説明

圧縮コーティング錠剤とその製造

片頭痛を治療するための錠剤は、活性成分であるスマトリプタンまたは医薬として許容されうるその塩もしくはエステルを含有するコア、およびスマトリプタンを含有しない外被を含む。錠剤は、活性成分を含有しない外被成分を、ある程度圧縮された活性成分含有コアを取り囲むようにして圧縮することによって製造される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は錠剤製剤の分野に関する。本発明は、一般には活性薬剤への応用に関し、具体的には片頭痛を処置するためのスマトリプタン含有錠剤、およびこのような錠剤を製造する方法に関する。
【0002】
背景技術
片頭痛は、最大で人口の10〜15%が影響を受けている、人を衰弱させる普通の病気である。片頭痛の発症における古典的なパターンでは、最初は視覚障害が、次いで約30分後にズキズキするひどい頭痛が片側だけに起こり、しばしば光恐怖症、むかつき、嘔吐、および衰弱を伴う。
【0003】
片頭痛の病態生理学は十分には解明されていないけれども、脳血流の変化と片頭痛との間に幾らかの関係がある、ということは広く受け入れられている。神経伝達物質である5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)が関係していると見なす強い証拠も確認されており、片頭痛を処置する上で有効な薬物の多くが、5-HT受容体アゴニストまたは5-HT受容体アンタゴニストである。このような薬物の1種がスマトリプタン(5-HT1D受容体のアゴニスト)であり、5-HT1D受容体は主として脳血管において発現される。
【0004】
抗片頭痛薬の多くは、最近まで注射によって(すなわち液体製剤として)投与されている。注射による投与は、薬物が全身循環に供されるよう速やかに放出され、作用部位にもたらされる(したがって、片頭痛発症の兆候を緩和するよう速やかに作用することができる)、という利点を有する。
【0005】
しかしながら、注射による薬物投与に付きもののよく知られている欠点(たとえば、錠剤形態での薬物と比較して投与が面倒である;患者が薬剤の服用順守に従わない;注射針に関する安全性の問題)もある。したがって、経口錠剤を開発すべく多大の努力が払われている。
【0006】
抗片頭痛薬の経口錠剤製剤は、前述したように、吸収されて全身循環に供することができるよう、そしてその作用部位に送達させることができるよう、薬物を胃中に速やかに放出しなければならない。経口錠剤製剤はさらに、抗片頭痛薬の不快な味を遮断しなければならない。片頭痛の発症で苦しんでいる患者は吐き気と嘔吐をこうむるようであり、したがって、薬物の不快な味に対して普段よりも不都合となる。
【0007】
この味遮断問題(taste-masking problem)に対する1つの解決策は、経口錠剤製剤をポリマーの層でコートすること(‘フィルムコーティング’として知られている方法)である。フィルムコーティングは、錠剤を口中に入れたときに薬物の味を遮断するが、薬物の速やかな放出と吸収が可能になるよう、胃中において速やかに溶解する。フィルムコートされたスマトリプタン錠剤が、WO92/15295、米国特許第6,368,627号、米国特許第6,020,001号、および米国特許第5,863,559号に記載されている。
【0008】
フィルムコーティングは、錠剤をコーティングする方法として確立されており、製薬業界において広く使用されている。簡単に言うと、コア錠剤を標準的な錠剤プレスで圧縮し、パン(一般には、サイドベントの付いたコーティングパン)に移す。とりわけ、ポリマーと着色剤と乳白剤と可塑剤との混合物を水/溶媒と混合して、コーティング用分散液を生成させる。加温した空気を錠剤の層に通しながらコーテイング用分散液を錠剤に噴霧し、これによりいわゆる“フィルム”を形成させる。
【0009】
しかしながら、フィルムコーティングのプロセスは、ポリマーの層を施すための高価な装置を必要とし、そして錠剤上にポリマーを固着させるための乾燥工程をさらに必要とする。さらに、フィルムコーティングのプロセス(たとえば、加熱/湿気曝露による)は、錠剤とその活性成分の化学組成/安定性にストレスを加えることがある。フィルムコートされた錠剤はさらに、多数の賦形剤を使用する必要があり、このため活性成分が反応したり劣化を起こしたりしがちである。
【0010】
経口錠剤製剤における、不快な味がする薬物のその味を遮断する別の方法は、薬物を含有しているコア錠剤を取り囲んだ状態で圧縮された、薬物を含有していない外被を使用することを含む。このタイプの外被は、遅延放出錠剤(ゆっくりと溶解する物質で外被が構成されており、この外被が活性成分の放出を遅延させる)や徐放出錠剤(外被が、コア中に含まれている活性成分に対する半永久的なバリヤーとして作用し、活性成分は、不溶性もしくはある程度溶解性の外被を通過しなければならない)を得るために使用されている。他の使い方としてはバースト作用錠剤(a burst effect tablet)があり、この場合は、徐放出コアを覆う形で即時放出性の外被がコーティングされる。
【0011】
これらの圧縮コーティング錠剤の欠点は、外被の重量が比較的大きくなることであり(一般には、コアの2倍を超える重量)、したがって所定のコアに対して外被を加えると、錠剤のサイズが少なくとも3倍になる。
【0012】
味遮断特性と速放出特性を有する経口錠剤製剤中に不快な味のする薬物(たとえば抗片頭痛薬)を組み込む方法を開発することが求められている。
したがって本発明の目的は、薬物の不快な味が遮断された経口錠剤製剤を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、速やかな薬物放出を可能にする経口錠剤製剤を提供することにある。
本発明の特定の目的は、スマトリプタンの不快な味が遮断された状態の、スマトリプタンを含んだ経口錠剤製剤を提供することにある。本発明のさらなる特定の目的は、スマトリプタンの不快な味が遮断されていて、錠剤コアからのスマトリプタンの放出が速やかである、スマトリプタンを含んだ経口錠剤製剤を提供することにある。
【0014】
発明の要旨
したがって本発明は、
(i)スマトリプタンを含有しているコア;および
(ii)スマトリプタンを含有していない外被;
を含んだ錠剤を提供する。
【0015】
本発明の錠剤では、錠剤の外被がスマトリプタン(本明細書で言及するスマトリプタンは、スマトリプタンそれ自体または医薬として許容されうるスマトリプタンの塩もしくはエステルを表わしている)の不快な味を遮断しつつ、スマトリプタンの速やかな放出がもたらされる。外被:コアの重量比は1.8:1以下であるのが好ましく、1.5:1以下であるのがさらに好ましく、1.3:1以下であるのが特に好ましい。スマトリプタンは片頭痛を打ち消すのに有効な量にて存在し、コアは10〜200mgのスマトリプタンを含有するのが適切である。
【0016】
より一般的には、本発明は、活性成分を速やかに放出させる必要のある錠剤における不快な味を遮断するために圧縮コーティング技術を使用することに関する。したがって、本発明のさらなる実施態様においては、
(i)活性薬剤を含有しているコア;および
(ii)活性薬剤を含有していない外被;
を含んだ錠剤が提供される。
【0017】
外被:コアの重量比は1.8:1以下であるのが好ましく、1.5:1以下であるのがさらに好ましく、1.3:1以下であるのが特に好ましい。
本発明はさらに、
(a)(i)第1の量の粉末/顆粒をプレス中に配置すること;および
(ii)コアが得られるよう、前記第1の量の粉末/顆粒を圧縮すること;
によってコアを作製する工程;および
(b)第2の量の粉末/顆粒を、前記コアを取り囲むようにしてプレスし、これにより外被を作製し、最終的な錠剤を得る工程;
を含んだ錠剤の製造方法を提供する。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の錠剤は、コアと外被の両方が胃において速やかに溶解するように製剤するのが適切である。溶解プロフィールは種々変わってよいが、適切な溶解プロフィールは、標準的なパドル法(Paddle Method)による測定にて、錠剤の少なくとも90%が10分後に、特に5分後に溶解するというものであり、好ましくは錠剤の95%が10分後に、特に5分後に溶解するというものである。
【0019】
一般には、コアと外被は実質的に同じ時間で崩壊する。しかしながら、崩壊プロフィールは異なってよく、本発明の他の錠剤では、10分後に、好ましくは5分後に、外被が少なくとも95%溶解し、コアが少なくとも90%溶解する、という溶解プロフィールを有する。
【0020】
好ましい実施態様においては、錠剤のコアは通常、次の成分の1種以上を含む(“コアブレンド”と呼ばれる):充填剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、活性成分。
充填剤は、活性成分に対して医薬的に適合性のある、適切ないかなる充填剤であってもよい。具体例としては、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、圧縮性糖(compressible sugar)とその誘導体、セルロースとその誘導体、マルトデキストリン、変性スターチ、または前記物質のあらゆる組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0021】
結合剤は、活性成分に対して医薬的に適合性のある、適切ないかなる結合剤であってもよい。具体例としては、アラビアゴム、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム(もしくはナトリウム)、酢酸フタル酸セルロース、MCC、デキストレート、エチルセルロース、ゼラチン、リキッドグルコース、プロビドン、スターチ(乾燥品もしくはペーストとして)、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、HPMC、マルトデキストリン、ポロキサマー、PEG、または前記物質のあらゆる組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0022】
崩壊剤は、活性成分に対して医薬的に適合性のある、適切ないかなる崩壊剤であってもよい。具体例としては、アルギン酸、三塩基性リン酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム(もしくはナトリウム)、MCC、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ドキュセートナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ポラクリランカリウム(polacrillan potassium)、アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、グリコール酸ナトリウムスターチ、スターチ、アルファスターチ(pregelatinized starch)、または前記物質のあらゆる組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0023】
滑剤は、活性成分に対して医薬的に適合性のある、適切ないかなる滑剤であってもよい。具体例としては、ステアリン酸カルシウム、カノーラ油、水素化ヒマシ油、コロイド状二酸化ケイ素、綿実油、フマル酸、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンステアレート、ポリビニルアルコール、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク、水素化植物油、ジベヘン酸グリセリル、ステアリン酸亜鉛、または前記物質のあらゆる組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の活性成分は、一般には、あらゆる活性成分または活性成分のあらゆる混合物であるが、本発明は、不快な味を有していて、速やかに放出されるのが望ましい活性成分に対して特に適している。特定の実施態様(後述の実施例にて詳細に説明)においては、活性成分は、5-HT受容体のアゴニストまたはアンタゴニストまたはこれらのあらゆる組み合わせ物を含めた抗片頭痛薬である。活性成分はスマトリプタンであるのが好ましい。活性成分はコハク酸スマトリプタンであるのがさらに好ましい。本発明の錠剤はそれぞれ、10〜200mgの活性成分(遊離塩基)を含有してよく、25〜100mgの活性成分を含有するのが好ましく、25mg、50mg、または100mgを含有するのがさらに好ましい。
【0025】
好ましい実施態様においては、外被は通常、次の成分の1種以上を含む(“外被ブレンド”と呼ばれる):充填剤、結合剤、崩壊剤、滑剤。
これらの成分は、上記物質のいずれであってもよく、あるいは上記物質のいかなる組み合わせであってもよい。
【0026】
さらに必要に応じて、コアと外被は、コア中に存在する活性成分は別として、実質的に同じ物質を含んでもよい。
さらに、コアブレンドも外被ブレンドも、必要に応じて吸着剤および/または着色剤を含んでもよい。医薬として許容されうるいかなる着色剤または吸着剤も使用することができる。
【0027】
コアブレンドと外被ブレンドは、ドライブレンディングによって調製するのが好ましいが(製造を容易にするため)、湿式造粒法や圧縮造粒法も使用することができる。
一般に、それぞれのブレンドの成分は、滑剤を除いて、第1のブレンディング工程において一緒にブレンドされる。着色剤を加えなければならない場合は、着色剤がブレンド物内で均一に分配されるように、1つより多いブレンディング工程が必要とされることがある。引き続き滑剤をブレンドし、第1のブレンディング工程が終わる。
【0028】
特定の実施態様においては、コアが、1〜40重量%の活性成分、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含み、外被が、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含む。
【0029】
他の実施態様においては、コアが、1〜50重量%のスマトリプタン、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含み、外被が、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含む。
【0030】
さらに他の実施態様においては、コアが、5〜80重量%のスマトリプタン、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含み、外被が、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含む。
【0031】
好ましい実施態様においては、コア錠剤が、コハク酸スマトリプタン、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム、精製水、およびステアリン酸マグネシウムを含み、錠剤の外被が、ラクトース、微晶質セルロース、クロスカルメロースナトリウム、ベンガラ、およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0032】
本発明の特定の錠剤の利点は、錠剤中の活性剤が胃において速やかに放出され、したがって活性成分が吸収されて全身循環に供され、作用部位に供給されるので、片頭痛発症の兆候を緩和するよう錠剤が速やかに作用する、という点である。本発明の錠剤はさらに、スマトリプタンの市販の経口錠剤製剤と比較して、改良された溶解プロフィールを示すことが確認されている(実施例4に記載)。
【0033】
本発明の錠剤は、
(A)(i)第1の量の粉末/顆粒をプレス中に配置すること;および
(ii)コアが得られるよう、前記第1の量の粉末/顆粒を圧縮すること;
によってコアを作製する工程;ならびに
(B)(i)第2の量の粉末/顆粒をプレス中に配置すること;
(ii)前記コアを前記第2の量の粉末/顆粒の上に配置すること;
(iii)第3の量の粉末/顆粒を、前記コアと前記第2の量の粉末/顆粒との上に配置すること;および
(iv)最終的な錠剤が得られるように(iii)を圧縮すること;
によってコアの周りに外被を作製する工程;
によって製造することができる。
【0034】
工程Aにおけるコア圧縮は0.5〜5トンの圧力で行うのが適切であり、これによりある程度圧縮されたコアが得られる。このコアは、その後の工程段階にて、および工程Bにおけるさらなる圧縮の前において、そのままの状態を保持するよう十分に圧縮されている。
【0035】
圧縮工程Bは、最終的な錠剤が得られるよう、一般にはより高い圧力で行われ、0.5〜10トンの圧力で行うのが適切である。
本発明の錠剤の製造方法では、錠剤は、図1に概略的に示されている方法を使用して作製される。具体的には、錠剤は2つの段階にて作製される。先ず、活性成分を含有しているコアブレンドからコアを作製する。次に、活性成分を含有していない外被ブレンドを、コアを取り囲んだ状態で圧縮して、最終的な錠剤を得る。
【0036】
コアを作製するためには、所定量の第1の粉末/顆粒(すなわち、活性成分を含有するコアブレンド)を従来の錠剤プレスで圧縮する。ある程度圧縮されたコアが得られるよう、圧縮は、0.5〜5トンの圧力で行うのが好ましい。ある程度圧縮することで、コアの成分が団結するが、その最終的な硬さ/厚さには圧縮されない。
【0037】
最終的な錠剤を作製するためには、所定量の第2の粉末/顆粒(すなわち、活性成分を含有しない外被ブレンド)をプレス中に配置し、その上にコアを配置する。次いで、コアをさらなる量の第3の粉末(これも外被ブレンド)で覆い、錠剤を形成している総ての成分を圧縮して、最終的な硬さと厚さにする。この圧縮は、0.5〜10トンの圧力で行うのが好ましい。
【0038】
本発明の錠剤は、コアブレンドと外被ブレンドの双方を、単一機械(a single machine)〔たとえば、マネスティ・ドライ-コータ・タブレットプレス(a Manesty Dry-Cota tablet press)〕の2つの側の上に配置する、という方法によって作製することができる。この場合もコアブレンドを、プレスのコア側である程度圧縮し(圧縮はするが、その最終的な硬さ/厚さにまでは圧縮せず、移されるまで団結を保持するのに十分な程度にだけ圧縮される)、次いでプレスの外被側に移し、そこで外被ブレンド中にサンドイッチする。次いで、このコア/外被ブレンドを圧縮して最終的な圧縮コーティング錠剤にする。
【0039】
本発明の錠剤は、1%未満のもろさ指数(フライアビリティ・インデックス、friability index)を有するのが好ましく、0.8%未満のもろさ指数を有するのがさらに好ましい。
本発明にしたがって、他の市販のスマトリプタン錠剤の場合の、ほぼ半分の量の賦形剤を使用して錠剤のコアを作製することができる、ということを我々は見いだした。驚くべきことに、そして賦形剤の使用量が少ないにも関わらず、コアの適切な崩壊/溶解プロフィールが達成される。
【0040】
さらに、外被による良好な被覆は、外被:コアの低い重量比で達成することができる、ということを我々は見いだした。たとえば、先行技術での、外被:コアの一般的な重量比は2:1であるけれども、本発明においては、約1.15:1という低い比で外被による良好な被覆が達成される。
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
実施例1
コア錠剤(品目1〜8)と外被(品目9〜13)を、下記の表1に示すように製剤した。
【0042】
【表1】

【0043】
これらの具体的な製剤においては、ラクトースが充填剤として作用し、微晶質セルロースが結合剤/崩壊剤および充填剤として作用し、クロスカルメロースナトリウムが崩壊剤として作用し、そしてステアリン酸マグネシウムが滑剤として作用する。
【0044】
実施例2
実施例1の表1にしたがって、下記のように錠剤を製造した。
品目1〜3を、予備スクリーニングした後に、高剪断ミキサー/グラニュレータ中に装入した。ハイミックス(High Mix)とハイチョップ(High Chop)のセッティングで、粉末を2分間混合した。次いで、品目4〜5を使用して、同じセッティングにて材料を粒状化した。適切な顆粒が得られた後、顆粒を流動床乾燥器のボウル中に排出し、この材料を50℃の温度で2%未満の乾燥減量(Loss On Drying;LOD)となるまで乾燥した。
【0045】
乾燥顆粒を篩に通して粉砕して、大きすぎる粒子を取り除いた〔約425〜1400ミクロン(好ましくは600ミクロン)の篩サイズを使用することができる〕。
粉砕した顆粒を、品目6および7(予備スクリーニング後のもの)と共に適切な大きさのタンブルブレンダーに装入した。これらを10分ブレンドしてから、品目8(この場合も、予備スクリーニング後のもの)を加えた。最終的なブレンディングは5分行った。これにより、いわゆる“コアブレンド”が得られた。
【0046】
これとは別に、品目9〜12(予備スクリーニングしたもの)を適切な大きさのタンブルブレンダー中に装入し、10分ブレンドした。品目12(任意の着色剤)が使用される場合、他の成分の1種との中間的なブレンディング工程を使用して、着色剤をブレンド中に適切に分散させることができる。予備スクリーニングした品目13をブレンダーに加え、最終的なミキシングを5分行った。これにより、いわゆる“外被ブレンド”が得られた。
【0047】
コアブレンドと外被ブレンドを、マネスティ・ドライ-コータ・タブレットプレスの2つの側の上に配置した。コアブレンドを、プレスのコア側である程度圧縮し(圧縮はするが、その最終的な硬さ/厚さにまでは圧縮せず、移されるまで団結を保持するのに十分な程度にだけ圧縮される)、次いでプレスの外被側に移し、そこで外被ブレンドの層中にサンドイッチした。次いで、このコア/外被ブレンドを圧縮して最終的な圧縮コーティング錠剤にした。圧縮コーティングの他の方法(たとえば、ある機械でコア錠剤を圧縮し、次いでコア錠剤を別の機械に移して圧縮コーティングを行う)も使用することができる。
【0048】
実施例3
それぞれ25mg、50mg、および100mgのスマトリプタンを含有する錠剤A、B、およびCを、実施例1に記載の手順にしたがって製造した。
【0049】
標準的なパドル法を使用して錠剤A〜Cの溶解プロフィールを調べた(欧州薬局方参照)。得られた結果を表2〜4に示す。これらの錠剤はさらに、グラクソ・スミスクライン社製の市販のスマトリプタン錠剤(イミトレックス)と同等の溶解プロフィールを示した。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
表2からわかるように、25mgのスマトリプタンを含有する本発明の錠剤は速やかな溶解を示し、5分後に平均で99%が溶解し、10分後に100%が溶解する。このことは、同じ条件下において、5分後に平均で65%だけが溶解し、そして10分後に100%が溶解するイミトレックス25mg錠剤とは対照的に好ましい事実である。
【0054】
同じ条件下にて、それぞれ50mgと100mgのスマトリプタンを含有する本発明の錠剤は、同様に良好な溶解プロフィールを示している(表3と4を参照)。
表2〜4におけるデータを図2〜4にてグラフで示す。
【0055】
実施例4
バイオ関連実験(bio-study)を行い、実施例3の100mg錠剤は、商標のついたグラクソ製品〔イミトレックス(Imitrex)(登録商標)〕と生物学的に同等である、ということがわかった。この実験ではさらに、錠剤が摂取されたときに、患者による不快な味の報告がなかった、ということが明らかになった。したがって本実験により、活性成分が速やかに放出されたこと、および本発明の錠剤によって適切な味遮断がなされたことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1−1】(i)既知の圧縮錠剤と(ii)本発明の圧縮コーティング錠剤の製造において使用される錠剤プレス手順を示している。
【図1−2】(i)公知の圧縮錠剤と(ii)本発明の圧縮コーティング錠剤の製造において使用される錠剤プレス手順を示している。
【図2】25mgのスマトリプタンを含有する本発明の錠剤の溶解プロフィールと25mgのスマトリプタンを含有する市販のイミトレックス錠剤の溶解プロフィールとの比較を示している。
【図3】50mgのスマトリプタンを含有する本発明の錠剤の溶解プロフィールと50mgのスマトリプタンを含有する市販のイミトレックス錠剤の溶解プロフィールとの比較を示している。
【図4】100mgのスマトリプタンを含有する本発明の錠剤の溶解プロフィールと100mgのスマトリプタンを含有する市販のイミトレックス錠剤の溶解プロフィールとの比較を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) スマトリプタンを含有しているコア;および
(ii) 前記コアを完全に取り囲んでいる、スマトリプタンを含有していない外被;
を含む錠剤。
【請求項2】
外被:コアの重量比が1.8:1以下である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
外被:コアの重量比が1.5:1以下である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項4】
コアが10mg〜200mgのスマトリプタンを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項5】
(i) コアが、スマトリプタン、充填剤、結合剤、崩壊剤、および滑剤を含み;そして
(ii) 外被が、充填剤、結合剤、崩壊剤、および滑剤を含む;
請求項1〜4のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項6】
コアと外被が吸着剤および/または着色剤をさらに含む、請求項5に記載の錠剤。
【請求項7】
コアが、1〜40重量%のスマトリプタン、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含み;外被が、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含む、請求項6に記載の錠剤。
【請求項8】
コアが、1〜50重量%のスマトリプタン、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含み;外被が、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含む、請求項6に記載の錠剤。
【請求項9】
コアが、5〜80重量%のスマトリプタン、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含み;外被が、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含む、請求項6に記載の錠剤。
【請求項10】
コア中のスマトリプタン別として、コアと外被が実質的に同じ物質を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項11】
コアと外被の両方が胃において速やかに溶解する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項12】
10分後に錠剤の少なくとも90%が溶解する、請求項11に記載の錠剤。
【請求項13】
コアと外被が実質的に同じ時間にわたって崩壊する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項14】
10分後に、マントルが少なくとも95%溶解し、コアが少なくとも90%溶解する、請求項13に記載の錠剤。
【請求項15】
(a) (i) 第1の量の粉末/顆粒をプレス中に配置すること;および
(ii) コアが得られるよう、前記第1の量の粉末/顆粒を圧縮すること;
によってコアを作製する工程;ならびに
(b) 第2の量の粉末/顆粒を、前記コアを取り囲むようにしてプレスし、これにより外被を作製し、最終的な錠剤を得る工程;
を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の錠剤の製造方法。
【請求項16】
(a) (i) 第1の量の粉末/顆粒をプレス中に配置すること;および
(ii) コアが得られるよう、前記第1の量の粉末/顆粒を圧縮すること;
によってコアを作製する工程;ならびに
(b) (i) 第2の量の粉末/顆粒をプレス中に配置すること;
(ii) 前記コアを前記第2の量の粉末/顆粒の上に配置すること;
(iii) 第3の量の粉末/顆粒を、前記コアと前記第2の量の粉末/顆粒との上に配置すること;および
(iv) 最終的な錠剤が得られるように(iii)を圧縮すること;
によってコアの周りに外被を作製する工程;
を含む、請求項15に記載の錠剤の製造方法。
【請求項17】
工程(a)における圧縮が0.5〜5トンの圧力にて行われる、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項18】
工程(b)における圧縮が0.5〜10トンの圧力にて行われる、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項19】
第1の量の粉末/顆粒が、スマトリプタン、充填剤、結合剤、崩壊剤、および滑剤を含む、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項20】
第1の量の粉末/顆粒が吸着剤および/または着色剤をさらに含む、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
第1の量の粉末/顆粒が、1〜40重量%のスマトリプタン、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含む、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項22】
第1の量の粉末/顆粒が、1〜50重量%のスマトリプタン、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含む、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項23】
第1の量の粉末/顆粒が、5〜80重量%のスマトリプタン、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含む、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項24】
第2および/または第3の量の粉末/顆粒が、充填剤、結合剤、崩壊剤、および滑剤を含む、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項25】
第2および/または第3の量の粉末/顆粒が吸着剤および/または着色剤をさらに含む、請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
第2および/または第3の量の粉末/顆粒が、10〜90重量%の充填剤、2〜60重量%の結合剤、1〜60重量%の崩壊剤、0.1〜10重量%の滑剤、0〜5重量%の吸着剤、および0〜5重量%の着色剤を含む、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項27】
工程(a)によりある程度圧縮されたコアを得、次いで工程(b)において前記コアをさらに圧縮する、請求項15または16に記載の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−523140(P2007−523140A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553650(P2006−553650)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000541
【国際公開番号】WO2005/079763
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506074635)アロー・ナンバー7・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】