圧電トランス駆動回路及び画像形成装置
【課題】特定の周波数におけるノイズの発生を防止し、立ち上がりを速くし、又、負荷変動に対する追随性を向上させる。
【解決手段】圧電トランス駆動回路70は、駆動パルスP2を供給して圧電トランス80を駆動する回路であり、圧電トランス80の出力電圧Vtをデジタル信号に変換して検出電圧DVを出力するA/D変換部72と、目標周波数ftの電圧と検出電圧DVとの誤差を算出し、駆動パルスP2の駆動周波数fdを修正するための修正周波数fcを求める演算器73と、修正周波数fcと乱数RNとを加えて制御周波数frを求める演算器77と、制御周波数frに基づきマスタクロックMCKを分周して駆動パルスP1を生成する分周器77と、駆動パルスP1を増幅して圧電トランス80を駆動する駆動部78とを有している。
【解決手段】圧電トランス駆動回路70は、駆動パルスP2を供給して圧電トランス80を駆動する回路であり、圧電トランス80の出力電圧Vtをデジタル信号に変換して検出電圧DVを出力するA/D変換部72と、目標周波数ftの電圧と検出電圧DVとの誤差を算出し、駆動パルスP2の駆動周波数fdを修正するための修正周波数fcを求める演算器73と、修正周波数fcと乱数RNとを加えて制御周波数frを求める演算器77と、制御周波数frに基づきマスタクロックMCKを分周して駆動パルスP1を生成する分周器77と、駆動パルスP1を増幅して圧電トランス80を駆動する駆動部78とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電トランスを駆動して交流(以下「AC」という。)の高い出力電圧を出力させる圧電トランス駆動回路と、この圧電トランス駆動回路を用いた電子写真式等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式の画像処理装置に用いられる高圧電源用の圧電トランス駆動回路として、例えば、下記の特許文献1に記載されるものがあった。
【0003】
この種の圧電トランス駆動回路は、圧電振動子の共振現象を利用して低電圧入力で高電圧を発生させることができる圧電トランスを駆動する回路である。圧電トランスの入力電流は、電流検出抵抗で検出され、この検出された交流電圧のゼロクロス点が、比較器で検出され、更に、その検出されたゼロクロス点の低周波成分がフィルタで取り出される。取り出された低周波成分の出力電流は、増幅器で増幅されて駆動パルスが生成される。生成された駆動パルスにより圧電トランスが駆動されると、この圧電トランスからACの高電圧が出力され、例えば、直流(以下「DC」という。)に変換されて画像形成装置内の転写ローラ等へ印加される。
【0004】
このような圧電トランス駆動回路において、小型化のためにアナログ部品を削減し、デジタル化する提案が行われている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−84335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のデジタル化された圧電トランス駆動回路では、特定の周波数のノイズが発生したり、あるいは、出力電圧を変化させながら圧電トランスを駆動する場合には、所望の出力電圧に安定するまでの時間を短くできないといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電トランス駆動回路は、駆動パルスに共振して高いAC出力電圧を出力する圧電トランスに対し、前記駆動パルスを供給して前記圧電トランスを駆動する圧電トランス駆動回路であって、前記出力電圧をデジタル信号に変換して前記出力電圧に対する検出電圧を出力するアナログ/デジタル変換(以下「A/D変換」という。)部と、目標とする前記出力電圧を得るための目標周波数の電圧と前記検出電圧とを入力して前記目標周波数の電圧と前記検出電圧との誤差を算出し、前記駆動パルスの駆動周波数を修正するための修正周波数を求める第1の演算部と、前記修正周波数と前記乱数とを入力して前記修正周波数と前記乱数とを加えて制御周波数を求める第2の演算部と、前記制御周波数に基づき基準クロックを分周して前記駆動パルスを生成する分周部と、前記駆動パルスを増幅して前記圧電トランスを駆動する駆動部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の画像形成装置は、前記発明の圧電トランス駆動回路を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、修正周波数を乱数によって分散し、この平均値が所望する制御周波数になるので、分周部から出力される駆動パルスの駆動パターンが同一パターンになることがない。そのため、特定ノイズの発生を防止できる。従って、画像形成装置の信頼性を向上できる。
【0010】
例えば、フィルタを用いることで、短い目標周波数設定間隔でも希望する周波数に近づけることができる。又、同じ目標周波数設定間隔であれば、より高い精度で目標周波数に近づけることができる。従って、所望の出力に安定するまでの時間を短縮でき、立ち上がりが早く、負荷変動に対する追随性の優れる画像形成装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0012】
(実施例1の画像形成装置)
図7は、本発明の実施例1における圧電トランス駆動回路を用いた画像形成装置を示す構成図である。
【0013】
この画像形成装置1は、例えば,電子写真式のカラー画像形成装置であり、ブラック現像器2K、イエロー現像器2Y、マゼンタ現像器2M、シアン現像器2Cが着脱可能に挿着されている。各現像器2K,2Y,2M,2Cは、各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cにそれぞれ接した各色の帯電ローラ36K,36Y,36M,36Cによってそれぞれ一様に帯電される。帯電された各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cは、ブラックLEDヘッド3K、イエローLEDヘッド3Y、マゼンタLEDヘッド3M、シアンLEDヘッド3Cの発光によってそれぞれ潜像を形成される。
【0014】
各現像器2K,2Y,2M,2C内の各色の供給ローラ33K,33Y,33M,33Cが、各現像ローラ34K,34Y,34M,34Cにトナーを供給し、各色の現像ブレード35K,35Y,35M,35Cにより、各現像ローラ34K,34Y,34M,34C表面に一様にトナー層が形成され、各感光体ドラム32K,32Y,32M,32C上にトナー像が現像される。各色の現像器2k,2Y,2M,2C内の各クリーニングブレード37K,37Y,37M,37Cは、転写後の残トナーをクリーニングする。
【0015】
ブラックトナーカートリッジ4K、イエロートナーカートリッジ4Y、マゼンタトナーカートリッジ4M、及びシアントナーカートリッジ4Cは、各現像器2K,2Y,2M,2Cに着脱可能に取り付けられ、内部のトナーを各現像器2K,2Y,2M,2Cに供給可能な構造になっている。ブラック転写ローラ5K、イエロー転写ローラ5Y、マゼンタ転写ローラ5M、及びシアン転写ローラ5Cは、転写ベルト8の裏面から転写ニップにバイアスが印加可能に配置されている。転写ベルト駆動ローラ6、及び転写ベルト従動ローラ7は、転写ベルト8を張架しローラの駆動によって用紙15を搬送可能な構造になっている。
【0016】
転写ベルトクリーニングブレード11は、転写ベルト8上のトナーを掻き落とせるようになっていて、掻き落とされたトナーが転写ベルトクリーナ容器12に収容される。用紙カセット13は、画像形成装置1に着脱可能に取り付けられ、転写媒体である用紙15が積載される。ホッピングローラ14は、用紙15を用紙カセット13から搬送する。レジシトローラ16及び17は、用紙15を転写ベルト8に所定のタイミングで搬送する。定着器18は、用紙15のトナー像を熱と加圧によって定着する。用紙ガイド19は、用紙15を排紙トレー20にフェースダウンで排出する。
【0017】
図8は、図7の画像形成装置1における制御回路の構成を示すブロック図である。
この制御回路は、ホストインタフェース部50を有し、このホストインタフェース部50がコマンド/画像処理部51に対してデータを送受信する。コマンド画像処理部51は、LEDヘッドインタフェース部52に対して画像データを出力する。LEDへツドインタフエース部52は、プリンタエンジン制御部53によってヘッド駆動パルス等が制御され、LEDヘッド3K,3Y,3M,3Cを発光させる。
【0018】
プリンタエンジン制御部53は、高圧制御部60に対して帯電バイアス、現像バイアス、転写バイアス等の制御値を送る。高圧制御部53は、帯電バイアス発生部61と、現像バイアス発生部62と、転写バイアス発生部63とに信号を送る。帯電バイアス発生部61、現像バイアス発生部62、及び転写バイアス発生部63の全部又は一部は、圧電トランス駆動回路を用いて構成されている。帯電バイアス発生部61、及び現像バイアス発生部62は、ブラック現像器2K、イエロー現像器2Y、マゼンタ現像器2M、及びシアン現像器2Cの各帯電ローラ36K,36Y,36M,36C及び各現像ローラ34K,34Y,34M,34Cに対してバイアスを印加する。
【0019】
プリンタエンジン制御部53は、ホッピングモータ54、レジストモータ55、ベルトモータ56、定着器ヒータモータ57、及び各色のドラムモータ58K,58Y,58M,58Cを所定のタイミングで駆動する。定着器ヒータ59は、サーミスタ65の検出値に応じてプリンタエンジン制御部53によって温度制御される。
【0020】
(実施例1の圧電トランス駆動回路)
図1は、本発明の実施例1における圧電トランス駆動回路の構成を示すブロック図である。
【0021】
この圧電トランス駆動回路70は、駆動パルスP2により圧電トランス80を駆動して高圧のAC電圧を負荷(例えば、図8中の帯電バイアス発生部61、現像バイアス発生部62、及び転写バイアス発生部63の全部又は一部)81へ供給させる回路である。
【0022】
圧電トランス80は、駆動パルスP2に基づき、セラミック等の圧電振動子の共振現象を利用して昇圧を行い、高圧のAC出力電圧Vtを出力して負荷81へ供給するためのトランスであり、この出力側に、整流器71が接続されている。整流器71は、圧電トランス80から出力された高圧のAC出力電圧Vtを整流してDC電圧に変換する回路であり、ダイオード及びコンデンサ等により構成され、この出力側に、A/D変換部(例えば、A/D変換器)72が接続されている。
【0023】
A/D変換器72は、整流器71から出力されたDC電圧をデジタル信号に変換して、出力電圧Vtに対する検出電圧DVを出力する回路であり、高い電圧検出精度を得るために十分なビット数(例えば、10ビット)を有し、且つこのA/D変換器72に入力されるサンプルクロックSCKは制御に求められる応答速度を十分に確保できる周波数である。このA/D変換器72の出力側には、第1の演算部(例えば、演算器)73が接続され、更に、この演算器73に、目標周波数設定器74及び第2の演算部(例えば、演算器)75が接続されている。
【0024】
目標周波数設定器74は、圧電トランス80の特性から導き出される目標電圧を得るために必要な目標周波数ftを設定して演算器73に与えるものである。演算器73は、目標周波数ftの電圧(即ち、目標電圧)と検出電圧DVとの誤差を算出し、駆動パルスP2の駆動周波数を修正するための修正周波数fcを求めて演算器75へ与えるものである。演算器75の入力側には乱数発生器76が接続され、この演算器75の出力側に、分周部(例えば、分周器)77を介して駆動部78が接続されている。
【0025】
乱数発生器76は、修正周波数近傍一定の範囲で拡散させるための一様な疑似乱数RNを発生させて演算器75に与える装置である。演算器75は、修正周波数fcと乱数RNとを加え、修正周波数近傍一定の範囲で一様にぶれた制御周波数frを生成して分周器77に与えるものである。
【0026】
分周器77は、演算器75で生成された制御周波数frに基づき、基準クロックであるマスタクロックMCKを分周して駆動パルスP1を生成し、この駆動パルスP1を駆動部78に与える回路であり、例えば、分周カウンタにより構成されている。駆動部78は、分周器77で生成された駆動パルスP1を増幅し、この増幅された駆動パルスP2により圧電トランス80を駆動する回路であり、スイッチング素子及び共振回路等により構成されている。
【0027】
図2は、図1中の目標周波数設定器74と乱数発生器76の構成を決めるための要素(マスタクロックMCK、圧電トランス80の共振周波数f0、分周器77を構成する分周カウンタのビット数、制御周波数frの範囲、分周カウンタ範囲))を示す図である。
【0028】
図3は、図1中の圧電トランス80における周波数特性を示す図である。この図3において、駆動周波数fdの駆動パルスP2にて駆動された圧電トランス80の出力電圧Vtが示されている。出力電圧Vtが最高となる駆動周波数fdが、圧電トランス80の共振周波数f0である。
【0029】
更に、図4は、図1中の目標周波数ftと乱数RNの構成を示す図である。
例えば、マスタクロックMCKが20MHz、圧電トランス80の共振周波数f0が100kHzであるとすれば、目標周波数設定器74で設定する値(即ち、分周カウント)は200分周となる。圧電トランス80の出力電圧Vtを調整するために、目標周波数ftを20kHz〜400kHzの範囲で制御しようとすると、目標周波数設定器74は1000分周〜50分周の範囲で制御することになる。
【0030】
一方、目標周波数ftを共振周波数近辺で変化させるとすると、目標周波数カウントが200分周から1分周増減するだけで約500Hz増減する。圧電トランス80の駆動パルスP2に必要な周波数分解能は約10Hzであるので、目標周波数設定器74の分周値の最小単位は0.02分周である。
【0031】
以上のことから、目標周波数設定器74に必要な構成は、整数部が最大1000分周分のビット数で10ビット、小数部が50分周分のビット数で6ビットとなる。
【0032】
乱数発生器76についても、小数部については目標周波数設定器74と同じ分解能をもたせることで、制御周波数frの分周値の切り捨て誤差を防ぐことができる。整数部については周波数を分散させる範囲と、一般的なバイト単位の区切りを考慮し、2ビットを割り当てる。
【0033】
(実施例1の画像形成装置の動作)
図7及び図8において、画像形成装置1は、図示しない外部機器からホストインタフェース部50を介してPDL(Page Description Language、ページ記述言語)等で記述された印刷データを入力する。入力された印刷データは、コマンド/画像処理部51によってビットマップデータ(画像データ)に変換される。画像形成装置1は、定着器18の熱定着ローラをサーミスタ65の検知値に応じて定着器ヒータ59を制御することにより、所定の温度にした後、印字動作を開始する。印字動作が開始されると、用紙カセット13にセットされた用紙15が、ホッピングローラ14で給紙される。以降説明する画像形成動作に同期したタイミングで、レジストローラ16,17によって用紙15が転写ベルト8上へ搬送される。
【0034】
各色の現像器2K,2Y,2M,2Cは、電子写真プロセスにより、この現像器内の各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cにトナー像を形成する。この時、ビットマップデータに応じてLEDヘッド3K,3M,3Y,3Cが点灯される。各現像器2K,2Y,2M,2Cによって現像されたトナー像は、転写ベルト8上を搬送される用紙15に対し、各転写ローラ5K,5Y,5M,5Cに印加されたバイアスによってその用紙15に転写される。用紙15は、4色のトナー像が転写された後,定着器18により定着されて排紙される。
【0035】
(実施例1の圧電トランス駆動回路の動作)
図5(1)〜(3)は、図1中の乱数発生器76における乱数RNの発生頻度を示す図である。更に、図6は、図1の動作を示すタイムチャートである。
【0036】
先ず、圧電トランス80の特性から導き出される目標電圧を得るために必要な目標周波数ftを目標周波数設定器74に設定する。A/D変換器7から出力される検出電圧DVは、圧電トランス80の出力電圧Vtによって決まる。演算器73は、目標周波数ftと現在の検出電圧DVの関係から、圧電トランス80の出力電圧Vtを増減させるように修正周波数fcを変更し、演算器75へ送る。
【0037】
乱数発生器76の生成する乱数RNは、先ず、図5(1)に示すように、最大値と最小値の間で一様な確率で発生する値を生成し、次に、中心が0となるように値をシフトし、図5(2)で示すような分布で、演算器75へ送る。演算器75では、先の演算器73で修正された修正周波数fcに、乱数発生器76で生成された乱数RNを加え、制御周波数frを出力する。この時、制御周波数frは、図5(3)で示すように、下限周波数fminと上限周波数fmaxの間で一様な確率で出力される。この結果、分周器77には、下限周波数fminから上限周波数fmaxまでの間のランダムな制御周波数frが入力され、圧電トランス80はこの範囲内の制御周波数frで駆動されるが、この平均周波数fcaは演算器73によって生成された修正周波数fcとなる。これらの動作が、図6のタイムチャートに示されている。
【0038】
これは負荷電圧である出力電圧Vtが変動している場合で、A/D変換器72は一定のサンプリング間隔tsで出力電圧Vtを測定する。出力電圧VtがVtaであり、この結果、演算器73が修正周波数fc(=fca)を出力する。乱数発生器76は、A/D変換器72のサンプリング間隔tsよりも十分に短い時間trで乱数RNを生成し、演算器75は時間trで分周器77に対して制御周波数frを出力し、結果、図6の最下部における制御周波数frの波形図に示すように、修正周波数fc(=fca)を中心としたランダムな制御周波数frが、上限周波数fmaxと下限周波数fminの間で送出され、圧電トランス80は平均された周波数(即ち、修正周波数fca)で駆動されることになる。同様に、出力電圧VtがVtbの時は修正周波数fc(=fcb)で駆動され、出力電圧VtがVtcの時は修正周波数fc(=fcc)で駆動される。
【0039】
このようにして圧電トランス80から出力された高圧のAC出力電圧Vtは、負荷81へ供給される。負荷81が例えば転写バイアス発生部63の場合には、そのAC出力電圧VtがDCに変換されて転写ローラ5へ供給される。ここで、カラー画像形成装置において転写は4出力となるので、図1のような圧電トランス回路70が4回路設けられ、各出力電圧Vtが各転写ローラ5K,5Y,5M,5Cへそれぞれ供給されることになる。他の帯電バイアス発生部61や現像バイアス発生部62についても同様に、出力電圧Vtが各現像器2K,2Y,2M,2Cへ供給される。
【0040】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、修正周波数fcを乱数RNによって分散し、この平均値が所望する制御周波数frになるので、分周器77から出力される駆動パルスP1の駆動パターンが同一パターンになることなく、デジタル回路により構成された圧電トランス駆動回路70から出力される特定ノイズを排除することができる。従って、画像形成装置の信頼性を向上できる。
【実施例2】
【0041】
(実施例2の圧電トランス駆動回路)
図9は、本発明の実施例2における圧電トランス駆動回路の構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0042】
本実施例2の圧電トランス駆動回路70Aでは、実施例1の乱数発生器76と演算器75との間に、新たにフィルタ79が挿入されている。フィルタ79は、乱数発生器76で一様な発生頻度で出力される乱数RNに対し、中央が最大となり、両端に行くに従い、発生頻度が低下する特性を持っている。一例を挙げると、正規分布特性等が好適である。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0043】
(実施例2の圧電トランス駆動回路の動作)
図10(1)、(2)は、図9中のフィルタ79及び演算器75の出力特性を示す図である。
【0044】
乱数発生器76の出力特性は、実施例1で述べたとおり、図5(2)のようになる。フィルタ79は、その乱数発生器76の出力に対し、例えば、正規分布の特性を持っているので、図10(1)の出力特性となる。フィルタ79の出力を演算器75に入力すると、この演算器75の出力は図10(2)の特性となり、平均周波数fcaの出力頻度が最も高く、下限周波数fmin、及び上限周波数fmaxの外側の出力頻度は最低となる。
【0045】
図11は、実施例1で示した一様乱数の出力と本実施例2で示した正規分布のフィルタ79を通過した後の出力が、その乱数の平均値へ収束していく過程例を示す図である。
【0046】
図11から分かる通り、実施例1で示した一様乱数に比べ、正規分布フィルタ79をかけたものの方が乱数の平均値へ収束する速度が速い。即ち、短い目標周波数設定間隔でも希望する周波数に近づけることができる。従って、所望の出力に安定するまでの時間を短縮でき、立ち上がりが早く、負荷変動に対する追随性の優れる画像形成装置1を実現できる。
【0047】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、実施例1の効果が得られ、更に、例えば、正規分布フィルタ79を用いることで、短い目標周波数設定間隔でも希望する周波数に近づけることができる。又、同じ目標周波数設定間隔であれば、より高い精度で目標周波数に近づけることができる。
【0048】
(比較例)
従来の一般的な圧電トランス駆動回路を比較例として挙げ、この比較例に対して本実施例1、2が優れている点について以下説明する。
【0049】
比較例の圧電トランス駆動回路により駆動される一般的な圧電トランスにおいて、共振周波数は、約100KHzであり、制御する周波数範囲における平均的な周波数感度は、周波数1KHzの変化に対して電圧値の変化が略+100%〜−50%程度である。このことから、負荷電圧である出力電圧を±1%程度に抑えるためには、駆動パルスの周波数分解能が少なくとも10Hz程度となる。この10Hzの分解能を実用的なマスタクロック(20MHz程度)で実現するために、分周比を所定の周期で分散し、平均周波数の分解能を上げることにより、高い分解能を得ている。
【0050】
しかしながら、このような比較例の圧電トランス駆動回路では、周波数を分散させ周波数設定回路から出力されるパターンが一定しており、デジタル回路において特定の周波数のノイズ源となってしまう。又、一定出力電圧に制御する場合は問題ないが、出力電圧を変化させながら制御する用途では、所望の電圧に安定するまでの時間を短くできない。このような問題を上記実施例1、2では、巧みに解決して上述したような顕著な作用効果を奏することができる。
【0051】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(1)〜(5)のようなものがある。
【0052】
(1) 実施例1では、目標周波数設定器74のビット数を整数部10ビット、小数部6ビット、又、乱数発生器76のビット数を整数部2ビット、小数部6ビットとして説明したが、これらはマスタクロックMCKの周波数や圧電トランス特性によって変更することができる。
【0053】
(2) 乱数発生の幅を変更し、下限周波数fminと上限周波数fmaxの間隔を広げ、広い範囲で分散させることもできる。
【0054】
(3) 前記(1)、(2)において、それらのデータを中央処理装(CPU)等から設定できるようにしても良い。
【0055】
(4) 整数部、小数部共にビット数を固定せずに、出力電圧を変更する過程において、ビット数を変更することもできる。
【0056】
(5) 実施例2において、フィルタ79の特性を正規分布として説明したが、この特性を1回差分、2回差分、ガウス分布等、中央の出力頻度が高く、両端に行くに従い出力頻度が低下する類のフィルタであれば用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1における圧電トランス駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の目標周波数設定器74と乱数発生器76の構成を決めるための要素を示す図である。
【図3】図1中の圧電トランス80における周波数特性を示す図である。
【図4】図1中の目標周波数ftと乱数RNの構成を示す図である。
【図5】図1中の乱数発生器76における乱数RNの発生頻度を示す図である。
【図6】図1の動作を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の実施例1における圧電トランス駆動回路を用いた画像形成装置を示す構成図である。
【図8】図7の画像形成装置1における制御回路の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施例2における圧電トランス駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図10】図9中のフィルタ79及び演算器75の出力特性を示す図である。
【図11】実施例1で示した一様乱数と実施例2で示した正規分布フィルタ通過後の乱数の平均への収束過程の例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置
2K,2Y,2M,2C 現像器
5,5K,5Y,5M,5C 転写ローラ
61 帯電バイアス発生部
62 現像デバイス発生部
63 転写デバイス発生部
70 圧電トランス駆動回路
72 A/D変換器
73,75 演算器
74 目標周波数設定器
76 乱数発生器
77 分周器
78 駆動部
80 圧電トランス
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電トランスを駆動して交流(以下「AC」という。)の高い出力電圧を出力させる圧電トランス駆動回路と、この圧電トランス駆動回路を用いた電子写真式等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式の画像処理装置に用いられる高圧電源用の圧電トランス駆動回路として、例えば、下記の特許文献1に記載されるものがあった。
【0003】
この種の圧電トランス駆動回路は、圧電振動子の共振現象を利用して低電圧入力で高電圧を発生させることができる圧電トランスを駆動する回路である。圧電トランスの入力電流は、電流検出抵抗で検出され、この検出された交流電圧のゼロクロス点が、比較器で検出され、更に、その検出されたゼロクロス点の低周波成分がフィルタで取り出される。取り出された低周波成分の出力電流は、増幅器で増幅されて駆動パルスが生成される。生成された駆動パルスにより圧電トランスが駆動されると、この圧電トランスからACの高電圧が出力され、例えば、直流(以下「DC」という。)に変換されて画像形成装置内の転写ローラ等へ印加される。
【0004】
このような圧電トランス駆動回路において、小型化のためにアナログ部品を削減し、デジタル化する提案が行われている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−84335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のデジタル化された圧電トランス駆動回路では、特定の周波数のノイズが発生したり、あるいは、出力電圧を変化させながら圧電トランスを駆動する場合には、所望の出力電圧に安定するまでの時間を短くできないといった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電トランス駆動回路は、駆動パルスに共振して高いAC出力電圧を出力する圧電トランスに対し、前記駆動パルスを供給して前記圧電トランスを駆動する圧電トランス駆動回路であって、前記出力電圧をデジタル信号に変換して前記出力電圧に対する検出電圧を出力するアナログ/デジタル変換(以下「A/D変換」という。)部と、目標とする前記出力電圧を得るための目標周波数の電圧と前記検出電圧とを入力して前記目標周波数の電圧と前記検出電圧との誤差を算出し、前記駆動パルスの駆動周波数を修正するための修正周波数を求める第1の演算部と、前記修正周波数と前記乱数とを入力して前記修正周波数と前記乱数とを加えて制御周波数を求める第2の演算部と、前記制御周波数に基づき基準クロックを分周して前記駆動パルスを生成する分周部と、前記駆動パルスを増幅して前記圧電トランスを駆動する駆動部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の画像形成装置は、前記発明の圧電トランス駆動回路を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、修正周波数を乱数によって分散し、この平均値が所望する制御周波数になるので、分周部から出力される駆動パルスの駆動パターンが同一パターンになることがない。そのため、特定ノイズの発生を防止できる。従って、画像形成装置の信頼性を向上できる。
【0010】
例えば、フィルタを用いることで、短い目標周波数設定間隔でも希望する周波数に近づけることができる。又、同じ目標周波数設定間隔であれば、より高い精度で目標周波数に近づけることができる。従って、所望の出力に安定するまでの時間を短縮でき、立ち上がりが早く、負荷変動に対する追随性の優れる画像形成装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0012】
(実施例1の画像形成装置)
図7は、本発明の実施例1における圧電トランス駆動回路を用いた画像形成装置を示す構成図である。
【0013】
この画像形成装置1は、例えば,電子写真式のカラー画像形成装置であり、ブラック現像器2K、イエロー現像器2Y、マゼンタ現像器2M、シアン現像器2Cが着脱可能に挿着されている。各現像器2K,2Y,2M,2Cは、各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cにそれぞれ接した各色の帯電ローラ36K,36Y,36M,36Cによってそれぞれ一様に帯電される。帯電された各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cは、ブラックLEDヘッド3K、イエローLEDヘッド3Y、マゼンタLEDヘッド3M、シアンLEDヘッド3Cの発光によってそれぞれ潜像を形成される。
【0014】
各現像器2K,2Y,2M,2C内の各色の供給ローラ33K,33Y,33M,33Cが、各現像ローラ34K,34Y,34M,34Cにトナーを供給し、各色の現像ブレード35K,35Y,35M,35Cにより、各現像ローラ34K,34Y,34M,34C表面に一様にトナー層が形成され、各感光体ドラム32K,32Y,32M,32C上にトナー像が現像される。各色の現像器2k,2Y,2M,2C内の各クリーニングブレード37K,37Y,37M,37Cは、転写後の残トナーをクリーニングする。
【0015】
ブラックトナーカートリッジ4K、イエロートナーカートリッジ4Y、マゼンタトナーカートリッジ4M、及びシアントナーカートリッジ4Cは、各現像器2K,2Y,2M,2Cに着脱可能に取り付けられ、内部のトナーを各現像器2K,2Y,2M,2Cに供給可能な構造になっている。ブラック転写ローラ5K、イエロー転写ローラ5Y、マゼンタ転写ローラ5M、及びシアン転写ローラ5Cは、転写ベルト8の裏面から転写ニップにバイアスが印加可能に配置されている。転写ベルト駆動ローラ6、及び転写ベルト従動ローラ7は、転写ベルト8を張架しローラの駆動によって用紙15を搬送可能な構造になっている。
【0016】
転写ベルトクリーニングブレード11は、転写ベルト8上のトナーを掻き落とせるようになっていて、掻き落とされたトナーが転写ベルトクリーナ容器12に収容される。用紙カセット13は、画像形成装置1に着脱可能に取り付けられ、転写媒体である用紙15が積載される。ホッピングローラ14は、用紙15を用紙カセット13から搬送する。レジシトローラ16及び17は、用紙15を転写ベルト8に所定のタイミングで搬送する。定着器18は、用紙15のトナー像を熱と加圧によって定着する。用紙ガイド19は、用紙15を排紙トレー20にフェースダウンで排出する。
【0017】
図8は、図7の画像形成装置1における制御回路の構成を示すブロック図である。
この制御回路は、ホストインタフェース部50を有し、このホストインタフェース部50がコマンド/画像処理部51に対してデータを送受信する。コマンド画像処理部51は、LEDヘッドインタフェース部52に対して画像データを出力する。LEDへツドインタフエース部52は、プリンタエンジン制御部53によってヘッド駆動パルス等が制御され、LEDヘッド3K,3Y,3M,3Cを発光させる。
【0018】
プリンタエンジン制御部53は、高圧制御部60に対して帯電バイアス、現像バイアス、転写バイアス等の制御値を送る。高圧制御部53は、帯電バイアス発生部61と、現像バイアス発生部62と、転写バイアス発生部63とに信号を送る。帯電バイアス発生部61、現像バイアス発生部62、及び転写バイアス発生部63の全部又は一部は、圧電トランス駆動回路を用いて構成されている。帯電バイアス発生部61、及び現像バイアス発生部62は、ブラック現像器2K、イエロー現像器2Y、マゼンタ現像器2M、及びシアン現像器2Cの各帯電ローラ36K,36Y,36M,36C及び各現像ローラ34K,34Y,34M,34Cに対してバイアスを印加する。
【0019】
プリンタエンジン制御部53は、ホッピングモータ54、レジストモータ55、ベルトモータ56、定着器ヒータモータ57、及び各色のドラムモータ58K,58Y,58M,58Cを所定のタイミングで駆動する。定着器ヒータ59は、サーミスタ65の検出値に応じてプリンタエンジン制御部53によって温度制御される。
【0020】
(実施例1の圧電トランス駆動回路)
図1は、本発明の実施例1における圧電トランス駆動回路の構成を示すブロック図である。
【0021】
この圧電トランス駆動回路70は、駆動パルスP2により圧電トランス80を駆動して高圧のAC電圧を負荷(例えば、図8中の帯電バイアス発生部61、現像バイアス発生部62、及び転写バイアス発生部63の全部又は一部)81へ供給させる回路である。
【0022】
圧電トランス80は、駆動パルスP2に基づき、セラミック等の圧電振動子の共振現象を利用して昇圧を行い、高圧のAC出力電圧Vtを出力して負荷81へ供給するためのトランスであり、この出力側に、整流器71が接続されている。整流器71は、圧電トランス80から出力された高圧のAC出力電圧Vtを整流してDC電圧に変換する回路であり、ダイオード及びコンデンサ等により構成され、この出力側に、A/D変換部(例えば、A/D変換器)72が接続されている。
【0023】
A/D変換器72は、整流器71から出力されたDC電圧をデジタル信号に変換して、出力電圧Vtに対する検出電圧DVを出力する回路であり、高い電圧検出精度を得るために十分なビット数(例えば、10ビット)を有し、且つこのA/D変換器72に入力されるサンプルクロックSCKは制御に求められる応答速度を十分に確保できる周波数である。このA/D変換器72の出力側には、第1の演算部(例えば、演算器)73が接続され、更に、この演算器73に、目標周波数設定器74及び第2の演算部(例えば、演算器)75が接続されている。
【0024】
目標周波数設定器74は、圧電トランス80の特性から導き出される目標電圧を得るために必要な目標周波数ftを設定して演算器73に与えるものである。演算器73は、目標周波数ftの電圧(即ち、目標電圧)と検出電圧DVとの誤差を算出し、駆動パルスP2の駆動周波数を修正するための修正周波数fcを求めて演算器75へ与えるものである。演算器75の入力側には乱数発生器76が接続され、この演算器75の出力側に、分周部(例えば、分周器)77を介して駆動部78が接続されている。
【0025】
乱数発生器76は、修正周波数近傍一定の範囲で拡散させるための一様な疑似乱数RNを発生させて演算器75に与える装置である。演算器75は、修正周波数fcと乱数RNとを加え、修正周波数近傍一定の範囲で一様にぶれた制御周波数frを生成して分周器77に与えるものである。
【0026】
分周器77は、演算器75で生成された制御周波数frに基づき、基準クロックであるマスタクロックMCKを分周して駆動パルスP1を生成し、この駆動パルスP1を駆動部78に与える回路であり、例えば、分周カウンタにより構成されている。駆動部78は、分周器77で生成された駆動パルスP1を増幅し、この増幅された駆動パルスP2により圧電トランス80を駆動する回路であり、スイッチング素子及び共振回路等により構成されている。
【0027】
図2は、図1中の目標周波数設定器74と乱数発生器76の構成を決めるための要素(マスタクロックMCK、圧電トランス80の共振周波数f0、分周器77を構成する分周カウンタのビット数、制御周波数frの範囲、分周カウンタ範囲))を示す図である。
【0028】
図3は、図1中の圧電トランス80における周波数特性を示す図である。この図3において、駆動周波数fdの駆動パルスP2にて駆動された圧電トランス80の出力電圧Vtが示されている。出力電圧Vtが最高となる駆動周波数fdが、圧電トランス80の共振周波数f0である。
【0029】
更に、図4は、図1中の目標周波数ftと乱数RNの構成を示す図である。
例えば、マスタクロックMCKが20MHz、圧電トランス80の共振周波数f0が100kHzであるとすれば、目標周波数設定器74で設定する値(即ち、分周カウント)は200分周となる。圧電トランス80の出力電圧Vtを調整するために、目標周波数ftを20kHz〜400kHzの範囲で制御しようとすると、目標周波数設定器74は1000分周〜50分周の範囲で制御することになる。
【0030】
一方、目標周波数ftを共振周波数近辺で変化させるとすると、目標周波数カウントが200分周から1分周増減するだけで約500Hz増減する。圧電トランス80の駆動パルスP2に必要な周波数分解能は約10Hzであるので、目標周波数設定器74の分周値の最小単位は0.02分周である。
【0031】
以上のことから、目標周波数設定器74に必要な構成は、整数部が最大1000分周分のビット数で10ビット、小数部が50分周分のビット数で6ビットとなる。
【0032】
乱数発生器76についても、小数部については目標周波数設定器74と同じ分解能をもたせることで、制御周波数frの分周値の切り捨て誤差を防ぐことができる。整数部については周波数を分散させる範囲と、一般的なバイト単位の区切りを考慮し、2ビットを割り当てる。
【0033】
(実施例1の画像形成装置の動作)
図7及び図8において、画像形成装置1は、図示しない外部機器からホストインタフェース部50を介してPDL(Page Description Language、ページ記述言語)等で記述された印刷データを入力する。入力された印刷データは、コマンド/画像処理部51によってビットマップデータ(画像データ)に変換される。画像形成装置1は、定着器18の熱定着ローラをサーミスタ65の検知値に応じて定着器ヒータ59を制御することにより、所定の温度にした後、印字動作を開始する。印字動作が開始されると、用紙カセット13にセットされた用紙15が、ホッピングローラ14で給紙される。以降説明する画像形成動作に同期したタイミングで、レジストローラ16,17によって用紙15が転写ベルト8上へ搬送される。
【0034】
各色の現像器2K,2Y,2M,2Cは、電子写真プロセスにより、この現像器内の各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cにトナー像を形成する。この時、ビットマップデータに応じてLEDヘッド3K,3M,3Y,3Cが点灯される。各現像器2K,2Y,2M,2Cによって現像されたトナー像は、転写ベルト8上を搬送される用紙15に対し、各転写ローラ5K,5Y,5M,5Cに印加されたバイアスによってその用紙15に転写される。用紙15は、4色のトナー像が転写された後,定着器18により定着されて排紙される。
【0035】
(実施例1の圧電トランス駆動回路の動作)
図5(1)〜(3)は、図1中の乱数発生器76における乱数RNの発生頻度を示す図である。更に、図6は、図1の動作を示すタイムチャートである。
【0036】
先ず、圧電トランス80の特性から導き出される目標電圧を得るために必要な目標周波数ftを目標周波数設定器74に設定する。A/D変換器7から出力される検出電圧DVは、圧電トランス80の出力電圧Vtによって決まる。演算器73は、目標周波数ftと現在の検出電圧DVの関係から、圧電トランス80の出力電圧Vtを増減させるように修正周波数fcを変更し、演算器75へ送る。
【0037】
乱数発生器76の生成する乱数RNは、先ず、図5(1)に示すように、最大値と最小値の間で一様な確率で発生する値を生成し、次に、中心が0となるように値をシフトし、図5(2)で示すような分布で、演算器75へ送る。演算器75では、先の演算器73で修正された修正周波数fcに、乱数発生器76で生成された乱数RNを加え、制御周波数frを出力する。この時、制御周波数frは、図5(3)で示すように、下限周波数fminと上限周波数fmaxの間で一様な確率で出力される。この結果、分周器77には、下限周波数fminから上限周波数fmaxまでの間のランダムな制御周波数frが入力され、圧電トランス80はこの範囲内の制御周波数frで駆動されるが、この平均周波数fcaは演算器73によって生成された修正周波数fcとなる。これらの動作が、図6のタイムチャートに示されている。
【0038】
これは負荷電圧である出力電圧Vtが変動している場合で、A/D変換器72は一定のサンプリング間隔tsで出力電圧Vtを測定する。出力電圧VtがVtaであり、この結果、演算器73が修正周波数fc(=fca)を出力する。乱数発生器76は、A/D変換器72のサンプリング間隔tsよりも十分に短い時間trで乱数RNを生成し、演算器75は時間trで分周器77に対して制御周波数frを出力し、結果、図6の最下部における制御周波数frの波形図に示すように、修正周波数fc(=fca)を中心としたランダムな制御周波数frが、上限周波数fmaxと下限周波数fminの間で送出され、圧電トランス80は平均された周波数(即ち、修正周波数fca)で駆動されることになる。同様に、出力電圧VtがVtbの時は修正周波数fc(=fcb)で駆動され、出力電圧VtがVtcの時は修正周波数fc(=fcc)で駆動される。
【0039】
このようにして圧電トランス80から出力された高圧のAC出力電圧Vtは、負荷81へ供給される。負荷81が例えば転写バイアス発生部63の場合には、そのAC出力電圧VtがDCに変換されて転写ローラ5へ供給される。ここで、カラー画像形成装置において転写は4出力となるので、図1のような圧電トランス回路70が4回路設けられ、各出力電圧Vtが各転写ローラ5K,5Y,5M,5Cへそれぞれ供給されることになる。他の帯電バイアス発生部61や現像バイアス発生部62についても同様に、出力電圧Vtが各現像器2K,2Y,2M,2Cへ供給される。
【0040】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、修正周波数fcを乱数RNによって分散し、この平均値が所望する制御周波数frになるので、分周器77から出力される駆動パルスP1の駆動パターンが同一パターンになることなく、デジタル回路により構成された圧電トランス駆動回路70から出力される特定ノイズを排除することができる。従って、画像形成装置の信頼性を向上できる。
【実施例2】
【0041】
(実施例2の圧電トランス駆動回路)
図9は、本発明の実施例2における圧電トランス駆動回路の構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0042】
本実施例2の圧電トランス駆動回路70Aでは、実施例1の乱数発生器76と演算器75との間に、新たにフィルタ79が挿入されている。フィルタ79は、乱数発生器76で一様な発生頻度で出力される乱数RNに対し、中央が最大となり、両端に行くに従い、発生頻度が低下する特性を持っている。一例を挙げると、正規分布特性等が好適である。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0043】
(実施例2の圧電トランス駆動回路の動作)
図10(1)、(2)は、図9中のフィルタ79及び演算器75の出力特性を示す図である。
【0044】
乱数発生器76の出力特性は、実施例1で述べたとおり、図5(2)のようになる。フィルタ79は、その乱数発生器76の出力に対し、例えば、正規分布の特性を持っているので、図10(1)の出力特性となる。フィルタ79の出力を演算器75に入力すると、この演算器75の出力は図10(2)の特性となり、平均周波数fcaの出力頻度が最も高く、下限周波数fmin、及び上限周波数fmaxの外側の出力頻度は最低となる。
【0045】
図11は、実施例1で示した一様乱数の出力と本実施例2で示した正規分布のフィルタ79を通過した後の出力が、その乱数の平均値へ収束していく過程例を示す図である。
【0046】
図11から分かる通り、実施例1で示した一様乱数に比べ、正規分布フィルタ79をかけたものの方が乱数の平均値へ収束する速度が速い。即ち、短い目標周波数設定間隔でも希望する周波数に近づけることができる。従って、所望の出力に安定するまでの時間を短縮でき、立ち上がりが早く、負荷変動に対する追随性の優れる画像形成装置1を実現できる。
【0047】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、実施例1の効果が得られ、更に、例えば、正規分布フィルタ79を用いることで、短い目標周波数設定間隔でも希望する周波数に近づけることができる。又、同じ目標周波数設定間隔であれば、より高い精度で目標周波数に近づけることができる。
【0048】
(比較例)
従来の一般的な圧電トランス駆動回路を比較例として挙げ、この比較例に対して本実施例1、2が優れている点について以下説明する。
【0049】
比較例の圧電トランス駆動回路により駆動される一般的な圧電トランスにおいて、共振周波数は、約100KHzであり、制御する周波数範囲における平均的な周波数感度は、周波数1KHzの変化に対して電圧値の変化が略+100%〜−50%程度である。このことから、負荷電圧である出力電圧を±1%程度に抑えるためには、駆動パルスの周波数分解能が少なくとも10Hz程度となる。この10Hzの分解能を実用的なマスタクロック(20MHz程度)で実現するために、分周比を所定の周期で分散し、平均周波数の分解能を上げることにより、高い分解能を得ている。
【0050】
しかしながら、このような比較例の圧電トランス駆動回路では、周波数を分散させ周波数設定回路から出力されるパターンが一定しており、デジタル回路において特定の周波数のノイズ源となってしまう。又、一定出力電圧に制御する場合は問題ないが、出力電圧を変化させながら制御する用途では、所望の電圧に安定するまでの時間を短くできない。このような問題を上記実施例1、2では、巧みに解決して上述したような顕著な作用効果を奏することができる。
【0051】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(1)〜(5)のようなものがある。
【0052】
(1) 実施例1では、目標周波数設定器74のビット数を整数部10ビット、小数部6ビット、又、乱数発生器76のビット数を整数部2ビット、小数部6ビットとして説明したが、これらはマスタクロックMCKの周波数や圧電トランス特性によって変更することができる。
【0053】
(2) 乱数発生の幅を変更し、下限周波数fminと上限周波数fmaxの間隔を広げ、広い範囲で分散させることもできる。
【0054】
(3) 前記(1)、(2)において、それらのデータを中央処理装(CPU)等から設定できるようにしても良い。
【0055】
(4) 整数部、小数部共にビット数を固定せずに、出力電圧を変更する過程において、ビット数を変更することもできる。
【0056】
(5) 実施例2において、フィルタ79の特性を正規分布として説明したが、この特性を1回差分、2回差分、ガウス分布等、中央の出力頻度が高く、両端に行くに従い出力頻度が低下する類のフィルタであれば用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1における圧電トランス駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の目標周波数設定器74と乱数発生器76の構成を決めるための要素を示す図である。
【図3】図1中の圧電トランス80における周波数特性を示す図である。
【図4】図1中の目標周波数ftと乱数RNの構成を示す図である。
【図5】図1中の乱数発生器76における乱数RNの発生頻度を示す図である。
【図6】図1の動作を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の実施例1における圧電トランス駆動回路を用いた画像形成装置を示す構成図である。
【図8】図7の画像形成装置1における制御回路の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施例2における圧電トランス駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図10】図9中のフィルタ79及び演算器75の出力特性を示す図である。
【図11】実施例1で示した一様乱数と実施例2で示した正規分布フィルタ通過後の乱数の平均への収束過程の例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置
2K,2Y,2M,2C 現像器
5,5K,5Y,5M,5C 転写ローラ
61 帯電バイアス発生部
62 現像デバイス発生部
63 転写デバイス発生部
70 圧電トランス駆動回路
72 A/D変換器
73,75 演算器
74 目標周波数設定器
76 乱数発生器
77 分周器
78 駆動部
80 圧電トランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動パルスに共振して交流の高い出力電圧を出力する圧電トランスに対し、前記駆動パルスを供給して前記圧電トランスを駆動する圧電トランス駆動回路であって、
前記出力電圧をデジタル信号に変換して前記出力電圧に対する検出電圧を出力するアナログ/デジタル変換部と、
目標とする前記出力電圧を得るための目標周波数の電圧と前記検出電圧とを入力して前記目標周波数の電圧と前記検出電圧との誤差を算出し、前記駆動パルスの駆動周波数を修正するための修正周波数を求める第1の演算部と、
前記修正周波数と前記乱数とを入力して前記修正周波数と前記乱数とを加えて制御周波数を求める第2の演算部と、
前記制御周波数に基づき基準クロックを分周して前記駆動パルスを生成する分周部と、
前記駆動パルスを増幅して前記圧電トランスを駆動する駆動部と、
を有することを特徴とする圧電トランス駆動回路。
【請求項2】
前記目標周波数と前記乱数のビット幅は、変更可能であることを特徴とする請求項1記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項3】
前記目標周波数と前記乱数の構成は、整数部と小数部に分割されていることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項4】
前記乱数は、中央の出力頻度が高く、両端に行くに従い出力頻度が低下する特性を有するフィルタを通して、前記第2の演算部に入力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項5】
前記フィルタは、正規分布フィルタであることを特徴とする請求項4記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項6】
前記フィルタの特性は、変更可能であることを特徴とする請求項4又は5記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項7】
前記フィルタの特性は、正規分布以外の特性に変更可能であることを特徴とする請求項6記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧電トランス駆動回路を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記圧電トランス駆動回路は、帯電バイアス発生部、現像バイアス発生部、及び/又は転写バイアス発生部に使用されていることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【請求項1】
駆動パルスに共振して交流の高い出力電圧を出力する圧電トランスに対し、前記駆動パルスを供給して前記圧電トランスを駆動する圧電トランス駆動回路であって、
前記出力電圧をデジタル信号に変換して前記出力電圧に対する検出電圧を出力するアナログ/デジタル変換部と、
目標とする前記出力電圧を得るための目標周波数の電圧と前記検出電圧とを入力して前記目標周波数の電圧と前記検出電圧との誤差を算出し、前記駆動パルスの駆動周波数を修正するための修正周波数を求める第1の演算部と、
前記修正周波数と前記乱数とを入力して前記修正周波数と前記乱数とを加えて制御周波数を求める第2の演算部と、
前記制御周波数に基づき基準クロックを分周して前記駆動パルスを生成する分周部と、
前記駆動パルスを増幅して前記圧電トランスを駆動する駆動部と、
を有することを特徴とする圧電トランス駆動回路。
【請求項2】
前記目標周波数と前記乱数のビット幅は、変更可能であることを特徴とする請求項1記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項3】
前記目標周波数と前記乱数の構成は、整数部と小数部に分割されていることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項4】
前記乱数は、中央の出力頻度が高く、両端に行くに従い出力頻度が低下する特性を有するフィルタを通して、前記第2の演算部に入力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項5】
前記フィルタは、正規分布フィルタであることを特徴とする請求項4記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項6】
前記フィルタの特性は、変更可能であることを特徴とする請求項4又は5記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項7】
前記フィルタの特性は、正規分布以外の特性に変更可能であることを特徴とする請求項6記載の圧電トランス駆動回路。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧電トランス駆動回路を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記圧電トランス駆動回路は、帯電バイアス発生部、現像バイアス発生部、及び/又は転写バイアス発生部に使用されていることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−110074(P2010−110074A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277699(P2008−277699)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
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