリアB1の境界まで移動する。
【0048】
この時点で、マイコン10Xは、マイクロメータ4への信号Axの送信を停止するとともに、切替機構2に対しピン部Pを挿入孔Hから抜き取るよう指示を送る。これにより、ピン部Pは挿入孔Hから抜き取られる。その後、マイコン10Xは、ソレノイドコイル3に信号Bx(右側への移動指示)を送信する。これにより、ソレノイドコイル3は、切替機構2を、移動エリアB1内の左端部から右端部に向けて移動させる。さらに、排ガス流量を最大値まで増やすために、切替機構2は、移動エリアB1の右端部まで移動する。
【0049】
このように、切替機構2は、移動エリアA1,B1の境界位置で挿入孔Hへのピン部Pの出し入れを行う。具体的には、切替機構2が移動エリアA1から移動エリアB1へ移動する場合にピン部Pが挿入孔Hから抜き出され、切替機構2が移動エリアB1から移動エリアA1へ移動する場合にピン部Pが挿入孔Hに挿入される。
【0050】
例えば、ソレノイドバルブのみを用いた圧力制御では、半導体製造装置毎に圧力制御のばらつきを生じる場合がある。図4は、ソレノイドバルブを用いた圧力制御特性を示す図である。図4では、横軸がAPC開度であり、縦軸が炉内圧力(チャンバ内の圧力)である。ソレノイドバルブのみを用いてチャンバ内の圧力を制御した場合、APC開度(ゲート開度)が低い場合に、第1の半導体製造装置の圧力特性aと第2の半導体製造装置の圧力特性bとで異なる特性を示している。本実施形態では、APC開度が所定値よりも低い場合には、マイクロメータ4によって圧力を制御しているので、精密な圧力制御が可能となる。また、APC開度が所定値よりも高い場合には、ソレノイドコイル3によって圧力を制御しているので、高速な圧力制御が可能となる。
【0051】
なお、本実施形態では、切替機構2が円板状である場合について説明したが、切替機構2の形状は円板状に限らず何れの形状以上であってもよい。また、挿入孔Hの代わりに底面を有した筒状穴壁面としてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、軸部11〜13を同軸上に配置したが、軸部11,12と軸部13とは異なる軸上に配置してもよい。この場合も、軸部13の軸方向は、軸部11,12の軸方向と平行となるよう軸部14を設定しておく。
【0053】
また、バラトロンセンサSは、配管6Q内に配置してもよい。この場合、バラトロンセンサSは、配管6Q内のガス圧力を計測し、圧力制御装置1Xは、配管6Q内の圧力を制御する。
【0054】
また、半導体製造装置100において、圧力制御装置1Xをプロセスガス導入側の配管上に配置してもよい。また、ピン部Pは、切替機構2内に配置する場合に限らず、何れの位置に配置してもよい。
【0055】
このように第1の実施形態によれば、配管6P,6QのAPC開度が所定値よりも低い場合(配管6P内のガス圧力が所定値よりも低い場合)には、マイクロメータ4によって配管6P内の圧力を制御し、配管6P,6QのAPC開度が所定値よりも高い場合(配管6P内のガス圧力が所定値よりも高い場合)には、ソレノイドコイル3によって配管6P内の圧力を制御するので、精密かつ高速な圧力制御を行なうことが可能となる。
【0056】
(第2の実施形態)
つぎに、図5を用いてこの発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、ピン部Pを用いることなくソレノイドコイル3とマイクロメータ4を用いた圧力制御を行う。
【0057】
図5は、第2の実施形態に係る圧力制御装置の構成を示す図である。図5の各構成要素のうち図2に示す第1の実施形態の圧力制御装置1Xと同一機能を達成する構成要素については同一番号を付しており、重複する説明は省略する。
【0058】
圧力制御装置1Yは、圧力制御装置1Xと比較して、切替機構2の代わりに移動範囲限定部6を有し、マイコン10Xの代わりにマイコン10Yを有している。具体的には、圧力制御装置1Yは、筐体25と、軸部11〜14と、ソレノイドコイル3と、バルブ21と、真空シールド22と、移動範囲限定部6と、マイコン10Yと、マイクロメータ4と、モータMと、を備えている。
【0059】
移動範囲限定部6は、例えば、円板状の板状部材からなり、その主面が軸部12,13の軸方向と垂直になるよう、軸部12,13に接合されている。また、移動範囲限定部6は、軸部14には接合されていない。また、本実施形態のマイコン10Yは、バラトロンセンサSからの圧力値に基づいて、配管6P内が所定のガス圧力となるようソレノイドコイル3、モータMに指示を送る。
【0060】
本実施形態のマイコン10Yは、バルブ21を移動エリアC2内で移動させる際に、移動指示である信号Y1,Y2を、それぞれマイクロメータ4、ソレノイドコイル3に送信する。
【0061】
なお、本実施形態の移動エリアC2は、第1の実施形態で説明した移動エリアA2と移動エリアB2を合わせたエリアである。換言すると、移動エリアC2=移動エリア(A2+B2)である。同様に、移動範囲限定部6の移動エリアである移動エリアC1は、第1の実施形態で説明した移動エリアA1と移動エリアB1とを合わせたエリアである。換言すると、移動エリアC1=移動エリア(A1+B1)である。
【0062】
ソレノイドコイル3によるバルブ21(移動範囲限定部6)の位置制御は、マイクロメータ4に比べて粗くなっている。このため、本実施形態では、バルブ21を所望の位置に移動させるため、移動範囲限定部6をソレノイドコイル3によって移動させるとともに、移動範囲限定部6の移動範囲をマイクロメータ4によって制限する。
【0063】
具体的には、マイクロメータ4は、移動範囲限定部6の軸部13側の主面と、軸部14の先端部(マイクロメータ4と反対側の端部)14Yとが、移動範囲限定部6の移動先(移動予定位置)で衝突するよう、先端部14Yを予め衝突予定位置まで移動させておく。これにより、移動範囲限定部6は、先端部14Yによって先端部14Yよりも右方向への移動が遮られる。したがって、移動範囲限定部6の移動可能範囲が移動エリアC1内の左端から先端部14Yの位置までとなり、APC開度の範囲が制限されることとなる。
【0064】
つぎに、移動範囲限定部6の移動動作について説明する。移動範囲限定部6を先端部14Yよりも左側所定位置p1に移動させる必要が生じた場合には、マイコン10Yは、移動範囲限定部6を左側所定位置p1(図示せず)に移動させるための信号Y2をソレノイドコイル3に送信する。また、マイコン10Yは、移動範囲限定部6を左側所定位置p1に移動させるための信号Y1をモータMに送信する。これにより、先端部14Yが左側所定位置p1に移動する。
【0065】
そして、移動範囲限定部6は、先端部14Yよりも左側の位置で、ソレノイドコイル3による左側所定位置p1への位置制御が行われることとなる。なお、モータMへの信号Y1の送信と,ソレノイドコイル3への信号Y2の送信とは、何れを先に行ってもよく、また同時であってもよい。
【0066】
また、移動範囲限定部6を先端部14Yよりも右側所定位置p2(図示せず)に移動させる必要が生じた場合には、マイコン10Yは、移動範囲限定部6を右側所定位置p2に移動させるための信号Y1をモータMに送信する。そして、マイクロメータ4による移動範囲限定部6の移動が完了すると、マイコン10Yは、移動範囲限定部6を右側所定位置p2に移動させるための信号Y2をソレノイドコイル3に送信する。
【0067】
これにより、移動範囲限定部6は、先端部14Yよりも左側の位置で、ソレノイドコイル3による右側所定位置p2への位置制御が行われることとなる。なお、モータMへの信号Y1の送信と,ソレノイドコイル3への信号Y2の送信とは、何れを先に行ってもよく、また同時であってもよい。信号Y2の送信が先の場合にはマイクロメータ4の動作が移動範囲限定部6に伝わり、バルブ21のゲート開度が精密に調整される。
【0068】
このように、本実施形態では、先端部14Yよりも左側の狭い範囲で移動範囲限定部6を移動制御すればよいので、移動エリアC1の全体で移動範囲限定部6を移動制御する場合よりも、正確な位置制御を行うことが可能となる。
【0069】
ソレノイドコイル3を用いて移動範囲限定部6(バルブ21)を移動させる場合、移動範囲限定部6は、位置決めの大きな振幅(軸方向の揺れ)を有することとなる。このため、ソレノイドコイル3のみを用いて移動エリアC1内で移動範囲限定部6を移動させる場合、大きな振幅が原因で移動範囲限定部6の位置精度が悪くなる。一方、本実施形態では、先端部14Yよりも左側の狭い範囲で移動範囲限定部6を移動させるので、振幅が小さくなり、その結果、移動範囲限定部6の位置精度を向上させることが可能となる。したがって、バルブ21を精度良く制御でき、その結果、配管6P内のガス圧力を精密に制御できる。なお、マイクロメータ4を動作させて先端部14Yを移動範囲限定部6の稼働範囲外へ退避させても構わない。
【0070】
半導体装置(半導体集積回路)を製造する際には、種々の半導体製造装置でウェーハ処理が行われる。具体的には、成膜装置(半導体製造装置100など)によってウェハW上に膜が成膜され、レジスト塗布装置によってウェハにレジストを塗布する。そして、露光装置がマスクを用いてウェハに露光を行なう。その後、現像装置がウェハを現像してウェハ上にレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンをマスクとしてエッチング装置がウェハWの下層側をエッチングする。これにより、レジストパターンに対応する実パターンがウェハW上に形成される。半導体装置を製造する際には、成膜処理、レジスト塗布処理、露光処理、現像処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
【0071】
なお、軸部14の形状は棒状に限らず他の形状であってもよい。例えば、軸部14の形状を、軸部13を囲う筒状形状としてもよい。
【0072】
このように第2の実施形態によれば、先端部14Yによって移動範囲限定部6の移動範囲を限定したうえでソレノイドコイル3によってバルブ21を制御するので、簡易な構成で精密かつ高速にバルブ21を移動させることが可能となる。
【0073】
このように第1および第2の実施形態によれば、配管内のガス圧力を精密かつ高速に圧力制御を行なうことが可能となる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1X,1Y…圧力制御装置、2…切替機構、3…ソレノイドコイル、4…マイクロメータ、6…移動範囲限定部、6P,6Q…配管、10X,10Y…マイコン、11〜14…軸部、14Y…先端部、21…バルブ、31…貫通孔、100…半導体製造装置、A1〜C1,A2〜C2…移動エリア、H…挿入孔、P…ピン部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側ガス配管と下流側ガス配管との間のゲート開度を調整することによって前記上流側ガス配管内または前記下流側ガス配管内のガス圧力を調整するバルブと、
前記バルブに接続された第1の軸部と、
前記第1の軸部をソレノイド駆動によって軸方向に移動させることにより、前記第1の軸部を介して前記バルブのゲート開度を調整するソレノイド部と、
前記第1の軸部と軸方向が平行な第2の軸部に接続されるとともに、前記第2の軸部をねじ機構によって軸方向に移動させることにより、前記第1および第2の軸部を介して前記バルブのゲート開度を調整するマイクロメータと、
前記上流側ガス配管内または前記下流側ガス配管内のガス圧力が所望のガス圧力となるよう、前記ソレノイド部および前記マイクロメータを制御する制御部と、
前記制御部からの指示に基づいて、前記ソレノイド部によって前記バルブのゲート開度を調整させるか前記マイクロメータによって前記バルブのゲート開度を調整させるかの切替を行う切替部と、
を備えることを特徴とする圧力制御装置。
【請求項2】
前記切替部は、
前記ゲート開度が所定値以下の場合に、前記マイクロメータによって前記バルブのゲート開度を調整させ、前記ゲート開度が前記所定値よりも大きい場合に、前記ソレノイド部によって前記バルブのゲート開度を調整させる切替を行うことを特徴とする請求項1に記載の圧力制御装置。
【請求項3】
前記マイクロメータによって前記バルブのゲート開度を調整させる場合には、
前記第2の軸部の動作を前記第1の軸部に伝えることによって前記バルブのゲート開度を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の圧力制御装置。
【請求項4】
前記第1の軸部の軸方向に対しては前記第1の軸部とともに移動し、且つ前記第2の軸部に垂直な方向に移動可能なピン部をさらに備え、
前記切替部は、
前記第2の軸部に前記ピン部を挿入することにより前記第2の軸部と前記第1の軸部とを接続し、前記第2の軸部から前記ピン部を抜き出すことにより前記第2の軸部と前記第1の軸部との接続を解除する切替を行うことを特徴とする請求項3に記載の圧力制御装置。
【請求項5】
前記ピン部は、前記第1の軸部の軸方向に対して垂直な主面を有した板状部材内で移動し、
前記板状部材は、前記第1の軸部に接合されており、
前記切替部は、
前記板状部材と、前記ピン部と、を介して前記第2の軸部と前記第1の軸部とを接続することを特徴とする請求項4に記載の圧力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−233531(P2012−233531A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102123(P2011−102123)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】