説明

圧電素子およびその製造方法ならびに圧電アクチュエーター、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置

【課題】高い信頼性を持つ圧電素子,圧電アクチュエーター、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置、ならびに圧電素子の製造方法等を提供する。
【解決手段】本発明に係る圧電素子は、第1電極と第2電極とによって挟まれた圧電体層を有する圧電素子であって、前記第1電極は、前記圧電体層側の第1の面を有する第1導電層と、前記第1の面において形成され、前記第1の面側の第2の面を有する第2導電層と、を含み、前記第1の面の法線方向から見て、互いにオーバーラップする、前記第1電極、前記圧電体層および前記第2電極から構成される部分を、駆動部としたとき、前記第2導電層の少なくとも一部は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に配置され、前記第2の面の面積は、前記駆動部内の前記第1の面の面積よりも小さく、前記第2導電層は、ニッケル酸ランタンを主成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子およびその製造方法ならびに圧電アクチュエーター、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、画像記録装置およびディスプレー製造装置等に用いることができるインクジェットプリンター等の液体噴射装置の液体噴射ヘッドや、各種圧電アクチュエーターにおいて、圧電素子を用いること知られている。
【0003】
圧電素子は、例えば、下部電極上に圧電体層を形成し、圧電体層を覆うように上部電極を形成して得ることができる。ここで、例えば、下部電極を構成する導電層の圧電体層と接する最上層を、ニッケル酸ランタンを含むように形成し、圧電体層の配向度を制御することによって、圧電体層の圧電特性を向上させることが知られている(特許文献1)。
【0004】
このような圧電素子では、実際の駆動時、下部電極の端部周辺は、応力が集中しやすい。また、ニッケル酸ランタンの上方に形成される圧電体層は、圧電特性が向上している他、ニッケル酸ランタン成分が拡散し、耐電圧が低下している。
【0005】
上記の理由により、このような圧電素子において、下部電極の端部周辺の圧電体層でクラックや焼損といった破壊が生じてしまうことがある。よって、このような圧電素子で、クラック等の物理的破壊が生じにくく、信頼性の高い圧電素子が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−269958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のいくつかの態様によれば、信頼性が向上した圧電素子と、その製造方法、並びに、この圧電素子を含む、圧電アクチュエーター、液滴噴射ヘッド及び液滴噴射装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る圧電素子は、
第1電極と第2電極とによって挟まれた圧電体層を有する圧電素子であって、
前記第1電極は、前記圧電体層側の第1の面を有する第1導電層と、前記第1の面において形成され、前記第1の面側の第2の面を有する第2導電層と、を含み、
前記第1の面の法線方向から見て、互いにオーバーラップする、前記第1電極、前記圧電体層および前記第2電極から構成される部分を、駆動部としたとき、
前記第2導電層の少なくとも一部は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に配置され、
前記第2の面の面積は、前記駆動部内の前記第1の面の面積よりも小さく、
前記第2導電層は、ニッケル酸ランタンを主成分とする。
【0009】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下「B」という)を形成する」などと用いている。本発明に係る記載では、この例のような場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。同様に、「下方」という文言は、A下に直接Bを形成するような場合と、A下に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとする。
【0010】
本発明によれば、第2導電層の少なくとも一部は、駆動部内の第1の面の外周辺よりも内側に配置されるため、ニッケル酸ランタンを主成分とする第2導電層の第2の面の面積が、駆動部内の第1の面の面積よりも小さい圧電素子を提供することができる。このような圧電素子によれば、圧電体層の第2導電層と第2電極との間に形成された部分の少なくとも一部を、駆動部の内側に形成ことができる。また、駆動部の境界部分には、第2導電層と第2電極の間に形成された部分よりも耐電圧が高い圧電体層を形成することができる。さらに、駆動部の境界部分には、第2導電層と第2電極の間に形成された部分よりも変位特性の低い圧電体層を形成することができる。したがって、第1導電層の端部などにより規定される駆動部の境界部分において、圧電体層の応力を緩和し、耐電圧を向上させることができるため、圧電素子の信頼性を向上させることができる。
【0011】
(2)本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体層において、前記第2導電層と、前記第2電極と、によって挟まれた部分を第1の部分としたとき、
前記第1の部分の(100)方向の配向率は、前記圧電体層の前記第1の部分以外の第2の部分の(100)方向の配向率よりも大きくてもよい。
【0012】
(3)本発明に係る圧電素子において、
前記圧電体層は、前記第1の面の上方であって、かつ、前記第2導電層の端部と隣接する領域において、空孔を有していてもよい。
【0013】
これによれば、応力が集中しやすい第1導電層の端部において、応力を吸収する空孔を形成することができる。したがって、圧電素子の信頼性をより向上させることができる。
【0014】
(4)本発明に係る圧電アクチュエーターにおいて、
前記第1導電層は、前記第1の面と反対側の第3の面と、
前記第1の面と前記第3の面とを連続する第4の面と、
をさらに有し、
前記第3の面および前記第4の面が形成する角度は、50°以下であってもよい。
【0015】
これによれば、第3の面と第4の面とによって形成される角部の角度をより大きくすることができ、駆動部の境界部分における電界の集中を緩和することができる。したがって、より信頼性が向上した圧電素子を有する圧電アクチュエーターを提供することができる。
【0016】
(5)本発明に係る圧電アクチュエーターは、
振動板と、
前記振動板の上に、上記いずれかの圧電素子と、
を有する。
【0017】
本発明によれば、信頼性が向上した圧電素子を有する圧電アクチュエーターを提供することができる。
【0018】
(6)本発明に係る圧電アクチュエーターは、
振動板と、
前記振動板の上において、第1の方向において複数配置された、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧電素子と、
を有する圧電アクチュエーターであって、
前記第1電極は、前記振動板の上で、前記第1の方向に延び、複数の前記圧電素子の共通電極となるように形成され、
前記圧電体層は、前記第1電極の上において、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びるように形成され、
前記第2電極は、前記圧電体層の上において、前記第2の方向に延びるように形成され、かつ、前記第1電極の少なくとも一部とオーバーラップし、
前記第2導電層の前記第2の方向における少なくとも一方の端部は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に位置する。
【0019】
本発明によれば、信頼性が向上した圧電素子を有する圧電アクチュエーターを提供することができる。
【0020】
(7)本発明に係る圧電アクチュエーターにおいて、
前記第2導電層の前記第1の方向における少なくとも一方の端部は、前記第1の面において、前記駆動部の境界部分よりも内側に位置していてもよい。
【0021】
(8)本発明に係る圧電アクチュエーターは、
振動板と、
前記振動板の上において、第1の方向において複数配置された、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧電素子と、
を有する圧電アクチュエーターであって、
前記第1電極は、前記振動板の上で、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びるように形成され、
前記圧電体層は、前記第2の方向に延び、かつ、前記振動板の上方において前記第1電極を覆うように形成され、
前記第2電極は、前記圧電体層の上において、前記第1電極の少なくとも一部とオーバーラップし、かつ、複数の前記圧電素子の共通電極となるように形成され、
前記第2導電層の前記第2の方向における少なくとも一方の端部は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に位置する。
【0022】
本発明によれば、信頼性が向上した圧電素子を有する圧電アクチュエーターを提供することができる。
【0023】
(9)本発明に係る圧電アクチュエーターにおいて、
前記第2導電層の前記第1の方向における少なくとも一方の端部は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に位置していてもよい。
【0024】
(10)本発明に係る液体噴射ヘッドは、
上記のいずれかの圧電アクチュエーターを含む。
【0025】
本発明によれば、信頼性が向上した圧電素子を有する圧電アクチュエーターを備えた液体噴射ヘッドを提供することができる。
【0026】
(11)本発明に係る液体噴射装置は、
上記の液体噴射ヘッドを含む。
【0027】
本発明によれば、信頼性が向上した圧電素子を有する液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置を提供することができる。
【0028】
(12)本発明に係る圧電素子の製造方法は、
基板の上に、前記基板側の面とは反対側の第1の面を有する、第1導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜の前記第1の面の上に、前記第1の面側の第2の面を有する第2導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜および前記第2導電膜をパターニングして、第1導電層および第2導電層を有する第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上に、第1圧電体材料膜を形成し、前記第1圧電体材料膜を熱処理して結晶化させる工程と、
結晶化した前記第1圧電体材料膜をパターニングして、第1圧電体層を形成する工程と、
前記第1圧電体層の上に、第3導電膜を形成する工程と、
前記第3導電膜をパターニングして、前記第1圧電体層を介して前記第1電極の少なくとも一部とオーバーラップする第2電極を形成する工程と、
を含み、
前記第1の面の法線方向から見て、互いにオーバーラップする、前記前記第1電極、前記圧電体層および前記第2電極から構成される部分を、駆動部としたとき、
前記第2導電層は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に配置され、
前記第2の面の面積は、前記駆動部内の前記第1の面の面積よりも小さく、
前記第2導電層は、ニッケル酸ランタンを主成分とする。
【0029】
本発明によれば、信頼性が向上した圧電素子の製造方法を提供することができる。
【0030】
(13)本発明に係る圧電素子の製造方法において、
前記第2導電膜を形成する工程の後に、前記第2導電膜の上方に第2圧電体材料膜を形成し、前記第2圧電体材料膜を熱処理し、パターニングすることによって第2圧電体層を形成する工程と、
前記第1導電膜および前記第2導電膜をパターニングする工程において、第2導電膜の前記第2圧電体層に覆われた一部をサイドエッチングすることによって、前記第1の面の上方であって、かつ、前記第2導電層の端部と隣接する領域において、前記第1導電層と前記第2圧電体層との間に前記第2導電層が形成されない領域を形成する工程と、
前記第1電極の上方に第1圧電体材料膜を形成して、熱処理によって結晶化させる工程において、前記領域において空孔を形成する工程と、
を更に含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す平面図。
【図1B】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図1C】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図1D】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す拡大断面図。
【図2A】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す平面図。
【図2B】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図3A】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す平面図。
【図3B】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図3C】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図4A】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図4B】本実施形態に係る圧電素子を模式的に示す断面図。
【図5】本実施形態に係る圧電素子の製造方法を模式的に示す断面図。
【図6】本実施形態に係る圧電素子の製造方法を模式的に示す断面図。
【図7】本実施形態に係る圧電素子の製造方法を模式的に示す断面図。
【図8】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す断面図。
【図9】本実施形態に係る液体噴射ヘッドを模式的に示す分解斜視図。
【図10】本実施形態に係る液体噴射装置を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明を適用した実施形態の一例について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。本発明は、以下の実施形態およびその変形例を自由に組み合わせたものを含むものとする。
【0033】
1. 圧電素子および圧電アクチュエーター
1.1 第1実施形態
以下、図面を参照して、第1実施形態に係る圧電素子100について説明する。
【0034】
図1Aは、第1実施形態に係る圧電素子100の一例を模式的に示す平面図である。図1Bおよび図1Cは、第1実施形態に係る圧電素子100を模式的に示す断面図であり、図1Bは、図1AのIB−IB線に対応し、図1Cは、図1AのIC−IC線に対応する。また、図1Dは、第1電極10の端部を模式的に説明するための図である。
【0035】
本実施形態に係る圧電素子100は、第1電極20と第2電極40とによって挟まれた圧電体層30を有する圧電素子であって、第1電極20は、圧電体層30側の第1の面22を有する第1導電層21と、第1の面22において形成され、第1の面22側の第2の面27を有する第2導電層26と、を含む。
【0036】
本実施形態にかかる圧電素子100が形成される基板が、後述される振動板10である場合、振動板10と、圧電素子100と、で圧電アクチュエーター101と称することができる。詳細は後述される。
【0037】
ここで、図1Bに示すように、第1の面22の法線方向から見て、互いにオーバーラップする、第1電極20、圧電体層30および第2電極40から構成される部分を、駆動部50(図1Bの太字破線で示される部分)と定義する。
【0038】
また、図1Aに示すように、圧電体層30および第2電極40が延びる方向を第2の方向120とし、第2の方向120に交差する方向を、第1の方向110とする。第1の方向110は、第2の方向120と直交する方向であってもよい。また、図示はされないが、第1の方向110において、複数の圧電素子100が配置されていてもよい。
【0039】
図1Aから図1Cに示すように、圧電素子100は、支持体となる基板10の上方に形成されることができる。基板10が、例えば後述される振動板である場合、基板10および圧電素子100を含む構造体を、圧電アクチュエーター101と称してもよい。
【0040】
基板10は、プレート状の部材であって、図1Aに示すように、圧電素子100側の上面11と、上面11と反対側の下面12を有する。基板10の上面11の法線方向から見た場合の平面視における形状は特に限定されない。基板10は、上面11において圧電素子100を支持する。
【0041】
基板10の材質としては、例えば、導電体、半導体、絶縁体などを例示することができる。ただし、少なくとも基板10の上面11は、基板10の上面11に第1電極20を形成することから、絶縁体であってもよい。より具体的には、基板10としては、例えば、単結晶シリコン基板を用いることができる。また、基板10に、第1電極20と電気的に接続するリード配線が含まれていてもよい(図示せず)。
【0042】
基板10は、例えば、可撓性を有し、圧電体層40の動作によって変形(屈曲)する振動板10であってもよい。基板10が振動板10である場合、振動板10の形状は、圧電アクチュエーターの形状に合わせて適宜設計することができる。振動板10の構造及び材料は、振動板10が、弾性および可塑性を有する限り、特に限定されない。例えば、振動板10は、図示されないが、複数の膜の積層体で形成されていてもよい。このとき、振動板10は、例えば、二酸化シリコン(SiO)と二酸化ジルコニウム(ZrO)を積層したものや、ニッケルなどの金属膜、ポリイミドなどの高分子材料膜などを含む積層体であってもよい。
【0043】
第1電極20は、図1Aおよび図1Bに示すように、振動板10の上面11の上に形成される。第1電極20は、後述される圧電体層30に電圧を印加するための一方の電極である。第1電極20は、図1Aに示すように、第1の方向110において延びるように形成され、複数の圧電素子100の共通電極として機能していてもよい。つまりは、図1Aに示すように、図示されない圧電素子50の第1電極を構成していてもよい。第1電極20は、図1Aに示すように、圧電体層30側の第1の面22と、第1の面22の反対側の第3の面23を有する第1導電層21と、第1の面22において形成され、第1の面22側の第2の面27を有する第2導電層26と、を含む。
【0044】
第1導電層21は、図1Aに示すように、基板10の上面11の上方に形成された、導電性を有するプレート状部材である。第1導電層21は、図1Bに示すように、第1の面22と第3の面23とを連続する第4の面24を有していてもよい。
【0045】
図1Bに示すように、第1導電層21は、第1の面22と第4の面24とが形成する第1の角部22aと、第3の面23と第4の面24とが形成する第2の角部23aと、を有していてもよい。図1Bに示すように、第2の角部23aの角度をαとするとき、角度αは、50°以下となるように形成されていてもよい。なお、第2の角部23aの角度に関する特徴は、本実施形態に限らず、後述されるその他の実施形態において、駆動部50の境界部分を規定する第2の角部23aが形成される場合、適宜適用することができる。
【0046】
ここで、図1Aに示すように、第1の角部22aは、第1の面22の法線方向から見た場合、第1の面22の外周辺22aであることができ、第2の角部23aは、第3の面23の外周辺23aであることができる。なお、本発明に係る記載では、「外周辺」という文言を、例えば、「特定の構成を、該構成の厚み方向から見た場合の外周辺」という意味で用いる。例えば、特定の構成Aの外周辺とは、構成Aの厚み方向から見た場合の、構成Aの外周辺を意味する。
【0047】
図1Bに示すように、第1導電層21の端部である外周辺23aが、駆動部50の境界部分を規定していてもよい。したがって、図1Bに示すように、第2の方向120における第1導電層21の第1の面22の外周辺22aは、駆動部50内に形成される。
【0048】
上述のように、第1電極20は、複数の圧電素子100の共通電極であってもよいため、第1導電層21は、図1Cに示すように、第1の方向110において延びるように形成されていてもよい。
【0049】
ここで、図1Dに示すように、第4の面24は、曲面であってもよい。例えば、図1Dに示すように、第4の面24は、第1導電層21の外部方向に向いた凸形状を有する曲面であってもよい。この場合、第1の面22と第4の面24は、明確な角部22aを形成することができない。したがって、第4の面24が、曲面である場合、図1Dに示すように、第1の面22と同一平面を形成する仮想面22bと、曲面である第4の面24との接続部(交点)を、第1の角部22a(外周辺22a)とすることができる。
【0050】
第1導電層21の構造および材質は、導電性を有し、ニッケル酸ランタン(LNO)を含まない限り、特に限定されない。例えば、第1導電層21は、単層で構成されていてもよい。あるいは、第1導電層21は、複数の導電層の積層体で構成されていてもよい。第1導電層21の材質は、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、それらの導電性酸化物および金(Au)などのいずれかを含む導電層であってもよい。
【0051】
また、第1導電層21は、図示されないリード部に電気的に接続されていてもよい。リード部は、図示しない駆動電圧発生回路または接地回路に接続されていてもよい。
【0052】
第2導電層26は、図1Aおよび図1Bに示すように、駆動部50内の第1導電層21の第1の面22の上方に形成された、導電性のプレート状部材である。第2導電層26は、図1Bに示すように、第1の面22側の第2の面27を有する。第2導電層26は、図1Bに示すように、第2の方向120における端部28を有する。端部28は、図1Aに示すように、第2の面27を法線方向から見た場合の、第2の面27の外周辺28である。図1Aおよび図1Bに示すように、端部28の少なくとも一部は、駆動部50内の第1の面22の外周辺22aよりも内側に位置するように形成される。したがって、駆動部50内における第2の面27の面積は、駆動部50内における第1の面22の面積よりも小さくなるように形成される。
【0053】
上述のように、第1電極20は、複数の圧電素子100の共通電極であってもよいため、第2導電層26は、図1Cに示すように、第1導電層21と同様、第1の方向110において延びるように形成されていてもよい。
【0054】
第2導電層26の構造および材質は、導電性を有し、ニッケル酸ランタン(LaNiO:LNO)を主成分とする限り、特に限定されない。ニッケル酸ランタンを主成分とした第2導電層26は、後述される圧電体層30を配向制御したい方向に配向制御されていることが好ましく、例えば、(100)方向に配向制御されている。
【0055】
圧電体層30は、図1Aおよび図1Bに示すように、第1および第2導電層21、26を有する第1電極20を駆動部50において覆うように形成される。圧電体層30の形状は、駆動部50において、第1電極20を覆うことができる限り、特に限定されない。図1Aに示すように、圧電体層30は、第2の方向120において延びるように形成されていてもよい。図1Bに示すように、圧電体層30は、上面31と、上面31から基板10の上面11へ連続するテーパー状の側面32を有していてもよい。圧電体層30は、圧電特性を有した多結晶体からなり、電圧が印加されることにより変形することができる。圧電体層30の構造及び材料は、圧電特性を有していればよく、特に限定されない。圧電体層30としては、公知の圧電材料を用いることができ、例えば、ペロブスカイト型酸化物の圧電材料を用いることができる。圧電体層30の圧電材料には、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr、Ti、Nb)O)、チタン酸ビスマスナトリウム((Bi、Na)TiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)などを用いてもよい。
【0056】
ここで、図1Bに示すように、圧電体層30において、第2導電層26と第2電極40とによって挟まれた部分を第1の部分35とし、第1の部分35以外の圧電体層30を、第2の部分36とする。第1の部分35の少なくとも一部は、駆動部50内の第1の面22において、外周辺22aよりも内側に位置することができる。換言すれば、第1の部分35の少なくとも一部は、駆動部50内の第1の面22と、第2電極40とによって挟まれた領域の内側に形成されることができる。
【0057】
第2導電層26が、(100)方向に配向制御されている場合、第2導電層の上で形成された第1の部分35は、全体として、(100)方向の配向率が、第2の部分36の(100)方向の配向率よりも大きいことができる。これにより、第1の部分35は、第2の部分36よりも圧電特性が向上した部分であることができる。また、第1の部分35は、第2導電層26の主成分であるLNOのランタン(La)やニッケル(Ni)成分が、第2の部分36よりも拡散した部分である。これにより、第1の部分35は、第2の部分36よりも耐電圧が低下した部分である。言い換えれば、第2の部分36は、第1の部分35よりも耐電圧が高い部分であることができる。詳細は後述される。
【0058】
第2電極40は、図1Aおよび図1Bに示すように、圧電体層30の上方において形成され、第1の面22の法線方向から見て、圧電体層30を介して第1電極20とオーバーラップするように形成される。第2電極40は、圧電体層30に電圧を印加するための他方の電極である。第2電極40の形状は、駆動部50において、第1の面22の法線方向から見て、第1電極20とオーバーラップしている限り、特に限定されない。例えば、図1Aに示すように、第2電極40は、圧電体層30の上面31において、第2の方向120に延びるように形成されていてもよい。
【0059】
第2電極40の構造及び材料は、導電性を有する限り、特に限定されない。例えば、第2電極40は、単層で形成されていてもよい。あるいは、第2電極40は、複数の膜の積層体で形成されていてもよい。第2電極40は、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、それらの導電性酸化物および金(Au)などのいずれかを含む金属層であってもよい。また、第1導電層21と同じ材料で形成されていてもよい。
【0060】
第2電極40は、図1Aおよび図1Bに示すように、リード部60に電気的に接続されている。リード部60は、図示しない駆動電圧発生回路または接地回路に接続されていてもよい。
【0061】
さらに、図示はされないが、圧電素子を水分などから保護するための保護膜を形成しても良い。保護膜は、少なくとも圧電体層30を覆うように設けることができる。保護膜としては、アルミナやポリイミドなどの有機物を使用することができる。
【0062】
以上のいずれかの構成により、本実施形態に係る圧電素子100および圧電アクチュエーター101の構成とすることができる。
【0063】
本実施形態に係る圧電素子100および圧電アクチュエーター101は、例えば、以下の特徴を有する。
【0064】
本実施形態に係る圧電素子100によれば、LNOを主成分とする第2導電層26の第2の面27の面積が、駆動部50内の第1の面22の面積よりも小さい圧電素子を提供することができる。このような圧電素子100の圧電体層30は、第2導電層26と第2電極40との間に形成された第1の部分35を有する。この第1の部分35は、上述のように、第2の部分36よりも圧電特性が向上しているが、耐電圧は低下している部分である。本実施形態に係る圧電素子100によれば、このような第1の部分35の少なくとも一部は、駆動部50内の第1の面22と、第2電極40との間に挟まれる領域よりも内側に形成される。したがって、例えば第1導電層21の端部23に規定される駆動部50の境界部分の少なくとも一部に、第2の部分36が配置される。これによれば、圧電体層30の駆動時における駆動部端部の応力集中の緩和および耐電圧を向上させることができる。よって、本実施形態に係る圧電素子100によれば、圧電素子の信頼性を向上させることができる。また、本実施形態に係る圧電アクチュエーター101は、上記の圧電素子100を有する。したがって、圧電アクチュエーター101は、圧電素子100と同様の特徴を有することができる。
【0065】
1.2 第2実施形態
以下に、図面を参照して、第2実施形態に係る圧電素子200および圧電アクチュエーター201について説明する。なお、本実施形態に係る圧電素子200および圧電アクチュエーター201は、第2導電層26の形成領域に関して、第1実施形態に係る圧電素子100と異なる。したがって、第1実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0066】
図2Aは、第2実施形態に係る圧電素子200の一例を模式的に示す平面図である。図2Bは、第2実施形態に係る圧電素子200の一例を模式的に示す断面図であって、図2AにおけるIIB−IIB線における断面図に対応する。
【0067】
図2Aおよび図2Bに示すように、第2導電層26は、第1実施形態に係る圧電素子100のように第1の方向110に延びるように形成されず、駆動部50内において、第2の方向120において延びるように形成される。したがって、図2Bに示すように、第2導電層26の第1の方向110における少なくとも一方の端部28は、第1の面22において、駆動部50の境界部分51よりも内側に位置する。
【0068】
ここで、図2Bに示すように、駆動部50の境界部分51は、第1導電層21が第1の方向110において延びるように形成されているため、第2電極40の端部の位置によって規定される。
【0069】
本実施形態に係る圧電素子200によれば、第2導電層26の第1の方向110における少なくとも一方の端部28は、第1の面22において、駆動部50の境界部分51よりも内側に位置するように形成される。これによれば、第1実施形態と同様に、駆動部50の境界部分の少なくとも一部を、第1の部分35よりも耐電圧の高い第2の部分36でもって形成することができる。なお、第1の部分35および第2の部分36の詳細な説明は、上述されているため省略する。
【0070】
よって、本実施形態に係る圧電素子200によれば、圧電素子の信頼性をより向上させることができる。また、本実施形態に係る圧電アクチュエーター201は、上記の圧電素子200を有する。したがって、圧電アクチュエーター201は、圧電素子200と同様の特徴を有することができる。
【0071】
1.3 第3実施形態
以下に、図面を参照して、第3実施形態に係る圧電素子300および圧電アクチュエーター301について説明する。なお、本実施形態に係る圧電素子300および圧電アクチュエーター301は、第1電極20と第2電極40の形成領域に関して、第1実施形態に係る圧電素子100と異なる。したがって、第1実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0072】
図3Aは、第3実施形態に係る圧電素子300の一例を模式的に示す平面図である。図3Bは、第3実施形態に係る圧電素子300の一例を模式的に示す断面図である。図3Cは、第3実施形態に係る圧電素子300の一例を模式的に示す断面図である。図3Bは、図3AにおけるIIIB−IIIB線における断面図に対応し、図3Cは、図3AにおけるIIIC−IIIC線における断面図に対応する。
【0073】
図3Aおよび図3Bに示すように、第1電極20は、第2の方向120に延びるように形成される。つまりは、第1導電層21および第2導電層26は、第2の方向120において延びるように形成される。図3Bおよび図3Cに示すように、第1導電層21および第2導電層26は、圧電体層30によって覆われる。また、図3Aおよび図3Bに示すように、第1電極20の第1導電層21は、圧電体層30に覆われず、リード部61と電気的に接続されていてもよい。リード部61は、図示されない駆動回路に電気的に接続されていてもよい。
【0074】
図3Aおよび図3Cに示すように、第2導電層の第1の方向110における両方の端部28は、駆動部50内の第1の面22の外周辺22aよりも内側に位置するように形成される。また、図3Aおよび図3Bに示すように、第2導電層26の第2の方向120における一方の端部28は、駆動部50内の第1の面22の外周辺22aよりも内側に位置するように形成され、他方の端部28は、第1の面22において、駆動部50の境界部分51よりも内側に位置するように形成される。
【0075】
図3Aから図3Cに示すように、第2電極40は、第1の方向110において延びるように形成され、複数の圧電素子300の共通電極として機能していてもよい。つまりは、第1の方向110において図示されない圧電素子300の第2電極を構成していてもよい。したがって、図3Cに示すように、第2電極40は、第1の方向110において圧電体層30の上面31および側面32を覆うように形成される。また、図3Bに示すように、第2電極40は、第2の方向120における圧電体層40の一方の側面32を覆うように形成されていてもよい。また、図3Bに示すように、第2電極40は、第2の方向120における端部41を圧電体層30の上面31の上に有している。
【0076】
本実施形態に係る圧電素子300の駆動部50の境界部分51は、第2電極40の端部41が規定する場合と、第1導電層21の外周辺23aが規定する場合がある。例えば、図3Bに示すように、第2の方向120においては、駆動部50の一方の境界部分51は、第2電極40の端部41の位置によって規定され、他方の境界部分51は、第1導電層21の外周辺23aの位置によって規定される。また、図3Cに示すように、第1の方向110においては、両方の境界部分51は、第1導電層21の外周辺23aの位置によって規定される。
【0077】
したがって、本実施形態に係る圧電素子300において、第2導電層26の第2の方向120における少なくとも一方の端部28は、駆動部50内の第1の面22の外周辺22aよりも内側に位置することができる。また、第2導電層26の第2の方向120における少なくとも他方の端部28は、第1の面22において、駆動部50の境界部分51よりも内側に位置することができる。また、第2導電層26の第1の方向110における少なくとも一方の端部28は、駆動部50内の第1の面22の外周辺22aよりも内側に位置することができる。
【0078】
以上により、本実施形態に係る圧電素子300は、第1実施形態および第2実施形態と同様の特徴を有することができる。よって、本実施形態に係る圧電素子300によれば、圧電素子の信頼性をより向上させることができる。また、本実施形態に係る圧電アクチュエーター201は、上記の圧電素子300を有する。したがって、圧電アクチュエーター301は、圧電素子300と同様の特徴を有することができる。
【0079】
1.4 第4実施形態
以下に、図面を参照して、第4実施形態に係る圧電素子400および圧電アクチュエーター401について説明する。なお、本実施形態に係る圧電素子400および圧電アクチュエーター401は、第1〜第3実施形態に係る圧電素子の圧電体層の変形例であってもよい。したがって、第1〜3実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0080】
本実施形態に係る圧電素子400は、第1〜第3実施形態に係る圧電素子の圧電体層にかかる変形例である。したがって、第2実施形態に係る圧電素子200に適用した例を一適用例として図示する。図4Aおよび図4Bは、第3実施形態に係る圧電素子400の一例を模式的に示す断面図である。図4Aは、第2実施形態に係る圧電素子200を示す図2AのIVA−IVA線に対応し、図4Bは、図2AのIIB−IIB線に対応する。
【0081】
図4Aおよび図4Bに示すように、圧電体層30は、第1の面22の上方であって、かつ、第2導電層26の端部28と隣接する領域(側方)において、空孔38を有することができる。空孔38は複数のボイド(空隙)によって形成されていてもよい。言い換えれば、空孔38が形成される領域は、その他の圧電体層30よりも密度が低い、低密度領域であってもよい。
【0082】
圧電体層30に空孔38を形成することは、第2導電層26の端部28が、駆動部50内に形成される全ての場合に適用することができる。例えば、第2実施形態に係る圧電素子200のほか、第1実施形態に係る圧電素子100の第2の方向120における端部28と隣接する領域や、第3実施形態に係る圧電素子300の第1の方向110および第2の方向120における端部28と隣接する領域に適用可能である。
【0083】
本実施形態に係る圧電素子400によれば、駆動部50の境界部分に隣接する領域において、圧電体層30が、応力を吸収する空孔38を有した圧電素子を提供することができる。これによれば、駆動時に駆動部50の境界部分に集中しやすい応力をさらに緩和することができる。よって、本実施形態に係る圧電アクチュエーター401によれば、信頼性をより向上させることができる。
【0084】
2. 圧電素子および圧電アクチュエーターの製造方法
2.1 第1〜第3実施形態に係る圧電素子の製造方法
次に、第1〜第3実施形態に係る圧電素子100、200、300および圧電アクチュエーター101、201、301の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態においては、第1電極20および第2電極40の形成領域等が異なるが、適宜パターニング領域を変更することで、本実施形態に係る製造方法を適用することができる。本実施形態に係る圧電素子の製造方法の一例として、第3実施形態に係る圧電素子300に適用した場合を図示して説明する。
【0085】
図5(A)〜図6(D)は、本実施形態に係る圧電素子の製造工程を模式的に示す断面図である。図5(A)〜図6(D)における断面は、図3AのIIIC−IIIC線における断面図に対応する。
【0086】
図5(A)に示すように、基板10上に、第1の面22と、第1の面22の反対側の第3の面23と、を有する第1導電膜21aを成膜する。第1導電膜21aは、第1導電層21の原料膜である。第1導電膜21aの形成方法は公知の成膜方法を用いることができる。第1導電膜21aは、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより形成される。
【0087】
なお、基板10が、振動板10である場合、以下の製造方法は、圧電アクチュエーター101の製造方法とすることができる。振動板10の詳細な説明は、上述されているため、省略する。
【0088】
次に、図5(A)に示すように、第1導電膜21aの上方に、第1の面22側の第2の面27を有する第2導電膜26aを成膜する。第2導電膜26aは、第2導電層26の原料膜である。第2導電膜26aの形成方法は公知の成膜方法を用いることができる。第2導電膜26aは、例えば、スパッタ法、めっき法、MOD(Metal Organic Deposition)法などにより形成される。
【0089】
図5(B)に示すように、公知の方法で、第2導電膜26aの上にレジスト150を形成し、第1導電膜21aと第2導電膜26aをパターニングする。これによって、第1導電層21と、第1の面22の上方においてエッチングにより後退した(もとの形状よりも第1および第2導電膜21a、26aの厚み方向と直交する方向へ縮小した)第2導電膜26bおよびレジスト150を形成することができる。
【0090】
パターニングは、例えば、公知のフォトリソグラフィー技術または公知のエッチング技術によって行われる。ドライエッチングでパターニングを行う場合、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)のような高密度プラズマ装置を用いたドライエッチングを行ってもよい。該高密度プラズマ装置(ドライエッチング装置)において、1.0Pa以下の圧力に設定すると良好にエッチングを行うことができる。
【0091】
エッチングガスとしては、例えば、塩素ガスとアルゴンガスとの混合ガス(以下、「第1混合ガス」ともいう)を用いてもよい。第1混合ガスを用いる場合、第1導電膜21aと第2導電膜26aに用いられるPtやIrおよびLNOなどは第1混合ガスと反応しにくいため、主にドライエッチングのスパッタリング効果によってエッチングされる。
【0092】
ここで、エッチング工程において、レジスト150の後退速度(第1および第2導電膜21a、26aの厚み方向と直交する方向へのエッチング速度)を制御することにより、第2の角部23aの角度α(第1導電層21の側面24の、基板10の上面11に対する傾き角)および第2導電膜26bの形状を制御することができる。
【0093】
レジスト150の後退速度が大きくなるほど、角度αは小さくなる。レジスト150の後退速度は、第1混合ガスにおける塩素ガスの流量比や、圧力によって制御することができる。例えば、第1混合ガスの塩素ガスの流量比を60%〜80%、圧力を0.3Pa〜1.0Paとすることにより、角度αを50度以下とすることができる。また、レジスト150の形状をあらかじめ寝かせて形成しても良い。例えば、レジスト150の露光時に、フォーカスをずらすことでレジスト150の形状を寝かすことができる。
【0094】
また、第2導電膜26bは、周縁部26cを有する形状に制御される。第2導電膜26bの周縁部26cとは、図5(B)に示されるように、第1の面22の上に形成された第2導電膜26bであって、レジスト150に覆われていない部分(露出部分)であってもよい。エッチングによるレジスト150の後退が起こると、それに合わせて第1導電膜21aおよび第2導電膜26aも後退していく。しかし、第2導電膜26aの主成分であるLNOはエッチングレートがレジスト150よりも遅いため、後退スピード(エッチングレート)も遅くなる。これにより、周縁部26cを有した第2導電膜26bを形成することができる。第2導電膜26bの形状制御のために、例えば、第1混合ガスの塩素とアルゴンの流量比を3:2とし、圧力を0.6Paの条件でエッチングを行うことができる。また、周縁部26cの大きさは、レジスト150の後退の程度を増加させることで長くすることができる。レジスト150の後退は、レジスト150と第1導電層21との選択比が低いほど増加する。また、レジスト150をあらかじめ寝かせた形状にすることでレジスト150の後退を増加させることができる。周縁部26cは後述される工程において除去される部分である。
【0095】
次に、図5(C)に示すように、第1導電層21の第1の面22の上に形成された第2導電膜26bの周縁部26cを除去する。これによって、端部28を有する第2導電層26を形成することができ、端部28の少なくとも一部は、第1の面22の外周辺22aよりも内側に位置するように形成されることができる。つまりは、第2の面27の面積は、第1の面22の面積よりも小さくなるように形成されることができる。
【0096】
周縁部26cを除去する工程は、特に限定されず、公知のエッチング技術を用いてもよい。また、例えば、第1導電層21のパターニング工程において、塩素ガスを含む第1混合ガスを用いた場合、水蒸気を含んだ大気に所定時間放置し、大気接触させた後、水洗いを行うことによって、周縁部26cを除去してもよい。第1混合ガスを用いた場合、第1導電層21のエッチングによりレジスト150および第2導電膜26bの表面に、塩素が残留している。この塩素は、大気中の水分と反応することができ、塩酸となって第2導電膜26bの露出部分である周縁部26cを溶解(腐食)させることができる。この溶解工程は水洗により止めることが可能であり、溶解した周縁部26cもこのとき同時に除去することができる。なお、本工程においては、レジストを除去しないで大気放置したほうが、付着している塩素量が多いので、より効率的に第2導電膜26bの周縁部26cを溶解させることができる。大気中での放置時間は、溶解対象となる第2導電膜26bの膜厚や周縁部26cの形状によって異なるため、適宜設定することができる。以上の工程によれば、周縁部26cを除去のための機器や溶剤を用いる必要がないため、生産コストを削減することができ、生産性を向上させることができる。
【0097】
以上によって、第1導電層21と第2導電層26とを有する第1電極20を形成することができる。レジスト150は、上記工程の後、適宜除去される。なお、第1電極20に関する詳細な説明は、上述しているため、省略する。
【0098】
次に、図6(A)に示すように、第1電極20の上方において、圧電体層30の原料膜である第1圧電体材料膜30aを成膜する。第1圧電体材料膜30aは、公知の方法で成膜されることができ、例えば、ゾルゲル法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MOD法、スパッタ法、レーザーアブレーション法などにより形成される。
【0099】
ここで、第1圧電体材料膜30aを熱処理することで、結晶化することができる。これによって、第1圧電体材料膜30bを形成することができる。また、この結晶化工程は、部分的に行われてもよく、第2電極40のパターニングの後に行われても良い。熱処理の条件は、第1圧電体材料膜30aを結晶化できる温度であれば、特に限定されない。熱処理は、例えば、酸素雰囲気中において、500〜800度で行われることができる。また、所望の膜厚になるように、前駆体の成膜と結晶化工程を複数回繰り返して第1圧電体材料膜30bを形成しても良い。
【0100】
ここで、図6Bに示すように、第1圧電体材料膜30bの一部は、第2導電層26の上で結晶成長した部分であり、第1圧電体材料膜30bの一部は、第2導電層26以外の部材の上で結晶成長した部分である。これによって、第1圧電体材料膜30bに第1の部分35と第2の部分36とが形成される。
【0101】
次に、第1圧電体材料膜30bを所望の形状にパターニングして、圧電体層30を形成する。第1圧電体材料膜30bのパターニングは、例えば、公知のフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われることができる。例えば、図示されないレジストを形成し、所望の形状を有する圧電体層30を形成してもよい。
【0102】
また、例えば、図6(B)に示すように、エッチング用のハードマスクとして、第2電極40の材料を用い、マスク層40aを形成してもよい。次に、図6(C)に示すように、マスク層40aを形成後、第1圧電体材料膜30bがエッチングによりパターニングされ、圧電体層30が所望の形成にパターニングされる。ここで、マスク層40aを形成することによって、マスク層40aがエッチング工程においてハードマスクとして作用するため、図6(C)に示すように圧電体層30にテーパー状の側面32を容易に形成することができる。なお、圧電体層30の詳細な構成は、前述されているため、省略する。なお、上述のように、マスク層40aは必須の構成ではなく、レジストを適宜形成し、エッチング後、除去してもよい(図示せず)。
【0103】
次に、図6(D)に示すように、圧電体層30の上方に第3導電膜を成膜して、パターニングすることによって、第2電極40を形成する。第3導電膜のパターニングは、例えば、公知のフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって行われることができる。第2電極40は、第1の面22の法線方向から見て、第1電極20の少なくとも一部とオーバーラップするようにパターニングされる。第3導電膜は、第2電極40の原料膜である。第3導電膜の形成方法は公知の成膜方法を用いることができる。第3導電膜は、例えば、スパッタ法、めっき法、真空蒸着法などにより形成される。なお、マスク層40aは、第3導電膜と同じ材料から形成されているため、第3導電膜に取り込まれることができる。以上によって、第2電極40を形成することができる。なお、第2電極40に関する詳細な説明は、上述しているため、省略する。
【0104】
以上の工程により、圧電素子300および圧電アクチュエーター301を製造することができる。
【0105】
本実施形態に係る圧電素子および圧電アクチュエーターの製造方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0106】
本実施形態に係る圧電素子および圧電アクチュエーターの製造方法によれば、圧電体層30は、LNOを主成分とする第2導電層26の上で結晶化する第1の部分35と、第2導電層26以外の面(第1導電層21や基板10の上面11など)の上で結晶化する第2の部分36を有することができる(図6(D)参照)。
【0107】
この結晶化工程により、第1の部分35はLNO上では(100)方向に配向して、圧電特性の優れた圧電体層となることができる。これはLNOが(100)方向へ配向しているため、その結晶性を引き継ぐためである。しかしながら、第1の部分35においては、LNOの成分が第1の部分35中へ拡散するため、第1の部分35はLaおよびNiなどの不純物が拡散した圧電体層となる。
【0108】
第2導電層26以外の面(第1導電層21や基板10の上面11など)の上で結晶化した第2の部分36は、(100)方向への優先配向が行われるが、(111)方向などの結晶も混ざった圧電体層となるため、第1の部分35よりも圧電特性が低い部分となる。しかしながら、第1導電層21のLNO成分は、第2の部分36へはほとんど拡散しないため、第2の部分36は不純物が少なく、耐電圧が第1の部分35よりも高い圧電体層となることができる。
【0109】
したがって、駆動部50の境界部分の少なくとも一部を、第1の部分35よりも耐電圧の高く、圧電特性の低い第2の部分36でもって形成することができるため応力が緩和する。よって、圧電体層30の駆動時における破壊を防ぐことができる。
【0110】
以上により、信頼性の高い圧電素子および圧電アクチュエーターを提供することができる。
【0111】
2.2 第4実施形態に係る圧電素子の製造方法
以下に、図面を参照して、第4実施形態に係る圧電素子400および圧電アクチュエーター401の製造方法について説明する。
【0112】
上述のように、第4実施形態に係る圧電素子400は、第1〜第3実施形態に係る圧電素子のいずれにおいても適用することができる。しがって、本実施形態に係る圧電素子の製造方法は、第3実施形態に係る圧電素子300に対して、第4実施形態400を適用した場合を一例として説明する。
【0113】
図7(A)〜図7(D)において、本実施形態に係る圧電素子400および圧電アクチュエーター401の製造方法を模式的に示す。図7(A)〜図7(D)は、第3実施形態に係る圧電素子300を示す図3AのIIIC−IIIC線に対応する断面図である。
【0114】
図7(A)に示すように、2.1に記載された圧電素子の製造方法と同様に、基板10の上方に、第1導電膜21aと第2導電膜26aを形成する。本実施形態に係る製造方法においては、第2導電膜26aの上に、第2圧電体材料膜30cをさらに成膜する。第2圧電体材料膜30cは、第1圧電体材料膜30aと同様の材料を用いることができる。また、第2圧電体材料膜30cの成膜方法は、第1圧電体材料膜30aと同様の方法を用いることができる。
【0115】
ここで、第2圧電体材料膜30cを熱処理することで、結晶化し、第2圧電体材料膜30dを形成してもよい。また、この結晶化工程は、部分的に行われてもよく、第1圧電体材料膜30aを熱処理する際に同時に行われても良い。熱処理の条件は、第1圧電体材料膜30aを熱処理する条件と同じであってよい。
【0116】
次に、公知の方法で、第2圧電体材料膜30dの上にレジスト150を形成し、第1導電膜21a、第2導電膜26aおよび第2圧電体材料膜30dをパターニングする。これによって、図7(B)に示すように、第1の面22を有する第1導電層21と、第1の面22の上方においてエッチングにより後退した第2導電膜26bおよび第2圧電体層30eを形成することができる。
【0117】
パターニングは、例えば、公知のフォトリソグラフィー技術または公知のエッチング技術によって行われる。エッチングでもってパターニングを行う場合、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)のような高密度プラズマ装置を用いたドライエッチングを行ってもよい。該高密度プラズマ装置(ドライエッチング装置)において、1.0Pa以下の圧力に設定すると良好にエッチングを行うことができる。
【0118】
第2圧電体材料膜30dに対するエッチングガスとしては、例えば、塩素ガスとフロン系ガスとの混合ガス(以下、「第2混合ガス」ともいう)を用いてもよい。第2混合ガスを用いる場合、例えばPZTからなる第2圧電体材料膜30dのエッチングレートが200nm/min以上と早く、レジスト選択比を約1.0の高選択比とすることができる。
【0119】
第1導電膜21aおよび第2導電膜26aに対するエッチングガスとしては、前述のように、第1混合ガスを用いることができる。
【0120】
ここで、エッチング工程において、レジスト150の後退速度を制御することにより、第2の角部23aの角度αおよび第2導電膜26bの形状を制御することができる。
【0121】
レジスト150の後退速度が大きくなるほど、角度αは小さくなる。レジスト150の後退速度は、第1混合ガスにおける塩素ガスの流量比や、圧力によって制御することができる。例えば、第1混合ガスの塩素ガスの流量比を60%〜80%、圧力を0.3Pa〜1.0Paとすることにより、角度αを50度以下とすることができる。また、レジスト150の形状をあらかじめ寝かせて形成しても良い。例えば、レジスト150の露光時に、フォーカスをずらすことでレジスト150の形状を寝かすことができる。
【0122】
図7(B)に示すように、第2導電膜26bは、周縁部26cを有する形状に制御することができる。第2導電膜26bの周縁部26cとは、図7(B)に示されるように、第1の面22の上に形成された第2導電膜26bであって、レジスト150および第2圧電体膜に覆われていない部分(露出部分)であってもよい。エッチングによるレジスト150の後退が起こると、それに合わせて第1導電膜21aおよび第2導電膜26aも後退していく。しかし、第2導電膜26aの主成分であるLNOはエッチングレートが第2圧電体材料膜30dよりも遅いため、後退スピード(エッチングレート)も遅くなる。これにより、周縁部26cを有した第2導電膜26bを形成することができる。第2導電膜26bの形状制御のために、例えば、第1混合ガスの塩素とアルゴンの流量比を3:2とし、圧力を0.6Paの条件でエッチングを行うことができる。
【0123】
次に、図7(C)に示すように、上記のエッチング工程の後、第1導電層21の第1の面22の上に形成された第2導電膜26bの周縁部26cを除去する。本実施形態に係る製造方法においては、第2導電膜26bにおいて第2圧電体層30eから露出した部分である周縁部26cに加え、第2導電膜26bの第2圧電体層30eに覆われた部分の一部をサイドエッチング(オーバーエッチング)することによって除去する。
【0124】
以上によって、第2の面27および端部28を有する第2導電層26を形成することができ、端部28の少なくとも一部は、第1の面22において、外周辺22aよりも内側に位置するように形成されることができる。つまりは、第2の面27の面積は、第1の面22の面積よりも小さくなるように形成されることができる。
【0125】
また、図7(C)に示すように、第1の面22の上方であって、かつ、第2導電層26の端部と隣接する領域において、領域38aを形成することができる。領域38aは、第2導電層26の側方であって、第1導電層21と第2圧電体層30eとの間に第2導電層26が形成されない領域であり、圧電体層30を形成した際に、空孔38が形成される領域である。
【0126】
周縁部26cを除去し、領域38aを形成する工程は、特に限定されず、公知のウェットエッチング技術を用いてもよい。この場合、フッ酸や塩酸などを使用することができる。また、例えば、第1導電層21のパターニング工程において、塩素ガスを含む第1混合ガスを用いた場合、水蒸気を含んだ大気に所定時間放置し、大気接触させた後、水洗いを行うことによって、周縁部26cを除去し、領域38aを形成してもよい。第1混合ガスを用いた場合、第1導電層21のエッチングによりレジスト150、第2圧電体層30eおよび第2導電膜26bの表面に、塩素が残留している。この塩素は、大気中の水分と反応することができ、塩酸となって第2導電膜26bの露出部分である周縁部26cを溶解(腐食)させることができる。この溶解工程は水洗により止めることが可能であり、溶解した周縁部26cもこのとき同時に除去することができる。また、第2導電膜26bをオーバーエッチングし、領域38aを形成することができる。なお、本工程においては、レジストを除去しないで大気放置したほうが、付着している塩素量が多いので、より効率的に第2導電膜26bの周縁部26cを溶解させることができる。大気中での放置時間は、溶解対象となる第2導電膜26bの膜厚や周縁部26cの形状によって異なるため、適宜設定することができる。以上の工程によれば、周縁部26cを除去のための機器や溶剤を用いる必要がないため、生産コストを削減することができ、生産性を向上させることができる。
【0127】
以上によって、第1導電層21と第2導電層26とを有する第1電極20を形成することができる。レジスト150は、上記工程の後に除去される。なお、第1電極20に関する詳細な説明は、上述しているため、省略する。
【0128】
次に、図7(D)に示すように、第2圧電体層30eおよび第1電極20の上方において、圧電体層30および第2電極40を形成する。第2圧電体層30eは、圧電体層30と同じ圧電材料で形成されるため、圧電体層30に取り込むことができる。なお、圧電体層30および第2電極40の製造方法は、前述の製造方法において説明しているため省略する(図6(A)−図6(D)参照)。
【0129】
以上の工程により、圧電素子400および圧電アクチュエーター401を製造することができる。
【0130】
本実施形態に係る圧電素子および圧電アクチュエーターの製造方法によれば、駆動部50の境界部分に隣接する領域において、圧電体層30が、応力を吸収する空孔38を有した圧電素子および圧電アクチュエーターの製造方法を提供することができる。これによれば、駆動時に駆動部50の境界部分に集中しやすい応力をさらに緩和することができる。よって、より信頼性の高い圧電素子および圧電アクチュエーターの製造方法を提供することができる。
【0131】
3.液滴噴射ヘッド
次に、本実施形態に係る圧電素子50が圧電アクチュエーターとして機能する液滴噴射ヘッド600について、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態に係る液滴噴射ヘッド600の要部を模式的に示す断面図である。図9は、本実施形態に係る液滴噴射ヘッド600の分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下を逆に示したものである。
【0132】
液滴噴射ヘッド600は、上述の圧電素子(圧電アクチュエーター)を有することができる。以下の例では、基板10が振動板10である構造体として形成され、圧電素子200が圧電アクチュエーターとして構成されている液滴噴射ヘッド600について説明する。
【0133】
液滴噴射ヘッド600は、図8及び図9に示すように、ノズル孔612を有するノズル板610と、圧力室622を形成するための圧力室基板620と、圧電素子200と、を含む。
【0134】
圧電素子200の数は特に限定されず、複数形成されていてよい。なお、圧電素子200が複数形成される場合は、第1電極20が共通電極となる。さらに、液滴噴射ヘッド600は、図9に示すように、筐体630を有することができる。なお、図9では、圧電素子200を簡略化して図示している。
【0135】
ノズル板610は、図8及び図9に示すように、ノズル孔612を有する。ノズル孔612からは、インクなどの液体等(液体のみならず、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整したもの、又は、メタルフレーク等を含むものなどを含む。以下同じ。)を液滴として吐出されることができる。ノズル板610には、例えば、多数のノズル孔612が一列に設けられている。ノズル板620の材質としては、例えば、シリコン、ステンレス鋼(SUS)などを挙げることができる。
【0136】
圧力室基板620は、ノズル板610上(図9の例では下)に設けられている。圧力室基板620の材質としては、例えば、シリコンなどを例示することができる。圧力室基板620がノズル板610と振動板10との間の空間を区画することにより、図9に示すように、リザーバー(液体貯留部)624と、リザーバー624と連通する供給口626と、供給口626と連通する圧力室622と、が設けられている。この例では、リザーバー624と、供給口626と、圧力室622とを区別して説明するが、これらはいずれも液体等の流路であって、このような流路はどのように設計されても構わない。また例えば、供給口626は、図示の例では流路の一部が狭窄された形状を有しているが、設計にしたがって任意に形成することができ、必ずしも必須の構成ではない。リザーバー624、供給口626及び圧力室622は、ノズル板610と圧力室基板620と振動板10とによって区画されている。リザーバー624は、外部(例えばインクカートリッジ)から、振動板10に設けられた貫通孔628を通じて供給されるインクを一時貯留することができる。リザーバー624内のインクは、供給口626を介して、圧力室622に供給されることができる。圧力室622は、振動板10の変形により容積が変化する。圧力室622はノズル孔612と連通しており、圧力室622の容積が変化することによって、ノズル孔612から液体等が吐出される。
【0137】
圧電素子200は、圧力室基板620上(図9の例では下)に設けられている。圧電素子50は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて動作(振動、変形)することができる。振動板10は、積層構造(圧電体層20)の動作によって変形し、圧力室622の内部圧力を適宜変化させることができる。
【0138】
筐体630は、図9に示すように、ノズル板610、圧力室基板620及び圧電素子50を収納することができる。筐体630の材質としては、例えば、樹脂、金属などを挙げることができる。
【0139】
液滴噴射ヘッド600は、上述した信頼性の向上した圧電素子(圧電アクチュエーター)を含んでいる。したがって、信頼性の向上した液滴噴射ヘッドを実現できる。
【0140】
なお、ここでは、液滴噴射ヘッド600がインクジェット式記録ヘッドである場合について説明した。しかしながら、本発明の液滴噴射ヘッドは、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドなどとして用いられることもできる。
【0141】
4. 液体噴射装置
次に、本実施形態に係る液体噴射装置について説明する。本実施形態に係る液体噴射装置は、本発明に係る液体噴射ヘッドを有する。ここでは、本実施形態に係る液体噴射装置1000がインクジェットプリンターである場合について説明する。図10は、本実施形態に係る液体噴射装置1000を模式的に示す斜視図である。
【0142】
液体噴射装置1000は、ヘッドユニット1030と、駆動部1010と、制御部1060と、を含む。また、液体噴射装置1000は、装置本体1020と、給紙部1050と、記録用紙Pを設置するトレイ1021と、記録用紙Pを排出する排出口1022と、装置本体1020の上面に配置された操作パネル1070と、を含むことができる。
【0143】
ヘッドユニット1030は、例えば、上述した液体噴射ヘッド300(400、500)から構成されるインクジェット式記録ヘッド(以下単に「ヘッド」ともいう)を有する。ヘッドユニット1030は、さらに、ヘッドにインクを供給するインクカートリッジ1031と、ヘッドおよびインクカートリッジ1031を搭載した運搬部(キャリッジ)1032と、を備える。
【0144】
駆動部1010は、ヘッドユニット1030を往復動させることができる。駆動部1010は、ヘッドユニット1030の駆動源となるキャリッジモータ1041と、キャリッジモータ1041の回転を受けて、ヘッドユニット1030を往復動させる往復動機構1042と、を有する。
【0145】
往復動機構1042は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸1044と、キャリッジガイド軸1044と平行に延在するタイミングベルト1043と、を備える。キャリッジガイド軸1044は、キャリッジ1032が自在に往復動できるようにしながら、キャリッジ1032を支持している。さらに、キャリッジ1032は、タイミングベルト1043の一部に固定されている。キャリッジモータ1041の作動により、タイミングベルト1043を走行させると、キャリッジガイド軸1044に導かれて、ヘッドユニット1030が往復動する。この往復動の際に、ヘッドから適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0146】
制御部1060は、ヘッドユニット1030、駆動部1010および給紙部1050を制御することができる。
【0147】
給紙部1050は、記録用紙Pをトレイ1021からヘッドユニット1030側へ送り込むことができる。給紙部1050は、その駆動源となる給紙モータ1051と、給紙モータ1051の作動により回転する給紙ローラ1052と、を備える。給紙ローラ1052は、記録用紙Pの送り経路を挟んで上下に対向する従動ローラ1052aおよび駆動ローラ1052bを備える。駆動ローラ1052bは、給紙モータ1051に連結されている。制御部1060によって供紙部1050が駆動されると、記録用紙Pは、ヘッドユニット1030の下方を通過するように送られる。
【0148】
ヘッドユニット1030、駆動部1010、制御部1060および給紙部1050は、装置本体1020の内部に設けられている。
【0149】
液体噴射装置1000では、本発明に係る液体噴射ヘッド600を有することができる。本発明に係る液体噴射ヘッド600は、上述のように、高い信頼性を持つ圧電素子を有することができる。そのため、高い信頼性を有する液体噴射装置1000を得ることができる。
【0150】
なお、上述した例では、液体噴射装置1000がインクジェットプリンターである場合について説明したが、本発明のプリンタは、工業的な液体吐出装置として用いられることもできる。この場合に吐出される液体(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整したもの、または、メタルフレーク等を含むものなどを用いることができる。
【0151】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0152】
10 基板(振動板)、11 上面、12 下面、20 第1電極、21 第1導電層、
21a 第1導電膜、22 第1の面、22a 外周辺(第1の角部)、
22b 仮想面、23 第3の面、23a 外周辺(第2の角部)、24 第4の面、
26 第2導電層、26a 第2導電膜、26b 第2導電膜、26c 周縁部、
27 第3の面、28 端部、30 圧電体層、30a、30b 第1圧電体材料膜、
30c、30d 第2圧電体材料膜、30e 第2圧電体層、31 上面、
32 側面、35 第1の部分、36 第2の部分、38 空孔、40 第2電極、
41 端部、40a マスク層、50 駆動部、51 境界部分、
60、61 リード部、100、200、300、400 圧電素子、
101、201、301、401 圧電アクチュエーター、
110 第1の方向、120 第2の方向、150 レジスト、
600 液滴噴射ヘッド、610 ノズル板、612 ノズル孔、
620 圧力室基板、622 圧力室、624 リザーバー、626 供給口、
628 貫通孔、630 筐体、
1000 液体噴射装置、1010 駆動部、1020 装置本体、1021 トレイ、
1022 排出口、1030 ヘッドユニット、1031 インクカートリッジ、
1032 キャリッジ、1041 キャリッジモータ、1042 往復動機構、
1043 タイミングベルト、1044 キャリッジガイド軸、1050 給紙部、
1051 給紙モータ、1052 給紙ローラ、1060 制御部、
1070 操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極とによって挟まれた圧電体層を有する圧電素子であって、
前記第1電極は、前記圧電体層側の第1の面を有する第1導電層と、前記第1の面において形成され、前記第1の面側の第2の面を有する第2導電層と、を含み、
前記第1の面の法線方向から見て、互いにオーバーラップする、前記第1電極、前記圧電体層および前記第2電極から構成される部分を、駆動部としたとき、
前記第2導電層の少なくとも一部は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に配置され、
前記第2の面の面積は、前記駆動部内の前記第1の面の面積よりも小さく、
前記第2導電層は、ニッケル酸ランタンを主成分とする、圧電素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記圧電体層において、前記第2導電層と、前記第2電極と、によって挟まれた部分を第1の部分としたとき、
前記第1の部分の(100)方向の配向率は、前記圧電体層の前記第1の部分以外の第2の部分の(100)方向の配向率よりも大きい、圧電素子。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記圧電体層は、前記第1の面の上方であって、かつ、前記第2導電層の端部と隣接する領域において、空孔を有する、圧電素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項において、
前記第1導電層は、前記第1の面と反対側の第3の面と、
前記第1の面と前記第3の面とを連続する第4の面と、
をさらに有し、
前記第3の面および前記第4の面が形成する角度は、50°以下である、圧電素子。
【請求項5】
振動板と、
前記振動板の上に配置された、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧電素子と、
を有する、圧電アクチュエーター。
【請求項6】
振動板と、
前記振動板の上において、第1の方向において複数配置された、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧電素子と、
を有する圧電アクチュエーターであって、
前記第1電極は、前記振動板の上で、前記第1の方向に延び、複数の前記圧電素子の共通電極となるように形成され、
前記圧電体層は、前記第1電極の上において、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びるように形成され、
前記第2電極は、前記圧電体層の上において、前記第2の方向に延びるように形成され、かつ、前記第1電極の少なくとも一部とオーバーラップし、
前記第2導電層の前記第2の方向における少なくとも一方の端部は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に位置する、圧電アクチュエーター。
【請求項7】
請求項6において、
前記第2導電層の前記第1の方向における少なくとも一方の端部は、前記第1の面において、前記駆動部の境界部分よりも内側に位置する、圧電アクチュエーター。
【請求項8】
振動板と、
前記振動板の上において、第1の方向において複数配置された、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧電素子と、
を有する圧電アクチュエーターであって、
前記第1電極は、前記振動板の上で、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びるように形成され、
前記圧電体層は、前記第2の方向に延び、かつ、前記振動板の上方において前記第1電極を覆うように形成され、
前記第2電極は、前記圧電体層の上において、前記第1電極の少なくとも一部とオーバーラップし、かつ、複数の前記圧電素子の共通電極となるように形成され、
前記第2導電層の前記第2の方向における少なくとも一方の端部は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に位置する、圧電アクチュエーター。
【請求項9】
請求項8において、
前記第2導電層の前記第1の方向における少なくとも一方の端部は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に位置する、圧電アクチュエーター。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターを含む、液体噴射ヘッド。
【請求項11】
請求項10に記載の液体噴射ヘッドを含む、液体噴射装置。
【請求項12】
基板の上に、前記基板側の面とは反対側の第1の面を有する、第1導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜の前記第1の面の上に、前記第1の面側の第2の面を有する第2導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜および前記第2導電膜をパターニングして、第1導電層および第2導電層を有する第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上に、第1圧電体材料膜を形成し、前記第1圧電体材料膜を熱処理して結晶化させる工程と、
結晶化した前記第1圧電体材料膜をパターニングして、第1圧電体層を形成する工程と、
前記第1圧電体層の上に、第3導電膜を形成する工程と、
前記第3導電膜をパターニングして、前記第1圧電体層を介して前記第1電極の少なくとも一部とオーバーラップする第2電極を形成する工程と、
を含み、
前記第1の面の法線方向から見て、互いにオーバーラップする、前記前記第1電極、前記圧電体層および前記第2電極から構成される部分を、駆動部としたとき、
前記第2導電層は、前記駆動部内の前記第1の面の外周辺よりも内側に配置され、
前記第2の面の面積は、前記駆動部内の前記第1の面の面積よりも小さく、
前記第2導電層は、ニッケル酸ランタンを主成分とする、圧電素子の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記第2導電膜を形成する工程の後に、前記第2導電膜の上方に第2圧電体材料膜を形成し、前記第2圧電体材料膜を熱処理し、パターニングすることによって第2圧電体層を形成する工程と、
前記第1導電膜および前記第2導電膜をパターニングする工程において、第2導電膜の前記第2圧電体層に覆われた一部をサイドエッチングすることによって、前記第1の面の上方であって、かつ、前記第2導電層の端部と隣接する領域において、前記第1導電層と前記第2圧電体層との間に前記第2導電層が形成されない領域を形成する工程と、
前記第1電極の上方に第1圧電体材料膜を形成して、熱処理によって結晶化させる工程において、前記領域において空孔を形成する工程と、
を更に含む、圧電素子の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−201264(P2011−201264A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73195(P2010−73195)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】