説明

地下穿孔機

【課題】地盤を穿孔した後、スクリュー軸とダウンハンマーを除去しない状態で、穿孔された孔にコンクリート等を注入でき、発生するスライムを注水管を通して逆流して外部に排出できる、地下穿孔機を提供すること。
【解決手段】地下穿孔機を構成するダウンハンマー(104)の下端のハンマー本体(105)は、その底面中央からその上端まで通水孔(106)を具備し、通水孔(106)から放射状に延びるとともに、ハンマー本体(105)の底面から一定高さ位置で通水孔(106)と連結される複数の通気孔(107)を具備し、供給体(102)に供給される水等が通水孔(106)と通気孔(107)とが交差する地点を通過して該通水孔(106)からのみ吐出されるように、該供給体(102)からハンマー本体(105)の該交差する地点より下方の位置まで注水管(108)が設置され、供給体(102)に供給された圧搾空気が、注水管(108)の外側面に沿って流れて通気孔(107)から吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公知の回転機と、回転機の下方に設置されて水および圧搾空気を供給するための供給体と、供給体の下方に設置されて掘削された土砂またはスライムを地上に排出させるためのスクリュー軸と、スクリュー軸の下端に設置されて地盤を掘削するためのエア作動式ダウンハンマーと、を具備する地下穿孔機に関するものであり、特に、地下穿孔時に水の供給(注入)を中断して、注水管からダウンハンマー下方のスライムおよび土砂を排出することができ、穿孔後には、目的に応じてダウンハンマーとスクリュー軸とを穿孔された孔から上向き除去すると同時に、注水管を通して基盤固め用のモルタル、コンクリートまたはセメントなどを注入することができ、もって、穿孔された孔からダウンハンマーとスクリュー軸とを取り除く過程において掘削土砂による陥没現象によって穿孔深さが減少するといった問題を解消することのできる地下穿孔機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1で示すように、地下穿孔機は、岩盤や転石層などの硬い地盤や一般の地盤を対象とした基礎パイル工事または架設工事の地盤固め工事などの施工時に、地面から一定深さの孔を穿孔するための装置である。この地下穿孔機は、回転力を発生させる回転機(1)と、水と圧搾空気とを供給するための供給体(2)と、掘削された土砂やスライムを地上に排出させるためのスクリュー軸(3)と、実質的に岩盤や地盤を掘削するためのダウンハンマー(4)と、これらの構成要素を駆動させるための諸般装備を備えたものである。
【0003】
上記する地下穿孔機の供給体(2)には、図2で示すように、ダウンハンマー(4)を駆動させるための圧搾空気が該ダウンハンマー(4)まで供給されるように空気通路(9)が開設されている。また、実用新案登録出願第1993-0009415号で記載するように、ダウンハンマー(4)のビットが地盤を穿孔する過程において過熱するのを防止するための水を供給するための注水管(8)が、ダウンハンマー(4)のハンマー本体(5)の下端まで設置されている。
【0004】
従って、図2で示すように、圧搾空気は、ダウンハンマー(4)を駆動させた後に、ハンマー本体(5)の下端の通気孔(7)から吐出され、さらに注水管(8)の下部終端がハンマー本体(5)の空気流路(9)の上部に設置され得るようにすることで、注水管(8)に供給される水は、空気流路(9)において圧搾空気と混合されて通気孔(7)に吐出されることになる。
【0005】
結局、注水管(8)に供給される水がハンマー本体(5)に形成された空気流路(9)において圧搾空気と混合されてハンマー本体(5)の下端部の通気孔(7)から噴射されることにより、穿孔時にビットに生じる熱を冷却させるとともに該ビットの耐摩耗性も増大させることができる。また、地下削孔時に発生する粉塵の解消と地下穿孔時に発生する騒音の大幅な低減を齎すことができ、水と圧搾空気を一緒に排出することにより、掘進速度を倍増することができる。さらには、通水路を通してセメントの混練物を供給することもでき、穿孔された孔が陥没することを防止できるようになっている。
【0006】
しかし、上記する従来の地下穿孔機は、供給体から供給される圧搾空気と水を、ダウンハンマー(4)のハンマー本体(5)において混合して噴射させることから、穿孔された孔に基盤固め用のモルタルやセメント、またはコンクリートを供給することはできず、スクリュー軸(3)とダウンハンマー(4)などを穿孔された孔から除去し、その後にコンクリートを打設しなければならない煩わしさがあった。
【0007】
さらに、上記のごとく、スクリュー軸(3)とダウンハンマー(4)などを穿孔された孔から除去する過程においては、穿孔された孔に破砕されたスライムなどが陥没してしまい、深度を正確に維持できないという大きな問題も生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記する問題を解決するために案出された本発明は、地盤を穿孔した後にスクリュー軸とダウンハンマーを除去しない状態で、穿孔された孔にコンクリート、モルタルまたはセメントミルク液などを供給することができ、かつ、地盤穿孔時に発生するスライムを注水管を通して逆流させ、外部に排出することのできる地下穿孔機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による地下穿孔機は、回転機(1)と、回転機(1)の下方に設置されて水と圧搾空気を供給するための供給体(102)と、供給体(102)の下方に設置されて掘削された土砂またはスライムを地上に排出するためのスクリュー軸(3)と、スクリュー軸(3)の下端に設置されて地盤を掘削するためのエア作動式ダウンハンマー(104)と、を具備する地下穿孔機において、ダウンハンマー(104)の下端のハンマー本体(105)は、その底面中央からその上端まで通水孔(106)を具備しており、通水孔(106)から放射状に延びるとともに、ハンマー本体(105)の底面から一定高さ位置で通水孔(106)と連結される複数の通気孔(107)を具備しており、供給体(102)に供給される水、モルタル、コンクリートの何れか一つが通水孔(106)と通気孔(107)とが交差する地点を通過して該通水孔(106)からのみ吐出されるように、該供給体(102)からハンマー本体(105)の該交差する地点より下方の位置まで注水管(108)が設置されており、供給体(102)に供給された圧搾空気が、注水管(108)の外側面に沿って流れ、ハンマー本体(105)の通気孔(107)から吐出されるようになっていることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、供給体(102)において、該供給体(102)の上方から下向きに形成される空気流路(109) を確保した姿勢で中空部(110)が形成されており、中空部(110)から供給された空気が分岐して供給体(102)の下方に移送されるように分岐流路(111)が形成されており、供給体(102)の外側面に形成された注水孔と連結される分岐管(112)が中空部(110)内に設置されており、分岐管(112)の下端と注水管(108)の上端とが連結されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から理解できるように、本発明の地下穿孔機は、穿孔時には地盤の種類に応じて注水管に水を選択的に供給することにより、ビットの通気孔から圧搾空気が噴射されると、圧搾空気が通水孔および注水管に土砂とスライムなどと一緒に逆流して空気リフトの役割を遂行することができ、スライムの排出がスクリュー軸と注水管とを通して二重でなされ得るようにでき、穿孔後にスクリュー軸とダウンハンマーとを孔から除去しない(孔に残置した)状態で注水管を通して地盤固め用のモルタルおよびコンクリートを打設することができ、スクリュー軸とダウンハンマーの除去時に発生する陥没現象を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る回転機、スクリュー軸の図面符号は、図1に図示された図面の図面符号を引用することとし、本発明の構成および作用を、添付した図3を参照して説明する。
【0013】
先ず、図3に図示された供給体(102)とダウンハンマー(104)は、その間に図1のようなスクリュー軸(3)が図示されなければならないが、スクリュー軸(3)は周知の技術であり、本発明の圧搾空気および注水管(108)は、供給体(102)とスクリュー軸(3)を通してダウンハンマー(104)まで形成されることから、スクリュー軸(3)の図示は省略する。
【0014】
図3で示すように、供給体(102)には、圧搾空気を注入するようになされた空気流路(109)が該供給体(102)の上端から下向きに形成され、注水管(108)は供給体(102)の内部に内蔵される。
【0015】
ここで、空気流路(109)に供給される圧搾空気が注水管(108)の水と混合されないように、注水管(108)はT字分岐管(112)として成形されて、供給体(102)の内側に形成される中空部(110)内に設置される。空気流路(109)は中空部(110)内に形成され、圧搾空気が中空部(110)に流入すると、次いで中空部(110)の下端に形成された複数の分岐流路(111)を通して供給体(102)の下方に吐出される。
【0016】
ここで、図3においては、本発明に係る分岐管(112)がT字形として図示されているが、本発明の分岐管(112)はL字形に形成されてもよく、その形状は特に限定されるものではない。
【0017】
しかし、分岐管(112)は、供給体(102)に供給される圧搾空気が干渉または混合されない構造を備えていなければならない。
【0018】
そして、分岐流路(111)を通して供給体(102)の下方に吐出された圧搾空気は、スクリュー軸(3)とダウンハンマー(104)に形成された空気流路(109)を通り、該ダウンハンマー(104)の下端に結合されたハンマー本体(105)の空気流路(109)を経て通気孔(107)へ噴射され、吐出される。
【0019】
通気孔(107)は、ハンマー本体(105)の中央から放射状に延びるように形成され、ハンマー本体(105)の下部の所定位置(所定高さ)まで形成された空気流路(109)に連通するように形成される。ここで分岐管(112)の下端に結合される注水管(108)は、供給体(102)の下部とスクリュー軸(3)およびダウンハンマー(104)に形成された空気流路(109)に挿入され、ダウンハンマー(104)のハンマー本体(105)の底面中央に形成された通水孔(106)まで延びてこれに連結設置される。
【0020】
従って、図3に示したように、注水管(108)は、空気流路(109)に挿入されてハンマー本体(105)まで延び、空気流路(109)から通水孔(106)に分岐される地点を通過して通水孔(106)の上端で連結設置される。
【0021】
このとき、噴射される圧搾空気は従来の地下穿孔機におけると同様に注水管(108)の外側面に沿って空気流路(109)を流下するので、注水管(108)を通して供給される水、モルタル、コンクリート、セメントミルク液などは圧搾空気と混合されず、相互干渉しない状態でそれぞれを供給し、噴射させることができる。
【0022】
従って、注水管(108)を通して供給された水により、地盤掘削時にビット(ハンマー本体の下端に突出形成されるもので図示せず)を容易に冷却することができ、供給される圧搾空気は、供給体(102)の空気流路(109)、分岐流路(111)、スクリュー軸(3)の空気流路(109)、ダウンハンマー(104)の空気流路(109)を経て通気孔(107)に供給されることにより、地盤穿孔をなすことができる。
【0023】
上記するように、本発明に係る地下穿孔機により地盤を穿孔する際に、場合によっては注水管(108)を通過する水の注入を中断すると、圧搾空気が通気孔(107)を通して噴射されると同時に、ビットにより掘削されながら発生するスライムなどが、通気孔(107)から噴射される高圧の圧搾空気と一緒に通水孔(106)および注水管(108)を通して逆流するようになり、注水管(108)を通してスライム、土砂などを地上に排出することができるようになる。
【0024】
さらに、本発明に係る地下穿孔機を利用して所望の深さまで孔を穿孔した後に、該孔に地盤固め用のコンクリートを打設しようとする場合、スクリュー軸(3)とダウンハンマー(104)を孔から除去しない状態で圧搾空気の供給を中断し、注水管(108)を通してモルタルまたはコンクリートを注入しながらスクリュー軸(3)とダウンハンマー(104)を上昇させると、穿孔された孔に地盤固め用のモルタルまたはコンクリートを打設(充填)しながらスクリュー軸(3)とダウンハンマー(104)を除去することができるため、スクリュー軸(3)とダウンハンマー(104)を除去した後にモルタルなどを充填する際に生じる陥没現象を防止することができる。
【0025】
さらに、スクリュー軸(3)とダウンハンマー(104)を除去する過程でコンクリートを並行して打設することができるので、スクリュー軸(3)とダウンハンマー(104)を除去した後に地盤固め用のモルタルを打設する方法に比して施工時間を格段に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の地下穿孔設備を示した図である。
【図2】従来の地下穿孔機の供給体とダウンハンマーの構造を示した図である。
【図3】本発明に係る地下穿孔機の供給体とダウンハンマーの構造を示した図である。
【符号の説明】
【0027】
102…供給体、104…ダウンハンマー、105…ハンマー本体、106…通水孔、107…通気孔、108…注水管、109…空気流路、110…中空部、111…分岐流路、112…分岐管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機と、該回転機の下方に設置されて水および圧搾空気を供給するための供給体と、該供給体の下方に設置されて掘削された土砂またはスライムを地上に排出させるためのスクリュー軸と、該スクリュー軸の下端に設置されて地盤を掘削するためのエア作動式ダウンハンマーと、を具備する地下穿孔機において、
前記ダウンハンマーの下端のハンマー本体は、その底面中央からその上端まで通水孔を具備しており、
前記通水孔から放射状に延びるとともに、前記ハンマー本体の前記底面から一定高さ位置で前記通水孔と連結される複数の通気孔を具備しており、
前記供給体に供給される水、モルタル、コンクリートの何れか一つが前記通水孔と通気孔とが交差する地点を通過して該通水孔からのみ吐出されるように、該供給体から前記ハンマー本体の該交差する地点より下方の位置まで注水管が設置されており、
前記供給体に供給された圧搾空気が、前記注水管の外側面に沿って流れ、ハンマー本体の前記通気孔から吐出されるようになっていることを特徴とする、地下穿孔機。
【請求項2】
前記供給体において、該供給体の上方から下向きに形成される空気流路を確保した姿勢で中空部が形成されており、
前記中空部から供給された空気が分岐して前記供給体の下方に移送されるように分岐流路が形成されており、
前記供給体の外側面に形成された注水孔と連結される分岐管が前記中空部内に設置されており、
前記分岐管の下端と前記注水管の上端とが連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の地下穿孔機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−163729(P2008−163729A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252115(P2007−252115)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(593157758)株式会社エーコー (8)
【出願人】(596047230)
【Fターム(参考)】