説明

圧電発音体

【課題】音圧を向上させることができ、かつ、全体を小型化することができると共に、導電端子を圧電振動板へ確実に接触させることができる圧電発音体を提供すること。
【解決手段】本発明に係る圧電発音体2は、圧電振動板4と、圧電振動板4を内部に保持するケース10と、圧電振動板4に電気的に接続する一対の導電端子12A、12Bと、を有する。一対の導電端子12A、12Bのうち少なくともいずれかが、ケース10を貫通し、ケース10の内部から外部へ突出する外側部121a,121bと、ケース10に固定される固定部122a,122bと、固定部122a,122bからそれぞれ圧電振動板4へ向かって伸びる立ち上がり部123a,123bと、各立ち上がり部123a,123bの略先端に位置し、圧電振動板4に接触する接触部124a,124bと、を有する。立ち上がり部123a,123bの少なくとも一部のばね定数が、接触部124a,124bのばね定数より低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発音体に係り、さらに詳しくは、音圧を向上させることができ、かつ、全体を小型化することができると共に、導電端子を圧電振動板へ確実に接触させることができる圧電発音体に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電発音体は、主として、圧電振動板と、圧電振動板を保持するケースと、ケースに固定され、圧電振動板に電気的に接続する一対の導電端子と、から構成される。このような圧電発音体は、一般的に、家庭用電気機器(冷蔵庫、洗濯機、エアコン用リモコン等)、火災報知器の発音部等に搭載される。
【0003】
特許文献1に示す圧電発音体においては、各導電端子が、ケース内壁を起点として、圧電振動板に向かって垂直に起立する起立部と、起立部の先端から屈曲して圧電振動板に向かって斜め方向に伸び、圧電振動板と接触する接触部と、から構成される。また、各導電端子は、板状の構造を有する。その結果、各導電端子の接触部が板バネとして作用するため、圧電振動板の振動を阻害することがなく、音圧が向上する。
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、各導電端子が、ケース内壁から垂直に起立する起立部を有するため、圧電発音体を小型化(低背化)することが困難である。
【0005】
また、導電端子にねじれが生じ、接触部と圧電振動板との相対位置に少しでもズレが生じた場合、板状の接触部と圧電振動板とが確実に面接触せず、接触部と圧電振動板とが導通不良となる恐れがある。導通不良は振動特性の不安定化を引き起こす恐れがある。
【0006】
さらには、板状の構造を有する接触部のエッジ(角部)が、圧電振動板の表面(圧電素子を被覆する電極等)を削り取る結果、接触部と圧電振動板とが確実に接触できず、接触部と圧電振動板とが導通不良となる恐れがある。
【0007】
また、板状の導電端子(平ピン状の導電端子)は単価が高いため、圧電発音体の製造コストが高くなる。さらに、板状の導電端子は強度が低いため、圧電発音体の製造、回路基板への実装の際に、導電端子が破損する恐れがある。
【0008】
高価で強度(ばね定数)の低い板状の導電端子の代わりに、低価で強度(ばね定数)の高い丸ピン状(円柱状)の金属端子を用いた場合、圧電振動板に対する金属端子の接触圧が高くなってしまう。その結果、圧電振動板の振動が阻害され、圧電振動板の振幅が小さくなり、音圧が低下する恐れがある。
【特許文献1】特開平5−53586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、音圧を向上させることができ、かつ、全体を小型化(低背化)することができると共に、導電端子を圧電振動板へ確実に接触させることができる圧電発音体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る圧電発音体は、
圧電振動板と、
前記圧電振動板を内部に保持するケースと、
前記圧電振動板に電気的に接続する一対の導電端子と、を有する圧電発音体であって、
前記一対の導電端子のうち少なくともいずれかが、
前記ケースを貫通し、前記ケースの内部から外部へ突出する外側部と、
前記ケースに固定される固定部と、
前記固定部から前記圧電振動板へ向かって(斜め方向に)伸びる立ち上がり部と、
前記立ち上がり部の略先端に位置し、前記圧電振動板に接触する接触部と、を有し、
前記立ち上がり部の少なくとも一部のばね定数が、前記接触部のばね定数より低い。なお、以下では、ばね定数を、剛性または曲げ剛性とも言う。
【0011】
好ましくは、固定部を起点とする立ち上がり部全体のばね定数が、前記接触部のばね定数より低い。
【0012】
立ち上がり部の曲げ剛性を、接触部の曲げ剛性より低くすることによって、立ち上がり部が柔軟なバネとして機能する。よって、圧電振動板の振動に応じて、導電端子が立ち上がり部において容易に曲がる。よって、圧電振動板の振動時において、圧電振動板に対する接触部の接触圧を小さくできる。その結果、接触部によって圧電振動板の振動が阻害されることを防止でき、圧電発音体の音圧を向上させることができる。
【0013】
また、接触部の剛性を、立ち上がり部の剛性より高くすることによって、接触部を確実に圧電振動板に接触させることができる。
【0014】
好ましくは、前記導電端子が、前記外側部と、前記固定部と、前記立ち上がり部と、前記接触部と、から構成される一体物である。
【0015】
一つの金属ピン等を成形加工することによって、外側部、固定部、立ち上がり部、および接触部を一体的に有する導電端子を得ることができる。その結果、圧電発音体の製造に要する部品数、製造工数、および製造コストを削減することができる。
【0016】
好ましくは、前記接触部の長手方向に垂直な断面が、略円形である。
【0017】
また、好ましくは、前記接触部の先端が屈曲し、
前記接触部の先端と前記圧電振動板とが略平行であり、
前記接触部の先端と前記圧電振動板とが線接触する。
【0018】
本発明においては、接触部は、略円形の断面を有する略円柱状の構造を有する。すなわち、接触部は、その長軸方向に対して回転対称性を有する。また、接触部の先端が屈曲し、接触部の先端と圧電振動板とが略平行な位置関係にある。従って、圧電振動板に対する接触部の向きが多少変動したとしたも、接触部の先端の側面と、圧電振動板とを、常に線接触させることができる。その結果、接触部と圧電振動板との導通不良を防止することができ、圧電発音体の振動特性を安定化させることができる。また、圧電振動板へ線接触させる接触部の側面は、滑らかな円曲面であるため、接触部(の先端)によって、圧電振動板が削り取られることがない。その結果、接触部と圧電振動板との導通不良を防止することができる。
【0019】
好ましくは、前記立ち上がり部の少なくとも一部において、板状の構造を有する平坦部が形成されている。
【0020】
立ち上がり部に平坦部を形成すると、平坦部において立ち上がり部の曲げ剛性が低くなる。従って、導電端子は、圧電振動板の振動に応じて、立ち上がり部に形成された平坦部において容易に曲がる。その結果、圧電振動板に当接された接触部の接触圧によって、圧電振動板の振動が阻害されず、圧電発音体の音圧を向上させることができる。
【0021】
好ましくは、前記平坦部が前記導電端子の長手方向に沿って形成されている。
【0022】
円柱状(丸ピン状)の導電端子の一部をプレス加工することによって、端子の長手方向に沿って、平坦部を容易に形成することができる。その結果、従来の板バネ状(平ピン)の導電端子を製造する場合に比べて、導電端子の製造コストを削減することができる。さらに、平坦部を有する導電端子は、板バネ状の金属端子より低価であるにもかかわらず、板バネ状の金属端子と同様に柔軟なバネとして機能することができるため、圧電発音体の音圧を向上させることができる。
【0023】
好ましくは、前記立ち上がり部の少なくとも一部の外径が、前記接触部の外径より小さい。
【0024】
立ち上がり部の外径を接触部の外径より小さくすることによって、立ち上がり部の曲げ剛性が低くなる。従って、圧電振動板の振動に伴い、導電端子は、立ち上がり部において容易に曲がる。その結果、圧電振動板に当接された接触部の接触圧によって、圧電振動板の振動が阻害されることなく、圧電発音体の音圧を向上させることができる。
【0025】
好ましくは、前記ケースの内壁において、前記導電端子を所定の方向へ導くガイド用凸部が形成されている。
【0026】
ガイド用凸部によって、各導電端子を所定の方向に容易に固定することができる。その結果、接触部を圧電振動板の所定位置に精密かつ安定的に接触させることができ、圧電発音体の振動特性を安定させることができる。
【0027】
好ましくは、熱かしめによって、前記固定部が前記ケースに固定されている。また、好ましくは、前記ケースの内壁において、熱かしめ用凸部が形成されている。
【0028】
熱かしめによって、固定部をケースに強固に固定することができ、固定部(導電端子)がケースから抜け落ちることを防止できる。また、ケースが熱かしめ用凸部を有することによって、固定部の熱かしめを確実に行うことができる。
【0029】
好ましくは、インサート成形によって、前記固定部が前記ケースに一体的に固定されている。
【0030】
すなわち、固定部(導電端子の一部分)をケースに埋め込むことによって、固定部をケースに強固に固定することができ、固定部(導電端子)がケースから抜け落ちることを防止できる。
【0031】
好ましくは、前記ケースの内壁にガイド溝が形成され、
前記ガイド溝の中に、前記導電端子の少なくとも一部が位置する。
【0032】
ガイド溝によって、各導電端子を、所定の方向に容易に固定することができる。その結果、各接触部を圧電振動板の所定位置に精密かつ安定的に接触させることができ、圧電発音体の振動特性を安定させることができる。また、ガイド溝の深さ分だけ、圧電発音体を低背化できる。さらには、圧電振動板に対する接触部の接触圧を小さくすることができ、音圧を向上させることができる。また、組み立て前の導電端子の高さを高くでき、接触部と圧電振動板との接触不良を防止できる。
【0033】
好ましくは、前記立ち上がり部が、前記ケースの内壁面との同一面、または前記内壁面より凹んだ位置を起点として、前記圧電振動板へ向かって伸びる。
【0034】
その結果、圧電発音体をより低背化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る圧電発音体の概略断面図、
図2は、本発明の一実施形態に係る圧電発音体が有するケース本体をZ方向(ケース内部)から見た概略図、
図3は、本発明の一実施形態に係る圧電発音体が有するケース蓋をZ方向(ケース内部)から見た概略図、
図4は、本発明の一実施形態に係る圧電発音体が有するケース蓋をZ方向(ケース外部)から見た概略図、
図5は、本発明の一実施形態に係る圧電発音体が有する導電端子の斜視図、
図6は、本発明の一実施形態に係る完成前の導電端子の斜視図、
図7は、本発明の他の実施形態に係る圧電発音体を、ケース蓋の面方向および導電端子の長軸方向に対して垂直な方向に切断した場合の断面図であって、ケース蓋の内壁に形成されたガイド溝およびガイド用凸部を示す断面図、
図8は、本発明の他の実施形態に係る圧電発音体が有する導電端子およびケース蓋の概略断面図、
図9は、本発明の他の実施形態に係る圧電発音体が有する導電端子およびケース蓋の概略断面図である。
【0036】
(圧電発音体2の全体構成)
本発明の一実施形態に係る圧電発音体2は、図1に示すように、ケース10と、圧電振動板4と、一対の導電端子(第1導電端子12Aおよび第2導電端子12B)と、から構成される。ケース10は、ケース本体10aとケース蓋10bとから構成される。ケース10の内部には圧電振動板4が保持されている。圧電振動板4は、円盤状の金属板4aに圧電振動子4dを接着剤で張り合わせた構造を有する。圧電振動子4dは、電極4b,4cを形成した構造を有する。金属板4aが電極4bを兼ねても良い。一対の第1導電端子12Aおよび第2導電端子12Bは、ケース蓋10bに固定されている。第1導電端子12Aは、圧電振動板4の圧電振動子4d(が有する電極4c)に接触し、電気的に接続している。また、第2導電端子12Bは、圧電振動板4の金属板4aに接触し、電気的に接続している。
【0037】
第1導電端子12Aと第2導電端子12Bとの間に交流電圧を印加することによって、圧電振動子4dはX方向に伸縮振動する。圧電振動子4dの伸縮振動に伴い、金属板4a(圧電振動板4全体)がZ方向に振動し、発音する。
【0038】
(ケース本体10a)
ケース本体10aは、図2に示すように、XY面方向において円形の構造を有する。XY方向におけるケース本体10aの直径は、特に限定されないが、通常、10〜30mm程度である。また、ケース本体10aの高さ(Z方向の高さ)は、特に限定されないが、通常3〜15mm程度である。
【0039】
XY面方向におけるケース本体10aの略中心部には、放音孔14が形成されている。XY面方向における放音孔14の孔径は、特に限定されないが、通常2〜10mm程度である。
【0040】
図1に示すように、Z方向におけるケース本体10aの略中間部には、ケース段差部16が形成されている。図2に示すように、ケース段差部16は、XY面方向においてケース本体10aの外周に沿って形成されている。
【0041】
図2に示すように、ケース本体10aの外周端部18においては、ケース本体10aの内部から外部へ貫通する音圧制動孔20が、等間隔で形成されている。音圧制動孔20によって、圧電発音体2の共振周波数を調整することができる。また、音圧制動孔20を形成することによって、ケース本体10aにケース蓋10bを嵌合し易くなる。
【0042】
外周端部18の内側においては、予備孔22が、等間隔で形成されている。仮に、ケース本体10aとケース蓋10bとの嵌合が緩い場合、予備孔22に接着剤を注入することによって、ケース本体10aとケース蓋10bとを強固に接着することができる。
【0043】
ケース本体10aの材質としては、特に限定されないが、通常、合成樹脂等を用いる。
【0044】
(ケース蓋10b)
図3、図4には、説明の便宜上、第1導電端子12Aおよび第2導電端子12Bが固定される以前のケース蓋10bを示す。
【0045】
ケース蓋10bは、XY面方向において円形の構造を有する。XY方向におけるケース蓋の直径は、ケース本体10aとほぼ同等である。
【0046】
ケース蓋10bは、第1導電端子12Aおよび第2導電端子12Bをケースの内部から外部へと貫通させるための一対の端子貫通孔24a,24bを有する。
【0047】
図3に示すように、ケース蓋10bの外周においては、圧電振動板4を支持するための外周凸部28が形成されている。
【0048】
図4に示すように、ケース蓋10bの裏面8bにおいては、第1ボス部30a、30b、および第2ボス部32が形成されている。その結果、圧電発音体2を回路基板等に実装する際に、圧電発音体2を基板面に対して安定させることができる。また、各ボス部を基板面に密着させることによって、ハンダ工程に用いるフラックスが、端子貫通孔24a,24bからケース10内部へ逆流することを防止できる。
【0049】
ケース蓋10bの材質としては、特に限定されないが、通常、ケース本体10aと同様の合成樹脂等を用いる。
【0050】
図3に示すように、ケース蓋10bの表面8aには、一対のガイド溝26a,26bが形成されている。ガイド溝26aの中には、第1導電端子12Aが配置され、ガイド溝26bの中には、第2導電端子12Bが配置される。なお、図1においては、ガイド溝26a,26bの図示を省略している。
【0051】
ガイド溝26a、26bによって、第1導電端子12A、第2導電端子12Bをそれぞれ、所定の方向に容易に固定することができる。その結果、各接触部124a、124bをそれぞれ圧電振動板4の所定位置に精密かつ安定的に接触させることができ、圧電発音体2の振動特性を安定させることができる。また、ガイド溝26a、26bの深さ分だけ、圧電発音体2を低背化できる。さらには、圧電振動板4に対する接触部124a、124bの接触圧を小さくすることができ、音圧を向上させることができる。また、組み立て前の導電端子12A、12Bの高さを高くできるため、接触部124a、124bと圧電振動板との接触不良を防止できる。
【0052】
(圧電振動板4)
圧電振動板4は、図1に示すように、金属板4aと、両面に電極4b,4cが被着形成された圧電振動子4dと、から構成される。圧電振動子4dは、電極4bを介して、金属板4aへ接着されている。金属板4a、電極4b,4c、および圧電振動子4dは、導電性接着剤等により互いに接着される。
【0053】
金属板4aの材質としては、特に限定されないが、通常Ni合金等を用いる。
【0054】
電極4b,4cの材質としては、特に限定されないが、通常Ag等を用いる。
【0055】
圧電振動子4dの材質としては、圧電振動性を有するものであれば特に限定されないが、通常、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の強誘電体セラミックスを用いる。
【0056】
金属板4a、電極4b,4c、および圧電振動子4dの各形状は、特に限定されないが、通常、XY面方向において同心円状の構造を有する。XY面方向において、金属板4aの直径は、電極4b,4cの直径、および圧電振動子4dの直径より大きく、電極4b,4cの直径は、圧電振動子4dの直径以下である。
【0057】
XY面方向における金属板4aの直径は、特に限定されないが、通常8〜28mm程度である。また、金属板4aの厚み(Z方向の厚み)は、特に限定されないが、通常30〜300μm程度である。
【0058】
XY面方向における圧電振動子4dの直径は、特に限定されないが、通常5〜25mm程度である。また、圧電振動子4dの厚み(Z方向の厚み)は、特に限定されないが、通常50〜300μm程度である。
【0059】
電極4b,4cの厚み(Z方向の厚み)は、特に限定されないが、通常5〜20μm程度である。
【0060】
図1に示すように、金属板4aの外周部が、ケース本体10aの段差部16と、ケース蓋10bの外周凸部28とに挟まれることによって、圧電振動板4全体がケース10の内部に保持、固定される。なお、外周凸部28は、金属板4aの外周部に対して線接触している。その結果、圧電振動板4の振動が、外周凸部28の接触によって阻害され難くなる。
【0061】
(導電端子12A,12B)
図1、図5に示すように、第1導電端子12Aは、外側部121aと、固定部122aと、立ち上がり部123aと、接触部124aと、から構成される一体物である。同様に、第2導電端子12Bも、外側部121bと、固定部122bと、立ち上がり部123bと、接触部124bと、から構成される一体物である。なお、各導電端子の材質としては、導電材であれば特に限定されないが、本実施形態においては金属を用いる。
【0062】
第2導電端子12Bは、その接触部124bが金属板4aに接触し、電気的に接続していること以外は、形状および圧電発音体10内における配置が第1導電端子12Aと同じである。よって、以下では、主として第1導電端子12Aについて説明する。
【0063】
図1に示すように、第1導電端子12Aが有する外側部121aは、ケース蓋10b(図3,4の端子貫通孔24a)を貫通し、ケース10の内部から外部へ突出している。
【0064】
第1導電端子12Aは、固定部122aにおいて、熱かしめによってケース蓋10bの表面8aに固定される。好ましくは、ケース蓋10bの表面8aに熱かしめ用凸部34が形成されている。
【0065】
、熱かしめによって、固定部122aをケース蓋10bに強固に固定することができ、固定部122a(第1導電端子12A)がケース10から抜け落ちることを防止できる。また、ケース蓋8が熱かしめ用凸部34を有することによって、固定部122aの熱かしめを確実に行うことができる。
【0066】
立ち上がり部123aは、固定部122aを起点として、圧電振動板4へ向かって斜め方向に伸びる。
【0067】
図5に示すように、第1導電端子12Aが有する立ち上がり部123aの全体において、板状の構造を有する平坦部125aが形成されている。すなわち、本実施形態においては、立ち上がり部123a全体が平坦部125aである。なお、本実施形態では、第2導電端子12Bにおける立ち上がり部123bの全体も、平坦部125bである。
【0068】
立ち上がり部123aの全体に平坦部125aを形成すると、立ち上がり部123a(平坦部125a)全体の曲げ剛性が、接触部124aの曲げ剛性より低くなる。従って、第1導電端子12Aは、圧電振動板4の振動に応じて、立ち上がり部123a(平坦部125a)において容易に曲がる。その結果、圧電振動板4において圧電振動板4(電極4c)に当接された接触部124aの接触圧によって、圧電振動板4の振動が阻害されることがなく、圧電発音体2の音圧を向上させることができる。
【0069】
好ましくは、図1、図5に示すように、平坦部125aが第1導電端子12Aの長手方向に沿って形成されている。
【0070】
図6に示すように、円柱状(丸ピン状)の金属ピン12Cの一部をプレス加工することによって、金属ピン12Cの長手方向に沿って、平坦部125aを容易に形成することができる。この金属ピン12cをさらに成形加工することによって、外側部121a、固定部122a、立ち上がり部123a(平坦部125a)、および接触部124aを一体的に有する第1導電端子12A(図5)を得ることができる。その結果、従来の板バネ状の導電端子を製造する場合に比べて、第1導電端子12Aおよび圧電発音体2の製造に要する部品数、製造工数、および製造コストを削減することができる。
【0071】
さらに、平坦部125aを有する第1導電端子12Aは、板バネ状の金属端子より低価であるにもかかわらず、板バネ状の金属端子と同様に柔軟なバネとして機能することができるため、圧電発音体2の音圧を向上させることができる。
【0072】
図1に示すように、接触部124aは、立ち上がり部123aの先端に位置する。接触部124aの先端は屈曲しており、接触部124aの先端と圧電振動板4とは平行である。また、接触部124aの長手方向に垂直な断面は、図5に示すように、略円形である。よって、この接触部124aの先端と、圧電振動板4の電極4cとが線接触し、電気的に接続している。
【0073】
なお、図5に示すように、立ち上がり部123a(平坦部125a)を除く第1導電端子全体は、断面が略円形である金属ピンである。
【0074】
本実施形態においては、立ち上がり部123a(平坦部125a)の曲げ剛性を、接触部124aの曲げ剛性より低くすることによって、立ち上がり部123aが柔軟なバネとして機能する。よって、圧電振動板4の振動に応じて、第1導電端子12Aが立ち上がり部123aにおいて容易に曲がる。よって、圧電振動板4の振動時において、圧電振動板4に対する接触部124aの接触圧を小さくできる。その結果、接触部124aによって圧電振動板4の振動が阻害されることがなく、圧電発音体2の音圧を向上させることができる。また、接触部124aの曲げ剛性を、立ち上がり部123aの曲げ剛性より高くすることによって、接触部124aを確実に圧電振動板4に接触させることができる。
【0075】
本実施形態においては、接触部124aは、円形の断面を有する円柱状の構造を有する。すなわち、接触部124aは、その長軸方向に対して回転対称性を有する。また、接触部124aの先端が屈曲し、接触部124aの先端と圧電振動板4(電極4c)とが略平行な位置関係にある。従って、圧電振動板4に対する接触部124aの向きが多少変動したとしたも、接触部124aの先端の側面と、圧電振動板4(電極4c)とを、常に線接触させ、電気的に接続させることができる。その結果、接触部124aと圧電振動板4(電極4c)との導通不良を防止することができ、圧電発音体2の振動特性を安定化させることができる。また、圧電振動板4(電極4c)へ線接触させる接触部124aの側面は、滑らかな円曲面であるため、接触部124aによって、圧電振動板4(電極4c)が削り取られることがない。その結果、接触部124a(第1導電端子12A)と圧電振動板4(電極4c)との導通不良を防止することができる。
【0076】
本実施形態においては、立ち上がり部123a(平坦部125a)を除く第1導電端子12Aの全体が、丸ピン状(断面が略円形)であるため、全体が平ピン状の導電端子より高強度を有する。その結果、圧電発音体2の製造、回路基板への実装の際に、第1導電端子12Aが破損し難い。第2導電端子12Bについても同様である。
【0077】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0078】
例えば、上述の実施形態では、第1導電端子12Aおよび第2導電端子12Bのそれぞれにおいて、立ち上がり部に平坦部を有し、立ち上がり部の曲げ剛性が、接続部の曲げ剛性より低かったが、第1導電端子12Aのみが、立ち上がり部123aに平坦部125aを有してもよい。すなわち、少なくとも、圧電振動板4において振幅の大きい中心部付近に接触する第1導電端子12Aにおいて、立ち上がり部123aの曲げ剛性を、接続部124aの曲げ剛性より低くすればよい。この場合も上述の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
第1導電端子12Aの立ち上がり部123aに平坦部125aを形成する代わりに、立ち上がり部123aの少なくとも一部の外径を、接触部124aの外径より小さくしてもよい。第2導電端子12Bについても同様である。
【0080】
立ち上がり部123aの外径を接触部124aの外径より小さくすることによって、立ち上がり部123aの曲げ剛性が、接触部124aより低くなる。従って、圧電振動板4の振動に伴い、第1導電端子aは、立ち上がり部123aにおいて容易に曲がる。その結果、圧電振動板4に当接された接触部124aの接触圧によって、圧電振動板4の振動が阻害されることがなく、圧電発音体2の音圧を向上させることができる。
【0081】
図7に示すように、ケース蓋10bの表面8aにおいて、第1導電端子12Aを、所定の方向へ導くガイド用凸部70が形成されていてもよい。ガイド用凸部70によって、第1導電端子12Aを所定の方向に容易に固定することができる。その結果、接触部124aを圧電振動板4(電極4c)の所定位置に精密かつ安定的に接触させることができ、圧電発音体2の振動特性を安定させることができる。なお、ケース蓋10bの表面8aに、第2導電端子12Bを所定の方向へ導くガイド用凸部が形成されていてもよい。
【0082】
インサート成形によって、各固定部122a、122bがケース蓋10bに一体的に固定されていてもよい。
【0083】
すなわち、各固定部122a、122b(各導電端子12A、12Bの一部分)をケース蓋10bに埋め込むことによって、各導電端子12A、12Bをケース蓋10bに強固に固定することができ、各導電端子12A、12Bがケースから抜け落ちることを防止できる。
【0084】
図8に示すように、第1導電端子12Aの立ち上がり部123aが、ケース蓋10bの表面8aと同一の面を起点として、圧電振動板4へ向かって伸びていてもよい。または、図9に示すように、立ち上がり部123aが、ケース蓋10bの表面8aより凹んだ位置を起点として、圧電振動板4へ向かって伸びていてもよい。その結果、圧電発音体2を、より低背化できる。第2導電端子12Bの立ち上がり部123bについても同様であってよい。
【実施例】
【0085】
次に、本発明をさらに具体的な実施例に基づき説明するが、本発明は、この実施例に限定されない。
【0086】
実施例1
実施例1においては、第2導電端子12Bの立ち上がり部123bに平坦部が形成されてないこと以外は、図1に示す圧電発音体2と同様の圧電発音体サンプル1〜10を作製した。なお、第1導電端子12Aの平坦部125aは、円形の断面を有する金属ピンをプレス成形することによって形成した。また、実施例1の各サンプルの寸法は以下の通りとした。
XY方向におけるケース本体10aの直径:21.25mm、
ケース本体10aの高さ(Z方向の高さ):11mm、
ケース10の直径:22mm
放音孔14の孔径:7mm、
XY面方向における金属板4aの直径:20mm、
金属板4aの厚み(Z方向の厚み):200μm、
XY面方向における圧電振動子4dの直径:15mm、
圧電振動子4dの厚み(Z方向の厚み):200μm。
【0087】
次に、実施例1の各サンプルの音圧(単位:dBA/10cm)を測定した。また、各サンプルから、音圧の平均値AVE、最大値MAX、および最小値MINを求めた。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
比較例1
比較例1においては、第1導電端子12Aおよび第2導電端子12Bのいずれの立ち上がり部123a、123bにおいても、平坦部が形成されてないこと以外は、実施例1と同様の構造を有する圧電発音体サンプル1〜10を作製した。すなわち、 比較例1においては、円形の断面を有する金属ピンを曲げ成形しただけの第1導電端子および第2導電端子を用いた。また、比較例1のサンプル1〜10に対して、実施例1と同様に音圧の評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
比較例2
比較例2においては、実施例1で用いた導電端子よりも高価である平ピンを曲げ成形して得られる第1導電端子および第2導電端子を用いたこと以外は、実施例1と同様の圧電発音体サンプル1〜10を作製した。また、比較例2のサンプル1〜10に対して、実施例1と同様に音圧の評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
評価
第1導電端子12Aが曲げ剛性の低い平坦部125aを有する実施例1の圧電発音体2は、各導電端子に平坦部が形成されていない比較例1に比べて、音圧が高いことが確認された。
【0092】
また、実施例1の圧電発音体2においては、実施例1で用いた導電端子よりも高価である平ピン状の導電端子を有する比較例2と同等の音圧が得られることが確認できた。さらに、実施例1の圧電発音体は、立ち上がり部123a(平坦部125a)を除く第1導電端子12Aの全体が、丸ピン状(断面が略円形)であるため、平ピン状の導電端子を用いた比較例2より高強度を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る圧電発音体の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る圧電発音体が有するケース本体をZ方向(ケース内部)から見た概略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る圧電発音体が有するケース蓋をZ方向(ケース内部)から見た概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る圧電発音体が有するケース蓋をZ方向(ケース外部)から見た概略図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る圧電発音体が有する導電端子の斜視図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る完成前の導電端子の斜視図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施形態に係る圧電発音体を、ケース蓋の面方向および導電端子の長手方向に対して垂直な方向に切断した場合の断面図であって、ケース蓋の内壁に形成されたガイド溝およびガイド用凸部を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態に係る圧電発音体が有する導電端子およびケース蓋の概略断面図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施形態に係る圧電発音体が有する導電端子およびケース蓋の概略断面図である
【符号の説明】
【0094】
2… 圧電発音体
4… 圧電振動板
4a… 金属板
4b,4c… 電極
4d… 圧電振動子
10… ケース
10a… ケース本体
10b… ケース蓋
12A… 第1導電端子
12B… 第2導電端子
121a,121b… 外側部
122a,122b… 固定部
123a,123b… 立ち上がり部
124a,124b… 接触部
125a,125b… 平坦部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動板と、
前記圧電振動板を内部に保持するケースと、
前記圧電振動板に電気的に接続する一対の導電端子と、を有する圧電発音体であって、
前記一対の導電端子のうち少なくともいずれかが、
前記ケースを貫通し、前記ケースの内部から外部へ突出する外側部と、
前記ケースに固定される固定部と、
前記固定部から前記圧電振動板へ向かって伸びる立ち上がり部と、
前記立ち上がり部の略先端に位置し、前記圧電振動板に接触する接触部と、を有し、
前記立ち上がり部の少なくとも一部のばね定数が、前記接触部のばね定数より低い圧電発音体。
【請求項2】
前記立ち上がり部全体のばね定数が、前記接触部のばね定数より低いことを特徴とする請求項1に記載の圧電発音体。
【請求項3】
前記導電端子が、前記外側部と、前記固定部と、前記立ち上がり部と、前記接触部と、から構成される一体物であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電発音体。
【請求項4】
前記接触部の断面が、略円形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項5】
前記立ち上がり部の少なくとも一部において、板状の構造を有する平坦部が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項6】
前記平坦部が前記導電端子の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電発音体。
【請求項7】
前記立ち上がり部の少なくとも一部の外径が、前記接触部の外径より小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項8】
前記ケースの内壁において、前記導電端子を所定の方向へ導くガイド用凸部が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項9】
熱かしめによって、前記固定部が前記ケースに固定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項10】
前記ケースの内壁において、熱かしめ用凸部が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の圧電発音体。
【請求項11】
インサート成形によって、前記固定部が前記ケースに一体的に固定されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項12】
前記ケースの内壁にガイド溝が形成され、
前記ガイド溝の中に、前記導電端子の少なくとも一部が位置することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項13】
前記立ち上がり部が、前記ケースの内壁面との同一面、または前記ケースの内壁面より凹んだ位置を起点として、前記圧電振動板へ向かって伸びることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の圧電発音体。
【請求項14】
前記接触部の先端が屈曲し、
前記接触部の先端と前記圧電振動板とが略平行であり、
前記接触部の先端と前記圧電振動板とが線接触することを特徴とする請求項1〜13に記載の圧電発音体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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