圧電振動板
【課題】
発音体用の圧電振動板を薄型化するとともに、電極の引き出しの信頼性向上,製造工程の簡略化,材料の削減を図る。
【解決手段】
圧電素子16は、圧電層18Aの両主面に電極層20A,20B,24A,24Bが形成された構造となっている。前記圧電層18Aの同一面上の一対の電極層同士は、互いに点対称となっており、厚み方向に隣接する電極層同士は、印加される電圧の極性が逆になるように配置される。同一極性の電圧が印加される電極層同士は、スルーホール22A,26Aにより厚み方向に接続される。圧電素子28についても基本的に同様の構成となっている。従って、電極層20A〜20Dは、同電位となり、振動板12Aから引き出され、電極層24A〜24Dも同電位となり振動板12Bから引き出しが可能となる。振動板12A,12Bから電極を引き出すことにより、全体の薄型化が実現できる。
発音体用の圧電振動板を薄型化するとともに、電極の引き出しの信頼性向上,製造工程の簡略化,材料の削減を図る。
【解決手段】
圧電素子16は、圧電層18Aの両主面に電極層20A,20B,24A,24Bが形成された構造となっている。前記圧電層18Aの同一面上の一対の電極層同士は、互いに点対称となっており、厚み方向に隣接する電極層同士は、印加される電圧の極性が逆になるように配置される。同一極性の電圧が印加される電極層同士は、スルーホール22A,26Aにより厚み方向に接続される。圧電素子28についても基本的に同様の構成となっている。従って、電極層20A〜20Dは、同電位となり、振動板12Aから引き出され、電極層24A〜24Dも同電位となり振動板12Bから引き出しが可能となる。振動板12A,12Bから電極を引き出すことにより、全体の薄型化が実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発音体用の圧電振動板及びそれを利用した電子機器に関し、更に具体的には、圧電振動板及び電子機器の薄型化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電発音体(圧電振動板)は、簡易な電気音響変換手段として広く利用されており、特に近年は、携帯電話や携帯情報端末などの分野でスピーカ等として多用されている。圧電発音体は、図14に一例を示すように、圧電素子304,310を、振動板302の表裏両面に貼り合わせた構成となっている。圧電素子304は、圧電体306の表裏両面に、電極層308A及び308Bを形成した構造となっており、金属などによって構成された振動板302の表面に、導電性接着剤等で接着される。他方の圧電素子310についても同様であり、圧電体306の表裏両面に、電極層308C及び308Dを形成した構造となっている。
【0003】
前記電極層308A及び308Dは、それぞれリード線312A及び312Bなどの導電手段を介して外部に引き出され、他の電極層308B及び308Cは振動板302と同電位となっており、前記振動板302からリード線312Cを介して外部に引き出される。このような電極引き出し構造と類似の構造が、例えば、以下の特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−47092公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のような背景技術では、電極を外部に引き出すために、リード線312A〜312C及び半田314A〜314Cが必要になる。このうち、リード線312Aと312Bの半田接続部は、圧電素子304,310の表面の電極層308A,308D上に設けられるため、圧電発音体300自体の厚みを増大させる要因となる。例えば、振動板302の厚みを30μm,圧電素子304及び310の厚みをそれぞれ60μm,リード線312A及び312Bの接続部の半田314A及び314Bの高さをそれぞれ160μmとすると、圧電発音体300全体の厚みが470μmになる。このうち、電極の引き出しに要するリード線312A,312Bの半田接続部の厚みの合計は、320μmとなり、圧電発音体300全体の厚みの70%近くを占めることになってしまう。また、前記背景技術では、上下面からのリード線312A及び312Bによる引き出しは、リード線312A及び312Bが振動板302に密着していないため、長時間の激しい圧電駆動に対して、信頼性が十分ではない可能性がある。従って、電極引き出し構造を改良することにより、不要な厚みを省くことができれば、圧電発音体やそれを利用する電子機器の薄型化をより促進するために好都合である。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、電極構造の改良により発音体用の圧電振動板を薄型化し、電子機器に対する実装の自由度の向上及び電子機器自体の薄型化を図ることである。他の目的は、電極の引き出しの信頼性を向上させることである。他の目的は、引き出し構造の改良により、製造工程を簡略化するとともに、材料の削減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、圧電層と、該圧電層を挟むようにその両主面に設けられた電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせた発音体用の圧電振動板であって、前記圧電素子は、同一主面上の電極層が、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、互いに離間して配置されるとともに、前記同一主面上で隣接する電極層同士、及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を、前記圧電層の厚み方向に接続する複数の接続導体,を備えたことを特徴とする。
【0007】
他の発明は、圧電層と、該圧電層の主面に設けられる電極層とを交互に複数積層した圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせた発音体用の圧電振動板であって、前記圧電素子は、同一主面上の電極層が、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、互いに離間して配置されるとともに、前記同一面上で隣接する電極層同士、及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を前記圧電層の厚み方向に接続する複数の接続導体,を備えたことを特徴とする。
【0008】
主要な形態の一つは、前記圧電素子の同一主面上の電極層同士が、前記圧電層の略中央部を中心として点対称であるとともに、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する一対の電極層同士が左右反転の形状であること,あるいは、前記圧電素子の同一主面上の電極層同士が、前記圧電層の略中央部を中心として同心円状に配置されるとともに、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する一対の電極層同士が点対称の形状であることを特徴とする。
【0009】
他の形態は、前記振動板の引き出し電極が、前記圧電素子の同一主面上の電極層の分割位置とほぼ同位置で分割されており、分割されたそれぞれの部分に、前記圧電素子の分割配置された電極層のそれぞれが導電接続されることを特徴とする。より好ましくは、前記振動板の引き出し電極の分割された各部分の間に、空気または樹脂を設けたことを特徴とする。
【0010】
更に他の形態は、前記圧電素子の圧電層の主面上に分割形成された複数の電極層のそれぞれに導電接続する複数の導体薄膜層を、前記振動板の主面上に設けたことを特徴とする。より好ましくは、前記振動板の主面上の導体薄膜層の電極引き出し部を、幅広に形成したことを特徴とする。
【0011】
本発明の電子機器は、請求項1〜8のいずれかに記載の発音体用の圧電振動板を利用したことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、少なくとも一層以上の圧電層と、該圧電層の両主面に設けられる電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせ、前記圧電素子の同一主面上の電極層を、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に互いに離間して配置するとともに、前記同一面上で隣接する電極層同士,及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を、複数の接続導体で、それぞれ厚み方向に接続することとした。このため、電極層の引き出しを、全て前記振動板から行うことができ、全体の薄型化を図るとともに、信頼性を向上させることができる。また、引き出し構造の簡略化により、製造工程の簡略化や材料の削減効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
最初に、図1〜図3を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の分解斜視図である。図2(A)は、本実施例の全体を示す外観斜視図であり、図2(B)は、前記(A)を圧電素子16の上方から見た平面図である。図3(A)は、前記図2(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,図3(B)は、前記図2(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。これらの図に示すように、圧電振動板10は、42Niアロイやりん青銅等の導電性を有する可撓性薄板からなる振動板12A,12Bの表裏に、圧電素子16,28をそれぞれ貼り合わせたバイモルフ構造であって、全体が略長方形状に形成されている。前記振動板12A,12Bは、所定の間隔で離間しており、隙間の空気によって絶縁されて、それぞれ第1及び第2の引き出し電極を構成している。あるいは、一枚の振動板12の中央部分を分割し、分割部分にゴムや絶縁性樹脂などのシール部材14を設け(図2(B)参照)、振動板12A及び12Bの電気的接触を防止するようにしてもよい。
【0015】
圧電素子16は、PZTなどの圧電セラミックスによって形成された圧電層18Aの両主面に、電極層20A,20B,24A,24Bをそれぞれ設け、前記圧電層18Aを挟んで、電極層20Aと電極層24Bとが対向するとともに、電極層24Aと電極層20Bとが対向した構造となっている。電極層20A,20B,24A,24Bとしては、例えば、AgやAg/Pd合金を含む焼付け型の電極層などが利用される。まず、略長方形の圧電層18Aの一方の主面には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20A及び24Aが、主面を直線により2つに分割した各々の領域に、互いに離間するように形成されている。これら電極層20A及び24Aは、前記圧電層18Aの略中央を中心として点対称の関係となっている。前記圧電層18Aの他方の主面には、同様に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20Bと24Bが形成されている。これら電極層20B,24Bは、点対称の関係にある。また、電極層20B及び24Bは、前記圧電層18Aの一方の主面の電極層20A及び24Aと左右反転の関係にある。すなわち、電極層20Aと20Bに印加される信号電圧の極性が同じになり、電極層24Aと24Bに印加される信号電圧の極性が同じになるように配置されている。
【0016】
前記電極層20A及び20Bは、スルーホール22Aによって圧電素子16の厚み方向にほぼ直線的に接続され、電極層24A及び24Bは、スルーホール26Aによって厚み方向にほぼ直線的に接続される。そして、前記電極層20Bが一方の振動板12Bの表面に接続するように、また電極層24Bが他方の振動板12Aの表面に接続するように、図示しない導電性接着剤などにより貼り合わせられる。
【0017】
他方の圧電素子28についても基本的には同様の構成となっており、圧電層18Eの一方の主面には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20E及び24Eが形成される。電極層20E及び24E同士は点対照である。圧電層18Eの他方の主面にも、上述した圧電素子16と同様に、それぞれ一対の電極層20F及び24Fが形成され、前記圧電層18Eを挟んで、電極層20Eと電極層24Fが対向するとともに、電極層24Eと電極層20Fとが対向した構造となっている。そして、前記電極層20E及び20Fが、スルーホール22Bで厚み方向に接続され、電極層24E及び24Fが、スルーホール26Bにより接続される。
【0018】
以上のような構造の圧電振動板10では、電極層20A,20B,20E,20Fは、スルーホール22A,22B及び振動板12Bを介して電気的に接続されており、全て共通電位となっている。また、電極層24A,24B,24E,24Fは、スルーホール26A,26B及び振動板12Aを介して電気的に接続されており、全て共通電位となっている。このような圧電振動板10では、図2に示すように、振動板12Aと12Bから、リード線32A及び32Bを介して電極が引き出され、電源30に接続される。そして、例えば、一方の振動板12Aはプラス,他方の振動板12Bはマイナスという具合に信号電圧を印加する。すなわち、圧電素子16及び28の表面から電極を引き出すのではなく、これらの間に挟まれた振動板12A及び12Bから電極を引き出すことが可能になる。このため、上述した背景技術と比較して、リード線32A,32Bの接続部位の半田34A,34Bの厚みが全体の厚みに影響を与えることがなく、圧電振動板10自体を大幅に薄型化することができる。なお、このとき、振動板12A及び12Bからの引出部を幅広として面接着することにより、電極引き出しの信頼性を向上させるようにしてもよい。
【0019】
このように、実施例1によれば、圧電層の主面を複数に分割した各々の領域に互いに離間して配置される一対の電極層を、前記圧電層の両主面に備えた圧電素子16及び28を、振動板12A及び12Bの両面に貼り合わせ、前記圧電層の同一面上の電極層同士,及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように前記電極層を配置する。そして、設けられた電極層のうち、同一極性の信号電圧が印加される電極層20A,20Bをスルーホール22Aで厚み方向に接続し、電極層20E及び20Fをスルーホール22Bで厚み方向に接続する。また、他の電極層24A及び24Bをスルーホール26Aで厚み方向に接続し、電極層24E及び24Fをスルーホール26Bで厚み方向に接続することとしたので、電極層の引き出しを、全て振動板12A及び12Bから行うことができ、全体の薄型化を図ることができる。また、引き出し構造の簡略化により、製造工程の簡略化や材料の削減効果が得られる。更に、前記振動板12及び12Bに幅広の引出部を面接着することにより、引き出しの信頼性の向上も可能である。
【実施例2】
【0020】
次に、図4及び図5を参照しながら、本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には、同一の符号を用いることとする(以下の実施例についても同様)。図4は、本実施例の分解斜視図である。図5は、本実施例の全体を示す外観斜視図である。前記実施例1は、単層の圧電層を有する圧電素子を振動板の表裏両面に設けた例であったが、本実施例は、圧電素子を、複数の圧電層を有する積層構造とした例である。前記図4及び図5に示すように、圧電振動板40は、振動板12A,12Bの表裏に、圧電素子42,44をそれぞれ貼り合わせたバイモルフ構造であって、全体が略長方形状に形成されている。前記振動板12A,12Bは、前記実施例1と同様に、所定の間隔で離間しており、隙間の空気によって絶縁されて、それぞれ第1及び第2の引き出し電極を構成している。あるいは、一枚の振動板12の中央部分を分割し、分割部分にゴムや絶縁性樹脂などのシール部材14を設け(図5参照)、振動板12A及び12Bの電気的接触を防止するようにしてもよい。
【0021】
圧電素子42は、PZTなどによって形成された圧電層(圧電セラミック)18A〜18Cと、電極層20A〜20D及び24A〜24Dを交互に積層し、各圧電層を挟んで電極層が対向した構造となっている。電極層20A〜20D,24A〜24Dとしては、例えば、AgやAg/Pd合金などの焼付け型の導電層などが利用される。まず、略長方形の圧電層18Aの一方の主面(図4では上面)には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20A及び24Aが、圧電層18Aの主面を複数に分割した各々の領域に、互いに離間するように形成されている。これら電極層20A及び24Aは、前記圧電層18Aの略中央を中心として点対称の関係となっている。2層目の圧電層18Bの表面(図4では上面)には、同様に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20Bと24Bが形成されている。これら電極層20B,24Bは点対称の関係にある。また、電極層20B及び24Bは、前記圧電層18Aの表面の電極層20A及び24Aと左右反転の関係にある。すなわち、電極層20Aと20Bに印加される信号電圧の極性が同じになり、電極層20Bと24Bに印加される信号電圧の極性が同じになるように配置されている。
【0022】
3層目の圧電層18Cの表面についても同様に、一対の電極層20C及び24Cが形成される。さらに、該圧電層18Cの裏面には、同じく一対の電極層20D及び24Dが形成される。このように、同一の圧電層上に形成される電極層同士を点対称とし、厚み方向で隣接する一対の電極層同士が左右反転の形状になるように配置することにより、電極層は一層おき毎に、形状・位置が概略一致するようになる。例えば、電極層20A及び24Aと、電極層20C及び24Cがほぼ一致し、電極層20B及び24Bと、電極層20D及び24Dがほぼ一致するという具合である。
【0023】
以上のような電極層20A〜20Dは、スルーホール22Aによって圧電素子42の厚み方向にほぼ直線的に接続され、電極層24A〜24Dは、スルーホール26Aによって厚み方向にほぼ直線的に接続される。そして、前記電極層20Dが一方の振動板12B表面に接触し、電極層24Dが他方の振動板12Aの表面に接触するように貼り合わせられる。
【0024】
他方の圧電素子44についても基本的には同様の構成となっており、一層目の圧電層18Eの表面には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20E及び24Eが形成される。電極層20E及び24E同士は点対称である。以下、2層目の圧電層18Fの表面と、3層目の圧電層18Gの表面及び裏面にも、上述した圧電素子16と同様に、それぞれ一対の電極層20F及び24F,20G及び24G,20H及び24Hが形成され、前記圧電層を挟んでそれぞれ、電極層が対向する構造となっている。そして、前記電極層20E〜20Hが、スルーホール22Bで厚み方向に接続され、電極層24E〜24Hが、スルーホール26Bにより接続される。
【0025】
以上のような構造の圧電振動板40では、電極層20A〜20Hは、スルーホール22A,22B及び振動板12Bを介して電気的に接続されており、全て共通電位となっている。また、電極層24A〜24Hは、スルーホール26A,26B及び振動板12Aを介して電気的に接続されており、全て共通電位となっている。このような圧電振動板40では、上述した実施例1と同様に、第1及び第2の引き出し電極となる振動板12Aと12Bから電極が引き出され、電源30に接続される(図2参照)。そして、例えば、一方の振動板12Aはプラス,他方の振動板12Bはマイナスという具合に信号電圧を印加する。すなわち、圧電素子42及び44の表面から電極を引き出すのではなく、これらの間に挟まれた振動板12A及び12Bから電極を引き出すことが可能になるため、本実施例においても、上述した背景技術と比較して、圧電振動板40自体を大幅に薄型化することができる。なお、このとき、振動板12A及び12Bからの引出部を幅広として面接着することにより、電極引き出しの信頼性を向上させるようにしてもよい。
【0026】
このように、実施例2によれば、圧電層と、該圧電層の同一面上に離間して配置される一対の電極層とを交互に積層した圧電素子42及び44を、振動板12A及び12Bの両面に貼り合わせ、前記圧電層の同一面上の電極層同士,及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように前記電極層を配置する。そして、積層された電極層のうち、同一極性の信号電圧が印加される電極層20A〜20D,20E〜20Hを、スルーホール22A及び22Bで厚み方向に接続し、他の電極層24A〜24D,24E〜24Hを、スルーホール26A及び26Bで厚み方向に接続することとしたので、電極層の引き出しを、全て振動板12A及び12Bから行うことができ、全体の薄型化を図ることができる。また、引き出し構造の簡略化により、製造工程の簡略化や材料の削減効果が得られる。更に、前記振動板12A及び12Bに幅広の引出部を面接着することにより、引き出しの信頼性の向上も可能である。
【実施例3】
【0027】
次に、図6及び図7を参照しながら、本発明の実施例3を説明する。図6は、本実施例の構成を示す分解斜視図,図7は、本実施例の全体を示す外観斜視図である。これらの図に示すように、圧電振動板50は、略円形の振動板52の表裏両面に、略円形の圧電素子60,72をそれぞれ貼り合わせたバイモルフ構造であって、前記振動板52の外周の一部には、外周側へ突出した突出部52Aが設けられている。前記圧電素子60,72は、上述した実施例1と同様にそれぞれ単層の圧電層を用いた構成となっている。すなわち、圧電素子60を例に挙げると、圧電層62Aの一方の主面に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層64A及び66Aが、主面を2分割した各々の領域に互いに離間するように形成され、他方の主面にも同様に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層64Bと66Bが形成されている。これら電極層64A,64B,66A,66Bの同一主面上での位置関係や、圧電層62Aを挟んだ位置関係は、基本的には上述した実施例1と同様であり、電極層64Aと64Bはスルーホール68Aを介して接続され、電極層66Aと66Bは、スルーホール70Aを介して接続される。他方の圧電素子72についても基本的に同様の構成となっており、圧電層68Bの表裏両面には、それぞれ一対の電極層64C及び66Cと、電極層64D及び66Dが形成され、スルーホール68B及び70Bにより接続されている。なお、圧電素子60及び72を構成する材料としては、上述した実施例1と同様のものが適用可能である。なお、本実施例では、単層の圧電層からなる圧電素子を利用することとしたが、前記実施例2と同様に、複数の圧電層を有する積層構造の圧電素子を用いるようにしてもよい。
【0028】
本実施例3では、上述した実施例1と比較して、振動板の構成が大きく異なる。本実施例の振動板52は、絶縁性であって屈曲に優れた材料、例えばPET(PolyEthylene Terephtalate)などの絶縁フィルムからなる絶縁板54の表裏面に、例えば、導電性Agペーストを用いて、それぞれ一対のプリント導体パターン56及び57と、58及び59を設けた構成となっている。なお、前記導電性Agペーストは一例であり、スパッタリング法などにより薄膜導電体層を設けるようにしてもよい。前記絶縁板54には、前記一対のプリント導体パターン(例えば56及び57)の間隙を通る直線の延長方向に、外周側に突出する突出部52Aが設けられている。また、前記プリント導体パターン56〜59は、前記突出部52Aの表面上に形成された引き出し部56A〜59Aとそれぞれ接続されている。前記プリント導体パターン56〜59と、前記圧電素子60及び72の電極層64B,66B,64C,66Cとは、図示しない導電性接着剤により接着されており、前記引き出し部56A〜59Aを介して信号電圧を印加することにより、圧電振動板50を駆動することができる。本実施例では、上述した実施例1及び2と異なり、振動板自体は分割形成されず、替わりに引き出し電極(プリント導体パターン)が分割形成されている。
【0029】
このように、本実施例によれば、圧電層62A及び62Bの主面をほぼ2分割する領域に設けられた電極層64B,66B,64C,66Cを、これらの電極層にほぼ等しい面積で振動板52のプリント導体パターン56〜59に接着することにより、導電接続の機能と、圧電素子60及び72の駆動による変位伝達の機能を兼ねることが可能となる。これにより、上述した実施例1及び2に示す薄型化の効果に加え、圧電駆動時の導電接続の信頼性を高めるとともに、駆動電極が振動板52に直に接着されることにより、大きな変位を得ることができる。なお、図示は省略したが、振動板52の一対のプリント導体パターン(56及び57,あるいは、58及び59)の間隙部分に、予めレジスト層を印刷することにより、間隙部分への導電性接着剤の流れ込みによる電極層間の短絡発生を防止するようにしてもよい。また、前記間隙部分の絶縁性接着剤を塗布することにより、振動板52の間隙部分と圧電素子60及び72との変位伝達をより確実にするとともに、非接着部分同士の衝突による不要な音の発生を防止するようにしてもよい。
【実施例4】
【0030】
次に、図8〜図10を参照しながら、本発明の実施例4を説明する。図8は、本実施例の上面側の構造を示す分解斜視図である。図9(A)は、本実施例の全体を示す外観斜視図であり、図9(B)は、前記(A)を上方から見た平面図である。図10は、本実施例の主要断面図であり、図10(A)は、前記図9(A)を#C−#C線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,図10(B)は、前記図9(A)を#D−#D線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。これらの図に示すように、本実施例の圧電振動板80は、振動板82の表面に複数の圧電素子90を、振動板82の裏面に複数の圧電素子91をそれぞれ配置したものである。圧電素子90の構造は、基本的には、上述した実施例1と同様であり、圧電素子90の表裏両面には、それぞれ一対の電極層94A及び96Aと、電極層94B及び96Bが形成されている。同様に、圧電素子91の表裏両面には、それぞれ一対の電極層94C及び96Cと、電極層94D及び96Dが形成されている。
【0031】
一方、前記振動板82の表裏両面には、前記圧電素子90,91の配列方向に伸びた一対のプリント導体パターン84及び86がそれぞれ形成されている。これらプリント導体パターン84,86は、突出した引き出し部84A及び86Bを備えている。そして、振動板82の表裏両面にそれぞれ設けられたプリント導体パターン84同士,及び、プリント導体パターン86同士は、前記引き出し部84A及び86Aにおいて、スルーホール84B及び86Bを介して表裏で接続されている。前記圧電素子90及び91は、それぞれ、前記一対のプリント導体パターン84及び86上に跨るように配置されている。図10(A)に示すように、圧電素子90の電極層94Aと94Bは、スルーホール98Aにより厚み方向に接続され、振動板82の表面側の一方のプリント導体パターン86に接続される。圧電素子91の電極層94Cと94Dは、スルーホール98Bにより厚み方向に接続され、振動板82の裏面側のプリント導体パターン86に接続される。同様に、図10(B)に示すように、圧電素子90の他の電極層96Aと96Bは、スルーホール100Aにより厚み方向に接続され、振動板82の表面側の他方のプリント導体パターン84に接続される。圧電素子91の他の電極層96Cと96Dは、スルーホール100Bにより厚み方向に接続され、振動板82の裏面側の他方のプリント導体パターン84に接続される。他の複数の圧電素子90及び91についても同様である。そして、振動板82の表裏両面で接続されたプリント導体パターン84及び86の引き出し部84A,86Bに、例えば、リード線102及び104を、半田106及び108で接続することにより、圧電振動板80に対する信号電圧の印加が可能となる。
【0032】
本実施例4は、上述した実施例3と同様に、主面上にプリント導体パターン84及び86が形成された振動板82を利用して、その表裏面にそれぞれ複数の圧電素子90及び91を貼り合わせたものである。このように、振動板82の表面の帯状のプリント導体パターン84及び86に沿って複数の圧電素子90及び91を、図示しない導電性接着剤で貼り合わせることで、複数の圧電素子間の導電接続,各圧電素子90及び91とプリント導体パターン84及び86との接続,更に、各圧電素子90及び91の変位を振動板82に伝達する機能を兼ね、上述した実施例3と同様の効果を得ることができる。また、上述した実施例3の効果に加え、振動板82上に複数の圧電素子を設けても、配線の引き回しが不要になるという効果が得られる。更に、複数種類の圧電素子の組み合わせが自由に行えるため、各種電子機器への応用が可能である。なお、圧電素子90及び91は、それぞれ前記実施例1及び3と同様に、単層の圧電層を用いたものであるが、前記実施例2と同様に、電極層と圧電層とが交互に複数層積層した構造のものを用いるようにしても同様の効果が得られる。また、図示は省略したが、プリント導体パターン84及び86を、圧電素子90及び91の駆動電極(電極層)の形状に対応して、部分的に幅広に形成してもよいし、また、圧電素子間を結ぶ配線部分のプリント導体パターンの表面を、絶縁層で被覆するようにしてもよい。
【実施例5】
【0033】
次に、図11〜図13を参照して、本発明の実施例5を説明する。図11は、本実施例の分解斜視図である。図12は、本実施例の全体を示す外観斜視図であり、図13は、本実施例に用いる振動板の外観斜視図である。これらの図に示すように、圧電振動板200は、略円形の振動板202の表裏両面に、略円形の圧電素子218,230をそれぞれ貼り合わせたバイモルフ構造であって、前記実施例3と同様に、前記振動板202の外周の一部には、外周側へ突出した突出部202Aが設けられている。前記圧電素子218,230は、上述した実施例1と同様にそれぞれ単層の圧電層を用いた構成となっているが、もちろん、前記実施例2と同様に、電極層と圧電層とが交互に複数積層した構造のものを用いるようにしてもよい。本実施例5では、圧電素子218,230の電極層の分割形成のしかたが、上述した実施例1〜4と異なっている。すなわち、前記実施例1〜4では、圧電層の主面を直線で複数に分割した各々の領域に、電極層を互いに離間して配置することとしたが、本実施例5では、圧電層の主面を略同心円状に複数に分割(図示の例では2分割)した各々の領域に、電極層を互いに離間して配置する構成となっている。
【0034】
まず、振動板202について説明すると、上述した実施例3と同様に、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂フィルムからなる絶縁板204の表裏面に、例えば、導電性Agペーストを用いて、それぞれ一対のプリント導体パターン206及び208と、210及び212を設けた構成となっている。なお、前記導電性Agペーストは一例であり、スパッタリング法などにより薄膜導電体層を設けてもよい点は、前記実施例3と同様である。また、前記絶縁板204の縁の一部には、該絶縁板204の中心を通る直線の延長方向に、外周側に突出する突出部202Aが設けられている。前記プリント導体パターン206,208,210,212は、前記突出部202Aの表面上に設けられた引き出し部206A〜212Aにそれぞれ接続されている。
【0035】
一方の主面のプリント導体パターン206と208について詳述すると、これらプリント導体パターン206及び208は、絶縁板204の主面を、径方向に内周側と外周側とに2分割する円を境にして、それぞれの領域に互いに離間するように配置されている。内周側のプリント導体パターン208は、外周側のプリント導体パターン206の周方向の一部に設けられたスリット部207を介して、前記突出部202A上の引き出し部208Aに接続されている。前記引き出し部208Aには、前記圧電素子218の外周側の電極層224Bと対向する部分に、電極間の短絡発生を防止するための絶縁層214が設けられている。また、前記対向部分に、接着剤を塗布することにより、絶縁板204と圧電素子318との変位伝達をより確実にするとともに、非接着部分同士の衝突による不要な音の発生を防止するようにしてもよい。絶縁板204の他方の主面に設けられた一対のプリント導体パターン210及び212についても同様の構成となっており、内周側のプリント導体パターン212は、外周側のプリント導体パターン210の周方向の一部に設けられたスリット部209を介して、前記突出部202A上の引き出し部212Aに接続されている。前記引き出し部212Aには、前記圧電素子230の外周側の電極層224Cと対向する部分に、電極間の短絡発生を防止するための絶縁層216が設けられる。
【0036】
次に、圧電素子218は、PZTなどの圧電セラミックによって形成された圧電層220Aの両主面に、電極層222A,224A,222B,224Bをそれぞれ設けた構造となっている。電極層222A,224A,222B,224Bとしては、上述した実施例と同様に、例えば、AgやAg/Pd合金を含む焼付け型の電極層などが利用される。略円形の圧電層220Aの一方の主面(図示の例では上面側)には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層222A及び224Aが、主面を同心円状に二つに分割した各々の領域に、互いに離間するように形成されている。これら電極層222A及び224Aは、前記圧電層220Aを径方向で二つに分割する円を境にして、内周側と外周側に配置されている。圧電層220Aの他方の主面(図示の例では下面側)には、同様に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層222Bと224Bが形成されている。これら電極層222Bと224Bは、略同心円の関係にある。また、電極層222B及び224Bは、上面側の電極層222A及び224Aと内外反転の関係にある。すなわち、電極層222Aと222Bに印加される信号電圧の極性が同じになり、電極層224Aと224Bに印加される信号電圧の極性が同じになるというように配置されている。
【0037】
前記電極層222A及び222Bは、スルーホール226Aによって、圧電素子218の厚み方向にほぼ直線的に接続され、電極層224A及び224Bは、スルーホール228Aによって厚み方向にほぼ直線的に接続される。そして、前記電極層222Bが、振動板202の表面の内周側のプリント導体パターン208に接続し、電極層224Bが、外周側のプリント導体パターン206に接続するように、図示しない導電性接着剤等により貼り合わせられる。
【0038】
他方の圧電素子230についても基本的には同様の構成となっており、圧電層220Bの一方の主面には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層222Cと224Cが形成される。電極層222Cと224Cは、同心円の関係にある。圧電層220Bの他方の主面にも、同様にそれぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層222Dと224Dが形成される。そして、前記電極層222C及び222Dが、スルーホール226Bにより厚み方向に接続され、電極層224C及び224Dが、スルーホール228Bにより厚み方向に接続される。前記電極層222Cが、振動板202の裏面の内周側のプリント導体パターン212に接続し、電極層224Cが、外周側のプリント導体パターン210に接続するように、図示しない導電性接着剤等により貼り合わせられる。このような構成の圧電振動板200は、前記引き出し部206A〜212Aを介して信号電圧を印加することにより駆動される。
【0039】
このように、実施例5によれば、圧電層の主面を径方向で二つに分割する円を境界にして、内周側と外周側に互いに離間して配置される一対の電極層を、前記圧電層の両主面に設けた圧電素子218,230を、振動板202の両面に貼り合わせ、前記圧電層218,230の同一面上の電極層同士,及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように前記電極層を配置する。そして、設けられた電極層のうち、同一極性の信号電圧が印加される電極層222Aと22Bをスルーホール226Aで、また、電極層222Cと222Dをスルーホール226Bで厚み方向に接続する。一方、他の電極層224A、224Bをスルーホール228Aで、また、電極層224Cと224Dを、スルーホール228Bで厚み方向に接続することとしたので、電極層の引き出しを、全て振動板202の表面に設けたプリント導体パターン206〜212から行うことができ、全体の薄型化を図ることができる。また、引き出し構造の簡略化により、製造工程の簡略化や材料の削減効果が得られる。
【0040】
更に、圧電素子218,230の主面を複数に分割する領域に設けられた電極層が、これらの電極層にほぼ等しい面積で振動板202のプリント導体パターン206〜212に接続されるため、導電接続の機能と、圧電素子218及び230の駆動による変位電圧の機能を兼ねるようになる。これにより、前記薄型化の効果に加え、圧電駆動時の導電接続の信頼性を高めるとともに、駆動電極が振動板202に直に接着されることにより、大きな変位を得ることができる。
【0041】
更に、上述した実施例1〜4では、圧電素子の主面を複数に分割する直線に沿って左右対称の振動モードが得られ、主に角板状の発音体用の圧電振動板を構成する際に好適であるのに対して、本実施例5では、圧電素子の駆動時に、従来の圧電振動板による振動と同様に、同心円状の振動モードが得られ、円形状の発音体用の圧電振動板を構成する際に好適である。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例に示した材料,形状,寸法は一例であり、同様の作用を奏するように適宜変更可能である。
(2)圧電層と電極層の積層数も任意であり、必要に応じて適宜増減してよい。
(3)前記実施例4では、振動板82の表裏両面に複数の圧電素子90,91を設けたが、これも一例であり、圧電素子の数は必要に応じて適宜増減してよい。
(4)前記実施例では、圧電振動板の全体形状を略長方形ないし略円形としたが、同様の効果を奏するものであれば、形状は適宜変更可能である。
(5)上述した実施例では、振動板の表裏両面に圧電素子を設けたバイモルフ構造としたが、表裏いずれか一方の面にのみ圧電素子を設けたユニモルフ構造としても同様の効果が得られる。
(6)上述した実施例では、圧電素子の主面を2分割した各々の領域に電極層を設けることとしたが、これも一例である、同様の効果を奏するように適宜分割数を変更してよい。
(7)本発明の圧電振動板の好適な応用例としては、携帯電話,携帯情報端末(PDA),ボイスレコーダ,PC(パソコン)などの各種電子機器のスピーカが挙げられるが、他の公知の各種の電子機器に適用することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、少なくとも一層以上の圧電層と、該圧電層の両主面に設けられる電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせ、前記電極層を、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に互いに離間して配置するとともに、同一面上で隣接する電極層同士,及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を、複数の接続導体で、それぞれ厚み方向に接続し、前記振動板から電極層を引き出すこととしたので、薄型化が要求される発音体用の圧電振動板及びそれを利用した電子機器の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1の構造を示す分解斜視図である。
【図2】前記実施例1を示す図であり、(A)は外観を示す斜視図,(B)は平面図である。
【図3】前記実施例1を示す図であり、(A)は図2(A)を#A−#A線に沿って切断した断面図,(B)は図2(A)を#B−#B線に沿って切断した断面図である。
【図4】本発明の実施例2の構造を示す分解斜視図である。
【図5】前記実施例2の外観を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例3の構造を示す分解斜視図である。
【図7】前記実施例3の外観を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例4の構造の一部を示す分解斜視図である。
【図9】前記実施例4を示す図であり、(A)は外観を示す斜視図,(B)は平面図である。
【図10】前記実施例4を示す図であり、(A)は図9(A)を#C−#C線に沿って切断した断面図,(B)は図9(A)を#D−#D線に沿って切断した断面図である。
【図11】本発明の実施例5の構造を示す分解斜視図である。
【図12】前記実施例5の外観を示す斜視図である。
【図13】前記実施例5の振動板の外観を示す斜視図である。
【図14】背景技術の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10:圧電振動板
12,12A,12B:振動板
14:シール部材
16,28:圧電素子
18A〜18C,18E〜18G:圧電層
20A〜20H,24A〜24H:電極層
22A,22B,26A,26B:スルーホール
30:電源
32A,32B:リード線
34A,34B:半田
40:圧電振動板
42,44:圧電素子
50:圧電振動板
52:振動板
52A:突出部
54:絶縁板
56,57,58,59:プリント導体パターン
56A,57A,58A,59A:引き出し部
60,72:圧電素子
62A,62B:圧電層
64A〜64D,66A〜66D:電極層
68A,68B,70A,70B:スルーホール
80:圧電振動板
82:振動板
84,86:プリント導体パターン
84A,86A:引き出し部
84B,86B:スルーホール
90,91:圧電素子
92:圧電層
94A〜94D,96A〜96D:電極層
98A,98B,100A,100B:スルーホール
102,104:リード線
106,108:半田
200:圧電振動板
202:振動板
202A:突出部
204:絶縁板
206,208,210,212:プリント導体パターン
206A,208A,210A,212A:引き出し部
207,209:スリット部
214,216:絶縁層
218,230:圧電素子
220A,220B:圧電層
222A〜222D,224A〜224D:電極層
226A,226B,228A,228B:スルーホール
300:圧電発音体
302:振動板
304,310:圧電素子
306:圧電体
308A〜308D:電極層
312A〜312C:リード線
314A〜314C:半田
【技術分野】
【0001】
本発明は、発音体用の圧電振動板及びそれを利用した電子機器に関し、更に具体的には、圧電振動板及び電子機器の薄型化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電発音体(圧電振動板)は、簡易な電気音響変換手段として広く利用されており、特に近年は、携帯電話や携帯情報端末などの分野でスピーカ等として多用されている。圧電発音体は、図14に一例を示すように、圧電素子304,310を、振動板302の表裏両面に貼り合わせた構成となっている。圧電素子304は、圧電体306の表裏両面に、電極層308A及び308Bを形成した構造となっており、金属などによって構成された振動板302の表面に、導電性接着剤等で接着される。他方の圧電素子310についても同様であり、圧電体306の表裏両面に、電極層308C及び308Dを形成した構造となっている。
【0003】
前記電極層308A及び308Dは、それぞれリード線312A及び312Bなどの導電手段を介して外部に引き出され、他の電極層308B及び308Cは振動板302と同電位となっており、前記振動板302からリード線312Cを介して外部に引き出される。このような電極引き出し構造と類似の構造が、例えば、以下の特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−47092公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のような背景技術では、電極を外部に引き出すために、リード線312A〜312C及び半田314A〜314Cが必要になる。このうち、リード線312Aと312Bの半田接続部は、圧電素子304,310の表面の電極層308A,308D上に設けられるため、圧電発音体300自体の厚みを増大させる要因となる。例えば、振動板302の厚みを30μm,圧電素子304及び310の厚みをそれぞれ60μm,リード線312A及び312Bの接続部の半田314A及び314Bの高さをそれぞれ160μmとすると、圧電発音体300全体の厚みが470μmになる。このうち、電極の引き出しに要するリード線312A,312Bの半田接続部の厚みの合計は、320μmとなり、圧電発音体300全体の厚みの70%近くを占めることになってしまう。また、前記背景技術では、上下面からのリード線312A及び312Bによる引き出しは、リード線312A及び312Bが振動板302に密着していないため、長時間の激しい圧電駆動に対して、信頼性が十分ではない可能性がある。従って、電極引き出し構造を改良することにより、不要な厚みを省くことができれば、圧電発音体やそれを利用する電子機器の薄型化をより促進するために好都合である。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、電極構造の改良により発音体用の圧電振動板を薄型化し、電子機器に対する実装の自由度の向上及び電子機器自体の薄型化を図ることである。他の目的は、電極の引き出しの信頼性を向上させることである。他の目的は、引き出し構造の改良により、製造工程を簡略化するとともに、材料の削減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、圧電層と、該圧電層を挟むようにその両主面に設けられた電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせた発音体用の圧電振動板であって、前記圧電素子は、同一主面上の電極層が、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、互いに離間して配置されるとともに、前記同一主面上で隣接する電極層同士、及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を、前記圧電層の厚み方向に接続する複数の接続導体,を備えたことを特徴とする。
【0007】
他の発明は、圧電層と、該圧電層の主面に設けられる電極層とを交互に複数積層した圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせた発音体用の圧電振動板であって、前記圧電素子は、同一主面上の電極層が、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、互いに離間して配置されるとともに、前記同一面上で隣接する電極層同士、及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を前記圧電層の厚み方向に接続する複数の接続導体,を備えたことを特徴とする。
【0008】
主要な形態の一つは、前記圧電素子の同一主面上の電極層同士が、前記圧電層の略中央部を中心として点対称であるとともに、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する一対の電極層同士が左右反転の形状であること,あるいは、前記圧電素子の同一主面上の電極層同士が、前記圧電層の略中央部を中心として同心円状に配置されるとともに、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する一対の電極層同士が点対称の形状であることを特徴とする。
【0009】
他の形態は、前記振動板の引き出し電極が、前記圧電素子の同一主面上の電極層の分割位置とほぼ同位置で分割されており、分割されたそれぞれの部分に、前記圧電素子の分割配置された電極層のそれぞれが導電接続されることを特徴とする。より好ましくは、前記振動板の引き出し電極の分割された各部分の間に、空気または樹脂を設けたことを特徴とする。
【0010】
更に他の形態は、前記圧電素子の圧電層の主面上に分割形成された複数の電極層のそれぞれに導電接続する複数の導体薄膜層を、前記振動板の主面上に設けたことを特徴とする。より好ましくは、前記振動板の主面上の導体薄膜層の電極引き出し部を、幅広に形成したことを特徴とする。
【0011】
本発明の電子機器は、請求項1〜8のいずれかに記載の発音体用の圧電振動板を利用したことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、少なくとも一層以上の圧電層と、該圧電層の両主面に設けられる電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせ、前記圧電素子の同一主面上の電極層を、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に互いに離間して配置するとともに、前記同一面上で隣接する電極層同士,及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を、複数の接続導体で、それぞれ厚み方向に接続することとした。このため、電極層の引き出しを、全て前記振動板から行うことができ、全体の薄型化を図るとともに、信頼性を向上させることができる。また、引き出し構造の簡略化により、製造工程の簡略化や材料の削減効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
最初に、図1〜図3を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の分解斜視図である。図2(A)は、本実施例の全体を示す外観斜視図であり、図2(B)は、前記(A)を圧電素子16の上方から見た平面図である。図3(A)は、前記図2(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,図3(B)は、前記図2(A)を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。これらの図に示すように、圧電振動板10は、42Niアロイやりん青銅等の導電性を有する可撓性薄板からなる振動板12A,12Bの表裏に、圧電素子16,28をそれぞれ貼り合わせたバイモルフ構造であって、全体が略長方形状に形成されている。前記振動板12A,12Bは、所定の間隔で離間しており、隙間の空気によって絶縁されて、それぞれ第1及び第2の引き出し電極を構成している。あるいは、一枚の振動板12の中央部分を分割し、分割部分にゴムや絶縁性樹脂などのシール部材14を設け(図2(B)参照)、振動板12A及び12Bの電気的接触を防止するようにしてもよい。
【0015】
圧電素子16は、PZTなどの圧電セラミックスによって形成された圧電層18Aの両主面に、電極層20A,20B,24A,24Bをそれぞれ設け、前記圧電層18Aを挟んで、電極層20Aと電極層24Bとが対向するとともに、電極層24Aと電極層20Bとが対向した構造となっている。電極層20A,20B,24A,24Bとしては、例えば、AgやAg/Pd合金を含む焼付け型の電極層などが利用される。まず、略長方形の圧電層18Aの一方の主面には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20A及び24Aが、主面を直線により2つに分割した各々の領域に、互いに離間するように形成されている。これら電極層20A及び24Aは、前記圧電層18Aの略中央を中心として点対称の関係となっている。前記圧電層18Aの他方の主面には、同様に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20Bと24Bが形成されている。これら電極層20B,24Bは、点対称の関係にある。また、電極層20B及び24Bは、前記圧電層18Aの一方の主面の電極層20A及び24Aと左右反転の関係にある。すなわち、電極層20Aと20Bに印加される信号電圧の極性が同じになり、電極層24Aと24Bに印加される信号電圧の極性が同じになるように配置されている。
【0016】
前記電極層20A及び20Bは、スルーホール22Aによって圧電素子16の厚み方向にほぼ直線的に接続され、電極層24A及び24Bは、スルーホール26Aによって厚み方向にほぼ直線的に接続される。そして、前記電極層20Bが一方の振動板12Bの表面に接続するように、また電極層24Bが他方の振動板12Aの表面に接続するように、図示しない導電性接着剤などにより貼り合わせられる。
【0017】
他方の圧電素子28についても基本的には同様の構成となっており、圧電層18Eの一方の主面には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20E及び24Eが形成される。電極層20E及び24E同士は点対照である。圧電層18Eの他方の主面にも、上述した圧電素子16と同様に、それぞれ一対の電極層20F及び24Fが形成され、前記圧電層18Eを挟んで、電極層20Eと電極層24Fが対向するとともに、電極層24Eと電極層20Fとが対向した構造となっている。そして、前記電極層20E及び20Fが、スルーホール22Bで厚み方向に接続され、電極層24E及び24Fが、スルーホール26Bにより接続される。
【0018】
以上のような構造の圧電振動板10では、電極層20A,20B,20E,20Fは、スルーホール22A,22B及び振動板12Bを介して電気的に接続されており、全て共通電位となっている。また、電極層24A,24B,24E,24Fは、スルーホール26A,26B及び振動板12Aを介して電気的に接続されており、全て共通電位となっている。このような圧電振動板10では、図2に示すように、振動板12Aと12Bから、リード線32A及び32Bを介して電極が引き出され、電源30に接続される。そして、例えば、一方の振動板12Aはプラス,他方の振動板12Bはマイナスという具合に信号電圧を印加する。すなわち、圧電素子16及び28の表面から電極を引き出すのではなく、これらの間に挟まれた振動板12A及び12Bから電極を引き出すことが可能になる。このため、上述した背景技術と比較して、リード線32A,32Bの接続部位の半田34A,34Bの厚みが全体の厚みに影響を与えることがなく、圧電振動板10自体を大幅に薄型化することができる。なお、このとき、振動板12A及び12Bからの引出部を幅広として面接着することにより、電極引き出しの信頼性を向上させるようにしてもよい。
【0019】
このように、実施例1によれば、圧電層の主面を複数に分割した各々の領域に互いに離間して配置される一対の電極層を、前記圧電層の両主面に備えた圧電素子16及び28を、振動板12A及び12Bの両面に貼り合わせ、前記圧電層の同一面上の電極層同士,及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように前記電極層を配置する。そして、設けられた電極層のうち、同一極性の信号電圧が印加される電極層20A,20Bをスルーホール22Aで厚み方向に接続し、電極層20E及び20Fをスルーホール22Bで厚み方向に接続する。また、他の電極層24A及び24Bをスルーホール26Aで厚み方向に接続し、電極層24E及び24Fをスルーホール26Bで厚み方向に接続することとしたので、電極層の引き出しを、全て振動板12A及び12Bから行うことができ、全体の薄型化を図ることができる。また、引き出し構造の簡略化により、製造工程の簡略化や材料の削減効果が得られる。更に、前記振動板12及び12Bに幅広の引出部を面接着することにより、引き出しの信頼性の向上も可能である。
【実施例2】
【0020】
次に、図4及び図5を参照しながら、本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には、同一の符号を用いることとする(以下の実施例についても同様)。図4は、本実施例の分解斜視図である。図5は、本実施例の全体を示す外観斜視図である。前記実施例1は、単層の圧電層を有する圧電素子を振動板の表裏両面に設けた例であったが、本実施例は、圧電素子を、複数の圧電層を有する積層構造とした例である。前記図4及び図5に示すように、圧電振動板40は、振動板12A,12Bの表裏に、圧電素子42,44をそれぞれ貼り合わせたバイモルフ構造であって、全体が略長方形状に形成されている。前記振動板12A,12Bは、前記実施例1と同様に、所定の間隔で離間しており、隙間の空気によって絶縁されて、それぞれ第1及び第2の引き出し電極を構成している。あるいは、一枚の振動板12の中央部分を分割し、分割部分にゴムや絶縁性樹脂などのシール部材14を設け(図5参照)、振動板12A及び12Bの電気的接触を防止するようにしてもよい。
【0021】
圧電素子42は、PZTなどによって形成された圧電層(圧電セラミック)18A〜18Cと、電極層20A〜20D及び24A〜24Dを交互に積層し、各圧電層を挟んで電極層が対向した構造となっている。電極層20A〜20D,24A〜24Dとしては、例えば、AgやAg/Pd合金などの焼付け型の導電層などが利用される。まず、略長方形の圧電層18Aの一方の主面(図4では上面)には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20A及び24Aが、圧電層18Aの主面を複数に分割した各々の領域に、互いに離間するように形成されている。これら電極層20A及び24Aは、前記圧電層18Aの略中央を中心として点対称の関係となっている。2層目の圧電層18Bの表面(図4では上面)には、同様に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20Bと24Bが形成されている。これら電極層20B,24Bは点対称の関係にある。また、電極層20B及び24Bは、前記圧電層18Aの表面の電極層20A及び24Aと左右反転の関係にある。すなわち、電極層20Aと20Bに印加される信号電圧の極性が同じになり、電極層20Bと24Bに印加される信号電圧の極性が同じになるように配置されている。
【0022】
3層目の圧電層18Cの表面についても同様に、一対の電極層20C及び24Cが形成される。さらに、該圧電層18Cの裏面には、同じく一対の電極層20D及び24Dが形成される。このように、同一の圧電層上に形成される電極層同士を点対称とし、厚み方向で隣接する一対の電極層同士が左右反転の形状になるように配置することにより、電極層は一層おき毎に、形状・位置が概略一致するようになる。例えば、電極層20A及び24Aと、電極層20C及び24Cがほぼ一致し、電極層20B及び24Bと、電極層20D及び24Dがほぼ一致するという具合である。
【0023】
以上のような電極層20A〜20Dは、スルーホール22Aによって圧電素子42の厚み方向にほぼ直線的に接続され、電極層24A〜24Dは、スルーホール26Aによって厚み方向にほぼ直線的に接続される。そして、前記電極層20Dが一方の振動板12B表面に接触し、電極層24Dが他方の振動板12Aの表面に接触するように貼り合わせられる。
【0024】
他方の圧電素子44についても基本的には同様の構成となっており、一層目の圧電層18Eの表面には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層20E及び24Eが形成される。電極層20E及び24E同士は点対称である。以下、2層目の圧電層18Fの表面と、3層目の圧電層18Gの表面及び裏面にも、上述した圧電素子16と同様に、それぞれ一対の電極層20F及び24F,20G及び24G,20H及び24Hが形成され、前記圧電層を挟んでそれぞれ、電極層が対向する構造となっている。そして、前記電極層20E〜20Hが、スルーホール22Bで厚み方向に接続され、電極層24E〜24Hが、スルーホール26Bにより接続される。
【0025】
以上のような構造の圧電振動板40では、電極層20A〜20Hは、スルーホール22A,22B及び振動板12Bを介して電気的に接続されており、全て共通電位となっている。また、電極層24A〜24Hは、スルーホール26A,26B及び振動板12Aを介して電気的に接続されており、全て共通電位となっている。このような圧電振動板40では、上述した実施例1と同様に、第1及び第2の引き出し電極となる振動板12Aと12Bから電極が引き出され、電源30に接続される(図2参照)。そして、例えば、一方の振動板12Aはプラス,他方の振動板12Bはマイナスという具合に信号電圧を印加する。すなわち、圧電素子42及び44の表面から電極を引き出すのではなく、これらの間に挟まれた振動板12A及び12Bから電極を引き出すことが可能になるため、本実施例においても、上述した背景技術と比較して、圧電振動板40自体を大幅に薄型化することができる。なお、このとき、振動板12A及び12Bからの引出部を幅広として面接着することにより、電極引き出しの信頼性を向上させるようにしてもよい。
【0026】
このように、実施例2によれば、圧電層と、該圧電層の同一面上に離間して配置される一対の電極層とを交互に積層した圧電素子42及び44を、振動板12A及び12Bの両面に貼り合わせ、前記圧電層の同一面上の電極層同士,及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように前記電極層を配置する。そして、積層された電極層のうち、同一極性の信号電圧が印加される電極層20A〜20D,20E〜20Hを、スルーホール22A及び22Bで厚み方向に接続し、他の電極層24A〜24D,24E〜24Hを、スルーホール26A及び26Bで厚み方向に接続することとしたので、電極層の引き出しを、全て振動板12A及び12Bから行うことができ、全体の薄型化を図ることができる。また、引き出し構造の簡略化により、製造工程の簡略化や材料の削減効果が得られる。更に、前記振動板12A及び12Bに幅広の引出部を面接着することにより、引き出しの信頼性の向上も可能である。
【実施例3】
【0027】
次に、図6及び図7を参照しながら、本発明の実施例3を説明する。図6は、本実施例の構成を示す分解斜視図,図7は、本実施例の全体を示す外観斜視図である。これらの図に示すように、圧電振動板50は、略円形の振動板52の表裏両面に、略円形の圧電素子60,72をそれぞれ貼り合わせたバイモルフ構造であって、前記振動板52の外周の一部には、外周側へ突出した突出部52Aが設けられている。前記圧電素子60,72は、上述した実施例1と同様にそれぞれ単層の圧電層を用いた構成となっている。すなわち、圧電素子60を例に挙げると、圧電層62Aの一方の主面に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層64A及び66Aが、主面を2分割した各々の領域に互いに離間するように形成され、他方の主面にも同様に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層64Bと66Bが形成されている。これら電極層64A,64B,66A,66Bの同一主面上での位置関係や、圧電層62Aを挟んだ位置関係は、基本的には上述した実施例1と同様であり、電極層64Aと64Bはスルーホール68Aを介して接続され、電極層66Aと66Bは、スルーホール70Aを介して接続される。他方の圧電素子72についても基本的に同様の構成となっており、圧電層68Bの表裏両面には、それぞれ一対の電極層64C及び66Cと、電極層64D及び66Dが形成され、スルーホール68B及び70Bにより接続されている。なお、圧電素子60及び72を構成する材料としては、上述した実施例1と同様のものが適用可能である。なお、本実施例では、単層の圧電層からなる圧電素子を利用することとしたが、前記実施例2と同様に、複数の圧電層を有する積層構造の圧電素子を用いるようにしてもよい。
【0028】
本実施例3では、上述した実施例1と比較して、振動板の構成が大きく異なる。本実施例の振動板52は、絶縁性であって屈曲に優れた材料、例えばPET(PolyEthylene Terephtalate)などの絶縁フィルムからなる絶縁板54の表裏面に、例えば、導電性Agペーストを用いて、それぞれ一対のプリント導体パターン56及び57と、58及び59を設けた構成となっている。なお、前記導電性Agペーストは一例であり、スパッタリング法などにより薄膜導電体層を設けるようにしてもよい。前記絶縁板54には、前記一対のプリント導体パターン(例えば56及び57)の間隙を通る直線の延長方向に、外周側に突出する突出部52Aが設けられている。また、前記プリント導体パターン56〜59は、前記突出部52Aの表面上に形成された引き出し部56A〜59Aとそれぞれ接続されている。前記プリント導体パターン56〜59と、前記圧電素子60及び72の電極層64B,66B,64C,66Cとは、図示しない導電性接着剤により接着されており、前記引き出し部56A〜59Aを介して信号電圧を印加することにより、圧電振動板50を駆動することができる。本実施例では、上述した実施例1及び2と異なり、振動板自体は分割形成されず、替わりに引き出し電極(プリント導体パターン)が分割形成されている。
【0029】
このように、本実施例によれば、圧電層62A及び62Bの主面をほぼ2分割する領域に設けられた電極層64B,66B,64C,66Cを、これらの電極層にほぼ等しい面積で振動板52のプリント導体パターン56〜59に接着することにより、導電接続の機能と、圧電素子60及び72の駆動による変位伝達の機能を兼ねることが可能となる。これにより、上述した実施例1及び2に示す薄型化の効果に加え、圧電駆動時の導電接続の信頼性を高めるとともに、駆動電極が振動板52に直に接着されることにより、大きな変位を得ることができる。なお、図示は省略したが、振動板52の一対のプリント導体パターン(56及び57,あるいは、58及び59)の間隙部分に、予めレジスト層を印刷することにより、間隙部分への導電性接着剤の流れ込みによる電極層間の短絡発生を防止するようにしてもよい。また、前記間隙部分の絶縁性接着剤を塗布することにより、振動板52の間隙部分と圧電素子60及び72との変位伝達をより確実にするとともに、非接着部分同士の衝突による不要な音の発生を防止するようにしてもよい。
【実施例4】
【0030】
次に、図8〜図10を参照しながら、本発明の実施例4を説明する。図8は、本実施例の上面側の構造を示す分解斜視図である。図9(A)は、本実施例の全体を示す外観斜視図であり、図9(B)は、前記(A)を上方から見た平面図である。図10は、本実施例の主要断面図であり、図10(A)は、前記図9(A)を#C−#C線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,図10(B)は、前記図9(A)を#D−#D線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。これらの図に示すように、本実施例の圧電振動板80は、振動板82の表面に複数の圧電素子90を、振動板82の裏面に複数の圧電素子91をそれぞれ配置したものである。圧電素子90の構造は、基本的には、上述した実施例1と同様であり、圧電素子90の表裏両面には、それぞれ一対の電極層94A及び96Aと、電極層94B及び96Bが形成されている。同様に、圧電素子91の表裏両面には、それぞれ一対の電極層94C及び96Cと、電極層94D及び96Dが形成されている。
【0031】
一方、前記振動板82の表裏両面には、前記圧電素子90,91の配列方向に伸びた一対のプリント導体パターン84及び86がそれぞれ形成されている。これらプリント導体パターン84,86は、突出した引き出し部84A及び86Bを備えている。そして、振動板82の表裏両面にそれぞれ設けられたプリント導体パターン84同士,及び、プリント導体パターン86同士は、前記引き出し部84A及び86Aにおいて、スルーホール84B及び86Bを介して表裏で接続されている。前記圧電素子90及び91は、それぞれ、前記一対のプリント導体パターン84及び86上に跨るように配置されている。図10(A)に示すように、圧電素子90の電極層94Aと94Bは、スルーホール98Aにより厚み方向に接続され、振動板82の表面側の一方のプリント導体パターン86に接続される。圧電素子91の電極層94Cと94Dは、スルーホール98Bにより厚み方向に接続され、振動板82の裏面側のプリント導体パターン86に接続される。同様に、図10(B)に示すように、圧電素子90の他の電極層96Aと96Bは、スルーホール100Aにより厚み方向に接続され、振動板82の表面側の他方のプリント導体パターン84に接続される。圧電素子91の他の電極層96Cと96Dは、スルーホール100Bにより厚み方向に接続され、振動板82の裏面側の他方のプリント導体パターン84に接続される。他の複数の圧電素子90及び91についても同様である。そして、振動板82の表裏両面で接続されたプリント導体パターン84及び86の引き出し部84A,86Bに、例えば、リード線102及び104を、半田106及び108で接続することにより、圧電振動板80に対する信号電圧の印加が可能となる。
【0032】
本実施例4は、上述した実施例3と同様に、主面上にプリント導体パターン84及び86が形成された振動板82を利用して、その表裏面にそれぞれ複数の圧電素子90及び91を貼り合わせたものである。このように、振動板82の表面の帯状のプリント導体パターン84及び86に沿って複数の圧電素子90及び91を、図示しない導電性接着剤で貼り合わせることで、複数の圧電素子間の導電接続,各圧電素子90及び91とプリント導体パターン84及び86との接続,更に、各圧電素子90及び91の変位を振動板82に伝達する機能を兼ね、上述した実施例3と同様の効果を得ることができる。また、上述した実施例3の効果に加え、振動板82上に複数の圧電素子を設けても、配線の引き回しが不要になるという効果が得られる。更に、複数種類の圧電素子の組み合わせが自由に行えるため、各種電子機器への応用が可能である。なお、圧電素子90及び91は、それぞれ前記実施例1及び3と同様に、単層の圧電層を用いたものであるが、前記実施例2と同様に、電極層と圧電層とが交互に複数層積層した構造のものを用いるようにしても同様の効果が得られる。また、図示は省略したが、プリント導体パターン84及び86を、圧電素子90及び91の駆動電極(電極層)の形状に対応して、部分的に幅広に形成してもよいし、また、圧電素子間を結ぶ配線部分のプリント導体パターンの表面を、絶縁層で被覆するようにしてもよい。
【実施例5】
【0033】
次に、図11〜図13を参照して、本発明の実施例5を説明する。図11は、本実施例の分解斜視図である。図12は、本実施例の全体を示す外観斜視図であり、図13は、本実施例に用いる振動板の外観斜視図である。これらの図に示すように、圧電振動板200は、略円形の振動板202の表裏両面に、略円形の圧電素子218,230をそれぞれ貼り合わせたバイモルフ構造であって、前記実施例3と同様に、前記振動板202の外周の一部には、外周側へ突出した突出部202Aが設けられている。前記圧電素子218,230は、上述した実施例1と同様にそれぞれ単層の圧電層を用いた構成となっているが、もちろん、前記実施例2と同様に、電極層と圧電層とが交互に複数積層した構造のものを用いるようにしてもよい。本実施例5では、圧電素子218,230の電極層の分割形成のしかたが、上述した実施例1〜4と異なっている。すなわち、前記実施例1〜4では、圧電層の主面を直線で複数に分割した各々の領域に、電極層を互いに離間して配置することとしたが、本実施例5では、圧電層の主面を略同心円状に複数に分割(図示の例では2分割)した各々の領域に、電極層を互いに離間して配置する構成となっている。
【0034】
まず、振動板202について説明すると、上述した実施例3と同様に、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂フィルムからなる絶縁板204の表裏面に、例えば、導電性Agペーストを用いて、それぞれ一対のプリント導体パターン206及び208と、210及び212を設けた構成となっている。なお、前記導電性Agペーストは一例であり、スパッタリング法などにより薄膜導電体層を設けてもよい点は、前記実施例3と同様である。また、前記絶縁板204の縁の一部には、該絶縁板204の中心を通る直線の延長方向に、外周側に突出する突出部202Aが設けられている。前記プリント導体パターン206,208,210,212は、前記突出部202Aの表面上に設けられた引き出し部206A〜212Aにそれぞれ接続されている。
【0035】
一方の主面のプリント導体パターン206と208について詳述すると、これらプリント導体パターン206及び208は、絶縁板204の主面を、径方向に内周側と外周側とに2分割する円を境にして、それぞれの領域に互いに離間するように配置されている。内周側のプリント導体パターン208は、外周側のプリント導体パターン206の周方向の一部に設けられたスリット部207を介して、前記突出部202A上の引き出し部208Aに接続されている。前記引き出し部208Aには、前記圧電素子218の外周側の電極層224Bと対向する部分に、電極間の短絡発生を防止するための絶縁層214が設けられている。また、前記対向部分に、接着剤を塗布することにより、絶縁板204と圧電素子318との変位伝達をより確実にするとともに、非接着部分同士の衝突による不要な音の発生を防止するようにしてもよい。絶縁板204の他方の主面に設けられた一対のプリント導体パターン210及び212についても同様の構成となっており、内周側のプリント導体パターン212は、外周側のプリント導体パターン210の周方向の一部に設けられたスリット部209を介して、前記突出部202A上の引き出し部212Aに接続されている。前記引き出し部212Aには、前記圧電素子230の外周側の電極層224Cと対向する部分に、電極間の短絡発生を防止するための絶縁層216が設けられる。
【0036】
次に、圧電素子218は、PZTなどの圧電セラミックによって形成された圧電層220Aの両主面に、電極層222A,224A,222B,224Bをそれぞれ設けた構造となっている。電極層222A,224A,222B,224Bとしては、上述した実施例と同様に、例えば、AgやAg/Pd合金を含む焼付け型の電極層などが利用される。略円形の圧電層220Aの一方の主面(図示の例では上面側)には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層222A及び224Aが、主面を同心円状に二つに分割した各々の領域に、互いに離間するように形成されている。これら電極層222A及び224Aは、前記圧電層220Aを径方向で二つに分割する円を境にして、内周側と外周側に配置されている。圧電層220Aの他方の主面(図示の例では下面側)には、同様に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層222Bと224Bが形成されている。これら電極層222Bと224Bは、略同心円の関係にある。また、電極層222B及び224Bは、上面側の電極層222A及び224Aと内外反転の関係にある。すなわち、電極層222Aと222Bに印加される信号電圧の極性が同じになり、電極層224Aと224Bに印加される信号電圧の極性が同じになるというように配置されている。
【0037】
前記電極層222A及び222Bは、スルーホール226Aによって、圧電素子218の厚み方向にほぼ直線的に接続され、電極層224A及び224Bは、スルーホール228Aによって厚み方向にほぼ直線的に接続される。そして、前記電極層222Bが、振動板202の表面の内周側のプリント導体パターン208に接続し、電極層224Bが、外周側のプリント導体パターン206に接続するように、図示しない導電性接着剤等により貼り合わせられる。
【0038】
他方の圧電素子230についても基本的には同様の構成となっており、圧電層220Bの一方の主面には、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層222Cと224Cが形成される。電極層222Cと224Cは、同心円の関係にある。圧電層220Bの他方の主面にも、同様にそれぞれ異なる極性の信号電圧が印加される一対の電極層222Dと224Dが形成される。そして、前記電極層222C及び222Dが、スルーホール226Bにより厚み方向に接続され、電極層224C及び224Dが、スルーホール228Bにより厚み方向に接続される。前記電極層222Cが、振動板202の裏面の内周側のプリント導体パターン212に接続し、電極層224Cが、外周側のプリント導体パターン210に接続するように、図示しない導電性接着剤等により貼り合わせられる。このような構成の圧電振動板200は、前記引き出し部206A〜212Aを介して信号電圧を印加することにより駆動される。
【0039】
このように、実施例5によれば、圧電層の主面を径方向で二つに分割する円を境界にして、内周側と外周側に互いに離間して配置される一対の電極層を、前記圧電層の両主面に設けた圧電素子218,230を、振動板202の両面に貼り合わせ、前記圧電層218,230の同一面上の電極層同士,及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように前記電極層を配置する。そして、設けられた電極層のうち、同一極性の信号電圧が印加される電極層222Aと22Bをスルーホール226Aで、また、電極層222Cと222Dをスルーホール226Bで厚み方向に接続する。一方、他の電極層224A、224Bをスルーホール228Aで、また、電極層224Cと224Dを、スルーホール228Bで厚み方向に接続することとしたので、電極層の引き出しを、全て振動板202の表面に設けたプリント導体パターン206〜212から行うことができ、全体の薄型化を図ることができる。また、引き出し構造の簡略化により、製造工程の簡略化や材料の削減効果が得られる。
【0040】
更に、圧電素子218,230の主面を複数に分割する領域に設けられた電極層が、これらの電極層にほぼ等しい面積で振動板202のプリント導体パターン206〜212に接続されるため、導電接続の機能と、圧電素子218及び230の駆動による変位電圧の機能を兼ねるようになる。これにより、前記薄型化の効果に加え、圧電駆動時の導電接続の信頼性を高めるとともに、駆動電極が振動板202に直に接着されることにより、大きな変位を得ることができる。
【0041】
更に、上述した実施例1〜4では、圧電素子の主面を複数に分割する直線に沿って左右対称の振動モードが得られ、主に角板状の発音体用の圧電振動板を構成する際に好適であるのに対して、本実施例5では、圧電素子の駆動時に、従来の圧電振動板による振動と同様に、同心円状の振動モードが得られ、円形状の発音体用の圧電振動板を構成する際に好適である。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例に示した材料,形状,寸法は一例であり、同様の作用を奏するように適宜変更可能である。
(2)圧電層と電極層の積層数も任意であり、必要に応じて適宜増減してよい。
(3)前記実施例4では、振動板82の表裏両面に複数の圧電素子90,91を設けたが、これも一例であり、圧電素子の数は必要に応じて適宜増減してよい。
(4)前記実施例では、圧電振動板の全体形状を略長方形ないし略円形としたが、同様の効果を奏するものであれば、形状は適宜変更可能である。
(5)上述した実施例では、振動板の表裏両面に圧電素子を設けたバイモルフ構造としたが、表裏いずれか一方の面にのみ圧電素子を設けたユニモルフ構造としても同様の効果が得られる。
(6)上述した実施例では、圧電素子の主面を2分割した各々の領域に電極層を設けることとしたが、これも一例である、同様の効果を奏するように適宜分割数を変更してよい。
(7)本発明の圧電振動板の好適な応用例としては、携帯電話,携帯情報端末(PDA),ボイスレコーダ,PC(パソコン)などの各種電子機器のスピーカが挙げられるが、他の公知の各種の電子機器に適用することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、少なくとも一層以上の圧電層と、該圧電層の両主面に設けられる電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせ、前記電極層を、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に互いに離間して配置するとともに、同一面上で隣接する電極層同士,及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を、複数の接続導体で、それぞれ厚み方向に接続し、前記振動板から電極層を引き出すこととしたので、薄型化が要求される発音体用の圧電振動板及びそれを利用した電子機器の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1の構造を示す分解斜視図である。
【図2】前記実施例1を示す図であり、(A)は外観を示す斜視図,(B)は平面図である。
【図3】前記実施例1を示す図であり、(A)は図2(A)を#A−#A線に沿って切断した断面図,(B)は図2(A)を#B−#B線に沿って切断した断面図である。
【図4】本発明の実施例2の構造を示す分解斜視図である。
【図5】前記実施例2の外観を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例3の構造を示す分解斜視図である。
【図7】前記実施例3の外観を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例4の構造の一部を示す分解斜視図である。
【図9】前記実施例4を示す図であり、(A)は外観を示す斜視図,(B)は平面図である。
【図10】前記実施例4を示す図であり、(A)は図9(A)を#C−#C線に沿って切断した断面図,(B)は図9(A)を#D−#D線に沿って切断した断面図である。
【図11】本発明の実施例5の構造を示す分解斜視図である。
【図12】前記実施例5の外観を示す斜視図である。
【図13】前記実施例5の振動板の外観を示す斜視図である。
【図14】背景技術の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10:圧電振動板
12,12A,12B:振動板
14:シール部材
16,28:圧電素子
18A〜18C,18E〜18G:圧電層
20A〜20H,24A〜24H:電極層
22A,22B,26A,26B:スルーホール
30:電源
32A,32B:リード線
34A,34B:半田
40:圧電振動板
42,44:圧電素子
50:圧電振動板
52:振動板
52A:突出部
54:絶縁板
56,57,58,59:プリント導体パターン
56A,57A,58A,59A:引き出し部
60,72:圧電素子
62A,62B:圧電層
64A〜64D,66A〜66D:電極層
68A,68B,70A,70B:スルーホール
80:圧電振動板
82:振動板
84,86:プリント導体パターン
84A,86A:引き出し部
84B,86B:スルーホール
90,91:圧電素子
92:圧電層
94A〜94D,96A〜96D:電極層
98A,98B,100A,100B:スルーホール
102,104:リード線
106,108:半田
200:圧電振動板
202:振動板
202A:突出部
204:絶縁板
206,208,210,212:プリント導体パターン
206A,208A,210A,212A:引き出し部
207,209:スリット部
214,216:絶縁層
218,230:圧電素子
220A,220B:圧電層
222A〜222D,224A〜224D:電極層
226A,226B,228A,228B:スルーホール
300:圧電発音体
302:振動板
304,310:圧電素子
306:圧電体
308A〜308D:電極層
312A〜312C:リード線
314A〜314C:半田
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電層と、該圧電層を挟むようにその両主面に設けられた電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせた発音体用の圧電振動板であって、
前記圧電素子は、同一主面上の電極層が、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、互いに離間して配置されるとともに、
前記同一主面上で隣接する電極層同士、及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を、前記圧電層の厚み方向に接続する複数の接続導体,
を備えたことを特徴とする圧電振動板。
【請求項2】
圧電層と、該圧電層の主面に設けられる電極層とを交互に複数積層した圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせた発音体用の圧電振動板であって、
前記圧電素子は、同一主面上の電極層が、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、互いに離間して配置されるとともに、
前記同一面上で隣接する電極層同士、及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を前記圧電層の厚み方向に接続する複数の接続導体,
を備えたことを特徴とする圧電振動板。
【請求項3】
前記圧電素子の同一主面上の電極層同士が、前記圧電層の略中央部を中心として点対称であるとともに、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する一対の電極層同士が左右反転の形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電振動板。
【請求項4】
前記圧電素子の同一主面上の電極層同士が、前記圧電層の略中央部を中心として同心円状に配置されるとともに、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する一対の電極層同士が点対称の形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電振動板。
【請求項5】
前記振動板の引き出し電極が、前記圧電素子の同一主面上の電極層の分割位置とほぼ同位置で分割されており、分割されたそれぞれの部分に、前記圧電素子の分割配置された電極層のそれぞれが導電接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電振動板。
【請求項6】
前記振動板の引き出し電極の分割された各部分の間に、空気または樹脂を設けたことを特徴とする請求項5記載の圧電振動板。
【請求項7】
前記圧電素子の圧電層の主面上に分割形成された複数の電極層のそれぞれに導電接続する複数の導体薄膜層を、前記振動板の主面上に設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電振動板。
【請求項8】
前記振動板の主面上の導体薄膜層の電極引き出し部を、幅広に形成したことを特徴とする請求項7記載の圧電振動板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の圧電振動板を利用したことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
圧電層と、該圧電層を挟むようにその両主面に設けられた電極層とを備えた圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせた発音体用の圧電振動板であって、
前記圧電素子は、同一主面上の電極層が、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、互いに離間して配置されるとともに、
前記同一主面上で隣接する電極層同士、及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を、前記圧電層の厚み方向に接続する複数の接続導体,
を備えたことを特徴とする圧電振動板。
【請求項2】
圧電層と、該圧電層の主面に設けられる電極層とを交互に複数積層した圧電素子を、振動板の少なくとも一方の面に貼り合わせた発音体用の圧電振動板であって、
前記圧電素子は、同一主面上の電極層が、前記圧電層の主面を複数に分割したそれぞれの領域に、互いに離間して配置されるとともに、
前記同一面上で隣接する電極層同士、及び、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する電極層同士に、それぞれ異なる極性の信号電圧が印加されるように、同一極性の信号電圧が印加される電極層同士を前記圧電層の厚み方向に接続する複数の接続導体,
を備えたことを特徴とする圧電振動板。
【請求項3】
前記圧電素子の同一主面上の電極層同士が、前記圧電層の略中央部を中心として点対称であるとともに、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する一対の電極層同士が左右反転の形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電振動板。
【請求項4】
前記圧電素子の同一主面上の電極層同士が、前記圧電層の略中央部を中心として同心円状に配置されるとともに、前記圧電層を介して厚み方向で隣接する一対の電極層同士が点対称の形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電振動板。
【請求項5】
前記振動板の引き出し電極が、前記圧電素子の同一主面上の電極層の分割位置とほぼ同位置で分割されており、分割されたそれぞれの部分に、前記圧電素子の分割配置された電極層のそれぞれが導電接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電振動板。
【請求項6】
前記振動板の引き出し電極の分割された各部分の間に、空気または樹脂を設けたことを特徴とする請求項5記載の圧電振動板。
【請求項7】
前記圧電素子の圧電層の主面上に分割形成された複数の電極層のそれぞれに導電接続する複数の導体薄膜層を、前記振動板の主面上に設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電振動板。
【請求項8】
前記振動板の主面上の導体薄膜層の電極引き出し部を、幅広に形成したことを特徴とする請求項7記載の圧電振動板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の圧電振動板を利用したことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−211413(P2006−211413A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22036(P2005−22036)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]