説明

圧電アクチュエータ

【課題】 低コストで大きい振動振幅と振動発生力を得ることが可能で、耐落下衝撃性や長期信頼性に優れた圧電アクチュエータを提供すること。
【解決手段】 圧電バイモルフ10と、その両端部に設けた支持体11とからなり、圧電バイモルフ10は、駆動周波数において、中央部分の変位が最大となる1次共振モードで振動するように構成され、支持体11は、圧電バイモルフ10の両端部の幅方向に帯状の部分の一部を上下両面から挟んで支持する構造を有し、支持体11を介して外部の振動体に振動を伝達するように構成されている。圧電バイモルフ10は、金属シム12の1面に、圧電体13を貼り付け、圧電体13の幅方向の両側に金属シム12が張り出した部分を有するように構成され、支持体11は、圧電体13の上面との間に空隙を形成し、金属シム12の幅方向に張り出した部分に嵌め合うような溝を設けて圧電バイモルフ10を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造または単板構造を有する圧電バイモルフを用いた圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置にタッチパネル機能を組み込んだ電子機器が増えており、また、パソコンやPDA(Personal Digital Assistant)などの多くの電子機器の入力装置においては操作キーが用いられている。タッチパネルや操作キーは、操作者が指やペンで押圧することによって情報を入力するものである。しかし、操作した後に、確実に操作したという情報が操作者に伝わらないため、操作者は入力が行われたことを把握できない場合があった。特に、最近の表示装置、入力装置においては薄型の操作キーが主流であるため、クリック感が浅い、もしくはほとんど無いに等しいものが増えており、これが操作者にとって、確実に操作したという感覚を不明瞭なものとしてしまう傾向があった。このため、同じ操作キーを2度押してしまう等、誤った操作をしてしまう場合があった。
【0003】
そこで、従来、入力が行われたことを操作者に伝えるための手段として、電磁アクチュエータを装置内に備え、入力が行われたときに操作者の指に振動を返すことにより、確実に操作を行ったという感触を操作者に与える方式がある。しかし、このような電磁アクチュエータは、振動が収束するまで約0.3秒程度の時間を要するため、操作者に違和感を与えたり、操作者が電磁アクチュエータによる操作モードを解除してしまい、その機能を使わないことがあるという問題があった。
【0004】
この解決手段として、電磁アクチュエータの1/5程度の振動収束性を持つ応答性の良い圧電アクチュエータを用いる方法がある。タッチパネルなどにおいて、操作者の指に振動を伝えるための圧電アクチュエータの従来例が、特許文献1および2に記載されている。また、圧電アクチュエータとしては、大きな振動振幅を得やすい積層構造、または単板構造の圧電バイモルフが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−303937号公報
【特許文献2】特開2010−162508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タッチパネルに振動を与える際の圧電アクチュエータの振動周波数は、例えば150Hz〜250Hz程度が好適である。また、様々な装置にこの振動機能を搭載するために、振動振幅は無負荷時に400μm以上必要であり、大きい振動発生力が必要となる。さらに、振動体に実装する場合の耐落下衝撃性や高い信頼性が必要となる。
【0007】
圧電バイモルフを用いて圧電アクチュエータを構成する場合、一般的に、圧電バイモルフの長手方向の両端を支持する方式、圧電バイモルフの長手方向の片端を支持する方式、圧電バイモルフの長手方向の中央を支持する方式の3方式がある。振幅が大きくとれる片端支持の場合は、落下衝撃時に全ての荷重が支持される片端部の根元へ掛かってしまい、振動発生力と耐落下衝撃性を両立することは困難である。また中央支持では圧電バイモルフの重量の全て、さらに錘を使用した場合は圧電バイモルフと錘の重量の全てを中央の支持部分で支えることになる。そのため、十分な耐落下衝撃性を得るためには、支持部分を強固に固定する必要があり、圧電バイモルフの長手方向の有効長が短くなってしまう。これにより共振周波数が高くなってしまうため、必要とする共振周波数を得るためには圧電バイモルフの長手方向寸法が大きくなるという問題があった。
【0008】
一方、振動発生力と振動振幅と耐落下衝撃性のバランスが比較的良いのは両端支持である。但し、両端部分を長手方向に2mm〜3mmにわたって動きを抑えるように、すなわち、リジッドに固定した場合は、中央の振幅は50μm〜100μmとなり、必要な振動振幅や振動発生力を得るのは難しい。また両端を弾性支持した場合は、リジッドに固定した場合よりも振動振幅の減少は抑えられるが、十分な振動振幅や振動発生力を得るのは本質的に難しい。
【0009】
例えば、特許文献1の圧電アクチュエータは、圧電バイモルフの長手方向の両端を粘着テープで固定部材に貼り付けて弾性支持し、連結部材を介して圧電バイモルフの中央部の振動を振動体に伝える構造である。また、圧電バイモルフの中央の振幅を大きくするため、圧電バイモルフの両端の支持部材や連結部材を選択している。しかし、特許文献1に開示された構成の圧電アクチュエータでは、数十μm程度の振動振幅が得られるに過ぎない。また、圧電バイモルフの振動系の共振周波数が実際に使用する駆動周波数よりも大きいため、駆動周波数に対して振動振幅はほぼ一定となり、装置設計は容易であるが、得られる振動振幅は小さい。このため、特許文献1の構成の圧電アクチュエータを用いた場合、設計変更により振動振幅を大きくしようとしても、上記の必要とされる大きな振動振幅や振動発生力を得るのは困難であり、タッチパネルなどに搭載する場合は、装置側に特殊な設計が必要となるという問題がある。
【0010】
特許文献2では、2つの圧電バイモルフを用い、それぞれの圧電バイモルフにスピーカ機能とタッチパネル振動機能を持たせ、それらを一体として1つのデバイスで構成したことを特徴としている。タッチパネル振動用の圧電バイモルフは、両端支持の構成で、一端はケースにリジッドに固定され、他端は支持部が振動体に固定されている。特許文献2の場合、2つの圧電バイモルフを一体化し、片方をスピーカ用、もう片方を振動用としているため、両者の圧電バイモルフ共に振動発生力が弱まり、タッチパネル振動用として十分な振動発生力は得られていない。また、バイモルフを2本使う必要があるため、デバイスの形状が大きくなってしまうという問題もある。
【0011】
一般的に、圧電バイモルフの両端支持において、中央部分の振動振幅を大きくする場合、両端部の圧電バイモルフを支持するそれぞれの部材の長手方向の幅をできるだけ狭くすること、すなわち、圧電バイモルフの支持部分が線に近い接触状態となることが有効であることが知られている。このように線状に支持し、圧電バイモルフを所望の周波数で共振させる場合、圧電バイモルフの長手方向の全てが有効長となり、かつ、支持部分での固定幅が小さいため、大きな駆動電圧を入力することにより、圧電バイモルフの抗折強度の限界まで振幅を大きくすることが可能となる。
【0012】
しかし、実際に圧電アクチュエータをモジュールとして組み立てる場合、圧電バイモルフの両端部を線状に近い状態で支持するためには、以下の2つの課題がある。第1の課題は、圧電バイモルフの作製には約1000℃の焼結熱処理工程が必要なため、焼結の前後において厚み方向に大きな収縮が発生し、さらにこの収縮の大きさに作業ロット間でばらつきが生じることに起因する課題である。例えば、圧電バイモルフの厚さを設計しても、実際にはその厚さには、ある範囲のばらつきが生ずる。一般的な単板の圧電バイモルフの作製では、焼結上がりの設計値を焼結後の収縮と、研磨加工を行う際の加工しろを加味して定め、収縮のばらつきに対処している。しかし、表面の研磨加工を行う場合、研磨後に電極材料の印刷、乾燥、焼付けを行うことが必要となり、製造コストの上昇を招いてしまう。
【0013】
また、上記のような厚み寸法のばらつきが存在する圧電バイモルフの両端部に、上下両面から挟み込むような線状の支持構造を設置しようとする場合、圧電バイモルフが挿入され固定される部分の隙間の高さを圧電バイモルフの実際の厚さに合わせて調整する必要がある。このような調整方法としては、レーザー測長器などを用いて一つ一つの圧電バイモルフの厚み寸法を測定しながら固定部分を上下させることが考えられるが、携帯端末のように数十万個〜数百万個の市場投入が想定されるような量産品では、このような調整は製造コストの増加を招き、実用的ではない。また、圧電バイモルフのモジュール組み立て後にその支持部を調整可能とする調整機構を有する構造も考えられるが、やはり、コストの増加や耐落下衝撃性の低下が生ずるおそれがある。
【0014】
圧電バイモルフの両端部を線状に近い状態で支持する場合の第2の課題は、長期信頼性である。圧電バイモルフは最外層の伸縮が最も大きいため、原理上、最外層の電極に最も大きな電圧がかかる。線状の支持を行った場合、その支持部分が振動により、圧電バイモルフとの間で相対的に変位するため、大きな電圧がかかっている最外層の電極と支持部分との間に摩擦が発生し、この摩擦により電極が損傷し、長期信頼性が損なわれるおそれがある。
【0015】
以上のように、従来のタッチパネル用の圧電アクチュエータは、振動発生力が小さく、また、小さな振動発生力を装置の設計によりカバーする場合、その圧電アクチュエータに特化した装置側の設計が必要となり、結果として汎用性が低く、製造コストの上昇を招くという課題があった。
【0016】
また、従来技術により、振動振幅や振動発生力が大きな圧電アクチュエータを得ようとする場合、製造コストの上昇を招き、耐落下衝撃性や長期信頼性が不十分となるおそれがあった。
【0017】
そこで、本発明の目的は、低コストで大きい振動振幅と振動発生力を得ることが可能で、耐落下衝撃性や長期信頼性に優れた圧電アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するため、本発明の圧電アクチュエータは、矩形状の圧電バイモルフと、前記圧電バイモルフの長手方向の両端部にそれぞれ設けた支持体とからなり、前記圧電バイモルフは板状形状を有し、駆動周波数において、前記圧電バイモルフの長手方向の両端に対する長手方向の中央部分の変位が最大となる1次共振モードで振動するように構成され、前記支持体は、前記圧電バイモルフの長手方向の両端部の幅方向に帯状の部分の少なくとも一部を上下両面から挟んで支持する構造を有し、前記支持体を介して前記支持体に接触する外部の振動体に前記圧電バイモルフの振動を伝達することを特徴とする。
【0019】
ここで、前記圧電バイモルフは、矩形の板状形状を有する金属シムの少なくとも1面に、幅方向の長さが前記金属シムの幅方向の長さよりも小さい矩形の板状形状を有する圧電体を貼り付け、前記長手方向の両端部において前記圧電体の幅方向の両側に前記金属シムが張り出した部分を有するように構成され、前記支持体は、前記圧電体の上面または下面との間に空隙が形成され、前記金属シムの前記圧電体の幅方向に張り出した部分に嵌め合うように樹脂成形加工により作製されていてもよい。
【0020】
また、前記支持体は、前記圧電バイモルフの長手方向の両端部を幅方向に帯状に上下両面から挟み、前記両端部の形状に嵌め合うように樹脂成形加工により作製されていてもよい。
【0021】
また、前記支持体は、前記圧電バイモルフの長手方向の両端部を長手方向の両側からも支持する構造を有していてもよい。
【0022】
また、前記支持体と前記圧電バイモルフとの間の少なくとも一部にシリコーン樹脂が充填されていてもよい。
【0023】
また、前記支持体はシリコーン樹脂の成型加工により作製されていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
上記のように、本発明では、圧電バイモルフの長手方向の両端に対する長手方向の中央部分の変位が最大となる1次共振モードで駆動する構成とする。また、圧電バイモルフの両端部の幅方向に帯状の部分の少なくとも一部を上下両面から挟んで支持する両端支持の構造を用いる。さらに、その両端部の支持体を介してタッチパネルなどの外部の振動体に圧電バイモルフの振動を伝達する構成とする。このように、圧電バイモルフの長手方向の両端部で、幅方向に線状に近い帯状の支持を行う構成により、大きな振動振幅と大きな振動発生力を得ることができる。また、両端部の支持体を外部の振動体に取り付け、支持体の振動により圧電バイモルフの振動を伝達する構成とする。このように、支持体を固定しないで、圧電バイモルフの振動の慣性力により支持体を振動させて外部にその振動を伝達する構成をとることにより、支持体を固定した場合に圧電体の電極との間の摩擦で発生する信頼性の低下を防ぐことができる。また、必要な耐落下衝撃性も得ることができる。
【0025】
両端支持の第1の構造としては、圧電バイモルフを金属シムの少なくとも1面に金属シムよりも幅の狭い圧電体を貼り付けた構成とし、支持体を金属シムの両端部の張り出した部分に嵌め合うように樹脂成形加工により作製する。金属シムの厚さは製造工程中では変化しないので、支持体で金属シムの部分のみを支持し、焼結時に厚さのばらつきが生ずるおそれのある圧電体との間に接触しないような空隙を設けることにより、従来のような圧電体の厚さに応じた調整加工が不要となる。また、なお、金属シムの上面にのみ圧電体を貼り付けた圧電バイモルフを使用する場合は、両端部の支持体を金属シムの下面に線状または帯状に接触させてもよい。また、支持体の高さ寸法などの外形寸法を常に一定とすることができるため、圧電アクチュエータを収納する外装ケースなどに容易に組み込むことが可能となる。
【0026】
両端支持の第2の構造としては、支持体を、圧電バイモルフの長手方向の両端部を幅方向に帯状に上下両面から挟み、前記両端部の形状に嵌め合うように樹脂成形加工により作製する。この樹脂成形は圧電バイモルフの形状に合わせて成形加工されるため、その焼結時の厚さ寸法のばらつきを吸収することができる。また、支持体の高さ寸法などの外形寸法を常に一定とすることができるため、圧電アクチュエータを収納する外装ケースなどに容易に組み込むことが可能となる。
【0027】
両端支持の第3の構造としては、支持体を、圧電バイモルフの長手方向の両端部を上下両面から挟んで支持すると同時に、圧電バイモルフの長手方向の両端を長手方向の両側からも支持する構造とする。例えば、圧電バイモルフの長手方向の両端が支持体の溝に挿入されて支持される構造である。この場合、支持体は樹脂成形加工により作製することができ、圧電バイモルフの両端を支持体に固定する必要がないため、支持体の溝の形状を、圧電バイモルフの焼結時の厚さのばらつきがあっても挿入できる大きさに設定しておくことができる。この構造により圧電素子の厚み寸法のばらつきは吸収され、また、支持体の高さ寸法などの外形寸法を常に一定とすることができるため、圧電アクチュエータを収納する外装ケースなどに容易に組み込むことが可能となる。また、支持体の溝と圧電バイモルフの両端部との間にシリコーン樹脂を充填することができ、シリコーン樹脂は温度に対してヤング率が一定に近いため、シリコーン樹脂の充填により、耐環境性能、耐温度特性において安定した圧電アクチュエータを得ることが可能となる。
【0028】
以上のように、本発明によれば、低コストで大きい振動振幅と振動発生力を得ることが可能で、耐落下衝撃性や長期信頼性に優れた圧電アクチュエータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による圧電アクチュエータの第1の実施の形態を示す斜視図。
【図2】本発明による圧電アクチュエータの第1の実施の形態に使用する支持体を示す図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は側面図。
【図3】本発明による圧電アクチュエータの第2の実施の形態を示す斜視図。
【図4】本発明による圧電アクチュエータの第2の実施の形態に使用する支持体を示す図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図。
【図5】本発明による圧電アクチュエータの第3の実施の形態を示す斜視図。
【図6】本発明の実施例の圧電アクチュエータの駆動周波数に対する振動振幅を示す図。
【図7】本発明の実施例の圧電アクチュエータの駆動周波数に対する振動発生力を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明による圧電アクチュエータの実施の形態について図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本発明による圧電アクチュエータの第1の実施の形態を示す斜視図である。図2は、本発明による圧電アクチュエータの第1の実施の形態に使用する支持体を示す図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は側面図である。図1に示すように、本実施の形態の圧電アクチュエータは、圧電バイモルフ10と、圧電バイモルフ10の両端部にそれぞれ設けた支持体11とからなっている。圧電バイモルフ10は、長手方向と幅方向とを有する略長方形の板状形状を有し、駆動周波数において、圧電バイモルフ10の長手方向の両端に対する長手方向の中央部分の変位が最大となる1次共振モードで振動するように構成されている。支持体11は、圧電バイモルフ10の長手方向の両端部分の幅方向に帯状の部分の一部を上下両面から挟んで支持する構造を有し、支持体11を介して支持体11に接触するタッチパネルなどの外部の振動体に圧電バイモルフ10の振動を伝達するように構成されている。
【0032】
また、本実施の形態の圧電アクチュエータの圧電バイモルフ10は、長手方向と幅方向とを有する略長方形の板状形状を有する金属シム12の1面に、幅方向の長さが金属シム12の幅方向の長さよりも小さい略長方形の板状形状を有する圧電体13を貼り付けて、長手方向の両端部分において圧電体13の幅方向の両側に金属シム12が張り出した部分を有するように構成されている。
【0033】
支持体11には、図2に示すように、圧電体13の上面との間に空隙を形成するための窪み15を形成し、金属シム12の圧電体13の幅方向に張り出した部分に嵌め合うような溝14を設けており、支持体11の全体は樹脂成形加工により作製されている。支持体11は金属シム12の下面に帯状に接触している。
【0034】
図3は、本発明による圧電アクチュエータの第2の実施の形態を示す斜視図である。図4は、本発明による圧電アクチュエータの第2の実施の形態に使用する支持体を示す図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図である。図3に示すように、本実施の形態の圧電アクチュエータは、圧電バイモルフ20と、圧電バイモルフ20の両端部にそれぞれ設けた支持体21とからなっている。圧電バイモルフ20は、長手方向と幅方向とを有する略長方形の板状形状を有し、駆動周波数において、圧電バイモルフ20の長手方向の両端に対する長手方向の中央部分の変位が最大となる1次共振モードで振動するように構成されている。支持体21は、圧電バイモルフ20の長手方向の両端部の幅方向に帯状の部分を上下両面から挟んで支持する構造を有し、支持体21を介して支持体21に接触する外部の振動体に圧電バイモルフ20の振動を伝達するように構成されている。
【0035】
図4に示すように、支持体21は、圧電バイモルフ20の両端部の形状に嵌め合うように樹脂成形加工により作製されており、圧電バイモルフ20の両端部が幅方向から挿入できるように、一方向からの切り込み状の溝22を設けている。
【0036】
図5は、本発明による圧電アクチュエータの第3の実施の形態を示す斜視図である。図5に示すように、本実施の形態の圧電アクチュエータは、圧電バイモルフ30と、圧電バイモルフ30の両端部にそれぞれ設けた支持体31とからなっている。圧電バイモルフ30は、長手方向と幅方向とを有する略長方形の板状形状を有し、駆動周波数において、圧電バイモルフ30の長手方向の両端に対する長手方向の中央部分の変位が最大となる1次共振モードで振動するように構成されている。支持体31は、圧電バイモルフ30の長手方向の両端部分を上下両面から挟んで支持する構造を有し、支持体31を介して支持体31に接触する外部の振動体に圧電バイモルフ30の振動を伝達するように構成されている。
【0037】
図5のように、支持体31を、圧電バイモルフ30の長手方向の両端部の幅方向に帯状の部分を上下両面から挟んで支持すると同時に、圧電バイモルフ30の長手方向の両端部を長手方向の両側からも支持する構造とする。圧電バイモルフ30の長手方向の両端が支持体31の溝32に挿入されて支持される構造である。支持体31は樹脂成形加工により作製され、支持体31の溝32の形状は、圧電バイモルフ30の焼結時の厚さのばらつきがあっても挿入できる大きさに設定している。また、支持体31と圧電バイモルフ30との間の隙間にはシリコーン樹脂が充填されている。
【0038】
なお、支持体と圧電バイモルフとの間の隙間へのシリコーン樹脂の充填は、上記の第1の実施の形態や第2の実施の形態においても適用することができ、シリコーン樹脂の充填により、耐環境性能、耐温度特性の向上、さらには衝撃時の支持体と圧電バイモルフとの間の摩擦による信頼性劣化のおそれを除くこともできる。また、支持体の樹脂成形の材料としてシリコーン樹脂を用いることにより、上記と同様な効果が期待できる。
【実施例】
【0039】
次に、図3に示した第2の実施の形態の圧電アクチュエータの具体的な一実施例について説明する。
【0040】
圧電バイモルフ20の作製は、先ず、NECトーキン社製のPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系圧電セラミックスの粉末材料をベースとして、これにバインダー材料を添加し、泥しょうと呼ばれる混練作業を行った後、厚さ31μmのグリーンシートを作成した。この上に、銀とパラジウムと共材としての圧電セラミックス材料とを混合してなる導電材料を用いて、内部電極パターンを印刷した。この時点でグリーンシートはロール状であるため、これをA4大の大きさに打抜く加工、すなわちトリミング加工を行い、トリミング加工された枚葉シートをプレス用の金型に入れ、40層に積層した後、温度が約100℃、圧力が約11.8MPaの条件でプレスを行い、焼結を行った。この後、ダイシング加工にて裁断し、長さ43mm×幅3.1mm×厚さ0.75mmの長方形板状の積層型の圧電体を得た。その後、積層された各層の圧電体の極性が交互に逆になるように分極を行った。これにより、この積層型の圧電体は圧電バイモルフとして機能する。作製した圧電バイモルフを支持体21に取り付け、さらに錘を付加して共振周波数を調整し、それらを外装ケースに組み込んで圧電アクチュエータを完成した。
【0041】
図6は、本実施例の圧電アクチュエータの駆動周波数に対する振動振幅を示す図である。図6のように、タッチパネル搭載用として適した周波数180〜190Hzにおいて、800μm程度の振動振幅が得られている。図7は、本実施例の圧電アクチュエータの駆動周波数に対する振動発生力を示す図である。図7のように、タッチパネル搭載用として適した周波数180〜190Hzにおいて、0.15N以上の発生力が得られている。また、本実施例の圧電アクチュエータにおいて、十分な耐落下衝撃性や長期の信頼性が得られることを確認した。
【0042】
以上のように、低コストで大きい振動振幅と振動発生力を得ることが可能で、耐落下衝撃性や長期信頼性に優れた圧電アクチュエータが得られることを確認できた。
【0043】
本発明による圧電アクチュエータは、タッチパネル機能付き表示装置以外の様々な入力装置に対しても、有効に適用することができる。
【0044】
なお、本発明は上記の実施の形態や実施例に限定されるものではないことはいうまでもなく、例えば、圧電バイモルフの構造、外形形状、材質、支持体の構造や形状、材質など、目的や用途に応じて設計変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
10、20、30 圧電バイモルフ
11、21、31 支持体
12 金属シム
13 圧電体
14、22、32 溝
15 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の圧電バイモルフと、前記圧電バイモルフの長手方向の両端部にそれぞれ設けた支持体とからなり、前記圧電バイモルフは板状形状を有し、駆動周波数において、前記圧電バイモルフの長手方向の両端に対する長手方向の中央部分の変位が最大となる1次共振モードで振動するように構成され、前記支持体は、前記圧電バイモルフの長手方向の両端部の幅方向に帯状の部分の少なくとも一部を上下両面から挟んで支持する構造を有し、前記支持体を介して前記支持体に接触する外部の振動体に前記圧電バイモルフの振動を伝達することを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記圧電バイモルフは、矩形の板状形状を有する金属シムの少なくとも1面に、幅方向の長さが前記金属シムの幅方向の長さよりも小さい矩形の板状形状を有する圧電体を貼り付け、前記長手方向の両端部において前記圧電体の幅方向の両側に前記金属シムが張り出した部分を有するように構成され、前記支持体は、前記圧電体の上面または下面との間に空隙が形成され、前記金属シムの前記圧電体の幅方向に張り出した部分に嵌め合うように樹脂成形加工により作製されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記支持体は、前記圧電バイモルフの長手方向の両端部を幅方向に帯状に上下両面から挟み、前記両端部の形状に嵌め合うように樹脂成形加工により作製されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記支持体は、前記圧電バイモルフの長手方向の両端部を長手方向の両側からも支持する構造を有することを特徴とする請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記支持体と前記圧電バイモルフとの間の少なくとも一部にシリコーン樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記支持体はシリコーン樹脂の成型加工により作製されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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