地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法
【課題】 地震等に対して壁体部材の耐力を向上することができると共に、地面近傍の施工時に壁体部材が邪魔になることのない地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材及びその壁体部材を用いた地下中空構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材10において、前記壁体部材10は、地中に挿入した後に上下方向に分割可能であることを特徴としてなる。
【解決手段】 地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材10において、前記壁体部材10は、地中に挿入した後に上下方向に分割可能であることを特徴としてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材及びその壁体部材を用いた地下中空構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材を用いた地下中空構造物の施工方法としては、地下中空構造物の壁体部材を地中の両側に挿入した後に、前記壁体部材の両側をプレキャストコンクリート製の頂版部材で連結して、前記頂版部材の下方を掘削して底部を形成する地下中空構造物の施工方法が知られている。
【特許文献1】特開2003−193494号公報
【特許文献2】特開2001−392689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術では、地中に挿入されたプレキャストコンクリート製の壁体部材は、地下中空構造物の底部に対して下方に延びているので、壁体部材が地下中空構造物の上下方向に対して長くなるため、地下中空構造物の構築後において、地震等に対する壁体部材の耐力を向上することができないという課題がある。
【0004】
また、地中構造物の構築後には、該地下中空構造物の上方に壁体部材の上部が残ってしまうため、地面と地下中空構造物の上部との間に、例えば水道やガスなどの地中埋設物を埋設施工する際、前記壁体部材が邪魔になるという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたもので、地震等に対して壁体部材の耐力を向上することができると共に、地面と地下中空構造物の上部との間で、壁体部材が埋設物の邪魔になることのない地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材及びその壁体部材を用いた地下中空構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明に係る地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法は、次のような手段を採用する。
【0007】
即ち、請求項1記載の発明の地下中空構造物の壁体部材は、地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材において、前記壁体部材は、地中に挿入した後に上下方向に分割可能であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明の地下中空構造物の壁体部材は、請求項1記載の発明において、前記壁体部材における上下方向に分割される部位は、前記壁体部材の上下方向が連結部材で連結されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明の地下中空構造物の施工方法は、請求項1又は2記載の地下中空構造物の壁体部材を地中の両側に挿入した後に、両側の壁体部材間を掘削し、この両側の壁体部材を頂版部と底版部で連結した後、前記頂版部で連結される部位から上方における前記壁体部材の両側の連結を解除すると共に、前記底版部から下方における前記壁体部材の両側の連結を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明の地下中空構造物の壁体部材によれば、地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材は、地中に挿入した後に上下方向に分割可能であるため、地下中空構造物における側版部の上下方向の長さを必要に応じて適宜壁体部材を分割して施工することができるため、地震等に対して壁体部材の耐力を向上することができると共に、地面近傍の壁体部材が他の埋設物の邪魔になることのない地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材を提供することができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明の地下中空構造物の壁体部材によれば、壁体部材の上下方向は連結部材で連結されているため、連結部材の連結を解除して地下中空構造物における側版部の上下方向の長さを必要に応じて適宜壁体部材を分割して施工できる。
【0012】
また、請求項3記載の発明の地下中空構造物の施工方法によれば、請求項1又は2記載の地下中空構造物の壁体部材を地中の両側に挿入した後に、両側の壁体部材間を掘削し、この両側の壁体部材を頂版部と底版部で連結した後、前記頂版部で連結される部位から上方における前記壁体部材の両側の連結を解除すると共に、前記底版部から下方における前記壁体部材の両側の連結を解除するため、壁体部材の分割を地下中空構造物の施工に合わせて行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法を採用することにより、従来にない地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法が得られ、その地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法について記述する。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明に係る地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る地下中空構造物の壁体部材10を示す斜視図である。図2(a)は、図1のA−A線断面図、図2(b)は、図1のB−B線断面図である。
【0015】
プレキャストコンクリート製の壁体部材10は、上部部材12、中部部材14及び下部部材16から主に構成されている。上部部材12は、正面視で略矩形長尺状に形成されている。また、上部部材12は、横断面上面視で右側を開口する略コ字状に形成されている。また、上部部材12の底面部12aは、底面視で略矩形状に形成され貫通孔12bが上下方向に形成されている。中部部材14は、正面視で略右傾長尺状に形成されている。中部部材14の上面部14aは、上面視で略矩形状に形成され貫通孔14bが上下方向に形成されている。また、中部部材14、横断面上面視で右側を開口する略コ字状に形成されている。また、中部部材14の底面部14cは、底面視で略矩形状に形成され貫通孔14bが上下方向に形成されている。下部部材16は、正面視で略矩形長尺状に形成されている。また、下部部材16は、横断面上面視で右側を開口する略コ字状に形成されている。また、下部部材16の上面部16aは、上面視で略矩形状に形成され貫通孔16bが上下方向に形成されている。また、上部部材12の底面部12aと中部部材14の上面部14a、及び中部部材14の底面部14aと下部部材16の上面部16aとは、連結部材18で連結されている。連結部材18としては、貫通孔12b及び貫通孔14b、又は貫通孔14b及び貫通孔16bを貫通するPC鋼材などのボルト部材、及びナットとが挙げられる。
【0016】
次に、以上のように構成されている地下中空構造物の壁体部材10を用いて地下中空構造物を施工する方法について説明する。
【0017】
最初に、図3に示すように、地下中空構造物の壁体部材10は、左右方向に所定間隔で壁体部材10の上面を叩いて打ち込み、又は地面Gを掘削して地中に挿入される。
【0018】
次いで、図4に示すように、地中に挿入されている対の壁体部材10間を上下方向に対の壁体部材10の上部の分割部が露出する所定距離掘削する。
【0019】
次いで、図5に示すように、上面部14a,14a間に頂版部22を設け、この頂版部22は、プレキャストコンクリート部材により構成されたり、現場打ちコンクリートにより形成される。
【0020】
次いで、図6に示すように、頂版部22の下方であって対の壁体部材10間を頂版部22から下方に対の壁体部材10の間を掘削する。そして、図7に示すように、対の壁体部材10間の下部を略平板状の底版部24で連結する。尚、底版部24は、プレキャストコンクリート部材を並べて形成したり、現場打ちコンクリートで形成したりすることができる。
【0021】
頂版部22及び底版部24を設けた後、図8に示すように、連結部材18のボルト部材18aを上方に抜き取ることにより、対の壁体部材10の上部及び下部の連結を解除する。尚、ナット18bを回り止め固定しておけば、ボルト部材18aを回すことによりナット18bを外すことができる。このように、頂版部22及び底版部24を構築した後は、頂版部22及び底版部24が切梁として作用するから、上部部材12と中部部材14、中部部材14と下部部材16の連結を解除することができる。
【0022】
尚、頂版部22を取り付け、上部部材12を撤去した後は、該頂版部22の上方を地面Gと面一に埋め戻す。
【0023】
また、この例では、頂版部22を構築した後、底版部24を構築したが、壁体部材10,10間を底版部24位置まで掘削し、底版部24を構築した後、頂版部22を構築し、この後、対の壁体部材10の上部及び下部の連結を解除するようにしてもよい。
【0024】
以上の地下中空構造物の施工方法でボックスカルバートである地下中空構造物が形成される。
【0025】
以上、本実施形態によれば、地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材10は、地中に挿入した後に上下方向に分割可能であるので、地下中空構造物における側版部の上下方向の長さを必要に応じて適宜壁体部材10を分割して施工することができるため、地下中空構造物の構築後、地震等に対して壁体部材10の耐力を向上することができると共に、地面G近傍の壁体部材10が地面G近傍の埋設物の施工時に邪魔になることのない地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材10を提供することができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、壁体部材10の上下方向は連結部材18で連結されているため、連結部材18の連結を解除して地下中空構造物における側版部の上下方向の長さを必要に応じて適宜壁体部材10を分割して施工できる。
【0027】
また、本実施形態によれば、請求項1又は2記載の地下中空構造物の壁体部材10を地中の両側に挿入した後に、両側の壁体部材10,10間を掘削し、この両側の壁体部材10,10を頂版部22と底版部24で連結した後、頂版部22で連結される部位から上方における壁体部材10の両側の連結を解除すると共に、前記底版部22から下方における壁体部材10の両側の連結を解除するため、壁体部材10の分割を地下中空構造物の施工に合わせて行なうことができる。
【実施例2】
【0028】
図9及び図10は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、図9に示すように、地中に挿入されている対の壁体部材10間を、上下方向に対の壁体部材10の上部の分割部が露出する所定距離掘削し、この掘削底部に型枠31を設け、上面部14a,14a間にコンクリートを打設して、それら上面部14a,14aに頂版部22Aを一体に形成している。
【0029】
このようにして現場打ちコンクリートによる頂版部22Aを形成した後、この頂版部22Aより下方を掘削すると共に、型枠31を撤去し、上面部16a位置まで掘削し、図10に示すように、底版部24を形成する。また、頂版部22A及び底版部24を形成した後は、対の壁体部材10の上部及び下部の連結を解除して対の壁体部材10の上部部材12及び下部部材16を取り外すことができる。尚、この例では、中部部材14,14の上面部14a,14a間に頂版部22Aを設けるから、上部部材12は、地下中空構造物の構築後、頂版部22Aの上部を埋め戻す前に、中部部材14との連結を解除して取り外すようにしてもよい。
【実施例3】
【0030】
図11及び図12は本発明の実施例3を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、連結部材18は、両ねじ付のボルト部材18aと、該ボルト部材18aの両端側に螺合するナット18b,18bとからなり、このようにボルト部材18aの両端にナット18b,18bを設けたから、上下どちらからでもナットナット18b,18bを緩めてボルト部材18aを引き抜くことができ、連結解除の作業性が向上する。
【0031】
また、上部部材12の底面部12aを除いた部分、中部部材14の上面部14aと底面部14cを除いた部分、及び下部部材16の上面部16aを除いた部分の断面形状は、図12に示すように、方形の内部に中心孔19を有する形状をなす。また、上部部材12の底面部12aの近傍内面部分、中部部材14の上面部14aと底面部14cの近傍の内面部分、及び下部部材16の上面部16a近傍の内面部分には、連結部材18操作用の操作孔20が穿設され、この操作孔20からナット18bを回す操作やボルト部材18aを抜き取る操作を行うことができる。
【0032】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1に係る地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法を説明する図である。
【図2】同上、図2(a)は、図1のA−A線断面図、図2(b)は図1のB−B線断面図である。
【図3】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図4】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図5】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図6】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図7】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図8】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図9】本発明の実施例2を示す地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図10】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図11】本発明の実施例3を示す地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図12】同上、図11のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 壁体部材
18 連結部材
22,22A 頂版部
24 底版部
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材及びその壁体部材を用いた地下中空構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材を用いた地下中空構造物の施工方法としては、地下中空構造物の壁体部材を地中の両側に挿入した後に、前記壁体部材の両側をプレキャストコンクリート製の頂版部材で連結して、前記頂版部材の下方を掘削して底部を形成する地下中空構造物の施工方法が知られている。
【特許文献1】特開2003−193494号公報
【特許文献2】特開2001−392689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術では、地中に挿入されたプレキャストコンクリート製の壁体部材は、地下中空構造物の底部に対して下方に延びているので、壁体部材が地下中空構造物の上下方向に対して長くなるため、地下中空構造物の構築後において、地震等に対する壁体部材の耐力を向上することができないという課題がある。
【0004】
また、地中構造物の構築後には、該地下中空構造物の上方に壁体部材の上部が残ってしまうため、地面と地下中空構造物の上部との間に、例えば水道やガスなどの地中埋設物を埋設施工する際、前記壁体部材が邪魔になるという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記のような状況を鑑みてなされたもので、地震等に対して壁体部材の耐力を向上することができると共に、地面と地下中空構造物の上部との間で、壁体部材が埋設物の邪魔になることのない地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材及びその壁体部材を用いた地下中空構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明に係る地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法は、次のような手段を採用する。
【0007】
即ち、請求項1記載の発明の地下中空構造物の壁体部材は、地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材において、前記壁体部材は、地中に挿入した後に上下方向に分割可能であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明の地下中空構造物の壁体部材は、請求項1記載の発明において、前記壁体部材における上下方向に分割される部位は、前記壁体部材の上下方向が連結部材で連結されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明の地下中空構造物の施工方法は、請求項1又は2記載の地下中空構造物の壁体部材を地中の両側に挿入した後に、両側の壁体部材間を掘削し、この両側の壁体部材を頂版部と底版部で連結した後、前記頂版部で連結される部位から上方における前記壁体部材の両側の連結を解除すると共に、前記底版部から下方における前記壁体部材の両側の連結を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明の地下中空構造物の壁体部材によれば、地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材は、地中に挿入した後に上下方向に分割可能であるため、地下中空構造物における側版部の上下方向の長さを必要に応じて適宜壁体部材を分割して施工することができるため、地震等に対して壁体部材の耐力を向上することができると共に、地面近傍の壁体部材が他の埋設物の邪魔になることのない地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材を提供することができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明の地下中空構造物の壁体部材によれば、壁体部材の上下方向は連結部材で連結されているため、連結部材の連結を解除して地下中空構造物における側版部の上下方向の長さを必要に応じて適宜壁体部材を分割して施工できる。
【0012】
また、請求項3記載の発明の地下中空構造物の施工方法によれば、請求項1又は2記載の地下中空構造物の壁体部材を地中の両側に挿入した後に、両側の壁体部材間を掘削し、この両側の壁体部材を頂版部と底版部で連結した後、前記頂版部で連結される部位から上方における前記壁体部材の両側の連結を解除すると共に、前記底版部から下方における前記壁体部材の両側の連結を解除するため、壁体部材の分割を地下中空構造物の施工に合わせて行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法を採用することにより、従来にない地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法が得られ、その地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法について記述する。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明に係る地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る地下中空構造物の壁体部材10を示す斜視図である。図2(a)は、図1のA−A線断面図、図2(b)は、図1のB−B線断面図である。
【0015】
プレキャストコンクリート製の壁体部材10は、上部部材12、中部部材14及び下部部材16から主に構成されている。上部部材12は、正面視で略矩形長尺状に形成されている。また、上部部材12は、横断面上面視で右側を開口する略コ字状に形成されている。また、上部部材12の底面部12aは、底面視で略矩形状に形成され貫通孔12bが上下方向に形成されている。中部部材14は、正面視で略右傾長尺状に形成されている。中部部材14の上面部14aは、上面視で略矩形状に形成され貫通孔14bが上下方向に形成されている。また、中部部材14、横断面上面視で右側を開口する略コ字状に形成されている。また、中部部材14の底面部14cは、底面視で略矩形状に形成され貫通孔14bが上下方向に形成されている。下部部材16は、正面視で略矩形長尺状に形成されている。また、下部部材16は、横断面上面視で右側を開口する略コ字状に形成されている。また、下部部材16の上面部16aは、上面視で略矩形状に形成され貫通孔16bが上下方向に形成されている。また、上部部材12の底面部12aと中部部材14の上面部14a、及び中部部材14の底面部14aと下部部材16の上面部16aとは、連結部材18で連結されている。連結部材18としては、貫通孔12b及び貫通孔14b、又は貫通孔14b及び貫通孔16bを貫通するPC鋼材などのボルト部材、及びナットとが挙げられる。
【0016】
次に、以上のように構成されている地下中空構造物の壁体部材10を用いて地下中空構造物を施工する方法について説明する。
【0017】
最初に、図3に示すように、地下中空構造物の壁体部材10は、左右方向に所定間隔で壁体部材10の上面を叩いて打ち込み、又は地面Gを掘削して地中に挿入される。
【0018】
次いで、図4に示すように、地中に挿入されている対の壁体部材10間を上下方向に対の壁体部材10の上部の分割部が露出する所定距離掘削する。
【0019】
次いで、図5に示すように、上面部14a,14a間に頂版部22を設け、この頂版部22は、プレキャストコンクリート部材により構成されたり、現場打ちコンクリートにより形成される。
【0020】
次いで、図6に示すように、頂版部22の下方であって対の壁体部材10間を頂版部22から下方に対の壁体部材10の間を掘削する。そして、図7に示すように、対の壁体部材10間の下部を略平板状の底版部24で連結する。尚、底版部24は、プレキャストコンクリート部材を並べて形成したり、現場打ちコンクリートで形成したりすることができる。
【0021】
頂版部22及び底版部24を設けた後、図8に示すように、連結部材18のボルト部材18aを上方に抜き取ることにより、対の壁体部材10の上部及び下部の連結を解除する。尚、ナット18bを回り止め固定しておけば、ボルト部材18aを回すことによりナット18bを外すことができる。このように、頂版部22及び底版部24を構築した後は、頂版部22及び底版部24が切梁として作用するから、上部部材12と中部部材14、中部部材14と下部部材16の連結を解除することができる。
【0022】
尚、頂版部22を取り付け、上部部材12を撤去した後は、該頂版部22の上方を地面Gと面一に埋め戻す。
【0023】
また、この例では、頂版部22を構築した後、底版部24を構築したが、壁体部材10,10間を底版部24位置まで掘削し、底版部24を構築した後、頂版部22を構築し、この後、対の壁体部材10の上部及び下部の連結を解除するようにしてもよい。
【0024】
以上の地下中空構造物の施工方法でボックスカルバートである地下中空構造物が形成される。
【0025】
以上、本実施形態によれば、地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材10は、地中に挿入した後に上下方向に分割可能であるので、地下中空構造物における側版部の上下方向の長さを必要に応じて適宜壁体部材10を分割して施工することができるため、地下中空構造物の構築後、地震等に対して壁体部材10の耐力を向上することができると共に、地面G近傍の壁体部材10が地面G近傍の埋設物の施工時に邪魔になることのない地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材10を提供することができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、壁体部材10の上下方向は連結部材18で連結されているため、連結部材18の連結を解除して地下中空構造物における側版部の上下方向の長さを必要に応じて適宜壁体部材10を分割して施工できる。
【0027】
また、本実施形態によれば、請求項1又は2記載の地下中空構造物の壁体部材10を地中の両側に挿入した後に、両側の壁体部材10,10間を掘削し、この両側の壁体部材10,10を頂版部22と底版部24で連結した後、頂版部22で連結される部位から上方における壁体部材10の両側の連結を解除すると共に、前記底版部22から下方における壁体部材10の両側の連結を解除するため、壁体部材10の分割を地下中空構造物の施工に合わせて行なうことができる。
【実施例2】
【0028】
図9及び図10は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、図9に示すように、地中に挿入されている対の壁体部材10間を、上下方向に対の壁体部材10の上部の分割部が露出する所定距離掘削し、この掘削底部に型枠31を設け、上面部14a,14a間にコンクリートを打設して、それら上面部14a,14aに頂版部22Aを一体に形成している。
【0029】
このようにして現場打ちコンクリートによる頂版部22Aを形成した後、この頂版部22Aより下方を掘削すると共に、型枠31を撤去し、上面部16a位置まで掘削し、図10に示すように、底版部24を形成する。また、頂版部22A及び底版部24を形成した後は、対の壁体部材10の上部及び下部の連結を解除して対の壁体部材10の上部部材12及び下部部材16を取り外すことができる。尚、この例では、中部部材14,14の上面部14a,14a間に頂版部22Aを設けるから、上部部材12は、地下中空構造物の構築後、頂版部22Aの上部を埋め戻す前に、中部部材14との連結を解除して取り外すようにしてもよい。
【実施例3】
【0030】
図11及び図12は本発明の実施例3を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、連結部材18は、両ねじ付のボルト部材18aと、該ボルト部材18aの両端側に螺合するナット18b,18bとからなり、このようにボルト部材18aの両端にナット18b,18bを設けたから、上下どちらからでもナットナット18b,18bを緩めてボルト部材18aを引き抜くことができ、連結解除の作業性が向上する。
【0031】
また、上部部材12の底面部12aを除いた部分、中部部材14の上面部14aと底面部14cを除いた部分、及び下部部材16の上面部16aを除いた部分の断面形状は、図12に示すように、方形の内部に中心孔19を有する形状をなす。また、上部部材12の底面部12aの近傍内面部分、中部部材14の上面部14aと底面部14cの近傍の内面部分、及び下部部材16の上面部16a近傍の内面部分には、連結部材18操作用の操作孔20が穿設され、この操作孔20からナット18bを回す操作やボルト部材18aを抜き取る操作を行うことができる。
【0032】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1に係る地下中空構造物の壁体部材及び地下中空構造物の施工方法を説明する図である。
【図2】同上、図2(a)は、図1のA−A線断面図、図2(b)は図1のB−B線断面図である。
【図3】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図4】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図5】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図6】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図7】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図8】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図9】本発明の実施例2を示す地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図10】同上、地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図11】本発明の実施例3を示す地下中空構造物の施工方法の一実施形態を説明する図である。
【図12】同上、図11のC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 壁体部材
18 連結部材
22,22A 頂版部
24 底版部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材において、
前記壁体部材は、地中に挿入した後に上下方向に分割可能であることを特徴とする地下中空構造物の壁体部材。
【請求項2】
前記壁体部材における上下方向に分割される部位は、前記壁体部材の上下方向が連結部材で連結されていることを特徴とする請求項1記載の地下中空構造物の壁体部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の地下中空構造物の壁体部材を地中の両側に挿入した後に、両側の壁体部材間を掘削し、この両側の壁体部材を頂版部と底版部で連結した後、前記頂版部で連結される部位から上方における前記壁体部材の両側の連結を解除すると共に、前記底版部から下方における前記壁体部材の両側の連結を解除することを特徴とする地下中空構造物の施工方法。
【請求項1】
地中に挿入して地下中空構造物の側版部を形成するプレキャストコンクリート製の壁体部材において、
前記壁体部材は、地中に挿入した後に上下方向に分割可能であることを特徴とする地下中空構造物の壁体部材。
【請求項2】
前記壁体部材における上下方向に分割される部位は、前記壁体部材の上下方向が連結部材で連結されていることを特徴とする請求項1記載の地下中空構造物の壁体部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の地下中空構造物の壁体部材を地中の両側に挿入した後に、両側の壁体部材間を掘削し、この両側の壁体部材を頂版部と底版部で連結した後、前記頂版部で連結される部位から上方における前記壁体部材の両側の連結を解除すると共に、前記底版部から下方における前記壁体部材の両側の連結を解除することを特徴とする地下中空構造物の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−90048(P2006−90048A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278336(P2004−278336)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000228785)日本サミコン株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000228785)日本サミコン株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
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