説明

地下水等の水処理装置

【課題】逆浸透膜の活用にあたり、地下水等の水資源の有効活用が出来る水処理装置の提供を目的とする。
【解決手段】地下水等の汲み上げ手段と、汲み上げた原水の溶存物質濃度測定手段と、原水を処理する逆浸透膜モジュールとを備え、逆浸透膜モジュールの透過水と濃縮水との内、濃縮水の溶存物質濃度測定手段と流量調整手段とを有することを特徴とする。
流量調整手段は、濃縮水の溶存物質が1000mg/L以上となるように設定するのが良い。
これにより、濃縮水は温泉水の代替として利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
井戸水や地下水及び湧水等の地中から得られる水(以下総称して地下水等と称する)の水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水には、井戸水のようにほぼそのまま飲料水として使用出来るレベルのものから、ミネラル等の溶存物質が多く温泉水として利用出来るレベルのものまで多種雑多に存在する。
【0003】
近年、水資源の有効利用の観点から地下水等を汲み上げて逆浸透膜(RO膜)あるいはナノ濾過膜(NF膜)等を用いて不純物除去(滅菌、殺菌)処理して上水として使用するケースが増加している。
例えば、逆浸透膜モジュールを用いれば、地下水原水中の溶解イオン、硬度成分が除去された透過水と、それらが濃縮された濃縮水が得られる。
透過水は飲料水として使用されるが、濃縮水の方はこれまで使用用途が殆どなく捨てられていたが、濃縮水を捨てるのは水資源としての有効利用に欠けるだけでなく、濃縮水に対する排水処理費が必要となる。
【0004】
特開平5−7873号公報には、逆浸透膜モジュールを介して得た濃縮水を畑等への灌水として再利用する技術を開示するが、水資源としての有効利用には未だ不充分であるだけでなく、都市型生活空間においては、灌水利用は非常に限定されたものとなる。
【0005】
一方、昭和23年に制定された温泉法によれば、地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で別表に掲げる温度、又は物質を有するものを温泉というと定められている。
この別表によれば、溶存物質(ガス性のものを除く)総量1000mg/L以上となっている。
従って、地下水等を汲み上げ、逆浸透膜モジュールを用いて水処理し、濃縮水中の溶存物質濃度1000mg/L以上にすれば、透過水を飲料水として使用するとともに、濃縮水を用いて身近な療養としての温泉水の代替として有効利用できることになる。
また、海水を濃縮して利用することも可能になる。
【0006】
逆浸透膜モジュールの利用にあたっては、従来、次のような問題があった。
地下水等を汲み上げて原水タンクに貯水すると、原水中に溶けていた鉄イオンやマンガンイオン等が空気中の酸素で酸化されて不溶性のスケールとなる。
そこで、従来は原水貯溜タンクに塩素を注入し、ロ過器で酸化物を除去していたが、原水にアンモニア性窒素が多く含まれると、多量の塩素が必要となる問題があった。
次に、濃縮水の濃度を濃くしようとすると逆浸透膜に大きな負担がかかり、膜に形成されている超微細孔に目づまりが発生しやすかった。
【0007】
【特許文献1】特開平5−7873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、逆浸透膜の活用にあたり、上記従来技術に有する問題を解決することにより、地下水等の水資源の有効活用が出来る水処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る水処理装置は、地下水等の汲み上げ手段と、汲み上げた原水の溶存物質濃度測定手段と、原水を処理する逆浸透膜モジュールとを備え、逆浸透膜モジュールの透過水と濃縮水との内、濃縮水の溶存物質濃度測定手段と流量調整手段とを有する。
【0010】
ここで、地下水等とは先に述べたとおり、井戸水を含めて地下から湧出する全ての水が対象になる。
地下水等の汲み上げ手段とは、一般的にポンプアップをいうが、水圧が高ければそのまま配管利用することも可能で、逆浸透膜モジュールまで通水するための手段をいう。
また、地下水の酸化を防ぎ、酸化鉄や酸化マンガン等のスケール発生を抑えるには、汲み上げ手段は、地下水等の原水が逆浸透膜モジュールに至るまでは実質的に空気に触れないようにしてあるのがよい。
【0011】
原水の溶存物質濃度測定手段及び濃縮水の溶存物質濃度測定手段は、温泉水となるように溶存物質濃度を測定し、流量制御系統にフィードバックするためのものであり、電気伝導度計等を用いた換算測定でもよい。
例えば、原水に含まれるイオン成分を予め分析し、そのイオン成分比率と各イオン成分における濃縮後の電導率を測定して溶存物質総量を推定する方法がある。
本発明においては、濃縮水を温泉水として利用するために、流量調整手段はバルブ制御装置等を用いて流量を溶存物質濃度測定データと連動させて濃縮水の溶存物質濃度が1000mg/L以上になるように制御されたものが好ましい。
【0012】
また、逆浸透膜モジュールへの負担を低減するためには、逆浸透膜モジュールに透過前の原水に電磁波又は超音波を照射する電磁波又は超音波発生ユニットを備えるとよい。
ここで超音波は、水分子の動きを活性化し、電磁波はスケールの発生を抑える。
【0013】
逆浸透膜モジュール透過水は、pH=6前後のやや酸性側の水質になる場合がある。
この場合に、逆浸透膜モジュールの性質上、カルシウム硬度やアルカリ度が少ないためランゲリア指数のマイナスの絶対値が高くなる恐れがある。
ランゲリア指数がマイナスになり、その絶対値が1を大きく越えるようであれば、給水設備等を腐食しやすい水質になる。
このような場合に、簡単なシステム構成にてランゲリア指数を改善できるようにしたのが請求項4に記載の発明であり、逆浸透膜モジュールによる濃縮水の一部を通水するイオン透過性膜モジュールを備え、このイオン透過性膜モジュールの透過水を、逆浸透膜モジュールの透過水に所定量混合できる混合調整手段を有することを特徴とする。
【0014】
ここでイオン透過性膜モジュールとは、クリプトスポリジウム、細菌、分子量レベルの微細濁質等を除去するが、イオン成分は透過する膜モジュールをいい、飲料水としての安全性を確保するためのものである。
イオン透過性膜モジュールとしては、膜細孔径0.1μm〜2nmの限外濾過膜(UF膜)が代表的であるが、必要に応じて精密濾過膜(MF膜)、ナノ濾過膜(NF膜)も使用可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、地下水等を逆浸透膜モジュールを用いて水処理する装置として、原水及び濃縮水の溶存物質濃度測定手段と、流量調整手段とを備えたことにより、地下水等の水質に応じて濃縮水側の溶存物質濃度を制御でき、水資源の活用に有効である。
特に、濃縮水中の溶存物質濃度を1000mg/L以上に制御すると、透過水を飲料水として活用しつつ、濃縮水を身近な温泉水の代替として活用でき、浴を建てることにより療養泉相当の水質になる。
また、請求項4に記載の発明のように、逆浸透膜モジュールにて得られた濃縮水の一部をイオン透過性膜モジュールに通水して、イオン成分を有するその透過水をRO膜透過水に所定の割合混合調整できるようにすると、高価な消石灰注入装置等を用いることなく安価なシステム構成で総合的水処理装置が得られる。
これにより、地下水等の水資源のトータル有効活用システムが容易に出来上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る水処理装置の概要及び水処理方法を図1に基づいて以下説明する。
地下水1をポンプ等の汲み上げ手段にて、空気に実質的に触れないようにして汲み上げ、必要に応じてフィルター(濾過器)3を通水し、電気伝導度計等の原水溶存物質濃度測定手段4にて溶存物質濃度を測定する。
次に、原水を逆浸透膜モジュール6に通水し、透過水と濃縮水に分離する。
濃縮水側には、バルブ開閉装置等の流量調整手段7と、電気伝導度計等の濃縮水溶存物質濃度測定手段8とを備え、溶存物質が1000mg/L以上になるように流量及び逆浸透圧等を制御する。
濃縮水が所定より薄い場合には、汲み上げ手段2側に戻す。
なお、逆浸透膜モジュール通水前の原水に必要に応じて電磁波又は超音波発生ユニット5を備えている。
また、透過水及び濃縮水は配管等により直接利用に供してもよいが、図1に示すようにタンク等の貯溜手段9、10に一旦貯溜してもよい。
【0017】
図2に示すフローチャートは、逆浸透膜モジュール6の濃縮水の後に限外濾過膜(UF膜)モジュール11を設けた例を示す。
UF膜モジュールの透過水をRO透過水に混合することで水の安全性を確保しつつ、ランゲリア指数を改善することができる。
この場合に、RO濃縮水をバルブ等の混合調整手段12を調整してUF膜モジュール11からのUF透過水量を調整し、RO透過水との混合割合を調整することで混合透過水の飲料水基準を確保する。
UF膜モジュールでの残水はバルブ13の切替により排水される。
【実施例】
【0018】
石川県内の地下水をサンプルとして濃縮試験した結果を以下に示す。
(地下水)
試験に用いた地下水は、硬度103(mgCaCO/L)、蒸発残留物168mg/L,pH8.1(20.2℃)であった。
(濃縮試験1)
逆浸透膜モジュールとして、GEオスモニクス社製AG4040FFを用いて9倍濃縮(回収率約89%)した濃縮水を分析した結果、蒸発残留物1194mg/L、イオン成分を各成分毎に分析した値に基づく総陽イオンは353.4mg/Lで、総陰イオンは1187.2mg/Lであった。
また、溶存物質(ガス性のものを除く)は1822.5mg/Lであった。
(濃縮試験2)
上記地下水を同逆浸透膜モジュールを用いて16倍濃縮(回収率約94%)した濃縮水を分析すると、蒸発残留物1849mg/L、総陽イオン546.7mg/L、総陰イオン1890.2mg/L、溶存物質は2887.7mg/Lであった。
この分析結果から地下水の濃縮水は、
泉質:マグネシウム・カルシウム一炭酸水素塩泉からなる温泉法第2条別表の温泉に相当することが明らかになった。
(ランゲリア指数改善試験)
濃縮試験1で得られた逆浸透膜モジュールの透過水(RO透過水)のランゲリア指数をノーデル法(簡便計算法)で計算すると、ランゲリア指数=−4.1になり、−1よりも絶対値がかなり大きい値になった。
そこで、濃縮試験1における濃縮水をUF膜モジュールに通水し、そのUF透過水を約25%RO透過水に混合すると、ランゲリア指数は約−0.95〜−1.4に改善された。
従って、RO透過水の使用用途、配管材質等によっては、RO濃縮水の一部をUF膜モジュールに通水し、そのUF透過水をRO透過水に混合するのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る地下水等の水処理装置のフローチャートを示す。
【図2】RO膜濃縮水の後にUF膜モジュールを設けた例を示す。
【符号の説明】
【0020】
1 地下水
2 地下水の汲み上げ手段
4 原水溶存物質濃度測定手段
6 逆浸透膜モジュール
7 流量調整手段
8 濃縮水溶存物質濃度測定手段
11 イオン透過性膜モジュール(UF膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水等の汲み上げ手段と、汲み上げた原水の溶存物質濃度測定手段と、原水を処理する逆浸透膜モジュールとを備え、逆浸透膜モジュールの透過水と濃縮水との内、濃縮水の溶存物質濃度測定手段と流量調整手段とを有することを特徴とする地下水等の水処理装置。
【請求項2】
流量調整手段は、濃縮水の溶存物質が1000mg/L以上となるように設定されたものであることを特徴とする請求項1記載の地下水等の水処理装置。
【請求項3】
逆浸透膜モジュールの透過前の原水に、電磁波又は超音波を照射する電磁波又は超音波発生ユニットを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の地下水等の水処理装置。
【請求項4】
逆浸透膜モジュールによる濃縮水の一部を通水するイオン透過性膜モジュールを備え、このイオン透過性膜モジュールの透過水を、逆浸透膜モジュールの透過水に所定量混合できる混合調整手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の地下水等の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−38052(P2007−38052A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222310(P2005−222310)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(300018714)
【Fターム(参考)】