説明

地中管路設置方法

【課題】地上から沖合に向かって掘削された掘削孔の壁面の崩落を防止し、健全なパイプラインを構築する技術を提供する。
【解決手段】一端が水中に開口する掘削孔11を陸上側から推進掘削し、掘削孔11中に引込むべき樹脂管31を掘削孔延長上の水中に沈降させておき、掘削推進管先端が水中に到達した後、速やかに掘削推進管先端に前記樹脂管31の一端を接続し、掘削推進管を後退させて前記樹脂管31を掘削孔11中に引き込んでライニングを形成し、掘削孔壁を保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中管路設置方法に関し、さらに詳しくは、一端が水中に開口する例えば120〜800mmφで長さ100m〜1000m超の地中掘削孔を、陸側から掘削し、掘削孔が水中に開口した後、樹脂管等により掘削孔壁のライニングを行う地中管路設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上に障害物がある場合に、これを避けて地中に管路等を設置する場合、従来、発進立坑と到達立坑とを設け、推進工法等によりこの2つの立坑間に管路を形成する技術がある。このような立坑を掘削することなく地中に管路を設置する技術として、逆アーチ状の地中孔を掘削し、この掘削孔に沿ってケーシング又は導管を敷設する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この技術は、ウオッシュオーバーパイプを用いて、順次大径の地中孔を掘削し、ケーシング又は導管路を施工する技術である。
【0004】
また、河川等の障害物の下を横切って起点から終点まで鋼管を敷設する技術も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
この技術は、ボーリングロッドによりパイロットビットを押し込みながら弧状のパイロット孔を掘削し、このボーリングロッドに拡孔ビットを取付け、拡孔ビットの後方にドリルパイプを取付け、ドリルパイプを回転させながら掘削孔を拡孔し、最終工程として起点側に拡孔リーマ又は浚渫リーマを取付け、リーマの後方に中管をリーマと共に回転するように取付け、敷設すべき鋼管を中管にかぶせ、リーマにスイベルジョイントを設けてそれを介して鋼管を後続させるようにし、中管を回転させながら、孔の中に押し込んで、円弧状の孔内に鋼管を敷設する技術である。
【0006】
また、地表から地中に進入する計画曲線に沿って掘削孔を掘削する場合に、掘削すべき土質又は岩質に応じて掘進ツールの編成を選定してドリルパイプの先端に装着し、ドリルパイプを回転、押込、牽引し、測定器によってモニターされた孔の方位、傾斜、位置に応じて孔の軌跡を調整しながら計画曲線通りに掘削孔を掘削する技術がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
このような計画曲線の用途としては、パイプライン、送電線路、光ファイバ経路、コージェネ、ライフライン、排水路、計測孔、注入孔などである。このような計画曲線として、海洋、湖沼等の岸の地表から地中を通って沖合に開口する管路があり、石油その他の陸揚げ、汀線アプローチ、各種パイプライン、送電線、光ファイバ等の経路として用いられる。
【0008】
このようなラインは、防波堤や港湾設備等に何らの影響を与えることなく、設置することができる。このような掘削孔が水中に開口する掘削孔では、掘削孔が水中に開口した後、可及的速やかに管壁面の崩落を防止する措置を講じなければならない。
【特許文献1】特公昭61−40840号公報
【特許文献2】特公昭62−13480号公報
【特許文献3】特開平10−317883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、地上から沖合に向かって掘削された掘削孔が水中に開口した後、速やかに掘削孔の壁面の崩落を防止し、健全な管路を構築する技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、一端が水中に開口する掘削孔を陸上側から推進掘削を行い、一方、掘削孔中に引込むべき樹脂管を水中に沈降させておき、掘削推進管先端が水中に到達した後、掘削推進管先端に前記樹脂管を接続し、掘削推進管を後退させて前記樹脂管を掘削孔中に引き込むことを特徴とする地中管路設置方法である。
【0011】
本発明方法において、樹脂管としては、例えばポリエチレン管、塩化ビニール管、炭素繊維やアラミド繊維等によって補強された強化樹脂管、その他の管を用いることができる。これらの管は、継目のない長尺の管を陸上から水中に繰り出すか、又は台船等から水中に繰り出して用いる。この場合に前記樹脂管に比重調節した液を封入して適切な速度で緩やかに水中に沈降させることが好適である。比重調節は水にとける物質又は水と混合する物質を用いた溶液又はスラリー等を用いるとよい。このような物質としてはアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩や、鉄、珪素、その他の酸化物等の微粉、天然砂土などを用いることができる。さらに前記比重調節した液として塩水(NaCl水)を用いると海洋又はこれに近い河川等では工事後水中に放出しても差支えないので好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、陸上から水中に向かって掘削された掘削孔に、掘削直後に合成樹脂管等を引き込んでライニングを行い、掘削孔の壁の崩落を防止し、各種の管路等として有効に利用することができるようになった。特に海中又はその近傍に開口する掘削孔については、合成樹脂管の比重調整を塩水によって行うことにより、海水中に浮揚する任意の比重の管を容易に準備することができ、施工後塩水を放出しても環境に何らの悪影響を及ぼさないので、極めて有用である。また、比重調整は管のバランスを良くし、水中の移動を円滑にするので引込抵抗が減り、長尺の管の引込みが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図3は地表から地中に進入する計画曲線に沿って掘削孔を掘削する削孔方法の一例を示す説明図である。掘削すべき地中20に地表21から計画曲線に沿う傾斜で、ドリルパイプ1を進入させる。ドリルパイプ1の先端には、例えば、掘削ビット2が装着され、マッドモータ3、ベントサブ4、測定器5、非磁性カラー6がこれに続いて装着されている。ドリルパイプ1から高圧水を送入し、掘削ビット2の先端から地中に噴射させる。掘削装置(推進装置)10は、ドリルパイプ1を回転させながら地中に押込み、測定器5により進行方向すなわち孔の方位、傾斜、位置を検知しつつ、計画曲線に沿って高圧水の噴射方向を調節しながら、又はベントサブにより孔の軌跡を調整しながら、掘削ビットを前進させる。マッドモータ3は高圧水によって回転駆動されビットを回転させる。
【0015】
図1〜図2は本発明方法の1実施例を示す説明図である。地表21から地中20を通って海洋等24の海底26に開口する掘削孔11を掘削装置10を用いて掘削する。この掘削孔11は、例えば防波堤25等の下方を通って沖合に開口する。この掘削孔11は、大型船からの原油の輸送路、送電線路、光ファイバー経路、その他に用いられる。
【0016】
掘削孔11が水中に開口する前に、掘削孔11中にライニングパイプとして引込むべき合成樹脂管31を水中に準備しておく。
【0017】
合成樹脂管31は、概ね掘削孔11の延長方向に配置し、長さは掘削孔11の長さより長いものとしておく。合成樹脂管31は、比重調整を行った後、陸上から水中に繰り出すか又は台船30上から順次海中に卸して行く。この作業は、風波の穏やかな時を選んで行うのがよい。合成樹脂管31は、必要に応じて浮き具や重錘等を取付け、海中に適切に繰り出すことができるようにする。また管31の先端には牽引具32等を取付ける。
【0018】
合成樹脂管31は、水中に静かに沈降するように比重調節した液を管31内に封入する。管31内に封入する比重調節材料は種々の物質を用いて行うことができるが、海であれば塩水を用いると最も適切である。塩は比重が2.164で常温での水100g中への溶解度が35.8g(20℃)であるから、溶液として比重1.35程度の塩水を容易に作ることができる。若し必要であれば、不溶分を含めて、さらに比重の大きい液を作ることができる。
【0019】
海水の比重1.024に対して、例えば高密度ポリエチレンの比重は0.94〜0.96程度であるが、管径に応じて調整した塩水を管中に封入することによって、管全体として比重1.1〜1.15程度に調整することは容易である。塩水を用いると、このような比重調整液は作業終了後海中に放出すればなんらの環境汚染等を生ずることはない。
【0020】
図1は本発明の実施例の地中管路設置方法を示す説明図である。
【0021】
弧状の掘削孔11が地表21から掘削装置10によって沖合に向って掘削され、掘削管の先端に樹脂管を接続する地上の掘削装置10は矢印35で示すようにドリルパイプを引き戻す。合成樹脂管31は容易に掘削孔11内に引込まれ、掘削孔の壁面を保護する。合成樹脂管内に封入された比重調整液は水中に放出される。
【0022】
図2は台船30から合成樹脂管を繰出す場合を示している。海洋等24に合成樹脂管31を積載した台船30を浮かべ、合成樹脂管31を徐々に水中に繰り出す。潜水作業員は合成樹脂管31の先端を掘削孔の先端に誘導し、ドリルパイプ1の先端に合成樹脂管31を結合する。その後は図1に示すのと同様に合成樹脂管31は掘削孔11内に引き込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例の説明図である。
【図2】実施例の説明図である。
【図3】掘削孔掘削の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ドリルパイプ
2 掘削ビット
3 マッドモータ
4 ベントサブ
5 測定器
6 非磁性カラー
10 掘削装置
11 掘削孔
20 地中
21 地表
24 海洋等
25 防波堤
26 海底
30 台船
31 合成樹脂管
32 牽引具
35 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が水中に開口する掘削孔を陸上側から推進掘削を行い、一方、掘削孔中に引込むべき樹脂管を水中に沈降させておき、掘削推進管先端が水中に到達した後、掘削推進管先端に前記樹脂管を接続し、掘削推進管を後退させて前記樹脂管を掘削孔中に引き込むことを特徴とする地中管路設置方法。
【請求項2】
前記樹脂管に比重調節した液を充填して水中に沈降させることを特徴とする地中管路設置方法。
【請求項3】
前記比重調節した液が塩水であることを特徴とする地中管路設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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