説明

圧延機及びその動作方法

【課題】材料の過圧部を確実に検出することにより、該過圧部によって生じる不安定な圧延状態を防止するような制御を行える、検出装置を備えた圧延機及びその動作方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも2つのワークロール2,3と、複数のバックアップロール7,8とを備えて成り、ワークロール2,3の間に、圧延製品5が通過するロール間隙4が設定された圧延機1において、ロール間隙4の手前で圧延製品5の過圧部10を検出するために、少なくとも1つの検出装置11を設けるとともに、該検出装置11からの信号に基づき圧延製品5の平坦度の調整のためのアジャスタを制御する制御ユニット13を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載した圧延機及び請求項5の前提部分に記載した圧延機の動作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧延機は従来からよく知られており、例えば、一対のワークロールが、これより大きな少なくとも2つのバックアップロールによって、圧延力を受けるよう負荷されるものなどが知られている。さらに、このような圧延機においては、圧延製品の平坦度にばらつきが生じ、これにより2つのワークロールの間のロール間隙の直前に材料の過圧部(材料の停滞部)が発生することが知られている。
【0003】
上記のような過圧部が適時に、かつ、十分正確に補正されないと、圧延された材料に平坦度についての不均一が生じて圧延製品の品質不良が引き起こされ、場合によって他に応用される圧延製品として全く適さないものとなってしまう。
【0004】
また、従来、引張応力分布を検出するためのローラによって平坦度を測定するよう構成された圧延機が知られている。通常、このようなローラはワークロールから遠く離れて配置されているため、ロール間隙の手前において高い信頼性をもって過圧部を検出することができないものとなっている。なお、このような圧延機は、例えば特許文献1に開示されている。さらに、この特許文献1には厚さプロフィルを検出するセンサが開示されているが、このセンサは、ロール間隙から遠く離れた位置に配置されているため、高い信頼性をもって過圧部を検出することができないものとなっている。
【0005】
特許文献2にはロール間隙の前後に厚さ測定装置を備えた圧延機が開示されており、この厚さ測定装置により、所定の厚さ範囲を得ることができるようになっている。しかしながら、特許文献2においても、各センサがロール間隙から遠く離れた位置に配置されているため、過圧部の影響を補正することができないものとなっている。
【0006】
その他の圧延機もロール間隙後方の遠く離れた位置でのみ平坦度を測定し、この測定結果が、平坦度アジャスタによる平坦度の制御に使用されるその他の圧延機も知られている。しかしながら、このような圧延機による制御は、圧延機出口側での寸法に対して必ずしも十分に作用しないか、又はこれにより生じる時間遅れによって、プロフィルの変化又は平坦度の変化に十分迅速に反応することができないものとなっている。そのため、検出された平坦度誤差は、これがロール間隙の後方(通過後)に生じるものであることから、補正できなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0108379号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第2743130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、材料の過圧部を確実に検出することにより、該過圧部によって生じる不安定な圧延状態(過圧延など)を防止するような制御を行える、検出装置を備えた圧延機及びその動作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、少なくとも2つのワークロールと、場合によっては複数のバックアップロールとを備えて成り、前記ワークロールの間に、例えば特に金属製のストリップのような圧延製品が通過するロール間隙が設定された圧延機において、前記ロール間隙の手前で前記圧延製品の過圧部を検出するために、少なくとも1つの検出装置を設けるとともに、該検出装置からの信号に基づき前記圧延製品の平坦度の調整のためのアジャスタを制御する制御ユニットを設けたことを特徴としている。
【0010】
ここで、前記ロール間隙の後方に、前記制御ユニットへ信号を送出する平坦度検出装置を設けるとともに、前記検出装置及び前記平坦度検出装置からの信号に基づき、前記圧延製品の平坦度を調整するアジャスタを前記制御ユニットによって制御するよう構成するのが好ましい。
【0011】
また、平坦度を調整する前記アジャスタを、前記ワークロール及び/又は前記バックアップロールの傾斜、前記ワークロール、中間ロール及び/又は前記バックアップロールの曲がり、前記ワークロール及び/又は中間ロールの連続可変クラウン(CVC)変位における軸方向変位並びに前記ストリップ及び/又は前記ワークロールの最小潤滑量若しくは温度を調整するよう構成するのが望ましい。これにより、所望の平坦度に調整することが可能である。
【0012】
さらに、前記検出装置を、前記ロール間隙の手前において前記圧延製品の過圧部を検出する光学式又は機械式の検出装置として構成するのが好ましい。
【0013】
本発明の目的は、請求項5記載の圧延機の動作方法によっても達成することができ、その利点は、装置についての利点と同様である。
【0014】
また、前記圧延製品の過圧部を、前記ロール間隙の手前で光学的又は機械的に検出するのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、材料の過圧部を確実に検出することにより、該過圧部によって生じる不安定な圧延状態(過圧延など)を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】検出装置を備えた圧延機の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1には、2つのワークロール2,3を備えた圧延機1が示されている。ワークロール(上ワークロール)2とワークロール(下ワークロール)3の間にはロール間隙4が設定されており、このロール間隙4において、例えば特に鋼製のストリップ6が圧延される。なお、ワークロール2,3は、従来どおり、それぞれバックアップロール7,8からの負荷を受けている。
【0019】
圧延製品であるストリップ6がロール間隙4を圧延方向(ストリップ走行方向)9へ通過すると、ロール間隙4の近傍に過圧部10が生じる。ここで、この過圧部10は、圧延製品を変形させるものであり、そのため、圧延製品の平坦度に悪影響を及ぼすものである。
【0020】
しかして、この過圧部10は、少なくとも一時的に、単位時間当たりに圧延可能な圧延量及びロール間隙4を通過可能な通過量よりも多くの圧延製品が前記単位時間内にロール間隙4の前に搬送あるいは押圧される場合に生じる。そして、この過圧部10により、局所的にストリップ6への圧力低下が生じることになる。
【0021】
ところで、圧延機1は更に少なくとも1つの検出装置11又はセンサを備えており、この検出装置11又はセンサは、ロール間隙4の入口において過圧部10を検出するものである。なお、少なくとも1つのこの検出装置11は、特に機械式又は非接触式に測定可能なセンサであるのが好ましい。非接触式のセンサは、局所的な過圧部10を検出する特に光学的なセンサである。局所的な板圧の減少という形で現れる過圧部10は、ストリップ6に対する圧力の低下として当該領域からロール間隙4の前まで波状部を形成するとともに、検出装置11によって検出可能である。
【0022】
センサ又は検出装置11は、ロール間隙4の入口に設けられて、例えば圧延製品5あるいはストリップ6の表面変化に基づいてロール間隙4の近傍における過圧部10を検出する。ここで、このセンサは、ロール間隙4の前1m以内(特にロール間隙4の前約200〜300mm)で過圧部10を検出するようになっている。また、圧延方向9に見たロール間隙4の後方の出口側には平坦度検出装置である平坦度測定ローラ12が設けられており、この平坦度測定ローラ12は、圧延機1の後方でのストリップ6の平坦度を測定するものである。
【0023】
ところで、過圧部10を検出する検出装置11からの信号又は過圧部10を検出する検出装置11及び平坦度測定ローラ12からの信号は制御ユニット13へ入力され、この制御ユニット13は、入力されたデータに基づき、少なくとも1つの圧延製品5の平坦度を制御するために平坦度アジャスタ15〜19に対する少なくとも1つの制御信号14を送出する。
【0024】
また、検出装置11及び平坦度測定ローラ12からの信号は制御ユニット13に入力されるが、これら検出装置11と平坦度測定ローラ12の間あるいはこれらからの信号の間で重み付けをしてもよい。このような重み付けは、追加的な加法及び乗法による因子によるものでもよいし、少なくとも個々の信号に遅延要素を加えるものでもよいし、少なくとも個々の信号をフィルタするものでもよいし、又はこれらの組合せでもよい。
【0025】
ロール間隙4の手前での過圧部10の検出並びに/又はロール間隙4の手前での過圧部10の検出及びロール間隙4の後方での平坦度の検出により安定した圧延条件の下でストリップの安定した搬送を行うことができ、過圧部10がロール間隙4の手前で検出された場合には、適時に制御がなされるようになっている。
【0026】
ここで、適時とは、制御がリアルタイムでなされることであり、大きな時間遅れがなく、約1秒以内から一瞬までの時間遅れを意味する。ストリップ速度が60m/分であれば、0.3秒で300mm進むことになる。そのため、ロール間隙4の手前で過圧部10を制御するには、1/10秒より短い時間で迅速にフィードバックするのが望ましい。これにより、変化するストリッププロフィル、及び例えばストリップ始端部、ストリップ終端部又は溶接箇所において変化するストリップの平坦度を迅速に制御することが可能である。
【0027】
また、平坦度アジャスタ15〜19は、特に、ワークロール2,3及び/又はバックアップロール7,8の傾斜、ワークロール2,3、中間ロール(6段式)及び/又はバックアップロール7,8の曲がり、ワークロール2,3及び/又は中間ロール(6段式)のCVC(連続可変クラウン)変位における軸方向変位並びにストリップ及び/又はワークロール2,3の最小潤滑量若しくは温度を調整するものである。
【符号の説明】
【0028】
1 圧延機
2,3 ワークロール(対)
4 ロール間隙
5 圧延製品
6 ストリップ
7,8 バックアップロール(対)
9 圧延方向
10 過圧部
11 検出装置(センサ)
12 平坦度測定ローラ
13 制御ユニット
14 制御信号
15〜19 平坦度アジャスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのワークロール(2,3)と、
場合によっては複数のバックアップロール(7,8)と
を備えて成り、前記ワークロール(2,3)の間に、例えば特に金属製のストリップ(6)のような圧延製品(5)が通過するロール間隙(4)が設定された圧延機(1)において、
前記ロール間隙(4)の手前で前記圧延製品(5)の過圧部を検出するために、少なくとも1つの検出装置(11)を設けるとともに、該検出装置(11)からの信号に基づき前記圧延製品の平坦度の調整のためのアジャスタを制御する制御ユニット(13)を設けたことを特徴とする圧延機。
【請求項2】
前記ロール間隙(4)の後方に、前記制御ユニット(13)へ信号を送出する平坦度検出装置(12)を設けるとともに、前記検出装置(11)及び前記平坦度検出装置(12)からの信号に基づき、前記圧延製品(5)の平坦度を調整するアジャスタ(15,16,17,18,19)を前記制御ユニット(13)によって制御するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の圧延機。
【請求項3】
平坦度を調整する前記アジャスタを、前記ワークロール(2,3)及び/又は前記バックアップロール(7,8)の傾斜、前記ワークロール(2,3)、中間ロール及び/又は前記バックアップロール(7,8)の曲がり、前記ワークロール(2,3)及び/又は中間ロールの連続可変クラウン(CVC)変位における軸方向変位並びに前記ストリップ(6)及び/又は前記ワークロール(2,3)の最小潤滑量若しくは温度を調整するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の圧延機。
【請求項4】
前記検出装置(11)を、前記ロール間隙(4)の手前において前記圧延製品(5)の過圧部を検出する光学式又は機械式の検出装置として構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧延機。
【請求項5】
少なくとも2つのワークロール(2,3)と、
場合によっては複数のバックアップロール(7,8)と
を備えて成り、前記ワークロール(2,3)の間に、例えば特に金属製のストリップ(6)のような圧延製品(5)が通過するロール間隙(4)が設定された圧延機(1)の動作方法において、
前記ロール間隙(4)の手前で前記圧延製品(5)の過圧部を検出するとともに、この検出された過圧部に応じて、前記圧延製品(5)の平坦度の調整を行う少なくとも1つのアジャスタを制御することを特徴とする圧延機の動作方法。
【請求項6】
前記圧延製品の平坦度の調整を、更に、前記ロール間隙の後方における前記圧延製品の平坦度を示す平坦度検出信号に基づいて行うことを特徴とする請求項5記載の圧延機の動作方法。
【請求項7】
前記圧延製品の過圧部を、前記ロール間隙(4)の手前で光学的又は機械的に検出することを特徴とする請求項5又は6記載の圧延機の動作方法。
【請求項8】
前記ストリップの負荷状態を、例えばアンチクリンピングロールである、前記ロール間隙近傍に設けられつつ前記ストリップに挿設されたローラによって検出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧延機の動作方法。
【請求項9】
一次の平坦度誤差(位置ずれ誤差)と、当該圧延機の入口側における全体的な前記ストリップの引張応力とを制御するために、前記ストリップへの引張力を同時に検出する2つの負荷検出ゲージを前記ローラの支持部の下方に設けることを特徴とする請求項8記載の圧延機の動作方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−540250(P2010−540250A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526200(P2010−526200)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007981
【国際公開番号】WO2009/043501
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】