説明

圧電アクチュエータ、レンズ鏡筒およびカメラ

【課題】摩擦や擦れの生じにくい圧電アクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明の圧電アクチュエータは、ベース部材(11)と移動部材(12)との間に設けられ、前記ベース部材(11)の第1面(11a)と交差する交差方向に伸縮可能な第1圧電素子(23a)および第2圧電素子(23b)と、前記ベース部材(11)と前記移動部材(12)との間に設けられ、前記交差方向とは異なる方向に伸縮可能な第3圧電素子(24a)および第4圧電素子(24b)と、前記第1圧電素子(23a)、第2圧電素子(23b)、第3圧電素子(24a)および第4圧電素子(24b)の伸縮量が伝達され、前記移動部材(12)に駆動力を伝達する伝達部材(21、22)とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電アクチュエータは、電気機械変換素子を駆動信号によって伸縮させ、この伸縮を利用して弾性体の駆動面に進行性振動波(以下、進行波とする)を発生させる。そして圧電アクチュエータは、この進行波によって、駆動面に楕円運動を生じさせ、楕円運動の波頭に加圧接触した相対移動部材を駆動させることにより、駆動力を取り出している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−148682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の圧電アクチュエータは、楕円運動を利用しているため、接触部で摩擦や擦れが生じる、また速度の制御も複雑であった。
【0005】
本発明の課題は、摩擦や擦れの生じにくい圧電アクチュエータ、およびそれを用いたレンズ鏡筒、カメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、ベース部材(11)と移動部材(12)との間に設けられ、前記ベース部材(11)の第1面(11a)と交差する交差方向に伸縮可能な第1圧電素子(23a)および第2圧電素子(23b)と、前記ベース部材(11)と前記移動部材(12)との間に設けられ、前記交差方向とは異なる方向に伸縮可能な第3圧電素子(24a)および第4圧電素子(24b)と、前記第1圧電素子(23a)、第2圧電素子(23b)、第3圧電素子(24a)および第4圧電素子(24b)の伸縮量が伝達され、前記移動部材(12)に駆動力を伝達する伝達部材(21、22)とを備えることを特徴とする圧電アクチュエータである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧電アクチュエータであって、前記移動部材(12)は、前記第3圧電素子(24a)および第4圧電素子(24b)の伸縮方向に移動することを特徴とする圧電アクチュエータである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエータであって、前記伝達部材(21、22)は、前記ベース部材(11)と前記移動部材(12)との間に設けられた第1の部材(21)および第2の部材(22)とを備え、前記第1圧電素子(23a)は、前記第1面(11a)と第1の部材(21)との間に設けられ、前記第2圧電素子(23b)は、前記第1面(11a)と第1の部材(21)との間の前記第1圧電素子(23a)とは異なる位置に設けられ、前記第3圧電素子(24a)は、前記前記第1の部材(21)と前記第2の部材(22)との間に設けられ、前記第4圧電素子(24b)は、前記前記第1の部材(21)と前記第2の部材(22)との間の前記第3圧電素子(24a)とは異なる位置に設けられたことを特徴とする圧電アクチュエータである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の圧電アクチュエータであって、前記ベース部材(11)と前記移動部材(12)との間に設けられ、前記ベース部材(11)の第1面(11a)と交差する交差方向に伸縮可能な第5圧電素子(223a)および第6圧電素子(223b)と、前記ベース部材(11)と前記移動部材(12)との間に設けられ、前記交差方向とは異なる方向に伸縮可能な第7圧電素子(224a)および第8圧電素子(224b)と、前記伝達部材(221、222)は、前記ベース部材(11)と前記移動部材(12)との間に設けられた第3の部材(221)および第4の部材(222)とを備え、前記第5圧電素子(223a)は、前記第1面(11a)と第3の部材(221)との間に設けられ、前記第6圧電素子(223b)は、前記第1面(11a)と第3の部材(221)との間の前記第5圧電素子(223a)とは異なる位置に設けられ、前記第7圧電素子(224a)は、前記第3の部材(221)と前記第4の部材(222)との間に設けられ、前記第8圧電素子(224b)は、前記第3の部材(221)と前記第4の部材(222)との間の前記第7圧電素子とは異なる位置に設けられたことを特徴とする圧電アクチュエータである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の圧電アクチュエータであって、前記移動部材(12)は、前記第7圧電素子(224a)および第8圧電素子(224b)の伸縮方向に移動することを特徴とする圧電アクチュエータである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の圧電アクチュエータであって、前記移動部材(12)は、前記第1圧電素子(23a)および前記第2圧電素子(23b)が伸びた状態であり、かつ、前記第5圧電素子(223a)および前記第6圧電素子(223a)が収縮した状態において、前記第2の部材(22)で支持され、前記第5圧電素子(223a)および前記第6圧電素子(223b)が伸びた状態であり、かつ、前記第1圧電素子(23a)および前記第2圧電素子(23b)が収縮した状態において、前記第4の部材(222)で支持されることを特徴とする圧電アクチュエータである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の圧電アクチュエータを備えたレンズ鏡筒である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の圧電アクチュエータを備えたカメラである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、摩擦や擦れの生じにくい圧電アクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態による圧電アクチュエータの構成を示す図である。
【図2】実施形態による圧電アクチュエータの動作を説明するタイミングチャートである。
【図3】実施形態による圧電アクチュエータの動作をステップ毎に説明する図である。
【図4】実施形態による圧電アクチュエータを備えたレンズ鏡筒、カメラの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態による圧電アクチュエータの構成を示す図である。図1において、圧電アクチュエータ10は、ベース部材11、リフタ21a〜c,221a〜c,スライダ22a〜c,222a〜c、リフト駆動体23a〜c、223a〜c、スライド駆動体24a〜c、224a〜c、移動体12から構成されている。
【0019】
ベース部材11は、円柱形状であり、円形の平面11aにリフト駆動体23a、23b、223a、223bが設けられている。リフト駆動体23a、23b、23c、223a、223b、223cは、ベース部材11の円形の平面11aの周方向(図1中、Rで示す)に沿って設けられる。図1の構成では、リフト駆動体は6個設けられているのだが、2個(リフト駆動体23b、223c)は他の部材に隠されて見えないので描かれていない。
【0020】
リフト駆動体23a、23b、23cの上には、それぞれリフタ21a、21b、21cが設けられている。リフタ21a、21b、21cは、円形の平面11aの周方向に沿って配置されるており、それぞれのリフタ21a、21b、21cから円形の平面11aの中心方向に延在して設けられる腕部が連結されて1つの部材(以下、リフタ21という)として構成されている。リフタ21の中心部には円形の孔部が設けられている。リフタ21a、21b、21cのそれぞれの底面にリフト駆動体23a、23b、23cが接するようにリフタ21は配置される。なお、図1において、リフタ21bの底面にもリフタ駆動体23bが設けられているのだが、図1中では他の部材によって隠されて見えないので描かれていない。
【0021】
同様に、リフト駆動体223a、223b、223cの上には、リフタ221a〜cが設けられている。リフタ221a〜cは、円形の平面11aの周方向(図1中、Rで示す)に沿って配置されており、それぞれのリフタ221a〜cから円形の平面11aの中心方向に延在して設けられる腕部が連結されて1つの部材(以下、リフタ221という)として構成されている。リフタ221の中心部には円形の孔部が設けられている。リフタ221a、221b、221cのそれぞれの底面にリフト駆動体223a、223b、223cが接するようにリフタ221は配置される。なお、図1においてリフタ221cの底面にもリフタ駆動体223cが設けられているのだが、図1中では他の部材によって隠されて見えないので描かれていない。
【0022】
リフタ221a、221b、221cそれぞれの周方向Rと交差する側面(本実施形態では、ベース部材11の平面11aと直交する面)には、スライド駆動体224a、224b、224cが設けられている。そして、スライド駆動体224a、224b、224cには、それぞれスライダ222aが接している。
【0023】
スライダ222a、222b、222cは、円形の平面11aの周方向に沿って配置されており、それぞれのスライダ222a、222b、222cから円形の平面11aの中心方向に延在して設けられる腕部が連結されて1つ部材(以下、スライダ222という)として構成されている。スライダ222の中心部には円形の孔部が設けられている。スライド222a、222b、222cの周方向Rと交差する側面(本実施形態では、ベース部材11の平面11aと直交する面)には、スライド駆動体224a、224b、224cが接している。
【0024】
リフタ21a、21b、21cの周方向Rと交差する側面(本実施形態では、ベース部材11の平面11aと直交する面)には、スライド駆動体24a、24b、24cが設けられている。そして、スライド駆動体24a、24b、24cには、それぞれスライダ22a、22b、22cが接している。
【0025】
スライダ22a、22b、22cは、円形の平面11aの周方向Rに沿って配置されており、それぞれのスライダ22a、22b、22cから円形の平面11aの中心方向に延在して設けられる腕部が連結されて1つの部材(以下、スライダ22という)として構成されている。スライダ22の中心部には円形の孔部が設けられている。スライダ22a、22b、22cの周方向Rと交差する側面(本実施形態では、ベース部材11の平面11aと直交する面)には、それぞれスライド駆動体24a、24b、24cが接している。
【0026】
なお、本実施形態では、スライダ22とスライダ224は、同じ形状の部材であり、スライダ222は、スライダ22に対して、図1において、上下方向(Y方向)を逆にして配置されている。
【0027】
スライダ22、スライダ224の上には、移動体12が載置される。移動体12は、円盤形状であり、中心部から回転軸12a、12bが図1中のY方向上下に延在して設けられている。
【0028】
前述のように、スライダ22,222、リフタ21、221のそれぞれの中心部には孔部が設けられている。それらの孔部が重なり合うように、スライダ22,224、リフタ21、221は、ベース部11上に配置されている。そして、移動体12の回転軸12aは、それらの孔部に嵌るように形成されている。回転軸12aが孔部に嵌った状態で、移動体12の円盤形状部分の底面がスライダ22あるいはスライダ224に接するように構成されている。そして、移動体12は、図示しない付勢手段によって、ベース部11の方向に向けて所定の力で押圧付勢されている。図1中、上方に延在して設けられている回転軸12bは、移動体12の回転を伝達するための部材であるギア等が設けられる。
【0029】
リフト駆動体23a、23b、23c、223a、223b、223c、スライド駆動体24a、24b、24c、224a、224b、224cは、それぞれ圧電効果を有する圧電セラミックス等によって構成された所定厚さの圧電素子である。そして、それぞれ電圧の印加によって一方方向(厚さ方向)に所定量変形する。すなわち、電圧のON/OFFによって所定方向に伸縮(ONで伸長,OFFで収縮)し、これによって操作駆動を行うものである。リフト駆動体23a、23b、23c、223a、223b、223c、スライド駆動体24a、24b、24c、224a、224b、224cには、それぞれ制御装置が備える駆動回路から電圧が印加されるようになっており、制御装置によって駆動制御される。
【0030】
リフト駆動体23a、23b、23c、223a、223b、223cは、変形方向(操作駆動方向)をY方向として設けられている。これにより、リフト駆動体23a、23b、23cは、制御装置の制御によってY方向に伸縮し、リフタ21をベース部材11に対してY方向に所定のストロークで移動操作するようになっている。また、リフト駆動体223a、223bは、同様に、リフタ221をベース部材11に対してY方向に所定のストロークで移動操作するようになっている。
【0031】
スライド駆動体23a、23b、23c、223a、223b、223cは、電圧の印加による変形方向(操作駆動方向)を円周方向(R方向)の接線方向として設けられている。これにより、スライド駆動体23a、23b、23cは、制御装置の制御によって円周方向(R方向)の接線方向に伸縮し、スライダ22をリフタ21に対して円周方向(R方向)の接線方向に所定のストロークで移動操作するようになっている。また、スライド駆動体224a、224b、224cは、同様に、スライダ222をリフタ221に対して円周方向(R方向)の接線方向に所定のストロークで移動操作するようになっている。
【0032】
上記のように、リフト駆動体の駆動によってリフタ21、221がベース部材11に対してY方向に所定のストロークで移動操作され、スライド駆動体の駆動によってスライダ22、222がリフタ21、221に対して円周方向(R方向)の接線方向に所定のストロークで移動操作される。
【0033】
上記のような構成の圧電アクチュエータ10は、制御装置によって、それぞれのリフト駆動体、スライド駆動体に印加される電圧が制御され、移動体12を連続的に移動制御する。
【0034】
次に、前述した図1に加え、図2および図3を参照して、制御装置による、移動部材12を連続的に移動駆動する制御について説明する。図2は、圧電アクチュエータ10の動作を説明するタイミングチャートであって、(a)は移動部材12を矢印R方向に駆動する例、(b)は移動部材12を矢印R方向と逆方向に駆動する例を示す。図3は、圧電アクチュエータ10の動作をステップ毎に説明する図であって、移動部材12を矢印R方向に駆動する例である。
【0035】
ここで、図2、図3においては、図1におけるリフタ21a〜c、スライダ22a〜c、リフト駆動体23a〜c、スライド駆動体24a〜cのそれぞれ1つを代表させてリフタ21、スライダ22、リフト駆動体23、スライド駆動体24として示している。リフタ221、スライダ222、リフト駆動体223、スライド駆動体224も同様である。そして、リフタ21、スライダ22、リフト駆動体23、スライド駆動体24で構成される機構を第1駆動機構20とし、リフタ221、スライダ222、リフト駆動体223、スライド駆動体224で構成される機構を第2駆動機構220としている。
【0036】
第1駆動機構20および第2駆動機構220の基本的な作動は、以下の通りである。すなわち、リフト駆動体23,223を駆動(ON)してスライダ22,222によって移動部材12を支持する。次いで、スライド駆動体24,224を駆動(ON)してスライダ22,222が保持した移動部材12をR方向の接線方向(図3中のX軸方向)に移動する。その後、リフト駆動体23,223の駆動を停止(OFF)してスライダ22,222による移動部材12の保持を解除し、スライド駆動体24,224の駆動を停止(OFF)して駆動前の状態に戻る。
【0037】
このような駆動制御を、第1駆動機構20と第2駆動機構220とで所定時間Tずらして行うことで、移動部材12を支持しつつ回転駆動することができる。
【0038】
以下、第1駆動機構20および第2駆動機構220の制御を詳細に説明する。図3(a)に示す初期状態では、第1駆動機構20(リフト駆動体23およびスライド駆動体24)が駆動状態にあり、第2駆動機構220(リフト駆動体223およびスライド駆動体224)は非駆動状態にある。この初期状態では、駆動機構20が移動部材12を支持している。
【0039】
このような初期状態から、第2駆動機構220のリフト駆動体223を駆動する。これにより、図3(b)に示すように、第1駆動機構20と第2駆動機構220の双方が、移動部材12を支持する。
【0040】
第2駆動機構220のリフト駆動体223を駆動してから所定時間(Δt1)後に、第1駆動機構20のリフト駆動体23の駆動を停止(OFF)し、駆動機構20による移動部材12の支持を解除する。これにより、図3(c)に示すように、第2駆動機構220のみで移動部材12を支持した状態となる。つまり、第1駆動機構20に代わって第2駆動機構220が移動部材12を支持する。
【0041】
そして、第1駆動機構20のリフト駆動体23の駆動を停止した所定時間(Δt2)後に、第2駆動機構220のスライド駆動体224を駆動(ON)する。これにより、第2駆動機構220が支持した移動部材12は、X軸プラス方向に移動する。同時に、第1駆動機構20におけるリフト駆動体23の駆動を停止(OFF)する。これにより、図3(d)に示す状態となる。
【0042】
図3(d)に示す状態では、第2駆動機構220(リフト駆動体223およびスライド駆動体224)が駆動状態にあって移動部材12を支持している。また、第1駆動機構20(リフト駆動体23およびスライド駆動体224)は非駆動状態にある。つまり、図3(d)に示す状態は、図3(a)に示す状態とは、第1駆動機構20と第2駆動機構220の作動状態が入れ替わった状態となっている。
【0043】
その後は、前述したステップを、第1駆動機構20と第2駆動機構220とを交換したような制御を行う。すなわち、第1駆動機構20による移動部材12の支持、第2駆動機構220による移動部材12の支持解除、第1駆動機構20による移動部材12の移動駆動、を行うものである。そして、上記のプロセスを繰り返す。これにより、移動部材12を円滑に周方向(R方向)に回転駆動することができる。
【0044】
つまり、図2に示すように、第1駆動機構20の作動に対して、第2駆動機構220が全く同じ作動を所定時間Tずらして行うことで、移動部材12をR方向に移動駆動することができるものである。第1駆動機構20と第2駆動機構220の差動時間(T)は、移動部材12を支持してから送り駆動を終了するまでの時間以上であれば良い。
【0045】
なお、本実施形態においては、移動部材12をR方向と逆方向に回転駆動することができる。その場合には、第1駆動機構20のリフト駆動体23および第2駆動機構220のリフト駆動体223を、それぞれ前述したステップとON/OFFを逆に制御すれば良く、詳細な説明は省略する。
【0046】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
【0047】
本実施形態の構成では、リフト駆動体23a〜c(または223a〜c)の駆動によって移動部材12を支持し、スライド駆動体24a〜c(または224a〜c)の駆動によってその支持した移動部材12を移動操作する。つまり、リフト駆動体とスライド駆動体とは、それぞれその作用方向が移動部材12を操作する方向に一致しており、且つ、両者の作用は独立して行われる。それぞれの操作に係る力の速度(速さおよび方向)は一定であり、スライダ22(または222)と移動部材12との間に速度の変化による不要な相対変位(こすり)は生じない。その結果、こすりに起因する磨耗を抑制できる。
【0048】
また、移動部材12の支持をリフト駆動体23(または223)が行い、移動部材12の移動操作をスライド駆動体24(または224)が行う。リフト駆動体とスライド駆動体とは接触していないため、一方の駆動体の駆動時の振動が他方の駆動体に与える影響もきわめて小さい。つまり、移動部材12の支持と移動の駆動が完全に分離しており、独立して駆動制御できる。このため、制御の自由度が高く、高い駆動精度に構成できる。
【0049】
また、移動部材12を第1駆動機構20と第2駆動機構220とで同一高さ(Y軸方向の位置)で支持して移動操作するため、移動部材12は上下方向(Y軸方向)に移動しない。このため、滑らかな動作が可能となる。
【0050】
また、リフト駆動体23a〜cにより駆動されるリフタ21a〜cは、リフタ21a〜cが連結された部材として構成されている。このため、リフト駆動体23a〜cのそれぞれの変位量の誤差がある場合でも、リフタ21a〜cのそれぞれ駆動量は平均化される。このため、リフト駆動体23a〜cのそれぞれの変位量の誤差に対するリフタ21a〜cのそれぞれの駆動量への影響を小さくすることができ、制御性を高めることができる。
【0051】
このことは、リフト駆動体223a〜c、スライド駆動体24a〜c、224a〜cについても同様である。
【0052】
図4は、本実施の形態におけるカメラ101の構成を模式的に示す概略構成図である。
【0053】
図4に示すように、カメラ101は、撮像素子108が内蔵されたカメラボディ102と、レンズ107を有するレンズ鏡筒103とを備えている。
【0054】
レンズ鏡筒103は、カメラボディ102に着脱可能な交換レンズである。レンズ鏡筒103は、レンズ107、カム筒106、圧電アクチュエータ10等を備えている。圧電アクチュエータ10は、カメラ101のフォーカス動作時にレンズ107を駆動する駆動源として用いられている。圧電アクチュエータ10の移動体の回転軸(図1中の回転軸12b)に設けられたギア4から得られた駆動力は、直接、カム筒106に伝えられる。レンズ107は、カム筒106に保持されており、圧電アクチュエータ10の駆動力により、光軸方向Lに略平行に移動して、焦点調節を行うフォーカスレンズである。
【0055】
カメラ101の使用時には、レンズ鏡筒103内に設けられたレンズ群(レンズ107を含む)によって、撮像素子108の撮像面に被写体像が結像される。撮像素子108によって、結像された被写体像は電気信号に変換され、その信号をA/D変換することによって、画像データが得られる。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態のカメラ101及びレンズ鏡筒103は、上記の実施の形態で説明した圧電アクチュエータ10を備えている。したがって、従来よりも出力効率が向上した圧電アクチュエータ10によって、カム筒106を直接駆動させることができる。したがって、エネルギーの損失が少なく省エネルギー効果が得られる。また、部品点数の削減が可能になる。
【0057】
本実施の形態では、レンズ鏡筒103は、交換レンズである例を示したが、これに限らず、例えば、カメラ本体と一体化したレンズの駆動の圧電アクチュエータ10を用いてもよい。
【0058】
なお、本実施の形態では、リフト駆動体23a、23b、23c、223a、223b、223c、スライド駆動体23a、23b、23c、223a、223b、223cは、厚さ方向に伸縮する(縦振動モード)圧電素子を用いている。しかしながら、厚さ方向と直交する方向に伸縮する(厚み滑り振動モード)圧電素子を用いてもよい。この場合、図1におけるリフト駆動体23a、23b、23c、223a、223b、223cがリフタ21、221を周方向Rに駆動するのに用いられ、スライド駆動体23a、23b、23c、223a、223b、223cがスライダ22,222を縦方向(Y軸方向)に駆動するのに用いられることになる。すなわち、リフト駆動体とスライド駆動体の働きが逆になり、リフタとスライダの働きが逆になる。したがって、前述の実施の形態におけるリフト駆動体とスライド駆動体の制御のしかたを入れ替えればよい。
【符号の説明】
【0059】
10:圧電アクチュエータ、11:ベース部材、12:移動体、20:第1駆動機構、220:第2駆動機構、21、21a〜c、221、221a〜c:リフタ、22、22a〜c、222、222a〜c:スライダ、23、23a〜c、223、223a〜c:リフト駆動体、24、24a〜c、224、224a〜c:スライド駆動体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と移動部材との間に設けられ、前記ベース部材の第1面と交差する交差方向に伸縮可能な第1圧電素子および第2圧電素子と、
前記ベース部材と前記移動部材との間に設けられ、前記交差方向とは異なる方向に伸縮可能な第3圧電素子および第4圧電素子と、
前記第1圧電素子、第2圧電素子、第3圧電素子および第4圧電素子の伸縮量が伝達され、前記移動部材に駆動力を伝達する伝達部材と
を備えることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエータであって、
前記移動部材は、前記第3圧電素子および第4圧電素子の伸縮方向に移動することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエータであって、
前記伝達部材は、前記ベース部材と前記移動部材との間に設けられた第1の部材および第2の部材とを備え、
前記第1圧電素子は、前記第1面と第1の部材との間に設けられ、
前記第2圧電素子は、前記第1面と第1の部材との間の前記第1圧電素子とは異なる位置に設けられ、
前記第3圧電素子は、前記前記第1の部材と前記第2の部材との間に設けられ、
前記第4圧電素子は、前記前記第1の部材と前記第2の部材との間の前記第3圧電素子とは異なる位置に設けられたこと
を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電アクチュエータであって、
前記ベース部材と前記移動部材との間に設けられ、前記ベース部材の第1面と交差する交差方向に伸縮可能な第5圧電素子および第6圧電素子と、
前記ベース部材と前記移動部材との間に設けられ、前記交差方向とは異なる方向に伸縮可能な第7圧電素子および第8圧電素子と、
前記伝達部材は、前記ベース部材と前記移動部材との間に設けられた第3の部材および第4の部材とを備え、
前記第5圧電素子は、前記第1面と第3の部材との間に設けられ、
前記第6圧電素子は、前記第1面と第3の部材との間の前記第5圧電素子とは異なる位置に設けられ、
前記第7圧電素子は、前記第3の部材と前記第4の部材との間に設けられ、
前記第8圧電素子は、前記第3の部材と前記第4の部材との間の前記第7圧電素子とは異なる位置に設けられたこと
を特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電アクチュエータであって、
前記移動部材は、前記第7圧電素子および第8圧電素子の伸縮方向に移動することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の圧電アクチュエータであって、
前記移動部材は、前記第1圧電素子および前記第2圧電素子が伸びた状態であり、かつ、前記第5圧電素子および前記第6圧電素子が収縮した状態において、前記第2の部材で支持され、前記第5圧電素子および前記第6圧電素子が伸びた状態であり、かつ、前記第1圧電素子および前記第2圧電素子が収縮した状態において、前記第4の部材で支持されることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の圧電アクチュエータを備えたレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の圧電アクチュエータを備えたカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−283938(P2010−283938A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133573(P2009−133573)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】