説明

圧電素子の製造方法

【課題】圧電セラミック層とCu系電極層とを積層して焼成する際に、電極層のCu拡散を抑制し、安定した品質や特性が得られる圧電素子の製造方法を提供する。
【解決手段】チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックからなる圧電セラミック層と、Cu系電極層とを交互に積層してなる圧電素子の製造方法であって、前記チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックの構成材料であるPb(鉛)酸化物、Ti(チタン)酸化物、Zr(ジルコニウム)酸化物の各粉末を混合した原料粉末に、CuOを添加した混合粉末を準備し、前記混合粉末を、CuOがCuに還元されず、かつCuOに酸化されない酸素分圧下で仮焼する仮焼工程と、仮焼して得られた仮焼粉末を用いて焼成後に前記圧電層となる未焼成圧電セラミック層を作製する工程と、前記未焼成圧電セラミック層と、焼成後に前記電極層となる未焼成Cu系電極層とを交互に積層して焼成する主焼成工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばディーゼルエンジンの燃料噴射用インジェクタ等に用いられる圧電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの燃料噴射用インジェクタとして、圧電効果を利用したピエゾアクチュエータが用いられている。このピエゾアクチュエータは、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛;PbZr1-xTixO3)系セラミックからなる圧電セラミック層と、電極層とを交互に積層して焼成した積層型圧電素子からなる。
ところで、PZT系圧電セラミック層は焼成温度が高温(約1100℃)であるため、従来から電極層として耐熱性に優れた貴金属が用いられてきたが、コストダウンを図るためにCu系電極層を用いることが検討されている。しかし、Cuは貴金属に比べて酸化され易いため、焼成時の酸素分圧を低くする必要がある。一方で、酸素分圧が低い場合、圧電セラミック層とCu系電極層の界面の接合が充分でなく、又、圧電セラミック層中のPbが還元されるおそれがある。
【0003】
又、酸素分圧の低い還元雰囲気で焼成を行った際には圧電セラミック層の絶縁抵抗が低下することが判明している(例えば特許文献1参照)。そのため、特許文献1には、この絶縁抵抗の低下を防止するため、PZT系組成物に、Sr、Ca、Baの少なくとも1種を含む成分系を採用し、さらに、圧電セラミック層にCuOを含有させることが記載されている。
又、Cu系電極を用いた圧電素子として、PZT系圧電体層のAサイトに2価の金属イオンを含み、Bサイトに1価の金属イオン(Na、K)を含む組成が開示されている(例えば特許文献2参照)。
又、PZT系圧電体層のAサイトに1価のCuイオンをドープさせるべく、PZT系の原料粉末にCuOを添加して原料混合物を調製し、その原料混合物を不活性条件下で焼成(仮焼)し、圧電体層を構成するためのセラミック材料を得る手法が開示されている(例えば特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3923064号公報
【特許文献2】特表2003−529917号公報(請求項9、請求項16)
【特許文献3】特表2007−507406号公報(請求項4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術の場合、焼成時の酸素分圧を低くしたにも関わらず、電極層に含まれるCuが酸化されて圧電セラミック層に拡散し、圧電特性を劣化させたり、焼結を部分的に促進する等の種々の不具合が生じる。この原因は、焼成時に圧電セラミック層中の酸素成分が吐き出されて局所的な酸化雰囲気が生じ、焼成雰囲気が熱力学的に安定であってもCuが酸化するためと考えられる。また、特許文献3のようにCuをPZT系セラミックにドープするために、出発原料としてCuOを用いる手法では、仮焼工程でCuOが未反応もしくはCuイオンが2価で残存し易い。そして、CuOが未反応もしくはCuイオンが2価で残存した仮焼粉末を用いて未焼成圧電セラミック層を形成すると、本焼成中に1価に還元されることに伴い局所的な酸化雰囲気が発生するため、所望の圧電特性を圧電層、ひいては圧電素子が得られない。
従って本発明は、未焼成の圧電セラミック層及びCu系電極層を積層して焼成する際に、電極層のCuの酸化を抑制し、安定した品質や特性が得られる圧電素子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の圧電素子の製造方法は、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックからなる圧電セラミック層と、Cu系電極層とを交互に積層してなる圧電素子の製造方法であって、
前記チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックの構成材料であるPb(鉛)酸化物、Ti(チタン)酸化物、Zr(ジルコニウム)酸化物の各粉末を混合した原料粉末に、CuOを添加した混合粉末を準備し、前記混合粉末を、CuOがCuに還元されず、かつCuOに酸化されない酸素分圧下で仮焼する仮焼工程と、
仮焼して得られた仮焼粉末を用いて焼成後に前記圧電層となる未焼成圧電セラミック層を作製する工程と、
前記未焼成圧電セラミック層と、焼成後に前記電極層となる未焼成Cu系電極層とを交互に積層して焼成する主焼成工程と、を有する。
このようにすると、圧電セラミック組成物中で一価のCuがPZTのAサイトに位置するようになり、結晶中に酸素欠損を生成するため、主焼成時に圧電セラミック層中の酸素成分が吐き出されて局所的な酸化雰囲気が生じることが抑制される。
【0007】
前記仮焼工程において、湿った窒素、又は窒素と水素の混合ガスを用いて前記酸素分圧を制御することが好ましい。
このようにすると、CuOがCuに還元されず、かつCuOに酸化されない酸素分圧に調整するのが容易となる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、仮焼工程に供される混合粉末として、従来のようにCuOではなく、CuOを添加させ、その上でCuOがCuに還元されず、かつCuOに酸化されない酸素分圧下で仮焼するようにしているので、CuOが確実にチタン酸ジルコン酸鉛系セラミック材料に反応し、当該チタン酸ジルコン酸鉛系材料に1価のCuイオンを確実かつ安定してドープさせた仮焼粉末を得ることができる。そして、この仮称粉末を用いて形成された未焼成の圧電セラミック層とCu系電極層とを積層して焼成することで、電極層のCuの酸化を抑制し、安定した品質や圧電特性が得られる圧電素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る圧電素子の製造方法は、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックの構成材料であるPb(鉛)酸化物、Ti(チタン)酸化物、Zr(ジルコニウム)酸化物の各粉末を混合した原料粉末に、CuOを添加した混合粉末を準備し、この混合粉末を、CuOがCuに還元されず、かつCuOに酸化されない酸素分圧下で仮焼する仮焼工程を有する点が特徴である。
Pb、Ti、Zrは、ペロブスカイト型の結晶構造を持つ酸化物強誘電体であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛;PbZr1-xTixO3)系セラミック材料を構成し、PZTは、Zr及び/またはTiが他の金属元素で置換されたものも含む。
ここで、PZT系セラミック材料は、圧電セラミック層全体のうち、90質量%以上含むようにしている。
【0010】
そして、本実施形態では、1価のCuをPZT系セラミックの構成材料にドープさせてなるものであるが、Pb(鉛)酸化物、Ti(チタン)酸化物、Zr(ジルコニウム)酸化物の各粉末を混合した原料粉末にCuOを添加した混合粉末を以下の酸素分圧下で仮焼すると、CuOを構成する一価のCuがPZTのAサイトに位置するようになり、結晶中に酸素欠損を生成するため、主焼成時に圧電セラミック層中の酸素成分が吐き出されて局所的な酸化雰囲気が生じることが安定して抑制される。
圧電セラミック材料中のPb1molに対し、Cuの含有量をxmolとしたとき、0.001≦x≦0.01を満たすことが好ましい。
xが0.001未満であると酸素欠損の導入量が不十分であるため、局所的な酸化雰囲気の発生により電極層に含まれるCuが酸化され、圧電セラミック層へ拡散するおそれがあり、xが0.01を超えると、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミック材料に対するCu(I)が過剰になり、CuOやCuOといった金属酸化物として析出したりして、圧電特性(圧電定数)が低下することがある。
チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックの構成材料は、第V族または第VI金属を含んでもよい。第V族または第VI族金属は、PZTのBサイトに位置し、圧電セラミック層に電圧が印加された時の変位量(すなわち圧電定数)を増大させる。第V金属としてはNb又はTa、第VI族金属としてはW又はMoが挙げられる。また、同様の理由で、PZTのAサイトに位置して同様の効果を生じさせる、希土類金属を含んでもよい。希土類金属としては、La、Ce、Ndが挙げられる。
【0011】
そして、本実施形態では、Pb(鉛)酸化物、Ti(チタン)酸化物、Zr(ジルコニウム)酸化物の各粉末を混合した原料粉末にCuOを添加してなる上記の混合粉末を、CuOがCuに還元されず、かつCuOに酸化されない酸素分圧下で仮焼し、それを粉砕することで仮焼粉末を得る。この酸素分圧は、エリンガムダイヤグラムにおけるCu−CuO平衡曲線より高く、CuO−CuO平衡曲線より低い領域に相当する。
図1は、Cu−CuO平衡曲線、及びCuO−CuO平衡曲線(エリンガムダイヤグラム)を示す。エリンガムダイヤグラムは、気体(酸素)と反応系との間の反応平衡を表し、横軸に温度(焼成温度)、縦軸に酸素分圧の対数(Log(PO))をとっている。
仮焼雰囲気中の酸素分圧をCu−CuO平衡曲線(B)より高くすることで、CuOがCuに還元されず、又、CuO−CuO平衡曲線(A)より低くすることで、CuOがCuOに酸化されない。そのため、仮焼して得られた仮焼粉末を構成するPZT系セラミック中のCuが1価の状態に維持されて確実にドープされることになり、後述する主焼成時に圧電セラミック層中の酸素成分が吐き出されて局所的な酸化雰囲気が生じることが抑制される。
【0012】
仮焼は、例えば、700〜900℃で1〜10時間程度とすることができる。
又、仮焼の際の酸素分圧の制御は、湿った窒素、又は湿った窒素と水素の混合ガスを用いることが好ましい。湿った窒素は、例えば窒素ガスを水に通して得られる。
【0013】
そして、仮焼して得られた仮焼粉末に、バインダとして樹脂(アクリル樹脂等)を数wt%程度混合してスラリーを形成し、このスラリーからグリーンシートを作製して未焼成圧電セラミック層を得ることができる。
又、未焼成Cu系電極層は、Cu粉末又はCu合金の粉末に、バインダとして樹脂(アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等)を数wt%程度混合してペーストを形成し、スクリーン印刷等により、このペーストを未焼成圧電セラミック層表面に塗布して得ることができる。未焼成圧電セラミック層との密着性を向上させるため、Cu系電極層を構成するCu又はCu合金の粉末に、PZT系材料の粉末を共材として少量混合させてもよい。
【0014】
次に,図2に示すように、未焼成圧電セラミック層2xと、未焼成Cu系電極層4x,6xとを交互に積層して未焼成の素子前駆体10xを製造する。素子前駆体10xにおいて、未焼成Cu系電極層4xは図2の右側面に端部が露出し、未焼成Cu系電極層6xは図2の左側面に端部が露出するよう、各Cu系電極層4x,6xが未焼成圧電セラミック層2xを介し、それぞれ互い違いの向きで配置される。
そして、Cu系電極層となるパターンが形成された未焼成圧電セラミック層2を複数個(通常、数10〜数100)積層し、圧着して所定寸法のピースに切断して素子前駆体10xを得ることができる。
【0015】
次に、焼成炉内に多孔質の焼成サヤ(図示せず)を配置し、焼成サヤに素子前駆体10xを載置し、必要に応じて雰囲気ガスを導入して脱脂を行った後、主焼成を行う。
脱脂は未焼成の圧電セラミック層2xやCu系電極層4x,6x中のバインダを除去するために行われ、好ましくは、最初にバインダを除去するために乾燥窒素(例えば、250〜400℃、10時間程度、10L/min以上程度のガス流量)を炉内に流す。その後、バインダ除去の際に生じたカーボンを除去するため、水蒸気含有窒素(例えば、500〜700℃、3〜36時間程度、10L/min以上程度のガス流量)を炉内に流す。
【0016】
主焼成時の雰囲気ガス中の酸素分圧は、Cuの酸化を防止するため、図1のCu−CuO平衡曲線(B)より低くし、かつ圧電セラミック層中のPbが還元されないよう、図1のPb−PbO平衡曲線(C)より高くする。
主焼成温度は、例えば、900〜1050℃で1〜24時間程度とすることができ、主焼成雰囲気は、例えばアルゴンや窒素といった不活性ガスに水素を加えた混合ガスとすることができる。
又、主焼成の際の酸素分圧の制御は、湿った窒素、又は湿った窒素と水素の混合ガスを用いることが好ましい。湿った窒素は、例えば窒素ガスを水に通して得られる。例えば、主焼成雰囲気ガスとして、水分を含む低酸素含有ガス(N-H-HO系)を用いることができる。
【0017】
そして、主焼成を行った後、側面電極及びリードを形成することにより、図3に示す積層型圧電素子10を製造することができる。積層型圧電素子10は、圧電セラミック層2と、Cu系電極層4,6とを交互に積層してなる四角柱状をなす。又、図3の左側面に露出したCu系電極層4の端部同士が側面電極4bで接続され、さらに側面電極4bの上部にリード4cが接続されている。同様に、図3の右側面に露出したCu系電極層6の端部同士が側面電極6bで接続され、さらに側面電極6bの上部にリード6cが接続されている。そして、リード4c、6c間に電圧を印加することで、Cu系電極層4,6間に挟まれた圧電セラミック層2が圧電効果により動作する。
【0018】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
本発明は、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミック材料を主にした圧電セラミック層の圧電効果を利用したあらゆる積層型圧電素子に適用することができる。
【実施例】
【0019】
組成がPZT(Pb(Zr0.53Ti0.47)O3+W,Cuとなるように、PbO、ZrO2、TiO2、WO3、Cu2Oを所定量(モル比でPbO:ZrO2:TiO2:WO3:Cu2O=1:0.53:0.47:0.01:0.025)秤量し、混合して混合粉末を得た。この混合粉末を、800℃での酸素分圧が1.013×10-1〜1.013×10-2 Pa(10-6〜10-7 atm)である仮焼雰囲気(図1のA−B各曲線の間の領域)で800℃で2時間仮焼し、その後粉砕して仮焼粉末を得た。仮焼雰囲気は50℃の水蒸気を含ませた窒素とした。
仮焼粉末をXRD測定し、ペロブスカイト単相であることを確認した。
【0020】
次に、図4に示すようにして、この仮焼粉末を円盤状にプレスした。プレスの過程で、円盤の片面の中心部分にCu粉末40を配置し(図4(b))、その上にCuを含まない仮焼粉末20を配置してプレスすることにより、Cu粉末(実際の圧電素子のCu電極を模したもの)が未焼成の圧電セラミック体に内蔵されたプレス体を作製した(図4(c))。
又、後述する焼結性を評価するため、Cu粉末を内蔵しないプレス体も作製した。
得られたプレス体を、1000℃での酸素分圧が1.013×10-1〜1.013×10-2 Pa(10-6〜10-7 atm)である主焼成雰囲気(図1のB−C各曲線の間の領域)で1000℃で1時間焼成した。この雰囲気は、Cuが安定な焼成ウィンドウ内にあり、焼成雰囲気は50℃の水蒸気と20ppmの水素を含んだ窒素であった。
【0021】
1.焼結性の評価
Cu粉末を内蔵しないプレス体の焼成体に対し、アルキメデス法による吸水率測定(JIS C 2141を参照)を行い、吸水率が0.05wt%以上の試料の焼結性を×と判定した。
2.Cuの拡散の評価
Cu粉末を内蔵したプレス体の焼成体を軸方向の中心で切断し、断面の圧電セラミック層へ、中央部のCu粉末が拡散したか否かを圧電セラミック層の呈色具合を目視して判定した。圧電セラミック層が褐色に変化したものは、Cu粉末が拡散したものと判定した。
又、目視で圧電セラミック層が褐色に変化しなかった試料については、圧電定数d33[pC/N]を測定し、Cuの拡散状態の評価を行った。圧電定数d33[pC/N]は、圧電現象の正効果(圧力→電気)で応力を加え発生する電荷量で表される。圧電定数d33が大きいほど、負荷により発生する電荷量が大きく(アクチュエータ用途では、変位出力量が大きく)なる。そして、圧電セラミック層にCuが拡散すると、圧電特性が低下してd33が小さくなる傾向にある。
得られた結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1から明らかなように、Pb(鉛)酸化物、Ti(チタン)酸化物、Zr(ジルコニウム)酸化物の各粉末を混合した原料粉末にCuOを添加した混合粉末を仮焼して、その仮焼粉末を圧電セラミック層に用いた実施例1,2の場合、焼結性に優れ、Cuの拡散が見られなかった。
なお、仮焼雰囲気を窒素とした実施例2の方が、仮焼雰囲気を大気とした実施例1に比べて圧電定数d33が大きく、仮焼雰囲気を窒素とするとCuの拡散をさらに抑制できることがわかった。
また、実施例1,2の場合には、圧電定数d33が大きく得られた。このことは、仮焼工程を通じて、1価のCuイオンを安定してチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックにドープさせた仮焼粉末が得られたことに由来するものであり、焼成時に当該仮焼粉末製の圧電セラミック層中の酸素成分が吐き出されて局所的な酸化雰囲気が生じることが抑制されたことによるものといえる。
一方、CuOを含まなかった比較例1の場合、焼結性とCuの拡散性がいずれも劣った。
【0024】
図5(a)は実施例1のプレス体の断面写真を示し、図5(b)は比較例1のプレス体の断面写真を示す。実施例1の場合、圧電セラミック層へのCu粉末(写真の中央部の黒い筋状のもの)の拡散は見られなかったが、比較例1の場合、圧電セラミック層へ斑点状にCuが拡散するのが目視で確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】Pb−PbO、Cu−CuO平衡曲線、及びCuO−CuO平衡曲線(エリンガムダイヤグラム)を示す図である。
【図2】積層型圧電素子の前駆体(素子前駆体)の構成を示す図である。
【図3】積層型圧電素子の構成を示す図である。
【図4】Cu粉末が圧電セラミックに内蔵されたプレス体を作製する工程を示す図である。
【図5】実際のプレス体の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
2 圧電セラミック層
2x 未焼成圧電セラミック層
4、6 Cu系電極層
4x、6x 未焼成Cu系電極層
10 積層型圧電素子
10x 素子前駆体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックからなる圧電セラミック層と、Cu系電極層とを交互に積層してなる圧電素子の製造方法であって、
前記チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックの構成材料であるPb(鉛)酸化物、Ti(チタン)酸化物、Zr(ジルコニウム)酸化物の各粉末を混合した原料粉末に、CuOを添加した混合粉末を準備し、前記混合粉末を、CuOがCuに還元されず、かつCuOに酸化されない酸素分圧下で仮焼する仮焼工程と、
仮焼して得られた仮焼粉末を用いて焼成後に前記圧電層となる未焼成圧電セラミック層を作製する工程と、
前記未焼成圧電セラミック層と、焼成後に前記電極層となる未焼成Cu系電極層とを交互に積層して焼成する主焼成工程と、を有する圧電素子の製造方法。
【請求項2】
前記仮焼工程において、湿った窒素、又は窒素と水素の混合ガスを用いて前記酸素分圧を制御する請求項1記載の圧電素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−251497(P2010−251497A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98734(P2009−98734)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】