説明

地中埋設用金属支柱

【課題】金属製支柱の基部への水の滲透を防止し防食を行う。
【解決手段】鋼管製の支柱11の地中に埋設する基部11a及び大気への露出部11bに、耐候性を有する合成ゴムシート15と粘着シート14から成るゴム巻装バンド16を巻回して、粘着シート14を介して支柱11に接着し、合成ゴムシート15により基部11aへの支柱11に沿った雨水の侵入を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガードレールを支持する地中埋設用金属支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、高速道路等に設けるガードレール1は、図7に示すように帯状の鋼板を成形したものを、所定の長さごとに支柱2により支える構造になっている。この支柱2は直径が15cm程度の円筒、或いは一辺が12cm程度の四角筒の鋼管により製作し、頂部に防水用のキャップ3を被せている。支柱2の長さは使用する場所によって異なり、通常では普通の道路のように基部を土中に埋設する場合は長く、橋梁のように土の層がなく、基部全体をコンクリート構造物中に埋設する場合は短くされている。
【0003】
一般に、地中に埋設する場合には、コンクリート4の舗装に設けた内径20cmほどの埋設孔5に支柱2の基部2aを挿入し、下端部2bの周囲にアスファルト又はセメントモルタルのような道路補修材6を置き、その上の周囲の空所には地表面近くまで砂7を充填する。最後に、支柱2の地表付近を再び道路補修材6で覆って固定している。
【0004】
このようにして固定した支柱2には、数年から早い場合は数ヶ月で腐食による錆が生ずることが認められている。錆は地中であれば、埋設された地表面付近から下方に向かって、約20cmから深い場合は40cmまでの範囲において生じ、或る範囲よりも深い部分では、あまり錆が見られない。この腐食の原因は雨水の滲透により、この位置の支柱2の周囲が湿った状態にあり、局部電池が形成されるマクロセル現象が生じて電流が流れたり、迷走電流が流れたりする電食のためとされている。
【0005】
従来から、その対策として支柱2に対する塗装が行われているが、あまり有効とは云えず、抜本的な解決策が求められている。同様な問題はガードレールに限らず、照明灯のような鋼管製のポールを設置する場合にも同様で生ずる。
【0006】
そのための対策として、特許文献1が開示されている。特許文献1には図8に示すように、支柱2が埋設される部分のうち、腐食が生じ易い部分を、ブチルゴムから成る両面粘着シート8を介して合成樹脂製のスリーブ9を巻回する防食処理を施してから、予め設けた埋設孔5の中に挿入する。そして、基部2aの防食を必要とする部分の周囲の地表面近くまで砂7を充填した後に、砂7の上の地表面よりも若干上の位置に至る部分を、道路補修材6により覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−308978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この特許文献1の発明においても、年数の経過に従い、合成樹脂製のスリーブ9は太陽光や風雨により劣化が進行し易く、施工における取り扱いも厄介である。また、支柱2と道路補修材6との隙間を介して支柱2とスリーブ9との間に雨水が滲透することがある。
【0009】
この雨水の浸透を解決するために、本出願人はスリーブ9の上縁に、図9に示すような成型品である耐候性を有する合成ゴムから成るゴム製カバー10を挿着する発明を出願している。
【0010】
しかし、このゴム製カバー10は成型品であるために、コストが高くなり、また支柱2の種類に応じた形状のものを多数用意しなければならない。
【0011】
本発明の目的は、従来の円筒状のゴム製カバー、スリーブに代えてゴム巻装バンドを使用し、簡便に施工でき腐食が生じ難い地中埋設用金属支柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る地中埋設用金属支柱は、雨水浸入の防止対策を施した金属製の地中埋設用金属支柱であって、弾性、耐候性を有するベルト状の合成ゴムシートの裏面に粘着シートを接着したゴム巻装バンドを前記粘着シートにより前記支柱の表面に巻回して接着し、前記支柱を埋設するに当り、前記ゴム巻装バンドの下部を地中に埋設し、上部を大気中に露出させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る地中埋設用金属支柱は、施工が容易であり、支柱に沿った雨水の侵入が防止され、耐候性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の支柱を埋設した状態の断面図である
【図2】ゴム巻装バンドの断面図である。
【図3】ゴム巻装バンドの変形例の断面図である。
【図4】ゴム巻装バンドを支柱に着装した状態の断面図である。
【図5】ゴム巻装バンドをその端部同士を重ね合わせて支柱に着装した状態の断面図である。
【図6】実施例2の支柱の断面図である。
【図7】従来のガードレール支柱の基部を土中に埋設した状態の断面図である。
【図8】従来例の腐食防止層を設けた支柱の断面図である。
【図9】従来のゴム製キャップを被着した状態の支柱の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を図1〜図6に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は図示しないガードレールを上部に取り付けた円筒状の地中埋設用金属支柱の基部を、橋梁などのコンクリート構造物等の地中に埋設した状態における実施例の断面図を示している。
【0017】
支柱11の埋設部分である下部の基部11aは、コンクリート12に設けられた埋設孔13中に挿入されている。支柱11の基部11aから上部の露出部11bにかけて、粘着シート14とその表面に貼付した合成ゴムシート15から成る幅20cm〜40cm程度のベルト状のゴム巻装バンド16が巻回されている。支柱11の底部周囲にアスファルトやモルタル等の道路補修材17を敷き、その上に砂18を充填し、更にその上に道路補修材17が充填されている。
【0018】
従って、基部11aに巻回したゴム巻装バンド16の下部は埋設され、露出部11bに巻回したゴム巻装バンド16の上部は大気中に露出されている。
【0019】
ゴム巻装バンド16はその弾性を利用して支柱11を絞め付けながら、粘着シート14を介して支柱11に対して水平方向に接着する。これにより、支柱11とゴム巻装バンド16との間が密着し、支柱11の表面に沿った内側への雨水の滲透が防止され、ゴム巻装バンド16による防食効果が発揮される。また、埋設した支柱11の地表付近には、道路補修材17による円錐台形の余盛りを施して傾斜面を形成し、水はけを良くすることが好ましい。
【0020】
粘着性を有する粘着シート14の材料としては、未加硫のブチルゴムが好適である。一方、可撓性を有する合成ゴムシート15の材料は耐候性に優れていることが要求されるため、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などの数種類の合成ゴム材が使用可能であるが、価格等の点からエチレン・プロピレンゴム(EPT、EP、EPDM)が好適である。
【0021】
ゴム巻装バンド16は図2に示すように、予め工場等において、例えば厚さ1mmの合成ゴムシート15の裏面に、厚さ1.5mmの粘着シート14を接着しておき、粘着シート14の支柱11への接着面には離型紙19を貼付し、支柱11の寸法、形状に応じて所要の大きさに形成されている。
【0022】
このゴム巻装バンド16は例えば折り畳んで段ボール箱等に収納しておき、工場又は現場において、ゴム巻装バンド16を段ボール箱から取り出して支柱11に接着すればよい。
【0023】
支柱11を覆う作業に際して、合成ゴムシート15が持つ適度の弾性を利用して離型紙19を剥離しながら粘着シート14を支柱11に接着することにより、図4に示すように合成ゴムシート15を支柱11の表面に巻装して隙間なく密着させることができる。
【0024】
なお、その際にゴム巻装バンド16の端部においては、図3に示すように必要に応じてゴム巻装バンド16の一端の合成ゴムシート15の端部15aを所定幅に延出し、他端の粘着シート14の端部14aを所定幅に延出しておく。これにより、図4に示すように合成ゴムシート15と粘着シート14との両端部を段違いに支柱11に積層しても、また合成ゴムシート15の端部同士が開拡しても水分がその隙間から内部に侵入することがない。
【0025】
なお、図4に示すように支柱11へのゴム巻装バンド16の接着後に、合成ゴムシート15の合わせ目に、ゴム接着剤20を塗布することも防水対策上有効である。
【0026】
図5はゴム巻装バンド16の端部同士を重ね合わせて、支柱11に着装した断面図である。
【0027】
このように、両端の粘着性を有する粘着シート14を重ね合わせ、手で押し付けると粘着シート14同士が密着して一体化するので、隙間が発生することがなく防水性が極めて良好となる。また、継ぎ目の合成ゴムシートの端部15aと粘着シート14の間には瞬間接着剤等を埋め込むことにより、接着性を更に向上させることも好適である。
【0028】
このようにして、図1に示すように防食、防水処理が施された支柱11が得られ、このような処理を施した支柱11は使用中の防食性、防水性が十分に確保される。
【0029】
なお、既設の支柱11における防食層を交換する場合においても、支柱11の周囲の道路補修材、防食層を取り除き、上述のようにゴム巻装バンド16を支柱11に巻装した後に、支柱11の周囲に砂18を埋め戻し、道路補修材17を充填すればよい。
【実施例2】
【0030】
図6は実施例2の支柱11を示し、支柱11に巻回したゴム巻装バンド16の下部に、例えば幅5cm、厚み0.2mm程度の例えばEPTから成り片面に接着剤を塗布した保護テープ21が巻回されている。
【0031】
支柱11を打設機を用いて土中に打ち込む際には、ゴム巻装バンド16の下部が砂18により捲くれ上り、損傷し易いために、ゴム巻装バンド16をこの保護テープ21により保護する。
【0032】
なお、この保護テープ21は予め図2、図3に巻回前のゴム巻装バンド16に一部を接着しておいて、ゴム巻装バンド16の支柱11への巻回と共に支柱11に接着すれば作業が容易である。しかし、保護テープ21はゴム巻装バンド16の支柱11への巻回後に、別途に巻回して接着してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る地中埋設用金属支柱は、ガードレール用の支柱のみならず、照明灯のポールのような鋼管柱に対しても適用が可能である。更には、支柱は管体でなくとも、例えばI型鋼のような型鋼であっても適用ができる。
【符号の説明】
【0034】
11 支柱
11a 基部
11b 露出部
12 コンクリート
13 埋設孔
14 粘着シート
15 合成ゴムシート
16 ゴム巻装バンド
17 道路補修材
18 砂
19 離型紙
20 ゴム接着剤
21 保護テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水浸入の防止対策を施した金属製の地中埋設用金属支柱であって、弾性、耐候性を有するベルト状の合成ゴムシートの裏面に粘着シートを接着したゴム巻装バンドを前記粘着シートにより前記支柱の表面に巻回して接着し、前記支柱を埋設するに当り、前記ゴム巻装バンドの下部を地中に埋設し、上部を大気中に露出させたことを特徴とする地中埋設用金属支柱。
【請求項2】
前記ゴム巻装バンドの両端部において前記合成ゴムシートと前記粘着シートとを段違いにして、前記支柱への接着に際して表面を滑らかに積層することを特徴とする請求項1に記載の地中埋設用金属支柱。
【請求項3】
前記粘着シートの前記支柱への接着面には離型紙を貼付しておき、前記支柱への接着に際して前記離型紙を剥離して接着することを特徴とする請求項1又は2に記載の地中埋設用金属支柱。
【請求項4】
前記支柱に巻回した前記ゴム巻装バンドの下端に保護用のテープを巻回したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の地中埋設用金属支柱。
【請求項5】
前記合成ゴムシートはエチレン・プロピレンゴムとしたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の地中埋設用金属支柱。
【請求項6】
接着後の前記合成ゴムシートの合わせ目に、ゴム接着剤を塗布したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つの請求項に記載の地中埋設用金属支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−12924(P2012−12924A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109139(P2011−109139)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(591205411)
【Fターム(参考)】