説明

圧力型電気炊飯器

【課題】圧力型電気炊飯器の場合、沸とう維持工程において高い圧力をかけ続けると、ご飯表面の澱粉の水への溶け出しも促進されるため、ベタついたり水っぽさを感じるご飯に仕上がってしまう。
かと言って、ご飯の表面の状態を良好に保てる程度に加熱量又は加熱時間を抑えると、今度はご飯が硬めに仕上がったり、ふっくら感が出なかったりする問題が生じる。
【解決手段】そこで、この出願の発明においては、常圧に比べて高い高圧と、常圧に比べて相対的に高い中圧との複数のレベルの圧力を必要に応じて使い分けながら炊飯を実行し、圧力をかけない常圧状態を含めて、例えば3段階の圧力に内鍋3内の圧力を調節することにより、米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進する一方、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えてふっくらしたご飯を炊き上げることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ヒータや電磁誘導加熱手段などの電気的な加熱手段で加熱し、所定値以上の高圧力下で炊飯できるようにした圧力型電気炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定値以上の高圧力下で炊飯できる圧力型の電気炊飯器は、従来から知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような圧力型の電気炊飯器は、一般に蓋体側に内鍋内の圧力を所定の圧力に保つ調圧弁を備えた圧力調整機構および本体又は蓋体側に当該圧力調整機構を作動制御するマイコン式の制御手段などを装備している。従って、圧力調整機構の調圧弁が閉じていると、調圧弁による圧力調整によって常圧を上回る所定の高圧力を保った状態での効率的な炊飯ができ、炊飯時間を短縮し、また吸水のための浸漬工程を省略したり、かつ短くしても、芯の無い美味しいご飯が炊けるといった利点が生じる。
【0004】
一方、圧力調整機構の調圧弁が開いていると、内鍋内が大気に開放されるので、上記圧力調整機構は機能せず、通常の炊飯を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4602938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のように、内鍋内の圧力を高めて炊飯するようにした圧力型電気炊飯器の場合、沸とう維持工程において、常圧以上のやや高めの圧力をかけて炊飯することにより、米の内部まで水分と熱が浸透してβ澱粉のα化が促進され、比較的短時間でご飯の食味が向上するメリットがある。
【0007】
しかし、その反面、上記沸とう維持工程において高い圧力をかけ続けると、ご飯表面の澱粉の水への溶け出しも促進されるため、ベタついたり水っぽさを感じるご飯に仕上がってしまう問題があった。
【0008】
一方、かと言って、上記ご飯の表面の状態を良好に保てる程度に加熱量又は加熱時間を抑えると、今度はご飯が硬めに仕上がったり、ふっくら感が出なかったりする問題が生じる。
【0009】
この出願の発明は、そのような問題を解決するためになされたもので、例えば上記常圧よりも高い第1の圧力と、該第1の圧力よりも所定値以上高い第2の圧力とを必要に応じて使い分けながら炊飯を実行し、圧力をかけない常圧状態を含めて、少なくとも3段階の圧力に内鍋内の圧力を調節することにより、米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進しながら、しかも、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えて、ふっくらとした美味しいご飯を炊き上げることができるようにした圧力型電気炊飯器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、上記の目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0011】
(1) 請求項1の発明
この発明の圧力型電気炊飯器は、内鍋と、この内鍋を収容する内鍋収容口および内鍋加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の上記内鍋収容口の上部に開閉可能に設けられた蓋体と、この蓋体に設けられていて、同蓋体が閉じられた時に上記内鍋の開口部をシールするシール手段と、上記蓋体に設けられた圧力調整機構と、該圧力調整機構を作動制御する制御手段とを備えてなる圧力型電気炊飯器であって、上記圧力調整機構を少なくとも2組設け、沸とう維持工程においては、常圧よりも高い第1の圧力と、この第1の圧力よりも高い第2の圧力とを使い分けながら炊飯を行ない、常圧状態を含めて、少なくとも3段階の圧力に上記内鍋内の圧力を調節することにより、炊飯を行うようにしたことを特徴としている。
【0012】
このようにすると、加熱量又は加熱時間を抑えることなく、沸とう維持工程において、米の内部まで水分と熱を十分に浸透させて澱粉のα化を促進することができる一方、ご飯表面の澱粉の水への溶け出しが抑制され、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えて、ふっくらとした美味しいご飯を炊き上げることができるようになる。
【0013】
(2) 請求項2の発明
この発明の圧力型電気炊飯器は、上記請求項1の発明の構成において、沸とう維持工程は、最も高い第2の圧力で開始されるとともに、その後第1の圧力に減圧した上で、むらし工程に移行させるようになっている。
【0014】
このように、沸とう維持工程の前期、すなわち内鍋内に十分な量の水があり、かつ米の表面の澱粉のα化がまだ完全に行われていない段階では、最も高い第2の圧力状態に維持することによって米の内部まで十分に水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進するが、他方、澱粉のα化が進んだ沸とう維持工程の後期においては、それよりも低い第1の圧力状態に下げることによって、α化が進んだ澱粉の溶け出しを回避し、加熱量又は加熱時間を抑えることなくご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えて、ご飯の表面の状態を良好に保つ。
【0015】
(3) 請求項3の発明
この発明の圧力型電気炊飯器は、上記請求項1の発明の構成において、沸とう維持工程は、最も高い第2の圧力で開始されるとともに、その後、それよりも低い第1の圧力に減圧した後、再び上記第2の圧力に昇圧した上で、むらし工程に移行させるようになっている。
【0016】
このように、沸とう維持工程の前期、すなわち内鍋内に十分な量の水があり、かつ米の表面の澱粉のα化がまだ完全に行われていない段階では、最も高い第2の圧力状態に維持することによって米の内部まで十分に水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進するが、他方、ある程度澱粉のα化が進んだ沸とう維持工程の中期においては、それよりも低い第1の圧力状態に下げることによって、α化が進んだ澱粉の溶け出しを回避し、加熱量又は加熱時間を抑えることなくご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えて、ご飯の表面の状態を良好に保つ。
【0017】
そして、その後の沸とう維持工程の後期においては、再び最も高い第2の圧力状態に戻してドライアップするまで十分に加熱し、その後むらし工程へと進む。
【0018】
そして、例えばむらし工程において初めて常圧にすることで、上記沸とう維持工程後期からむらし工程前期の内鍋内のご飯全体の温度を常圧時よりも高くし、それによって、ご飯の甘みと張りを引き出し、より一層美味しいご飯が炊き上がるようにする。
【0019】
また、このように、最も高い第2の圧力で沸とう維持工程を開始した後に、内鍋内の圧力を一旦高圧から中圧に下げ、その後高圧に戻してご飯を炊き上げるようにすると、通常内鍋の下層に分布しているおねばを含む熱水が上層へと効果的に引き上げられて、米全体に満遍なく供給されるようになるので、ご飯の炊きムラを抑えることができ、より一肩ご飯の炊き上がりを向上させることが出来るようになる。
【0020】
(4) 請求項4の発明
この発明の圧力型電気炊飯器は、上記請求項1,2又は3の発明の構成において、第2の圧力状態に制御されている沸とう維持工程の前期において、所定短時間内第1の圧力状態に減圧するようになっている。
【0021】
このように、最も高い第2の圧力での沸とう維持工程(前期)の実行中に、内鍋内の圧力を高圧から中圧に所定短時間下げ、すぐに高圧に戻してご飯を炊き上げるようにすると、通常内鍋の下層に分布している熱水が上層へと効果的に引き上げられて、米全体に満遍なく供給されるようになるので、ご飯の炊きムラを抑えることができ、より一肩ご飯の炊き上がりを向上させることが出来るようになる。
【発明の効果】
【0022】
以上の結果、本願発明によると、十分な加熱量で、有効に飯米中のβ澱粉のα化を促進しながら、ご飯表面のベタツキを抑え、ふっくらとした美味しいご飯を炊き上げることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明の実施の形態1に係る圧力型電気炊飯器の全体的な構成を示す本体前後方向の平面図である。
【図2】同電気炊飯器の構成を示す本体前後方向の断面図(図1のA−A)である。
【図3】同電気炊飯器の本体左右方向の断面図(図1のB−B)である。
【図4】同電気炊飯器の蓋体内の構成を示す下板上面側の斜視図である。
【図5】同電気炊飯器の内カバー上面部に設けられている圧力調整用球体弁部分の構成を示す斜視図である。
【図6】同電気炊飯器の内カバー上面部に設けられた圧力調整用球体弁とそれに対応して下板側に固定された電磁ソレノイドよりなる2組の圧力調整機構の構成(対応関係)を示す斜視図である。
【図7】同電気炊飯器の内カバー上面部に設けられた圧力調整用球体弁とそれに対応して下板側に固定された電磁ソレノイドよりなる2組の圧力調整機構の構成(対応関係)を示す平面図である。
【図8】同電気炊飯器の圧力調整機構1側の拡大断面図(図7のD−D)である。
【図9】同電気炊飯器の圧力調整機構2側の拡大断面図(図7のC−C)である。
【図10】同電気炊飯器の圧力炊飯制御の内容を示すフローチャートである。
【図11】同電気炊飯器の圧力炊飯制御の内容を示すタイムチャートである。
【図12】本願発明の実施の形態2に係る電気炊飯器の圧力炊飯制御の内容を示すフローチャートである。
【図13】同電気炊飯器の圧力炊飯制御の内容を示すタイムチャートである。
【図14】本願発明の実施の形態3に係る電気炊飯器の圧力炊飯制御の内容を示すフローチャートである。
【図15】同電気炊飯器の圧力炊飯制御の内容を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
図1〜図11は、本願発明の実施の形態1に係る圧力型電気炊飯器の炊飯器の構成および炊飯制御シーケンスの内容を示している。
【0025】
<炊飯器本体および要部の構成>
先ず同電気炊飯器は、例えば内鍋として電磁誘導の可能な磁性金属板よりなるものが採用されている一方、炊飯時の加熱手段として、合成樹脂製の内ケースを介して当該内鍋の底壁部の全体を包み込むように、当該内鍋底壁部の中央部側と側方部側の2ケ所の全周に対応するワークコイルが設けられ、また保温時の加熱手段として、上記内鍋側壁部全周に対応する保温ヒータ、同内鍋の開口面部に対応する蓋ヒータ、炊飯時の圧力を常圧、中圧、高圧の3段階に調節するための2組の圧力調整機構(第1,第2の圧力調整機構)1,2等がそれぞれ設けられている。そして、それらによって、炊飯段階に応じて高圧状態又は中圧状態、常圧状態の3つの圧力状態が適切に使い分けられることにより、適切な炊飯機能を実現できるようになっている。
【0026】
すなわち、該電気炊飯器の炊飯器本体1は、例えば図1〜図3に示すように、内部に誘起されるうず電流によって自己発熱が可能な例えばステンレス鋼板等の磁性金属板よりなる内鍋(飯器)3と、該内鍋3を任意にセットし得るように形成された合成樹脂製の有底筒状の内ケース(保護枠)4と、該内ケース4を保持する外部筺体である筒状の外ケース1aおよび皿状の底ケース1bと、該外ケース1aおよび皿状の底ケース1bと上記内ケース4とを一体化して形成された炊飯器器体の上部に開閉可能に設けられた蓋体2とから構成されている。
【0027】
上記内ケース4の底壁部(底部)4aの下方側にはコイル台7が設けられ、その上部には、同図1および図3に示すように、フェライトコアを介し、上記内鍋3の底壁部3aの中央部側フラット面と側方部側アール面Rの両位置に対応して、各々リッツ線が相互に接触する程度の小さなピッチで同心状に巻成された第1,第2の2組のワークコイルL1,L2が、それら相互の間に所定の間隔を置いて、それぞれ内鍋3の底壁部3aの全体を包み込むように設けられており、通電時には内鍋3にうず電流を誘起して、その全体を略均一に加熱するようになっている。
【0028】
そして、該第1,第2のワークコイルL1,L2は、例えば相互に直列に接続され、連続するワークコイルユニットとして、その一端は整流回路および平滑回路を介した電源ラインに、また他端は図示しないIGBT(パワートランジスタ)のコレクタにそれぞれ接続されている。これら各回路やIGBTは、上記炊飯器本体1の後述する電源および制御基板6A上に設けられている。
【0029】
また、上記第2のワークコイルL2の上方の内ケース側壁部4bには、保温時において加熱手段として機能する保温ヒータが設けられており(図示省略)、炊飯時および保温時において上記内鍋3の側壁部3bの全周を有効かつ均一に加熱するようになっている。
【0030】
また上記外ケース1aは、例えば合成樹脂材で形成された上下方向に筒状のカバー部材により形成されており、該カバー部材の上端部は合成樹脂製の肩部材5が結合され、上述した炊飯器本体1の開口部外周縁を形成している。また、上記カバー部材の下端部には、上記合成樹脂製の底ケース1bが結合され、上記内ケース4の底壁部4aとの間に所定の広さの断熱および通風空間部を形成している。
【0031】
そして、上記内ケース4下方側の上記コイル台7の中央部には、上下方向に同心状に貫通したセンタセンサ収納空間部が形成されており、該センタセンサ収納空間部中に上下方向に昇降自在な状態で、かつ常時コイルスプリングにより上方に上昇付勢された状態で内鍋の温度を検知する温度センサ8を備えたセンタセンサが設けられている。
【0032】
上記外ケース1a、底ケース1b、内ケース4、肩部材5の各々は、高圧状態での炊飯がなされる圧力型炊飯器の特性を考慮して、十分な補強構造が採用されている。
【0033】
一方、符号2は蓋体であり、該蓋体2は、その上部側外周面を構成する合成樹脂製の上板21と、該上板21の内側(下側)に設けられた同じく合成樹脂製の下板22と、該下板22の本体部の内側(下側)にゴム製の第1のパッキン25を介して重合固定される蓋ヒータ(図示省略)を有する金属製の放熱板23と、該放熱板23の下方に設けられ、その外周縁24a部分に合成樹脂製の着脱可能な枠部材27を介してゴム製の第2のパッキン14が取り付けられている金属製の内カバー24とから形成されている。そして、耐圧力強度を高めるために、中心となる上記下板22本体部分の後端側外周22aをヒンジ機構12側に係止しているとともに、同下板22の本体部上面には、所定の板厚、所定の構造の金属製の補強板20aおよび多数の補強リブを左右および前後に亘って設けることにより、当該蓋ユニット2の全体を高強度の構造体に形成するようにしている。
【0034】
すなわち、上記下板22は、その本体部後端側外周22aの中間部分が上方に向けてコ字状に曲成され、内側にヒンジ機構12を収納しているとともに、その外周端側下降部22bはヒンジ機構12の後方をカバーしている。
【0035】
また、同下板22の後端側外周22aには、上記コ字状部の下方に位置してクランク状に延びるヒンジ機構12との連結部22cが設けられている。このヒンジ機構12との連結部22cは、本体側肩部材5方向に折り曲げられて、炊飯器本体側肩部材5の段部5b面上に臨まされている。
【0036】
そして、これら下板22後端部外周側22aの各部22b,22c部分を取付ブラケットとして、上記蓋体2は、その後端側を、上記外ケース1aおよび内ケース4よりなる炊飯器本体1上部の開口部を形成している肩部材5に対してヒンジ機構12を介して回動自在に取付けられており、その開放端側(前端側)には、該蓋体2の所定位置に係合して該蓋体2の上下方向への開閉を行うロックおよびロック解除機構13が設けられている。
【0037】
また、上記蓋体2の略中央部には、お粘成分を回収しながら蒸気のみを外部に逃がすとともに炊飯工程に応じて内鍋3内の圧力を常圧、中圧(第1の圧力)、高圧(第2の圧力)の3段階に調節する第1,第2の調圧ユニット26A,26Bが設けられている。
【0038】
この第1,第2の2組の調圧ユニット26A,26Bは、内鍋3内から外部に向けて迂回する第1,第2の2組の蒸気逃し通路40,40a〜40c、40,40a〜40cと同第1,第2の各蒸気逃し通路40,40a〜40c、40,40a〜40cに設けた2組の圧力調整機構1,2よりなっている。そして、同2組の圧力調整機構1,2は、上記第1,第2の蒸気逃し通路40,40a〜40c、40,40a〜40c各々の内カバー24、放熱板23部分の蒸気入口40,40の下流側(上方部)に位置して、例えば図5〜図9に示すように、重さおよび大きさの異なる第1,第2の球体弁B1(大),B2(小)を設け、同第1,第2の球体弁B1,B2による蒸気逃し通路の開閉によって上記の3段階に調圧圧力を設定するようになっている。
【0039】
これら第1,第2の球体弁B1,B2は、次に述べるように第1,第2の電磁ソレノイド(電磁プランジャ)ES1,ES2により電気的に選択して作動制御されるようになっている。
【0040】
上記圧力調整機構1の第1の球体弁(大)B1はその自重により約1.2〜1.4気圧程度(以下、高圧という)に調圧出来るものであり、また圧力調整機構2の第2の球体弁体(小)B2は、その自重により約1.03〜1.1気圧程度(以下、中圧という)に調圧出来るものである。
【0041】
すなわち、圧力調整機構1は第1の蒸気逃し通路40,40a〜40cの途中(上流部)に設けたバルブケーシングC1内の弁座V1の上部(凹溝部)に球体弁B1が着座する状態(通路閉状態)と同上部から逃げた状態(通路開状態)との2つの状態に駆動制御する電磁ソレノイドES1を備えて構成されており、第1の電磁ソレノイドES1がON作動することにより、上記高圧用の球体弁B1を蒸気抜き孔H1を有する弁座V1上に乗せる一方、ソレノイドES1がOFFすると、同第1の電磁ソレノイドES1に接続されたスライダーR1がパッキンP1を介して球体弁B1を略水平方向に押し、同球体弁B1を弁座V1の蒸気抜き孔H1から離脱させるように作動する(図8の矢印a.b参照)。
【0042】
他方、圧力調整機構2は、第2の電磁ソレノイドES2と、その作動ロッドR2、同作動ロッドR2によりスライドされるアングル状のプッシャーロッドR3と、このプッシャーロッドR3により下方側に押されて球体弁B2を押えるプッシャーR4と、プッシャー外周のパッキンP2、そしてプッシャーロッドR3を押し下げる方向に付勢するスプリングSPとから構成されており、電磁ソレノイドES2がONすると、スプリングSPにより作動ロッドR2、プッシャーロッドR3が水平方向のソレノイドES2に近づく方向に動き、プッシャーロッドR3の回転軸XとスプリングSPの作用でプッシャーR4が垂直方向下向きに摺勤し、パッキンP2を介して約1.05気圧用の球体弁B2が弁座V2の蒸気抜き孔H2に押しつけられる方向に荷重をかける。
【0043】
また第2の電磁ソレノイドES2がOFFすると、逆にプッシャーロッドR3がソレノイドES2から離れる方向に移動し、プッシャーロッドR3の回転軸Xを支点にプッシャーR4が垂直方向上向きに摺勤し、約1.05気圧用の球体弁B2はその自重によってのみ蒸気抜き孔H2を塞ぐことになる(図9の矢印a.b,c,d参照。
【0044】
なお、この圧力調整機構2の第2の電磁ソレノイドES2がONした時にプッシャーR4がパッキンP2を介して中圧用の球体弁B2を蒸気抜き孔H2側に押しつける時の荷重は、内鍋3内の圧力を1.2〜1.4気圧程度に上昇させ得る荷重に設定してあるため、この第2の電磁ソレノイドES2がONしている時には、中圧用の球体弁B2が内鍋3内の圧力を調整するために作用するので(リリーフ作用)、実際に内鍋3内に作用する圧力は約1.2気圧位が最大となる。
【0045】
これら2つの圧力調整機構1,2を組み合わせることで、次のように常圧を含む中圧、高圧の3つの圧力制御を実現することが出来る。
【0046】
(1)圧力調整機構1:OFFで、圧力調整機構2:OFFの時→常圧
(2)圧力調整機構1:ONで、圧力調整機構2:OFFの時→中圧
(3)圧力調整機構1:ONで、圧力調整機構2:ONの時→高圧
なお、上記蒸気逃し通路40,40a〜40cには、上記圧力調整機構とは別に沸とうセンサー(蒸気センサー)VSが設けられている。
【0047】
また、上記放熱板23の外周側は、上方側に略直角に曲成されて筒状壁に形成されているとともに、該筒状壁の一部(中間)を扁平に重合して半径方向外方に凸部を形成し、同凸部部分にゴム製の第1のパッキン25の基部を嵌合している。
【0048】
この第1のパッキン25の先端は、次に述べる内カバー24の外周縁部24aの上端に当接されるようになっている。
【0049】
上記内カバー24の外周縁部24aは、図2に示すように、クランク状に曲成されて、上下方向の筒状壁と該筒状壁の上端から半径方向外方に向けて水平に延びるフランジ部とが形成されている。
【0050】
そして、同筒状壁とフランジ部との間のコーナー空間を利用して、図2に示すように、ゴム製の第2のパッキン14が取り付けられている。この第2のパッキン14は、断面フック型形状の基部を合成樹脂製の固定用枠部材27の断面H型形状の基部に係合する形で固定されており、基部から下方に延びる筒状壁部が内カバー24の筒状壁部と平行になる形で嵌合されている。
【0051】
そして、同筒状壁部の下端からは、さらに半径方向外方に延びる所定の幅の水平部が設けられ、該水平部の外周端には、後述する内鍋3の開口部外周縁のフランジ部3c上面に当接する第1のシール片と同内鍋3開口部のネック部の内周面に当接する第2のシール片との2組のシール片14eが一体に設けられている。
【0052】
そして、このような構成の第2のパッキン14は、上述した枠部材27の基部部分とその外周の把手片部分を介して上記内カバー24の外周側クランク状の縁部24aの内側に係合固定することによって、図示のように固定されている。
【0053】
一方、上記蓋体2の上板21の前部中央には、当該炊飯器の操作部および表示部を構成する操作パネル嵌合用の開口部が、またその下部側の中板20部分には、同操作パネル嵌合用の凹溝部が形成されており、同開口部および凹溝部部分に上板21の外周面と連続する外周面を形成する形で、例えば透明なABS樹脂製の操作パネル(銘板)9が嵌合されてカバーされるようになっている。
【0054】
該操作パネル9は、そのパネル部裏側に所定の深さの基板および液晶パネル収納ボックスを備えてなり、圧力調整機構1,2の制御手段としてのマイコンを備えた第2の電気基板(マイコン基板)6Bおよび液晶パネルが上記上板21の開口部および中板20の凹溝部内に嵌合して収納されている。そして、その中央部には液晶パネル21の表示面に対応する透明窓を有するとともに、同透明窓の周囲に、タイマー炊飯用の炊飯予約スイッチSW1、炊飯スイッチSW2、保温スイッチSW3、取消スイッチSW4、炊飯メニュー(例えば白米、早炊き、おこわ、おかゆ、玄米その他のコースメニュー)を指定するメニュースイッチSW5、おこげ選択スイッチSW6、時計及びタイマーの時刻時・分設定スイッチSW7の各種操作キーが設けられている(図1を参照)。
【0055】
一方、炊飯器器体の開口部周縁を形成している上記肩部材5は、内周側から外周側にかけて、その内周壁5c側を上記内ケース4の側壁部4b上端に対して係合され、上記段部5bを形成している断面逆U字状の内鍋支持部と、該断面逆U字状の内鍋支持部の外周壁5aとの間に設けた係合凸部を上記外ケース1aの上端に係合している断面逆U字状の肩枠部とからなり、それらを相互に連続一体化して構成されている。
【0056】
さらに、上記合成樹脂製の外ケース1aの後部側は、平面視略H形の形状に成型されていて(図示省略)、図1に示すように、前後方向に平行な左右の側壁部間後部に位置して左右に延びる仕切壁61が設けられている。そして、この仕切壁61の左右両端側には、後方側から平面視略コ字形の外ケースカバー1cの側壁部前端が嵌合(係合)されるようになっている。
【0057】
上記外ケース1aの仕切壁61と上記内ケース4との間には、上記内ケース4側と仕切られる形で、シール性の高い電装品収納空間が形成されている。そして、この電装品収納空間内に、ワークコイルC1,C2、保温ヒータ等を駆動制御するIGBTやヒータ駆動回路、電源電圧整流用のダイオードブリッジよりなる整流回路、平滑回路などを備えた第1の電気基板(制御基板)6Aおよび該第1の電気基板6Aを保持した電気基板カバー(制御基板カバー)62が上下方向に立設する状態で設けられている。
【0058】
この第1の電気基板6A上には、IGBT等の発熱部品、その他の必要部品が設けられているとともに、接続用配線であるフレキシブルなフラットケーブルを介して、上述したする蓋体2側の第2の電気基板(マイコン基板)6Bが接続されている。
【0059】
上記電気基板カバー62は、例えば上記外ケース1a側の仕切壁61に対して着脱可能な状態で取り付けられるようになっていて、その下部側には内ケース4の下面側第1,第2のワークコイルC1,C2部分および第1の電気基板6Aのヒートシンク19の放熱フィン部分に冷却用の空気を流す送風ファン29が設けられている。
【0060】
この送風ファン29は、上下方向に開口した短筒状のファンケーシング内の送風通路に軸流ファンを備えて構成されているとともに、上記内ケース4aの底部側への吹出空気分流ダクトを備えて構成されている。なお、29aは底ケース側の空気吸込口である。
【0061】
<炊飯制御シーケンス>
すでに述べたように、炊飯工程実行中に内鍋3内の圧力を高めて炊飯するようにした圧力炊飯器の場合、沸とう維持工程においては、やや高めの圧力をかけて炊飯することにより、米の内部まで水分と熱が浸透して澱粉のα化が促進され比較的短時間でご飯の食味が向上する。
【0062】
しかし、沸とう維持工程において高い圧力をかけ続けると、ご飯表面の澱粉の水への溶け出しも促進されるため、ベタついたり水っぽさを感じるご飯に仕上がってしまう問題があった。
【0063】
また、ご飯の表面の状態を良好に保てる程度に加熱量又は加熱時間を抑えると、今度はご飯が硬めに仕上がったり、ふっくら感が出なかったりする問題が生じる。
【0064】
そこで、この出願の発明においては、常圧よりも相当に高い高圧と、常圧に比べて相対的に高い中圧を必要に応じて使い分けながら炊飯工程を実行し、圧力をかけない常圧を含めて、少なくとも3段階の圧力に内鍋3内の圧力を加減することにより、米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進するとともに、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えてふっくらしたご飯を炊き上げることができるようにしている。
【0065】
そして、この実施の形態では、その場合において、沸とう維持工程の前期、すなわち内鍋3内に十分な量の水があり且つ米の表面の澱粉のα化がまだ完全に行われていない段階で高圧を維持し、沸とう維持工程の中後期において中圧に維持することにより、米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進するとともに、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えてふっくらしたご飯を炊き上げることを効果的に実現できるようにしている。
【0066】
図10のフローチャートおよび図11のタイムチャートは、そのようにした圧力炊飯制御および同制御シーケンスの構成を示している。
【0067】
すなわち、該制御では、炊飯スイッチが押されて炊飯が開始されると、先ずステップS1で所定時間t1内「吸水工程」が実行される。そして、吸水が終ると、続いて「昇温工程」に入り、沸とう状態になるまで例えばフルパワーの高加熱出力で内鍋3を加熱昇温させる。この「昇温工程」は、上記フルパワーでの加熱開始後所定時間の内鍋温度の上昇幅から、内鍋3内の飯米の量(炊飯量)を判定する昇温工程1(合数判定工程:ステップS2)と、該昇温工程1での炊飯量の判定が終了した後、上述の沸とうセンサーVSが沸とう(蒸気)を検知(ステップS3)した後、やはりフルパワーでの加熱を継続することによって確実に沸とう状態に移行させる昇温工程2(ステップS4)とからなっており、昇温工程2では、上述した圧力調整機構1,2を一定時間内にともにONにし、外部との連通状態を遮断して内鍋3内の圧力を速かに上昇させる。
【0068】
その後、ステップS5で上記一定時間t2分の経過を判定し、YESになると、「沸とう維持工程」に進む。
【0069】
この「沸とう維持工程」は、沸とう状態を維持することによって、内鍋3内の米と水に十分に熱を通し、β澱粉のα化を図る工程であるが、この実施の形態の場合、最初の沸とう維持工程1(ステップS6)と沸とう維持工程1終了後ドライアップに到る沸とう維持工程2(ステップS8)との2つの工程からなっている。
【0070】
沸とう維持工程1では、上記圧力調整機構1,2共にONの状態を継続し、内鍋3内の圧力を高圧状態に維持し、米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進し、比較的短時間でご飯の食味が向上するようにする。
【0071】
しかし、沸とう維持工程において高い圧力をかけ続けると、ご飯表面の澱粉の水への溶け出しも促進されるため、ベタついたり水っぽさを感じるご飯に仕上がってしまう問題がある。
【0072】
また、ご飯の表面の状態を良好に保てる程度に加熱量又は加熱時間を抑えると、今度はご飯が硬めに仕上がったり、ふっくら感が出なかったりする問題が生じる。
【0073】
そこで、沸とう維持工程1では、上述のように圧力調整機構1,2共にONにし、高圧で沸とうさせるが、沸とう維持工程2では、上記低圧側の圧力調整機構1はONにしたままとするが、他方高圧側の圧力調整機構2はOFFにして、内鍋3内の圧力を中圧レベルに制御する。
【0074】
このように、常圧に比べて十分に高い高圧と、比較的高い中圧を必要に応じて使い分けながら炊飯工程を実行し、圧力をかけない常圧を含めて、少なくとも3段階の圧力に内鍋3内の圧力を加減すると、米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進することができるとともに、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えてふっくらしたご飯を炊き上げることができるようになる。
【0075】
このようにして沸とう維持制御を継続すると、やがて水分が少なくなって次第に内鍋3の温度が上昇してくる。
【0076】
そこで、次にステップS9で内鍋3の温度を検出し、同検出された温度が炊き上げ検知温度以上になった否かを判定する。
【0077】
その結果、YESになると、ご飯の炊き上げが完了したと判断して、ステップS10〜ステップS13の「むらし工程」に進む。
【0078】
この「むらし工程」も、「むらし工程1」と「むらし工程2」との2つの工程よりなり、「むらし工程1」では、高圧側圧力調整機構1をON(蒸気抜き孔H1とを閉)、高圧側圧力調整機構2をOFF(蒸気抜き孔H2とを開)にすることによって内鍋3内の圧力を1.05気圧程度の中圧状態に制御する。そして、同中圧状態で加熱量「弱」のむらは加熱制御を行ない、一定の時間t4分が経過してステップS11でYESと判定されると、「むらし工程2」に進む。
【0079】
この「むらし工程2」では、上記低圧側圧力調整機構1、低圧側圧力調整機構2を共にOFF(蒸気抜き孔H1,H2共に開)にし、内鍋3内を大気側に連通させた1.0気圧程度の常圧状態で、加熱量「弱」のむらし加熱制御を行う。
【0080】
そして、続くステップS13で同状態が一定時間t5分継続したことが判定されると、「むらし工程」が終了し、炊飯が完了したことを報知した上で、「保温工程」に移行する。
【0081】
なお、図11中のT0,T1〜T3は、各工程における内鍋3の温度を示している。
【0082】
なお、上述のように、蒸気逃し通路40,40a〜40c部分に常時開閉作動する圧力調整機構1,2を設けると、同通路がおねばで閉塞固定されるのを防止することができる。
【0083】
(実施の形2)
次に図12および図13は、本願発明の実施の形態2に係る圧力型電気炊飯器の炊飯制御シーケンス(そのフローチャートおよびタイムチャート)を示している。
【0084】
すでに述べたように、炊飯工程実行中に内鍋3内の圧力を高めて炊飯するようにした圧力炊飯器の場合、沸とう維持工程においては、上述のようにやや高めの圧力をかけて炊飯することにより、米の内部まで水分と熱が浸透して澱粉のα化が促進され、比較的短時間でご飯の食味が向上する。
【0085】
しかし、一方沸とう維持工程において高い圧力をかけ続けると、ご飯表面の澱粉の水への溶け出しも促進されるため、ベタついたり水っぽさを感じるご飯に仕上がってしまう問題があった。
【0086】
また、ご飯の表面の状態を良好に保てる程度に加熱量又は加熱時間を抑えると、今度はご飯が硬めに仕上がったり、ふっくら感が出なかったりする問題が生じる。
【0087】
そこで、この出願の発明においては、常圧に比べて十分に高い高圧と、常圧に比べて比較的高い中圧とを必要に応じて使い分けながら炊飯工程を実行し、圧力をかけない常圧(1.0気圧)を含めて、少なくとも3段階の圧力に内鍋3内の圧力を加減することにより、米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進する一方、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えてふっくらしたご飯を炊き上げることができるようにしている。
【0088】
そして、この実施の形態では、その場合において、特に沸とう維持工程の前期、すなわち内鍋3内に十分な量の水があり且つ米の表面の澱粉のα化がまだ完全に行われていない段階では、加熱量を中に落とした上で昇温工程の後期と同様の高圧を維持することによって米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進するが、沸とう維持工程の中期においては中圧に下げることによって、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑える。
【0089】
そして、さらに沸とう維持工程の後期において再び高圧に戻してドライアップするまで加熱し、そのままむらし工程へと進む。そして、むらし工程後期において初めて常圧にすることで、沸とう維持工程後期からむらし工程前期の内鍋3内のご飯全体の温度を常圧時よりも高くし、それによって、ご飯の甘みと張りを引き出し、より一層ご飯の炊き上がりを向上させることができるようにしている。
【0090】
図12のフローチャートおよび図13のタイムチャートは、そのようにした圧力炊飯制御の制御シーケンスを示している。
【0091】
すなわち、該制御では、炊飯スイッチが押されて炊飯が開始されると、先ずステップS1で所定時間t1分内「吸水工程」が実行される。そして、同吸水時間t1分が経過すると、続いて「昇温工程」に入り、沸とう状態になるまで例えばフルパワー(加熱量強)の高加熱出力で内鍋3を加熱昇温させる。この「昇温工程」は、上記フルパワーでの加熱開始後所定時間の内鍋温度の上昇幅から、内鍋3内の飯米の量(炊飯量)を判定する昇温工程1(合数判定工程:ステップS2)と、該昇温工程1での炊飯量の判定が終了した後、上述の沸とうセンサーVSが沸とう(蒸気)を検知(ステップS3)した後、やはりフルパワー(加熱量強)での加熱を継続することによって確実に沸とう状態に移行させる昇温工程2(ステップS4)とからなっており、昇温工程2では、上述した圧力調整機構1,2を一定時間t2分内共にON(蒸気抜き孔H1,H2共に閉)にし、外部との連通状態を遮断して内鍋3内の圧力を速やかに上昇させる。
【0092】
その後、ステップS5で上記一定時間t2分の経過を判定し、YESになると、「沸とう維持工程」に進む。
【0093】
この「沸とう維持工程」は、基本的には沸とう状態を維持することによって、内鍋3内の米と水に十分に熱を通し、β澱粉のα化を図る工程であるが、この実施の形態の場合、比較的時間の長い最初の沸とう維持工程1(ステップS6:t3分)と該沸とう維持工程1終了後ドライアップに到る前の中期における沸とう維持工程2(ステップS8:t4分)と、その後ドライアップまでの沸とう維持工程3(ステップS10)との3つの工程からなっている。
【0094】
沸とう維持工程1では、上記圧力調整機構1,2共にON(蒸気抜き孔H1,H2共に閉)の状態を継続し、内鍋3内の圧力を高圧状態に維持し、米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進し、比較的短時間でご飯の食味が向上するようにする。
【0095】
しかし、上述のように沸とう維持工程において高い圧力をかけ続けると、ご飯表面の澱粉の水への溶け出しも促進されるため、ベタついたり水っぽさを感じるご飯に仕上がってしまう問題がある。
【0096】
また、ご飯の表面の状態を良好に保てる程度に加熱量又は加熱時間を抑えると、今度はご飯が硬めに仕上がったり、ふっくら感が出なかったりする問題が生じる。
【0097】
そこで、沸とう維持工程1では、上述のように圧力調整機構1,2共にONにし、高圧で沸とうさせるが、その後の沸とう維持工程2(沸とう維持工程中期)では、上記高圧側の圧力調整機構1はON(蒸気抜き孔H1閉)にしたままとするが、他方低圧側の圧力調整機構2はOFF(蒸気抜き孔H2開)にして、内鍋3内の圧力を中圧レベルに下げて加熱制御する。そして、それによって、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑える。
【0098】
そして、沸とう維持工程の後期において高圧に戻してドライアップするまで加熱し、そのままむらし工程へと進む。そして、むらし工程後期において初めて常圧にすることで、沸とう維持工程後期からむらし工程前期の内鍋3内のご飯全体の温度を常圧時よりも高くすることができるようになるので、それによって、ご飯の甘みと張りを引き出し、より一層ご飯の炊き上げることができるようになる。
【0099】
上記のような沸とう維持工程を継続すると、やがて水分が少なくなって次第に内鍋3の温度が上昇してくる。
【0100】
そこで、次にステップS11で内鍋3の温度を検出し、同検出された温度が炊き上げ検知温度以上になった否かを判定する。
【0101】
その結果、YESになると、ご飯の炊き上げが完了したと判断して、上述のようにステップS12〜ステップS15の「むらし工程」に進む。
【0102】
この「むらし工程」も、「むらし工程1」と「むらし工程2」との2つの工程よりなり、「むらし工程1」では、高圧側圧力調整機構1をON(蒸気抜き孔H1を閉)、高圧側圧力調整機構2をON(蒸気抜き孔H2を閉)にすることによって内鍋3内の圧力を高圧状態に制御する(高圧状態を継続)。そして、同高圧状態で加熱量「弱」のむらし加熱制御を行ない、一定の時間t5分が経過してステップS13でYESと判定されると、「むらし工程2」に進む。
【0103】
この「むらし工程2」では、上記低圧側圧力調整機構1、低圧側圧力調整機構2を共にOFF(蒸気抜き孔H1,H2共に開)にし、内鍋3内を大気側に連通させた1.0気圧程度の常圧状態で、加熱量「弱」のむらし加熱制御を行う。
【0104】
そして、続くステップS13で同状態が一定時間t6分継続したことが判定されると、「むらし工程」が終了し、炊飯が完了したことを報知した上で、「保温工程」に移行する。
【0105】
このように、圧力炊飯時にも、常圧に比べて相当に高い高圧と、相対的に高い中圧とを必要に応じて使い分けながら全体としての沸とう維持工程を実行し、圧力をかけない常圧を含めて、少なくとも3段階の圧力に内鍋3内の圧力を加減すると、米の内部まで水分と熱を浸透させてβ澱粉のα化を促進することができるとともに、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えて、ふっくらとした美味してご飯を炊き上げることができるようになる。
【0106】
そして、この実施の形態では、その場合において、特に沸とう維持工程の前期、すなわち内鍋3内に十分な量の水があり且つ米の表面の澱粉のα化がまだ完全に行われていない段階では、かりを中に落とした上で昇温工程の後期と同様の高圧を維持することによって米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進するが、沸とう維持工程の中期においては中圧状態に下げることによって、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑える。
【0107】
そして、沸とう維持工程の後期において再び高圧に戻してドライアップするまでの加熱し、そのままむらし工程へと進む。そして、むらし工程後期において初めて常圧にすることで、沸とう維持工程後期からむらし工程前期の内鍋3内のご飯全体の温度を常圧時よりも高くすることができるようにしているので、それによって、ご飯の甘みと張りを引き出し、より一層ご飯を炊き上げることができるようになる。
【0108】
(実施の形態3)
次に図14および図15は、本願発明の実施の形態3に係る圧力型電気炊飯器の炊飯制御シーケンス(そのフローチャートおよびタイムチャート)を示している。
【0109】
すでに述べたように、炊飯工程実行中に内鍋3内の圧力を高めて炊飯するようにした圧力炊飯器の場合、沸とう維持工程においては、上述のように高めの圧力をかけて炊飯することにより、米の内部まで水分と熱が浸透して澱粉のα化が促進され、比較的短時間でご飯の食味が向上する。
【0110】
しかし、一方沸とう維持工程において高い圧力をかけ続けると、ご飯表面の澱粉の水への溶け出しも促進されるため、ベタついたり水っぽさを感じるご飯に仕上がってしまう問題があった。
【0111】
また、ご飯の表面の状態を良好に保てる程度に加熱量又は加熱時間を抑えると、今度はご飯が硬めに仕上がったり、ふっくら感が出なかったりする問題が生じる。
【0112】
そこで、この出願の発明においては、上述のように常圧よりも高い第1の圧力(中圧)と、該第1の圧力よりも高い第2の圧力(高圧)とを必要に応じて使い分けながら炊飯工程を実行し、圧力をかけない常圧(1.0気圧)を含めて、少なくとも3段階の圧力に内鍋3内の圧力を加減することにより、米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進する一方、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えてふっくらしたご飯を炊き上げることができるようにしている。
【0113】
そして、この実施の形態では、その場合において、上述した実施の形態2のものと同じく、沸とう維持工程の前期、すなわち内鍋3内に十分な量の水があり且つ米の表面の澱粉のα化がまだ完全に行われていない段階では、加熱量を中に落とした上で昇温工程の後期と同様の高圧を維持することによって米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進するが(t3分内)、その途中で所定時間Δt秒内圧力調整機構2のみを一時的にOFFにして低中圧状態に下げる工程を設けている。そして、さらに、その後の沸とう維持工程の中期においては、所定時間t4分内中圧に下げることによって、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑える。
【0114】
そして、その後、さらに沸とう維持工程の後期において再び高圧状態に戻してドライアップするまで加熱し、そのまま高圧状態でむらし工程へと進む。そして、むらし工程でも前期の工程(t5分)では同様の高圧状態を維持させるが、むらし工程後期において初めて常圧にすることで(圧力調整機構1,2共にOFF)、沸とう維持工程後期からむらし工程前期の内鍋3内のご飯全体の温度を常圧時よりも高くし、それによって、ご飯の甘みと張りを引き出し、より一層ご飯の炊き上がりを向上させることができるようにしている。
【0115】
図14のフローチャートおよび図15のタイムチャートは、そのようにした圧力炊飯制御の制御シーケンスを示している。
【0116】
すなわち、該制御では、炊飯スイッチが押されて炊飯が開始されると、先ずステップS1で所定時間t1分内「吸水工程」が実行される。そして、同吸水時間t1分が経過すると、続いて「昇温工程」に入り、沸とう状態になるまで例えばフルパワー(加熱量強)の高加熱出力で内鍋3を加熱昇温させる。
【0117】
この「昇温工程」は、上記フルパワーでの加熱開始後所定時間の内鍋温度の上昇幅から、内鍋3内の飯米の量(炊飯量)を判定する昇温工程1(合数判定工程:ステップS2)と、該昇温工程1での炊飯量の判定が終了した後、上述の沸とうセンサーVSが沸とう(蒸気)を検知(ステップS3)した後、やはりフルパワー(加熱量強)での加熱を継続することによって確実に沸とう状態に移行させる昇温工程2(ステップS4)とからなっており、昇温工程2では、上述した圧力調整機構1,2を一定時間t2分内共にON(蒸気抜き孔H1,H2共に閉)にし、外部との連通状態を遮断して内鍋3内の圧力を速やかに上昇させる。
【0118】
その後、ステップS5で上記一定時間t2分の経過を判定し、YESになると、「沸とう維持工程」に進む。
【0119】
この「沸とう維持工程」は、基本的には沸とう状態を維持することによって、内鍋3内の米と水に十分に熱を通し、β澱粉のα化を図る工程であるが、この実施の形態の場合、比較的時間の長い最初の沸とう維持工程1(ステップS6:t3分)と該沸とう維持工程1終了後ドライアップに到る前の中期における沸とう維持工程2(ステップS8:t4分)と、その後ドライアップまでの沸とう維持工程3との3つの工程からなっている。
【0120】
沸とう維持工程1では、加熱量を強から中に下げるが、上記圧力調整機構1,2共にON(蒸気抜き孔H1,H2共に閉)の状態を継続し、内鍋3内の圧力を例えば1.25気圧程度の高圧状態に維持し、米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進し、比較的短時間でご飯の食味が向上するようにする。
【0121】
しかし、上述のように沸とう維持工程において高い圧力をかけ続けると、ご飯表面の澱粉の水への溶け出しも促進されるため、ベタついたり水っぽさを感じるご飯に仕上がってしまう問題がある。
【0122】
また、ご飯の表面の状態を良好に保てる程度に加熱量又は加熱時間を抑えると、今度はご飯が硬めに仕上がったり、ふっくら感が出なかったりする問題が生じる。
【0123】
そこで、沸とう維持工程1では、加熱量を中にしながらも、上述のように圧力調整機構1,2共にONにし、高圧状態で沸とうさせるが、この実施の形態では、この高圧での沸とう維持工程1(前期)の実行中に、内鍋3内の圧力を高圧から中圧に一定時間Δt秒間(数秒間)だけ下げ、すぐに高圧状態に戻してご飯を炊き上げるようにする(ステップS8)。
【0124】
このように、高圧状態の沸とう維持工程1の途中で内鍋3内の圧力を高圧状態から中圧状態に短時間(例えば数秒間)下げるようにすると、通常内鍋3の下層に分布している熱水が上層へと効果的に引き上げられて、米全体に満遍なく供給されるようになるので、ご飯の炊きムラを抑えることができ、より一肩ご飯の炊き上がりを向上させることが出来る。
【0125】
そして、ステップS9でYESの同沸とう維持工程1での圧抜き工程時間t3分が過ぎた、その後の沸とう維持工程2(沸とう維持工程中期)では、上記高圧側の圧力調整機構1はON(蒸気抜き孔H1閉)にしたままとするが、他方低圧側の圧力調整機構2はOFF(蒸気抜き孔H2開)にして、内鍋3内の圧力を中圧レベルに下げて、所定時間t4分内加熱制御する(ステップS10,S11)。そして、それによって、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑える。
【0126】
そして、ステップS11でYESとなった沸とう維持工程の後期3(ステップS12)において、再び高圧に戻してドライアップするまで加熱する。
【0127】
このような沸とう維持工程3を継続すると、やがて水分が少なくなって次第に内鍋3の温度が上昇してくる(ドライアップする)。
【0128】
そこで、次にステップS13で内鍋3の温度を検出し、同検出された温度が炊き上げ検知温度以上になった否かを判定する。
【0129】
その結果、YESになると、ご飯の炊き上げが完了したと判断して、ステップS12〜ステップS17の「むらし工程」に進む。
【0130】
この「むらし工程」も、「むらし工程1」と「むらし工程2」との2つの工程よりなり、この実施の形態の「むらし工程1」では、高圧側圧力調整機構1をON(蒸気抜き孔H1を閉)、低圧側圧力調整機構2もON(蒸気抜き孔H2も閉)にすることによって(継続することによって)、内鍋3内の圧力を高圧状態に制御する。そして、同高圧状態で加熱量「弱」のむらし加熱制御を行ない、一定の時間t5分が経過してステップS15でYESと判定されると、「むらし工程2」に進む。
【0131】
この「むらし工程2」では、上記低圧側圧力調整機構1、高圧側圧力調整機構2を共にOFF(蒸気抜き孔H1,H2共に開)にし、内鍋3内を大気側に連通させた1.0気圧程度の常圧状態で、加熱量「弱」のむらし加熱制御を行う。
【0132】
そして、該むらし工程後期において初めて常圧に戻すことで、沸とう維持工程後期からむらし工程前期における内鍋3内のご飯全体の温度を最初から常圧時の場合よりも高くすることができるようになるので、それによって、ご飯の甘みと張りを引き出し、より一層ご飯の炊き上げることができるようになる。
【0133】
そして、続くステップS17で同常圧状態でのむらし加熱状態が一定時間t6分継続したことが判定されると、「むらし工程」が終了し、炊飯が完了したことを報知した上で、「保温工程」に移行する。
【0134】
このように、圧力炊飯時にも、それぞれ常圧よりも高い高圧と、中圧とを必要に応じて使い分けながら全体としての沸とう維持工程を実行し、圧力をかけない常圧を含めて、少なくとも3段階の圧力に内鍋3内の圧力を加減すると、米の内部まで水分と熱を浸透させてβ澱粉のα化を促進することができるとともに、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑えて、ふっくらとした美味してご飯を炊き上げることができるようになる。
【0135】
そして、この実施の形態では、その場合において、特に沸とう維持工程の前期、すなわち内鍋3内に十分な量の水があり且つ米の表面の澱粉のα化がまだ完全に行われていない段階では、加熱量を中に落とした上で昇温工程の後期と同様の高圧を維持することによって米の内部まで水分と熱を浸透させて澱粉のα化を促進するが、沸とう維持工程の中期においては相対的に低い中圧に下げることによって、ご飯の表面のベタつきや水っぽさを抑える。
【0136】
そして、沸とう維持工程の後期において再び高圧に戻してドライアップするまで加熱し、そのまま同じ高圧状態で、むらし工程の前期へと進む。そして、むらし工程後期において初めて常圧にすることで、沸とう維持工程後期からむらし工程前期の内鍋3内のご飯全体の温度を常圧時よりも高くすることができるようにしているので、それによって、ご飯の甘みと張りを引き出し、より一層ご飯を炊き上げることができるようになる。
【0137】
しかも、この実施の形態では、上述のように、上記実施の形態2と同様の高圧での上記沸とう維持工程1(前期)の実行中に、内鍋3内の圧力を高圧から中圧に一定時間Δt秒間(数秒間)だけ下げ、すぐに高圧状態に戻してご飯を炊き上げるようにしている。
【0138】
このように、高圧状態の沸とう維持工程1の途中で内鍋3内の圧力を高圧状態から中圧状態に短時間(例えば数秒間)下げるようにすると、通常内鍋3の下層に分布している熱水が上層へと効果的に引き上げられて、米全体に満遍なく供給されるようになるので、ご飯の炊きムラを抑えることができ、より一肩ご飯の炊き上がりを向上させることが出来る。
【符号の説明】
【0139】
1は炊飯器本体、2は蓋体、3は内鍋、4は内ケース、L1,L2はワークコイルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内鍋と、この内鍋を収容する内鍋収容口および内鍋加熱手段を有する炊飯器本体と、この炊飯器本体の上記内鍋収容口の上部に開閉可能に設けられた蓋体と、この蓋体に設けられていて、同蓋体が閉じられた時に上記内鍋の開口部をシールするシール手段と、上記蓋体に設けられた圧力調整機構と、該圧力調整機構を作動制御する制御手段とを備えてなる圧力型電気炊飯器であって、上記圧力調整機構を少なくとも2組設け、沸とう維持工程においては、常圧よりも高い第1の圧力と、この第1の圧力よりも高い第2の圧力とを使い分けながら炊飯を行ない、常圧状態を含めて、少なくとも3段階の圧力に上記内鍋内の圧力を調節することにより、炊飯を行うようにしたことを特徴とする圧力型電気炊飯器。
【請求項2】
沸とう維持工程は、最も高い第2の圧力で開始されるとともに、その後第1の圧力に減圧した上で、むらし工程に移行させるようになっていることを特徴とする請求項1記載の圧力型電気炊飯器。
【請求項3】
沸とう維持工程は、最も高い第2の圧力で開始されるとともに、その後、それよりも低い第1の圧力に減圧した後、再び上記第2の圧力に昇圧した上で、むらし工程に移行させるようになっていることを特徴とする請求項1記載の圧力型電気炊飯器。
【請求項4】
第2の圧力状態に制御されている沸とう維持工程の前期において、所定短時間内第1の圧力状態に減圧するようになっていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の圧力型電気炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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