説明

地中空洞部の地盤強化改善方法

【課題】下水道管などの地中埋設管からの漏水や浸入水により軟弱化しあるいは空洞化した地中欠陥部を、的確にしかも後の地中埋設管の交換やメンテナンス作業に支障を来さないように強化、改善することができ、かつそれを低コストで行なえる地中空洞部の地盤強化改善方法を提供する。
【解決手段】下水道管の周囲などで代表される地中に生じている空洞部ないし軟弱化部を強化改善する方法であり、活性汚泥式廃水処理過程から排出される剰余汚泥脱水ケーキの破砕物を骨材とし、これに耐有機酸性のセメント系固化材を配合して硬化日数が28日経た時点での圧縮強度が3〜15kgf/cm2程度となるように構成した補修用材を用い、これを地中の空洞部ないし軟弱化部に圧入充填し、硬化させ、強度を発現させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は主として下水道管など地中に埋設された配管の周辺に形成された地中空洞部の地盤強化改善方法に関する。
【0002】
【従来の技術】地下には種々の導管(配管)が埋設されているが、このうち下水道管からの漏水や浸入水が社会問題となっている。すなわち、下水道管として使用されているヒューム管、陶管、塩化ビニール管等の接合部が、埋設時やその後の山留め材引抜きなどによりずれたり、あるいは埋設後の地盤の沈下などにより管体付近にクラックが発生し、そうした破損、欠損部分から汚水が配管の周囲に漏れ出していることが多い。
【0003】その結果、漏水個所や浸入水の地盤は軟弱化が進行し、さらに空洞が発生し、そして、空洞に溜った汚水は転圧が不十分な軟弱な地盤に沿って流れを形成し、そのまま放置すると地下水脈へと成長する。この汚水により形成された地下水脈は、地盤沈下により陥没といった問題や、貴重な地下水の汚染を誘発するのである。しかし、従来ではその補修方法について経済性を満たす実用的な方法がないため放置されていることが多く、下水道管からの漏水や浸入水による生活破壊環境問題は深刻化の一途をたどっていた。
【0004】
【発明が解決しようする課題】本発明は前記のような問題点を解決するためになされたのもので、その目的とするところは、下水道管などの地中埋設管からの漏水や浸入水により軟弱化しあるいは空洞化した地中欠陥部を、的確にしかも後の地中埋設管の交換やメンテナンス作業に支障を来さないように強化、改善することができ、かつそれを低コストで行なえる地中空洞部の地盤強化改善方法を提供することにある。
【0005】また、本発明の他の目的は、前記目的に加えて、地盤強化改善用材料が地中埋設管内に固着するのを防止して実施できる地中空洞部の地盤強化改善方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記第1の目的を達成するため本発明は、地中に生じている空洞部ないし軟弱化部を補修して地盤を強化改善するにあたり、活性汚泥式廃水処理過程から排出される剰余汚泥脱水ケーキの破砕物を骨材とし、これに耐有機酸性のセメント系固化材を配合して硬化日数が28日経た時点での圧縮強度が3〜15kgf/cm2程度となるように構成した補修用材を、地中の空洞部ないし軟弱化部に圧入充填し、硬化させ、強度を発現させることを特徴としている。地中に生じている空洞部ないし軟弱化部は、代表的には、地中埋設管周辺の漏水や浸入水よる空洞部ないし軟弱化部である。
【0007】第2の目的を達成するため本発明は、漏水や浸入水による空洞部ないし軟弱化部に対応する部分の地中埋設管内に、補修用材の浸入防止手段を配して行なう。好適には、補修用材の浸入防止手段として、軸方向中心に管体を有しその外周に複数の可縮性膨張体を相互に間隔をおいて設け、前記可縮性膨張体間の管体壁部位に補修用材を注入するノズルが位置しているものを使用し、ノズルが漏水による空洞部ないし軟弱化部に対応する部位に位置するように補修用材の浸入防止手段を地中埋設管内に配して可縮性膨張体を膨張させ、ノズルから補修用材を地中埋設管の欠陥部分を通して外部に吐出させる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。まず、本発明の地中空洞部の地盤強化改善方法は、補修用材5として特殊な組成物を使用する。基本的には、図1のように、活性汚泥式廃水処理過程から排出される剰余汚泥脱水ケーキの破砕物1を骨材とし、これにセメント系固化材2と水3を配合し均一に混合したたとえば密度が1.0〜2.5g/cm2、pH13〜14のミルク状の組成物からなる。組成物には、さらに、混和剤4などが添加されていてもよい。
【0009】詳述すると、本発明による補修用材5の特徴は、骨材として、活性汚泥式廃水処理施設から排出される剰余汚泥脱水ケーキを使用することにある。こうした剰余汚泥脱水ケーキは、従来では大半が焼却処分されているが、含水率が高いために燃焼しにくく重油などの燃料を使用しなければならず、焼却に費やされる燃料とエネルギーロスは多大である。また、焼却に起因して発生する排煙、残灰の処理も難渋していた。本発明は、かかる産業廃棄物の剰余汚泥を、地中空洞部ないし空洞部形成の前段階の軟弱化した地盤状態の補修・強化改善用補修用材の原料として資源化し、同時に補修用材の低コスト化を図ったものである。
【0010】本発明において、剰余汚泥脱水ケーキ破砕物1は、脱水ケーキを撹拌粉砕したものを使用する。公共下水道の剰余汚泥の脱水ケーキは、有機物含有率(平均)が夏期において約64%、冬期において約70%であり、含水率は約70〜82%である。この状態の脱水ケーキをホッパーやタンクなどに装入し、ミキサーなどの撹拌手段によって機械的に分断、破砕する。剰余汚泥脱水ケーキ破砕物1は、表面乾燥状態で、最大粒径が約1.5mmφ以下の丸みを帯びた粒状物である。しかも、前記粒径は比較的そろっているため、補修用材を作ってこれを圧送し、対象個所に注入充填するときの流動性がよいものとなる。この理由から、本発明は剰余汚泥の破砕物1を骨材として使用するのである。
【0011】さらに、脱水ケーキおよびこれを処理した粒状物は、通常、炭素分45〜59%、水素分5〜8%、窒素分5〜10%、可燃性硫黄分0.5〜2.1%、酸素23〜37%であり、この組成中にセルロースなどの繊維分がかなり多く含まれている。この繊維分がつなぎ材として機能するため、水中不分離性を向上することができる。この理由からも本発明は剰余汚泥の破砕物1を骨材として使用するのである。
【0012】次に、セメント系固化材2としては、汎用のポルトランドセメントで代表される普通セメントでは不適当である。その理由は、下水道管を通る生活排水中には有機物が多く含まれており、これが腐敗すると有機酸となる。こうした生活排水が下水道管から漏水することにより空洞部や軟弱化部は有機酸環境にある。有機酸はセメントの水和反応を阻害し、固化作用を遅延させるので、普通セメントでは本発明で目的とする補修用材として機能しえないからである。
【0013】そのために、本発明は耐有機酸性を有するセメント系固化材2を使用する。かかるセメント系固化材2としては、セメントに耐有機酸性物質を添加した組成を有するものが好適な例としてあげられる。具体例としては、太平洋セメント株式会社の製造に係る商品名ゼオセットGS30があげられる。このセメント系固化材は粉末状で、性状として密度約2.99g/cm3、比表面積4850cm2/gであり、化学成分として、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二硫化硫黄などを含んでいる。
【0014】本発明は、剰余汚泥破砕物1とセメント系固化材2、さらに少なくとも水3を、28日の範囲の硬化日数が経た時点での圧縮強度(日本工業規格に準拠した水中養生での強度)が、3〜15kgf/cm2程度、さらに好適には4〜10kgf/cm2、最も好適には4〜7kgf/cm2となるように所定重量比で計量し、ミキサーなどにより均一に混合し、流動性の良好な補修用材5を得る。
【0015】強度範囲を限定したのは、空洞部、軟弱化部の地盤強化を図るのには圧縮強度が高い方がよいが、通常の地中埋設構造物と異なり、下水道管は経路変更などのために再掘削されて地中から取り出されたり、再修理されることがある。その際に、あまり圧縮強度が高いと、固化している補修用材を含む地盤をスコップや簡易な破壊機器による破壊が困難になり、その作業に多大な手間と時間がかかることになる。そのために、軟弱すぎず固すぎもしない適当な強度とする必要があるからである。28日の範囲の硬化日数が経た時点での圧縮強度が前記範囲であれば、実用上十分な強度であり、かつ前記作業を容易に行なうことが可能である。
【0016】さらに、硬化した補修用材を含む地盤の強度が高すぎると、硬化した補修用材を含む地盤が支点として機能してしまい、下水道管の割れやクラックの進行を助長するが、前記強度範囲であれば下水道管が不等沈下したときにもこれにうまく追従することができる。この点からも強度範囲を限定したものである。
【0017】さらに、前記範囲の強度と流動性を得るために、膨張剤、AE減水剤、流動化剤、水中不分離剤など所望の混和剤を1種以上添加することも好都合である。それらの添加量は適宜設定すればよく、たとえば、セメント系固化材2に対し、膨張剤は5〜8%程度、流動化剤は0.6〜1%程度、AE減水剤は2%程度、水中不分離剤は1.0%程度添加すればよい。
【0018】表1は補修用材5の配合比を決定するために、剰余汚泥脱水ケーキ破砕物1の量を一定にした実験の内容とその結果を示している。剰余汚泥脱水ケーキ破砕物1は最大粒径1.5mm以下(表面乾燥状態)のものを使用した。表中のセメント系固化材は、太平洋セメント株式会社の製造に係る商品名ゼオセットGS30を使用した。流動性はフロー試験によって評価したもので、直径約3.0cm、高さ約4.5cmの円筒容器に補修用材を充填し、円筒容器の底面を開口することにより床面に落下させた後、床面に広がったサンプルの直径を直交する値の平均値であり、8cm程度の流動性をもって良否を判定した。○は良好、◎は極めて良好を指しており、圧縮強度は、水中養生と酢酸浸漬条件の2種とした。後者は有機酸に接触する環境に対応するものである。
【0019】
【表1】


【0020】この表1によれば、サンプル3が水中およびと酢酸浸漬条件での強度が良好であり、サンプル2が水中および酢酸浸漬条件での強度と流動性の双方の特性のバランスがよい。なお、本発明はこの例に限定されるものではなく、前記圧縮強度を満たし、かつ、ポンプ圧送と材料分離回避の面から、フロー値が7.0〜9cm程度の範囲の配合が好ましい。いずれにしても実際の施工に際しては、テストサンプルによりフロー試験、及び圧縮強度試験を行い、必要な強度と流動性を有する配合を設定する。この配合に基づき必要量に応じた補修用材を製造する。
【0021】次に、本発明は、前記補強用材5を地中の空洞部ないし軟弱化部に圧入充填し、硬化させ強度を発現させる。図2はその施工法の第1実施例を示している。この第1実施例はマンホール付近の下水道管Aの漏水による欠陥地盤部10(空洞部ないし軟弱化部位)に対する施工を示しており、前記のように調製した補修用材5を撹拌機能付きの貯蔵タンク6たとえばアジテーター車に収容し、圧送ポンプ7により導管8中を圧送し、マンホール13の底付近から欠陥地盤部10に向けたノズル9から圧入充填する。 前記導管8には補修用材5の流動性および充填部位までの距離に応じた注入圧を得るための圧力制御弁11と欠陥地盤部10の大きさに則した充填量に制御するための流量制御弁12を設けている。さらに導管8には補修用材の圧入充填流量および注入圧が測定できるように流量圧力測定用計計器22を設けている。
【0022】漏水部位は下水道管Aの内外に通じているから、欠陥地盤部10への補修用材5の充填に伴って下水道管A内に補修用材5が浸入すると、それが下水道管内壁に固化して断面積を減少させ、以後の円滑な汚水の流れを阻害する可能性がある。また同時に、補修用材5が際限なく流出してしまう。そこで、補修用材5の注入に先立ち、下水道管A内に補修用材浸入防止手段14を配して行なう。この補修用材浸入防止手段14としては、ゴム袋などの可縮性膨張体が都合よく、収縮した状態で下水道管A内に搬入し、補修用材5の欠陥地盤部10への注入に先立って、可縮性膨張体内に流体供給源15から空気あるいは水を注入して膨張させ、欠陥地盤部10と通ずる漏水部の塞ぐように下水道管内壁に密着させる。この状態で補修用材5が硬化するまで保持させ、補修用材浸入防止手段14を収縮して取り出せばよい。5’は充填された補修用材である。
【0023】図3ないし図6は施工法の第2実施例を示している。この第2実施例も下水道管Aの漏水による欠陥地盤部10(空洞部ないし軟弱化部位)に対する施工を示しているが、第1実施例と異なり、下水道管Aの内部から欠陥地盤部10に補修用材5を注入する点で異なっている。
【0024】この第2実施例においては、補修用材注入機を兼ねた補修用材浸入防止手段14が用いられる。すなわち該手段は、軸方向中心に管体16を有し、その外周に複数(この例では2つ)の可縮性膨張体17,17を相互に間隔をおいて設けている。前記管体16は前後に下水道管Aの内壁に接してスムースな移動を行なうためのガイド手段20,20を有している。ガイド手段20,20は駆動機構を有した自走式でもよい。
【0025】前記管体16には左右の可縮性膨張体17,17間の管壁部位を貫いて補修用材5のノズル9が設けられており、ノズル9には導管8’が接続され、管体16の軸方向に伸びている。導管8’の端部には圧送ポンプ7からの導管8が着脱可能に接続されるようになっている。また、可縮性膨張体17,17の中央部に対応する管体16には膨張用流体の給排部18,18が設けられており、それら給排部18,18には管体16の軸方向に伸びる導管19が接続され、これに流体供給源15からの導管が着脱可能に接続されるようになっている。
【0026】この第2実施例においては、図4のように、可縮性膨張体17,17を収縮させた状態にして補修用材浸入防止手段14を下水道管A内へと移動させ、可縮性膨張体17,17の間のノズル9が欠陥地盤部10に略対峙する位置で停める。第1実施例、第2実施例のいずれも欠陥地盤部位10に補修用材5を圧入するに先立って、欠陥地盤部10の場所を任意の方法たとえばテレビカメラ、探傷器、圧気などによって検知し、あるいはさらに、欠陥地盤部位の規模や大きさを知るため、欠陥部位10に給水してその給水量を予め測っておく。第2実施例においては、管体16の先端にテレビカメラなどの検出手段を搭載しておくことができ、また、ノズル9から水を吐出させることにより欠陥地盤部位の規模や大きさを知ることができる。
【0027】ついで、図5のように導管19から給排部18,18に流体を注入して可縮性膨張体17,17を膨張させ、欠陥地盤部位10に近接する下水道管内壁に密着させる。これにより欠陥地盤部位10に通ずる漏水個所10’は可縮性膨張体17,17で囲繞された環状空間21に存することになる。そこで、補修用材5を圧送ポンプ7により導管8,8’に圧送し、ノズル9から吐出させる。これにより補修用材5は下水道管内の環状空間21から漏水個所10’を通して下水道管外の欠陥地盤部位10に圧入充填される。
【0028】このようにして欠陥地盤部位10が補修用材5で充填され、所要の時間が経過したならば、図6のように、可縮性膨張体17,17を収縮させ、導管8と導管8’との接続を外し、管体16を移動させる。漏水個所10’に対応する部分の下水道管内には補修用材5の一部が局部的に残存しているが、高圧水などを吹き付けることにより除去することができる。
【0029】この第2実施例の場合、補修用材浸入防止手段14が移動自在であり、かつノズル9により下水道管内から漏水個所10’を通して欠陥地盤部位10に補修用材5を注入、充填するので、マンホール13に近接した部位だけでなくかなり遠隔部位の施工にも適用できる利点がある。また、ノズル9から補修用材5を可縮性膨張体17,17で囲繞された環状空間21に吐出させるので、漏水個所10’が下水道管Aの下部だけでなく側部および上部に存する場合にも、これにうまく充填することができる利点がある。
【0030】以上の方法により、地中の空洞部や軟弱部の地盤を強化し、しかもその地盤強度を補修等のために都合のよい大きさにすることができる。なお、本発明において、骨材として活性汚泥式廃水処理過程から排出される剰余汚泥脱水ケーキの破砕物を使用することが必須であるが、必ずしも骨材使用量の全部でなくてもよく、強度や流動性を満足する限度で他の汎用の天然あるいは人工の骨材たとえば砂などを添加してもよい。また、本発明は下水道で代表される地中埋設管周辺の漏水部位さらには空洞部の補強施工に好適であるが、そのほか、経年ビルの基礎の埋め戻し部分や、光ファイバーケーブル敷設管付近の施工にも適用しうる。
【0031】次に本発明の具体例を示す。本発明による補修用材の強度と流動性を見るため、剰余汚泥脱水ケーキ破砕物の量を一定とし、固化材量および水量を種々にして補修用材を調製し、フロー試験と圧縮強度試験を行なった。これらは、水中養生、酢酸浸漬養生(酢酸濃度0.5%)で評価した。酢酸浸漬養生は有機酸に浸けられる環境における性能を知るためである。テストピースは前記表1と同じ条件とした。なお、比較のため、剰余汚泥量を同じとし、固化材として普通セメントを使用した実験(添加量240kg/m2)を行なったみたが、その結果は、7日強度で0.7kg/cm2であり、まったく強度不足であった。
【0032】
【表2】


【0033】
【表3】


【0034】これら表から、特に混和剤を添加していないにもかかわらず、サンプル■〜■は28日強度において3kg/cm2を越えている。しかし、酢酸に浸された場合、サンプル■は28日強度において3kg/cm2を下回っている。一方、サンプル■は28日強度は高いものの、流動性が低くなっている。したがって、強度と流動性の両面から、サンプル■〜■が好ましい補修用材である。特に、下水道管の空洞部類が置かれる有機酸環境28日強度でも良好な強度が得られている。
【0035】次に、実際に地中の欠陥部位の地盤強化、改善効果を得られるかを試験した。この試験は、図7に示すように、透明樹脂パイプ25を下水道管のモデルとして使用し、これを解体可能な箱体26に設置し、透明樹脂パイプ25の周囲に土27を充填して圧密化した。一方、箱体26の一側端部に注入口28を設け、ここからノズル29を挿込み、本発明の補修用材(表2におけるサンプル■を使用)を圧入した。
【0036】なお、箱体26は幅400mm、深さ400mm、長さ1800mmとし、透明樹脂パイプ25は外径265mm、長さ2000mmとし、ノズル29は内径20mmのものを使用し、箱端から150mm突入させた。前記樹脂パイプ25の下部および側部に人工的に空洞部をつくり、その空洞部に、モルタルポンプを使用し、注入圧力を2.0kgf/cm2にして補修用材を注入充填し、硬化させた。
【0037】この実験の結果、ノズルの閉塞は生じず、補修用材は空洞部を含む地中に浸透し、図8(a)(b)のように透明樹脂パイプ25の底部から上側部にかけて強化地盤部5’が形成されたことが確認された。なお、図8(a)は透明樹脂パイプ25の前後を図7(a)に示すものと逆にして示している。
【0038】
【発明の効果】以上説明した本発明の請求項1,2によるときには、下水道管で代表される地中構造物付近の軟弱化しあるいは空洞化したしかも有機酸環境下の欠陥部を、的確にしかも後の地中構造物の交換やメンテナンス作業に支障を来さないように強化、改善することができ、同時に処理に膨大な費用と手間をかけていた廃棄物を資源として再利用するため補修用材が安価なものとなり、施工費用を低コストにすることができるというすぐれた効果が得られる。
【0039】請求項3によれば、地中埋設管の内部への補修用材の浸入を防止できるため、補修用材の無駄な浪費を避けることができるとともに、補修用材の地中埋設管内での固化による下水の流れの悪影響を回避できるというすぐれた効果が得られる。 請求項4によれば、地中埋設管内からこれの欠陥個所を通して外部の軟弱化しあるいは空洞化した領域に補修用材を注入、充填することができるので、補修可能部位の範囲を広げることができ、また、ノズルから補修用材を可縮性膨張体で囲繞された環状空間に吐出させるので、漏水個所などの欠陥部分が地中埋設管の下部だけでなく全周部分に存する場合にも、これにうまく充填することができるというすぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による地中空洞部の地盤強化改善法に使用する補修用材の配合を模式的に示す説明図である。
【図2】(a)は本発明による地中空洞部の地盤強化改善法の施工例を模式的に示す断面図、(b)は(a)のX−X線に沿う断面図である。
【図3】本発明による地中空洞部の地盤強化改善法の他の施工例を模式的に示す断面図である。
【図4】(a)は図3の施工例の第1段階を示す断面図、(b)は(a)のY−Y線に沿う断面図である。
【図5】(a)は図3の施工例の第2段階を示す断面図、(b)はその一部拡大図である。
【図6】図3の施工例の第3段階を示す断面図である。
【図7】(a)は本発明の実験装置の側面図、(b)はその断面図である。
【図8】(a)は実験後の状態を示す側面図、(b)はその断面図である。
【符号の説明】
1 骨材(余剰汚泥破砕物)
2 セメント系固化材
5 補修用材
10 欠陥地盤部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】地中に生じている空洞部ないし軟弱化部を強化改善するにあたり、活性汚泥式廃水処理過程から排出される剰余汚泥脱水ケーキの破砕物を骨材とし、これに耐有機酸性のセメント系固化材を配合して硬化日数が28日経た時点での圧縮強度が3〜15kgf/cm2程度となるように構成した補修用材を用い、これを地中の空洞部ないし軟弱化部に圧入充填し、硬化させ、強度を発現させることを特徴とする地中空洞部の地盤強化改善方法。
【請求項2】地中に生じている空洞部ないし軟弱化部が、地中埋設管周辺の空洞部ないし軟弱化部である請求項1に記載の地中空洞部の地盤強化改善方法。
【請求項3】地中埋設管内に、充填材の浸入防止手段を配して行なう請求項3に記載の地中空洞部の地盤強化改善方法。
【請求項4】補修用材の浸入防止手段として、軸方向中心に管体を有しその外周に複数の可縮性膨張体を相互に間隔をおいて設け、前記可縮性膨張体間の管体壁部位に補修用材を注入するノズルが位置しているものを使用し、ノズルが漏水による空洞部ないし軟弱化部に対応する部位に位置するように補修用材の浸入防止手段を地中埋設管内に配して可縮性膨張体を膨張させ、ノズルから補修用材を地中埋設管の欠陥部分を通して外部に吐出させる請求項3に記載の地中空洞部の地盤強化改善方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2003−64656(P2003−64656A)
【公開日】平成15年3月5日(2003.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−258566(P2001−258566)
【出願日】平成13年8月28日(2001.8.28)
【出願人】(501340384)秋葉建設工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】