説明

地中浄化構造物およびその工法

【課題】透過性浄化構造体(PRB)の建造工事または浄化材入れ替え工事を容易にし、工期を短縮する。
【解決手段】PRB1を建造する領域を囲うようにH形鋼22を地中に打設してその領域を掘削する。掘削により生じる掘削面の崩落を防止するため、H形鋼22の間に透過性の横矢板23を固定する。掘削終了後、浄化材21を掘削穴に充填して埋め戻しを行い、H形鋼22を浄化材22で構成した浄化部11の周囲に配置したままとする。H形鋼22間は横矢板23を配置する代わりに固定部材25で相互に連結してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原位置での地下水浄化に用いられる、地中に設置された壁状の浄化構造物およびその工法に関する。本発明は特に、地中に埋設され、有機塩素化合物や重金属で汚染された地下水を浄化する壁状の構造物、中でも構造物に含まれる浄化部が交換可能に構成されている構造物およびその工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有害物質で汚染された地下水を浄化する方法として、透水性の浄化壁を地中に造成する方法が知られている。例えば特許文献1には、鉄粉のような金属体で構成された浄化壁に汚染地下水を透過させて浄化する方法が開示されている。汚染地下水を透過させるこのような浄化構造物は、透過性浄化壁(PRB、Permeable Reactive Barrier)と呼ばれている。PRBには、透水性の中空壁体の内側に浄化作用を有する浄化部を設けたものもあり、この浄化部を交換可能に構成することも知られている(例えば特許文献2および特許文献3)。
【0003】
PRBを地中に造成する工法としては、以下が挙げられる。一つ目の工法は、鋼矢板を土留め壁として地中を掘削してPRBを造成する方法である。この工法では、複数の鋼矢板を側縁同士が接するように水平方向に連続的に並べて壁状にした矢板の列を、2列、互いの面同士が向かい合うように地中に打設する。そして、この向かい合う鋼矢板の列に挟まれた領域の地盤を掘削し、掘削により生じた空間に浄化材を充填して埋め戻し、PRBとする。鋼矢板はその後、引き抜くことで掘削穴に充填された浄化材の間を地下水が透過し、その過程で浄化が行われる。
【0004】
二つ目の工法としては、鋼矢板を打設する代わりにH形鋼を用いる。この工法では、一定間隔で並べた複数のH形鋼で浄化壁を造成する領域を囲い、H形鋼で囲まれた領域の地盤を掘削する。そして、ある程度の深さまで掘削を行った時点で、隣り合う一対のH形鋼の間に木板を渡して掘削壁を木製の矢板で覆って掘削壁が崩れないようにする。このようにして浄化材の下端位置まで掘削を行った後、掘削により生じた空間に浄化材を充填して埋め戻しを行うとともに木矢板を引き抜いていく。この工法ではH形鋼材は最後に引き抜かれる。
【0005】
この工法では、掘削に先立ち矢板を地中に打ち込むものではないため、土留め用の矢板として、鋼矢板より強度に劣るものの安価な木矢板を使用できる利点がある。また、H形鋼材の間に比較的小さな木矢板を固定して掘削し、浄化材の埋め戻しの際に順次、木矢板を引き抜くため、長大な鋼矢板を一度に引抜く場合より引抜が容易であるという利点も有する。
【0006】
三つ目の工法としては、中空のケーシングを地中に貫入させ、ケーシング内部を掘削した後、掘削孔を浄化材で埋め戻してケーシングを引き抜き、柱状の浄化部を形成する。次いで、浄化部と隣接するように新たにケーシングを貫入させ、上述した掘削、浄化材充填、およびケーシング引き抜きを繰り返し、隣接する柱状の浄化部を連続的に形成することで浄化壁を造成する(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特許第3079109号公報
【特許文献2】特公平6−104975号公報
【特許文献3】特開2006−272158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したPRB造成工法では、地盤を掘削する間、掘削壁の崩落を防止するために矢板で壁を覆う。地下に建造物を建造する工法では、掘削後に地下建造物を建造した部分への水の流入はむしろ好ましくないため、掘削壁の崩落防止に用いた矢板を引き抜くことなく埋め戻しが行われる。しかし、PRBを造成する場合は、地下水をPRBに流入させ、そこから流出させる必要があるため、水の流れを妨げる矢板は、浄化材の埋め戻し時または埋め戻し後に引き抜く必要がある。ケーシングを用いる方法でも、同様に浄化材の充填後にケーシングの引抜が必要である。このため、上記従来技術では引抜工程が必要な分だけ、工期が長期化する。
【0008】
一方で、PRBの浄化部(浄化材で構成された部分)を交換するためには、PRB造成時と同様に矢板等を地中に新たに設置する必要がある。このようにPRBの初期設置工事や交換工事には長期の工事を余議なくされていた。
【0009】
さらに、H形鋼の間に木矢板を渡す上記二つ目の工法には、上述した利点がある一方、矢板の引抜時に掘削壁が崩落して浄化材に崩落した土砂が混入する問題がある。つまり、この工法では掘削の際にH形鋼材の間に渡した矢板を1段分、引き抜いて、引き抜かれた矢板の上端位置まで浄化材を埋め戻すことを繰り返して浄化材を埋め戻す。矢板を引き抜くと、引き抜かれた矢板によって崩落が阻止されていた掘削孔の壁が崩落しやすくなる。特に、砂が多く崩れやすい地盤にPRBを造成する場合、本来、浄化材が充填される空間に崩落した土砂がなだれ込みやすい。この結果、PRBの厚さが局部的に薄い部分ができ、地下水のショートパスの原因となるため、浄化機能の低下を招く。
【0010】
また、上記従来のPRBは、地中に浄化材のみが存在する状態であるため、万一、地震があった場合、地震の規模等によっては水平方向のずれを生じる可能性がある。地盤が横ずれを起こすと浄化部が破損し、破損した部分から地下水がショートパスして浄化されなくなる恐れがある。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、短期間でPRBの造成や浄化材の交換ができ、長期にわたって安定的に浄化機能を奏するPRBの構造およびその工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、浄化材が充填されてなる領域(浄化部)を、一定の間隔で離隔させて並べた複数の柱状または板状の強度部材で囲い、そのままの状態とする。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0013】
(1) 地中に設けられた透過性浄化構造物であって、地中に浄化材を埋設して構成された浄化部と、前記浄化部の周囲を囲み、互いに間隔を開けて配置された複数の柱状または板状の強度部材と、を有する透過性浄化構造物。
(2) 前記複数の強度部材のうち、互いに隣り合う一対の強度部材の間に透過性の横矢板が配置された(1)に記載の透過性浄化構造物。
(3) 前記複数の強度部材のそれぞれは、固定部材により他の強度部材と固定されている(1)または(2)に記載の透過性浄化構造物。
(4) 複数の柱状または板状の強度部材を互いに間隔を開けて、平面視で全体が略枠状をかたどるように地中に打設し、前記複数の強度部材で囲まれた領域を掘削し、掘削により生じた空間に浄化材を充填して埋め戻して浄化部とし、前記複数の強度部材を地中から取り除かずに前記浄化部が前記複数の浄化部材で囲まれた透過性浄化構造物とする透過性浄化構造物工法。
(5)前記複数の強度部材のうち互いに隣り合う一対の強度部材の間に透過性の横矢板を配置し、前記横矢板を地中に残したままで前記浄化材を充填し、前記浄化部の周囲が前記横矢板で囲われた状態とする(4)に記載の透過性浄化構造物工法。
(6)前記複数の強度部材を、固定部材により固定する(4)または(5)に記載の透過性浄化構造物工法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、浄化部の周囲にH形鋼のような柱状または板状の強度部材を打設し、地中を掘削してPRBを建造した後、強度部材をそのままにしておく。このため、浄化材の交換の際の工期を短縮できる。また、強度部材の間に透過性矢板を配置するか強度部材同士を固定部材で連結することにより、水平方向の歪みに対するPRBの強度を高くでき、地盤に衝撃が加わった場合のPRBの破損を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。以下、同一部材には同一符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る透過性浄化構造物(以下、「PRB」)1が地中に埋設された状態を示す平面図であり、図2は斜視図である。PRB1はほぼ壁状であり、向かい合う一対の側壁に接するように一対の斜水壁5が配置されている。図において、矢印は地下水の流れを示す。図1に示すように斜水壁5はPRB1を挟んで扇状に広がり、汚染領域を通過した汚染地下水は斜水壁5に沿って流れてPRB1が配置された領域に集められ、PRB1を透過して処理水として排出される。以下、PRB1の構成について、ほぼ壁状とされた浄化部11と、この浄化部11の周囲を取り囲む周辺部12とに分けて説明する。浄化部11は、透水層に埋設された浄化材21で構成され、浄化材21は、砂や礫と浄化作用を有する種々の浄化用物質とが混合されてなる。砂や礫は、寄せ集めた集合体全体として透水性を有するため、透水性粒状物と呼ばれる。透水性粒状物は、粒径が0.01〜10mm程度、特に0.3〜5mmで、粒径が1/16mm以上2mm未満の砂、粒径が2mm以上の礫(または「砂利」)、粒径が10mmを超える豆砂利等が用いられる。
【0017】
浄化用物質としては、触媒作用や吸着作用を有する粉粒物、例えば鉄粉などの金属還元体や活性炭、イオン交換樹脂、および微生物坦持担体等が挙げられる。鉄粉を使用する場合、粒子径としては、表面積と水透過性のバランスを考慮し、0.1〜2mm程度であることが好ましい。浄化用物質および透水性粒状物の種類、並びに両者の混合割合は、浄化対象に応じて適宜、選択される。鉄粉と砂を混合する場合、鉄粉:砂の比率が重量比で10:90〜80:20の範囲であることが、浄化効果および水透過性の確保、コスト削減の点で好ましい。
【0018】
第1実施形態に係るPRB1では、浄化部11を囲うように強度部材としての複数本のH形鋼22が水平面に対して垂直に打設されている。PRB1の造成時、または浄化材21の交換時には、隣り合う2本のH形鋼22の間に横矢板23が1枚、はめ込まれる。このPRB1では、横矢板23は、目開きが砂止めできる程度の大きさの網体で構成され、浄化材21の充填後も引き抜かれることなく地中に配置される。このような横矢板23は、エキスパンドメタル、(合成)樹脂網、ジオテキスタイル等の網体、または形鋼や棒鋼を網状または柵状にしたもので構成される。
【0019】
なお、浄化部11を囲む柱状または板状の強度部材としては、打設に耐える強度を有する素材で構成された部材であれば、素材や形状は限定されない。強度部材としてのH形鋼や横矢板は防錆加工されていてもよい。また、透過性横矢板の目開きは、掘削面から土砂が大量に掘削空間内に流入するのを一時的に止められる程度であればよく、特に限定されない。
【0020】
以下、図3を参照してこのPRB1を造成する工法を説明する。図3は、PRB1を造成する工法の流れを説明する模式図である。まず、汚染された地下水が流れる土地において、浄化部11を建造する領域を決定し、この領域を取り囲むように複数本のH形鋼22を地中に打設する。H形鋼22は、隣り合う他のH形鋼22との間に一定の間隔を有するように打設する。H形鋼22同士の間隔は、1000〜2000mmが好ましい。H形鋼22同士の間隔が1000〜2000mm程度であれば、これらの間に汎用サイズの横矢板23を挟持するのに適し、また後述する第2実施形態のようにH形鋼同士を固定部材で固定するのに都合がよい。
【0021】
このようにしてH形鋼22で囲まれた領域をある深さまで掘削する。所定の深さ(ここでは横矢板23の長さ)に達した時点で、隣り合う2本のH形鋼22の間に横矢板23を1枚ずつ嵌め込んでH形鋼22に固定する(図3(a)参照)。このようにして、掘削により生じた空間の壁を複数(H形鋼の数から1を引いた数)の横矢板23で覆い、掘削壁から土砂が崩れて掘削した空間が埋まることを防止する。
【0022】
掘削により生じた空間の周囲の壁を横矢板23で覆った後、掘削を再開して所定の深さ(横矢板23の長さ分)まで掘削し、掘削した壁を横矢板で覆う上述の操作を繰り返す(図3(b)参照)。これにより、図3(c)に示すように目的の深さ(例えば帯水層6と不透水層7との境界付近)までの掘削を行って掘削を終了する。
【0023】
本実施形態では、横矢板23として水を通す透過性の板を用いているため、横矢板23をH形鋼22に固定したまま、掘削した空間に浄化材21を投入する。浄化材21を所定の深さ(例えば帯水層の上端位置)まで充填した後、必要に応じて埋め戻し用の土壌などを用いて埋め戻しを完了する。
【0024】
この実施形態のPRB1においては、浄化材21で構成された浄化部11の周囲に配置した複数本のH形鋼22および横矢板23は引き抜かない。よって、掘削壁の崩落を防止するために遮水壁(鋼矢板やケーシング等)を使用する場合に必要な引抜が不要である分、PRB1の建造工期を短くできる。また、浄化部11を構成する浄化材21を交換する場合には掘削壁の崩落防止のために矢板を改めて配置する必要がないため浄化材21の交換工期も短縮できる。
【0025】
上記実施形態は、汚染のある土地の地質が砂質で掘削部分が崩れやすい場合に好適に採用できる。すなわち、上述した従来技術ではH形鋼の間に嵌め込んだ木矢板を外した後に浄化材を充填するため、木矢板を外した部分の掘削壁が崩落して浄化材充填空間に崩落土砂が混入する恐れがあった。これに対して本実施形態では崩落土砂の混入による浄化材含有割合の低下を低減できる。
【0026】
また、上記実施形態に係る工法ではH形鋼を最初に打設してその間に横矢板を固定するため、矢板自身を地中に打設する場合とは異なり、矢板自身に打設に耐えうる強度は必要ない。このため、透過性のある網体のような部材を矢板として使用でき、矢板を地中に埋設したままでも浄化部11に対する汚染地下水の流出入は妨げられない。
【0027】
さらに、浄化部11がH形鋼22と横矢板23とで囲われているため、地震等により地盤にずれが生じる場合でも、周辺部12が浄化部11の形状を保持するように作用し、浄化部11の破損を防止ないし低減できる。また、浄化部11を覆う周辺部12は個々に取り外し可能な複数の部材(複数のH形鋼22および横矢板23)で構成されるため、周辺部12の補修も容易である。
【0028】
次に、図4を参照して本発明の第2実施形態に係るPRB2について説明する。第2実施形態のPRB2は、周辺部12BがH形鋼22と、隣り合うH形鋼22同士を連結して固定する固定部材25で構成されている点で第1実施形態のPRB1と異なる。
【0029】
固定部材25としてはここでは鉄筋を用い、鉄筋とH形鋼とを溶接している。H形鋼同士を固定する鉄筋のような棒鋼を用いる上記手段に限定されず、固定部材を介して複数のH形鋼22同士を溶接し、あるいはボルトとナット等で連結できるように構成されるものであればよい。H形鋼22同士の固定は、掘削時、または掘削終了後、浄化材21の埋め戻し前に行えばよい。第2実施形態のPRB2は、掘削時に壁が崩落しにくい、やや粘土質な土壌に好適に採用できる。
【0030】
なお、本発明はH形鋼の引抜を不要とし、また、浄化部交換の際のH形鋼の打設を不要として工期を短縮することを目的の一つとし、この目的を達成する上ではH形鋼22同士は必ずしも互いに連結固定しておく必要はない。すなわち、柱状または板状の部材を残しても浄化部に対する水の移動が妨げられないようにするためには、PRB造成時にH形鋼のような部材を浄化部の周囲に一定間隔で打設しておけばよく、このようにすれば部材を引き抜く必要をなくすことができる。
【0031】
ただし、強度部材同士を連結固定しておけば、連結固定された強度部材が浄化部を囲みこの形を保持するように作用する枠として作用するため、地震発生時等のPRB破損防止効果を高くできる。また、複数の強度部材のいずれかが動いたり曲がったりして補修が必要な場合も容易に補修できる。
【0032】
強度部材同士を固定する方法は上記態様に限られず、例えば第1実施形態の横矢板23を固定部材としてもよい。すなわち、第1実施形態では横矢板23を挟んで固定するレールとしてH形鋼22を機能させているが、横矢板23をH形鋼材22と接続し、H形鋼22同士を連結固定する固定部材として横矢板23を使用してもよい。
【実施例】
【0033】
[実施例1]
日本工業規格JIS A1219に規定される標準貫入試験によるN値が50を超える硬質地盤にPRBを造成し、H形鋼を引き抜くことなく一定期間、汚染地下水の浄化を行った。PRBは、H形鋼同士を固定部材で固定しなかった点を除いては図4に示すPRB2と同様の構成であり、水平方向の幅Wが2m、長さLが200m、下端が地下8mに位置する。浄化部11は、水平方向の幅Wと長さLはPRB2と同じで、地面に対する垂直方向高さHが3mで、下端が地下5mにあり、上端が地下2mに位置するように造成されている。この浄化部11を取り囲むように合計40本のH形鋼22が地下8mの深さで打設されている。H形鋼22は、幅350mm、長さ8mで、隣接するH形鋼22同士の間隔は1.5m間隔とした。
【0034】
実施例1では、このPRB2の浄化部11を交換した。具体的には、PRB2を設置した領域を地下5mまで掘削し、浄化部11を構成する浄化材21を全て掘り出して、再度、新たな浄化材21を掘削穴に充填して埋め戻すことで浄化材21を交換することとした。浄化材21は、透水性材料としての砂(平均粒径1mm)と、浄化用物質としての鉄粉(平均粒径1mm)とを混合して構成した。
【0035】
浄化材21の交換に際しては、H形鋼22の打設と引き抜きが不要であった結果、PRB建造後にH形鋼を引き抜く従来工法のPRB浄化部交換工事に比べて、工期を30日間短縮でき、工事費を大幅に低減できた。
【0036】
[実験例1]
実験例1では、幅W15cm、長さL25cm、深さH20cmのアクリル容器に粒径0.4mmのガラスビーズを充填して人工地盤を作成し、模擬地表面下1cmまで清水を注水した。ガラスビーズを充填したアクリル容器には、浄化部を周辺部で囲んだ図2に示すPRB1と同様の構成のPRB1を埋め込んだ。PRB1は、幅W15cm、長さL5cm、深さH10cmの大きさとした。
【0037】
周辺部12は、H形鋼22として太さ3mmの棒鋼および横矢板23としての1mmメッシュの網で構成し、棒鋼をPRB1の大きさとなるように配置し、棒鋼の間に網を張り巡らせた。このようにして構成した周辺部12の中に浄化材21としての砂(平均粒径1mm)を充填した。
【0038】
ガラスビーズを充填したアクリル容器にこのPRB1を、両者の中心がほぼ重なるようにして埋め込んだ。PRB1の埋め込み深さは、その下端がアクリル容器内のガラスビーズ表面から10cmの深さに位置するようにした。
【0039】
PRB1を埋め込んだアクリル容器に、水平振幅1cm、水平振動数4Hzの模擬地震を与えた。模擬地震の継続時間は20秒とした。模擬地震を与えた後のPRB1は2mm沈下したものの概ね元の形状を維持し、破壊されなかった。
【0040】
[実験例2]
実験例2では、PRBの周囲に強度部材(棒鋼)を具備したいことを除いて実験例1と同じ条件の試験を行って模擬地震を与えた。模擬地震を与えた後のPRBは液状化によりガラスビーズと砂が不均一に混ざり合ったものとなり、PRBに部分的に薄い部分が生じた。
【0041】
以上の実験より、本発明によれば水平方向へのずれを生じさせるような力がかかった場合でもPRBの破損を防止できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、汚染地下水の原位置浄化用等の構造体の建造工事に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態に係る透過性浄化構造物が地中に埋設された状態を示す平面図。
【図2】前記実施形態に係る透過性浄化構造物の斜視図。
【図3】前記透過性浄化構造物を建造する工程の一部を示す模式図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る透過性浄化構造物の斜視図。
【符号の説明】
【0044】
1、2 PRB(透過性浄化構造物)
11 浄化部
12 周辺部
21 浄化材
22 H形鋼
23 横矢板
25 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に設けられた透過性浄化構造物であって、
地中に浄化材を埋設して構成された浄化部と、
前記浄化部の周囲を囲み、互いに間隔を開けて配置された複数の柱状または板状の強度部材と、を有する透過性浄化構造物。
【請求項2】
前記複数の強度部材のうち、互いに隣り合う一対の強度部材の間に透過性の横矢板が配置された請求項1に記載の透過性浄化構造物。
【請求項3】
前記複数の強度部材のそれぞれは、固定部材により他の強度部材と固定されている請求項1または2に記載の透過性浄化構造物。
【請求項4】
複数の柱状または板状の強度部材を互いに間隔を開けて、平面視で全体が略枠状をかたどるように地中に打設し、
前記複数の強度部材で囲まれた領域を掘削し、
掘削により生じた空間に浄化材を充填して埋め戻して浄化部とし、前記複数の強度部材を地中から取り除かずに前記浄化部が前記複数の強度部材で囲まれた透過性浄化構造物とする透過性浄化構造物工法。
【請求項5】
前記複数の強度部材のうち互いに隣り合う一対の強度部材の間に透過性の横矢板を配置し、
前記横矢板を地中に残したままで前記浄化材を充填し、前記浄化部の周囲が前記横矢板で囲われた状態とする請求項4に記載の透過性浄化構造物工法。
【請求項6】
前記複数の強度部材同士を、固定部材により固定する請求項4または5に記載の透過性浄化構造物工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−102819(P2009−102819A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273426(P2007−273426)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】