説明

地下構造物の接合方法

【課題】大掛かりな開削工法ではなく、非開削工法によって地下構造物同士を側面で接合することができる地下構造物の接合方法を提供することである。
【解決手段】地下構造物の接合方法は、並列して構築された地下構造物1、2同士を側面で接合する方法であり、発進側地下構造物1の内側面にコンクリートで発進側防護体4を形成し、到達側地下構造物2の内側面にコンクリートで到達側防護体5を形成し、これら発進側防護体4と到達側防護体5とにわたって連結材7を掛け渡して並列した地下構造物1、2同士を連結した後、連結用鋼管35を回転させながら発進側防護体4から到達側防護体5にかけて切削・推進させて到達側防護体5まで到達させた後、切削された連結用鋼管内の土砂39を取り除くことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は地下構造物の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既設または新設のシールドトンネルなどの地下構造物を側面で接合する場合は、地盤改良などの補助工法が必要であった。この補助工法の代表的なものとして、水ガラス系またはセメント系の注入材を地盤中に圧入して止水性の確保や強度を増加させる目的で用いられる薬液注入工法や、地盤の間隙水を凍結させることによって地盤を一時的に凍結させる凍結工法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の補助工法は大掛かりになるばかりでなく、薬液注入工法においては周辺に井戸や河川、田畑などがある場合、水質や水脈への影響と、周辺地盤や構造物に隆起などの変状を生じさせる恐れがある。また凍結工法においては、凍結膨張と解凍による周辺地盤に大きな影響があるという問題があった。
【0004】
本願発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は大掛かりな開削工法ではなく、非開削工法によって地下構造物同士を側面で接合することができる地下構造物の接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための地下構造物の接合方法は、並列して構築された地下構造物同士を側面で接合する方法であり、発進側地下構造物の内側面にコンクリートで発進側防護体を形成し、到達側地下構造物の内側面にコンクリートで到達側防護体を形成し、これら発進側防護体と到達側防護体とにわたって連結材を掛け渡して並列した地下構造物同士を連結した後、連結用鋼管を回転させながら発進側防護体から到達側防護体にかけて切削・推進させて到達側防護体まで到達させた後、切削された連結用鋼管内の土砂を取り除くことを特徴とする。また連結用防護体を推進させる際に、外側エントランスリングと、これより小さな内側エントランスリングとで挿入口が形成されたエントランスシール装置を発進側防護体に設置し、該エントランスシール装置の挿入口に連結用鋼管を挿入して回転させながら地山を切削・推進させることを含む。また連結用鋼管の到達側防護体への到達により、一端部が到達側防護体から地下構造物内に導出されたU字形の冷却水循環用パイプの折り曲げ部が切断され、該切断された冷却水循環用パイプで連結用鋼管と到達側地下構造物との接合部外周に止水材を充填するとともに、発進側地下構造物において外側エントランスリングに接続された冷却水注入用パイプによって連結用鋼管と発進側地下構造物との接合部外周に止水材を充填することを含む。また連結用鋼管の前部には、複数の分割片を組立形成したビット付き鋼管が接続されたことを含む。またエントランスシール装置の挿入口に挿入された連結用鋼管の内外面には外側エントランスリングと、内側エントランスリングとに設置されたシールが密接されて土砂の噴発を防ぐことを含むものである。
【発明の効果】
【0006】
トンネル覆工体の役割を果たす連結用鋼管を地下構造物の側面に直接貫入することにより、切削が完了した後に、この連結用鋼管が欠損部を保持するため、大掛かりな補助工法を縮減することができる。また地山を開放する必要がなくなるため、大規模な地山改良などの補助工法を縮減することにより工期の短縮、安全面の向上および周辺環境への影響を低減することができる。またトンネル覆工体である連結用鋼管が一体であるため、特別な漏水対策をする必要がなく、漏水を防止することができる。また発進側防護体と到達側防護体とにわたって連結材を掛け渡して並列した地下構造物同士を連結した後に連結用鋼管を接合するため、地山の崩壊を防ぐことができる。またエントランスシール装置の挿入口に連結用鋼管を挿入して回転させながら切削・推進させる間は、地下構造物が防護体で破壊されないように保護する。またエントランスシール装置の挿入口に挿入された連結用鋼管の内外面には外側エントランスリングと、内側エントランスリングとに設置されたシールが密接されたことにより、切削中における地下水および土砂の地下構造物内への噴発を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本願発明の地下構造物の接合方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。また各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。この地下構造物は道路トンネルなどのシールドトンネルであり、既存の地下構造物に並列した新設の地下構造物を側面で接合する場合や、並列した新設の地下構造物同士を側面で接合する場合に適用されるものである。
【0008】
図1は並列に構築されたシールドトンネルなどの地下構造物1、2であり、適宜幅の地山3を挟んで構築された新設の地下構造物1、2同士を側面で接合する。まず、図1に示すように、発進側地下構造物1の内側面にコンクリートで発進側防護体4を形成するとともに、到達側地下構造物2の内側面にもコンクリートで到達側防護体5を形成する。
【0009】
これらの発進側防護体4と到達側防護体5とは、後述する連結用鋼管を貫通させるときに、地下構造物1、2の破壊を防ぐものであり、発進側防護体4から到達側防護体5にかけてロータリパーカッションまたはボーリングマシンによって三本一組の貫通孔6を三段開孔し、ここに連結材であるタイロッド7を配置する。そして、この到達側防護体5から導出されたタイロッド7の端部にナット8および支圧板9を設置し、この支圧板9を上下二本の定着台10で支持する。この定着台10は貫通孔6を上下で挟むようにして適宜間隔部11をもって設置されているため、この間隙部11にタイロッド7の端部が挿入されたようになっている。なお、このタイロッド端部の定着は上記のような二本の定着台10を使用することに限定されるものではなく、連結材もタイロッド7の他にPC棒鋼や、その他の棒鋼を使用することもできる。
【0010】
一方、発進側防護体4から導出されたタイロッド7の端部も前記と同じナット8および支圧板9が設置され、この支圧板9が上下二本の定着台10で支持されている。したがって、発進側防護体4と到達側防護体5とにわたって三本一組のタイロッド7が上段、中段、下段と三段配置され、これらが所定の力で緊張されて定着されることにより、地下構造物1、2間の地山3が締め付けられて崩壊しないようになっている。また、これらのタイロッド7は地山3の締め付けによる崩壊を防ぐだけでなく、発進側防護体4と到達側防護体5とにプレストレスを付与して連結用鋼管の切削・推進による崩壊を防止している。またタイロッド7によって発進側地下構造物1と到達側地下構造物2が連結され、これらの間に挟まれた地山3を締め付けた状態で連結用鋼管を切削・推進させることにより、後述するエントランスシール装置16における内側エントランスリング18の抜け出し防止と、連結用鋼管で切削された連結用鋼管内の土砂(切削された発進側防護体、発進側地下構造物、地山などからなる)の供回りを防ぐ。
【0011】
また到達側防護体5にはU字形の冷却水循環パイプ12が連結用鋼管の到達箇所に沿って円形に埋設されている。この冷却水循環パイプ12は、後述する連結用鋼管が到達側防護体5を切削・推進する際に、ビット36が高温になるのを防ぐためのものであり、U字形の折り曲げ部13が連結用鋼管で切断される箇所、すなわち連結用鋼管と直交するように埋設されるとともに、注入管14と排水管15の端部が到達側防護体5から地下構造物2内に導出されている。したがって、発進側防護体4からの連結用鋼管は折り曲げ部13を切断して、これら注入管14と排水管15との間に推進するようになっている。
【0012】
一方、発進側防護体4には連結用鋼管の回転・推進によって土砂や地下水の奮発を防ぐためのエントランスシール装置16を設置する。このエントランスシール装置16は、図2および図3に示すように、外側エントランスリング17と、これより小さな内側エントランスリング18とからなり、該内側エントランスリング18が外側エントランスリング17の内側に設置されて、これらの間に連結用鋼管を挿入するための挿入口19を形成している。この外側エントランスリング17はシールケース20と、該シールケース20の外側に張り出した底板21とが補強板22で接合されて断面L字形に形成され、該底板21が発進側防護体4に埋設された固定板23にボルト24で止められている。また外側エントランスリング17には冷却水注入パイプ25と冷却水排水パイプ26とが設置され、これらの先端がシールケース20に接続されている。
【0013】
また内側エントランスリング18は、上記と同様にシールケース20と、該シールケース20の内側に張り出した底板21とが補強板22で接合されて断面L字形に形成され、該底板21が発進側防護体4に埋設された固定板23にボルト24で止められている。この内側エントランスリング18にも、前記と同様に、冷却水注入パイプ25と冷却水排水パイプ26とが設置され、これらの先端がシールケース20に接続されている。
【0014】
この挿入口19を形成するシールケース20にはシール27が設置され、これらのシール27は先端が奥側に折れ曲がって連結用鋼管35を挿入口19に差し込み易くしているとともに、挿入口19に差し込まれた連結用鋼管35の内外面に密接されるようになっている。
【0015】
このようにタイロッド7で締め付けられた到達側防護体5に冷却水循環パイプ12が埋設されるとともに、発進側防護体4にはエントランスシール装置16が設置されて連結用鋼管35を発進させる準備を整えた。
【0016】
一方、この連結用鋼管35はビット付き鋼管33と、これに接合された複数の追加用鋼管34とから構成されている。このビット付き鋼管33は複数に分割された(例えば4分割)分割片を組み立てたものであり、分割して運搬し、現場において組み立てることにより、運搬の効率性と経済性を高めることができるものである。
【0017】
次に、図4に示すように、発進側地下構造物1に敷設されたレール28上を走行する台車29で鋼管掘削用推進機30を搬入し、起伏ジャッキ31で立ち上げて発進側防護体面に合わせる。これは連結用鋼管35を回転させて二つの防護体4、5および地下構造物1、2ならびに地山3を切削するものであり、台車29によって発進側防護体4に設置されたようになる。
【0018】
次に、台車の載置部32に連結用鋼管35を載置する。そして、冷却水注入用パイプ25に冷却水を供給するとともに、グリスニップル(図示せず)からグリスを給脂しながら、連結用鋼管35の先端部をエントランスシール装置の挿入口19に挿入する。そして、この連結用鋼管35を鋼管掘削用推進機30で回転させながら推進させて発進側防護体4、発進側地下構造物1、地山3を順次切削し、連結用鋼管35の残長が少なくなった時には追加用鋼管34を接続する。この連結用鋼管35の切削・推進にともなって、挿入口19および掘削溝37に冷却水注入パイプ25から冷却水が注入されるが、この冷却水や地山からの地下水はシール27で止水され、内外のエントランスリングの下部に位置する冷却水排水パイプ26で排水される。
【0019】
次に、図6に示すように、連結用鋼管35が到達側地下構造物2を切削し始めたら、到達側防護体5におけるU字形の冷却水循環パイプ12に冷却水を供給して循環させる。そして、この冷却水循環パイプ12の折り曲げ部13を切断した時点で、その回転および切削・推進を停止する。この冷却水循環パイプの折り曲げ部13の切断確認は、冷却水循環パイプ12に循環させている水の圧力変化を圧力計(図示せず)で検出することによって行う。この連結用鋼管35の回転および切削・推進が停止した時点で、上記の冷却水注入パイプ25からの冷却水の注入も停止される。
【0020】
このとき連結用鋼管35が冷却水循環パイプ12の注入管14と排水管15との間に位置し、この切断された冷却水循環パイプ12の注入管14が連結用鋼管35の外側に位置するとともに、排水管15が連結用鋼管35の内側に位置する。これによって発進側防護体4、発進側地下構造物1、地山3、到達側防護体5、到達側地下構造物2が切削されるとともに、発進側地下構造物1と到達側地下構造物2とが連結用鋼管35で連結される。
【0021】
次に、図7に示すように、エントランスシール装置16における外側エントランスリング17の冷却水注入パイプ25から連結用鋼管35と地下構造物1との接合部外周に止水材38を充填して発進側を止水する。一方、連結用鋼管35で切断された冷却水循環パイプの注入管14から、上記と同じように、連結用鋼管35と地下構造物2との接合部外周に止水材38を充填して到達側を止水する。そして、この止水をした後に、連結用鋼管35内の土砂(切削された発進側防護体、発進側地下構造物、地山、到達側地下構造物および到達防護体からなる)39などを撤去して、内面側にライニング40を施すと、図8に示すような、並列した地下構造物1、2が連結用鋼管35で接合された地下構造物が構築される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(1)は並列した地下構造物にタイロッドを掛け渡した断面図、(2)は(1)のA−A線断面図、(3)はタイロッドの端部の断面図、(4)は冷却水循環パイプが埋設された到達側防護体の断面図である。
【図2】(1)は図1のB−B線断面図、(2)はエントランスシール装置の正面図である。
【図3】(1)はエントランスシール装置の省略断面図、(2)は(1)のC−C線断面図、(3)は同D−D線断面図である。
【図4】鋼管掘削用推進機をセットした地下構造物の断面図である。
【図5】連結用鋼管を推進させる地下構造物の断面図である。
【図6】(1)は並列した地下構造物に連結用鋼管を掛け渡した断面図、(2)は(1)のE−E線断面図、(3)は同F−F線断面図である。
【図7】発進側防護体と到達側防護体の断面図である。
【図8】(1)は並列した地下構造物を連結用鋼管で接合した断面図、(2)は(1)のG−G線断面図、(3)は同H−H線断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 発進側地下構造物
2 到達側地下構造物
3 地山
4 発進側防護体
5 到達側防護体
6 貫通孔
7 タイロッド
8 ナット
9 支圧板
10 定着台
11 間隙部
12 冷却水循環パイプ
13 折り曲げ部
14 注入管
15 排水管
16 エントランスシール装置
17 外側エントランスリング
18 内側エントランスリング
19 挿入口
20 シールケース
21 底板
22 補強板
23 固定板
24 ボルト
25 冷却水注入パイプ
26 冷却水排水パイプ
27 シール
28 レール
29 台車
30 鋼管掘進用推進機
31 起伏ジャッキ
32 載置部
33 ビット付き鋼管
34 追加用鋼管
35 連結用鋼管
36 ビット
37 掘削溝
38 止水材
39 土砂
40 ライニング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列して構築された地下構造物同士を側面で接合する方法であり、発進側地下構造物の内側面にコンクリートで発進側防護体を形成し、到達側地下構造物の内側面にコンクリートで到達側防護体を形成し、これら発進側防護体と到達側防護体とにわたって連結材を掛け渡して並列した地下構造物同士を連結した後、連結用鋼管を回転させながら発進側防護体から到達側防護体にかけて切削・推進させて到達側防護体まで到達させた後、連結用鋼管内の土砂を取り除くことを特徴とする地下構造物の接合方法。
【請求項2】
連結用鋼管を推進させる際に、外側エントランスリングと、これより小さな内側エントランスリングとで挿入口が形成されたエントランスシール装置を発進側防護体に設置し、該エントランスシール装置の挿入口に連結用鋼管を挿入して回転させながら地山を切削・推進させることを特徴とする請求項1に記載の地下構造物の接合方法。
【請求項3】
連結用鋼管の到達側防護体への到達により、一端部が到達側防護体から地下構造物内に導出されたU字形の冷却水循環用パイプの折り曲げ部が切断され、該切断された冷却水循環用パイプで連結用鋼管と到達側地下構造物との接合部外周に止水材を充填するとともに、発進側地下構造物において外側エントランスリングに接続された冷却水注入用パイプによって連結用鋼管と発進側地下構造物との接合部外周に止水材を充填することを特徴とする請求項1または2に記載の地下構造物の接合方法。
【請求項4】
連結用鋼管の前部には、複数の分割片を組立形成したビット付き鋼管が接続されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の地下構造物の接合方法。
【請求項5】
エントランスシール装置の挿入口に挿入された連結用鋼管の内外面には外側エントランスリングと、内側エントランスリングとに設置されたシールが密接されて土砂の噴発を防ぐことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地下構造物の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−248568(P2008−248568A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91283(P2007−91283)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000141956)株式会社コプロス (18)
【Fターム(参考)】