説明

圧縮空気除湿装置

【課題】圧縮空気の除湿と、それと異なる系統の気体又は液体の温度調整を、除湿能力を下げることなく実行できる圧縮空気除湿装置を提供する。
【解決手段】圧縮機41からの冷媒が、第1の分岐流路43に分配器45,46により分配され、第1凝縮器47、膨張弁48、蒸発器49、および圧縮機41の順に循環される冷却回路Xと、圧縮機41から送り出される冷媒が、第2の分岐流路44に分配器45,46により分配され、第2凝縮器58を経て冷却回路Xの第1凝縮器47の上流側に合流するように循環する異系統温調回路Yとを具備し、冷却回路Xの蒸発器49に圧縮空気が導入されて冷却・除湿され、異系統温調回路Yの第2凝縮器58に、蒸発器49に導入される圧縮空気とは異なる系統の温度調整対象の気体又は液体が導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮空気除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気を冷凍回路により冷却して除湿する圧縮空気除湿装置が従来より知られている。圧縮空気除湿装置によって除湿された圧縮空気は、工作機械などの様々な産業用機器に提供される。
一方、このような産業用機器は温度調整が必要な気体や液体などを用いることも多く、圧縮空気除湿装置とは別に気体や液体の温度調整装置も必要となっていた。
そこで、圧縮空気除湿装置を用いて、圧縮空気とは異なる系統の気体や液体の温度調整ができれば、1台の装置で圧縮空気の除湿と気体又は液体の温度調整の双方を実行でき、低コストや省スペース化を図れるため、このような装置が望まれていた。
【0003】
そこで、特許文献1に開示されているような装置が従来より開発されている。この装置は、圧縮空気除湿装置とレーザ加工機冷却装置を兼ねた構成となっており、圧縮空気の除湿機能と、レーザ加工機保冷用の冷媒を冷却する機能の双方を有している。
【0004】
図2に、上記の特許文献1に開示されている装置の構成を示す。
この装置では、圧縮空気除湿装置8を構成する冷却回路は、圧縮機1と、凝縮器2と、キャピラリチューブ4aと、蒸発器5aとを備え、この順番で冷媒が循環される。蒸発器5には圧縮空気が導入され、蒸発器5によって圧縮空気が冷却されることにより圧縮空気が除湿される。
【0005】
また、レーザ加工機冷却装置10は、圧縮機1から吐出された冷媒が凝縮器2を通過した後に分岐してキャピラリチューブ4b側に分配され、ミラー冷却回路の冷却水が貯留されるタンク9内の蒸発器5bへ導入されるように構成されている。そして、タンク9内の蒸発器5bによってタンク9内の水が冷却される。
蒸発器5bから出た冷媒は、圧縮空気除湿側の蒸発器5aを通過した冷媒と合流し、ストレーナ6とアキュムレータ7を経由して圧縮機1に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−106957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている圧縮空気除湿装置とレーザ加工機冷却装置とを兼ねた装置では、一台の装置でミラー冷却回路の冷却水を冷却と同時に圧縮空気を冷却・除湿することができるため、低コスト化及び省スペース化を図ることができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に示される構成では圧縮空気の冷却用の回路と、冷却水の冷却用の回路とが並列に設けられており、各蒸発器5a、5bを通過した冷媒は、圧縮機1の吸込側(上流側)で合流している。
したがって、従来の構成では、冷却水の冷却能力又は圧縮空気の除湿能力の何れか一方を上げようとすると、他方の能力が下がってしまうという課題がある。
【0009】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、圧縮空気の除湿と、圧縮空気とは異なる系統の気体又は液体の温度調整を、除湿能力を下げることなく実行できる圧縮空気除湿装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る圧縮空気除湿装置によれば、圧縮機から冷媒流路に送り出される冷媒が、前記冷媒流路から分岐する第1の分岐流路に分配器により分配され、第1凝縮器、膨張弁、蒸発器、および前記圧縮機の順に循環される冷却回路と、前記圧縮機から送り出される冷媒が、前記冷媒流路から分岐する第2の分岐流路に分配器により分配され、第2凝縮器を経て前記冷却回路の第1凝縮器の上流側に合流するように循環する異系統温調回路とを具備し、前記冷却回路の前記蒸発器に圧縮空気が導入されて冷却・除湿され、前記異系統温調回路の第2凝縮器に、前記蒸発器に導入される圧縮空気とは異なる系統の温度調整対象の気体又は液体が導入されることを特徴としている。
この構成を採用することによって、除湿対象となる圧縮空気とは異系統の気体又は液体の温度調整を第2凝縮器によって行うことができる。また、第2凝縮器で凝縮された冷媒は、冷却回路の第1凝縮器の上流側に合流することとなる。このため、異系統の気体や液体の温度調整を第2凝縮器で行ったとしても、圧縮空気の除湿を行う蒸発器の性能は低下しない。すなわち、圧縮空気の除湿と、圧縮空気とは異なる系統の温度調整とをそれぞれの機能を低下させずに好適に実行することができる。
【0011】
また、前記第2凝縮器から吐出される温度調整対象の気体又は液体の温度を検出する出口温度センサと、前記出口温度センサにより検出される温度調整対象の気体又は液体の温度が所要設定温度となるように、前記分配器により前記第1の分岐流路と第2の分岐流路とに流れる冷媒量を制御する制御部とを具備することを特徴としてもよい。
この構成を採用することによって、圧縮空気とは異なる系統の気体又は液体の温度調整を精密に行うことができる。
【0012】
さらに、前記冷却回路の前記蒸発器によって冷却・除湿された圧縮空気が導入され、圧縮空気入口から導入された冷却前の圧縮空気と熱交換して前記蒸発器を通過した圧縮空気を加熱するリヒート部を具備することを特徴としてもよい。
この構成によれば、除湿後の圧縮空気が加熱されることにより、圧縮空気の供給量を上げることができる。また、導入された直後の圧縮空気は蒸発器に導入される前にリヒート部においてある程度冷却される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧縮空気の除湿と、それと異なる系統の温度調整を、除湿能力を下げることなく実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる圧縮空気除湿装置の構成を示す回路図である。
【図2】従来の圧縮空気除湿機能と冷却水の温度調整機能とを有する装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る圧縮空気除湿装置40の好適な実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における圧縮空気除湿装置40の回路図である。圧縮空気除湿装置40は、対象となる圧縮空気を冷却して除湿するための冷却回路Xと、圧縮空気とは異なる系統の気体又は液体の温度調整をするための異系統温調回路Yとを備えている。
冷却回路Xは、圧縮機41、第1凝縮器47、膨張弁48、蒸発器49を備えており、冷媒がこの順番に循環するように構成されている。
【0016】
まず、圧縮機41で圧縮された冷媒は、冷媒流路42に送り出される。冷媒流路42は、第1凝縮器47の上流側で第1の分岐流路43および第2の分岐流路44に分岐されている。第1の分岐流路43が第1凝縮器47に接続され、冷却回路Xを構成する。
なお、第1凝縮器47には、ファン61が設けられており、第1凝縮器47で生じる熱は、ファン61による空気流によって放熱される。
【0017】
冷媒流路42に送り出された冷媒は、第1の分岐流路43に設けられた流量調整弁45及び第2の分岐流路44に設けられた流量調整弁46によって、第1の分岐流路43及び第2の分岐流路44に分配される。
【0018】
冷却回路Xでは、圧縮機41によって圧縮された冷媒が、第1の分岐流路43を通って第1の凝縮器47に流入する。第1の凝縮器47では、冷媒が周囲の空気との間で熱交換して冷却され液化される。液化した冷媒は、膨張弁48に流入して液化した状態のままで膨張し、沸点を下げる。そして蒸発器49に流入した冷媒は、後述するように圧縮空気から蒸発熱を奪って蒸発する。気化した冷媒は圧縮機41に戻る。
【0019】
なお、上記の2つの流量調整弁45、46が特許請求の範囲でいう分配器に該当する。この2つの流量調整弁45、46の開度は後述する制御部60によって制御可能である。流量調整弁45、46の開度は、第1の分岐流路43と第2の分岐流路44に流れる冷媒の和が常時100%となるように制御される。例えば、流量調整弁45の開度が10%ならば、流量調整弁46の開度は90%となる。
なお、本実施形態では、分配器としては、2つの流量調整弁45、46で構成したが、1つの三方流量調整弁で構成するようにしてもよい。
また、膨張弁48は、冷媒を断熱膨張させる減圧機構の一例であるが、電子膨張弁などのほか、キャピラリチューブを含む概念で用いている。
【0020】
次に、除湿する圧縮空気とは異なる系統の気体又は液体の温度調整を行う異系統温調回路Yについて説明する。
異系統温調回路Yは、第2凝縮器58を備えている。この第2凝縮器58へ、冷媒流路42内の冷媒が第2の分岐流路44に分配器(流量調整弁45、46)によって分配されて導入される。
第2凝縮器58を通過した冷媒は、冷却回路Xの第1凝縮器47の上流側に合流するように、冷媒の流通配管が設けられている。
【0021】
次に圧縮空気の流通について説明する。
圧縮空気は、圧縮空気入口52から配管54を通じて導入される。
配管54は、リヒート部55に接続されており、圧縮空気入口52から導入された圧縮空気は、リヒート部55で冷却される。リヒート部55は熱交換器であって、圧縮空気入口52から導入された直後の圧縮空気と、冷却回路Xの蒸発器49ですでに冷却・除湿された圧縮空気とが熱交換する。ここで、圧縮空気入口52から導入された直後の圧縮空気は蒸発器49に導入される前にある程度冷却されるため、リヒート部55はプレクーラーとしての機能も有する。
【0022】
リヒート部55で冷却された圧縮空気は、蒸発器49に導入され、冷却回路Xを循環する冷媒によって冷却される。ここで圧縮空気が冷却されることにより圧縮空気中の水分が結露して水滴が生じる。水滴は図示しないドレンバルブを通じて排出され、圧縮空気が除湿される。
【0023】
蒸発器49を通過した除湿後の圧縮空気は、上記のようにリヒート部55に導入される。リヒート部55に導入された除湿後の圧縮空気は、熱交換によって加熱される。
このように、除湿後の圧縮空気が加熱されることにより、圧縮空気の供給量を上げることができる。
リヒート部55によって加熱された除湿後の圧縮空気は、圧縮空気出口53から吐出される。
【0024】
次に、圧縮空気とは異なる系統の気体又は液体の温度調整について説明する。
圧縮空気とは異なる系統の温度調整対象の気体又は液体としては、様々なものがあるが、工作機械や工場設備等で用いられる圧縮空気、熱媒体等が考えられる。
異系統の気体又は液体は、異系統入口57から異系統温調回路Yの第2凝縮器58に導入される。第2凝縮器58は、熱交換器となっており、圧縮機41で高温になった冷媒と、異系統の気体又は液体とが熱交換する。このため、第2凝縮器58に導入された気体又は液体は高温となって異系統出口66から吐出される。
【0025】
異系統出口66には、吐出される高温の気体又は液体の温度を検出する出口温度センサ64が配設されている。出口温度センサ64で検出される出口温度の検出信号は制御部60に入力される。
制御部60は、出口温度センサ64で検出された気体又は液体の温度が、所望の温度となるように、分配器である流量調整弁45、46に制御信号を出力し、第1の分岐流路43及び第2の分岐流路44へ流れる冷媒の流量を調整する。
例えば、気体又は液体の温度をもっと上げる必要がある場合には、第1の分岐流路43への分配量を下げて第2の分岐流路44への分配量を上げて、第2凝縮器58への高温の冷媒の流量を増やすようにする。逆に、気体又は液体の温度を下げる場合には、1の分岐流路43への分配量を上げて第2の分岐流路44への分配量を下げて、第2凝縮器58への高温の冷媒の流量を減らすようにする。
【0026】
このように、冷却回路X及び異系統温調回路Yへの冷媒分配比率を制御できるため、温度調整対象となる気体又は液体の出口温度を高精度で制御できる。
【0027】
なお、圧縮空気除湿装置40において、無負荷状態(圧縮空気が流入してこない状態)で運転すると蒸発器49は過冷却となってしまい、結露水が凍結してしまうおそれがある。そこで、圧縮機41から吐出された冷媒を圧縮機41の上流側に戻すようなホットガスバイパス回路67を設け、この途中に開閉弁68を設けるとよい。このように、ホットガスバイパス回路67において、通常運転時は開閉弁68を閉じておき、無負荷運転となったときには開閉弁68を開けることにより、蒸発器49内が凍結する温度になってしまうことを防止できる。
【符号の説明】
【0028】
40 圧縮空気除湿装置
41 圧縮機
42 冷媒流路
43 第1の分岐流路
44 第2の分岐流路
45,46 流量調整弁
47 第1凝縮器
48 膨張弁
49 蒸発器
52 圧縮空気入口
53 圧縮空気出口
54 配管
55 リヒート部
57 異系統入口
58 第2凝縮器
60 制御部
61 ファン
64 出口温度センサ
66 異系統出口
67 ホットガスバイパス回路
68 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機から冷媒流路に送り出される冷媒が、前記冷媒流路から分岐する第1の分岐流路に分配器により分配され、第1凝縮器、膨張弁、蒸発器、および前記圧縮機の順に循環される冷却回路と、
前記圧縮機から送り出される冷媒が、前記冷媒流路から分岐する第2の分岐流路に分配器により分配され、第2凝縮器を経て前記冷却回路の第1凝縮器の上流側に合流するように循環する異系統温調回路とを具備し、
前記冷却回路の前記蒸発器に圧縮空気が導入されて冷却・除湿され、
前記異系統温調回路の第2凝縮器に、前記蒸発器に導入される圧縮空気とは異なる系統の温度調整対象の気体又は液体が導入されることを特徴とする圧縮空気除湿装置。
【請求項2】
前記第2凝縮器から吐出される温度調整対象の気体又は液体の温度を検出する出口温度センサと、
前記出口温度センサにより検出される温度調整対象の気体又は液体の温度が所要設定温度となるように、前記分配器により前記第1の分岐流路と第2の分岐流路とに流れる冷媒量を制御する制御部とを具備することを特徴とする請求項1記載の圧縮空気除湿装置。
【請求項3】
前記冷却回路の前記蒸発器によって冷却・除湿された圧縮空気が導入され、圧縮空気入口から導入された冷却前の圧縮空気と熱交換して前記蒸発器を通過した圧縮空気を加熱するリヒート部を具備することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の圧縮空気除湿装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−250136(P2012−250136A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122218(P2011−122218)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】