説明

圧電振動子駆動回路

【課題】帰還型の圧電振動子駆動回路において、同一駆動電圧で圧電振動子の振動が最大になるようにして、駆動に必要な昇圧電圧の値を下げ、電池駆動の携帯型装置に最適な圧電振動子駆動回路を提供する。
【解決手段】圧電振動子全体に流れる駆動電流が最大値となる周波数より高い周波数で駆動して圧電振動子がほぼ直列共振状態で駆動されるように移相を調整し、圧電振動子の振動が最大になるようにするとともに、出力駆動部に同調昇圧部をもうける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子の機械的振動を利用する装置の、該圧電振動子の駆動回路に関するものである。本発明は種々の装置に利用可能であり、適用範囲を特に限定するものではないが、代表例として、以下液体を霧状にして噴霧する携帯型噴霧装置に利用した場合について説明する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子を利用した噴霧装置は従来多くの用途に用いられて来たが、用途によっては携帯型が望まれる。携帯型噴霧装置では電池を電源とするため、当然に低消費電力が求められ、同時に簡便で使い勝手の良いものが期待される。
【0003】
また携帯型の場合は、装置の姿勢など使用状態が頻繁に変化し、圧電振動子にかかる負荷の状態が常に変化することが予想されるので、変動する負荷に対して前記圧電振動子の振動を一定に保つための何らかの手段が必要である。
また量産時の振動子の共振周波数、負荷抵抗等の固体のバラツキの吸収をする手段が必要である。
【0004】
さらに携帯型の場合は装置全体の小型化も大きな課題となる。低電力化による使用電池の小型化、使用する部品の小型化、部品点数の削減などを同時に図れることが望ましい。例えば圧電振動子の駆動に必要な高電圧を得るために昇圧手段が必要であるが、従来のDC−DCコンバータやトランスを使用する方法では大きな部品が必要となり、また昇圧部での電力損失も問題となる。従って出来るだけ低い昇圧電圧で圧電振動子を駆動し、また昇圧回路もできるだけ簡素化し、総合的に効率の良いシステムとすることが望ましい。
【0005】
圧電振動子の駆動形態としては、大きく強制駆動式(他励式)と自励振動式に分けられる。強制駆動型は圧電振動子に外部信号を加えて強制的に振動させる方式であり、起動が早く使い勝手は良いが前記外部信号の周波数は圧電振動子の共振周波数と直接的な関係が無いため、駆動に要する電力が大きくなる傾向にあり携帯用に適しているとは言い難い。
【0006】
自励振動式は圧電振動子を共振器とする発振回路を形成し、圧電振動子をその共振周波数で振動させる方式であり、損失が少なく消費電力を小さくできる利点があるが、圧電振動子の振動が十分に成長するまでに時間がかかり、使い勝手の点で問題がある。
【0007】
そこで、基本的には自励発振器を有する強制駆動式であるが、その自励発振器の発振周波数が前記圧電振動子の共振周波数となるように帰還回路を設ける方式(以下、帰還式と言う)が提案されている。
【0008】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4にはそれぞれ帰還式に関しての技術が開示されているが、これらの技術は文言上は駆動周波数を圧電振動子の共振周波数に追従させるとしているものの、実際には圧電振動子のLC直列共振回路の共振周波数ではなく、制動容量も含めた圧電振動子全体として共振周波数を指しており、大まかに分類すると次の2つとなる。
1:圧電振動子全体に流れる電流が最大になるように駆動周波数を制御する。
2:圧電振動子全体に流れる電流と駆動電圧の位相が一致するように駆動周波数を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1−293170号公報
【特許文献2】特開平5−23646号公報
【特許文献3】特開平5−212331号公報
【特許文献4】特開平6−63507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図2は圧電振動子Sxの等価回路Sx’を示している。図2において圧電振動子Sxは等価回路Sx’に示すように、等価容量Cx、等価インダクタンスLx、等価抵抗Rxの直列回路に制動容量Coが並列に接続される構成の等価回路Sx’で表される。等価容量Cx、等価インダクタンスLx、等価抵抗Rxの直列回路はLC直列共振回路を形成する。圧電振動子の振動が液の噴霧をする時はその振動に対して負荷がかかるが、その負荷は等価回路上はSx’における等価抵抗Rxの値が大きくなったように表される。
【0011】
図5(a)、(b)は図2に示した等価回路に駆動電圧Veを印加した時の周波数特性図である。前記LC直列共振回路に流れる電流をIx(以下直列共振回路電流Ixと言う)、制動容量Coに流れる電流をIy(以下制動電流Iyと言う)、圧電振動子全体に流れる電流をIz(以下駆動電流Izと言う)で示し、また各電流の印加電圧に対する位相をそれぞれPx、Py、Pzで示している。位相の単位は度でありグラフの右側のスケールで示してある。
【0012】
図5(a)は前記等価抵抗が小さい場合、(b)は負荷がかかって該Rxが大きくなった場合を示している。(a)、(b)とも印加する駆動電圧Veの振幅は同一であり、また電流スケール、位相スケールとも同一にしてある。
【0013】
周波数fxは直列共振周波数であり、等価容量Cxと等価インダクタンスLxが直列共振状態となり、そのインピーダンスは0となるため、ここに流れる直列共振回路電流Ixは完全に抵抗性となり、従ってその位相Pxは駆動電圧Veの位相と一致し、また前記等価抵抗に最大の電力を供給する。従って同一駆動電圧Veで前記負荷に最大限の電力を供給するためには駆動周波数を直列共振周波数fxとしなければならない。直列共振周波数fxは負荷によって変わることはないが、温度には依存する。
【0014】
図5(a)において、前記1に示した従来技術では、駆動電流Izが最大になるような駆動周波数fz1で圧電振動子を駆動することになる。また前記2に示した従来技術では、駆動電流Izの駆動電圧Veに対する位相Pzが0になるような駆動周波数fz2で圧電振動子を駆動することになる。図5(a)で明らかなように、上記駆動周波数fz1、fz2はいずれも直列共振回路電流Ixが最大となる直列共振周波数fxからはずれていることがわかる。
【0015】
また図5(b)の状態では前記1に記載の従来技術では駆動周波数としてfz1が求められるが、図5(a)と比較すれば明らかなように駆動周波数fz1と直列共振周波数fxとの差は大きくなっている。また前記2に記載の従来技術では駆動電流Izの位相Pzが0となる周波数が存在しないので制御不能となる。
【0016】
上記の問題は圧電振動子に流れる駆動電流Izが直列共振回路電流Ixと制動電流Iyとの合成であることに起因する。制動電流Iyは容量性であるため、駆動電圧Veに対して進み位相となり、従って駆動電流Izも駆動電圧Veに対して進み位相となる。また該駆動電流Izが最大になる周波数fz1は直列共振周波数fxよりも低くなる。
【0017】
また負荷変動があれば前記等価抵抗に流れる電流すなわち直列共振回路電流Ixも変化し、実際の回路では駆動電圧Veの大きさが変化してしまう。そこで駆動電圧Veの大きさを一定にしたり、あるいは電流を一定にする制御が行われるが、定電流化については従来は駆動電流Izを定電流化していたため、直列共振回路電流Ixはやはり負荷によって変動する結果となっていた。
【0018】
本発明は上記問題を解決し、例えば噴霧装置において起動操作直後からすばやく噴霧を開始するとともに、低い昇圧電圧でも強力な安定した噴霧動作が可能な、特に携帯型のように電池駆動させる装置に最適な圧電振動子駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
図5(a)、(b)において、直列共振回路電流Ixを直接検出することは不可能で、外部から検出可能な電流は駆動電流Izのみである。駆動電流Izは直列共振回路電流Ixと制動電流Iyとの合成であるから、制動電流Iyがわかれば直列共振回路電流Ixは(Iz−Iy)として求められるはずである。
【0020】
図3は圧電振動子の挙動をシミュレーションするために用いた回路を示す回路図であり実際の使用状況に合わせて圧電振動子全体を流れる駆動電流Izを検出するための検出器としての容量Ccを付加している。圧電振動子の等価回路Sx’は点Lにおいて容量Ccと直列接続される。
【0021】
図3に於ける容量Ca、Cbは上記考察を検証するためのもので、点Kで接続された容量Caと容量Cbの直列回路が、前記圧電振動子の等価回路Sx’と容量Ccとの直列回路に対し並列に接続される。容量Ca,Cb,Cc,Coの関係は(Ca/Co)=(Cb/Cc)となるように設定されている。容量Ca、Cbを介して流れる電流Isは制動容量Coに流れる制動電流Iyを模擬する。
【0022】
図3に示す回路に正弦波を加えたシミュレーション結果を図5(c)に示す。等価抵抗Rxの値は図5(b)の場合と同じ値にしてある。図5(c)においてVk、Vlは図3に示す点K、Lの電圧を示し、Pk,PlはそれぞれVk、Vlの、印加電圧に対する位相を示している。また「Vlk」はVlからVkを位相を含めて引いた結果であり、PlkはVlkの位相である。
【0023】
図5(c)を図5(b)と比較すると、Vlkの形状はほぼIxの形状の相似である事がわかる。Vlk波形の頂点は駆動周波数fxでIxの頂点と一致する。ただし、駆動周波数fxにおいてIxの位相Pxが0度であるのに対し、Vlkの位相Plkは−90度である。これは容量を流れる電流が電圧に対して90度進むため、電流位相を電圧位相で検出した場合、90度遅れるためである。なお、K点の電圧Vkは駆動電圧VeをCa、Cbで分圧しただけであるからその位相Pkは0度である。
【0024】
このようにして直列共振回路電流Ixの波形を得ることができれば、移相回路を付加することにより直列共振回路電流Ixと駆動電圧Veの位相を一致させる事が可能となり、同じ大きさの駆動電圧Veで等価抵抗Rxに最大限の電力を供給することが実現できる。
【0025】
すなわち駆動電流Izを位相も含めて検出する駆動電流位相検出回路と、模擬的に制動電流Iyを検出する制動電流位相検出回路と、これらの検出回路の出力を演算して直列共振回路電流Ixの波形を出力する直列共振回路電流演算回路とを設け、さらに位相を調整する移相回路を用いれば、駆動電圧Veの位相と直列共振回路電流Ixの位相を一致させる制御が可能となる。
【0026】
このように駆動電圧Veの位相と直列共振回路電流Ixの位相を一致させる制御を行った場合、発振周波数は負荷の変動にかかわらず常に前記fxは変化しない。すなわち図5(a)、(b)を比較すれば明白なように、負荷が無い状態(a)でも負荷がある状態(b)でも前記fxは変わらない。すなわち負荷の変動によらず、常にfxなる周波数で圧電振動子を最大パワーで駆動し続ける事が可能になるのである。
【0027】
そこで上記目的を達成するための本発明における圧電振動子駆動回路は、
1.発振周波数可変な自励発振型の発振回路部と、該発振回路部の発振に同期して駆動パルスを作成する駆動パルス作成部と、該駆動パルスに基づいて圧電振動子を駆動する出力駆動部と、該圧電振動子全体に流れる電流を検出する駆動電流位相検出部と、前記圧電振動子の等価回路における制動容量Coに流れる電流を検出するための制動電流位相検出部と、前記駆動電流位相検出部の出力から前記制動電流位相検出部の出力を減算して、前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流波形を出力する直列共振回路電流演算部と、前記発振回路部の周波数を該直列共振回路電流演算部の出力周波数に同期させる同期手段と、前記駆動電流位相検出部または前記制動電流位相検出部の出力端から前記出力駆動部の入力端にいたる信号経路のいずれかの部分に挿入された移相回路部を有し、該移相回路部は、前記発振回路部が前記直列共振回路電流演算部の出力周波数に同期して発振している状態に於いて、前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流と前記出力駆動部から前記圧電振動子に印加される駆動電圧の位相差がほぼ0となるように位相調整することを特徴とする。
【0028】
2.位相比較器およびVCOを有するPLL回路部と、該PLLの出力に基づいて駆動パルスを作成する駆動パルス作成部と、該駆動パルスに基づいて圧電振動子を駆動する出力駆動部と、該圧電振動子全体に流れる電流を検出する駆動電流位相検出部と、前記圧電振動子の等価回路における制動容量Coに流れる電流を検出するための制動電流位相検出部と、前記駆動電流位相検出部の出力から前記制動電流位相検出部の出力を減算して、前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流波形を出力する直列共振回路電流演算部と、前記圧電振動子に印加される駆動電圧を検出する駆動電圧位相検出部を有し、前記PLL回路部の前記位相比較器の一方の入力を前記直列共振回路電流演算部の出力に基づく信号とし、他方の入力を前記駆動電圧位相検出部の出力に基づく信号とし、前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流と前記出力駆動部から前記圧電振動子に印加される駆動電圧の位相差がほぼ0となるようにすることを特徴とする。
【0029】
3.発振周波数可変な自励発振型の発振回路部と、該発振回路部の発振に同期して駆動パルスを作成する駆動パルス作成部と、該駆動パルスに基づいて圧電振動子を駆動する出力駆動部と、該圧電振動子全体に流れる電流を検出する駆動電流位相検出部と、前記圧電振動子の等価回路における制動容量Coに流れる電流を検出するための制動電流位相検出部と、前記駆動電流位相検出部の出力から前記制動電流位相検出部の出力を減算して、前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流波形を出力する直列共振回路電流演算部を有し、前記駆動電流位相検出部または前記直列共振回路電流演算部の出力信号を前記発振回路部に帰還することにより、前記圧電振動子全体に流れる電流または前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流と、前記圧電振動子に印加される駆動電圧の位相差がほぼ0となるように制御するとともに、前記直列共振回路電流演算部の出力振幅を検出する直列共振回路電流検出部を設け、該直列共振回路電流検出部の出力が一定になるように前記駆動パルス幅を制御することを特徴とする。
【0030】
4.発振周波数可変な自励発振型の発振回路部と、該発振回路部の発振に同期して駆動パルスを作成する駆動パルス作成部と、該駆動パルスに基づいて圧電振動子を駆動する出力駆動部と、該圧電振動子全体に流れる電流を検出する駆動電流位相検出部を有し、該駆動電流位相検出部の出力信号を前記発振回路部に帰還することにより該発振回路部の発振周波数を前記圧電振動子の振動周波数に同期させる圧電振動子駆動回路において、前記駆動電流位相検出部の出力端から前記出力駆動部の入力端に至る信号経路のいずれかの部分に移相回路部を設け、前記圧電振動子全体に流れる電流または前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流と、前記圧電振動子に印加される駆動電圧の位相差がほぼ0となるように位相調整したことを特徴とする。
【0031】
5.上記1、3または4において、前記発振回路部は一部に三角波または鋸歯状波を発生するように構成され、また前記駆動パルス作成部は2つの比較入力端に印加された信号の大小関係に応じて出力パルス幅を制御するPWMコンパレータを有し、該PWMコンパレータの少なくとも一方の比較入力端には前記発振回路部に発生する三角波または鋸歯状波が印加され、他方の比較入力端には前記圧電振動子の振動に係る一定に維持すべきレベル信号に基づく信号が印加されていることを特徴とする。
【0032】
6.上記5において前記PWMコンパレータの前記他方の入力端には誤差電圧増幅器を介して前記圧電振動子の振動に係る一定に維持すべきレベル信号が印加されていることを特徴とする。
【0033】
7.上記1、2、3、5または6において、前記駆動電流位相検出部は前記圧電振動子に直列に接続された容量Ccであり、前記制動電流位相検出部は、一端が前記圧電振動子に接続された容量Caと一端が容量Ccに接続された容量Cbの直列回路であり、容量Caと制動容量Coとの容量比Ca/Coが容量Cbと容量Ccとの容量比Cb/Ccとほぼ等しいことを特徴とする。
【0034】
8.あるいは上記1、2、3、5または6において、前記駆動電流位相検出部は前記圧電振動子に直列に接続された抵抗Rcであり、前記制動電流位相検出部は、一端が前記圧電振動子に接続された容量Caと一端が抵抗Rcに接続された抵抗Rbの直列回路であり、容量Caと制動容量Coとの容量比Ca/Coが抵抗Rcと抵抗Rbの抵抗比Rc/Rbとほぼ等しいことを特徴とする。
【0035】
9.上記1から8において、前記出力駆動部は相補型トランジスタで構成されたインバータと、一方の端子が該インバータの出力端に接続されたインダクタと一方の端子が電源に接続された容量との直列回路で構成され、該インダクタと該容量の直列回路の共振周波数は、圧電振動子の共振周波数fxとほぼ等しくなるように設定され、該インダクタと該容量の接続点を出力端とすることを特徴とする。
【0036】
10.上記1から8において、前記出力駆動部は、一方の端子が電源に接続され、他方の端子がMOSトランジスタのドレイン又はバイポーラトランジスタのコレクタに接続された第1のインダクタと第1の容量の並列回路と、一方の端子が該ドレイン又は該コレクタに接続され、他方の端子が前記MOSトランジスタのソース又はバイポーラトランジスタのエミッタとともに接地された第2のインダクタと第2の容量の直列回路から構成され、前記第1のインダクタと前記第1の容量の並列回路および前記第2のインダクタと前記第2の容量の直列回路の共振周波数がともに圧電振動子の共振周波数fxとほぼ等しくなるように設定され、該第2のインダクタと第2の容量との接続点を出力端としたことを特徴とする。
11.上記1から10において、圧電振動子を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
以上のように本発明による圧電振動子駆動回路は、前記圧電振動子のLC直列共振回路を流れる電流Ixと前記出力駆動部から前記圧電振動子に印加される駆動電圧の位相差が0となるような周波数、すなわち該LC直列共振回路の共振周波数で圧電振動子を駆動することができるので、該LC直列共振回路のインピーダンスは最低となり、同一の駆動電圧で最大の振動能力を負荷に供給でき、駆動に必要な昇圧電圧を低く押さえることができる。
【0038】
加えて出力駆動部に同調昇圧部を設けることにより、DC−DCコンバータやトランスなどの昇圧に必要な大型部品を排除することが可能となり、それらで消費されていた損失が削減されるから、全体として大幅な効率改善が実現できる。
【0039】
前記圧電振動子の振動に係る、一定に維持すべき電圧または電流のレベル信号を誤差電圧増幅器を介して前記PWMコンパレータに入力することにより、圧電振動子の駆動条件を高精度に制御することが可能となる。また前記直列共振回路電流演算部の出力振幅が一定になるように制御すれば、前記直列共振回路電流、すなわち負荷に流れる電流を一定に保つことができるので、圧電振動子の振動を精度良く一定に制御することができる。
【0040】
三角波または鋸歯状波を出力する発振回路部を用い、その三角波または鋸歯状波を前記PWMコンパレータの比較信号として利用すれば、圧電振動子の駆動条件を一定に保つための回路構成が大幅に簡素化できる。また回路の一部をPLLに置き換えることも構成の簡素化に役立つ。
【0041】
このように本願発明によれば、起動操作後ただちに噴霧動作が開始され、かつ低電力で効率よく安定した噴霧動作が行える小型の噴霧装置を供給することができ、その効果は特に電池駆動の携帯型において顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す回路図である。
【図2】圧電振動子の等価回路を示す回路図である。
【図3】圧電振動子のシミュレーション回路を示す回路図である。
【図4】本発明に用いる移相回路の例を示す回路図である。
【図5】圧電振動子の周波数特性を示す特性図である。
【図6】第1の実施形態に於ける各部の波形を示す波形図である。
【図7】電流位相検出部に係る他の実施形態を示す回路図である。
【図8】出力駆動部に係る他の実施形態を示す回路図である。
【図9】駆動パルスの変調に係る他の実施形態を示す回路図である。
【図10】本発明の第2の実施形態を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態を示す回路図である。図1において100は主電源で、携帯型の場合は電池が用いられる。主電源の電圧をVCCと表記する。
【0044】
符号113は発振回路部であり、図示した構成において点Aにはデューティ比50%の矩形波が、また点Bには三角波が生成される。本願発明においては、発振回路部113の出力は点Bより取られる。
【0045】
符号103はPWMコンパレータであり、差動増幅器A103の正入力端は発振回路部113の点Bに接続され、負入力端は後述する誤差電圧増幅器101の出力端である点Cに接続される。差動増幅器A103の出力端には、点Bの電位が点Cの電位を下回った期間にのみ低電位が出力され、該期間以外は高電位が出力される。この出力はインバータG102により反転されて次に述べる出力駆動部104の入力端である点Dに供給される。
【0046】
符号104は出力駆動部であって、本実施形態においてはPチャネルMOSトランジスタT101とNチャネルMOSトランジスタT102で構成されるインバータと、該インバータの出力端に接続される、インダクタL101と容量C105の直列回路で構成される同調昇圧部151からなる。該インバータの入力端である点Dには前記PWMコンパレータの出力が供給され、点Bの電位が点Cの電位を下回った期間にのみ、点Dに高電位の駆動パルスが印加されることになる。該期間を駆動パルス幅と言う。インダクタL101と容量C105の接続点Eには、前記駆動パルス幅に応じた大きさの昇圧された正弦波の駆動電圧Veが生じ、圧電振動子107に供給される。
【0047】
インダクタL101と容量C105の直列回路の共振周波数は、圧電振動子107の共振周波数fxとほぼ等しくなるように設定され、インダクタL101と容量C105の直列回路は同調昇圧部151を形成する。
【0048】
同調昇圧部151は、本願発明においては必須の構成ではないが、この同調昇圧部151は昇圧能力を大幅に高め、また、単に昇圧能力を高めるだけでなく、圧電振動子107に歪みの少ないきれいな正弦波電圧を印加し、余分な高調波成分を生じさせないで効率よく圧電振動子107を駆動でき、さらに電流波形の位相を正確に検出できるという利点もある。
【0049】
符号105は制動電流位相検出部であり、点Eに発生した駆動電圧Veは点Kにおいて容量Caと容量Cbによって分圧され、制動電流位相信号として後述する直列共振回路電流演算部109に供給される。
【0050】
符合106は駆動電流位相検出部である。容量Ccの一方の端子は接地され他方の端子は点Lにおいて圧電振動子107に接続される。圧電振動子107の他方の端子には点Eから駆動電圧Veが印加される。点Lには圧電振動子107全体に流れる駆動電流位相信号が現れ、この信号が直列共振回路電流演算部109に供給される。
【0051】
制動電流位相検出部105における前記容量Ca、Cbと駆動電流位相検出部106における容量Cc、および圧電振動子107の制動容量Coの関係はCa/Co=Cb/Ccとなるように設定される。
【0052】
符合109は直列共振回路電流演算部であり、制動電流位相検出部105からの制動電流位相信号は抵抗R106を介して差動増幅器A101の負入力端に供給され、駆動電流位相検出部106からの駆動電流位相信号は抵抗R105を介して差動増幅器A101の正入力端に供給される。差動増幅器A101の該正入力端はさらに抵抗R103を介して後述する定電圧化電源部の点Fの電位にバイアスされ、前記負入力端は抵抗R104を介して差動増幅器A101の出力端Gに接続される。
【0053】
直列共振回路電流演算部109の出力には直列共振回路電流Ixの90度遅れた相似波形の信号が得られる。
【0054】
符合110は移相回路部であり、直列共振回路電流演算部109の出力信号の位相を調整する。移相回路の具体例を図4に示す。図4(a)は進み移相回路、図4(b)は遅れ移相回路である。
【0055】
移相回路部110は、次に述べる波形整形部での位相反転や、他の回路の構成部分における遅延および各構成部品の特性をふまえて、適宜進み位相、遅れ位相のいずれかが採用され、直列共振回路電流Ixと駆動電圧Veの位相差がほぼ0となるように調整される。
【0056】
符合111は波形整形部、符合112は微分回路部であり、波形整形部111は移相回路部110の出力波形を矩形波に整形し、微分回路部112を通して該矩形波の立ち上がりと立ち下がり信号が発振回路部113の点Bに供給される。発振回路部113は該立ち上がり又は立ち下がり信号でトリガーされて直列共振回路電流演算部109の出力周波数に同期する。従って微分回路部112は同期手段である。
【0057】
符合101は誤差電圧増幅器であり、符合108は駆動電圧検出部である。誤差電圧増幅器101には一般的には差動増幅器が使用されるが、この実施形態ではシャントレギュレータD102を用いた場合を示している。シャントレギュレータD102のアノード端子は接地され、カソード端子は点Jに接続され、REF端子は点Nに接続され、点Nは駆動電圧検出部108の出力端に接続される。駆動電圧検出部108は圧電振動子107に印加される駆動電圧Veを整流し駆動電圧Veの大きさに比例した直流レベル信号を出力する。
【0058】
シャントレギュレータD102はアノードを基準としたREF端子の電位が一定の基準電位を超えるとカソ−ドとアノード間がシャント状態になる。従って圧電振動子107の駆動電圧Veが上昇し、点Nの電位が一定の基準電位を超えると、点Jの電位は急速に低下し、従って点Jの電位を分圧した点Cの電位も低下する。
【0059】
前述のように、圧電振動子107の駆動電圧Veの大きさは駆動パルス幅に依存し、該駆動パルス幅は、点Bの電位が点Cの電位を下回った期間であるから、点Cの電位が低下すると駆動パルスが幅が減少し、結局駆動電圧Veの振幅は低下することになる。
【0060】
逆に、圧電振動子107の駆動電圧Veが低下し、点Nの電位が一定の基準電位を下回ると、点Jの電位は急速に上昇し、従って点Cの電位が上昇するため、駆動パルスが幅が増加し、駆動電圧Veの振幅は増大する。そこで誤差電圧増幅器101および駆動電圧検出部各部108の各回路定数を適切に設定することにより圧電振動子に印加される駆動電圧Veの振幅を常に一定に保つようにすることができる。
【0061】
符合102はPWM最大変調設定部である。上記のように誤差電圧増幅器101および駆動電圧検出部108の各回路定数を設定した結果、場合によっては点Cの電位が高くなりすぎてPWMコンパレータ103から出力されるパルスの幅が許容範囲を超えてしまうことが考えられる。このような虞がある場合は点Cの電位上昇に制限を設けることが望ましい。図示した回路は点Cの電位がVDDの(1/2)を超えないように制限している。
【0062】
この実施例においては誤差電圧増幅器101、PWM最大変調設定部102、PWMコンパレータ103が駆動パルス作成部150を形成する。
【0063】
符合114は定電圧化電源部である。圧電振動子107を駆動するための駆動電圧Veは定電圧化電源部114にも供給され、ショットキーダイオードD103と容量112により整流され、さらツェナーダイオードD104により定電圧化される。この定電圧化電源部114の出力VDDは前記出力駆動部を除く、特に精密さが要求される回路部分に電源として供給される。またその出力VDDが抵抗R101と抵抗R102によって分圧され、これら2つの抵抗値が同一に設定してあるため、点Fには(1/2)*VDDの電圧が生成され、図1の実施形態では直列共振回路電流演算部109とPWM最大変調設定部102にバイアス電位として供給されている。
【0064】
この第1の実施の形態を用い、前記等価抵抗が大きい場合について回路シミュレーションした結果を図6に示す。同図中のアルファベット記号は、Ix、Iy、Izを除いて図1に示した対応する各点の電位を示す。ただしMは図3にしめす点Mの電位である。またIyは図3に示す圧電振動子の等価回路Sx’において、制動容量Coに流れる制動電流を、Ixは同図においてCx、Lx、Rxの直列回路を流れる直列共振回路電流を、Izは容量Ccを介して圧電振動子全体に流れる駆動電流を示している。
【0065】
図6(a)は本願発明の図1に示す実施形態において、本願発明の技術思想に基づいて、圧電振動子107の駆動電圧Ve(E)と、直列共振回路電流Ixの位相がほぼ0となるように、すなわち直列共振回路電流演算部109の出力信号の位相が駆動電圧Ve(E)に対してほぼ90度遅れるように移相回路部110の調整を行った場合の各波形を示している。
【0066】
なお、この実施形態では制動電流位相検出部105と駆動電流位相検出部106に容量Ca、Cb,Ccを用いたが、図7に示すように容量Cb、Ccに代えてそれぞれ(Ca/Co)=(Rc/Rb)となるような抵抗Rb、Rcを用いることもできるが、この場合は直列共振回路電流演算部109の出力信号の位相は基本的には直列共振回路電流Ixと同相であるので、移相回路部110の調整もこれに対応させる必要がある。さらに挿入する抵抗Rcを大きくすると直列共振回路電流Ixのピーク電流を制限することになるため、容量Ccを用いる構成とすることが望ましい。
【0067】
また出力駆動回路部104の形態としては本実施形態で示したもののほか、図8(a)、(b)に示すような形態が適用できる。図8(a)、(b)においては容量C801とインダクタL802の並列回路および容量C803とインダクタL804の直列回路の共振周波数がともに圧電振動子107の共振周波数fxとほぼ等しくなるように設定される。なお本実施形態および図8(a)、(b)に示す出力駆動回路部104の構成において、使用トランジスタはすべてMOSトランジスタとしたが、もちろんバイポーラトランジスタを用いても良い。すなわち、図8(a)、(b)においてトランジスタT202をバイポーラトランジスタとしても良いし、また図1においてT101、T102で構成されるMOSインバータは最終段をバイポーラトランジスタで構成する複合的な形態に変更することもできる。
【0068】
また本実施形態では駆動電圧が一定になるように駆動パルス幅を制御したが、図9に示すように、直列共振回路電流演算部109の出力振幅を、必要に応じて増幅し、整流する直列共振回路電流検出部901に供給すれば、直列共振回路電流Ixの大きさに比例した直流レベル信号が得られるから、この信号を駆動電圧検出部108の出力に代えて駆動パルス作成部150に供給すれば、直列共振回路電流Ixの大きさを常に一定に保つように制御することができる。
【0069】
この実施形態では移相回路部110を直列共振回路電流演算部109の直後に設けたが、最終的に直列共振回路電流Ixと駆動電圧の位相差が0にできるところであればどこに設けても良い。
【0070】
例えば駆動パルス作成部150と出力駆動部104の間に設けることもできる。また移相回路部110の構成は図4に示したものに限定するものではなく、例えば設置箇所によってはデジタル移相器を用いても良い。また発振回路部113は三角波ではなく鋸歯状波を生成するものであっても良い。
【0071】
なお、前記負荷変動が小さい場合は駆動電流Izと直列共振回路電流Ixの位相差Pxyの変動はかなり小さくなるので、直列共振回路電流演算部109を用いる事無く駆動電流Izのみを検出し、駆動電流Izと駆動電圧Veとの位相差を0ではなく、想定される前記Pxyだけずれた状態、すなわち駆動電流が最大値となる周波数より高い周波数で位相ロックがかかるように設定してもよい。この場合でも前記出力駆動部の構成や前記駆動パルス作成部150にかかる発明は有効である。
【0072】
(第2の実施形態)
図10は本発明の第2の実施形態を示す回路ブロック図である。この実施形態ではPLL回路部310を利用する。このPLL回路部310はVCO(電圧制御発振器)と位相比較器を内蔵し、2つの位相比較入力端IN−A、IN−Bを有する。このPLL回路部310の機能を用いるとIN−AとIN−Bに入力された2つの信号の位相差が0となるように前記VCOの発振周波数と発振位相を制御することができる。
【0073】
そこで圧電振動子107にかかる駆動電圧Veと、直列共振回路電流Ixの波形を前記2つの位相比較入力端に入力する事ができれば、PLLの働きにより直列共振回路電流Ixの位相と駆動電圧Veの位相が一致する事になる。そこで駆動電圧の波形を検出するために、本実施例では該駆動電圧を単純に容量分割する駆動電圧位相検出部300を設けている。また制動電流位相検出部を流用することもできる。
【0074】
また制動電流位相検出部105と駆動電流位相検出部106は図1の場合と同様の構成を用いている。この場合直列共振回路電流演算部109の出力は前述のように実際の直列共振回路電流Ixよりも90度遅れているから、移相回路部110を用いて直列共振回路電流演算部109の出力を90度進めて駆動電圧Veと位相比較する構成としている。このようにすれば、PLL回路部310は駆動電圧Veと共振回路電流Ixの位相が0となるようにVCOの周波数と発振位相を制御する。
【0075】
前記PLLの入力端に印加する信号はデジタル信号が要求されるため、移相回路部110の出力と駆動電圧位相検出部300からの信号はそれぞれ波形整形部330において整形される。
【0076】
この実施形態では第1の実施例で用いた発振回路部113が省略されているため、前記PWMコンパレータに印加する3角波電圧波形が得られない。従って発振回路113に変わるものとして本実施形態では前記PLL回路部のVCO出力に同期して三角波を出力するPWM用三角波作成部320を設けている。無論鋸歯状波を生成するものであっても良い。
【0077】
また、この実施形態でも移相回路部110を直列共振回路電流演算部109の直後に設け、移相回路部110の出力信号と前記駆動電圧位相検出部300の出力信号とをPLL回路部310によって位相比較したが、移相回路部110は最終的に直列共振回路電流Ixと駆動電圧の位相差が0にできるところであればどこに設けても良い。
【0078】
例えば直列共振回路電流演算部109の出力信号を遅らせるかわりに、駆動電圧位相検出部300の出力信号を進めてもよいし、あるいはまた駆動電圧位相検出部300の出力信号と直列共振回路電流演算部109の出力信号とをそれぞれ波形整形した上で直接PLL回路部310で位相比較しても良く、この場合はVCO出力の位相が前記第1の実施形態の場合に比べ、90度遅れた位相となるので、PLL回路部310の出力と前記出力駆動部104の入力端の間のいずれかの信号経路に移相回路部110を挿入し信号位相を90度進めればよい。
【0079】
この実施形態では制動電流位相検出部105と駆動電流位相検出部106を図1の場合と同様の構成としたが、前記図7に示した構成とすることも出来る。この場合は前記直列共振回路電流演算部109の出力信号の位相は前記直列共振回路電流Ixと同相になるため、基本的には移相回路部110は不要であるが、前述のように挿入する抵抗Rcは直列共振回路電流Ixのピーク電流を制限することになるため、容量Ccを用いる構成とすることが望ましい。
【0080】
またこの実施形態では前述の直列共振回路電流Ixを一定にする例を示している。直列共振回路電流演算部109の出力は直列共振回路電流検出部340において整流されて直流のレベル信号に変換される。該レベル信号は誤差電圧増幅器101を介して前記PWMコンパレータ103に送られる。この構成により直列共振回路電流Ixが一定に保たれる。この場合、必要があれば直列共振回路電流演算部109の出力を増幅してから整流しても良い。もちろん前記第1の実施形態と同様に駆動電圧Veが一定になるような制御方法を採用することも出来る。
【0081】
さらにこの実施形態においては制動電流位相検出部105の出力は駆動電圧Veと同相であるから、駆動電圧位相検出部300を削除し、代わりに制動電流位相検出部105の出力を用いても良い。

【符号の説明】
【0082】
101 誤差電圧増幅器
102 PWM最大変調設定部
103 PWMコンパレータ
104 出力駆動部
105 制動電流位相検出部
106 駆動電流位相検出部
107 圧電振動子
108 駆動電圧検出部
109 直列共振回路電流演算部
110 移相回路部
112 微分回路部(同期手段)
113 発振回路部
114 定電圧化電源部
310 PLL回路部
320 PWM用三角波作成部
901 直列共振回路電流検出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子を駆動するための圧電振動子駆動回路であって、発振周波数可変な自励発振型の発振回路部と、該発振回路部の発振に同期して駆動パルスを作成する駆動パルス作成部と、該駆動パルスに基づいて前記圧電振動子を駆動する出力駆動部と、該圧電振動子全体に流れる電流を検出する駆動電流位相検出部と、前記圧電振動子の等価回路における制動容量Coに流れる電流を検出するための制動電流位相検出部と、前記駆動電流位相検出部の出力から前記制動電流位相検出部の出力を減算して、前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流波形を出力する直列共振回路電流演算部と、前記発振回路部の周波数を該直列共振回路電流演算部の出力周波数に同期させる同期手段と、前記駆動電流位相検出部または前記制動電流位相検出部の出力端から前記出力駆動部の入力端にいたる信号経路のいずれかの部分に挿入された移相回路部を有し、該移相回路部は、前記発振回路部が前記直列共振回路電流演算部の出力周波数に同期して発振している状態に於いて、前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流と前記出力駆動部から前記圧電振動子に印加される駆動電圧の位相差がほぼ0となるように位相調整することを特徴とする圧電振動子駆動回路。
【請求項2】
圧電振動子を駆動するための圧電振動子駆動回路であって、位相比較器およびVCOを有するPLL回路部と、該PLLの出力に基づいて駆動パルスを作成する駆動パルス作成部と、該駆動パルスに基づいて前記圧電振動子を駆動する出力駆動部と、該圧電振動子全体に流れる電流を検出する駆動電流位相検出部と、前記圧電振動子の等価回路における制動容量Coに流れる電流を検出するための制動電流位相検出部と、前記駆動電流位相検出部の出力から前記制動電流位相検出部の出力を減算して、前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流波形を出力する直列共振回路電流演算部と、前記圧電振動子に印加される駆動電圧を検出する駆動電圧位相検出部を有し、前記PLL回路部の前記位相比較器の一方の入力を前記直列共振回路電流演算部の出力に基づく信号とし、他方の入力を前記駆動電圧位相検出部の出力に基づく信号とし、前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流と前記出力駆動部から前記圧電振動子に印加される駆動電圧の位相差がほぼ0となるようにすることを特徴とする圧電振動子駆動回路。
【請求項3】
圧電振動子を駆動するための圧電振動子駆動回路であって、発振周波数可変な自励発振型の発振回路部と、該発振回路部の発振に同期して駆動パルスを作成する駆動パルス作成部と、該駆動パルスに基づいて前記圧電振動子を駆動する出力駆動部と、該圧電振動子全体に流れる電流を検出する駆動電流位相検出部と、前記圧電振動子の等価回路における制動容量Coに流れる電流を検出するための制動電流位相検出部と、前記駆動電流位相検出部の出力から前記制動電流位相検出部の出力を減算して、前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流波形を出力する直列共振回路電流演算部を有し、前記駆動電流位相検出部または前記直列共振回路電流演算部の出力信号を前記発振回路部に帰還することにより、前記圧電振動子全体に流れる電流または前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流と、前記圧電振動子に印加される駆動電圧の位相差がほぼ0となるように制御するとともに、前記直列共振回路電流演算部の出力振幅を検出する直列共振回路電流検出部を設け、該直列共振回路電流検出部の出力が一定になるように前記駆動パルス幅を制御することを特徴とする圧電振動子駆動回路。
【請求項4】
圧電振動子を駆動するための圧電振動子駆動回路であって、発振周波数可変な自励発振型の発振回路部と、該発振回路部の発振に同期して駆動パルスを作成する駆動パルス作成部と、該駆動パルスに基づいて前記圧電振動子を駆動する出力駆動部と、該圧電振動子全体に流れる電流を検出する駆動電流位相検出部を有し、該駆動電流位相検出部の出力信号を前記発振回路部に帰還する事により該発振回路部の発振周波数を前記圧電振動子の振動周波数に同期させる圧電振動子駆動回路(この箇所の修正は誤り(不要)です。)において、前記駆動電流位相検出部の出力端から前記出力駆動部の入力端に至る信号経路のいずれかの部分に移相回路部を設け、前記圧電振動子全体に流れる電流または前記圧電振動子の等価回路におけるLC直列共振回路に流れる電流と、前記圧電振動子に印加される駆動電圧の位相差がほぼ0となるように位相調整したことを特徴とする圧電振動子駆動回路。
【請求項5】
前記発振回路部は一部に三角波または鋸歯状波を発生するように構成され、また前記駆動パルス作成部は2つの比較入力端に印加された信号の大小関係に応じて出力パルス幅を制御するPWMコンパレータを有し、該PWMコンパレータの少なくとも一方の比較入力端には前記発振回路部に発生する三角波または鋸歯状波が印加され、他方の比較入力端には前記圧電振動子の振動に係る一定に維持すべきレベル信号に基づく信号が印加されている事を特徴とする請求項1、請求項3または請求項4に記載の圧電振動子駆動回路。
【請求項6】
前記PWMコンパレータの前記他方の入力端には誤差電圧増幅器を介して前記圧電振動子の振動に係る一定に維持すべきレベル信号が印加されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動子駆動回路。
【請求項7】
前記駆動電流位相検出部は前記圧電振動子に直列に接続された容量Ccであり、前記制動電流位相検出部は、一端が前記圧電振動子に接続された容量Caと一端が容量Ccに接続された容量Cbの直列回路であり、容量Caと制動容量Coとの容量比Ca/Coが容量Cbと容量Ccとの容量比Cb/Ccとほぼ等しいことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項5または請求項6に記載の圧電振動子駆動回路。
【請求項8】
前記駆動電流位相検出部は前記圧電振動子に直列に接続された抵抗Rcであり、前記制動電流位相検出部は、一端が前記圧電振動子に接続された容量Caと一端が抵抗Rcに接続された抵抗Rbの直列回路であり、容量Caと制動容量Coとの容量比Ca/Coが抵抗Rcと抵抗Rbの抵抗比Rc/Rbとほぼ等しいことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項5または請求項6に記載の圧電振動子駆動回路。
【請求項9】
前記出力駆動部は相補型トランジスタで構成されたインバータと、一方の端子が該インバータの出力端に接続されたインダクタと一方の端子が電源に接続された容量との直列回路で構成され、該インダクタと該容量の直列回路の共振周波数は、圧電振動子の共振周波数fxとほぼ等しくなるように設定され、該インダクタと該容量の接続点を出力端とすることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の圧電振動子駆動回路。
【請求項10】
前記出力駆動部は、一方の端子が電源に接続され、他方の端子がMOSトランジスタのドレイン又はバイポーラトランジスタのコレクタに接続された第1のインダクタと第1の容量の並列回路と、一方の端子が該ドレイン又は該コレクタに接続され、他方の端子が前記MOSトランジスタのソース又はバイポーラトランジスタのエミッタとともに接地された第2のインダクタと第2の容量の直列回路から構成され、前記第1のインダクタと前記第1の容量の並列回路および前記第2のインダクタと前記第2の容量の直列回路の共振周波数がともに圧電振動子の共振周波数fxとほぼ等しくなるように設定され、該第2のインダクタと第2の容量との接続点を出力端としたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の圧電振動子駆動回路。
【請求項11】
圧電振動子を備えたことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の圧電振動子駆動回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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