説明

地下タンクの構造

【課題】地下タンクへ作用する揚圧力に対する抵抗として、地上の盛土の重量を有効に活用する。
【解決手段】、側壁と、底板と、屋根と、側壁の外周に設置した地下壁とによって構成した地下タンクである。この地下壁の上端に、外周方向に向けて棚板を設ける。さらに天板の一部を棚板の上に載置し、それ以外の部分を棚板よりも外側へ張り出して設置する。この天板の上に盛土を搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下タンクの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LNGやLPG等の低温液化ガス等を貯蔵する目的として、地盤内に大型の地下タンクを構築する場合がある。
地下水位が高い場合には地下タンクの底板には地下水により上向きの力である揚圧力が作用する。
そのため、地下タンクの浮き上がりを防止する構造を備える必要性がある。
その例として、側壁a、底版bとからなるタンクの側壁aの外周に連壁cを設け、連壁cの頂部に外周方向へ向けて棚板dを突設した構成が知られている。(図6)
この連壁cの上部に棚板dを設け、その上に盛土を行ってこの盛土を重量として利用する構成が知られている。
あるいは棚板dを設けず、側壁、底版および連壁の重量により、揚圧力に抵抗している施工例もある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−170185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したような従来の地下タンクの構造にあっては、次のような問題点が存在する。
<1> 連壁の頂部の外周に棚板を張り出し、この棚板へ盛土を行う構造では、一般的に連壁は側壁に比べ壁厚が薄いため(半分程度)、盛土量が多い場合や張り出しが大きい場合、盛土による曲げモーメンにより連壁自身が応力的に厳しくなり制約があった。
<2> 連壁だけでなく、側壁の頂部を外側へ張り出す構成も知られているが、張り出した部分は片持ち梁となり、多量の鉄筋による補強が必要となる。
<3> 側壁、底版の重量をカウンターウエイトとして揚圧力に対する抵抗力とする構造では、地下タンクの側壁、底版の重量を増加させる必要性があり、大きなコンクリート体積、鉄筋量を増加させる等、地下タンクの構造を物質貯蔵の耐力以上の構造を要求することになり、施工上、高コストになり、不経済であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために、本発明の地下タンクは、側壁と、底板と、屋根と、側壁の外周に設置した地下壁とによって構成した地下タンクにおいて、地下壁の上端に、外周方向に向けて設けた棚板と、棚板と分離した板体であって、一部を棚板の上に載置し、それ以外の部分を棚板よりも外側へ張り出して載置した天板と、天板の上に搭載した盛土によって構成した地下タンクの構造を特徴とするものである。
また本発明の地下タンクは、側壁と、底板と、屋根と、側壁の外周に設置した地下壁とによって構成した地下タンクにおいて、地下壁の上端に、外周方向に向けて設けた棚板と、棚板から離れた位置に設置した独立支点と、棚板と分離した板体であって、一部を棚板の上に載置し、一部を独立支点に載置した天板と、天板の上に搭載した盛土によって構成した地下タンクの構造を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の地下タンクの構造は上記した課題を解決するための手段を採用することによって、次のような効果を得ることができる。
<1> 側壁から外周方向へ向けて張り出した棚板の上に、棚板から独立した天板を載置してあり、この天板の上に搭載した盛土が荷重として側壁に作用する。そのため、揚圧力に対する抵抗として、天板の上の盛土の重量を有効に活用することができる。
<2> 連壁の頂部から張り出した棚板と、天板とを別々の独立した構造とするために、連壁の頂部には鉛直力のみが作用するために形状を小さくすることができる。そのために補強の鉄筋を大幅に減らすことができる。
<3> 天板は盛土の重量によって転倒することがないから、鉄筋の量をさらに低減することができる。
<4> 特に連壁から離れた位置に独立して支点を設け、この支点で天板の一部を支持すれば、天板の厚さを薄くすることができ、より鉄筋量を減らすことができる。
<5> 揚圧力に対する抵抗力としての側壁や底版、あるいは連壁をうすくして、コンクリート量を削減することが可能となる。
<6> 側壁の壁厚がうすくなると、低温タンクでは特有の温度応力が減少し、鉄筋量を低減することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例】
【0008】
<1>地下タンクの全体構成(図1)
地下タンク1は側壁2と底版3と屋根板4とによって構成している密閉状の構造体である。
屋根板4は、コンクリート製および鋼製など各種の材料を採用することができる。
【0009】
<2>連壁の構築。
地下タンクの掘削に先だって、側壁2の周囲に連壁5を設ける。
ここに連壁5とは、タンク1本体の掘削に先立って、地盤の崩壊を防止するための壁体である。
この連壁5の構築方法は公知であるが、まず地中に溝を掘削する。
この溝の内部に鉄筋の篭を設置し、その後にコンクリートを打設して構築するものである。
この連壁5の構築方法は従来から多数の工法が広く知られている。
本発明の連壁5では、特に連壁5の上端には、地下タンク1外側へ向けて棚状に板を張り出して棚板6を一体に形成する。
この棚板6によって後述する天板7の一部を支持するものである。
なおこの棚板6は、円周方向に連続して取り付けても、あるいは間隔を介在させて取り付けても本発明の目的を達成できる。
【0010】
<3>タンク1の構築。
連壁5で包囲された空間を掘削してタンク1を構築する。
周囲が連壁5で包囲してあるから、掘削によっても周囲の土砂が崩壊することはない。
底部まで掘削が終了したら、底版3、側壁2のコンクリートを打設して地下タンク1を構築する。
その場合に、地下タンク1の側壁2の外側面は、事前に構築してある連壁5の内側面と接触させて構築する。
さらに、側壁2と連壁5との面に互いに咬みあうせん断伝達機構を採用することもできる。
そのために例えば、側壁2の連壁5側の面には、所定の間隔、所定高さの凸部を形成し、一方、連壁5の側壁2側の面には、側壁2に設けた凸状部分とかみ合う凹状に形成することもできる。
この凹凸の噛み合わせにより、連壁5の重量をこの部分の摩擦抵抗を通じて側壁2へ伝えることになる。
【0011】
<4>天板7。
この棚板6の上には、天板7を載置する。
この天板7は、棚板6とは分離した鉄筋コンクリート製の板体である。
天板7は、全体を棚板6の上に載置するのではなく、一部を棚板6の上に載置し、他の一部は棚板6よりも外側へ張り出した状態で載置する。
すなわち天板7は、棚板載置部71と、張り出し部72とによって構成する。
【0012】
<5>盛土重量の支持。
天板7の上には土を運んで盛りあげて盛土8を行う。
天板7は棚板6への載置部71と、張り出し部72とによって形成してある。
そのために、載置部71の上に搭載した盛土8の重量P1を、張り出し部72の上に搭載した盛土8の重量P2よりも大きくなるように天板7の寸法を定める。
もし反対に載置部71の上に搭載した盛土8の重量P1を、張り出し部72の上に搭載した盛土8の重量P2よりも小さくなるような天板7の寸法であると、図に示すように天板7にはタンク1から離れる側(外側)の先端が沈み込むような力が作用するからである。
【0013】
<6>独立支点9の形成。
棚板6から離れた位置に独立支点9を設けると天板7の長さをさらに長くでき、その上に搭載した盛土8によって大きい重量を得ることができる。
独立支点9は、例えば棚板6から離れた外側にコンクリート製の梁を構築することによって得ることができる。
さらに、棚板6から一定の距離だけ離れた位置に基礎杭91を設置し、この基礎杭91に天板7の一部を載置させる構成を採用することもできる。
基礎杭91によって天板7に一端を支持すれば、天板7の変形を抑制しかつ支点9の沈下を小さくすることができる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の地下タンクの説明図。
【図2】連壁の上部の構造の説明図。
【図3】天板と搭載した盛土の重量の関係の説明図。
【図4】他の実施例の説明図。
【図5】他の実施例の説明図。
【図6】従来の地下タンクの説明図。
【符号の説明】
【0015】
1:地下タンク
2:側壁
3:底版
4:屋根板
5:連壁
6:棚板
7:天板
8:盛土
9:独立支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と、底板と、屋根と、側壁の外周に設置した地下壁とによって構成した地下タンクにおいて、
地下壁の上端に、外周方向に向けて設けた棚板と、
棚板と分離した板体であって、一部を棚板の上に載置し、それ以外の部分を棚板よりも外側へ張り出して載置した天板と、
天板の上に搭載した盛土によって構成した、
地下タンクの構造。
【請求項2】
棚板と分離した天板の断面形状は、
棚板へ載置する棚板載置部と、
棚板から外側へ張り出した張り出し部とよりなり、
棚板載置部の上の土の重量を、
張り出し部の上の土の重要よりも大きくなるように構成した、
請求項1記載の地下タンクの構造。
【請求項3】
側壁と、底板と、屋根と、側壁の外周に設置した地下壁とによって構成した地下タンクにおいて、
地下壁の上端に、外周方向に向けて設けた棚板と、
棚板から離れた位置に設置した独立支点と、
棚板と分離した板体であって、一部を棚板の上に載置し、一部を独立支点に載置した天板と、
天板の上に搭載した盛土によって構成した、
地下タンクの構造。
【請求項4】
独立支点は、
棚板から一定の距離だけ離れた位置に設置した基礎杭で支持している、
請求項3記載の地下タンクの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−9530(P2006−9530A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192173(P2004−192173)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】