説明

圧電トランスインバータとそれを用いた高圧電源装置及び画像形成装置

【課題】圧電トランスの駆動パルスを間欠発振させることにより、低いシステムクロックでも十分な分解能の高圧出力を得ることが可能となる。
【解決手段】高圧電源装置70は、AC駆動電圧を圧電トランス76の1次側に印加して、この圧電トランス76の2次側から昇圧されたAC出力電圧を発生させる圧電トランス駆動回路75を有している。圧電トランス駆動回路75は、発振回路73の出力パルスに基づき、DC電圧をスイッチングして駆動電圧を圧電トランス76の1次側に印加するスイッチング手段を有し、駆動電圧波形の出力電圧波形に対する位相差が(駆動電圧波形と出力電圧波形の平均位相差)±180°以下の範囲にて駆動電圧を不連続にすることにより駆動電圧の平均周波数を可変し、圧電トランス76の2次側から昇圧された連続した正弦波の出力電圧を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電トランスを駆動する圧電トランスインバータとそれを用いた高圧電源装置及び電子写真式等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,電子写真式の画像処理装置に用いられる高圧電源装置として、例えば、下記の特許文献1に記載されているように、圧電トランスを用いて昇圧するものがあった。
【0003】
この種の高圧電源装置は、圧電振動子の共振現象を利用して低電圧入力で高電圧を発生させることができる圧電トランスを有し、この圧電トランスの入力電流が電流検出抵抗で検出される。電流検出抵抗の端子電圧と制御信号をオペアンプに入力し、オペアンプの出力をVCOに入力し駆動パルスが生成される。生成された駆動パルスにより圧電トランスが駆動されると、この圧電トランスから交流の高電圧が出力され、整流回路で直流電圧に整流されて出力される。出力された直流の高電圧は、電子写真式の画像処理装置内の転写ローラへ印加される。
【0004】
【特許文献1】特開平11−206113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の高圧電源装置では、駆動パルスの周波数によって変換効率と昇圧比が変化する圧電トランスを使用するため,高圧出力が上がると、高圧出力を調整するための電圧制御発振器に対する制御電圧に対して、高圧出力電圧が大きく変化してしまう。そのため、従来のこの種の装置においては、圧電トランスの効率の高い領域を使用することは困難で、最大出力の半分以下の領域で使用せざるを得なかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧電トランスインバータは、AC駆動電圧を圧電トランスの1次側に印加して、前記圧電トランスの2次側から昇圧されたAC出力電圧を発生させる圧電トランスインバータにおいて、入力パルスに基づき、DC電圧をスイッチングして前記駆動電圧を前記圧電トランスの1次側に印加するスイッチング手段を有し、前記駆動電圧波形の前記出力電圧波形に対する位相差が(前記駆動電圧波形と前記出力電圧波形の平均位相差)±180°以下の範囲にて前記駆動電圧を不連続にすることにより前記駆動電圧の平均周波数を可変し、前記圧電トランスの2次側から昇圧された連続した正弦波の前記出力電圧を発生させることを特徴とする。
【0007】
本発明の高圧電源装置は、前記圧電トランスインバータと、前記出力電圧をDC電圧に変換して負荷に供給する整流回路とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の画像形成装置は、前記高圧電源装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の圧電トランスインバータ及び高圧電源装置によれば、圧電トランスの駆動電圧を不連続(例えば、間欠発振させて生成した入力パルスに基づき駆動電圧を不連続)にすることにより、低いシステムクロックでも十分な分解能の高圧出力を得ることが可能となる。更に、このような高圧電源装置を用いた画像形成装置によれば、高画質の画像を形成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0011】
(実施例1の画像形成装置)
図8は、本発明の実施例1における高圧電源装置を用いた画像形成装置を示す構成図である。
【0012】
この画像形成装置1は、例えば,電子写真式のカラー画像形成装置であり、ブラック現像器2K、イエロー現像器2Y、マゼンタ現像器2M、シアン現像器2Cが着脱可能に挿着されている。各現像器2K,2Y,2M,2Cは、各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cにそれぞれ接した各色の帯電ローラ36K,36Y,36M,36Cによってそれぞれ一様に帯電される。帯電された各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cは、ブラックLEDヘッド3K、イエローLEDヘッド3Y、マゼンタLEDヘッド3M、シアンLEDヘッド3Cの発光によってそれぞれ潜像を形成される。
【0013】
各現像器2K,2Y,2M,2C内の各色の供給ローラ33K,33Y,33M,33Cが、各現像ローラ34K,34Y,34M,34Cにトナーを供給し、各色の現像ブレード35K,35Y,35M,35Cにより、各現像ローラ34K,34Y,34M,34C表面に一様にトナー層が形成され、各感光体ドラム32K,32Y,32M,32C上にトナー像が現像される。各色の現像器2k,2Y,2M,2C内の各クリーニングブレード37K,37Y,37M,37Cは、転写後の残トナーをクリーニングする。
【0014】
ブラックトナーカートリッジ4K、イエロートナーカートリッジ4Y、マゼンタトナーカートリッジ4M、及びシアントナーカートリッジ4Cは、各現像器2K,2Y,2M,2Cに着脱可能に取り付けられ、内部のトナーを各現像器2K,2Y,2M,2Cに供給可能な構造になっている。ブラック転写ローラ5K、イエロー転写ローラ5Y、マゼンタ転写ローラ5M、及びシアン転写ローラ5Cは、転写ベルト8の裏面から転写ニップにバイアスが印加可能に配置されている。転写ベルト駆動ローラ6、及び転写ベルト従動ローラ7は、転写ベルト8を張架しローラの駆動によって用紙15を搬送可能な構造になっている。
【0015】
転写ベルトクリーニングブレード11は、転写ベルト8上のトナーを掻き落とせるようになっていて、掻き落とされたトナーが転写ベルトクリーナ容器12には収容される。用紙カセット13は、画像形成装置1に着脱可能に取り付けられ、転写媒体である用紙15が積載される。ホッピングローラ14は、用紙15を用紙カセット13から搬送する。レジシトローラ16及び17は、用紙15を転写ベルト8に所定のタイミングで搬送する。定着器18は、用紙15のトナー像を熱と加圧によって定着する。用紙ガイド19は、用紙15を排紙トレー20にフェースダウンで排出する。
【0016】
図9は、図8の画像形成装置1における制御回路の構成を示すブロック図である。
この制御回路は、ホストインタフェース部50を有し、このホストインタフェース部50がコマンド/画像処理部51に対してデータを送受信する。コマンド画像処理部51は、LEDヘッドインタフェース部52に対して画像データを出力する。LEDへツドインタフエース部52は、プリンタエンジン制御部53によってヘッド駆動パルス等が制御され、LEDヘッド3K,3Y,3M,3Cを発光させる。
【0017】
プリンタエンジン制御部53は、高圧制御部60に対して帯電バイアス、現像バイアス、転写バイアス等の制御値を送る。高圧制御部53は、帯電バイアス発生部61と、現像バイアス発生部62と、圧電トランスを用いた高圧電源装置により構成された転写バイアス発生部63とに信号を送る。帯電バイアス発生部61、及び現像バイアス発生部62は、ブラック現像器2K、イエロー現像器2Y、マゼンタ現像器2M、及びシアン現像器2Cの各帯電ローラ36K,36Y,36M,36C及び各現像ローラ34K,34Y,34M,34Cに対してバイアスを印加する。
【0018】
プリンタエンジン制御部53は、ホッピングモータ54、レジストモータ55、ベルトモータ56、定着器ヒータモータ57、及び各色のドラムモータ58K,58Y,58M,58を所定のタイミングで駆動する。定着器ヒータ59は、サーミスタ65の検出値に応じてプリンタエンジン制御部53によって温度制御される。
【0019】
(実施例1の高圧電源装置)
図1は、本発明の実施例1における転写用高圧電源装置の概略の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1の転写用高圧電源装置70は、図9中の転写バイアス発生部63を構成する装置であり、各色の転写ローラ5(=5K,5Y,5M,5C)毎に設けられる。各色の転写用高圧電源装置70は、同一の回路構成であるので、以下、1回路のみ説明する。
【0021】
転写用高圧電源装置70は、図示しない発振器から供給される一定周期の基準パルス(例えば、システムクロック)CLKに基づき動作する制御回路(例えば、マイクロプロセッサ(以下「MPU」という。))71を有している。MPU71は、プログラミングされた制御コードに従って動作する回路であり、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタルコンバータ(以下「ADC」という。)により構成された出力電圧検知手段71aと、出力設定手段71bと、制御パルス(例えば、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)された信号(以下「PWM信号」という。)のパルス)を発生するパルス信号発生手段71c等とを有している。出力設定手段71bには、シリアル通信ライン等を介して、高圧出力値指示手段である外部機器80が接続されている。外部機器80は、MPU71に対して高圧出力値を指示する機器である。
【0022】
MPU71内のパルス信号発生手段71cには、発振手段(例えば、マルチバイブレータ等の発振回路)73が接続されている。発振回路73は、パルス信号発生手段71cから供給されるPWM信号に基づき発振して任意の周波数のパルスを発生する回路である。この発振回路73と直流(以下「DC」という。)電源(例えば、DC24V)との出力側には、圧電トランスインバータ(例えば、圧電トランス駆動回路)75が接続されている。圧電トランス駆動回路75は、発振回路73から供給されるパルス(入力パルス)によりスイッチングするスイッチング手段を用いてAC駆動電圧(例えば、駆動パルス)を発生して圧電トランス76を駆動する回路である。
【0023】
圧電トランス76は、セラミック等の圧電振動子の共振現象を利用して昇圧を行い高圧の交流(以下「AC」という。)電圧を出力するトランスであり、この出力側に整流手段(例えば、整流回路)77が接続されている。整流回路77は、圧電トランス76から出力された高圧のAC電圧をDC電圧に変換して出力負荷である転写ローラ5へ供給する回路であり、ダイオード及びコンデンサ等により構成されている。整流回路77の出力側には、出力電圧変換手段78が接続されている。出力電圧変換手段78は、高圧のDC電圧をMPU71等が検知可能な電圧値に変換する回路であり、分圧回路等で構成されている。この出力電圧変換手段78とMPU71内の出力電圧検知手段72aとにより、電圧検出手段が構成されている。
【0024】
図2は、図1の転写用高圧電源装置70における詳細な構成例を示す回路図である。
MPU71は、システムクロック入力端子OSC1,0SC2、PWM出力端子、ADC入力端子、シリアル通信出力端子TXDl、及びシリアル通信入力端子RXDl等を有している。システムクロック入力端子OSC1,OSC2に対してシステムクロックCLK(例えば、14MHz)を供給するための発振器72は、例えば、セラミック発振子72a、及びコンデンサ72b,72cにより構成されている。MPU71のPWM出力端子には、プルアップ抵抗81を介してDC電源(例えば、DC5V)82が接続されている。MPU71のシリアル通信出力端子TXDl、及びシリアル通信入力端子RXDlには、シリアル通信ライン等を介して、高圧出力値指示手段である外部機器80のシリアル通信入力端子RXD2及びシリアル通信出力端子TXD2が接続されている。
【0025】
発振回路73は、例えば、デジタルトランジスタ73a、抵抗73b,73f、2段のシュミットインバータ73d,73e、及び可変抵抗73gからなるマルチバイブレータにより構成されている。デジタルトランジスタ73aは、PWM信号によりオン/オフ動作するトランジスタであり、この出力側に、抵抗73bを介して2段のシュミットインバータ73d,73eが直列に接続されている。抵抗73bとシュミットインバータ73dとの接続点は、コンデンサ73cを介してグランドGNDに接続されると共に、抵抗73f及び可変抵抗73gを介してシュミットインバータ73d,73e間に接続されている。
【0026】
デジタルトランジスタ73aは、PWM信号を入力する入力抵抗73a−1と、この入力抵抗73a−1にベースが接続されたNPNトランジスタ73a−2と、このNPNトランジスタ73a−2のベース・エミッタ間に接続されたバイアス抵抗73a−3とにより構成されている。NPNトランジスタ73a−2は、エミッタがグランドGNDに接続され、コレクタが抵抗73bに接続されている。
【0027】
圧電トランス駆動回路76は、スイッチング手段であるパワートランジスタ(例えば、NチャンネルパワーMOSFET(以下「NMOS」という。))76aを有し、このNMOS76aのゲート・ソース間に、抵抗76bが接続されている。NMOS76aのドレインは、インダクタ(コイル)76cを介してDC電源(DC12V)74に接続され、更に、このNMOS76aのドレイン・ソースに対して、コンデンサ76dが並列に接続されている。インダクタ76c及びコンデンサ75dにより、共振回路が構成されている。コンデンサ76dの両電極間には、圧電トランス76の1次側76aが接続され、この2次側76bに整流回路77が接続されている。
【0028】
整流回路77は、ダイオード77a,77b及びコンデンサ77cにより構成されている。整流回路77の出力側には、抵抗83を介して転写ローラ5が接続されると共に、出力電圧変換手段78が接続されている。出力電圧変換手段78は、整流回路77のDC電圧を分圧する分圧抵抗78a,78bと、この出力側に接続された演算増幅器(以下「オペアンプ」という。)78cにより構成されている。
【0029】
(実施例1の画像形成装置の動作)
図8及び図9において、画像形成装置1は、図示しない外部機器からホストインタフェース部50を介してPDL(Page Description Language、ページ記述言語)等で記述された印刷データを入力する。入力された印刷データは、コマンド/画像処理部51によってビットマップデータ(画像データ)に変換される。画像形成装置1は、定着器18の熱定着ローラをサーミスタ65の検知値に応じて定着器ヒータ59を制御することにより、所定の温度にした後、印字動作を開始する。印字動作が開始されると、用紙カセット13にセットされた用紙15が、ホッピングローラ14で給紙される。以降説明する画像形成動作に同期したタイミングで、レジストローラ16,17によって用紙15が転写ベルト8上へ搬送される。
【0030】
各色の現像器2K,2Y,2M,2Cは、電子写真プロセスにより、この現像器内の各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cにトナー像を形成する。この時、ビットマップデータに応じてLEDヘッド3K,3M,3Y,3Cが点灯される。各現像器2K,2Y,2M,2Cによって現像されたトナー像は、転写ベルト8上を搬送される用紙15に対し、各転写ローラ5K,5Y,5M,5Cに印加されたバイアスによってその用紙15に転写される。用紙15は、4色のトナー像が転写された後,定着器18により定着されて排紙される。
【0031】
(実施例1の高圧電源装置の動作)
先ず、図1及び図2の高圧電源装置70における概略の動作を説明する。
【0032】
カラー画像形成装置において転写は4出力となるが、4回路とも同じ構成となるので、本実施例1では、1出力の高圧電源装置70について動作を説明する。
【0033】
高圧出力値指示手段である外部機器80は、MPU71のプログラムコードによりなる出力設定手段71bに対し、RS232C規格等に基づいたデータ通信により、高圧電源装置70のDC出力電圧を所定のフォーマットで送信する。所定のフォーマットとは、例えば、4KVなら4000、16進数に変換してFAOH等の値を所定のヘッダ等と共に送信する。
【0034】
MPU71において、出力設定手段71bは、図示しない電源装置からDC5Vの電源が投入されると、MPU71内のブートプログラムにより、イニシャル動作が開始される。イニシャル動作により、パルス信号発生手段71cに対しての設定、出力電圧検知手段71aの設定等が行われる。MPU71は、発振器72から供給されるシステムクロックCLK(例えば、14MHz)に従って動作する。
【0035】
非高圧出力の待機時には、MPU71のPWM出力端子から“H”レベルが出力される。すると、発振回路73内のNPNトランジスタ73a−2がオン状態になり、シュミットインバータ73dの入力側が“L”レベルになる。この“L”レベルがシュミットインバータ73dにより反転されて“H”レベルになり、この“H”レベルがシュミットインバータ73eにより反転されて“L”レベルになる。これにより、圧電トランス駆動回路75内のNMOS75dがオフ状態に保持される。
【0036】
発振回路73は、MPU71からのPWM信号により発振して発振パルスを圧電トランス駆動回路75へ出力する。圧電トランス駆動回路75は、発振回路73の発振パルスによって、DC電源74から供給されるDC12Vをスイッチングして駆動パルスを出力し圧電トランス76の1次側76aを駆動してこの圧電トランス76の2次側76bから高圧のAC電圧を出力させる。この高圧のAC電圧は、整流回路77によって高圧のDC電圧に変換され、出力負荷である転写ローラ5へ供給される。出力電圧変換回路78は、出力された高圧のDC電圧をMPU71の電源電圧5V以下に変換し、このMPU71の出力電圧検知手段71aに入力する。
【0037】
高圧出力値指示手段である外部機器80が、例えば、4KVの高圧出力指示データをMPU71へ送信する。MPU71は、“H”期間1サイクル、“L”期間2816サイクルのPWM信号を出力して発振回路73の発振を開始させ、圧電トランス駆動回路75により圧電トランス76の1次側76aを駆動する。整流回路77を通って出力電圧変換手段78により変換された電圧は、出力電圧検知手段71aにより検知され、4kVとなるまで発振回路73に対するPWM信号の“L”期間を固定した上で“H”期間を変化させることにより、発振回路73の発振パルスを可変して圧電トランス76の2次側76bの出力電圧を上昇させる。出力電圧が目標電圧に到達したら、転写ローラ5の負荷変動に追随するように発振回路73へのPWM信号を可変する。
【0038】
次に、図2を参照して高圧電源装置70の動作を詳細に説明する。
外部機器80のシリアル通信出力端子TXD2及びシリアル通信入力端子RXD2は、MPU71のシリアル通信出力端子TXD1及びシリアル通信入力端子RXD1と接続され、データ通信を行う。MPU71のADC入力端子は、図示しない電源電圧5Vが供給されているこのMPU71において、電圧0V〜5Vを10ビットの分解能でデジタルデータに変換するための入力端子である。MPU71のシステムクロック入力端子0SC1,OSC2には、発振器72からのシステムクロックCLK(14MHz)が入力され、このMPU71が所定のタイミングにて処理を行う。MPU71のPWM出力端子は、電源投入時には入力端子の設定であるが、このMPU71内のプログラムコードにより初期化処理後に出力端子の設定とされ、“H”レベルを出力する。初期化以前の電源投入直後は、プルアップ抵抗81とDC電源(DC5V)により、“H”レベルに維持される。
【0039】
発振回路73は、コンデンサ73c、抵抗73f及び可変抵抗73gによって決められた時定数で自励発振する。発振周波数は109.375kHzであり、可変抵抗73gによりシュミットインバータ73d、抵抗73f、及びコンデンサ73cのばらつきによらず、周波数109.375kHzに調整可能になっている。デジタルトランジスタ73aは、MPU71から出力されたPWM信号が“H”の場合にオン状態になって、シュミットインバータ73dの入力側を“L”にドライブすることにより、発振動作を停止させる。MPU71は、発振回路73の発振パルス22パルス周期にパルスを間欠出力可能なように“H”期間を14MHzの任意サイクルに可変し、“L”期間2816サイクルのPWM信号により発振回路73を制御する。
【0040】
圧電トランス駆動回路75は、発振回路73の出力パルスによりNMOS75aがスイッチングされ、インダクタ75c及びコンデンサ75dからなる共振回路により、圧電トランス76の1次側76aに百数十Vの正弦波を印加する。圧電トランス76は、1次側76aに印加された正弦波により、周波数特性に応じた高圧のAC電圧を2次側76bから出力する。この高圧のAC電圧は、整流回路77により高圧のDC電圧(例えば、5.12kV)に変換され、抵抗83を介して負荷である転写ローラ5に印加される。出力電圧変換手段78は、分圧抵抗78a,78bにより、その高圧のDC電圧(5.12kV)を例えば1/1024に分圧してDC5Vを生成し、オペアンプ78cを介してMPU71のADC入力端子に入力する。これにより、DC5Vから、所定ビット(例えば、10ビット)の分解能より所定電圧(例えば、5V)の分解能を得る。
【0041】
図3(1)〜(3)は、図2中のMPU71におけるPWM出力端子の出力を示すタイミングチャートである。
【0042】
この図3(1)〜(3)では、MPU71のシステムクロック入力端子OSC1,OSC2に入力されるシステムクロックCLKに対して、PWM出力端子から出力されるPWM信号のタイミングが示されている。図3(1)は間欠遅延サイクル1サイクルの場合、図3(2)は間欠遅延サイクル2サイクルの場合、図3(3)は間欠遅延サイクル10サイクルの場合である。
【0043】
図4(1)、(2)は、図3のPWM周期と発振回路73の発振出力との関係を示すタイミングチャートである。図4(1)ではPWM信号“H”期間がnlサイクル、図4(2)ではPWM信号“H”期間がn2サイクルの場合が示されている。
【0044】
MPU71から出力されたPWM信号が“H”の期間、発振回路73の発振が停止されて間欠発振となる。発振を止める時間は、PWM信号の“H”期間により決まり、このサイクルは14MHzの1,2,3,・・・,128サイクルと任意の値が設定可能となっている。圧電トランス76は、1次側76aの発振を本実施例1のように短い間隔により間欠とした場合でも、機械的共振により振動しているために、その平均周波数の2次側76bの出力が発生する。間欠時間を設けることにより、2次側76bの出力の周波数を下げることが可能となり、共振周波数に2次側周波数が近づくことにより、昇圧比が高くなる。2次側出力と1次側入力の位相が270°を超えない範囲で間欠発振させた場合に、1次側駆動周波数の平均周波数にて圧電トランス76が駆動される。但し、位相が270°を超えなくとも間欠発振により位相が大きくなると、2次側76bの振幅が振幅変調波(AM波)的に振れるので、昇圧比が低くなる(間欠発振させない場合の位相差が90°である場合、位相差0°の場合には前記値は180°)。
【0045】
図5−1及び図5−2は、発振周波数が109.375kHzの場合において22パルス毎の間欠遅延サイクル(パルス)数0〜63の場合の高圧出力電圧を示す図である。
【0046】
この図に示すように、間欠遅延サイクルの増加に伴い高圧出力電圧が上昇する。本実施例1においては、制御範囲として遅延サイクル0〜34の範囲の値を用いている。
【0047】
(実施例1の高圧電源装置の動作フローチャート)
図6は、図1、図2の高圧電源装置70における動作を示すフローチャートである。
【0048】
本実施例1の高圧電源装置70では、以下のステップS1〜S14に従って高圧出力の動作が行われる。
【0049】
動作が開始されると(ステップS1)、MPU71は、PWM出力端子から出力するPWM信号を“H”レベルにし、発振回路73の発振を停止状態に保持する(ステップS2)。MPU71は、外部機器80から指示された高圧出力電圧値をシリアル通信により受信すると(ステップS3)、PWM周期を109,375kHzの22周期である14MHzのシステムクロックCLKで2816サイクルに“H”期間1サイクルを加算した2817サイクルに、内部のレジスタを初期設定する(ステップS4)。MPU71は、外部機器80からの高圧オン(ON)信号を受信したか否かを判定し(ステップS5)、受信した場合にはPWM信号の出力を開始する(ステップS6)。PWM周期は、ステップS4にて設定された値を用いる。ステップS5において、受信していない場合は受信待ち状態になる。
【0050】
MPU71は、ADC入力端子にて出力電圧変換手段78の出力電圧を検出する(ステップS7)。検出電圧は、圧電トランス76の2次側整流出力電圧を1/1000に変換したアナログ電圧値である。MPU71は、ADC入力端子にて検出された検出電圧が、外部機器80から受信した設定電圧より低いか否かを判定し(ステップS8)、低ければステップS9へ進み、そうでなければステップS10へ進む。
【0051】
MPU71は、ステップS9において、PWM周期と“H”期間を1加算し、PWM信号のON期間を1サイクル(14MHz)増やし、“L”期間は変化させない。圧電トランス76への1次側スイッチングパルスの間欠時間を1サイクル増加させる。又、MPU71は、ステップS10において、ADC入力端子にて検出された検出電圧が外部機器80からの設定電圧より高いか否かを判定し、高ければステップS11へ進み、そうでなければ(検出電圧=設定電圧)、ステップS12へ進む。
【0052】
MPU71は、ステップS11において、PWM周期と“H”期間を1減算し、PWM信号のON期間を1サイクル(14KHz)減らし、“L”期間は変化させない。圧電トランス76への1次側スイッチングパルスの間欠時間を1サイクル増加させる。ON期間の値が負となる場合には、0とする。MPU71は、外部機器80から高圧オフ(OFF)信号を受信したか否かを判定し(ステップS12)、受信した場合にはステップS13へ進み、そうでなければステップS6へ戻る。MPU71は、ステップS13において、PWM出力端子を“H”に保持して発振回路73の発振動作を停止させる。これにより、高圧電源装置70の動作が終了する(ステップS14)。
【0053】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、次の(i)、(ii)のような効果がある。
【0054】
(i) 図7(1)〜(4)は、本発明の実施例1の効果を説明する図である。
図7(1)は、図7(3)の波形aで示す共振周波数より高い周波数で昇圧比の低い領域での圧電トランス76の1次側駆動パルスと2次側出力の関係を示したものである。圧電トランス76の1次側71aと2次側71bの位相差は0°である。
【0055】
図7(2)は、図7(3)の波形bで示す共振周波数付近の昇圧比の高い領域での1次側駆動パルスと2次側出力の関係を示したものである。圧電トランス76の1次側76aと2次側76bの位相差は約180°となる。この間の周波数領域では、緩やかに位相が変化して行く。
【0056】
図7(4)の波形b及び波形cは、従来の均一なパルスでの駆動を示した波形bと本実施例1の間欠発振を行った場合の波形cを示したものである。間欠発振させた場合でも、圧電トランス76の2次側76bの出力は、1次側76aの平均周波数に対応した均一な周波数となる。但し、均一な周波数に対して有する位相差、図の破線両矢印にて示すずれ分により昇圧の効率が下がる。そのため、圧電トランス76の2次側整流出力のピークが図7(3)の波形cで示すように低くなる。しかし、間欠発振による位相ずれによる出力低下より、間欠時間を増やして行くことにより平均周波数が共周波数方向に下がることにより出力が上昇する割合の方が高いため、間欠時間を調整することにより出力増加が行える。又、マルチバイブレータからなる発振回路73による発振周波数を、必要となる最大高圧出力に合わせて共振周波数より高い周波数側に設定することにより、共振周波数付近での単位周波数変化辺りの出力変化電圧を小さくすることができ、出力分解能を高めることが可能となる。
【0057】
従って、本実施例1によれば、圧電トランス76の駆動パルスを間欠発振させることにより、低いシステムクロックCLKでも十分な分解能の高圧出力を得ることが可能となる。
【0058】
(ii) 前記(i)の効果を有する高圧電源装置70から出力される高圧のDC電圧を転写ローラ5に印加して転写を行わせるようにしたので、転写された画像の品質を向上できる。
【実施例2】
【0059】
(実施例2の構成)
図10は、本発明の実施例2における転写用高圧電源装置の概略の構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0060】
本実施例2の転写用高圧電源装置70Aでは、実施例1の転写用高圧電源装置70におけるMPU71及び発振回路73に代えて、これとは機能あるいは構成の異なる制御回路(例えば、MPU)71A及び発振手段(例えば、電圧制御発振回路(以下「VCO」という。))73Aが設けられている。
【0061】
MPU71Aは、実施例1のMPU71におけるパルス信号発生手段71cに代えて、PWM1信号を発生するパルス信号発生手段71c−1とPWM2信号を発生するパルス信号発生手段71c−2とを有している。この2つのパルス信号発生手段71c−1,71c−2の出力側に、VCO73Aが接続されている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0062】
図11は、図10の転写用高圧電源装置70Aにおける詳細な構成例を示す回路図である。
【0063】
MPU71Aは、例えば、3.3V/14MHzで動作し、実施例1のMPU71における1つのPWM出力端子に代えて2つのPWM1出力端子及びPWM2出力端子を有する他は、実施例1のMPU71とほぼ同様のものである。PWMl出力端子は、抵抗81を介してDC電源(例えば、DC3.3V)82Aによりプルアップされ、初期状態でVCO73Aの発振を停止させる。
【0064】
VCO73Aは、実施例1と同様のデジタルトランジスタ73a、抵抗73b,73f、コンデンサ73c、シュミットインバータ73d,73e及び可変抵抗73gと、新たに追加された抵抗73h及び可変容量ダイオード73iとにより構成されている。新たに追加された抵抗73hの一端は、PWM2出力端子に接続され、この抵抗73hの他端に、可変容量ダイオード73i及びコンデンサ73cが接続され、PWM2出力端子から出力されるPWM2信号により発振周波数が可変される構成になっている。例えば、入力されるPWM2信号は、最大電圧VOHが3.0V、最低電圧VOLがO.3Vであり、これらの電圧にてVCO73Aは96kHz、125KHzで発振する。PWMデューティ50%時には、平均発振周波数が約109kHzとなる。デジタルトランジスタ73aは、PWM1出力端子から出力される3.3VのTTLレベルにてオン/オフ動作し、このデジタルトランジスタ73aがオン状態になると、VCO73Aの発振が停止する。
【0065】
圧電トランス駆動回路74は、VCO73Aの出力パルスにより、DC電源(例えば、DC24V)74AをNMOS75aでスイッチングし、インダクタ75c及びコンデンサ75dからなる共振回路により共振電圧を発生させて圧電トランス76の1次側76aを駆動する。出力電圧変換手段78は、例えば、出力電圧をMPU71AのADC入力端子に入力するために0V〜3.3Vのレンジとなるように分圧する。この場合の分圧比は、1/1000又は1/2000とし、0V〜3.3kV又は0V〜6.6KVのレンジを保持するようになっている。
【0066】
(実施例2の動作)
図12(1)、(2)は、図10及び図11のPWM1,PWM2周期とVCO73Aの発振出力との関係を示すタイミングチャートである。
【0067】
図12(1)ではPWM1,PWM2信号“H”期間がnlサイクル、図12(2)ではPWM1,PWM2信号“H”期間がn2サイクルの場合が示されている。図12(1)は実施例1の図4(1)に相当する。PWM2信号は、640サイクル周期でデューティを可変するようになっている。PWM2周期はPWM2信号“H”レベル時の96kHzのパルス及び125KHzのパルスが混在した状態にてその平均周波数で圧電トランス76を駆動するようになっている。又、640サイクルの設定としたのは、平均周波数との位相差を考慮して決定している。
【0068】
先ず、このデューティを可変して、高圧のDC出力電圧をADC入力端子にて検知して第1の目標電圧に制御し、次に、PWMl信号の“H”期間及びデューティを実施例1と同様に可変して高圧のDC出力電圧を制御する。以下に図13のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
図13は、本発明の実施例2における高圧電源装置70Aの動作を示すフローチャートである。
【0070】
本実施例2の高圧電源装置70Aでは、以下のステップS21〜S38に従って高圧出力の動作が行われる。
【0071】
動作が開始されると(ステップS21)、MPU71Aは、PWM1出力端子から出力するPWM1信号を“H”レベルにし、VCO73Aの発振を停止状態にする(ステップS22)。MPU71Aは、外部機器80から指示された高庄出力電圧値をシリアル通信により受信すると(ステップS23)、PWM1の周期を14MHz/2817サイクル、“H”期間を同1サイクルとする。更に、PWM2の周期を640サイクル、“H”期間を400サイクルとする(ステップS25)。このデューティ62.5%でのVCO73Aの発振周波数は約112.5kHzになる。前記ステップS24で設定したPWMlの周期2817サイクルではパルス数22となる範囲は109.375〜111.860kHzなので、この設定ではパルス数23個となり、平均周波数は114.3kHzとなる。
MPU71Aは、外部機器80から高圧オン(ON)信号を受信したか否かを判定し(ステップS26)、受信した場合はステップS27へ進み、そうでない場合は受信待機状態になる。MPU71Aは、ステップS27において、PWMl信号及びPWM2信号の出力を開始する。VCO73Aの発振周波数は前記の通り114.3KHzなので昇圧比は低い。高圧のDC電圧は、出力電圧変換手段78により分圧されて0V〜3.3Vレンジに変換される。MPU71Aは、その変換された0V〜3.3Vレンジの電圧を3.3VのADC入力端子にて検出する(ステップS28)。
【0072】
MPU71Aは、検出電圧が第1の目標電圧以下か否かを判定し(ステップS29)、以下ならステップS30へ進み、そうでないならステップS31へ進む。第1の目標電圧は出力レンジを決定するために設定され、実施例1では低い出力に対して対応できなかったために発振回路73の発振周波数変化させることにより位相差を大きく取ることにより昇圧比を抑えることが可能な構成としている。PWM2信号のデューティを上げることにより周波数が下がり、2817サイクル中にパルス数が22個となる周波数、即ちPWMl信号によるVCO73Aのオン/オフがなされない状態と仮定してのVCO73Aの周波数が111.860kHzとなるところから、PWMl信号とPWM2信号によるVCO73Aの周波数が109.3kHzとなる。以降はPWM2信号によるVCO73Aのパルス周期が変化しても、22パルス毎の平均周波数はPWMl信号の“H”期間が1サイクルである限り、109.3KHzに固定される。109.3KHzとなっても、その平均周波数を構成する各々のパルスの周期の長短により出力電圧が変化する。位相が大きい場合に出力が低く、位相が小さい場合に出力が高い。
【0073】
MPU71Aは、ステップS30において、PWM2信号の“H”期間を1加算した後、ADC入力端子にて電圧検出を行い(ステップS31)、検出電圧が設定電圧より小さいか否かを判定し(ステップS32)、小さければステップS33へ進み、そうでなければステップS34へ進む。MPU71Aは、ステップS33において、PWMl信号の“H”期間、周期共に1加算し、平均周波数を下げる。この時、PWM2の設定は変化させない。MPU71Aは、ステップS34において、検出電圧が設定電圧より大きいか否かを判定し、大きければ、PWM1周期と“H”期間を1減算(ステップS35)してステップS36へ進み、大きくなければ、そのままステップS36へ進む。
【0074】
MPU71Aは、外部機器80から高圧オフ(OFF)信号を受信したか否かを判定し(ステップS36)、受信した場合にはステップS37へ進み、そうでない場合はステップS31へ戻る。MPU71Aは、ステップS37において、PWMl出力端子を“H”にする。これにより、高圧電源装置70Aの動作が終了する(ステップS38)。
【0075】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、次の(i)、(ii)のような効果がある。
【0076】
(i) 本実施例2では、VCO73Aの発振周波数を時分割でPWM2信号により変化させ、この平均周波数とPWMl信号による間欠発振により、圧電トランス76のAC出力電圧を制御している。そのため、実施例1に対して各々のパルスの位相差が大きくなり、周波数変化に対する出力変化幅が小さくなって制御性が向上し、共振周波数付近での圧電トランス76の駆動が可能となる。このように、実施例1の発振回路76に代えてVCO76Aを使用したので、出力レンジにより最適な分解能の選択が可能になる。
【0077】
(ii) 前記(i)の効果を有する高圧電源装置70Aから出力される高圧のDC電圧を転写ローラ5に印加して転写を行わせるようにしたので、転写された画像の品質を向上できる。
【0078】
(比較例)
本発明者が先に提案した高圧電源装置(以下「比較例の高圧電源装置」という。)を挙げ、この比較例に対して上記実施例1及び2が優れている点について以下説明する。
【0079】
図14は、比較例の転写用高圧電源装置における概略の構成を示すブロック図であり、実施例1、2を示す図1、図10中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0080】
この転写用高圧電源装置70Bでは、実施例1、2のMPU71又は71Aと発振回路73又はVCO73Aとに代えて、デジタルシグナルプロセッサ(以下「DSP」という。)71Bが設けられている。DSP71Bは、例えば、動作周波数128MHzであり、実施例1、2と同様の出力電圧検知手段71a及び出力設定手段71bと、実施例1、2とは異なるPWM信号等のパルス発生手段71d等とを有している。
【0081】
比較例の高圧電源装置70Bでは、DSP71B内のパルス発生手段72dから周波数可変のパルスが出力されると、圧電トランス駆動回路75により圧電トランス76が駆動され、高圧のAC電圧が出力される。この高圧のAC電圧は、整流回路77で高圧のDC電圧に変換され、転写ローラ5へ供給される。
【0082】
図15−1及び図15−2は、図14の高圧電源装置70Bにおける圧電トランス76の高圧出力を示す図である。図16は、図15−1及び図15−2をグラフにした高圧出力/分周比を示す図である。
【0083】
DSP71Bは、例えば、128MHzのクロックを内部PWM又はタイマ等により1133分周〜1191分周まで1ステップに変更可能である。これにより、圧電トランス駆動回路75は、113kHz〜107.5kHzの駆動周波数を得て、圧電トランス76を駆動することが可能である。
【0084】
しかしながら、図14の高圧電源装置70Bでは、圧電トランス76の出力電圧が2.0KV以上の領域では、駆動パルス周期を1ステップ変更すると、出力電圧が大きく変化してしまう。例えば、分周比を1168から1169に変更すると、出力電圧は1.95KVから2.18KVへと230Vも変化してしまう。更に、分周比を1173から1174に変更すると、出力電圧は3.71KVから4.1KVへと470Vも変化してしまう。
【0085】
このような理由から、比較例の高圧電源装置70Bにおいては、圧電トランス76の効率の高い領域を使用することは困難で、最大出力の半分以下の領域で使用せざるを得なかった。
【0086】
このような問題を上記実施例1及び2では、巧みに解決して上述したような顕著な作用効果を奏することができる。
【0087】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(c)のようなものがある。
【0088】
(a) 実施例1、2においては、MPU71,71Aとシュミットインバータ73d,73eによる発振回路73又はVCO73Aとを用い、MPU71,71Aのプログラムコードにて動作するように説明したが、論理回路及び発振回路共にこのような構成に限定されず、図示以外の他の回路で構成しても良い。
【0089】
(b) 圧電トランス76の駆動波形は、間欠発振としたが、不連続パルスにより所望の平均周波数を得、且つ2次側と1次側駆動パルスに不連続な位相差を設けることにより出力調整を行うのであれば、他の形態でも構わない。
【0090】
(b) 転写ローラ5は、これに印加する高電圧の変動等が転写品質等に大きな影響を及ぼす。そのため、実施例1、2では、転写ローラ5に用いて好適な画像品質等が得られる高圧電源装置70,70Aについて説明している。しかし、実施例1、2の高電圧装置70,70Aは、帯電バイアス発生部61や現像バイアス発生部62等の他の箇所に設けても所望の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例1における転写用高圧電源装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の転写用高圧電源装置70における詳細な構成例を示す回路図である。
【図3】図2中のMPU71におけるPWM出力端子の出力を示すタイミングチャートである。
【図4】図3のPWM周期と発振回路73の発振出力との関係を示すタイミングチャートである。
【図5−1】発振周波数が109.375kHzの場合において22パルス毎の間欠遅延サイクル(パルス)数0〜63の場合の高圧出力電圧を示す図である。
【図5−2】発振周波数が109.375kHzの場合において22パルス毎の間欠遅延サイクル(パルス)数0〜63の場合の高圧出力電圧を示す図である。
【図6】図1、図2の高圧電源装置70における動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例1の効果を説明する図である。
【図8】本発明の実施例1における高圧電源装置を用いた画像形成装置を示す構成図である。
【図9】図8の画像形成装置1における制御回路の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施例2における転写用高圧電源装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図11】図10の転写用高圧電源装置70Aにおける詳細な構成例を示す回路図である。
【図12】図10及び図11のPWM1,PWM2周期とVCO73Aの発振出力との関係を示すタイミングチャートである。
【図13】図10及び図11における高圧電源装置70Aの動作を示すフローチャートである。
【図14】比較例の転写用高圧電源装置における概略の構成を示すブロック図である。
【図15−1】図14の高圧電源装置70Bにおける圧電トランス76の高圧出力を示す図である。
【図15−2】図14の高圧電源装置70Bにおける圧電トランス76の高圧出力を示す図である。
【図16】図15−1及び図15−2をグラフにした高圧出力/分周比を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 画像形成装置
5,5K,5Y,5M,5C 転写ローラ
70,70A 高圧電源装置
71,71A MPU
71c,71c−1,71c−2 パルス信号発生手段
73 発振回路
73A VCO
74 DC電源
75 圧電トランス駆動回路
76 圧電トランス
77 整流回路
78 出力電圧変換回路
80 外部機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流の駆動電圧を圧電トランスの1次側に印加して、前記圧電トランスの2次側から昇圧された交流の出力電圧を発生させる圧電トランスインバータにおいて、
入力パルスに基づき、直流電圧をスイッチングして前記駆動電圧を前記圧電トランスの1次側に印加するスイッチング手段を有し、前記駆動電圧波形の前記出力電圧波形に対する位相差が(前記駆動電圧波形と前記出力電圧波形の平均位相差)±180°以下の範囲にて前記駆動電圧を不連続にすることにより前記駆動電圧の平均周波数を可変し、前記圧電トランスの2次側から昇圧された連続した正弦波の前記出力電圧を発生させることを特徴とする圧電トランスインバータ。
【請求項2】
発振手段を間欠発振させて生成した前記入力パルスに基づき、前記駆動電圧を不連続にすることを特徴とする請求項1記載の圧電トランスインバータ。
【請求項3】
前記スイッチング手段は、前記入力パルスによりオン/オフ動作するパワートランジスタを有することを特徴とする請求項1又は2記載の圧電トランスインバータ。
【請求項4】
前記スイッチ手段は、
前記入力パルスによりスイッチングするパワートランジスタと、
前記パワートランジスタのスイッチングに共振して生成した前記駆動電圧を前記圧電トランスの1次側に印加する共振回路と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の圧電トランスインバータ。
【請求項5】
前記共振回路は、
前記直流電圧の電源と前記パワートランジスタとの間に直列に接続されたインダクタと、
前記パワートランジスタに対して並列に接続されたコンデンサと、
を有することを特徴とする請求項4記載の圧電トランスインバータ。
【請求項6】
前記発振手段は、
制御パルスにより発振して前記入力パルスを生成する発振回路により構成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の圧電トランスインバータ。
【請求項7】
前記発振手段は、
制御パルスにより発振周波数が変化して前記入力パルスを生成する電圧制御発振回路により構成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の圧電トランスインバータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧電トランスインバータと、
前記出力電圧を直流電圧に変換して負荷に供給する整流回路と、
を有することを特徴とする高圧電源装置。
【請求項9】
請求項6又は7記載の圧電トランスインバータと、
前記出力電圧を直流電圧に変換して負荷に供給する整流回路と、
前記整流回路から出力される前記直流電圧に対応した検出電圧と設定電圧との大小を比較してこの差が小さくなるような前記制御パルスを生成する制御回路と、
を有することを特徴とする高圧電源装置。
【請求項10】
請求項8又は9記載の高圧電源装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記負荷は、転写ローラであることを特徴とする請求項10記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−110073(P2010−110073A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277698(P2008−277698)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】