説明

地下タンク

【課題】FRP製の地下タンクで、強度が高くて変形することが少なく、そして燃料油の波立ちを極力抑制することができる地下タンクの提供。
【解決手段】地中に埋設された燃料油を貯留する地下タンク(1)において、該地下タンク(1)のタンク本体(2)は円筒状に成形されたFRP製で、タンク本体(2)の円周に沿ってリング状の補強リブ(3)が複数個設けられ、そしてタンク本体(2)の長手方向に補強板(4)が垂直に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油所等の地下に埋設され、自動車へ供給する燃料油を貯留する地下タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
給油所の敷地には地下タンクが埋設されており、給油所においては、この地下タンクに貯留された燃料油を給油機で汲み上げて、自動車へ供給している。
地下タンクには、鋼鉄製、繊維強化プラスチック(FRP)製があり、FRP製の地下タンクは、鋼鉄製の地下タンクに比べて、軽量で且つ耐蝕性が高いため、急速に普及している。
【0003】
しかし、FRP製の地下タンクは、鋼鉄製の地下タンクに比べて強度が弱いために、リング状の補強リブで補強している。この補強リブはタンク本体の内部に設ける場合(リブは半径方向内方へ突出)と、タンク本体の外部に設ける場合(リブは半径方向内方へ突出)とがある(特許文献1参照)。
【0004】
また、地下タンクが損傷して燃料油が流出してしまうと、危険であり且つ環境が破壊されてしまうので、タンク本体を漏洩検知空間を有する二重殻タンクとして構成し(特許文献2参照)、漏洩検知器でタンクの損傷を検知している(特許文献3参照)。
係る二重殻タンクとして、軽量で加工し易いFRP製のものが急速に普及している。
【0005】
ここで、FRP製の二重殻タンクであっても、鋼鉄製のタンクに比べて強度が低いので、リング状の補強リブを設けて強度を高めている。その結果、FRP製の地下タンクは、リング状の補強リブで、半径方向へ作用する外力に対する強度を増加している。
【0006】
しかし、地下タンクは長手方向に長いために、地下タンクが設置される基礎の状態、地下タンクに掛かる土圧、タンク内に貯蔵された燃料油の自重等の要因により、図4において矢印AF1(太い点線で示す矢印)で示す様に、長手方向に撓んでしまう恐れが存在する。また、地下水による地下タンクの浮上等により、図4において矢印AF2(太い点線で示す矢印)で示す様に、(長手方向に)撓んでしまう恐れも存在する。
そして、地下タンクが図4の矢印AF1、AF2で示す様に撓んで変形してしまうと、液面計により地下タンク内の燃料油容量を計量する際に、その計量精度が低下する。係る計量精度の低下は、燃料油の在庫不足やオーバーフローを惹起してしまう。
【0007】
また、図4の矢印AF1、AF2で示す様な地下タンクの撓みや変形は、漏洩検知器の検知精度をも低下させてしまい、漏洩検知機の誤作動や、報知不能と言う事態を惹起してしまう。
【特許文献1】特開2006−117255号公報
【特許文献2】特開平6−270989号公報
【特許文献3】特開平6−263188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、強度が高く、長手方向に撓んで変形することが少なく、さらに燃料油の波立ちを抑制することができる地下タンクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の地下タンクは、地中に埋設されて燃料油を貯留する地下タンク(1)において、タンク本体(2、14、21、26)は円筒状に成形されており、タンク本体(2、14、21、26)の長手方向に補強板(4、18、23、28)が垂直に設けられていることを特徴としている。
【0010】
本発明において、前記タンク本体はFRP製であり、タンク本体の円周に沿ってリング状の補強リブが複数個設けられているのが好ましい。このリブについては、半径方向内側に突出しているのが好ましいが、半径方向外方に突出していても良い。
【0011】
そして本発明において、補強板(4、18)はタンク本体(2、14)の内部で中央部に1枚設けられているのが好ましい。
【0012】
また本発明において、補強板(23)はタンク本体(21)の内部で中央部から変位して2枚設けられているのが好ましい。
【0013】
さらに本発明において、補強板(4、18、23)には連通孔(6、20、25)が設けられている好ましい。
【0014】
そして本発明において、補強板(28)はタンク本体(26)の外部で中央部に設けられているのが好ましい。
【0015】
これに加えて、本発明において、前記タンク本体(14)は、内殻(15)及び外殻(16)を有する二重壁構造であるのが好ましい。
但し、本発明の実施に際しては、タンク本体(2、21、26)が一重壁構造であっても良い。
【発明の効果】
【0016】
上述した様な構成を具備する本発明の地下タンクによれば、以下に列挙するような作用効果を奏する。
(1) 長手方向の強度は補強板で確保できるので、震度6程度の地震に堪える強度のFRP製の地下タンクが得られる。この場合、半径方向の強度については、リング状の補強リブを設けることで確保することが出来る。
(2) 補強リブ及び補強板によりタンク本体の撓みによる変形が抑えられるので、液面計による計量精度及び漏洩検知器の検知精度を高精度に維持することが出来る。
(3) 補強板をタンク本体内部の中央部に設ければ、一番撓みやすい直径部分の撓みを抑制することができるので、1枚の補強板で、地下タンクの強度を充分に確保できる。
(4) 補強板をタンク本体内部で中央部から変位して設ければ、タンク本体に設けられるマンホールの設置や、マンホール内の機器(例えば液面計)の設置が容易となる。
(5) 補強板に連通孔を設けることにより、地下タンクに貯蔵される流体(例えば、燃料油や気体)の移動が自由となり、地下タンクの一体性が確保される。
(6) 補強板をタンク本体の内部に設けることにより、補強板が防波板の役目をし、燃料油の補給時の波立ち及び泡立ちが抑制される。その結果、地下タンクへの燃料油等の補給時間を短縮することができると共に、波立ちに起因して補給時に液面計による計量に誤差が生じることを抑制出来る。
(7) 地震時の変形及び波立ちが補強板により抑えられるので、耐震性が高い地下タンクとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
先ず、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。なお、図1は第1実施形態に係る地下タンクの正面断面図、図2は地下タンクの側面断面図、図3は補強板の正面図である。
【0018】
図1、図2に示すように、地下タンク1のタンク本体2は、円筒状に成形されたFRP製で、タンク本体2の内部には補強リブ3が複数個設けられており、該補強リブ3は、タンク本体2の内周面における円周方向全周に亘って、半径方向内方へ突出したリング状に形成されている。
そして、タンク本体2の内部の中央部には、長手方向(図1の左右方向)に補強板4が設けられており、該補強板4は、図2で示されている様に、垂直方向(図2の上下方向)に延在している。
なお、タンク本体2の上部にはマンホール5が設けられている。
【0019】
補強板4が垂直(図2の上下方向)に配置されているのは、図4で矢印AF1、AF2で示す曲げ方向の力に対抗するためには、上下方向に延在する部材の強度のみが必要である。そして、補強板4が垂直方向に対して傾斜していると、補強板4によって図4で矢印AF1、AF2で示す曲げ方向の力に対抗する力が、傾斜している分だけ減少してしまうからである。
【0020】
タンク本体2と同様に、補強リブ3もFRP製であり、補強リブ3はタンク本体2に一体的に形成されている。
また、補強板4は、図示の例では鋼鉄製であり、補強板4の周縁部は、タンク本体2及び補強リブ3と一体的に固定されている。
なお、補強板4の端部はT字状又はL字状に形成され、T字状又はL字状に形成された補強板4の端部は、タンク本体2に強固に固定されている。
【0021】
図3に示すように、補強板4の上下には連通孔6が開けられている。
図3では、補強板4の上下に連通孔6が2個づつ穿孔されているが、上下に1個づつ連通孔6を穿孔しても良い。或いは、補強板4は、全面に多数の連通孔を設けたパンチングメタルで構成しても良い。
【0022】
図4に示すように、地下タンク1は枕7の上に水平に設置され、給油所の敷地に埋設される。そして、マンホール5には、補給管8、給油管9、エアーベント管10、液面計11等が設けられている。
補給管8は補給口12へ接続され、給油管9は給油機13へ接続され、エアーベント管10は給油所の敷地片隅の高所(図示せず)へ開口されている。
【0023】
図1〜図4の第1実施形態によれば、タンク本体2に補強リブ3と補強板4が設けられている。そして、補強リブ3によりタンク本体2の半径方向へ作用する外力に対する強度が確保できて、補強板4によりタンク本体2の長手方向の強度(図4で矢印AF1、AF2で示す曲げ方向の力に対する強度)が確保できる。
その結果、震度6程度の地震に対して充分な耐震性を有するFRP製の地下タンクになる。
【0024】
そして、補強板4が防波板の役目をするので、燃料油を地下タンク1へ補給する時における波立ち及び泡立ちが少なくなり、補給時間が短縮できる。
同様に、地震時においても、補強板4が燃料油の波立ちを抑制するので、燃料油の波立ちに起因する地下タンク1の損傷を防止できる。
【0025】
また、補強板4には連通孔6が開けられているので、補強板4で区画されたタンク本体2で燃料油や各種気体、流体は補強板4を介して地下タンク1内を自由に移動することが出来て、地下タンクの一体性は確保される。
【0026】
これに加えて、タンク本体2の半径方向へ作用する外力に対する強度と、長手方向の強度(図4で矢印AF1、AF2で示す曲げ方向の力に対する強度)が確保されているため、タンク本体2が半径方向や長手方向に撓んで変形せず、液面計11により地下タンク貯蔵量が高い精度で軽量することが可能である。
【0027】
ここで、図1〜図4のタンク本体は一重壁構造として示されているが、二重壁構造にする(2重殻の地下タンクにする)ことが可能である。
【0028】
図5、図6で示す第2実施形態は、本発明を2重殻の地下タンクに適用した実施形態である。
図5、図6において、タンク本体14は円筒状に成形されたFRP製であり、内殻15及び外殻16で構成されている。
【0029】
内殻15と外殻16との間の空間は、図示しない漏洩検知器に連通している。
そして、内殻15の内部の円周方向全域に亘って、リング状の補強リブ17が複数個設けられており、補強リブ17は半径方向内法へ向かって突出している。
そして、内殻15の内部中央には、タンク本体14の長手方向(図5の左右方向)に補強板18が垂直に縁在している。
なお、タンク本体2の上部にはマンホール19が設けられている。
【0030】
図5、図6においても、補強板4は垂直(図6の上下方向)に配置されている。補強板4が垂直方向に対して傾斜していると、補強板4によって図4で矢印AF1、AF2で示す曲げ方向の力に対抗する力が、傾斜している分だけ減少してしまうからである。
【0031】
タンク本体14の内殻15、外殻16と同様に。補強リブ17もFRP製である。補強リブ17は内殻15に一体的に形成されている。また、補強板18は鋼鉄製である。
補強板18には、複数個の連通孔20が上下の領域に穿孔されており、補強板18の周囲は内殻15及び補強リブ17と一体的に固定されている。
【0032】
第2実施形態でも、タンク本体14には補強リブ17及び補強板18が設けられているので、FRP製であっても、充分な強度を有する地下タンクが提供される。
そして、補強板18が防波板の役目をするため、補給時における燃料油の泡立ち等を抑制して、補給時間を短縮することが出来る。
また、地震時の地下タンクの損傷を防止することができる。
【0033】
また、補強板18に開けられた連通孔20により、タンク内の一体性が確保される。
さらに、タンク本体2の半径方向及び長手方向の撓みや変形に対して充分な強度を有しているため、当該撓みや変形が少なくなり、液面計及び漏洩検知器を用いた計測において、高い精度が得られる。
【0034】
図5、図6の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図4の実施形態と同様である。
【0035】
図7は本発明の第3実施形態を示している。
地下タンクの側面断面図である図7において、タンク本体21は、円筒状に成形されたFRP製である。
タンク本体21の円周方向には、リング状の補強リブ22が複数個設けられている。そして、タンク本体21内部において、中央部から変位(偏奇)した位置には、2枚の垂直な補強板23が、長手方向(図7において、紙面に垂直な方向)に延在している。
なお、タンク本体21の上部にはマンホール24が設けられている。
【0036】
図7においても、補強板4は垂直(図7の上下方向)に配置されている。図4で矢印AF1、AF2で示す曲げ方向の力に対して、補強板4により対抗する力が100%作用する様にするためである。
【0037】
タンク本体21と同様に補強リブ22もFRP製であり、補強リブ22は、タンク本体21の内側に一体的に形成されている。
補強板23は鋼鉄製であり、複数個の連通孔25が上下領域に穿孔されている。補強板23の周囲はタンク本体21及び補強リブ22に一体的に固定されている。
【0038】
図7の第3実施形態においても、タンク本体21に補強リブ22と補強板23が設けられているので、FRP製でも充分な強度の地下タンクとなる。
そして補強板23が中央部から変位しているので、マンホール24内に設けられる各機器の設置が容易となる。
【0039】
また、補強板23が防波板の作用を奏するので、燃料油の補給時間が短縮でき、地震時の地下タンクの損傷が防止できる。
さらに、補強板23に開けられた連通孔25により、タンク内の一体性が確保される。
それに加えて、タンク本体21が円周方向及び長手方向に撓んで変形することが少ないので、液面計の高い精度が得られる。
【0040】
図7は一重壁のタンク本体21を示しているが、2重壁に構成することが出来る。
図7の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図6の各実施形態と同様である。
【0041】
図8、図9は、本発明の第4実施形態を示す。
地下タンクの正面断面図である図8と、側面図である図9において、タンク本体26は円筒状に整形されたFRP製である。
タンク本体26の外周の円周方向には、リング状の補強リブ27が複数個設けられ、タンク本体26の外部で、長手方向の中央部には、半径方向外方へ突出した補強板28が垂直に設けられている。
なお、タンク本体26の上部にはマンホール29が設けられている。
【0042】
図8、図9においても、補強板4は垂直(図9の上下方向)に配置されている。図4で矢印AF1、AF2で示す曲げ方向の力に対抗するためには、垂直方向に作用する力が必要だからである。
【0043】
タンク本体26と同様に補強リブ27もFRP製であり、補強リブ27はタンク本体26の外側に一体的に形成されている。
補強板28は鋼鉄製で、補強板28はタンク本体26及び補強リブ27に一体的に固定されている。
図8、図9の第4実施形態でも、タンク本体26には補強リブ27と補強板28が設けられているので、FRP製でも充分な強度の地下タンクとなる。
そして、タンク本体26が円周方向及び長手方向に撓んで変形することが少ないので、液面計による計量について、高い精度が得られる。
【0044】
また、補強リブ27及び補強板28がタンク本体の外部に設けられているので、製造工程が容易となる。
【0045】
図8、図9は一重壁のタンク本体26を示しているが、2重壁に構成することが出来る。
図7の第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図6の各実施形態と同様である。
【0046】
上述した様に、補強リング及び補強板は、タンク本体の内部に設けても、外部に設けても良い。補強板は1枚でも複数枚でもよい。
また、タンク本体は1重殻タンクでも2重殻タンクでも同様に実施できる。
さらに、タンク本体及び補強リングはFRP以外の材質でも良く、補強板は丈夫な材質であれば鋼鉄以外でも良い。
【0047】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の地下タンクの正面断面図。
【図2】地下タンクの側面断面図。
【図3】補強板の正面図。
【図4】地下タンクを設置した給油所の模式図。
【図5】第2実施形態に係る地下タンクの正面断面図。
【図6】図5の地下タンクの側面断面図。
【図7】第3実施形態に係る地下タンクの側面断面図。
【図8】第4実施形態に係る地下タンクの正面断面図。
【図9】図8の地下タンクの側面図。
【符号の説明】
【0049】
1・・・地下タンク
2・・・タンク本体
3・・・補強リブ
4・・・補強板
5・・・マンホール
6・・・連通孔
7・・・枕
8・・・補給管
9・・・給油管
10・・・エアーベント
11・・・液面計
12・・・補給口
13・・・給油機
14、21、26・・・タンク本体
15・・・内殻
16・・・外殻
17、22、27・・・補強リブ
18、23、28・・・補強板
19、24、29・・・マンホール
20、25・・・連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されて燃料油を貯留する地下タンクにおいて、タンク本体は円筒状に成形されており、タンク本体の長手方向に補強板が垂直に設けられていることを特徴とする地下タンク。
【請求項2】
前記補強板はタンク本体の内部で中央部に1枚設けられている請求項1に記載の地下タンク。
【請求項3】
前記補強板はタンク本体の内部で中央部から変位して2枚設けられている請求項1に記載の地下タンク。
【請求項4】
前記補強板には連通孔が設けられている請求項2又は3に記載の地下タンク。
【請求項5】
前記補強板はタンク本体の外部で中央部に設けられている請求項1に記載の地下タンク。
【請求項6】
前記タンク本体は、内殻及び外殻を有する二重壁構造である請求項1〜5の何れか1項の地下タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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