説明

圧縮装置

圧縮スリーブ(10)は12の膨張可能な房(13)を備えており、四肢に巻きつけられる。前記房(13)は、流体源によって設定された圧力および継続時間で膨張させられる。前記房(13)は、(1)から(12)まで番号が付されており、(1)はつま先および手首、(12)は大腿および肩に付されている。使用の際に、前記膨張の順序は、房(1)において蠕動波をともなって開始し、房(12)において完了する。そして、房(12)は膨張と収縮とを5回繰り返し、その後房(11)は房(12)と同様に膨張と収縮とを5回繰り返し、房(12)で開始した単一の蠕動波が房(11)に伝播される。この圧縮の体制は、前記圧縮スリーブユニットに沿って繰り返され、房(1)が膨張と収縮とを5回繰り返した後、房(1)から房(12)へと蠕動波が伝播される。記載された圧縮シーケンスは、特にリンパ液排出に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の体の一部分または四肢の断続的な圧縮に適用される装置に関するものであり、特に水腫、リンパ水腫、脂肪腫あるいは同様なものの治療に使用される圧縮スリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
断続的な圧縮に適用される公知の装置は、膨らませることのできる空気袋を備えた複数の房(セル)を有するスリーブと、様々な順序で前記空気袋を加圧するための制御手段とを備えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これら既存の圧縮システムは、複数の隣接した房で様々な膨張収縮順序および異なった圧力を付与しており、体液を組織からリンパ系および静脈系へと移動または“圧搾する(squeeze)”目的で圧力勾配を得ている。しかし、シーケンシャルモードまたは波動モードを利用したこれら旧来の断続的な空圧圧縮(IPC:Intermittent Pneumatic Compression)システムにあっては、体液の移送は促進するが、一方で水腫状の組織から除去される必要のある、より大きなタンパク質分子に対してはほとんど効果が得られない。
【0004】
公知の療法である手動リンパ液排出法(MLD:Manual Lymphatic Drainage)は、これらのより大きなタンパク質分子および組織からの体液の両方を、前記組織からリンパ系内へと移送することを目的としている。MLDマッサージの順序および方向は、リンパ液の流れ及び過密領域からのリンパ液の排出を促すように企図されている。MLDは、前記リンパ系周囲の筋肉を動かし、前記リンパ液流路内でのあらゆる閉塞(blockages)を開放することで、前記組織からの体液およびタンパク質分子の除去を促進している。MLDセラピストは、初期段階では病気に冒された人間の体の一部分または四肢に先端側(近位部)で働きかけ、次いで四肢を(遠位部へと)下がって働きかけるが、前記圧縮またはマッサージ運動は遠位方向から近位方向へと行われる。一旦リンパ液流路が開放されれば、四肢全体が遠位方向から近位方向へとマッサージされる。MLDは通常手で施され、本発明は水腫組織からの体液およびタンパク質の効果的なリンパ液排出を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
それに応じて、本発明は、人間の体の一部分または四肢の断続的な圧縮に適用される圧縮スリーブであって、前記スリーブの長手方向に沿って配置された複数の房と、流体源を制御し、選択された圧力の設定と期間とで前記房を膨張および収縮させる制御手段と、を備えた圧縮スリーブにおいて、前記制御手段は、人間の体の一部分または四肢の最遠位の房を設定された圧力へと膨張させると共に、それぞれの隣接した房を遠位方向から近位方向へと順次膨張させ続けて所定の蠕動波を生じさせ、最近位の房での波状の膨張の終わりには、前記最近位の房を、所定の回数及び期間で膨張及び収縮させ、それぞれの隣接した房を、前記所定の回数及び期間で、遠位方向から近位方向へと最遠位の房に向かって、順次膨張及び収縮させている。
【0006】
本発明における装置は、水腫組織に断続的な圧縮を加えるのに適用できる点において特に有益である。なぜなら前記装置はリンパ系を開放し、周囲の組織からタンパク質分子の吸収を可能にするからである。遠位方向から近位方向へと順次または波状に向かう既存のシーケンシャル圧縮装置は有効ではない。なぜなら汚染された体液は、閉塞に抵抗して四肢まで上昇し、四肢から外部に排出することができないからである。
【0007】
好ましくは、それぞれの房は膨張および収縮を5回繰り返し、さらに好ましくは、各膨張が3〜5秒間継続した後に、収縮が1〜3秒間継続する。周囲の組織からリンパ系あるいは静脈系へのタンパク質分子の再吸収を促進するために、MLD研究者は、リンパ液流路を開放し、タンパク質分子がリンパ系内に確実に取り込まれるためには、多くの繰り返し運動が必要とされることを示している。
【0008】
好ましくは、繰り返される多数の房の膨張及び収縮のそれぞれの後に、先行する房へともどる単一の蠕動波を生じさせ、リンパ液を胴体へ向けて体の一部分または四肢まで上昇するのを支援している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるシステムによれば、MLD看護師がいなくても、自宅において使用者が正しいリンパ液排出の圧縮療法を受けることを可能にし、それゆえ、MLD看護師の需要、あるいは患者がMLD診療所に通う必要性を低減できる。
【0010】
本発明の好適な実施形態では、長手方向に沿って12個の房を備えた圧縮スリーブから成っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の詳細を、単に例示するためだけの目的で、添付図を参照しつつ説明する。
【0012】
図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態は、複数の膨張可能な房13から構成された圧縮スリーブ10を備えている。スリーブおよび房の構造は、従来からある構造として公知であるか、または引用により本明細書に組み込まれる我々の同時係属の英国特許出願第0424562.7号明細書に記載されているような構造とすることができる。これらの房は電子制御(図示せず)によって制御された流体源からの加圧流体を用いて膨張可能となっている。流体源およびその制御は、従来からあるタイプのもの、または引用により本明細書に組み込まれる我々の同時係属の英国特許出願第0424870.4明細書に記載されているようなものとすることができる。圧縮スリーブ10および膨張可能な房13は環状形状であり、人間の体の一部分または四肢の回りに巻きつけられ、固定されるように適合されている。図1に示した特定の実施形態においては、圧縮スリーブ10は12個の房13を備えている。
【0013】
圧縮スリーブに沿った房13は、1から12まで番号が付されており、1はつま先または手首に付され、12は大腿または肩に付されている。本発明によるリンパ液排出の圧縮シーケンスは、房12から開始し、ここで使用者は、スリーブに供給されるべき適切な圧力および期間、並びに当該シーケンスの全処置時間を設定している。
【0014】
使用時において、当該シーケンスは標準的な蠕動波で始まり、ここで膨張のための蠕動波は房1で始まり房12で完了する。この膨張のための蠕動波は、60%の圧力勾配を有しており、房1がポンプで設定された圧力で膨張し、房12は房1の圧力よりも60%低い圧力になっている。図2に示されるように、房12での波状の膨張の終わりでは、房12は膨張と収縮とを5回繰り返し、それぞれの膨張は3〜5秒間継続し、続いて収縮が1〜3秒間継続する。3秒後、次の房11が、房12と同じ要領で膨張と収縮とを5回繰り返した後、房12で始まった単一の蠕動波が房11へと伝播される。さらに3秒後、房10は、それ以前に房12および房11で起きたように、再度膨張と収縮とを5回繰り返した後、房11で始まった単一の蠕動波は房10へと伝播される。この圧縮動作は、房1の膨張及び収縮が5回行われた後、房1から房12へと蠕動波が伝播されるまで、圧縮スリーブユニットに沿って繰り返される。リンパ液排出の圧縮シーケンスは、必要な場合、房12の膨張及び収縮が5回繰り返され、その後同様にして繰り返すことができる。使用者のために設定された処置時間が経過したとき、当該処置は蠕動波が房1で始まり房12で終わることによって完了する。
【0015】
リンパ液排出の圧縮シーケンスで実行された上述した処置は、周囲の組織からリンパ系および静脈系へのタンパク質分子の再吸収を促進し、かつこれらの組織からの流体およびタンパク質の排出を容易とする働きをする。
【0016】
前述した圧縮シーケンスは、特にリンパ液排出に効果があり、従来の遠位部から近位部へのシーケンシャルな療法、波動的な療法または蠕動波的な療法よりもはるかに効果的であることが立証されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好適な実施形態による圧縮スリーブのレイアウトの概略を示した図である。
【図2】本発明のリンパ液排出のための圧縮シーケンスを示した図である。
【符号の説明】
【0018】
10 圧縮スリーブ
13 房

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の体の一部分または四肢の断続的な圧縮に適用される圧縮スリーブであって、
前記スリーブの長手方向に沿って配置された複数の房と、
流体源を制御し、選択された圧力の設定と期間とで前記房を膨張および収縮させる制御手段と、
を備えた圧縮スリーブにおいて、
前記制御手段は、
人間の体の一部分または四肢の最遠位の房を設定された圧力へと膨張させると共に、それぞれの隣接した房を遠位方向から近位方向へと順次膨張させ続けて所定の蠕動波を生じさせ、
最近位の房での波状の膨張の終わりには、前記最近位の房を、所定の回数及び期間で膨張及び収縮させ、
それぞれの隣接した房を、前記所定の回数及び期間で、遠位方向から近位方向へと最遠位の房に向かって、順次膨張及び収縮させていることを特徴とする圧縮スリーブ。
【請求項2】
それぞれの房は、膨張と収縮とを5回繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の圧縮スリーブ。
【請求項3】
それぞれの膨張は3〜5秒間継続した後に、収縮が1〜3秒間継続することを特徴とする請求項2に記載の圧縮スリーブ。
【請求項4】
房のそれぞれの膨張及び収縮の繰り返しの後に、先行する房へともどる単一の蠕動波を生じさせることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧縮スリーブ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−508917(P2008−508917A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524397(P2007−524397)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003063
【国際公開番号】WO2006/013375
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(503003337)ハントリー テクノロジー ピーエルシー (18)
【Fターム(参考)】