説明

圧電振動デバイスおよびその製造方法

【課題】圧電振動デバイスにおいて、圧電振動片に強励振をかける際の出力により、集積回路素子などの他の電子部品素子に悪影響を与えるのを抑制する。
【解決手段】ベース2のキャビティ6にICチップ5を配し、ICチップ5をキャビティ6に機械的に接合する。ICチップ5の機械的接合を終えた後に、ベース2のキャビティ6に水晶振動片4を配し、水晶振動片4を複数の電極パッド81に電気機械的に接合する。水晶振動片4の電気機械的接合を終えた後に、水晶振動片4に強励振をかける。水晶振動片4に圧電振動片に強励振をかけた後に、ワイヤ32を用いてICチップ5の接続端子51と電極パッド81と電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスおよびその製造方法に関し、特に、複数の電子部品を1つのキャビティ内に配する圧電振動デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、OA機器、通信機器などの各種電子機器に使用される水晶発振器などの圧電振動デバイスの低背化が進められている。ここでいう圧電振動デバイスには、圧電振動片を含む複数の電子部品素子と、複数の電子部品素子を配置するベースと、ベースと接合してベースに配置した複数の電子部品素子を気密封止する蓋とが設けられている。そして、ベースと蓋との接合により圧電振動デバイスの本体筐体が成形される。また、圧電振動デバイスの本体筐体の内部には、複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成される。
【0003】
具体的に、キャビティ内において、その上方に圧電振動片(水晶振動片)が配され、その下方にICチップなどの電子部品素子が配された圧電振動デバイスが従来の技術として開示されている(例えば、下記する特許文献1ご参照。)。
【0004】
下記する特許文献1に開示の圧電振動デバイス(水晶発振器)では、キャビティ内においてICチップと水晶振動片とが積層状態で配されている(具体的に、下位層にICチップが配され、上位層に水晶振動片が配されている)。
【0005】
さらに、キャビティ内における下位層のICチップは、キャビティ内のベース上にワイヤを用いて電気的に接合されている(以下、ワイヤボンディングともいう)。このワイヤは、その上位層に配された水晶振動片によってキャビティ内の平面視上隠れた状態となっている。
【0006】
上記したことから、下記する特許文献1に開示の水晶発振器では、まず、下位層にICチップを電気機械的に接合し、その後に上位層の水晶振動片を電気機械的に接合して蓋をベースに接合して、ベースに接合したICチップと水晶振動片との特性を測定して圧電振動デバイスを製造している。
【特許文献1】特開2004−297737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記したような特許文献1に開示の水晶発振器では、ICチップと水晶振動片とが電気機械的に接合された状態でキャビティ内に配され、このことが原因となって以下に示す不具合が生じる。
【0008】
すなわち、上記したような特許文献1に開示の水晶発振器で用いる水晶振動片にはその表面に異物が付着している。この水晶振動片の表面に付着した異物は、その製造工程において水晶振動片に強励振(オーバードライブ)をかけて除去する。
【0009】
しかしながら、水晶振動片に強励振をかける場合、その出力が強く、水晶振動片と電気的に接合されて導通状態となっているICチップが破壊されるなど、他の電子部品素子に悪影響を与える。
【0010】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、圧電振動デバイスにおいて、圧電振動片に強励振をかける際の出力により、集積回路素子などの他の電子部品素子に悪影響を与えるのを抑制する圧電振動デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法は、蓋と、電極パッドが形成されたベースとの接合により成形される本体筐体の内部の前記ベース上に、少なくとも励振電極が形成された圧電振動片および接続端子が形成された集積回路素子を含む複数の電子部品を配置するとともにこれら圧電振動片および集積回路素子を前記本体筐体の内部に気密封止する圧電振動デバイスの製造方法において、前記ベースの電極パッドと前記圧電振動片の励振電極とを電気的に接続して導通状態とするとともに、前記ベースの電極パッドと前記集積回路素子の接続端子とを非導通状態として、前記圧電振動片に強励振(オーバードライブ)をかける工程を行い、前記圧電振動片に強励振をかける工程後に、前記ベースの電極パッドと前記集積回路素子の接続端子とをワイヤを用いて電気的に接続して導通状態とすることを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる圧電振動デバイスの製造方法によれば、前記ベースの電極パッドと前記圧電振動片の励振電極とを電気的に接続して導通状態とするとともに、前記ベースの電極パッドと前記集積回路素子の接続端子とを非導通状態として、前記圧電振動片に強励振をかける工程を行い、前記圧電振動片に強励振をかける工程後に、前記ベースの電極パッドと前記集積回路素子の接続端子とをワイヤを用いて電気的に接続して(ワイヤボンディング)導通状態とするので、前記圧電振動片に強励振をかける際の出力により前記他の電子部品素子に悪影響を与えるのを抑制することが可能となる。本発明では、前記圧電振動片の強励振(オーバードライブ)を行なう場合、前記圧電振動片に強励振をかけた後に前記集積回路素子を導通状態とするので、前記圧電振動片に強励振をかける出力が前記集積回路素子に伝わることはなく、前記圧電振動片に強励振をかける出力により前記集積回路素子が破壊するのを抑制することが可能となる。
【0013】
具体的に、本発明の場合、前記圧電振動片に強励振をかけると、前記圧電振動片の両主面などの表面に付する異物が外れ、前記圧電振動片の歪みを抑えて励振レベルによる周波数の変動や、周波数調整工程(ミーリングなど)による周波数のシフトの変動を抑えることが可能となる。
【0014】
前記方法において、前記ベースに前記集積回路素子を高硬化性接合材により機械的接合を行い、前記ベースへの前記集積回路素子の機械的接合後に、前記ベースの電極パッドに前記圧電振動片を導電性接合材により電気機械的接合を行い、前記ベースの電極パッドへの前記圧電振動片の電気機械的接合後に、前記圧電振動片に強励振をかける工程を行い、前記圧電振動片に強励振をかける工程後に、前記ベースの電極パッドと前記集積回路素子の接続端子とをワイヤを用いて電気的に接続してもよい。
【0015】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記ベースに前記集積回路素子を硬い高硬化性接合材により機械的接合を行なっているので、前記ベースの電極パッドに前記集積回路素子をより安定した状態でワイヤボンディングすることが可能となる。
【0016】
前記方法において、前記導電性接合材の硬化温度もしくは前記ベースの電極パッドに前記圧電振動片を接合する際の接合雰囲気は、前記高硬化性接合材の硬化温度に対して略同じ温度以下の温度に設定されてもよい。
【0017】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記高硬化性接合材を先に接合(硬化)させ、後工程で接合(硬化)する前記導電性接合材の硬化温度もしくは前記ベースの電極パッドに前記圧電振動片を接合する際の接合雰囲気は、前記高硬化性接合材の硬化温度に対して略同じ温度以下の温度に設定されるので、当該圧電振動デバイスの製造において発生する不要なガスを極力抑えて前記圧電振動片や前記集積回路素子への不具合をなくすとともに、前記圧電振動片の接合の信頼性を確保することが可能となる。また、前記ベースに前記集積回路素子を機械的に接合する高硬化性接合材としてポリイミド系樹脂やエポキシ系樹脂が好適に挙げられ、また、前記ベースの電極パッドに前記圧電振動片を電気機械的に接合する導電性接合材として導電性シリコーン系樹脂や導電性ウレタン系樹脂、金属バンプが好適に挙げられる。例えば、前記高硬化性接合材として硬化温度が290度程度のポリイミド系樹脂を使用する場合、前記導電性接合材として、同じ290度程度の硬化温度のポリイミド系樹脂を用いるか、180度程度とより硬化温度の低い導電性シリコーン系樹脂を使用したり、150度程度の接合雰囲気となる金などの金属バンプを用いるとよい。
【0018】
前記方法において、前記ベースの電極パッドに、前記圧電振動片の励振電極および前記集積回路素子の接続端子を電気的に接続して導通状態とした後に、前記ベースに前記蓋を接合して前記本体筐体の内部の前記ベースに配置した前記複数の電子部品を気密封止してもよい。
【0019】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記ベースの電極パッドに、前記圧電振動片の励振電極および前記集積回路素子の接続端子を電気的に接続して導通状態とした後に、前記ベースに前記蓋を接合して前記本体筐体の内部の前記ベースに配置した前記複数の電子部品を気密封止するので、気密封止前に前記他の電子部品への影響を気にせずに前記圧電振動片に強励振をかけることが可能となる。これに対して、従来の技術では、前記複数の電子部品を全て導通状態として前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品を気密封止し、その後に前記複数の電子部品のすべての特性を測定しており、前記圧電振動片に強励振をかける工程を行うことはできない。
【0020】
具体的に、本発明の場合、前記圧電振動片に強励振をかけると、前記圧電振動片の両主面などの表面に付する異物が外れ、前記圧電振動片の歪みを抑えて励振レベルによる周波数の変動や、周波数調整工程(ミーリングなど)による周波数のシフトの変動を抑えることが可能となる。これに対して、外部から水晶振動片単体の特性の測定を行うために、本体筐体に水晶振動片単体と独立して接続された外部端子(他の複数の電子部品とは電気的に接続されていない外部端子)が形成され、前記複数の電子部品を全て導通状態として前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品を気密封止し、その後に前記複数の電子部品のすべての特性を測定する場合、前記圧電振動片に強励振をかけると、前記圧電振動片の両主面などの表面に付する異物が外れるが、この異物が前記本体筐体の内部の前記ベースなどに再付着(異物が前記ベース上に落ちるなど)して当該圧電振動デバイスの特性に悪影響を与える。
【0021】
また、上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、上記した圧電振動デバイスの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0022】
本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、上記した圧電振動デバイスの製造方法による作用効果と同様の作用効果を有する。さらに、本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、上記した圧電振動デバイスの製造方法によって製造されているので、前記圧電振動片と前記他の電子部品素子との接続状態を遮断して前記圧電振動片に強励振をかけるために新たに端子電極および電極パターン(端子電極と電極パッドをつなぐパターン)を前記本体筐体に形成する必要がなく、製造コストの抑制および電極パターン設計の簡略化を図ることが可能となる。特に電極パターン設計の簡略化を行うことは当該圧電振動デバイスの小型化を図るために好適である。また、本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、前記圧電振動片に強励振をかけるために別途特別な端子を設ける必要がないため、前記本体筐体の構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0023】
前記構成において、前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成され、前記圧電振動片と前記集積回路素子とは、前記キャビティ内の前記ベースの平面視上において重ならずに配置されてもよい。
【0024】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するためのキャビティが形成され、前記圧電振動片と前記集積回路素子とは、前記キャビティ内の前記ベースの平面視上において重ならずに配置されるので、当該圧電振動デバイスの本体筐体の低背化を行うのに好ましい。
【0025】
前記構成において、前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成され、前記キャビティには、底面部とこの底面部より上層となる段部が設けられ、前記圧電振動片は前記段部上に配され、前記集積回路素子は前記底面部上に配されてもよい。
【0026】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するためのキャビティが形成され、前記キャビティには、底面部とこの底面部より上層となる段部が設けられ、前記圧電振動片は前記段部上に配され、前記集積回路素子は前記底面部上に配されるので、前記キャビティの同一高さの位置(例えば前記底面部のみ)に前記圧電振動片と前記集積回路素子とが配された場合と比較して、前記圧電振動片と前記集積回路素子とはそれぞれ互いに他の位相ノイズ(輻射ノイズ)を考慮しないで電極パターンの設計を行うことが可能となり、電極パターン設計の簡略化を図ることが可能となる。
【0027】
前記構成において、前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成され、前記ワイヤは、前記キャビティ内の前記ベースの平面視上において露出されてもよい。
【0028】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成され、前記ワイヤは、前記キャビティ内の前記ベースの平面視上において露出されたので、前記ベース(電極パッド)と前記圧電振動片(励振電極)とを電気的に接続して導通状態とした状態とし、前記圧電振動片に強励振をかけた後に、前記ベース(電極パッド)と前記集積回路素子(接続端子)とを前記ワイヤを用いて電気的に接続して導通状態とすることを容易に行うことが可能となる。この構成は、特に、前記キャビティ内の前記ベースの平面視において前記集積回路素子(前記集積回路素子の少なくとも一部)が前記圧電振動片に隠れている場合に有効であり、前記キャビティ内の前記ベースの平面視上において、前記ワイヤを露出した状態で前記複数の電子部品素子を重ね合わせた状態とすることで当該圧電振動デバイスの本体筐体の小型化を図ることが可能となる。
【0029】
前記構成において、前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成され、前記集積回路素子の電気的接続を行うための前記キャビティ内での前記ワイヤを接続する前記電極パッドの位置は、前記キャビティを構成する壁面から離れるように位置設定されてもよい。
【0030】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成され、前記集積回路素子の電気的接続を行うための前記キャビティ内での前記ワイヤを接続する前記電極パッドの位置は、前記キャビティを構成する壁面から離れるように位置設定されたので、前記キャビティ内の前記ベース上において前記ワイヤを接続する前記電極パッドの領域を確保することが可能となる。このため、前記集積回路素子を前記ベース(前記電極パッド)にワイヤボンディングする際にボンディングツール(キャピラリー)を用いるが、前記ベース上においてこのボンディングツールを挿入する領域が確保され、前記集積回路素子を前記電極パッドにワイヤボンディングする際の信頼性が高まる。この構成は、特に、前記キャビティ内の前記ベースの平面視同一面上であって同一高さの位置に前記圧電振動片と前記集積回路素子とが配置された場合に有効である。
【0031】
前記構成において、前記複数の電子部品素子は、バンプを介して前記ベースに少なくとも機械的に接合されてもよい。
【0032】
この場合、上述の作用効果に加えて、前記複数の電子部品素子は、バンプを介して前記ベースに少なくとも機械的に接合されたので、当該圧電振動デバイスの小型化に好適である。すなわち、前記複数の電子部品素子を、導電性接着材を介して前記ベースに電気機械的に接合した場合と比較して、前記複数の電子部品素子と前記ベースとの接合領域を狭くすることができ、これらの接合領域の確保を容易とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる圧電振動デバイスおよびその製造方法によれば、圧電振動デバイスにおいて、圧電振動片に強励振をかける際の出力により、集積回路素子などの他の電子部品素子に悪影響を与えるのを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、圧電振動デバイスとして表面実装型水晶発振器(以下、水晶発振器という)に本発明を適用した場合を示す。
【0035】
本実施例にかかる表面実装型水晶発振器(図示省略)は、図1,2に示すように、2つの電子部品素子と、これら電子部品素子を配置して保持するベース2と、ベース2と接合してベース2に配置保持した電子部品素子を気密封止するための蓋(図示省略)と、含む構成とする。なお、本実施例では、電子部品素子として、水晶振動片4(本発明でいう圧電振動片)と、ICチップ5(本発明でいう集積回路素子)とを用いる。
【0036】
この水晶発振器では、ベース2と蓋とが接合されて本体筐体(図示省略)が成形され、本体筐体の内部のベース2上に水晶振動片4とICチップ5とが配される。またこの時、本体筐体の内部に水晶振動片4とICチップ5とを配するための配置領域であるキャビティ6(内部空間)が形成される。このキャビティ6は、蓋とベース2により気密封止されたベース2の内部空間である。また、キャビティ6には、底面部61とこの底面部61より上層となる段部62が設けられ、水晶振動片4は段部62上に配され、ICチップ5は底面部61(実質は底面部61に形成された凹部内底面)上に配されている。
【0037】
次に、この水晶発振器の各構成について説明する。
【0038】
水晶振動片4は、図1に示すように、ATカットの水晶片(図示省略)からなり、平面視矩形上の一枚板の直方体に成形されている。この水晶振動片4の両主面41,42には、それぞれ励振電極43と、これらの励振電極43を外部電極(図1では電極パッド81)と電気的に接続するための接続電極44と、励振電極43を接続電極に引き出すための引出電極45とが形成されている。そして、水晶振動片4は、導電性接着剤31(本発明でいう導電性接合材)を用いてベース2(キャビティ6の段部62)に形成された複数の電極パッド81に電気機械的に接合されている。なお、励振電極43,接続電極44,および引出電極45は、真空蒸着法やスパッタリング法により形成され、例えば、水晶振動板側からクロム、金の順に、あるいはクロム、金、クロムの順に、あるいはクロム、銀、クロムの順に積層して形成されている。なお、本実施例で用いる導電性接着剤31は、硬化温度が180度程度の導電性シリコーン系樹脂が用いられている。また、導電性接合材として導電性シリコーン系樹脂に限定されるものではなく、導電性ウレタン系樹脂などの他の樹脂であってもよく、また、金などの金属バンプであってもよい。具体的に、導電性接着剤31の硬化温度もしくはベース2の電極パッド81に水晶振動片4を接合する際のキャビティ6内の接合雰囲気は、下記する高硬化性接合材(ICチップ5の記載内容参照)の硬化温度に対して略同じ温度以下の温度に設定されている。例えば、高硬化性接合材として硬化温度が290度程度のポリイミド系樹脂を使用する場合、導電性接着剤31として、同じ290度程度の硬化温度のポリイミド系樹脂を用いるか、180度程度とより硬化温度の低い導電性シリコーン系樹脂を使用したり、150度程度のキャビティ6内の接合雰囲気となる金などの金属バンプを用いるとよい。
【0039】
ICチップ5は、図1に示すように、水晶振動片4とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子であり、接続端子51が複数形成されている。本実施例では、ICチップ5にベアチップを採用している。ICチップ5は、高硬化性接合材によりベース2(キャビティ6)に機械的に接合される。なお、本実施例では、高硬化性接合材として硬化温度が290度程度のポリイミド系樹脂を用いている。また、高硬化性接合材としてポリイミド系樹脂が好ましいがポリイミド系樹脂に限定されるものではなく、エポキシ系樹脂(銀ペースト)であってもよい。そして、ICチップ5の複数の接続端子51は、ワイヤ32を用いて電極パッド81に電気的に接続されている。なお、図1では、2つの接続端子51についてワイヤ32を用いて電極パッド81に電気的に接続されている例を示し、他の接続端子51の電気的接続に関して図示を省略している。また、図1において省略したワイヤ32による電極パッド81への他の接続端子51の電気的接続は、水晶振動片4とICチップ5との導通状態の有無にかかわらず行ってもよく、例えば、水晶振動片4とICチップ5とを導通状態とする前に、ワイヤ32によりICチップ5の他の接続端子51が電極パッド81に電気的に接続されてもよい。また、ワイヤ32は、図1に示すように、キャビティ6内のベース2の平面視上において露出されている。
【0040】
ベース2は、アルミナ等のセラミックとタングステン等の導電材料を適宜積層した構成からなる。このベース2は、図1,2に示すように、箱状体に形成され、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、所定形状からなる導電材料および中空を有するセラミック材料を2層積層して断面視略凹状に一体的に焼成されている。また、中空を有するセラミック材料は、平面視矩形状の一枚板のセラミック材料の表面外周に沿って成形されている。この中空を有するセラミック材料の上面は、蓋との接合領域21であり、この接合領域21には、蓋と接合するためのメタライズ層(図示省略)が設けられている。
【0041】
また、図1,2に示すように、ベース2の平面視外周には、その一つの長辺22に3つのキャスタレーション7が形成され、その一つの短辺23に2つのキャスタレーション7が形成され、及びその四隅にキャスタレーション7が形成されている。また、本実施例では、ベースの長辺22および短辺23に、それぞれキャスタレーション7がキャビティ6を挟んで対向して形成されている。また、キャスタレーション7は、ベース2の半円弧状の切り欠き(半円弧状の凹部)が本体筐体の表面から裏面にかけて形成されている。なお、このキャスタレーションには電極パターン8が形成されている。
【0042】
また、図1に示すように、ベース2の表面24(キャビティ6の底面部61)には、ICチップ5の接続端子51と、外部(外部部品や外部機器)の電極とを電気的に接続するための複数の電極パターン8が形成されている。また、ベース2の表面24(キャビティ6の段部62)には、水晶振動片4の接続電極44と、外部(外部部品や外部機器)の電極とを電気的に接続するための複数の電極パターン8が形成されている。また、図2に示すように、ベース2の裏面25には、外部(外部部品や外部機器)の電極との接続(接合)の外部端子となる複数の端子電極9が形成されている。
【0043】
電極パターン8は、水晶振動片4およびICチップ5と少なくとも電気的に接続するための電極パッド81と、これら電極パッド81をそれぞれに対応したベース2の裏面25に形成される端子電極9に引き出すための引回電極82とから構成されている。複数の電極パターン8は、キャビティ6内からキャスタレーション7を介してベース2の裏面25に引き出され、水晶振動片4およびICチップ5(主にICチップ5)は端子電極9から外部(外部部品や外部機器)と接続(接合)される。なお、本実施例では、図1に示すように、電極パターン8(少なくとも引回電極82の一部)が、キャビティ6内の平面視上において露出形成されている。なお、本実施例でいう電極パターン8には、少なくとも、Gnd用電極パターンと、出力用電極パターンと、OE(Output Enable)用電極パターンと、VDD用電極パターンと、水晶測定端子用電極パターン(水晶検査端子用電極パターンも含む)等があり、それぞれ対応した端子電極9に接続されている。なお、端子電極のうち水晶測定端子についてはキャスタレーション7において外部機器(検査機器)と接続されるように設定してもよい。また、キャビティ6内でのICチップ5の電気的接続を行うためのワイヤ32を接続する電極パッド81の位置は、図1に示すように、キャビティ6を構成する壁面63から離れるように位置設定されている。なお、ここでいうワイヤ32を接続する電極パッド81の位置は、キャビティ6の壁面63(底面部61と連続する壁面63や段部62と連続する壁面63など)に接しないワイヤボンディングできる領域を確保できればよい。この図1に示すワイヤ32を接続する電極パッド81の位置は、壁面63に対してICチップ5近傍に設定されている。
【0044】
蓋は、金属材料からなり、平面視矩形状の一枚板に成形されている。この蓋は、下面にろう材(図示省略)が形成されており、直接的シーム溶接やビーム溶接等の手法によりベース2に接合されて、蓋とベース2とによる水晶発振器の本体筐体が成形される。具体的に、蓋は、コバールからなるコア材に金属層としての金属ろう材が形成された構成であり、より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成である。ここでいう銀ろう層がベース2のメタライズ層と接合される。また、銀ろう層の一部がベース2のメタライズ層と接合するための溶接領域とされ、この溶接領域は蓋の平面視外周端部に沿って設定されている。蓋の平面視外形はベース2の外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。
【0045】
上記した構成要件を含んだ水晶発振器では、ベース2のキャビティ6にICチップ5および水晶振動片4を配してそれぞれ上記したように電気機械的に接合し、これらICチップ5および水晶振動片4を蓋にて被覆し、ベース2のメタライズ層と蓋の銀ろう層の一部とを溶融硬化させて接合させ、キャビティ6内のICチップ5および水晶振動片4の気密封止を行う。また、この水晶発振器では、図1に示すように、キャビティ6内のベース2の平面視上において、ワイヤ32を露出した状態で水晶振動片4とICチップ5とが重ね合われている。具体的に、キャビティ6内のベース2の平面視上において水晶振動片4によってICチップ5の一部が覆われた状態となっている。
【0046】
なお、本実施例では、封止用の金属リングを用いずに直接的シーム溶接による気密封止(直接的シーム封止)を行っており、蓋の長辺31と短辺32に沿ってシームローラ(図示省略)を走査させることで、蓋に形成された銀ろう層の一部とベース2のメタライズ層を接合して水晶発振器を製造する。
【0047】
次に、上記した水晶発振器の製造について、図1を用いて説明する。
【0048】
まず、ベース2のキャビティ6内にICチップ5を配し、ICチップ5を高硬化性接合材によりキャビティ6に機械的に接合する。なお、本実施例では、高硬化性接合材として硬化温度が290度程度のポリイミド系樹脂を用いている。また、高硬化性接合材としてポリイミド系樹脂が好ましいがポリイミド系樹脂に限定されるものではなく、上記したようにエポキシ系樹脂であってもよい。また、この段階において、ICチップ5の一部の接続端子51と電極パッド81とを電気的に接続してもよい。しかしながら、この段階におけるICチップ5の一部の接続端子51と電極パッド81との接続状態は、非導通状態となっている。ここでいう非導通状態とは、水晶振動片4からICチップ5への入出力回路が成立していない状態のことをいう。
【0049】
ICチップ5の機械的接合を終えた後に、ベース2のキャビティ6内の段部62上に水晶振動片4を配する。段部62に配した水晶振動片4を導電性接着剤31を用いて段部62に形成された複数の電極パッド81に電気機械的に接合する。すなわち、ベース2の電極パッド81と水晶振動片4の励振電極43とを電気的に接続して導通状態とする。ここでいう導通状態とは、水晶振動片4の入出力回路が成立している状態のことをいう。
【0050】
水晶振動片4の電気機械的接合を終えた後に、水晶振動片4単体に強励振をかける(本発明でいう圧電振動片に強励振をかける工程)。
【0051】
水晶振動片4に強励振をかけた後に、ワイヤ32を用いてICチップ5の接続端子51と電極パッド81と電気的に接続する(ワイヤボンディングする)。すなわち、ベース2の電極パッド81とICチップ5の接続端子51とをワイヤ32を用いて電気的に接続して導通状態とする。ここでいう導通状態とは、水晶振動片4からICチップ5への入出力回路が成立している状態のことをいう。
【0052】
水晶振動片4とICチップ5とのベース2のキャビティ6への電気機械的接合を終えた後に、水晶振動片4をミーリングして水晶振動片4の周波数調整を行う。
【0053】
水晶振動片4へのミーリングによる周波数調整を終えた後に、水晶振動片4をアニールして加熱成形による歪みを除去する。
【0054】
水晶振動片4のアニールを終えた後に、ベース2の開口に蓋を配して水晶振動片4とICチップ5とを蓋にて被覆する。そして、直接的シーム溶接によってベース2のメタライズ層と蓋の銀ろう層の一部とを溶融硬化させて接合させ、キャビティ6内のICチップ5および水晶振動片4の気密封止を行う。
【0055】
直接的シーム溶接によってベース2と蓋との接合により水晶振動片4とICチップ5との気密封止を行なった後に、当該水晶発振器の特性を測定して水晶発振器を製造する。具体的に、当該水晶発振器の特性の測定では、水晶振動片4の周波数や直列共振抵抗値のレベル変動を測定し、水晶発振器の良品を判定する。
【0056】
上記したように、本実施例にかかる水晶発振器の製造方法によれば、ベース2の電極パッド81と水晶振動片4の励振電極43とを電気的に接続して導通状態とするとともに、ベース2の電極パッド81とICチップ5の接続端子51とを非導通状態として、水晶振動片4に強励振(オーバードライブ)をかける工程を行い、水晶振動片4に強励振をかける工程後に、ベース2の電極パッド81とICチップ5の接続端子51とをワイヤ32を用いて電気的に接続して(ワイヤボンディング)導通状態とするので、水晶振動片4に強励振をかける際の出力により他の電子部品素子(本実施例ではICチップ5)に悪影響を与えるのを抑制することができる。本実施例では、水晶振動片4の強励振を行なう場合、水晶振動片4に強励振をかけた後にICチップ5を導通状態とするので、水晶振動片4に強励振をかける出力がICチップ5に伝わることはなく、水晶振動片4に強励振をかける出力によりICチップ5が破壊するのを抑制することができる。
【0057】
具体的に、本実施例の場合、水晶振動片4に強励振をかけると、水晶振動片4の両主面41,42などの表面に付する異物が外れ、水晶振動片4の歪みを抑えて励振レベルによる周波数の変動や、周波数調整工程(ミーリングなど)による周波数のシフトの変動を抑えることができる。
【0058】
また、ベース2にICチップ5を硬い高硬化性接合材31により機械的接合を行なっているので、ベース2の電極パッド81にICチップ5をより安定した状態でワイヤボンディングすることができる。
【0059】
また、高硬化性接合材を先に接合(硬化)させ、後工程で接合(硬化)する導電性接着剤31の硬化温度もしくはベース2の電極パッド81に水晶振動片4を接合する際のキャビティ6内の接合雰囲気は、高硬化性接合材の硬化温度に対して略同じ温度以下の温度に設定されるので、本実施例にかかる水晶発振器の製造において発生する不要なガスを極力抑えて水晶振動片4やICチップ5への不具合をなくすとともに、水晶振動片4の接合の信頼性を確保することができる。
【0060】
また、ベース2の電極パッド81に、水晶振動片4の励振電極43およびICチップ5の接続端子51を電気的に接続して導通状態とした後に、ベース2に蓋を接合して本体筐体の内部のベース2に配置した水晶振動片4とICチップ5とを気密封止するので、気密封止前にICチップ5への影響を気にせずに水晶振動片4に強励振をかけることができる。これに対して、従来の技術では、水晶振動片4とICチップ5とを全て導通状態として本体筐体の内部に水晶振動片4とICチップ5とを気密封止し、その後に水晶振動片4とICチップ5とのすべての特性を測定しており、水晶振動片4に強励振をかけることはできない。
【0061】
具体的に、本実施例の場合、水晶振動片4に強励振をかけると、水晶振動片4の両主面などの表面に付する異物が外れ、水晶振動片4の歪みを抑えて励振レベルによる周波数の変動や、周波数調整工程(ミーリングなど)による周波数のシフトの変動を抑えることができる。これに対して、外部から水晶振動片単体の特性の測定を行うために、本体筐体に水晶振動片4単体と独立して接続(接合)された外部端子(ICチップ5とは電気的に接続されていない外部端子)が形成され、水晶振動片4とICチップ5とを全て導通状態として本体筐体の内部に水晶振動片4とICチップ5とを気密封止し、その後に水晶振動片4とICチップ5とのすべての特性を測定する場合、水晶振動片4に強励振をかけると、水晶振動片4の両主面などの表面に付する異物が外れるが、この異物が本体筐体の内部のベース2などに再付着(異物がベース2上に落ちるなど)して当該水晶発振器の特性に悪影響を与える。
【0062】
また、上記したように、本実施例にかかる水晶発振器によれば、上記した水晶発振器の製造方法による作用効果と同様の作用効果を有する。さらに、本実施例にかかる水晶発振器によれば、上記した水晶発振器の製造方法によって製造されているので、水晶振動片4とICチップ5との接続状態を遮断して水晶振動片4に強励振をかけるために新たに端子電極および電極パターン8(端子電極9と電極パッド81をつなぐパターン)を本体筐体に形成する必要がなく、製造コストの抑制および電極パターン設計の簡略化を図ることができる。特に電極パターン8の設計の簡略化を行うことは当該水晶発振器の小型化を図るために好適である。また、本実施例にかかる水晶発振器によれば、水晶振動片4に強励振をかけるために別途特別な端子を設ける必要がないため、本体筐体の構成の簡略化を図ることができる。
【0063】
また、ベース2にICチップ5を高硬化性接合材(本実施例では硬化温度が290度程度のポリイミド系樹脂)により機械的接合を行い、ベース2へのICチップ5の機械的接合後に、ベース2の電極パッド81に水晶振動片4を導電性接合材(本実施例では硬化温度が240度の導電性シリコーン系樹脂)により電気機械的接合を行い、ベース2の電極パッド81への水晶振動片4の電気機械的接合後に、水晶振動片4に強励振をかける工程を行い、水晶振動片4に強励振をかける工程後に、ベース2の電極パッド81とICチップ5の接続端子51とをワイヤ32を用いて電気的に接続するので、ベース2の電極パッド81にICチップ5をワイヤボンディングするためにはポリイミド系樹脂などの硬い高硬化性接合材を用いる必要がある。ポリイミド系樹脂などの硬い高硬化性接合材は硬化温度がシリコーン樹脂などの耐衝撃性の優れた接合材より高いので先に硬化させることができ、水晶発振器の製造において発生する不要なガスを極力抑えて水晶振動片4やICチップ5への不具合をなくすとともに、水晶振動片4の接合の信頼性を確保することができる。
【0064】
また、本体筐体の内部に水晶振動片4とICチップ5とを配するためのキャビティ6が形成され、キャビティ6には、底面部61とこの底面部61より上層となる段部62が設けられ、水晶振動片4は段部62上に配され、ICチップ5は底面部61上に配されるので、キャビティ6の同一高さの位置(例えば底面部61のみ)に水晶振動片4とICチップ5とが配された場合と比較して、水晶振動片4とICチップ5とはそれぞれ互いに他の位相ノイズ(輻射ノイズ)を考慮しないで電極パターン8の設計を行うことが可能となり、電極パターン8の設計の簡略化を図ることができる。
【0065】
また、ワイヤ32は、キャビティ6内のベース2の平面視上において露出されたので、ベース2(電極パッド81)と水晶振動片4(励振電極43)とを電気的に接続して導通状態とした状態とし、水晶振動片4に強励振をかけた後に、ベース2(電極パッド81)とICチップ5(接続端子51)とをワイヤ32を用いて電気的に接続して導通状態とすることを容易に行うことができる。この構成は、特に、キャビティ6内のベース2の平面視においてICチップ5(ICチップ5の少なくとも一部)が水晶振動片4に隠れている場合に有効であり、キャビティ6内のベース2の平面視上において、ワイヤ32を露出した状態で水晶振動片4とICチップ5とを重ね合わせた状態とすることで当該水晶発振器の本体筐体の小型化を図ることができる。
【0066】
また、ICチップ5の電気的接続を行うためのキャビティ6内でのワイヤ32を接続する電極パッド81の位置は、キャビティ6を構成する壁面63から離れるように位置設定されたので、キャビティ6内のベース2上においてワイヤ32を接続する電極パッド81の領域を確保することができる。このため、ICチップ5をベース2(電極パッド81)にワイヤボンディングする際に図示しないボンディングツール(キャピラリー)を用いるが、ベース2上においてこのボンディングツールを挿入する領域が確保され、ICチップ5を電極パッド81にワイヤ接続する際の接合の信頼性が高まる。この構成は、特に、キャビティ6内のベース2の同一面(平面視)上であって同一高さの位置に水晶振動片4とICチップ5とが配置された場合に有効である。
【0067】
また、上記した本実施例に示すようにベース2と蓋との接合を直接的シーム接合により行う場合、本実施例に示すように切り欠き部33が円弧状に形成されていることが好ましい。
【0068】
なお、上記した本実施例では、圧電振動デバイスとして表面実装型水晶発振器を用いたが、これに限定されるものではなく、水晶振動子や水晶振動片フィルタなどの他の圧電振動する他の圧電振動デバイスであってもよい。また、圧電材料の好適な例として水晶を用いているが、これに限定されるものではない。
【0069】
また、上記した実施例では、水晶振動片4とICチップ5とのベース2のキャビティ6への電気機械的接合を終えた後に、水晶振動片4をミーリングして水晶振動片4の周波数調整を行なっているが、これに限定されるものではなく、水晶振動片4の周波数に基づいて他の周波数調整工程を行なってもよく、例えば水晶振動片4をパーシャルして水晶振動片4の周波数調整を行なってもよい。
【0070】
また、上記した本実施例では、2つの電子部品素子を用いているが、電子部品素子の数は限定されるものではなく任意に設定可能である。
【0071】
また、上記したベース2と蓋との接合に関して、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えばビーム封止する構成を採用することができる。
【0072】
また、本実施例では、ベース2の形状を箱型形状(断面視凹状)とし、蓋の形状を平面視矩形状の一枚板としているが、これに限定されるものではなく、例えば、ベース2の形状を平面視矩形状の一枚板とし、蓋の形状を箱型形状(断面視凹状)としてもよい。この場合、蓋の側面にキャスタレーション7が形成されることとなる。すなわち、本実施例では、キャスタレーション7は、本体筐体の側面に形成されていればよい。
【0073】
また、本実施例では、水晶振動片4とICチップ5とが、図1に示すような、キャビティ6内のベース2の平面視上においてワイヤ32を露出した状態で水晶振動片4とICチップ5とを重ね合わせた状態としているが、水晶振動片4とICチップ5との重ね合わせ状態はこれに限定されるものではなく、ワイヤ32を露出した状態であればキャビティ6内のベース2の平面視上において更にICチップ5が水晶振動片4に隠れてもよい。
【0074】
また、本実施例では、水晶振動片4は、導電性接着剤31を用いてベース2(キャビティ6)に形成された複数の電極パッド81に電気機械的に接合されているが、これに限定されるものではなく、水晶振動片4は、水晶振動片4用の金属バンプ(図示省略)を用いてフリップチップボンディング(FCB)によりベース2(キャビティ6)に形成された複数の電極パッド81に電気機械的に接合されてもよい。この構成を採用した水晶発振器を図3に示す。
【0075】
図3に示す水晶発振器は、上記した図1に示す水晶発振器に対して、水晶振動片4のベース2への接合、およびキャビティ6内での水晶振動片4とICチップ5の配置関係が異なる。そこで、この図3に示す水晶発振器では、上記した図1に示す水晶発振器と異なる構成についてのみ説明し、同一の構成についての説明を省略する。なお、図3に示す水晶発振器では、図1に示す水晶発振器と同一構成による作用効果及び変形例は、図1に示す水晶発振器と同様の作用効果及び変形例を有する。
【0076】
図3に示すように、ベース2のキャビティ6内のベース2では、水晶振動片4とICチップ5とがキャビティ6内のベース2の平面視上において重ならずに配置されている。
【0077】
また、図3に示す水晶振動片4は、水晶振動片4用の金属材料を含むバンプ(図示省略)を用いてフリップチップボンディング(FCB)によりベース2(キャビティ61の段部62)に形成された複数の電極パッド81に電気機械的に接合されている。
【0078】
また、図3に示すICチップ5は、水晶振動片4とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子であり、接続端子51が複数形成されている。また、ICチップ5は、ベース2(キャビティ6)に機械的に接合され、ICチップ5の複数の接続端子51は、ワイヤ32を用いて電極パッド81に電気的に接続されている。なお、図3では、2つの接続端子51についてワイヤ32を用いて電極パッド81に電気的に接続されている例を示し、他の接続端子51の電気的接続に関して図示を省略している。また、図3において省略したワイヤ32による電極パッド81への他の接続端子51の電気的接続は、水晶振動片4とICチップ5との導通状態の有無にかかわらず行ってもよく、例えば、水晶振動片4とICチップ5とを導通状態とする前に、ワイヤ32によりICチップ5の他の接続端子51が電極パッド81に電気的に接続されてもよい。また、ワイヤ32は、図3に示すように、キャビティ6内のベース2の平面視上において露出されている。
【0079】
図3に示す水晶発振器によれば、図1に示す水晶発振器の製造方法による作用効果と同様の作用効果を有するだけでなく、本体筐体の内部に水晶振動片4とICチップ5とを配するためのキャビティ6が形成され、水晶振動片4とICチップ5とはキャビティ6内のベース2の平面視上において重ならずに配置されるので、当該水晶発振器の本体筐体の低背化を行うのに好ましい。
【0080】
また、水晶振動片4とICチップ5とは、バンプを介してベース2に少なくとも機械的に接合されているので、当該水晶発振器の小型化に好適である。すなわち、水晶振動片4とICチップ5とを、導電性接着材を介してベース2に電気機械的に接合した場合と比較して、水晶振動片4およびICチップ5とベース2との接合領域を狭くすることができ、これらの接合領域の確保を容易とする。
【0081】
なお、上記した図1,3に示す水晶発振器では、キャビティ6内において、水晶振動片4は段部62上に配され、ICチップ5は底面部61(底面部61に形成された凹部内底面)上に配されているが、これに限定されるものではなく、キャビティ6に段部62が設けられずに底面部61だけが設けられた場合、この底面部61に水晶振動片4とICチップ5とが配されてもよい。この場合、水晶振動片4とICチップ5とがキャビティ6内の同一平面である底面部61に配されているので、当該水晶発振器の本体筐体の低背化を行うのに好ましい。
【0082】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、圧電振動デバイスのうち特に圧電発振器に好適であるが、他に圧電振動子であっても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本実施例にかかる水晶発振器のベースの概略平面図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる水晶発振器のベースの概略裏面図である。
【図3】図3は、本実施の他の例にかかる水晶発振器のベースの概略平面図である。
【符号の説明】
【0085】
2 ベース
32 ワイヤ
4 水晶振動片
43 励振電極
5 ICチップ
51 接続端子
6 キャビティ
61 底面部
62 段部
63 壁面
81 電極パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋と、電極パッドが形成されたベースとの接合により成形される本体筐体の内部の前記ベース上に、少なくとも励振電極が形成された圧電振動片および接続端子が形成された集積回路素子を含む複数の電子部品を配置するとともにこれら圧電振動片および集積回路素子を前記本体筐体の内部に気密封止する圧電振動デバイスの製造方法において、
前記ベースの電極パッドと前記圧電振動片の励振電極とを電気的に接続して導通状態とするとともに、前記ベースの電極パッドと前記集積回路素子の接続端子とを非導通状態として、前記圧電振動片に強励振をかける工程を行い、
前記圧電振動片に強励振をかける工程後に、前記ベースの電極パッドと前記集積回路素子の接続端子とをワイヤを用いて電気的に接続して導通状態とすることを特徴とする圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記ベースに前記集積回路素子を高硬化性接合材により機械的接合を行い、
前記ベースへの前記集積回路素子の機械的接合後に、前記ベースの電極パッドに前記圧電振動片を導電性接合材により電気機械的接合を行い、
前記ベースの電極パッドへの前記圧電振動片の電気機械的接合後に、前記圧電振動片に強励振をかける工程を行い、
前記圧電振動片に強励振をかける工程後に、前記ベースの電極パッドと前記集積回路素子の接続端子とをワイヤを用いて電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記導電性接合材の硬化温度もしくは前記ベースの電極パッドに前記圧電振動片を接合する際の接合雰囲気は、前記高硬化性接合材の硬化温度に対して略同じ温度以下の温度に設定されたことを特徴とする請求項2に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記ベースの電極パッドに、前記圧電振動片の励振電極および前記集積回路素子の接続端子を電気的に接続して導通状態とした後に、前記ベースに前記蓋を接合して前記本体筐体の内部の前記ベースに配置した前記複数の電子部品を気密封止することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイスの製造方法によって製造されたことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項6】
前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成され、
前記前記圧電振動片と前記集積回路素子とは、前記キャビティ内の前記ベースの平面視上において重ならずに配置されたことを特徴とする請求項5に記載の圧電振動デバイス。
【請求項7】
前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成され、
前記キャビティには、底面部とこの底面部より上層となる段部が設けられ、
前記前記圧電振動片は前記段部上に配され、前記集積回路素子は前記底面部上に配されたことを特徴とする請求項5または6に記載の圧電振動デバイス。
【請求項8】
前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成され、
前記ワイヤは、前記キャビティ内の前記ベースの平面視上において露出されたことを特徴とする請求項5乃至7のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス。
【請求項9】
前記本体筐体の内部に前記複数の電子部品素子を配するための配置領域であるキャビティが形成され、
前記集積回路素子の電気的接続を行うための前記キャビティ内での前記ワイヤを接続する前記電極パッドの位置は、前記キャビティを構成する壁面から離れるように位置設定されたことを特徴とする請求項5乃至8のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス。
【請求項10】
前記複数の電子部品素子は、バンプを介して前記ベースに少なくとも機械的に接合されたことを特徴とする請求項5乃至9のうちいずれか1つに記載の圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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