地中壁構造物、この地中壁構造物内に埋設される芯材及びこの地中壁構造物の構築方法
【課題】予め設計等により決定された位置以外にも水抜き用井戸の増築を可能にする芯材を備えるとともに、地震等によるせん断荷重が作用しても充分なせん断耐力を有する地中壁構造物を提供する。
【解決手段】ソイルセメント柱列壁2には、円筒形状の鋼管1aと、この鋼管1aの外周面に沿って長手方向に延設された2つの突起部1b、1cとを備えた芯材1が埋設されている。芯材1は、突起部1b、1cがソイルセメント柱列壁2の壁面の面内方向に向くようにソイルセメント柱列壁2内に設置される。また、芯材1Aの突起部1bと隣接する芯材1Bの突起部1c、及び芯材1Aの突起部1cと隣接する芯材1Cの突起部1bは一部分が重なるように配置される。
【解決手段】ソイルセメント柱列壁2には、円筒形状の鋼管1aと、この鋼管1aの外周面に沿って長手方向に延設された2つの突起部1b、1cとを備えた芯材1が埋設されている。芯材1は、突起部1b、1cがソイルセメント柱列壁2の壁面の面内方向に向くようにソイルセメント柱列壁2内に設置される。また、芯材1Aの突起部1bと隣接する芯材1Bの突起部1c、及び芯材1Aの突起部1cと隣接する芯材1Cの突起部1bは一部分が重なるように配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材が埋設されている地中壁構造物及びこの地中壁構造物内の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、開削工法にて地盤を掘削する際、水抜き用の井戸を構築して地下水を揚水し、地下水位を低下させることが行われている。特に近年においては、ソイルセメントやRC等の地中構造内に水抜き用の井戸を設ける方法が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、先端に蓋を取り付けた鋼管を複数のソイルセメント柱からなる地中壁構造物内に挿入し、この鋼管をガイドにして該鋼管の下端から所定の深さまでの地盤を削孔して水抜き用井戸を構築する方法が開示されている。この方法は、予め設計等により地中壁構造物内に構築する水抜き用井戸の位置を決定し、この位置のソイルセメント柱内に地盤を削孔する際のガイドとして用いる鋼管を設置し、水抜き用井戸を構築しないソイルセメント柱内にはH型鋼を設置するものである。
【0004】
また、特許文献2には、複数の水抜き用井戸を構築し、これらの井戸間に複数のソイルセメント柱からなる地中壁構造物を構築する方法が開示されている。この方法は、まず、地中壁構造物を構築する予定箇所にストレーナ付き鋼管を複数本挿入し、各ストレーナ付き鋼管の周りにソイルセメントを充填して水抜き用井戸を構築し、次に、これらの井戸間の地盤を削孔してソイルセメントを充填するとともに、各ソイルセメント柱内にH型鋼を挿入して地中壁構造物を構築し、最後に、この地中壁構造物の両端部を井戸に連結して水抜き用井戸を備えた地中壁構造物を構築するものである。
【特許文献1】特開2001−115458号公報
【特許文献2】特開平11−81301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、鋼管の径がソイルセメント柱の外径よりもやや小さい程度なので、H型鋼を設置したソイルセメント柱と鋼管を設置したソイルセメント柱との接続部は、H型鋼同士が隣接するように設置されたソイルセメント柱同士の接続部に比べて、ソイルセメント柱同士の重なり部分が薄くなり、地震等によるせん断荷重が地中壁構造物に作用すると、接続部が破断したり、接続部にソイルセメント柱の外径と同一形状の円弧状の滑り面が形成されて地中壁構造物が破損する可能性がある。
【0006】
また、予め設計等により決定された位置に鋼管を設置して水抜き用井戸を構築するので、地中壁構造物で囲まれた掘削予定箇所の地下水位を低下させる際に、設計等により構築された水抜き用井戸から揚水を行っても予想通りに地下水位が低下しない場合は、新たに鋼管を設置することは困難であり、水抜き用井戸を増築することができない。
【0007】
特許文献2に記載の方法では、地中壁構造物を構築する際は、すでに井戸が構築されているので、井戸を破損しないように重機の取り扱いに注意を払いながら作業を行わなければならず作業効率が悪くなる。
【0008】
また、井戸と地中壁構造物の端部との連結は、井戸の周囲の固結したソイルセメントの一部を削って新しいソイルセメントを充填することにより行われる。そこで、この連結が不十分な場合には、連結部分の接触面が水みちになったり、地震等によるせん断荷重が作用すると滑り面になる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、予め設計等により決定された位置以外に井戸の増築を可能にする芯材を備えるとともに、地震等によるせん断荷重が作用しても充分なせん断耐力を有する地中壁構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の地中壁構造物は、芯材が埋設される地中壁構造物であって、前記芯材は、前記地中壁構造物内に鉛直方向に延びるように配置された鋼管と、前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設され、前記地中壁構造物の面内方向に突出する突起部とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0011】
本発明による地中壁構造物によれば、鋼管と、この鋼管の外周面に取り付けられた突起部とを備えた芯材が地中壁構造物内に埋設されることにより、地震時等に地中壁構造物の壁面に垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることが可能となる。
【0012】
また、芯材は鋼管と突起部とを備えているので、鋼管のみの状態で地中壁構造物内に埋設する場合よりも地中壁構造物との接触面積が増えて、地中壁構造物との結合を強固にすることが可能となる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、複数の前記芯材が、前記地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように配置されることを特徴とする。
本発明による地中壁構造物によれば、複数の芯材が地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように配置されることにより、壁面に垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を著しく向上させることが可能となる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、前記芯材は、この芯材の前記突起部と隣接する芯材の前記突起部とが重なるように配置されることを特徴とする。
本発明による地中壁構造物によれば、芯材は、この芯材の突起部と隣接する芯材の突起部とが重なるように配置されることにより、突起部を厚くすることと同様の効果が得られ、地震時等に地中壁構造物の壁面に垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることが可能となる。
また、芯材の突起部と隣接する芯材の突起部とが重なるように配置されており、地中壁構造物内に水みちができないので止水性が向上する。
【0015】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記地中壁構造物の上面から地盤内の帯水層まで前記芯材内を貫通するように孔を削孔して構築された井戸を更に備えることを特徴とする。
本発明による地中壁構造物によれば、記地中壁構造物の上面から地盤内の帯水層まで前記芯材内を貫通するように孔を削孔して構築された井戸を備えているので、この井戸を利用して地下水を排水することが可能となる。
【0016】
第5の発明の芯材は、地中壁構造物内に埋設される芯材であって、両端が開口した筒状の鋼管と、前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設された突起部とを備えることを特徴とする。
本発明による芯材によれば、鋼管の外周面に突起部を有することにより、鋼管のみの場合よりも断面係数が大きくなるので、芯材の曲げ耐力を向上させることができる。
また、鋼管と突起部とを備えているので、鋼管のみの状態で地中壁構造物内に埋設する場合よりも地中壁構造物との接触面積が増えて、地中壁構造物との結合を強固にすることが可能となる。
【0017】
第6の発明の地中壁構造物の補強方法は、地中壁構造物の補強方法において、両端が開口した筒状の鋼管と前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設された突起部とを備える芯材を、前記地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように、かつ、前記突起部が前記地中壁構造物の面内方向に突出するように埋設することを特徴とする。
本発明による地中壁構造物の補強方法によれば、芯材を地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように、かつ、突起部が地中壁構造物の面内方向に突出するように配置することにより、地震時等に地中壁構造物の壁面に垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の芯材を備えることにより、地震時等に作用するせん断荷重に対してせん断耐力を向上させた地中壁構造物を構築することができる。また、地中壁構造物の所望の位置に揚水井、復水井、観測井を設けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では地中構造であるソイルセメント柱列壁内に芯材を設置する場合について説明するが、本発明は、RC等の地中構造内に設置する場合も適用することができる。
【0020】
図1〜図3は、それぞれ本発明の第一実施形態であるソイルセメント柱列壁2を示す斜視断面図、縦断面図、及び平面図である。
図1〜図3に示すように、ソイルセメント柱列壁2は、地下構造物等を構築するために開削工法にて掘削される掘削予定箇所5の周囲を取り囲むように設置されている。
【0021】
ソイルセメント柱列壁2は、単軸又は多軸のアースオーガーにより形成した柱列状の掘削孔にソイルセメントを充填し、その中に芯材1を横方向に並ぶように複数本建て込むことにより構築される。
また、ソイルセメント柱列壁2の下端は地下構造物を構築する不透水層の粘土層3を貫通して被圧帯水層の砂層4の上部に到達するように設置される。そして、芯材1は、このソイルセメント柱列壁2内を深度方向に貫通して、芯材1の下端がソイルセメント柱列壁2の下方に突出するように設置されている。
【0022】
なお、本実施形態においては、地盤は粘土層3と砂層4とからなる場合について説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、すべて砂層4からなる地盤であってもよい。
【0023】
ソイルセメント柱列壁2の厚さや設置深度、芯材1の径や設置深度等は、掘削予定箇所5周辺をボーリングし、地盤の地質や透水性等の水理状態を調査する水理調査後、この水理調査の結果に基づいて行う設計により予め決定される。
【0024】
図4は、本実施形態に係る芯材1の斜視図である。図4に示すように、芯材1は、円筒形状の鋼管1aと、この鋼管1aの外周面に沿って長手方向に延設された2つの突起部1b、1cとを備える。
図5は、図3の一部拡大図である。図5に示すように、芯材1の突起部1b、1cは、鋼管1aの外周の対向する位置に、互いに平行に、かつ、鋼管1aの中心を通る直線に対して逆向きにずれた位置に設けられている。
【0025】
芯材1は、突起部1b、1cがソイルセメント柱列壁2の壁面の面内方向に向くようにソイルセメント柱列壁2内に埋設される。また、芯材1Aの突起部1bと隣接する芯材1Bの突起部1c、及び芯材1Aの突起部1cと隣接する芯材1Cの突起部1bは、それらの先端部分が重なるように配置される。
【0026】
図5に示すように、突起部1bの幅Lは、鋼管1aの外周面からソイルセメント柱2Bの外周線の円弧状の仮想線VLBを通過し、さらに、ソイルセメント柱2Aの外周と隣接するソイルセメント柱2Bの外周とが接続される接続部分THをやや超えるまでの長さを有する。
【0027】
また、突起部1cの幅Lも、突起部1bと同様に、鋼管1aの外周面からソイルセメント柱2Cの外周線の円弧状の仮想線VLCを通過し、さらに、ソイルセメント柱2Aの外周と隣接するソイルセメント柱2Cの外周とが接続される接続部分THをやや超えるまでの長さを有する。なお、本実施形態では、突起部1bの幅Lと突起部1bの幅Lの長さは同一としているが、これに限定されるものではなく、突起部1bの幅Lと突起部1cの幅Lとの長さは異なっていてもよい。
したがって、上述のように、芯材1Aの突起部1bと隣接する芯材1Bの突起部1Cとは部分的に重なり合う状態になる。
【0028】
このように、本実施形態では、突起部1b及び突起部1cがソイルセメント柱列壁2の壁面に略並行に配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、地震時等に壁面に対して垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0029】
また、ソイルセメント柱2A、2B、2C間で滑り面になる可能性のある上記仮想線VLA、VLB、VLC部分にも突起部1b、1cがそれぞれ滑り面に対して垂直になるように配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、地震時等に壁面に対して垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0030】
さらに、芯材1Aの突起部1bと隣接する芯材1Bの突起部1cとが重なるように埋設されることにより、突起部1b、1cを厚くすることと同様の効果が得られ、地震時等にソイルセメント柱列壁2の壁面に垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることが可能となる。
【0031】
以下に、上述した芯材1を用いてソイルセメント柱列壁2内に井戸を構築する方法について説明する。
【0032】
まず、設計時に、井戸の数、位置、深さ等を決定する。
次に、この設計により井戸として利用すべく選択された芯材1の鋼管1a内にアースオーガーを挿入してソイルセメントを破砕しつつ、排出し、所定の深度まで掘削する。本実施形態においては、例えば、砂層4まで掘削する。これにより、ソイルセメント柱列壁2の芯材1内に地上から砂層4に貫通する空洞が形成される。
最後に、掘削した芯材1の鋼管1a内にストレーナ付き鋼管を挿入し、このストレーナ付き鋼管の外周と芯材1の内周との間にソイルセメントを充填することにより、井戸を構築する。
【0033】
そして、井戸から地下水を揚水して地下水位を低下することにより、ソイルセメント柱列壁2に取り囲まれた掘削予定箇所5を掘削する際の被圧地下水の水圧による盤膨れを防止する。
【0034】
また、掘削予定箇所5の地下水位を低下させる際に、井戸から揚水を行っても予想通りに地下水位が低下しない場合は、新たに芯材1の鋼管1a内部を削孔して井戸を増築してもよい。
【0035】
以上説明した本実施形態における芯材1によれば、鋼管1aの外周面に突起部1b、1cを設けることにより、鋼管1aのみを用いた場合よりも断面係数が大きくなって曲げ耐力が向上する。したがって、この芯材1が内部に埋設されたソイルセメント柱列壁2は、鋼管1aのみを埋設した場合よりも高い曲げ剛性を有することになる。
【0036】
また、芯材1が突起部1b、1cを有することにより、鋼管1aのみの場合よりもソイルセメント柱列壁2との接触面積が増えるので、ソイルセメント柱列壁2との結合が強固になる。
【0037】
さらに、ソイルセメント柱列壁2の壁面に対して突起部1b、1cが略並行になるように芯材1が設置されるので、地震時等にソイルセメント柱列壁2に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることが可能となる。また、芯材1の突起部1bと隣接する芯材1の突起部1cとが重なるように配置されており、ソイルセメント柱列壁2内に水みちができないので止水性が向上する。
【0038】
そして、芯材1がソイルセメント柱列壁2を貫通して、芯材1の下端がソイルセメント柱列壁2の下端面より突出するように埋設されるので、この芯材1の鋼管1aの内部を掘削して該鋼管1a内を貫通する空洞を形成することにより、ソイルセメント柱列壁2の下方に位置する砂層4内の地下水を揚水するための井戸を構築することが可能になる。したがって、ソイルセメント柱列壁2で囲まれた掘削予定箇所5の地下水位を低下させる際に、設計等により構築された水抜き用井戸から揚水を行っても予想通りに地下水位が低下しない場合に、新たに他の芯材の内部を削孔することにより水抜き用井戸を増築することが可能となる。
【0039】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明において、上記の実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0040】
図6は、本発明の第二実施形態であるソイルセメント柱列壁2を示す拡大平面図である。
図6に示すように、本実施形態における芯材21は、鋼管1aの外周面に沿って長手方向に延設された単一の突起部1bのみを備える点で、2つの突起部1b、1cを備える第一実施形態と異なる。芯材21は、突起部1bがソイルセメント柱列壁2の壁面の面内方向に向くようにソイルセメント柱2A内に埋設される。
【0041】
突起部21bの幅Lは、鋼管1aの外周面からソイルセメント柱2Cの外周線の円弧状の仮想線VLC、及びソイルセメント柱2Aの外周と隣接するソイルセメント柱2Cの外周とが接続される接続部分THを通過し、さらに、ソイルセメント柱2Aの外周線の円弧状の仮想線VLAをやや超えるまでの長さを有する。
【0042】
以上説明した本実施形態における芯材1によれば、接続部分THには、突起部21bがせん断荷重の作用方向に対して垂直になるように配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、地震時等に壁面に対して垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0043】
また、ソイルセメント柱2A、2B、2C間で滑り面になる可能性のある上記仮想線VLA、VLB、VLC部分にも突起部21bがそれぞれ滑り面に対して垂直になるように配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、せん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0044】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図7は、本発明の第三実施形態であるソイルセメント柱列壁2を示す拡大平面図である。
【0045】
図7に示すように、ソイルセメント柱列壁2内には、芯材31とH型鋼32とが交互に埋設されている。本実施形態における芯材31の突起部31b、31cは、鋼管1aの外周の対向する位置に、互いに平行に、かつ、鋼管1aの中心を通る直線上に設けられている。また、芯材31は、突起部31b、31cがソイルセメント柱列壁2の壁面の面内方向に向くようにソイルセメント柱列壁2内に埋設される。
【0046】
突起部31cの幅Lは、鋼管1aの外周面から仮想線VLC、及びソイルセメント柱2Aの外周と隣接するソイルセメント柱2Cの外周とが接続された接続部分THを通過し、さらに、仮想線VLAをやや超える長さを有する。
【0047】
また、突起部31bの幅Lは、上記と同様に、鋼管1aの外周面から仮想線VLB、及びソイルセメント柱2Aの外周と隣接するソイルセメント柱2Bの外周とが接続された接続部分THを通過し、さらに、仮想線VLAをやや超える長さを有する。なお、突起部31bの幅Lと突起部31bの幅Lの長さは同一である。
【0048】
以上説明した本実施形態における芯材31によれば、接続部分THには、突起部31b又は突起部31cがせん断荷重の作用方向に対して垂直になるように配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、地震時等に壁面に対して垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0049】
また、ソイルセメント柱2A、2B、2C間で滑り面になる可能性のある上記仮想線VLA、VLB、VLC部分にも突起部31b又は突起部31cがそれぞれ滑り面に対して垂直になるように配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、せん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0050】
なお、上述した実施例の他に、例えば、図8〜図11にそれぞれ示すように、ソイルセメント柱列壁2内に芯材1と丸型鋼41とを交互に配置したり、芯材1間に丸型鋼41を複数本配置したり、芯材1を所定の間隔で配置したり、芯材21を隣接するように配置してもよく、芯材1、21、31、H型鋼、丸型鋼の組み合わせ、配置、間隔は各現場により設計等に基づいて適宜変更される。
【0051】
なお、上述した各実施形態において、鋼管1aの外周面に沿って長手方向に連続した突起部1b、1c、21b、31b、31cを取り付ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図12に示すように、鋼管1aの外周面に沿って長手方向に所定の間隔を設けるように取り付けてもよい。
【0052】
なお、上述した各実施形態において、突起部1b、1c、21b、31b、31cとして板状の部材を用いた場合について説明したが、この形状に限定されるものではなく、例えば、図13及び図14に示すように、アングル材33、34を鋼管1aの外周の対向する位置に接合して突起部としてもよい。
【0053】
また、上述したすべての実施形態において、ソイルセメント柱列壁2を貫通するように井戸削孔用ガイド1を設置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、井戸削孔用ガイド1の下面の深度が、ソイルセメント柱列壁2の下面の深度と同一になるように設置したり、ソイルセメント柱列壁2の下面よりやや浅い深度になるように設置してもよく、この場合は、井戸削孔用ガイド1内のソイルセメントをアースオーガー22で排出した後に、ソイルセメント柱列壁2の下面部を掘削ビットを備えるロッド13で貫通して井戸を削孔してもよい。
【0054】
なお、上述したすべての実施形態において、ソイルセメント柱列壁2内に井戸削孔用ガイド管1を設置する場合について説明したが、壁に限定されるものではなく、例えば、杭や壁杭内に設置してもよい。
【0055】
さらに、上述したすべての実施形態において、地中壁構造物はすべて地中に存在している場合について説明したが、これに限定されるものではなく、地中壁構造物の一部が地上に突出していてもよい。
【0056】
なお、上述したすべての実施形態において、鋼管1aとして円形状のものを用いたが、円形状に限定されるものではなく四角等の角型のものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第一実施形態であるソイルセメント柱列壁を示す斜視断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態であるソイルセメント柱列壁を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態であるソイルセメント柱列壁を示す平面図である。
【図4】本実施形態に係る芯材の斜視図である。
【図5】図3の一部拡大図である。
【図6】本発明の第二実施形態であるソイルセメント柱列壁を示す拡大平面図である。
【図7】本発明の第三実施形態であるソイルセメント柱列壁を示す拡大平面図である。
【図8】芯材の配置方法の他の実施例を示す図である。
【図9】芯材の配置方法の他の実施例を示す図である。
【図10】芯材の配置方法の他の実施例を示す図である。
【図11】芯材の配置方法の他の実施例を示す図である。
【図12】芯材の他の実施例を示す斜視図である。
【図13】突起部の他の実施例を示す図である。
【図14】突起部の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1(=1A、1B、1C) 芯材
1a 鋼管
1b、1c 突起部
2 ソイルセメント柱列壁
2A、2B、2C ソイルセメント柱
3 粘土層(不透水層)
4 砂層(被圧帯水層)
5 掘削予定箇所
21(=21A、21B、21C) 芯材
21b 突起部
31 芯材
31b、31c 突起部
32 H型鋼
33、34 アングル材
41 丸型鋼
VLA、VLB、VLC 仮想線
TH 接続部分
L 突起部の幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材が埋設されている地中壁構造物及びこの地中壁構造物内の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、開削工法にて地盤を掘削する際、水抜き用の井戸を構築して地下水を揚水し、地下水位を低下させることが行われている。特に近年においては、ソイルセメントやRC等の地中構造内に水抜き用の井戸を設ける方法が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、先端に蓋を取り付けた鋼管を複数のソイルセメント柱からなる地中壁構造物内に挿入し、この鋼管をガイドにして該鋼管の下端から所定の深さまでの地盤を削孔して水抜き用井戸を構築する方法が開示されている。この方法は、予め設計等により地中壁構造物内に構築する水抜き用井戸の位置を決定し、この位置のソイルセメント柱内に地盤を削孔する際のガイドとして用いる鋼管を設置し、水抜き用井戸を構築しないソイルセメント柱内にはH型鋼を設置するものである。
【0004】
また、特許文献2には、複数の水抜き用井戸を構築し、これらの井戸間に複数のソイルセメント柱からなる地中壁構造物を構築する方法が開示されている。この方法は、まず、地中壁構造物を構築する予定箇所にストレーナ付き鋼管を複数本挿入し、各ストレーナ付き鋼管の周りにソイルセメントを充填して水抜き用井戸を構築し、次に、これらの井戸間の地盤を削孔してソイルセメントを充填するとともに、各ソイルセメント柱内にH型鋼を挿入して地中壁構造物を構築し、最後に、この地中壁構造物の両端部を井戸に連結して水抜き用井戸を備えた地中壁構造物を構築するものである。
【特許文献1】特開2001−115458号公報
【特許文献2】特開平11−81301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、鋼管の径がソイルセメント柱の外径よりもやや小さい程度なので、H型鋼を設置したソイルセメント柱と鋼管を設置したソイルセメント柱との接続部は、H型鋼同士が隣接するように設置されたソイルセメント柱同士の接続部に比べて、ソイルセメント柱同士の重なり部分が薄くなり、地震等によるせん断荷重が地中壁構造物に作用すると、接続部が破断したり、接続部にソイルセメント柱の外径と同一形状の円弧状の滑り面が形成されて地中壁構造物が破損する可能性がある。
【0006】
また、予め設計等により決定された位置に鋼管を設置して水抜き用井戸を構築するので、地中壁構造物で囲まれた掘削予定箇所の地下水位を低下させる際に、設計等により構築された水抜き用井戸から揚水を行っても予想通りに地下水位が低下しない場合は、新たに鋼管を設置することは困難であり、水抜き用井戸を増築することができない。
【0007】
特許文献2に記載の方法では、地中壁構造物を構築する際は、すでに井戸が構築されているので、井戸を破損しないように重機の取り扱いに注意を払いながら作業を行わなければならず作業効率が悪くなる。
【0008】
また、井戸と地中壁構造物の端部との連結は、井戸の周囲の固結したソイルセメントの一部を削って新しいソイルセメントを充填することにより行われる。そこで、この連結が不十分な場合には、連結部分の接触面が水みちになったり、地震等によるせん断荷重が作用すると滑り面になる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、予め設計等により決定された位置以外に井戸の増築を可能にする芯材を備えるとともに、地震等によるせん断荷重が作用しても充分なせん断耐力を有する地中壁構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の地中壁構造物は、芯材が埋設される地中壁構造物であって、前記芯材は、前記地中壁構造物内に鉛直方向に延びるように配置された鋼管と、前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設され、前記地中壁構造物の面内方向に突出する突起部とを備えることを特徴とする(第1の発明)。
【0011】
本発明による地中壁構造物によれば、鋼管と、この鋼管の外周面に取り付けられた突起部とを備えた芯材が地中壁構造物内に埋設されることにより、地震時等に地中壁構造物の壁面に垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることが可能となる。
【0012】
また、芯材は鋼管と突起部とを備えているので、鋼管のみの状態で地中壁構造物内に埋設する場合よりも地中壁構造物との接触面積が増えて、地中壁構造物との結合を強固にすることが可能となる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、複数の前記芯材が、前記地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように配置されることを特徴とする。
本発明による地中壁構造物によれば、複数の芯材が地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように配置されることにより、壁面に垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を著しく向上させることが可能となる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、前記芯材は、この芯材の前記突起部と隣接する芯材の前記突起部とが重なるように配置されることを特徴とする。
本発明による地中壁構造物によれば、芯材は、この芯材の突起部と隣接する芯材の突起部とが重なるように配置されることにより、突起部を厚くすることと同様の効果が得られ、地震時等に地中壁構造物の壁面に垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることが可能となる。
また、芯材の突起部と隣接する芯材の突起部とが重なるように配置されており、地中壁構造物内に水みちができないので止水性が向上する。
【0015】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記地中壁構造物の上面から地盤内の帯水層まで前記芯材内を貫通するように孔を削孔して構築された井戸を更に備えることを特徴とする。
本発明による地中壁構造物によれば、記地中壁構造物の上面から地盤内の帯水層まで前記芯材内を貫通するように孔を削孔して構築された井戸を備えているので、この井戸を利用して地下水を排水することが可能となる。
【0016】
第5の発明の芯材は、地中壁構造物内に埋設される芯材であって、両端が開口した筒状の鋼管と、前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設された突起部とを備えることを特徴とする。
本発明による芯材によれば、鋼管の外周面に突起部を有することにより、鋼管のみの場合よりも断面係数が大きくなるので、芯材の曲げ耐力を向上させることができる。
また、鋼管と突起部とを備えているので、鋼管のみの状態で地中壁構造物内に埋設する場合よりも地中壁構造物との接触面積が増えて、地中壁構造物との結合を強固にすることが可能となる。
【0017】
第6の発明の地中壁構造物の補強方法は、地中壁構造物の補強方法において、両端が開口した筒状の鋼管と前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設された突起部とを備える芯材を、前記地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように、かつ、前記突起部が前記地中壁構造物の面内方向に突出するように埋設することを特徴とする。
本発明による地中壁構造物の補強方法によれば、芯材を地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように、かつ、突起部が地中壁構造物の面内方向に突出するように配置することにより、地震時等に地中壁構造物の壁面に垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の芯材を備えることにより、地震時等に作用するせん断荷重に対してせん断耐力を向上させた地中壁構造物を構築することができる。また、地中壁構造物の所望の位置に揚水井、復水井、観測井を設けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では地中構造であるソイルセメント柱列壁内に芯材を設置する場合について説明するが、本発明は、RC等の地中構造内に設置する場合も適用することができる。
【0020】
図1〜図3は、それぞれ本発明の第一実施形態であるソイルセメント柱列壁2を示す斜視断面図、縦断面図、及び平面図である。
図1〜図3に示すように、ソイルセメント柱列壁2は、地下構造物等を構築するために開削工法にて掘削される掘削予定箇所5の周囲を取り囲むように設置されている。
【0021】
ソイルセメント柱列壁2は、単軸又は多軸のアースオーガーにより形成した柱列状の掘削孔にソイルセメントを充填し、その中に芯材1を横方向に並ぶように複数本建て込むことにより構築される。
また、ソイルセメント柱列壁2の下端は地下構造物を構築する不透水層の粘土層3を貫通して被圧帯水層の砂層4の上部に到達するように設置される。そして、芯材1は、このソイルセメント柱列壁2内を深度方向に貫通して、芯材1の下端がソイルセメント柱列壁2の下方に突出するように設置されている。
【0022】
なお、本実施形態においては、地盤は粘土層3と砂層4とからなる場合について説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、すべて砂層4からなる地盤であってもよい。
【0023】
ソイルセメント柱列壁2の厚さや設置深度、芯材1の径や設置深度等は、掘削予定箇所5周辺をボーリングし、地盤の地質や透水性等の水理状態を調査する水理調査後、この水理調査の結果に基づいて行う設計により予め決定される。
【0024】
図4は、本実施形態に係る芯材1の斜視図である。図4に示すように、芯材1は、円筒形状の鋼管1aと、この鋼管1aの外周面に沿って長手方向に延設された2つの突起部1b、1cとを備える。
図5は、図3の一部拡大図である。図5に示すように、芯材1の突起部1b、1cは、鋼管1aの外周の対向する位置に、互いに平行に、かつ、鋼管1aの中心を通る直線に対して逆向きにずれた位置に設けられている。
【0025】
芯材1は、突起部1b、1cがソイルセメント柱列壁2の壁面の面内方向に向くようにソイルセメント柱列壁2内に埋設される。また、芯材1Aの突起部1bと隣接する芯材1Bの突起部1c、及び芯材1Aの突起部1cと隣接する芯材1Cの突起部1bは、それらの先端部分が重なるように配置される。
【0026】
図5に示すように、突起部1bの幅Lは、鋼管1aの外周面からソイルセメント柱2Bの外周線の円弧状の仮想線VLBを通過し、さらに、ソイルセメント柱2Aの外周と隣接するソイルセメント柱2Bの外周とが接続される接続部分THをやや超えるまでの長さを有する。
【0027】
また、突起部1cの幅Lも、突起部1bと同様に、鋼管1aの外周面からソイルセメント柱2Cの外周線の円弧状の仮想線VLCを通過し、さらに、ソイルセメント柱2Aの外周と隣接するソイルセメント柱2Cの外周とが接続される接続部分THをやや超えるまでの長さを有する。なお、本実施形態では、突起部1bの幅Lと突起部1bの幅Lの長さは同一としているが、これに限定されるものではなく、突起部1bの幅Lと突起部1cの幅Lとの長さは異なっていてもよい。
したがって、上述のように、芯材1Aの突起部1bと隣接する芯材1Bの突起部1Cとは部分的に重なり合う状態になる。
【0028】
このように、本実施形態では、突起部1b及び突起部1cがソイルセメント柱列壁2の壁面に略並行に配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、地震時等に壁面に対して垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0029】
また、ソイルセメント柱2A、2B、2C間で滑り面になる可能性のある上記仮想線VLA、VLB、VLC部分にも突起部1b、1cがそれぞれ滑り面に対して垂直になるように配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、地震時等に壁面に対して垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0030】
さらに、芯材1Aの突起部1bと隣接する芯材1Bの突起部1cとが重なるように埋設されることにより、突起部1b、1cを厚くすることと同様の効果が得られ、地震時等にソイルセメント柱列壁2の壁面に垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることが可能となる。
【0031】
以下に、上述した芯材1を用いてソイルセメント柱列壁2内に井戸を構築する方法について説明する。
【0032】
まず、設計時に、井戸の数、位置、深さ等を決定する。
次に、この設計により井戸として利用すべく選択された芯材1の鋼管1a内にアースオーガーを挿入してソイルセメントを破砕しつつ、排出し、所定の深度まで掘削する。本実施形態においては、例えば、砂層4まで掘削する。これにより、ソイルセメント柱列壁2の芯材1内に地上から砂層4に貫通する空洞が形成される。
最後に、掘削した芯材1の鋼管1a内にストレーナ付き鋼管を挿入し、このストレーナ付き鋼管の外周と芯材1の内周との間にソイルセメントを充填することにより、井戸を構築する。
【0033】
そして、井戸から地下水を揚水して地下水位を低下することにより、ソイルセメント柱列壁2に取り囲まれた掘削予定箇所5を掘削する際の被圧地下水の水圧による盤膨れを防止する。
【0034】
また、掘削予定箇所5の地下水位を低下させる際に、井戸から揚水を行っても予想通りに地下水位が低下しない場合は、新たに芯材1の鋼管1a内部を削孔して井戸を増築してもよい。
【0035】
以上説明した本実施形態における芯材1によれば、鋼管1aの外周面に突起部1b、1cを設けることにより、鋼管1aのみを用いた場合よりも断面係数が大きくなって曲げ耐力が向上する。したがって、この芯材1が内部に埋設されたソイルセメント柱列壁2は、鋼管1aのみを埋設した場合よりも高い曲げ剛性を有することになる。
【0036】
また、芯材1が突起部1b、1cを有することにより、鋼管1aのみの場合よりもソイルセメント柱列壁2との接触面積が増えるので、ソイルセメント柱列壁2との結合が強固になる。
【0037】
さらに、ソイルセメント柱列壁2の壁面に対して突起部1b、1cが略並行になるように芯材1が設置されるので、地震時等にソイルセメント柱列壁2に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることが可能となる。また、芯材1の突起部1bと隣接する芯材1の突起部1cとが重なるように配置されており、ソイルセメント柱列壁2内に水みちができないので止水性が向上する。
【0038】
そして、芯材1がソイルセメント柱列壁2を貫通して、芯材1の下端がソイルセメント柱列壁2の下端面より突出するように埋設されるので、この芯材1の鋼管1aの内部を掘削して該鋼管1a内を貫通する空洞を形成することにより、ソイルセメント柱列壁2の下方に位置する砂層4内の地下水を揚水するための井戸を構築することが可能になる。したがって、ソイルセメント柱列壁2で囲まれた掘削予定箇所5の地下水位を低下させる際に、設計等により構築された水抜き用井戸から揚水を行っても予想通りに地下水位が低下しない場合に、新たに他の芯材の内部を削孔することにより水抜き用井戸を増築することが可能となる。
【0039】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明において、上記の実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0040】
図6は、本発明の第二実施形態であるソイルセメント柱列壁2を示す拡大平面図である。
図6に示すように、本実施形態における芯材21は、鋼管1aの外周面に沿って長手方向に延設された単一の突起部1bのみを備える点で、2つの突起部1b、1cを備える第一実施形態と異なる。芯材21は、突起部1bがソイルセメント柱列壁2の壁面の面内方向に向くようにソイルセメント柱2A内に埋設される。
【0041】
突起部21bの幅Lは、鋼管1aの外周面からソイルセメント柱2Cの外周線の円弧状の仮想線VLC、及びソイルセメント柱2Aの外周と隣接するソイルセメント柱2Cの外周とが接続される接続部分THを通過し、さらに、ソイルセメント柱2Aの外周線の円弧状の仮想線VLAをやや超えるまでの長さを有する。
【0042】
以上説明した本実施形態における芯材1によれば、接続部分THには、突起部21bがせん断荷重の作用方向に対して垂直になるように配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、地震時等に壁面に対して垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0043】
また、ソイルセメント柱2A、2B、2C間で滑り面になる可能性のある上記仮想線VLA、VLB、VLC部分にも突起部21bがそれぞれ滑り面に対して垂直になるように配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、せん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0044】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図7は、本発明の第三実施形態であるソイルセメント柱列壁2を示す拡大平面図である。
【0045】
図7に示すように、ソイルセメント柱列壁2内には、芯材31とH型鋼32とが交互に埋設されている。本実施形態における芯材31の突起部31b、31cは、鋼管1aの外周の対向する位置に、互いに平行に、かつ、鋼管1aの中心を通る直線上に設けられている。また、芯材31は、突起部31b、31cがソイルセメント柱列壁2の壁面の面内方向に向くようにソイルセメント柱列壁2内に埋設される。
【0046】
突起部31cの幅Lは、鋼管1aの外周面から仮想線VLC、及びソイルセメント柱2Aの外周と隣接するソイルセメント柱2Cの外周とが接続された接続部分THを通過し、さらに、仮想線VLAをやや超える長さを有する。
【0047】
また、突起部31bの幅Lは、上記と同様に、鋼管1aの外周面から仮想線VLB、及びソイルセメント柱2Aの外周と隣接するソイルセメント柱2Bの外周とが接続された接続部分THを通過し、さらに、仮想線VLAをやや超える長さを有する。なお、突起部31bの幅Lと突起部31bの幅Lの長さは同一である。
【0048】
以上説明した本実施形態における芯材31によれば、接続部分THには、突起部31b又は突起部31cがせん断荷重の作用方向に対して垂直になるように配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、地震時等に壁面に対して垂直に作用するせん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0049】
また、ソイルセメント柱2A、2B、2C間で滑り面になる可能性のある上記仮想線VLA、VLB、VLC部分にも突起部31b又は突起部31cがそれぞれ滑り面に対して垂直になるように配置されているので、ソイルセメント柱列壁2は、せん断荷重に対するせん断耐力を向上させることができる。
【0050】
なお、上述した実施例の他に、例えば、図8〜図11にそれぞれ示すように、ソイルセメント柱列壁2内に芯材1と丸型鋼41とを交互に配置したり、芯材1間に丸型鋼41を複数本配置したり、芯材1を所定の間隔で配置したり、芯材21を隣接するように配置してもよく、芯材1、21、31、H型鋼、丸型鋼の組み合わせ、配置、間隔は各現場により設計等に基づいて適宜変更される。
【0051】
なお、上述した各実施形態において、鋼管1aの外周面に沿って長手方向に連続した突起部1b、1c、21b、31b、31cを取り付ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図12に示すように、鋼管1aの外周面に沿って長手方向に所定の間隔を設けるように取り付けてもよい。
【0052】
なお、上述した各実施形態において、突起部1b、1c、21b、31b、31cとして板状の部材を用いた場合について説明したが、この形状に限定されるものではなく、例えば、図13及び図14に示すように、アングル材33、34を鋼管1aの外周の対向する位置に接合して突起部としてもよい。
【0053】
また、上述したすべての実施形態において、ソイルセメント柱列壁2を貫通するように井戸削孔用ガイド1を設置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、井戸削孔用ガイド1の下面の深度が、ソイルセメント柱列壁2の下面の深度と同一になるように設置したり、ソイルセメント柱列壁2の下面よりやや浅い深度になるように設置してもよく、この場合は、井戸削孔用ガイド1内のソイルセメントをアースオーガー22で排出した後に、ソイルセメント柱列壁2の下面部を掘削ビットを備えるロッド13で貫通して井戸を削孔してもよい。
【0054】
なお、上述したすべての実施形態において、ソイルセメント柱列壁2内に井戸削孔用ガイド管1を設置する場合について説明したが、壁に限定されるものではなく、例えば、杭や壁杭内に設置してもよい。
【0055】
さらに、上述したすべての実施形態において、地中壁構造物はすべて地中に存在している場合について説明したが、これに限定されるものではなく、地中壁構造物の一部が地上に突出していてもよい。
【0056】
なお、上述したすべての実施形態において、鋼管1aとして円形状のものを用いたが、円形状に限定されるものではなく四角等の角型のものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第一実施形態であるソイルセメント柱列壁を示す斜視断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態であるソイルセメント柱列壁を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態であるソイルセメント柱列壁を示す平面図である。
【図4】本実施形態に係る芯材の斜視図である。
【図5】図3の一部拡大図である。
【図6】本発明の第二実施形態であるソイルセメント柱列壁を示す拡大平面図である。
【図7】本発明の第三実施形態であるソイルセメント柱列壁を示す拡大平面図である。
【図8】芯材の配置方法の他の実施例を示す図である。
【図9】芯材の配置方法の他の実施例を示す図である。
【図10】芯材の配置方法の他の実施例を示す図である。
【図11】芯材の配置方法の他の実施例を示す図である。
【図12】芯材の他の実施例を示す斜視図である。
【図13】突起部の他の実施例を示す図である。
【図14】突起部の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1(=1A、1B、1C) 芯材
1a 鋼管
1b、1c 突起部
2 ソイルセメント柱列壁
2A、2B、2C ソイルセメント柱
3 粘土層(不透水層)
4 砂層(被圧帯水層)
5 掘削予定箇所
21(=21A、21B、21C) 芯材
21b 突起部
31 芯材
31b、31c 突起部
32 H型鋼
33、34 アングル材
41 丸型鋼
VLA、VLB、VLC 仮想線
TH 接続部分
L 突起部の幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材が埋設される地中壁構造物であって、
前記芯材は、前記地中壁構造物内に鉛直方向に延びるように配置された鋼管と、前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設され、前記地中壁構造物の面内方向に突出する突起部とを備えることを特徴とする地中壁構造物。
【請求項2】
複数の前記芯材が、前記地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように配置されることを特徴とする請求項1に記載の地中壁構造物。
【請求項3】
前記芯材は、この芯材の前記突起部と隣接する芯材の前記突起部とが重なるように配置されることを特徴とする請求項2に記載の地中壁構造物。
【請求項4】
前記地中壁構造物の上面から地盤内の帯水層まで前記芯材内を貫通するように孔を削孔して構築された井戸を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の地中壁構造物。
【請求項5】
地中壁構造物内に埋設される芯材であって、
両端が開口した筒状の鋼管と、前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設された突起部とを備えることを特徴とする芯材。
【請求項6】
地中壁構造物の補強方法において、
両端が開口した筒状の鋼管と前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設された突起部とを備える芯材を、前記地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように、かつ、前記突起部が前記地中壁構造物の面内方向に突出するように埋設することを特徴とする地中壁構造物の補強方法。
【請求項1】
芯材が埋設される地中壁構造物であって、
前記芯材は、前記地中壁構造物内に鉛直方向に延びるように配置された鋼管と、前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設され、前記地中壁構造物の面内方向に突出する突起部とを備えることを特徴とする地中壁構造物。
【請求項2】
複数の前記芯材が、前記地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように配置されることを特徴とする請求項1に記載の地中壁構造物。
【請求項3】
前記芯材は、この芯材の前記突起部と隣接する芯材の前記突起部とが重なるように配置されることを特徴とする請求項2に記載の地中壁構造物。
【請求項4】
前記地中壁構造物の上面から地盤内の帯水層まで前記芯材内を貫通するように孔を削孔して構築された井戸を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の地中壁構造物。
【請求項5】
地中壁構造物内に埋設される芯材であって、
両端が開口した筒状の鋼管と、前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設された突起部とを備えることを特徴とする芯材。
【請求項6】
地中壁構造物の補強方法において、
両端が開口した筒状の鋼管と前記鋼管の外周面に沿って前記鋼管の長手方向に延設された突起部とを備える芯材を、前記地中壁構造物の面内で横方向に並ぶように、かつ、前記突起部が前記地中壁構造物の面内方向に突出するように埋設することを特徴とする地中壁構造物の補強方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−223436(P2008−223436A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67556(P2007−67556)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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