説明

地下水排除工法及びその装置

【課題】 本発明は上記地すべり地帯のすべり土塊、地盤改良地帯等の軟弱地盤層6に穿設した集水井9の内壁面や河川又は海岸に面した土圧支持擁壁2から異常気象による局地的集中豪雨と、土木用多重管1による強力な集水力により、集水井9(ライナープレート)内の水位が急激に上昇するようになり、このことにより集水井9に高水圧がかかり、水位より低い箇所にある土木用多重管1に逆流し、土木用多重管1内より水が地中に流出して間隙水圧が上昇し、地すべりや地山の崩壊する恐れが起こった。本発明はこれを解決することを目的とするものである。
【解決手段】 地中埋設土木用多重管1の下端部1’を土圧支持壁2の外側に突出し、該下端部1’の該開口端面3の上端部に遊支したフラップゲート4で上記開口端面3を閉鎖し、上記多重管1への逆流を阻止することを特徴とする地下水排除工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地下水を土木用多重管により排除し、かつ該多重管への逆流を阻止して地すべりや地山の崩壊を防止する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地すべり地帯、地盤改良地帯等の地下排水には土木用多重管が用いられた(例えば特許文献1)。
【0003】
上記土木用多重管を用いて上記地すべり地帯等の断崖面から地下水を排出し、かつアンカーを兼用して地滑りを防止した(例えば特許文献2)。
【0004】
上記多重管はボーリング孔の地山に直接挿入されてボーリング孔壁が崩れ易いためボーリング孔内に多孔ケーシングを嵌挿し、ボーリング孔の孔壁崩解を防止することができ、地中集水能力は著しく向上した(例えば特許文献3)。
【0005】
ところで多孔ケーシングに挿入した上記多重管による集水能力をさらに向上するため集水用井戸(集水井)を地表から掘削し内周面をライナープレートで囲って土圧支持壁を形成し、この集水井から上向勾配に複数のボーリング孔を穿設し、上記多重管を挿入して地下水を集水井に集水した。
【0006】
しかしこの集水井内には上記多重管から地下水が流入して貯留し水位が上昇する。しかし、排水ボーリング又はポンプアップ等による貯留水の排水能力は不足し、集水井の水位が上昇し、上記上向勾配上記多重管内に貯流水が逆流上昇し、地下水は上記多重管から地中に逆流充満した。
【特許文献1】特開昭61−179912号
【特許文献2】特開平6−88335号
【特許文献3】特許第2777346号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記地すべり地帯、地盤改良地帯等の軟弱地盤層に穿設した集水井の内壁面や河川又は海岸に面した土圧支持擁壁から異常気象による局地的集中豪雨と、土木用多重管による強力な集水力により、集水井(ライナープレート)内の水位が急激に上昇するようになり、このことにより集水井に高水圧がかかり、水位より低い箇所にある土木用多重管に逆流し、土木用多重管内より水が地中に流出して間隙水圧が上昇し、地すべりや地山の崩壊する恐れが起こった。
【0008】
本発明はこれを解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため本発明は
第1に地中埋設土木用多重管の下端部を土圧支持壁の外側に突出し、該下端部の開口端面の上端部に遊支したフラップゲートで上記開口端面を閉鎖し、上記多重管への逆流を阻止することを特徴とする地下水排除工法、
第2に上記土圧支持壁が地表に形成された上記第1発明記載の地下水排除工法、
第3に上記土圧支持壁が集水井のライナープレートによって形成された上記第1発明記載の地下水排除工法、
第4に上記土圧支持壁が河川又は海岸の擁壁である上記第1発明記載の地下水排除工法、
第5に地中埋設集水多重管の下端部を土圧支持壁の外側に突出し、該下端部の開口端面が上記支持壁に向って上向に傾斜し、該開口端面の上端部に遊支したフラップゲートで上記開口端面を閉鎖し、上記多重管への逆流を阻止するようにしたことを特徴とする地下水排除装置、
第6に上記土圧支持壁が集水井のライナープレートによって形成された上記第5発明記載の地下水排除装置、
第7に上記土圧支持壁が河川又は海岸の擁壁である上記第5発明記載の地下水排除装置、
によって構成される。
【0010】
従って地すべり地帯、地盤改良地帯等の軟弱地盤層のコンクリート地表又は地表から地下水位以下に集水井を穿設し、内壁に環状の鋼製ライナープレートを積層して土圧支持壁を形成する。
【0011】
又河川又は海岸に接する軟弱地盤層のコンクリート擁壁による土圧支持壁を形成する。
【0012】
本発明では上記土圧支持壁の外側から地中内に向ってある間隔を持って上向勾配に複数のボーリングを施し、ボーリング孔に土木用多重管を嵌挿して孔壁を支持すると共に地中埋設土木用多重管群を形成する。
【0013】
本発明では上記集水多重管の下端部を上記土圧支持壁の外側に突出させ、該下端部の開口端面を外側に開口させる。
【0014】
上記開口端面をその上端部に遊支したフラップゲートで閉鎖し、該開口端面の逆止弁を形成するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したので、上記軟弱地盤層内に埋設した複数の土木用多重管から土圧支持壁外に排出する水を上記多重管の下端開口部において逆流させるおそれがなく、局地的集中豪雨時における軟弱地盤層の地下水位の上昇を抑制し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
岩盤5の上に不動土塊6を介して地すべり土塊7が存在し、地表8から集水井9を垂直に穿設して地下水10を集水し、排水管11から排水する。
【0017】
集水井9は円形であり内壁面は鋼製の環状ライナープレート2’を張設して上記地層7の土圧支持壁2を形成する。
【0018】
上記集水井9に代え図5(イ)(ロ)図に示すように河川又は海岸に接する地形ではコンクリート擁壁2”を土圧支持壁2とする。
【0019】
上記土圧支持壁2から地中に向って上向勾配に複数のボーリング孔12を穿設し、ボーリング孔12内に複数の多孔外管13,13を接続管16で接続して嵌入し、さらに該多孔外管13内に無孔内管17を挿入して多重管1を形成する。
【0020】
上記多重管1は図3、図4に示すように上記多孔外管13,13内に複数の無孔内管17,17のそれぞれ上端部を接続管16に嵌合し、下端部をそれぞれ下段の接続管16の上端に向けて開口し、無孔内管17の外周と多孔外管13の内周との間に通水間隙tを介在させて上記外重管1を形成する。
【0021】
上記接続管16の中程外周にはパッカー(水膨張性ゴム)14を嵌合し、上記多孔外管15,15を上記ボーリング孔12内に挿入した後パッカー14は水を吸収して外径が拡大し、ボーリング孔12の内周面に圧着し、ボーリング孔12と多孔外管15とを密封し、かつ接続管16とボーリング孔12との止水リングを形成する。
【0022】
上記ボーリング孔12と多孔外管15及び接続管16との間はパッカー14で止水され多孔外管15と無孔管17との間には間隙tを介在させ上記多孔外管15、接続管16を含む集水多重管1が形成される。
【0023】
上記土木用多重管1は集水井9の上記環状ライナープレート2’又は上記擁壁2”等による土圧支持壁2から地中に向って上向勾配に穿設した複数のボーリング孔12内に挿入され、下端部1’を上記ライナープレート2’や地表8又は上記擁壁2”の外側に突出させ、
【0024】
突出下端部1’の開口端面3を上記土圧支持壁2に向って上向に傾斜させて、該開口端面3の上端部に遊支した水平軸3’に鋼製フラップゲート4を設け、該フラップゲート4によって楕円形開口端面3の逆止弁を形成することができ、土圧支持壁2の外側即ち集水井9内や地表8又は擁壁2”外の水位の昇降によって土圧支持壁2の外側に上記多重管1内の水を排出する。
【0025】
しかし集中豪雨等による地下水位10’の上昇によって上記多重管1から流入する集水井9や地表8又は上記擁壁2”外の水位及び水圧が上昇することにより上記フラップゲート4は上記開口端面3を閉鎖し、逆流を阻止することによって複数の上記多重管1を逆流する雨水がすべり土塊内に逆流するおそれはない。
【0026】
尚図3、図4中sは上記多孔外管15の集水用スリットである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明では土圧支持壁2の外側に流出した豪雨等による地下水10がフラップゲート4によって逆止され、逆流による地中又は地表への地下水の上昇による地すべりや地山の崩壊が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】地中埋設集水多重管、集水井、排水孔の縦断面図である。
【図2】図1A−A線による横断平面図である。
【図3】地中埋設集水多重管及びフラップゲートの縦断面図である。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】(イ)図は河川又は海岸における擁壁の縦断面図、(ロ)図はフラップゲート開状態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 地中埋設土木用多重管
1’ 下端部
2 土圧支持壁
3 開口端面
4 フラップゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中埋設土木用多重管の下端部を土圧支持壁の外側に突出し、
該下端部の開口端面の上端部に遊支したフラップゲートで上記開口端面を閉鎖し、
上記多重管への逆流を阻止することを特徴とする地下水排除工法。
【請求項2】
上記土圧支持壁が地表に形成された請求項1記載の地下水排除工法。
【請求項3】
上記土圧支持壁が集水井のライナープレートによって形成された請求項1記載の地下水排除工法。
【請求項4】
上記土圧支持壁が河川又は海岸の擁壁である請求項1記載の地下水排除工法。
【請求項5】
地中埋設土木用多重管の下端部を土圧支持壁の外側に突出し、
該下端部の開口端面が上記支持壁に向って上向に傾斜し、
該開口端面の上端部に遊支したフラップゲートで上記開口端面を閉鎖し、
上記多重管への逆流を阻止するようにしたことを特徴とする地下水排除装置。
【請求項6】
上記土圧支持壁が集水井のライナープレートによって形成された請求項5記載の地下水排除装置。
【請求項7】
上記土圧支持壁が河川又は海岸の擁壁である請求項5記載の地下水排除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−38543(P2008−38543A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217149(P2006−217149)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(507159681)株式会社アクア・コントロール (2)
【Fターム(参考)】