説明

圧電駆動装置、圧電駆動方法および電子機器

【課題】圧電アクチュエーターの起動時の効率を大幅に向上することができる圧電駆動装置、圧電駆動方法および電子機器を提供する。
【解決手段】圧電駆動装置は、圧電アクチュエーターと、駆動制御手段とを備える。駆動制御手段は、圧電アクチュエーターの起動初期に行う初期駆動制御と、初期駆動制御後に行う定常駆動制御S5とを実行する。初期駆動制御では、圧電素子に初期駆動信号を印加する初期駆動信号印加制御S1を実行後、圧電素子に駆動信号を印加しない非印加制御S2を実行する。初期駆動信号印加制御から非印加制御に切り替えるタイミングは、初期駆動信号の印加による被駆動体の動作が開始されるまでに設定し、初期駆動制御から定常駆動制御に切り替えるタイミングは、初期駆動信号の印加による被駆動体の動作開始時以降でかつ被駆動体の動作停止時および/または前記圧電素子の放電完了時までに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電駆動装置、圧電駆動方法および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子は、電気エネルギーから機械エネルギーへの変換効率や、応答性に優れている。このため、近年、圧電素子の圧電効果を利用した各種の圧電アクチュエーターが開発されている。
この圧電アクチュエーター(超音波モーター)は、起動時の電力投入量が多くなることなどにより、起動時の効率が悪いという特徴を有している。
そこで、この起動時の効率を改善するための装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、振動型モーターの起動時(電圧印加時)に圧電素子に急激な電荷の充電が開始されることにより、急激な電流が流れ、大きな電力の消耗が行われることを抑える目的で、圧電素子に印加する駆動用交番信号のパルス幅を徐々に広くする方法(請求項1,2,5、実施例1)、起動時の入力パルスのパルス電圧を徐々に上げる方法(請求項1,2,6、実施例2)、起動時の駆動周波数を高くする方法(請求項3、実施例3)が開示されている。
【0004】
特許文献2には、発振回路において、安定した状態で発振成長を開始し、起動時間を有効に短縮するために、振動体の起動初期には低い電圧、その後高い電圧を印加する方法が開示されている。低い電圧の印加時間の規定としては、検出により振幅が安定するまでと、タイマーにより時間を決める方法などが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−215861号公報
【特許文献2】特開2008−99257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1は、駆動用交番信号のパルス幅を徐々に広くしているため、駆動用交番信号の入力は継続されており、被駆動体の動作まで考慮した最良の圧電駆動方法とはいえない。
【0007】
特許文献2は、駆動開始時には低い電圧の第1の電圧信号を印加し、その後、高い電圧の第2の電圧信号を印加しており、電圧信号の入力は駆動開始時から継続されているため、やはり、被駆動体の動作まで考慮した最良の圧電駆動方法とはいえない。
【0008】
このように、従来の技術では圧電アクチュエーターの起動時の効率改善が十分ではないという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、圧電アクチュエーターの起動時の効率を大幅に向上することができる圧電駆動装置、圧電駆動方法および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の圧電駆動装置は、圧電素子を有しこの圧電素子への駆動信号の印加により振動する振動体を備えて前記振動体の振動を被駆動体に伝達する圧電アクチュエーターと、前記圧電アクチュエーターへの駆動信号の印加を制御する駆動制御手段とを備え、前記駆動制御手段は、前記圧電アクチュエーターの起動初期に行う初期駆動制御と、初期駆動制御後に行う定常駆動制御とを実行可能に構成され、前記初期駆動制御では、前記圧電素子に初期駆動信号を印加する初期駆動信号印加制御と、初期駆動信号印加制御を実行後、前記圧電素子に駆動信号を印加しない非印加制御とを実行し、前記初期駆動信号印加制御から非印加制御に切り替えるタイミングは、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作が開始されるまでに設定され、前記初期駆動制御から前記定常駆動制御に切り替えるタイミングは、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作開始時以降で、かつ、前記初期駆動信号の印加によって駆動される前記被駆動体の動作停止時および/または前記初期駆動信号の印加により充電された前記圧電素子の放電完了時までに設定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明者が鋭意研究した結果、圧電アクチュエーターで被駆動体を駆動する際に、起動初期は、振動体の振動が安定するまで被駆動体が駆動しない期間があり、この期間は、駆動信号の印加時間や電流量に関係なく、ほぼ一定であることが判明した。
また、上記起動初期(起動信号を最初に印加した直後)は、圧電素子が放電された状態であるため、駆動信号を印加すると大電流が流れ、消費電力も増大することが判明した。
本発明者は、起動初期には、急激に大きな電流が流れて消費電力が増大する一方で、被駆動体が殆ど動作しない期間が存在するという知見に基づき、本発明に想到したものである。
【0012】
本発明では、前記初期駆動制御において、前記圧電素子に初期駆動信号を印加する初期駆動信号印加制御が実行されるため、初期駆動信号の印加によって圧電素子を充電することができるとともに、振動体を振動させることができる。
この際、前記初期駆動信号印加制御から非印加制御に切り替えるタイミングを、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作が開始されるまでに設定し、前記初期駆動制御において、前記初期駆動信号印加制御を実行後、前記圧電素子に駆動信号を印加しない非印加制御を実行している。このため、圧電アクチュエーターの起動初期における電流量の多い期間における電力の消費を大幅に削減することができる。非印加制御に切り替え後は、圧電アクチュエーターへの駆動信号の印加は終了するが、振動体はすぐに停止するのではなく、減衰振動が継続し、徐々に被駆動体の駆動に適した振動状態に近づくため、被駆動体の駆動が開始される。
そして、本発明では、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の駆動開始後で、かつ、前記初期駆動信号の印加によって駆動される前記被駆動体の動作停止時および/または前記初期駆動信号の印加により充電された前記圧電素子の放電完了時までに、初期駆動制御から定常駆動制御に切り替わるため、振動体の減衰振動を利用しつつ、被駆動体が動いている状態、すなわち振動体の振動の軌跡が被駆動体の駆動に適した形となっている状態で、定常駆動制御による圧電アクチュエーターへの駆動信号の印加を行うことができる。このため、当該駆動信号の印加後すぐに被駆動体を加速させることができる。これにより立ち上がりの印加時間が短縮され、電力消費を抑えることができる。
前記被駆動体の動作停止時および/または前記圧電素子の放電完了時までとは、1)前記被駆動体の動作停止時まで、2)前記圧電素子の放電完了時まで、3)前記被駆動体の動作停止時まで、かつ、前記圧電素子の放電完了時まで、の3パターンをいう。
【0013】
以上のように、本発明は、初期駆動制御によって振動体の振動を開始しながら、振動体が実際に被駆動体を駆動できる状態になるまでにはタイムラグがある点、および、このタイムラグ期間は被駆動体を駆動できない一方で大電流が流れやすく消費電力も増大する点を考慮し、このような期間は駆動信号を印加しない非印加期間とすることで、消費電力を抑制し、電力の消耗を低減させることができる。
振動体は、非印加期間で駆動信号を印加していない間も減衰振動が行われるため、ある一定期間以内に定常駆動制御を開始すれば、つまり被駆動体の駆動が停止する前に定常駆動制御を開始すれば、被駆動体の駆動状態において定常駆動制御における駆動信号を印加することができ、被駆動体の立ち上がり時間を短縮でき、消費電力も低減できる。
すなわち、前記定常駆動制御に切り替えるタイミングを、被駆動体の駆動が停止する前、特に振動体が停止する前に設定すれば、振動体が振動している状態で定常駆動用の信号を印加でき、定常駆動制御開始後における被駆動体の立ち上がりに要する時間を短縮できる。このため、駆動信号の非印加期間を設けたにもかかわらず、非印加期間を設けなかった場合と同程度の時間で被駆動体を立ち上げることができ、駆動信号の印加時間も短縮できるため、電力の消耗を低減させることができる。
また、前記定常駆動制御に切り替えるタイミングを、前記初期駆動信号の印加により充電された前記圧電素子の放電完了時までに設定すれば、定常駆動制御による圧電アクチュエーターへの駆動信号の印加の際に、起動時のような急激な電流が流れるのを抑えることができ、電力を低減することができる。
【0014】
前記定常駆動制御への切り替えのタイミングを、前記被駆動体の動作停止時までであり、かつ、前記初期駆動信号の印加により充電された前記圧電素子の放電完了時までに設定すれば、前述した被駆動体が動いている状態での駆動信号の印加による被駆動体が動き出すまでの時間の短縮と、起動時のような急激な電流が流れることを防止することによる電力の低減の両方を実現することができる。
これらのことから、本発明の圧電駆動装置によれば、圧電アクチュエーターの起動時の効率を向上させることができる。
【0015】
本発明において、前記定常駆動制御への切り替えのタイミングは、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作速度が所定値以上となるタイミングに設定されていることが好ましい。
これにより、初期駆動信号の印加による被駆動体の動作速度がほぼ所定値以上の状態から駆動信号の印加による加速が開始されるため、被駆動体の移動量が所定距離に到達するまでの定常駆動制御の時間が短縮され、電力消費を抑えることができる。
なお、本発明の切替タイミングの具体的な設定は、初期駆動信号を印加した際の被駆動体の動作速度を予め実験等で測定しておき、その実験結果に基づいて設定すればよい。
ここで、定常駆動制御中の駆動信号は、駆動に適する周波数の交番信号であり、この信号は固定周波数でも良いし、位相差制御等の制御により常に最適な周波数に制御されていても良い。駆動に適する周波数とは、駆動させたい振動モードが励振される周波数であり、例えば、縦共振および屈曲共振を利用して駆動する圧電アクチュエーターの駆動を制御する場合には、縦振動の共振周波数と屈曲振動の共振周波数の間の周波数となる。
【0016】
本発明において、前記初期駆動信号の印加制御期間は、前記初期駆動信号の印加に伴って圧電素子に流れる電流が所定値以下となるように設定されていることが好ましい。
これにより、初期駆動信号を印加する際に流れる電流値を所定値以下に抑えることができ、そのため電力消耗を制限することができ、消費電力を減らすことができる。また、大電流が流れることを防止できるため、電源の負荷を低減できる。
なお、本発明の切替タイミングの具体的な設定は、初期駆動信号を印加した際の電流値の変化を予め実験等で測定しておき、その実験結果に基づいて設定すればよい。
ここで、初期駆動制御中の駆動信号は、駆動に適する周波数の交番信号であり、この信号は固定周波数でも良いし、前回の定常駆動制御で位相差制御等の制御により最適となった周波数に制御されていてもよい。
【0017】
本発明において、前記初期駆動信号は、デューティー比が50%の交番信号で構成されていることが好ましい。
一般に圧電アクチュエーターは電圧制御発振回路(VCO(Voltage Controlled Oscillator))を使ってドライバーをオン、オフすることで駆動しており、電圧制御発振回路はデューティー比が50%の信号を扱う構成とされていることが多い。初期駆動信号のデューティー比と電圧制御発信回路の対応するデューティー比とが異なる場合には、デューティー比の変換が必要となるが、デューティー比を変えるためには、電圧制御発振回路の信号を変換回路に入力して出力する必要がある。この場合、このデューティー比を変換する回路のために、駆動信号の周波数よりも更に速いクロックが必要となり、余分な構成が増える。電圧制御発振回路の内部においてアナログ回路でデューティー比を変更する回路を構成したとしても、アナログ回路は回路規模が大きくなり、余分な構成が増えることになる。
一方、初期駆動信号をデューティー比が50%の交番信号とすれば、回路に余分な構成を増やすことなく初期駆動信号を生成することができる。
【0018】
なお、本発明において、前記初期駆動信号の出力を制御するパルスは、パルスを1発入力するだけのものでもよいし、パルスを複数発(例えば2〜3発)入力するものでもよい。
これにより、初期駆動信号印加制御を行う初期駆動期間の長さを、例えば消費電流などに基づいて短く設定(例えば0.2msec等)する必要があるような場合であっても、パルス数を増やすことによって対処することができる。
【0019】
本発明において、前記定常駆動制御への切り替えのタイミングを、前記振動体に設けた検出電極から得られる検出信号に基づき決定することが好ましい。
振動体表面の電極に検出電極を設けておくと、圧電素子の伸縮に応じて検出信号が出力される。検出信号は振動の減衰中も発生するので、検出信号の電圧が所定値を下回ると振動が極めて小さくなったと判断できる。振動体の動作にばらつきがあり、被駆動体の動作開始時もばらつく可能性が高いが、検出によって定常駆動制御への切り替えのタイミングを決めることにより、安定して被駆動体を起動することができ、消費電力も低減できる。
【0020】
本発明の圧電駆動方法は、圧電素子を有しこの圧電素子への駆動信号の印加により振動する振動体を備えて前記振動体の振動を被駆動体に伝達する圧電アクチュエーターを駆動する圧電駆動方法であって、前記圧電アクチュエーターの起動初期に行う初期駆動制御と、初期駆動制御後に行う定常駆動制御とを実行し、前記初期駆動制御では、前記圧電素子に初期駆動信号を印加する初期駆動信号印加制御と、初期駆動信号印加制御を実行後、前記圧電素子に駆動信号を印加しない非印加制御とを実行し、前記初期駆動信号印加制御から非印加制御に切り替えるタイミングを、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作が開始されるまでに設定し、前記初期駆動制御から前記定常駆動制御に切り替えるタイミングを、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作開始時以降で、かつ、前記初期駆動信号の印加によって駆動される前記被駆動体の動作停止時および/または前記初期駆動信号の印加により充電された前記圧電素子の放電完了時までに設定することを特徴とする。
【0021】
本発明の電子機器は、圧電素子を有する振動体を備えた圧電アクチュエーターと、前記本発明のいずれかの圧電駆動装置と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
これらの圧電駆動方法や電子機器においても、前述した圧電駆動装置と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、圧電アクチュエーターの起動時の効率を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る電子時計の概略構成を示す図である。
【図2】前記電子時計における日付表示機構の詳細な構成を示す平面図である。
【図3】駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】駆動信号の印加時間別の被駆動体の速度変化を示す図である。
【図5】駆動信号の印加時間別の電力変化を示す図である。
【図6】駆動制御方法の制御の流れを示すフローチャートである。
【図7】被駆動体の動作距離が所定値に達するまでの時間を示す図である。
【図8】被駆動体の動作距離が所定値に達するまでの定常駆動制御での駆動信号の印加時間を示す図である。
【図9】被駆動体の動作速度の変化を示す図である。
【図10】動作速度の最大時に駆動信号を印加した場合における説明図である。
【図11】駆動信号の波形を示す拡大図である。
【図12】定常駆動制御への切替タイミングを放電完了前とした場合の説明図である。
【図13】変形例による初期パルスを用いた場合における説明図である。
【図14】変形例における駆動信号の波形を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.全体構成〕
図1は、本実施形態における電子機器としての電子時計1の概略構成を示す図である。図2は、電子時計1における日付表示機構10の詳細な構成を示す平面図である。
図1に示すように、電子時計1は、時刻を表示する指針2と、この指針2を駆動するステッピングモーター3とを備えた腕時計である。ステッピングモーター3の駆動は、発振回路4、分周回路5、および駆動回路6により制御される。発振回路4は、水晶振動体からなる基準発振源を有し、基準パルスを出力するものである。分周回路5は、発振回路4から出力された基準パルスを入力し、この基準パルスに基づいて基準信号(例えば1Hzの信号)を生成する。駆動回路6は、分周回路5から出力された基準信号に基づいて、ステッピングモーター3を駆動するモーター駆動パルスを発生する。
電子時計1の日付表示機構10は、圧電アクチュエーターAと、この圧電アクチュエーターAを駆動制御する駆動制御装置100とを備えている。この駆動制御装置100は、電子時計1の時刻(例えば、24時)を検出して開閉するスイッチ8をトリガーとして作動し、日付表示機構10を駆動するようになっている。本実施形態では、スイッチ8は、24時を検出すると検出信号を駆動制御装置100に出力する。駆動制御装置100は、この検出信号によって圧電アクチュエーターAの駆動制御を開始する。この駆動制御の開始によって圧電アクチュエーターAの駆動が開始される。
【0026】
図2に示すように、日付表示機構10の主要部は、圧電アクチュエーターAと、この圧電アクチュエーターAによって回転駆動される駆動対象(被駆動体)としてのローター20と、ローター20の回転を減速しつつ伝達する減速輪列と、減速輪列を介して伝達される駆動力により回転する日車50とから大略構成されている。減速輪列は、日回し中間車30と日回し車40とを備えている。これらの圧電アクチュエーターA、ローター20、日回し中間車30、および日回し車40は、底板11に支持されている。圧電アクチュエーターAは、扁平な短冊状の振動体12を有しており、この振動体12は、その先端部がローター20の外周面と当接するように配置されている。日付表示機構10の上方には、図1に示すように、円盤状の文字板7が設けられており、この文字板7の外周部の一部には日付を表示するための窓部7Aが設けられ、窓部7Aから日車50の日付を覗けるようになっている。また、底板11の下方(裏側)には、ステッピングモーター3に接続されて指針2を駆動するムーブメント等が設けられている。
【0027】
日回し中間車30は、大径部31と小径部32とから構成されている。小径部32は、大径部31よりも若干小径の円筒形であり、その外周面には、略正方形状の切欠部33が形成されている。この小径部32は、大径部31に対し、同心をなすように固着されている。大径部31には、ローター20の上部の歯車21が噛合している。したがって、大径部31と小径部32とからなる日回し中間車30は、ローター20の回転に連動して回転する。
日回し中間車30の側方の底板11には、板バネ34が設けられており、この板バネ34の基端部が底板11に固定され、先端部34Aが略V字状に折り曲げられて形成されている。板バネ34の先端部34Aは、日回し中間車30の切欠部33に出入可能に設けられている。板バネ34に近接した位置には、接触子35が配置されており、この接触子35は、日回し中間車30が回転し、板バネ34の先端部34Aが切欠部33に入り込んだときに、板バネ34と接触するようになっている。そして、板バネ34には、所定の電圧が印加されており、接触子35に接触すると、その電圧が接触子35にも印加される。したがって、接触子35の電圧を検出することによって、日送り状態を検出でき、日車50の1日分の回転量が検出できる。
なお、日車50の回転量は、板バネ34や接触子35を用いたものに限らず、ローター20や日回し中間車30の回転状態を検出して所定のパルス信号を出力するものなどが利用でき、具体的には、公知のフォトリフレクター、フォトインタラプター、MRセンサー等の各種の回転エンコーダー等が利用できる。
【0028】
日車50は、リング状の形状をしており、その内周面に内歯車51が形成されている。日回し車40は、五歯の歯車を有しており、日車50の内歯車51に噛合している。また、日回し車40の中心には、シャフト41が設けられており、このシャフト41は、底板11に形成された貫通孔42に遊挿されている。貫通孔42は、日車50の周回方向に沿って長く形成されている。そして、日回し車40およびシャフト41は、底板11に固定された板バネ43によって図2の右上方向に付勢されている。この板バネ43の付勢作用によって日車50の揺動も防止される。
【0029】
圧電アクチュエーターAの振動体12は、二長辺と二短辺(例えば長辺長さと短辺長さの比をほぼ7対2とした長辺と短辺)とにより囲まれた長方形状の板である。その長方形を例示すれば、長辺×短辺が、7mm×2mmから3.3mm×1mmまでの間の寸法である。また、振動体12は、2枚の長方形かつ板状の圧電素子の間に、これらの圧電素子と略同形状であり、かつ圧電素子よりも肉厚の薄いステンレス鋼等の補強板を挟んだ積層構造を有している。圧電素子としては、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT(商標))、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等の各種のものを用いることができる。
振動体12は、一短辺の幅方向略端部に当接部13を有している。この当接部13は、補強板を切断成形する等の方法により得られたものであり、緩やかな曲面を持った先端部分を圧電素子から突出させている。振動体12は、前記当接部13が幅方向の一方の端部側に配置され、幅方向に重量アンバランスが生じるように構成されている。振動体12は、この当接部13の先端をローター20の外周面に当接させる姿勢を保っている。振動体12にこのような姿勢を維持させるために、支持部材14と付勢部材15とが圧電アクチュエーターAに設けられている。なお、当接部13が形成された短辺でない他方の短辺にも当接部13と同様の大きさのバランス用突起部13Aが形成されている。このバランス用突起部13Aは、振動体12の平面形状の中心点に対して点対称位置に設けられている。
【0030】
圧電アクチュエーターAの支持部材14は、補強板の切断成形等の方法により補強板と一体形成されたものである。この支持部材14は、L字状の部材であり、振動体12の一長辺の略中央から垂直に突出した垂直部と、この垂直部の先端から長辺に対して平行にローター20側に向けて延びた水平部とからなる。垂直部とは反対側の水平部の端部には、底板11から突出したピンが貫通しており、このピンを回転軸として支持部材14およびこれに固定された振動体12が回転可能である。支持部材14の水平部の略中央には、付勢部材15の一端が係合されている。付勢部材15は、その略中央部分を底板11から突出したピンが貫通しており、このピンを回転軸として回動可能である。また、支持部材14と反対側の付勢部材15の端部は、底板11に係合されており、この端部の位置を変えることにより振動体12の当接部13をローター20の外周面に押し当てる圧力が調整可能になっている。
【0031】
以上の構成において、圧電アクチュエーターAの振動体12は、駆動制御装置100から所定の周波数の駆動信号が圧電素子に印加されることで第1の振動モード(主振動モード)である縦振動が励振し、前記当接部13と前記バランス用突起部13Aとによって重量アンバランスが生じているため、縦振動に誘発されて第2の振動モード(副振動モード)である屈曲振動が励振し、これらの振動が混合されて、その板面を含む平面内において当接部13が楕円軌道を描いて運動する。ローター20は、この振動体12の当接部13によってその外周面が叩かれ、図2中矢印で示すように、時計回りに回転駆動される。このローター20の回転は、日回し中間車30を介して日回し車40に伝達され、この日回し車40が日車50を時計回り方向に回転させる。このような振動体12からローター20、ローター20から減速輪列(日回し中間車30および日回し車40)、減速輪列から日車50への力の伝達は、いずれも振動体12の底板11面に平行な方向の力の伝達である。このため、ステップモーターのようにコイルやローターを厚さ方向に積み重ねるのではなく、同一平面内に振動体12およびローター20を配置し、日付表示機構10を薄型化できる。そして、日付表示機構10を薄型にできるため、電子時計1全体を薄型にできる。
【0032】
〔2.圧電アクチュエーターの駆動制御装置の構成〕
次に、本実施形態の駆動制御装置100について、図3のブロック図に基づいて説明する。
図3に示すように、圧電アクチュエーターAを駆動制御する駆動制御装置100は、圧電素子17へ出力する駆動信号と圧電素子17で検出される検出信号との位相差を検出し、位相差に相当する電圧値の位相差電圧信号を出力する位相差−電圧変換回路101と、位相差を比較するための基準電圧と振幅信号を検出するための基準電圧とをそれぞれ出力する定電圧回路102と、この定電圧回路102で出力される位相比較用基準電圧と位相差−電圧変換回路101から出力される位相差電圧とを比較して比較結果信号を出力する比較回路103と、比較結果信号を受けて出力電圧を制御する電圧調整回路104と、圧電素子17に対して駆動信号を出力する駆動回路(ドライバー)105と、この電圧調整回路104で出力された電圧に対応して駆動回路105に出力する周波数を調整する電圧制御発振器(VCO)106と、定電圧回路102で出力される振幅検出用基準電圧と圧電素子17の振幅信号とを比較して振幅信号を検出する振幅検出回路107と、を備えている。
【0033】
電圧調整回路104は、比較回路103から出力された信号に基づいて、電圧制御発振器106に印加する電圧レベルを制御する電圧制御機能と、振幅検出回路107で出力された信号に基づいて所定時間当たりの電圧制御量を調整する制御速度調整機能とを有する。
駆動回路105は、電圧調整回路104および電圧制御発振器106で制御された周波数の駆動信号を圧電素子17に出力する。これら構成によって駆動制御装置100は、駆動信号と検出信号との位相差を常に検出(スキャン)して基準位相差と比較し、検出位相差が基準位相差に近づくように最適駆動周波数の制御を行う。この最適駆動周波数は、縦振動の共振周波数と屈曲振動の共振周波数との間に存在するものである。
また、駆動回路105は、圧電アクチュエーターAの駆動開始時から所定時間後の所定のタイミングにおいて圧電素子17への駆動信号の出力を切り替える出力制御機能を有する。例えば、この所定のタイミングは、タイマー回路などを用いてスイッチ8から検出信号が入力されてからの時間を計測することによって検出できる。このように、圧電素子17への駆動信号の印加・非印加は、この出力制御機能によって制御される。出力制御機能は、設定に応じた所定タイミングにおいて制御パルスを生成して、生成した制御パルスに基づき電圧制御発振器106への出力のオン・オフの切り替えを行う。例えば、電圧制御発振器106からの出力と、生成した制御パルスとを、ANDゲートに入力し、出力信号を圧電素子17に出力することによって、生成した制御パルスのタイミングにおいて、駆動信号の印加・非印加が制御される。なお、この印加・非印加の制御は、電圧調整回路104、電圧制御発振器106の内部において行ってもよい。
【0034】
〔3.圧電アクチュエーターの駆動制御方法〕
このような本実施形態では、24時検出手段(スイッチ)8によって電子時計1の時刻が24時になったことを検出すると、上記検出信号が、駆動制御装置100の電源電池をオン・オフするスイッチ(図示せず)をオンする。このため駆動制御装置100が上記のように動作することによって圧電アクチュエーターAが作動されて、日車50の日送り動作が行われる。
ここで、圧電アクチュエーターAの起動時の動作について説明する。駆動信号の印加開始時には、圧電アクチュエーターAには、縦振動のみが生じて直線運動だけとなるが、徐々に屈曲振動が生じる。すると、縦振動と屈曲振動の相乗作用により楕円振動が起こり、徐々に楕円が大きくなっていく。ある程度の大きさの楕円運動に達すると、当接部13がローター20を駆動することができるようになる。また、前記駆動信号の印加開始時直後には、当接部13とローター20との摩擦により、当接部13が多少運動してもローター20が駆動されにくくなっている。従って、駆動信号の印加開始時直後には、振動体12が振動しても、ローター20が動作しない期間が存在する。
【0035】
図4は、駆動信号の印加時間別のローター20の速度変化を示している。図4において横軸は圧電アクチュエーターAの起動開始時(圧電アクチュエーターAへの駆動信号の印加開始時)からの時間[msec]であり、縦軸はローター20の速度[mm/sec]である。駆動信号の印加時間としては、0.06〜4msecにおける7条件について示している。図示するように、いずれの条件でもローター20が動き出すまでの時間は、起動開始時(駆動信号の印加開始時)から0.5msec程度経過後でありほぼ一定である。すなわち、駆動信号を0.5msec以上印加し続けた場合でも、0.5msec未満しか印加しない場合でも、ローター20が動き出すのは起動開始後0.5msec程度経過した時点である。この現象は、駆動信号として印加する電圧を変えた場合でもほとんど変化しない。
【0036】
前述したように、振動体12は、駆動信号を印加すると2つ以上の混合モードで動作(振動)し、ローター20との当接部13が楕円の軌跡を描くように振動する。起動初期の振動の様子を細かく見ると、振動体12の長手方向(縦方向)の振動から徐々に幅方向に傾きが変化し、ある所定の角度で安定する。この所定の角度は振動体12の縦共振周波数と屈曲共振周波数の間隔、および駆動する周波数によって決まる。この間隔は主に振動体12の縦寸法と横寸法によって決まる。
【0037】
共振振動を利用した振動体12では、駆動信号を印加した後、徐々に振幅が増大し、一定の振幅となる。振動体12は、駆動信号の印加後、縦振動による振幅が徐々に増大する。縦振動が励振されると、それに追従して屈曲振動も徐々に増大するが、遅れがあるため、縦方向から徐々に屈曲振動の方向に傾きが変化し、一定時間後に安定する。
この安定までの時間は振幅が小さいことと、接触する際の傾きが駆動に適さないために、振動体12は振動していてもローター20が動き出さないという現象が生じる。よって、このローター20の動き出しまでの期間は駆動信号を入力して無駄な時間といえる。なお、この期間を過ぎるとローター20の動作が加速する期間となるが、ローター20が動き出した直後は振動体12の当接部13のスピードが速く、ローター20との速度差が大きいため、力の伝達率が低く、加速は遅くなる。
【0038】
また、圧電素子17への駆動信号入力が開始される駆動初期は、圧電素子17が放電されている状態で駆動信号が入力されるため、圧電素子17に流れる電流量が多くなり、消費電力も増大する。
図5は、駆動信号の印加時間別の電力変化を示している。図5において横軸は圧電アクチュエーターAの起動開始時(圧電アクチュエーターAへの駆動信号の印加開始時)からの時間[msec]であり、縦軸は、駆動信号の印加による消費電力[mW]である。駆動信号の印加時間としては、図4の場合と同様、0.06〜4msecにおける7条件について示している。図示するように、いずれの条件の場合も、駆動信号の印加直後は電力が高く、0.2msecあたりで電力のピークが生じ、しばらく変動が続き、1msec程度経過すると安定する。
【0039】
以上を踏まえ、本実施形態の駆動制御装置100は、圧電アクチュエーターAの起動初期に行う初期駆動制御と、初期駆動制御後に行う定常駆動制御とを実行する。初期駆動制御では、圧電素子17に初期駆動信号を印加する初期駆動信号印加制御を実行後、圧電素子17に駆動信号を印加しない非印加制御を実行する。
初期駆動信号印加制御から非印加制御に切り替えるタイミングは、初期駆動信号の印加によるローター20の動作が開始されるまで、つまりローター20の動作が開始されるより短い時間に設定する。初期駆動制御から定常駆動制御に切り替えるタイミングは、ローター20の動作開始時以降で、かつ、ローター20の動作停止時および初期駆動信号の印加により充電された圧電素子17の放電完了時までに設定している。圧電素子17の充電とは、圧電素子17に電荷が充電されることをいい、圧電素子17の放電とは、圧電素子17の電荷が放電されることをいう。
【0040】
図6は、本実施形態による駆動制御方法の制御の流れを示す。圧電アクチュエーターAが起動すると、駆動制御装置100によって、先ず、初期駆動信号印加制御が行われ、駆動回路105から圧電素子17に初期駆動信号が印加される(ステップS1)。初期駆動信号は、電圧調整回路104および電圧制御発振器106が駆動回路105を制御することによって圧電素子17に印加される。
【0041】
ステップS1において初期駆動信号の印加開始後、非印加制御への切替タイミングであるか否かが判定される(ステップS2)。この判定は、起動時から予め設定してある所定期間が経過したか否かによって行われる。この所定期間の経過は、前記のようにタイマー回路などによって検出することができる。所定期間が経過していない場合には切替タイミングでないと判定され、所定期間が経過した場合には切替タイミングであると判定される。
【0042】
ステップS2における判定が「No」、すなわち非印加制御への切替タイミングでないと判定された場合には初期駆動信号印加制御によって初期駆動信号の印加が継続される。ステップS2における判定が「Yes」、すなわち非印加制御への切替タイミングであると判定された場合には非印加制御が開始され、初期駆動信号の印加が停止される(ステップS3)。
【0043】
非印加制御の開始後、定常駆動制御への切替タイミングであるか否かが判定される(ステップS4)。この判定も、起動時から予め設定してある所定期間が経過したか否かによって行われる。この所定期間の経過も、前記のようにタイマー回路などによって検出することができる。所定期間が経過していない場合には切替タイミングでないと判定され、所定期間が経過した場合には切替タイミングであると判定される。ステップS4における判定が「No」、すなわち定常駆動制御への切替タイミングでないと判定された場合には非印加制御(非印加状態)が継続される。ステップS4における判定が「Yes」、すなわち定常駆動制御への切替タイミングであると判定された場合には定常駆動制御が開始され、定常駆動信号の印加が開始される(ステップS5)。
定常駆動制御の開始後は、通常の駆動制御状態となる。すなわち、図3に示すように、駆動信号および検出信号の位相差に基づいて駆動信号の周波数が制御される。その後、接触子35の電圧検出に基づき定常駆動信号の印加が停止され、圧電アクチュエーターAの駆動が停止されて日送りが終了する。
【0044】
[初期駆動信号の印加期間]
本実施形態において、ステップS2で判定される初期駆動信号の印加期間(非印加制御への切替タイミング)は、具体的には次のように設定している。
すなわち、図4に示すような特性の圧電アクチュエーターAの場合、前述した電力の観点および所定時間との関係から、初期駆動信号の印加期間つまり非印加制御への切替タイミングは、ローター20の動作開始時までの0.5msec以内に設定される。初期駆動信号の印加時間が0.5msec以内であってもローター20が0.5msec後において動作するのは、定常駆動信号の印加をした場合と同様の原理で、減衰中もその縦振動によって屈曲振動が励振され、傾きが屈曲方向に変化し、ふくらみが増して駆動に適する形になるためである。
本実施形態では、図5に示すように、約0.2msecあたりで電力がピークになる点を考慮し、初期駆動信号の印加開始から0.2msec以内に非印加制御に切り替えるように設定している。従って、起動時から所定期間(例えば0.2msec)経過すると、ステップS2で「Yes」と判定される。この所定期間の経過も、前記のようにタイマー回路などによって検出することができる。
【0045】
[初期駆動制御期間]
本実施形態において、ステップS4で判定される初期駆動制御期間(定常駆動制御への切替タイミング)は、ローター20の動作開始時から初期駆動信号の印加終了に伴う動作停止時かつ初期駆動信号の印加により充電された圧電素子17の放電完了時までの期間内に設定される。
例えば、図4に示す例の場合、駆動信号の印加時間が0.2msecである場合には、ローター20の動作開始は初期駆動制御の開始から約0.5msec経過時であり、ローター20の動作停止は約2.75msec経過時となる。従って、この範囲(0.5〜2.75msec)の中で予め定常駆動制御への切替タイミングを設定しておけばよい。
【0046】
なお、定常駆動制御への切替タイミングは、振動体12の振動状態を検出して設定することもできる。この振動体12の振動状態は、圧電素子17の検出信号を振幅検出回路107で検出することで判断できる。すなわち、振動体12の振動が小さくなった場合には検出信号も小さくなるため、この検出信号に基づき、振動体12の振動状態を判断し、前記検出信号の電圧が所定値以下になったら定常駆動制御に切り替えるように制御することもできる。
このように振動状態を検出して切替タイミングを調整すれば、振動体12の動作にばらつきがあり、ローター20の動作開始時や停止時もばらつく可能性がある場合でも、安定して定常駆動制御に切り替えることができ、電力を削減でき、ローター20も確実に起動することができる。
【0047】
ここで、定常駆動制御への切替タイミングの設定について図面を参照して詳細に説明する。
図7は、ローター20の動作距離が所定距離に達するまでの時間(駆動終了時間)を示している。図7において横軸は圧電アクチュエーターAの初期駆動信号印加時からの定常駆動信号印加開始時間[msec]であり、縦軸はローター20の移動距離が0.45mmに達するまでの駆動終了時間[msec]である。初期駆動信号の印加時間としては、0.06msec、0.1msec、0.2msecの3条件について示している。
【0048】
例えば、初期駆動信号の印加時間を0.2msecとし、定常駆動信号の印加を1.5msecから行った場合、駆動終了時間は4.8msec程度である。初期駆動制御を行わず、起動開始時から定常駆動信号のみの印加により駆動した場合、駆動終了時間は4.4msec程度であるため、定常駆動信号のみと比較すると0.3msec程度駆動終了時間が遅くなることになる。しかし、同じように初期駆動信号の印加時間が0.2msecの場合であっても、定常駆動信号の印加を1msec以内から行った場合においては、起動終了時間がほとんど変わらないことがわかる。これによって、ローター20の動作距離を所定値まで早く達成するようにするには、ローター20が動作を開始した後、定常駆動信号を早い段階で印加するのがよいことがわかる。つまり、定常駆動制御への切替タイミングをローター20の動作開始後すぐに設定することによって、ローター20が所定角度回転するまでの時間を駆動信号を入力し続けた場合と同程度に短縮できる。
【0049】
図8は、ローター20の動作距離が所定位置に到達するまでの定常駆動信号の印加時間[msec]を示している。また、図9は、定常駆動信号の印加時における初期駆動信号の印加によるローター20の動作速度の変化を示している。図8および図9において横軸は圧電アクチュエーターAの初期駆動信号の印加時からの定常駆動信号印加開始時間[msec]である。図8において縦軸はローター20の移動距離が0.45mmに到達するまでの定常駆動信号の印加時間[msec]である。また、図9において縦軸はローター20の定常駆動信号印加開始時速度[mm/s]である。初期駆動信号の印加時間としては、図7の場合と同様、ともに0.06msec、0.1msec、0.2msecの3条件について示している。
【0050】
例えば、初期駆動信号の印加を0.2msecとし、定常駆動信号の印加を、ローター20の最大速度付近(図9参照)である1.4msecから行った場合、印加時間は3.55msec程度である。初期駆動信号を使用せず、起動開始時から定常駆動信号のみの印加により駆動した場合、印加時間は4.4msec程度であるため、定常駆動信号のみの場合と比較すると、0.85msec程度印加時間が短縮されている。消費電力は印加時間にほぼ比例するため、印加時間が短い場合、電力を削減することができる。この電力削減の効果は、一回に移動させる距離が短い使い方ほど、効果が大きくなる。
一方、定常駆動信号の印加を0.5msec程度から行った場合は、定常駆動信号のみの場合との印加時間の差は小さくなり、その分、電力削減効果も減少する。これにより電力を抑えるためには、初期駆動信号を印加したことによるローター20の動作速度の最大値付近において定常駆動信号の印加を開始するとよいことがわかる。
すなわち、定常駆動信号の印加開始が初期駆動信号の減衰中であっても、すでに屈曲が励振されているので、初期駆動信号の入力時のように傾きや膨らみが適する形になるまでの0.5msec程度の時間は必要なく、定常駆動信号の印加後すぐに振動が立ち上がると考えられる。従って、振動体12の軌跡が駆動に適する形であれば定常駆動信号の印加直後からローター20も加速する。このときの加速は、初期駆動信号の印加により定常駆動信号の印加時点までに達していた速度から加速していくと考えられる。このため、ローター20の動作速度が最大となる付近において定常駆動信号を印加すれば、所定の動作速度または動作位置までの印加時間が最も効率よく短縮され、電力を抑えることができる。
【0051】
また、定常駆動信号の印加時期は圧電素子17の放電完了時までとしているのは、圧電素子17が放電しきってしまうと、定常駆動信号の印加時には、起動時の充電と同様に急激な電流が流れることになるためである。放電完了時前に定常駆動信号を印加することによって、定常駆動信号の印加の際に起動開始時と同様の電力消費となることを防止することができ、起動の際の効率を上げることができる。
【0052】
図10は、初期駆動信号の印加による被駆動体(ローター20)の動作速度が最大のときに定常駆動信号を印加した場合の被駆動体の速度変化、電力変化および振動体12の振動の一例を示している。図11は、駆動信号の波形を示す拡大図である。
図10、11において、駆動信号の印加タイミングは、制御パルスによって制御されている。制御パルスにおける初期パルスは、初期駆動制御により圧電素子17に印加される初期駆動信号を出力するために駆動回路105で生成されるパルスであり、初期パルスが出力されている間(オン状態の間)、初期駆動信号が出力される。また、他の制御パルスである定常駆動パルスは、定常駆動制御により圧電素子17へ印加される定常駆動信号を出力するために駆動回路105で生成されるパルスであり、定常駆動パルスが出力されている間、定常駆動信号が出力される。
図中、a点は初期駆動信号印加制御から非印加制御への切替タイミングであり、b点はローター20の動作開始時であり、c点は定常駆動制御への切替タイミング、すなわちローター20の動作速度の最大点である。また、c点は、初期駆動制御(非印加制御)から定常駆動制御に切り替えるタイミングであり、このタイミングは圧電素子17の充電電荷が放電しきる前、および当然のことながら振動体12の振動が停止する前である。
例えば、図10において例示すれば、初期駆動信号印加制御(初期駆動信号の印加)の開始からa点(初期駆動信号の印加停止時)までは0.1msec、初期駆動信号印加制御の開始からb点(被駆動体の動作開始時)までは0.5msec、初期駆動信号印加制御の開始からc点(定常駆動制御の開始時)までは1.5msecである。
【0053】
本例では、初期駆動信号印加制御において一つの初期パルスによって初期駆動信号を印加しており、初期駆動信号として、定常駆動信号と同様の駆動信号を所定時間印加している。定常駆動信号と同様の駆動信号を印加することによって、初期駆動信号を生成するための回路を別途設ける必要がなくなる。例えば、定常駆動制御では、定常駆動信号として、500kHz〜400kHzの周波数を有した駆動信号が印加され続けられ、これに合わせて初期駆動制御においても初期駆動信号として同様の駆動信号が印加される。
定常駆動信号は、圧電アクチュエーターAの駆動に最適となる周波数に設定されている。駆動に最適となる周波数は前述したように、駆動信号および検出信号の位相差に基づいて設定される。これにより、ローター20の起動後は、すぐに効率の良い通常の駆動に移行することができる。なお、初期駆動信号、定常駆動信号の波形は、特に限定されるものではなく、正弦波、矩形波、三角波、のこぎり波など種々の波形で構成することができる。
【0054】
「被駆動体の速度変化」に示すように、初期駆動信号の印加による動作速度の最大点から定常駆動信号を印加した場合、印加直後(c点経過直後)の速度変化は、図4の場合よりも大きいことがわかる。また、「電力変化」に示すように、図5に示した電力の高い起動初期のほとんどを初期駆動信号の非印加期間としていることにより、大幅に電力を削減できることがわかる。なお、このように定常駆動信号は、被駆動体の動作速度の最大時で印加することが望ましいが、図8、図9に示すように、被駆動体の動作速度が所定値以上(例えば被駆動体の特性にもよるが動作速度が最大速度の9割以上)において印加しても最大時と同様の作用効果を奏することはいうまでもない。また、「振動体の振動」に示すように、振動体12の振動は、初期駆動信号の印加終了後も継続されることがわかる。
なお、初期駆動信号の印加により充電された圧電素子17からの放電の変化は、図10の「振動体の振動」の変化波形に類似しており、特に初期駆動信号の印加からc点までの変化波形により類似している。
【0055】
〔4.本実施形態の作用効果〕
本実施形態では、初期駆動制御において、圧電素子17に初期駆動信号を印加する初期駆動信号印加制御が実行した後、初期駆動信号印加制御から非印加制御に切り替えるタイミングを、初期駆動信号の印加によるローター20の動作が開始されるまでに設定し、初期駆動制御において、初期駆動信号印加制御を実行後、圧電素子17に駆動信号を印加しない非印加制御を実行するため、圧電アクチュエーターAの起動初期における電流量の多い期間における電力の消費を大幅に削減することができる。
また、非印加制御に切り替え後は、圧電アクチュエーターAへの初期駆動信号の印加は終了するが、この切り替え後もローター20は加速し、振動体12の振動も続くことになるため、定常駆動制御に切り替えるタイミングを適切に設定すれば、ローター20を所定距離移動させるための時間を、非印加期間があっても、駆動信号を入力し続けた場合と同程度に設定できる。このため、非印加期間を設けることで電流量が多くなる期間の駆動を避けることができ、かつ、定常駆動制御を適切なタイミングで開始することで、ローター20を所定距離移動するまでの時間も短くなり、駆動信号を入力し続ける場合に比べて消費電力を大幅に低減できる。
【0056】
定常駆動制御に切り替えるタイミングを、ローター20の動作開始時から動作停止前までに設定することによって、振動体12の減衰振動を利用しつつ、ローター20が動いている状態、すなわち振動体12の振動の軌跡がローター20の駆動に適した形となっている状態で、定常駆動信号の印加を行うことができ、定常駆動信号の印加後すぐにローター20を加速させることができる。これにより立ち上がりの印加時間が短縮され、電力消費を抑えることができる。
【0057】
定常駆動制御に切り替えるタイミングを、ローター20の動作開始直後に設定した場合には、ローター20の動作距離を所定値まで早く到達させることができる。これにより所定値までの印加時間を短縮でき、電力の消耗を低減させることができる。
定常駆動制御に切り替えるタイミングを、初期駆動信号の印加により充電された圧電素子17の放電完了時までに設定することによって、定常駆動信号を印加の際に、起動時のような急激な電流が流れるのを抑えることができ、電力を低減することができる。
これらのことから、本実施形態によれば、圧電アクチュエーターAの起動時の効率を向上させることができる。また、本実施形態を実現するための回路を、印加と非印加のタイミングを決めるロジック回路で構成できるため、定電圧回路を設けるような場合と比較して回路サイズを小さくすることができる。
【0058】
また、定常駆動制御への切り替えのタイミングを、初期駆動信号の印加によるローター20の動作速度が所定値以上のタイミングとすれば、初期駆動信号の印加によるローター20の動作速度が所定値以上の状態から定常駆動信号の印加による加速が開始されるため、ローター20の所定速度までの印加時間が短縮され、電力消費を抑えることができる。
また、定常駆動制御への切り替えのタイミングを、振動体12に設けた検出電極から得られる検出信号に基づき決定した場合には、より安定して被駆動体を起動することができる。
【0059】
〔変形例〕
なお、本発明は、前記実施形態に限ったものではない。
例えば、定常駆動制御への切替タイミングは、タイマー回路などを用いて計測することに限ったものではなく、被駆動体であるローター20の動作状態で判定(例えば、ローター20に対して発光素子と受光素子を用いてローター20の移動位置検出を光学的に行う光学的位置検出手段による判定)したり、圧電素子17の放電状態で判定(例えば、電流計などによる圧電素子17の電流を測定する電流測定手段による判定)したりしてもよい。また、この切替タイミングは、ローター20の動作停止時まで、または初期駆動信号の印加により充電された圧電素子17の放電完了時までに設定してもよい。
【0060】
さらに、初期駆動信号の印加期間は、圧電素子17に流れる電流を電流計などで検出し、その電流値が所定値に達するまでに設定してもよい。これにより、初期駆動信号を印加する際における圧電アクチュエーターAの起動時の急激な電流増加を抑えることができ、消費電力も減らすことができる。
【0061】
図12は、定常駆動信号の印加を振動体12の振動が停止する前、および圧電素子17の放電完了前とし、さらに初期駆動信号の印加による電流値が所定値αを基準として、非印加制御に切り替えた場合における被駆動体(ローター20)の速度変化、電流変化および振動体の振動の一例を示す。
図中、a点は初期駆動信号の印加・非印加の切替時であり、c点は定常駆動信号の印加開始時(圧電素子17の放電完了前)である。初期駆動信号の印加期間は、初期駆動信号の印加による電流が所定値αを超えない時間に設定されている。
【0062】
図10の場合と同様、「被駆動体の速度変化」に示すように、被駆動体の動作時に定常駆動信号を印加しているため、印加直後(c点経過直後)の速度変化は、図4の場合よりも大きいことがわかる。また、「電力変化」に示すように、図5に示した電力の高い起動初期のほとんどを初期駆動信号の非印加期間としているため、大幅に電力を削減できることがわかる。また、「振動体の振動」に示すように、振動体12の振動は、初期駆動信号の印加終了後も継続されることがわかる。
さらに、「電力変化」に示すように、圧電素子17がある程度充電された状態で定常駆動信号を印加しているため、定常時の電流よりも大幅に高い電流が流れることがなく、電力を削減でき、電池への負担を少なくすることができる。
なお、初期駆動信号の印加により充電された圧電素子からの放電の変化は、図12の「振動体の振動」の変化波形に類似しており、特に特に初期駆動信号の印加からc点までの変化波形により類似している。
【0063】
また、前記実施形態では、初期駆動信号の出力を制御する初期パルスを1パルスで構成したが、これに限ったものではなく、初期パルスの構成は初期駆動信号の印加によってローター20を駆動できるものであればよい。例えば、初期パルスを、複数パルスで構成することも可能である。
図13は、初期パルスが複数パルスで構成される場合における被駆動体の速度変化、電力変化および振動体12の振動の一例を示している。図14は、図13に示した変形例における駆動信号の波形を示す拡大図である。図中、a点は初期駆動信号印加制御から非印加制御への切替タイミングであり、b点はローター20の動作開始時であり、c点は定常駆動制御への切替タイミング、すなわち振動体12の振動が停止する前、および圧電素子17の放電完了前の時点である。
【0064】
図13の初期駆動信号印加制御において、複数(この例では2つ)の初期パルスの各々のパルス幅は、例示すれば0.05msec程度である。初期パルスは、前記実施形態のように別途生成してもよいし、他の回路で使用しているものを流用してもよい。a点までの複数の初期駆動信号の印加によって圧電アクチュエーターAを充電し、放電しきる前のc点において通常駆動信号が印加されるため、「電力変化」に示すように、電力が少なくてもよく、ローター20の駆動を早期に所定速度に達するようにすることができる。
初期駆動信号の印加により充電された圧電素子からの放電の変化は、図13の「振動体の振動」の変化波形に類似しており、特に特に初期駆動信号の印加からc点までの変化波形により類似している。
【0065】
なお、図10、図12、図13において、定常駆動信号の印加(開始時)c点は、初期駆動信号の印加によるローター20(被駆動体)の動作速度が最大となる点であったが、それに限定されるものではなく、ローター20が動作している間であればよい。すなわち、上記各図において、初期駆動信号の印加によるローター20(被駆動体)の動作開始時b点からその動作が停止するまでの間であればよい。その場合は、ローター20(被駆動体)が動作中に定常駆動信号が印加されるので、ローター20の動作が容易に促進され、早期に所定位置まで駆動される。
【0066】
また、図10、図12、図13において、定常駆動信号の印加(開始時)c点は、初期駆動信号の印加によるローター20(被駆動体)が駆動されるb点以降であって、圧電素子17が放電完了前であれば、初期駆動信号の印加によるローター20(被駆動体)が停止していてもよく、あるいは初期駆動信号の印加によるローター20(被駆動体)の動作が停止する前であれば、圧電素子17が放電完了していてもよい。
その場合、上記c点において、ローター20(被駆動体)が停止していても圧電素子17が放電完了前であれば、定常駆動信号の印加により圧電素子への充電完了が早まり、振動体12の振動が早期に促進される。また圧電素子17が放電完了していても、ローター20(被駆動体)の動作が継続中であれば、定常駆動信号の印加により振動体12の振動に伴うローター20(被駆動体)の動作が早期に促進される。
【0067】
さらに、図10、図12、図13において、定常駆動信号の印加(開始時)c点は、初期駆動信号の印加によるローター20(被駆動体)が駆動されるb点以降で、振動体12の振動が停止する前、且つ圧電素子17が放電完了する前に設定されていたが、それに限定されるものではない。
すなわち、図10、図12、図13において、定常駆動信号の印加(開始時)c点は、初期駆動信号の印加によるローター20(被駆動体)が駆動されるb点以降ならば、圧電素子17が放電完了前であれば、初期駆動信号の印加による振動体12の振動が停止していてもよく、あるいは初期駆動信号の印加による振動体12の振動が停止する前であれば、圧電素子17が放電完了後であってもよい。
その場合、上記c点において、振動体12の振動が停止していても圧電素子17が放電完了する前に定常駆動信号を印加すれば圧電素子への充電完了が早まり、振動体12の振動を早期に促進させることができる。同様に、上記c点において、圧電素子17が放電完了後であっても振動体12の振動が停止する前に定常駆動信号を印加すれば振動体12の振動を即座に促進させることができる。
【0068】
さらに、図10〜図14において、初期駆動信号印加制御の期間(初期パルスの期間)は、非印加制御の期間より短く設定されている。しかし、それに限定されることはない。状況によって、初期駆動信号印加制御の期間(初期パルスの期間)は、非印加制御の期間と同等でも、あるいは非印加制御の期間より長く設定されてもよい。
【0069】
また図10〜図14において、初期パルス(単発、複数発を含む)の期間は、圧電素子に充電された電荷が放電するまでにローター20(被駆動体)を駆動開始させる程度を必要とし、例えば0.05msec程度以上である。
【0070】
また、例えば、圧電素子17の種類は、前述した振動動作が可能であれば特に前記実施形態で説明したものに限定されるものではない。例えば、長手方向と幅方向において駆動電極が2等分された構成により4つの駆動電極を備える圧電素子や、幅方向において3等分され、その3等分された電極の外側の2つがさらに長手方向において2等分された構成により5つの駆動電極を備える圧電素子であってもよい。これらを用いた場合には、対角方向の駆動電極(後者の場合は3分割したうち中心の駆動電極を含む。)に駆動信号を印加することによって、幅方向の中心部に設けられた振動体の突起部を振動させてローター20を前記実施形態と同様に駆動することができる。この場合、駆動信号が印加される電極を他の対角方向の電極に変えることで、ローター20に当接される突起部の振動による楕円状の回転の方向を変えることができる。すなわち、ローター20の回転方向を変えることができる。
また、本発明の圧電アクチュエーターは、日車50を駆動するものに限らず、指針2を駆動するものに利用してもよい。さらに、本発明は、電子時計における駆動機構として用いられるものに限らず、カメラのレンズ機構の駆動など、各種電子機器の駆動源としても利用できる。すなわち、本発明の圧電駆動装置を有する電子機器としては、例えば、表示針を圧電駆動装置で駆動する各種計器類や、ターンテーブルのように被駆動体を駆動させる電子機器などでもよい。特に、本発明の圧電駆動装置は、ステッピングモーターなどに比べて耐磁性能に優れているため、耐磁性が要求される駆動源として広く利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1…電子時計、8…24時検出手段、9…電源、10…日付表示機構、12…振動体、17…圧電素子、20…ローター、30…日回し中間車、40…日回し車、50…日車、100…駆動制御装置、101…位相差−電圧変換回路、102…定電圧回路、103…比較回路、104…電圧調整回路、105…駆動回路、106…電圧制御発振器、107…振幅検出回路、A…圧電アクチュエーター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を有しこの圧電素子への駆動信号の印加により振動する振動体を備えて前記振動体の振動を被駆動体に伝達する圧電アクチュエーターと、
前記圧電アクチュエーターへの駆動信号の印加を制御する駆動制御手段とを備え、
前記駆動制御手段は、
前記圧電アクチュエーターの起動初期に行う初期駆動制御と、初期駆動制御後に行う定常駆動制御とを実行可能に構成され、
前記初期駆動制御では、前記圧電素子に初期駆動信号を印加する初期駆動信号印加制御と、初期駆動信号印加制御を実行後、前記圧電素子に駆動信号を印加しない非印加制御とを実行し、
前記初期駆動信号印加制御から非印加制御に切り替えるタイミングは、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作が開始されるまでに設定され、
前記初期駆動制御から前記定常駆動制御に切り替えるタイミングは、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作開始時以降で、かつ、前記初期駆動信号の印加によって駆動される前記被駆動体の動作停止時および/または前記初期駆動信号の印加により充電された前記圧電素子の放電完了時までに設定されている
ことを特徴とする圧電駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電駆動装置において、
前記定常駆動制御への切り替えのタイミングは、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作速度が所定値以上となるとなるタイミングに設定されていることを特徴とする圧電駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電駆動装置において、
前記初期駆動信号の印加期間は、前記初期駆動信号の電流が所定値以下となるように設定されていることを特徴とする圧電駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧電駆動装置において、
前記初期駆動信号は、デューティー比が50%の交番信号で構成されていることを特徴とする圧電駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧電駆動装置において、
前記定常駆動制御への切り替えのタイミングを、前記振動体に設けた検出電極から得られる検出信号に基づき決定することを特徴とする圧電駆動装置。
【請求項6】
圧電素子を有しこの圧電素子への駆動信号の印加により振動する振動体を備えて前記振動体の振動を被駆動体に伝達する圧電アクチュエーターを駆動する圧電駆動方法であって、
前記圧電アクチュエーターの起動初期に行う初期駆動制御と、初期駆動制御後に行う定常駆動制御とを実行し、
前記初期駆動制御では、前記圧電素子に初期駆動信号を印加する初期駆動信号印加制御と、初期駆動信号印加制御を実行後、前記圧電素子に駆動信号を印加しない非印加制御とを実行し、
前記初期駆動信号印加制御から非印加制御に切り替えるタイミングを、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作が開始されるまでに設定し、
前記初期駆動制御から前記定常駆動制御に切り替えるタイミングを、前記初期駆動信号の印加による前記被駆動体の動作開始時以降で、かつ、前記初期駆動信号の印加によって駆動される前記被駆動体の動作停止時および/または前記初期駆動信号の印加により充電された前記圧電素子の放電完了時までに設定する
ことを特徴とする圧電駆動方法。
【請求項7】
圧電素子を有する振動体を備えた圧電アクチュエーターと、請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧電駆動装置と、を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−220297(P2010−220297A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61225(P2009−61225)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】