説明

圧力水噴射式ポンプシステム

【課題】サイフォンの原理を利用することで低揚程の出力の小さな加圧水ポンプの利用により運転動力の低減による省エネルギ化を図るようにした圧力水噴射式ポンプシステムを提供すること。
【解決手段】沈砂池S内に設置し、加圧水ポンプ5からの圧力水を供給するようにした圧力水噴射式ポンプ1と、水面上方に配置した分離タンク2とを揚水管3及び排水管4にて接続し揚砂するようにした圧力水噴射式ポンプシステムにおいて、配管管路全体の内部に水が充満した状態を保つように分離タンク2からの排水管4の吐出口41を常に水没する位置に配設して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力水噴射式ポンプシステムに関し、特に、下水道のポンプ場、処理場等の沈砂池において、圧力水噴射式ポンプの配管管路内部を水密化することでサイフォンの原理を利用して低揚程で出力の小さな加圧水ポンプの使用を可能とし、運転動力の低減による省エネルギ化と効率的な揚砂を可能とした圧力水噴射式ポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理においては、その下水ポンプ場や処理場に汚水と共に汚砂が、特に降雨時等においては多量に流入するため、汚水処理の前工程として流入する汚砂を沈殿除去するようにしている。この沈砂池で沈殿した砂を除去する方法として揚砂システムがある。
この揚砂システムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、図3に示すように、圧力水噴射式ポンプを用いたシステムが採用されている。
【0003】
この圧力水噴射式ポンプ1を用いた揚砂システムは、沈砂池S内に設置し、加圧水ポンプ5から高圧水を供給するようにした圧力水噴射式ポンプ1と、該沈砂池Sの水面上方に配置し、下端が常に開口した排出口21とした分離タンク2(サイクロン式分離装置)間を揚砂するための揚水管3にて接続し、かつ該分離タンク内で分離された分離水を再度沈砂池内へ戻す排水管4を配設して構成している。
このため、汚泥物質を含んだ沈砂は密閉された配管内を輸送されるため、悪臭の問題がなく設置スペースも小さくすることができるとともに、自動運転が可能で運転管理が容易である等の利点を有している。
【0004】
ところで、従来の圧力水噴射式ポンプシステムは、図3に示すように、圧力水噴射式ポンプ1の揚程としては沈砂池水面位置(揚水面)から揚砂の固液を分離する分離タンク2の分離水排水管上端(最高点)までのいわゆる実揚程が高くなるとともに、揚砂する管路における分離タンク2の排出口21及び分離タンクに接続した排水管先端の吐出口42が常に気中に開放されているため、圧力水噴射式ポンプ1へ圧力水を供給する加圧水ポンプ5として、実揚程とシステム全体の損失を加算した揚程以上の能力が必要とされるので、高揚程で出力が大きなポンプが必要とされ、したがって、ランニングコストが高くなり、最近の省エネルギ化に反するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の圧力水噴射式ポンプシステムの有する問題点に鑑み、サイフォンの原理を利用することで低揚程の出力の小さな加圧水ポンプの利用により運転動力の低減による省エネルギ化を図るようにした圧力水噴射式ポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の圧力水噴射式ポンプシステムは、沈砂池内に設置し、加圧水ポンプからの圧力水を供給するようにした圧力水噴射式ポンプと、水面上方に配置した分離タンクとを揚水管及び排水管にて接続し揚砂するようにした圧力水噴射式ポンプシステムにおいて、配管管路全体の内部に水が充満した状態を保つように分離タンクからの排水管の吐出口を常に水没する位置に配設して構成したことを特徴とする。
【0007】
この場合において、分離タンクの排出口に、配管管路全体内の水密を保持するための弁を配設することができる。
【0008】
また、分離タンクに接続する排水管の下端吐出口を、沈砂池の水面下で圧力水噴射式ポンプの吸込口近傍に配設することができる。
【0009】
また、加圧水ポンプを、揚砂運転状況に合わせて可変的に駆動することができる。
【0010】
また、加圧水ポンプの可変的駆動を、高揚程と低揚程の2台の加圧水ポンプの切り替えにて行うようにすることができる。
【0011】
また、分離タンクの下方位置に、沈殿物分離機を配設することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧力水噴射式ポンプシステムによれば、沈砂池内に設置し、加圧水ポンプからの圧力水を供給するようにした圧力水噴射式ポンプと、水面上方に配置した分離タンクとを揚水管及び排水管にて接続し揚砂するようにした圧力水噴射式ポンプシステムにおいて、配管管路全体の内部に水が充満した状態を保つように分離タンクからの排水管の下端を常に水没する位置に配設して構成することにより、サイフォンの原理を利用できるので、揚水運転中はシステム全体の水位損失以上の揚程があればよく、低揚程で出力が小さな加圧水ポンプで使用することができ、運転動力の低減による省エネルギ化を図ることができる。
【0013】
また、分離タンクの排出口に、配管管路全体内の水密を保持するための弁を配設することにより、揚水運転中の配管管路全体内の水密保持及び沈殿物の排出動作を弁の開閉操作のみにて簡易に行うことができる。
【0014】
また、分離タンクに接続する排水管の下端吐出口を、沈砂池の水面下で圧力水噴射式ポンプの吸込口近傍に配設することにより、排水管下端より吐出される戻り水の吐出圧にて池底に沈殿する沈砂などの沈殿物を掘削、攪乱するようになり、従来圧力水噴射式ポンプの吸込口近くに設けていた圧力水の噴射ノズルが不要となり、装置が簡易になるとともに、用水と動力の低減を図ることができる。
【0015】
また、加圧水ポンプを、揚砂運転状況に合わせて可変的に駆動することにより、同一の加圧水ポンプで揚程の違いに簡易に対応することができ、省エネルギの揚水運転を可能とすることができる。
【0016】
また、加圧水ポンプの可変的駆動を、高揚程と低揚程の2台の加圧水ポンプの切り替えにて行うようにすることにより、起動時は高揚程大出力の加圧水ポンプを、定常揚水運転中は、低揚程小出力の加圧水ポンプを使用することにより、省エネルギの揚水運転を可能とすることができる。
【0017】
また、分離タンクの下方位置に、沈殿物分離機を配設することにより、分離タンク内に貯留されていた多量の水分を含んだ取扱い、処分が難しい沈殿物でも沈殿物分離機で所要の水切りをしながら排出ホッパ等の貯留設備へ自動排出処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の圧力水噴射式ポンプシステムの一実施例を示す説明図である。
【図2】分離タンクの断面説明図である。
【図3】従来の圧力水噴射式ポンプシステムを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の圧力水噴射式ポンプシステムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1〜図2に、本発明の圧力水噴射式ポンプシステムの一実施例を示す。
この圧力水噴射式ポンプシステムは、下水処理場等の沈砂池S内で、かつ該池内に沈殿した沈砂を揚水管にて揚砂するように設置し、加圧水ポンプ5からの圧力水を供給するようにした圧力水噴射式ポンプ1と、沈砂池Sの水面上方位置に配設した分離タンク2(サイクロン式分離装置)間を揚水管3にて接続して構成する。
そして、この揚水管3より分離タンク2を介して接続する排水管4の下端の吐出口41を、常に沈砂池内の水面下に水没させるように配設することにより、運転時はシステムの配管、機器を水密化し、揚水管3、分離タンク2、排水管4よりなる配管管路内部に水が充満した常態に保つことができるので、サイフォンの原理を利用でき、揚水運転中はシステム全体の水位損失以上の揚程があればよく、加圧水ポンプ5は低揚程で出力が小さなポンプで済む利点がある。
また、揚水管3と排水管4との接続部に分離タンク2を設けることにより、揚水中の固形物、例えば、沈砂池からの砂等を低動力で揚砂し、分離することができる。なお、この場合、1基の分離タンク2に対して複数台の圧力水噴射式ポンプ1を揚水管3を介して接続し、かつ各圧力水噴射式ポンプからの揚水管に配設した吐出弁6を順次切り替えて運転することで各池での揚砂を簡易な装置で順次効率的に行うことができる。
【0021】
圧力水噴射式ポンプ1は、その吸込口11を池底の沈砂を吸い上げやすいように配置し、上端に揚水管3を接続するとともに、該圧力水噴射式ポンプ稼動用の加圧水を供給する加圧水ポンプ5からの加圧水供給管51を、望ましくは開閉弁52を介して接続する。
【0022】
分離タンク2には、図1〜図2に示すように、圧力水噴射式ポンプ1に接続された揚水管3の先端部を円筒形の分離タンク2の上部外周面に、かつ分離タンク断面円形の接線方向に接続し、流入水が分離タンク2の内壁面に沿って旋回流を起こさせるようにし、このサイクロン効果で揚水中の水と砂の重力差を利用して固液分離を効率よく行うようにし、かつ分離物の砂の排出を容易に行えるように分離タンク2の下部を逆円錐形とし、その排出口に揚水管内の水密を保持するための弁7を配設する。
【0023】
また、分離タンク内でサイクロン効果にて分離された水は、分離タンク上部に配設された排水管4にて排水するが、この排水管4の下端の吐出口41は、図1に示すように、沈砂池Sの水面下で水没するようにし、これにより圧力水噴射式ポンプ1の配管管路全体の内部に水が充満した常態に保って水密化することでサイフォンの原理を利用できるようにする。
なお、この排水管下端の吐出口41を圧力水噴射式ポンプ1の吸込口11近傍となるように配置する。これにより、排水管下端より吐出される戻り水の吐出圧にて池底に沈殿する沈砂などの沈殿物を掘削、攪乱するようになり、従来圧力水噴射式ポンプの吸込口近くに圧力水の噴射ノズルを設け、底部の沈殿物を掘削し攪乱しながら揚水するようにしていたが、この掘削、攪乱用の掘削ノズルが不要となり、装置が簡易になるとともに、用水と動力の低減を図り、効率的に揚砂することができる。
【0024】
また、分離タンク内で分離し、底部に貯まった砂などの沈殿固形物は、濃度高く濃縮されてはいるが未だ多量の水を含んでおり、そのままの高含水の状態では取扱い、処分が難しいので、沈殿固形物から水を分離するための沈殿物分離機8を設ける。この沈殿物分離機8は、分離タンク排出端の下方位置に配設し、分離タンク内で沈殿した砂などの沈殿物を水切りして排出するようにする。
【0025】
この沈殿物分離機8は、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すように、分離槽81内に固形物を水切りしつつ掻き揚げるためのスクリューコンベア82を傾斜して配設して構成し、該分離槽81内で分離された水は槽上部からオーバーフローにて排水し、槽底に沈殿する砂を該スクリューコンベア82の駆動にて掻き揚げ、下方に設置した排出ホッパ9内へ排出するようにする。
これにより、圧力水噴射式ポンプシステムを一定時間揚水運転し、分離タンク2で分離した固形物が所定量貯留されたころ、圧力水噴射式ポンプ1を停止し、分離タンク下部の弁7を開いて沈殿物を沈殿物分離機内に排出するようにするため、多量の水分を含んだ取扱い、処分が難しい沈殿物でも、ここで所要の水切りをしながら排出ホッパ9等の貯留設備へ自動排出することができる。
【0026】
加圧水ポンプ5の駆動にて圧力水噴射式ポンプ1に圧力水を供給するが、この場合、起動時システム内の揚水配管及び機器内に水が充満するまでの間は、圧力水噴射式ポンプに圧力水を供給する加圧水ポンプは高い揚程を必要とする。しかし、配管管路内が満水するとその後はシステムの水位損失以上の低い揚程でよい。
本発明では圧力水噴射式ポンプの配管管路全体の内部に水を充満させ水密化することでサイフォンの原理を利用できる。
したがって、水噴射式ポンプの駆動開始時には定量の加圧水を供給するために加圧水ポンプを駆動し、配管管路内の揚水が安定する継続運転時(揚砂運転中)ではシステム全体の水位損失以上の揚程(低揚程)があればよく、加圧水ポンプの出力を小さくすることができるので、加圧水ポンプの出力を可変式とすることができる。
この加圧水ポンプの出力可変は、特に限定されるものではないが、例えば、加圧水ポンプを回転数可変速駆動とすることも、或いは加圧水ポンプとして高揚程のポンプと低揚程のポンプの2台を設け、運転状況に合わせて切り替え運転することもできる。
【0027】
なお、加圧水ポンプ5を回転数可変速駆動とすることにより、同一の加圧水ポンプでこの揚程の違いに対応することができ、省エネルギの揚水運転が可能となる。
また、揚程の違いに対応するため、図示省略したが高揚程大出力の加圧水ポンプと、低揚程小出力の加圧水ポンプの2台を設ける場合、起動時は高揚程大出力の加圧水ポンプを運転し、一定時間経過後停止させ、低揚程小出力の加圧水ポンプを起動する。このように定常揚水運転中は、低揚程小出力の加圧水ポンプを使用することにより、省エネルギの揚水運転が可能となる。
【0028】
以上、本発明の圧力水噴射式ポンプシステムについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の圧力水噴射式ポンプシステムは、配管管路内部を水密化してサイフォンの原理を利用することで低揚程で出力の小さな加圧水ポンプの使用を可能とし、運転動力の低減による省エネルギで効率的な揚砂が行えるという特性を有していることから、下水処理場等の沈砂池内の沈砂を揚砂する圧力水噴射式ポンプシステムの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 圧力水噴射式ポンプ
11 吸込口
2 分離タンク
3 揚水管
4 排水管
41 吐出口
5 加圧水ポンプ
6 吐出弁
7 弁
8 沈殿物分離機
9 排出ホッパ
S 沈砂池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈砂池内に設置し、加圧水ポンプからの圧力水を供給するようにした圧力水噴射式ポンプと、水面上方に配置した分離タンクとを揚水管及び排水管にて接続し揚砂するようにした圧力水噴射式ポンプシステムにおいて、配管管路全体の内部に水が充満した状態を保つように分離タンクからの排水管の吐出口を常に水没する位置に配設して構成したことを特徴とする圧力水噴射式ポンプシステム。
【請求項2】
分離タンクの排出口に、配管管路全体内の水密を保持するための弁を配設したことを特徴とする請求項1記載の圧力水噴射式ポンプシステム。
【請求項3】
分離タンクに接続する排水管の下端吐出口を、沈砂池の水面下で圧力水噴射式ポンプの吸込口近傍に配設したことを特徴とする請求項1又は2記載の圧力水噴射式ポンプシステム。
【請求項4】
加圧水ポンプを、揚砂運転状況に合わせて可変的に駆動するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の圧力水噴射式ポンプシステム。
【請求項5】
加圧水ポンプの可変的駆動を、高揚程と低揚程の2台の加圧水ポンプの切り替えにて行うようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の圧力水噴射式ポンプシステム。
【請求項6】
分離タンクの下方位置に、沈殿物分離機を配設したことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の圧力水噴射式ポンプシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−21483(P2012−21483A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160907(P2010−160907)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】