地図表示システム及び地図表示方法
【課題】表示領域外に存在するランドマークを示すマーカをユーザにとって分かりやすく表示すること。
【解決手段】地図表示システム1は、地図データを取得する地図取得部11と、その地図データに基づいて地図を表示領域に描画する地図描画部12と、表示領域内の基準点と表示領域外にあるランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する算出部13aと、描画しようとする複数のマーカが重なり合うか否かを判定する判定部13bと、複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、各マーカについて算出されたランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、マーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する補正部13cと、上記算出処理及び補正処理に基づいてマーカを表示領域に描画するマーカ描画部13dと、を備える。
【解決手段】地図表示システム1は、地図データを取得する地図取得部11と、その地図データに基づいて地図を表示領域に描画する地図描画部12と、表示領域内の基準点と表示領域外にあるランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する算出部13aと、描画しようとする複数のマーカが重なり合うか否かを判定する判定部13bと、複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、各マーカについて算出されたランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、マーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する補正部13cと、上記算出処理及び補正処理に基づいてマーカを表示領域に描画するマーカ描画部13dと、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示領域外に存在するランドマークの方向を示すマーカを地図に重畳して表示する地図表示システム及び地図表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地図の表示領域外に存在するランドマークの方向を示すマーカを表示させる手法が知られている。例えば下記特許文献1には、表示領域外にある市町村の方向に合わせてその市町村の名前を表示させる方面表示方法が記載されている。この方法では、町ごとに区切られた基準単位矩形領域を予め設定し、現在位置を含む基準単位矩形領域からみて所定方向に隣接する隣接単位矩形領域を読み出して方面表示を決定することで、表示部分から一定の距離内にある単位矩形領域の名称を表示する。この方法では、町名が表示された矩形のマーカを用いているが、文字を含まない矢印またはピン形状の図形をマーカとして表示する手法も知られている。また、市町村ではなく、景勝地や施設などを示すマーカを表示する手法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−140928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、表示領域外に存在するランドマークの個数が多かったり、複数のランドマークが近接している場合などには、マーカ(方向表示)が重なり合って表示されてしまうことがある。そうすると、ユーザが表示領域外のランドマークに関する情報を得ることができない場合が生じ得る。また、クリック操作等によりマーカを選択可能にしている場合には、マーカが重なって表示されてしまうと、ユーザがマーカを正しく指定することが困難になってしまう。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、表示領域外に存在するランドマークを示すマーカをユーザにとって分かりやすく表示することが可能な地図表示システム及び地図表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の地図表示システムは、地図データベースから地図データを取得する取得手段と、取得手段により取得された地図データに基づいて地図を表示領域に描画する地図描画手段と、表示領域内の所定の基準点と、該表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する算出手段と、算出手段による算出に基づいてマーカを描画すると複数のマーカが重なり合うか否かを判定する判定手段と、判定手段により複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、該複数のマーカのそれぞれについて算出された、表示領域から該マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、該複数のマーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する補正手段と、算出手段による算出結果と補正手段による補正結果とに基づいて、一又は複数のマーカを表示領域に描画するマーカ描画手段と、を備える。
【0007】
また、本発明の地図表示方法は、地図表示システムにより実行される地図表示方法であって、地図データベースから地図データを取得する取得ステップと、取得ステップにおいて取得された地図データに基づいて地図を表示領域に描画する地図描画ステップと、表示領域内の所定の基準点と、該表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する算出ステップと、算出ステップにおける算出に基づいてマーカを描画すると複数のマーカが重なり合うか否かを判定する判定ステップと、判定ステップにおいて複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、該複数のマーカのそれぞれについて算出された、表示領域から該マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、該複数のマーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する補正ステップと、算出ステップでの算出結果と補正ステップでの補正結果とに基づいて、一又は複数のマーカを表示領域に描画するマーカ描画ステップと、を含む。
【0008】
このような地図表示システム及び地図表示方法によれば、ランドマークの方向を示すマーカの描画位置が算出されると、その位置に基づいてマーカを描画した場合に複数のマーカが重なり合うか否かが判定される。そして、マーカの重なりが発生する場合には、ランドマークまでの距離の大小関係とマーカ同士の重畳の程度とに基づいて、一度決定されたマーカの描画位置が補正される。そして、補正された描画位置に基づいて、マーカが重ならないように描画される。これにより、マーカをユーザにとって分かりやすく表示することが可能になる。
【0009】
本発明の地図表示システムでは、補正手段が、表示領域からマーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係を示す値と、重なり合うマーカの重畳部分の長さとに基づいて、距離が短いマーカよりも距離が長いマーカの補正量を大きくすることで、各マーカの描画位置を補正することが好ましい。
【0010】
この場合、重なり合うマーカの位置を補正する際に、基準点に近いマーカよりも基準点から遠いマーカの方がより大きく移動する。これにより、表示領域に近いマーカの表示角度が大きく変わるのを防止して、ユーザにとってより分かりやすいマーカ表示を実現できる。
【0011】
本発明の地図表示システムでは、マーカ描画手段が、表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの並び順と、該一又は複数のランドマークに対応する一又は複数のマーカ順の並びとが一致しない場合に、該マーカの並び順を該ランドマークの並び順に一致させることが好ましい。
【0012】
この場合、ランドマークの並び順に併せてマーカが表示されるので、ユーザにとってより分かりやすいマーカ表示を実現できる。
【0013】
本発明の地図表示システムでは、算出手段が、表示領域に表示可能なマーカの個数と該表示領域外に位置するランドマークの個数とを比較し、該ランドマークの個数の方が大きい場合には、表示対象のランドマークの個数が表示可能なマーカの個数以下になるまで、基準点から最も遠いランドマークから順に描画対象から除外することが好ましい。
【0014】
この場合、ランドマークの個数が多い場合には基準点に近いものに絞ってマーカが表示されるので、比較的近くに位置するランドマークの情報をユーザに分かりやすく提示することができる。
【0015】
本発明の地図表示システムでは、補正手段が、補正を所定の回数繰り返しても複数のマーカが重なり合っている場合に、表示領域に近いランドマークに対応するマーカの縮小度合いよりも、該表示領域から遠いランドマークに対応するマーカの縮小度合いが大きくなるように、重なり合っている各マーカの大きさを小さくすることで、該複数のマーカの重なり合いを解消することが好ましい。
【0016】
この場合、描画位置の補正だけではマーカの重なり合いを解消できないと、重なり合っている各マーカを小さくする処理が実行されるので、マーカの重畳をより確実に解消することができる。また、ランドマークまでの距離に応じてマーカの縮小度合いを決めることで、ランドマークまでの距離感をユーザに視覚的に伝えることができる。
【0017】
本発明の地図表示システムでは、算出手段が、基準点から所定の距離以上離れているランドマークについては、所定の範囲内に存在するランドマークをグループ化し、そのグループを示すマーカの描画位置を算出することが好ましい。
【0018】
この場合、基準点から遠くにあるランドマークがグループ化され、一つのマーカで表現される。このように、複数のランドマークをまとめて一つのマーカで表示することにより、表示領域外に存在するランドマークをより多くユーザに示すことができる。
【0019】
本発明の地図表示システムでは、マーカ描画手段により描画されたマーカが選択された場合に、取得手段が、選択されたマーカで示されるランドマークを中心とする新たな地図データを取得し、地図描画手段、算出手段、判定手段、補正手段及びマーカ描画手段が、新たな地図データに対する処理を実行することが好ましい。
【0020】
この場合、マーカが選択されるとそのマーカで示されるランドマークを中心とする地図が描画されると共に、表示領域外のランドマークを示すマーカを描画するための一連の処理が実行される。これにより、ユーザはマーカを選択するだけで所望のランドマーク周辺の地図情報を入手できる。
【発明の効果】
【0021】
このような地図表示システム及び地図表示方法によれば、マーカの重畳部分の長さと複数のランドマークまでの距離の大小関係とに基づいてマーカの描画位置を補正することでマーカの重畳を解消するので、マーカをユーザにとって分かりやすく表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る地図表示システムの機能構成を示す図である。
【図2】図1に示す移動端末のハードウェア構成を示す図である。
【図3】図1に示す算出部の処理を模式的に示す図である。
【図4】算出されたマーカの位置関係の例を示す図であり、(a)はマーカの重なり合いがない場合、(b)はマーカが重なり合う場合である。
【図5】図1に示すマーカ描画部における交点の並べ替え処理を示す図であり、(a)は並べ替え前の状態、(b)は並べ替えた後の状態をそれぞれ示している。
【図6】マーカの例を示す図であり、(a)はランドマークのイメージを含むマーカ、(b)は更に距離情報を付加したマーカである。
【図7】図1に示す地図表示システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】図7に示すマーカ描画処理の詳細を示すフローチャートである。
【図9】変形例に係るマーカ縮小処理を示す図であり、(a)は縮小処理前の状態、(b)は縮小処理後の状態をそれぞれ示している。
【図10】変形例に係るランドマークのクラスタ化を説明する図である。
【図11】変形例に係るランドマークのクラスタ化を説明する図である。
【図12】グループ化されたランドマークを示すマーカの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
まず、図1〜6を用いて、実施形態に係る地図表示システム1の機能及び構成を説明する。図1は地図表示システム1の機能構成を示す図である。図2は移動端末10のハードウェア構成を示す図である。図3は算出部13aの処理を模式的に示す図である。図4は算出されたマーカの位置関係の例を示す図である。図5はマーカ描画部13dにおける交点の並べ替え処理を示す図である。図6はマーカの例を示す図である。
【0025】
地図表示システム1は、表示画面を備える移動端末10と、地図データを移動端末10に提供する地図サーバ20とを備えている。移動端末10と地図サーバ20とは、図示しないネットワークを介して互いに通信することが可能である。
【0026】
移動端末10は、ユーザによる検索条件の入力や、地図の表示部分の変更などを契機として地図サーバ20から地図データを取得し、そのデータを画面に表示する装置である。移動端末10としては、例えば携帯電話機やカーナビゲーションシステム、パーソナルコンピュータなどが挙げられるが、端末の種類は限定されない。また、地図表示機能を備える固定端末に本発明を適用してもよい。
【0027】
地図サーバ20は、移動端末10からの要求に応じて地図データを提供するコンピュータである。地図サーバ20は、地図データベース21及び検索部22を備えている。地図データベース21は、ランドマークの位置情報を含む地図データを記憶する部分である。検索部22は、移動端末10からの要求に基づいて地図データベース21から地図データと指定された検索条件を満たすランドマークの位置情報とを読み出して移動端末10に送信する部分である。ここで、ランドマークとは目標となり得る場所であり、例えば建築物や景勝地などが挙げられる。
【0028】
次に、移動端末10の機能構成を説明する。図1に示すように、移動端末10は機能的構成要素として地図取得部(取得手段)11、地図描画部(地図描画手段)12及びマーカ制御部13を備えている。
【0029】
図2に示すように、移動端末10は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどを実行するCPU101と、ROM及びRAMで構成される主記憶部102と、メモリなどで構成される補助記憶部103と、ネットワークを介してデータ通信を行う通信制御部104と、液晶モニタなどで構成される表示部105と、入力キーやタッチパネルなどで構成される操作部106とで構成される。図1に示す移動端末10の各機能は、CPU101及び主記憶部102の上に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU101の制御の下で通信制御部104を動作させたり、主記憶部102や補助記憶部103に対してデータを読み書きしたりすることで実現される。
【0030】
地図取得部11は、地図サーバ20から地図データとランドマークの位置情報とを取得する部分である。地図取得部11は、ユーザによる検索条件の入力や、地図の表示部分の変更などを契機として、ランドマークの検索条件と現在位置の情報とを地図サーバ20に送信する。その後、地図取得部11は、地図サーバ20から送られてきた地図データを受信して地図描画部12に出力する。このとき、地図取得部11は、表示する部分の地図データだけでなく、その周辺の地図データ(表示領域外の地図データ)も取得する。
【0031】
地図描画部12は、地図取得部11により取得された地図データに基づいて地図を表示領域(画面の全体又は一部)に描画する部分である。地図描画部12は入力された地図データの一部を描画するが、その際に、表示領域内に存在するランドマークの位置を示すピン形状の図形(以下では単に「ピン」という)を描画する。その後、地図描画部12は地図データと描画領域を示す情報とをマーカ制御部13に出力する。
【0032】
マーカ制御部13は、表示領域外に位置するランドマークの方向を示すマーカの描画処理を実行する部分である。マーカ制御部13は、算出部(算出手段)13a、判定部(判定手段)13b、補正部(補正手段)13c及びマーカ描画部(マーカ描画手段)13dを備えている。
【0033】
算出部13aは、表示領域内の所定の基準点と、表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する部分である。
【0034】
算出部13aの機能を図3を用いて説明する。図3では、入力された地図データの範囲をMで表し、表示領域をDで示している。図3では、説明を簡単にするために、地図データMの上方にあるランドマークP1〜P6のみを示しているが、当然ながらランドマークは地図データM及び表示領域Dの全域にわたって存在し得る。
【0035】
まず、算出部13aは、表示領域Dの縁部付近に設定したマーカ位置基準線L1〜L4と、表示領域内のランドマークを示すピンとが重なる場所(例えば、図3において基準線L1とピンNとが重なっている場所Q6)を算出する。そして、算出部13aはそのような場所の個数Xaをマーカ位置基準線L1〜L4毎に算出する。
【0036】
続いて、算出部13aは、表示領域Dの外にあるランドマークを基準点(表示領域Dの中心点)Aから近い順に並べ替える。図3の例では、算出部13aはP1,P2,P3,P4,P5の順に各ランドマークを順位付けする。また、算出部13aは、マーカ位置基準線L1〜L4毎に、表示領域D外のランドマークの個数Xbを算出する。ここで、マーカ位置基準線L1に対応するランドマークとは、ランドマークと基準点Aとを結ぶ線分が基準線L1と交わるものを言う。同様に、マーカ位置基準線L2に対応するランドマークとは、そのような線分が基準線L2と交わるものをいう。マーカ位置基準線L3,L4についても、対応するランドマークを同様に決定する。図3の例では、マーカ位置基準線L1に対する個数Xbは5である。
【0037】
続いて、算出部13aは、マーカ位置基準線L1〜L4のそれぞれについて、その基準線上に表示するマーカの個数を決定する。このために、算出部13aはマーカ位置基準線L1〜L4毎に予め定められた表示上限数K1〜K4を保持しており、各マーカ位置基準線について値(Xa+Xb)がその表示上限数以下か否かを判定する。このとき、Xa+Xb>Kn (n=1〜4)であれば、算出部13aは、そのマーカ位置基準線上に表示するマーカを減らすために、マーカ表示対象領域を基準点Aに向けて縮小する。図3の例では、算出部13aは、マーカ位置基準線L1に表示するマーカを減らすために、基準線L1に対するマーカ表示対象領域を破線H1,H2,H3で囲まれた扇形の領域に縮小し、基準点Aから最も遠いランドマークP5をマーカ表示対象から外している。
【0038】
算出部13aは、マーカ位置基準線L1について、表示するマーカの個数が表示上限数を満たした時の基準点Aから破線H3までの距離D1を記憶する。算出部13aは、マーカ位置基準線L2〜L3についても同様に距離D2〜D4を算出する。そして、算出部13aは距離D1〜D4の最小値をマーカ表示上限距離DLとして決定し、基準点Aを中心とし半径がDLである円形領域をマーカ表示対象領域として決定する。図3では、破線H3で示される半径D1の円形領域をマーカ表示対象領域DAとしているが、距離D1〜D4の大小関係によっては、マーカ表示対象領域はより小さくなり得る。
【0039】
すなわち、算出部13aは、表示領域に表示可能なマーカの個数と表示領域外に位置するランドマークの個数とを比較する。そして、ランドマークの個数の方が大きい場合には、算出部13aは、表示対象のランドマークの個数が表示可能なマーカの個数以下になるまで、基準点から最も遠いランドマークから順に描画対象から除外する。
【0040】
続いて、算出部13aは、マーカ表示対象領域DA内で且つ表示領域D外のランドマークのそれぞれについて、基準点A及びランドマークを結ぶ線分とマーカ位置基準線との交点を算出する。この交点が、仮決めされたマーカの描画位置となる。図3の例では、算出部13aはランドマークP1〜P4について交点Q1〜Q4を算出している。続いて、算出部13aは、マーカ位置基準線L1〜L4毎に、基準線上にある交点に対して、基準点Aからの距離が短い順に識別番号を割り振る。図3の例では、算出部13aは交点Q1〜Q4の識別番号をそれぞれ1、2、3、4と設定する。そして、算出部13aは、マーカの交点に関する情報(位置及び識別番号)と、そのマーカに対応するランドマークの位置情報とを判定部13bに出力する。
【0041】
判定部13bは、算出部13aによる算出に基づいてマーカを描画すると複数のマーカが重なり合うか否かを判定する部分である。判定部13bは、後述する補正部13cから入力された交点情報に基づいて同様の判定を実行することもある。判定部13bは、入力された交点の位置情報と、予め記憶しているマーカの図形情報とに基づいて、どのマーカが他のマーカと重なっているかを判定する。例えば、図4(a)の場合には、判定部13bは、マーカRa〜Rcは他のマーカと重なっていないと判定する。これに対して図4(b)の場合には、判定部13bは、マーカRa及びRbが重なり、マーカRb及びRcが重なると判定する。
【0042】
マーカの重なり合いが発生している場合には、判定部13bは、交点情報とマーカの重なり合いに関する情報とを判定結果として補正部13cに出力する。一方、重なり合いが発生していない場合には、判定部13bは交点情報及びランドマーク位置情報をマーカ描画部13dに出力する。
【0043】
補正部13cは、判定部13bにより複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、該複数のマーカのそれぞれについて算出された、表示領域から該マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、それら複数のマーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する部分である。
【0044】
交点Qiに対応するマーカRiと交点Qjに対応するマーカRjとが重なり合うと判定された場合には、補正部13cはまずそれら二つのマーカの重畳部分の長さを算出する。続いて、補正部13cは、下記式により交点Qi,Qj(マーカRi,Rj)それぞれの移動量(補正量)Vi,Vjを算出する。
Vi=(重畳部分の長さ)÷(交点Qiの識別番号+交点Qjの識別番号)
×(交点Qiの識別番号)
Vj=(重畳部分の長さ)÷(交点Qiの識別番号+交点Qjの識別番号)
×(交点Qjの識別番号)
【0045】
そして、補正部13cは、交点Qi,Qjが互いに離れるように、交点QiをViだけ移動させ交点QjをVjだけ移動させる。識別番号は基準点からランドマークまでの距離の大小関係を表しており、距離が長いほど大きな値が設定されるので、基準点から遠くにあるランドマークを示すマーカほどその移動量は大きくなる。図3において、交点Q1に対応するマーカR1と交点Q4に対応するマーカR4とが重なり合うと仮定した場合には、交点Q1,Q4の識別番号はそれぞれ1,4なので、結果的に交点Q4は交点Q1の4倍の量だけ左に移動することになる。
【0046】
補正部13cは、重畳しているマーカの分だけ上記補正処理を実行し、それが終わると補正後の交点情報を判定部13bに出力する。これは、補正により新たな重なり合いが発生している可能性があるからである。
【0047】
マーカ描画部13dは、算出部13aによる算出結果と補正部13cによる補正結果とに基づいて、一又は複数のマーカを表示領域に描画する部分である。マーカ描画部13dは、判定部13bから入力された交点情報及びランドマーク位置情報に基づいて、ランドマークの方向を示すようにマーカをマーカ位置基準線上に描画する。これにより、表示画面を見たユーザは、表示されている地図の外にあるランドマークの方向を知ることができる。
【0048】
マーカを描画する際に、マーカ描画部13dは表示領域外のランドマークの並び順と、そのランドマークに対応するマーカの並び順とが一致するか否かを判定し、一致しない場合には、マーカをランドマークの並び順に合わせて並べ替える。これは、上記補正部13cによる処理により交点同士の相対的な位置関係まで変わる場合があるからである。例えば図5(a)に示すように、上記補正処理により交点Q3と交点Q4とが左右で入れ替わった場合には、ランドマークの並びP2,P1,P4,P3と、交点の並びQ2,Q1,Q3,Q4とが一致しなくなる。この場合、マーカ描画部13dは図5(b)に示すように交点Q3とQ4とを入れ替える。
【0049】
なお、マーカの描画方法は限定されない。例えば、図6(a)に示すようにマーカ内部にランドマークのイメージを描いてもよいし、図6(b)に示すように更にランドマークまでの距離を付加してもよい。距離を表示させる場合には、算出部13aあるいはマーカ制御部13がランドマーク位置情報と地図取得部11が用いた現在位置の情報とに基づいてその距離を算出すればよい。図6ではマーカはピン形状の図形で示されるが、マーカの形状は任意に決めてよい。
【0050】
ユーザがマーカを選択した場合には、地図取得部11がそのマーカに対応するランドマークを中心とする所定範囲の地図データを取得し、その後、地図描画部12及びマーカ制御部13が新たな地図データに基づいて上記処理を実行する。これにより、選択されたランドマークを中心とする地図と、新たなピン及びマーカとが表示領域に描画される。なお、マーカの選択方法は任意に決定できる。例えば、タッチパネルを用いているならば、ユーザがパネル上のマーカに指を触れた際にそのマーカが選択されたと判定すればよい。また、タッチパネルでないならば、ユーザが十字キーやテンキーなどによりマーカを指定した際にそのマーカが選択されたと判定すればよい。
【0051】
次に、図7及び8を用いて、図1に示す地図表示システム1の動作を説明するとともに本実施形態に係る地図表示方法について説明する。図7は地図表示システム1の動作を示すフローチャートである。図8はマーカ描画処理の詳細を示すフローチャートである。
【0052】
地図の表示や表示範囲の変更などの指示が受け付けられると、地図取得部11がランドマークの検索条件と現在位置の情報とを地図サーバ20に送信することで地図データと指定された検索条件を満たすランドマークの位置情報とを取得する(ステップS1、取得ステップ)。続いて、地図描画部12が地図データとランドマークの位置情報とに基づいて表示領域に地図及びピンを描画する(ステップS2、地図描画ステップ)。続いて、マーカ制御部13が表示領域にマーカを描画する(ステップS3)。
【0053】
マーカ描画処理は以下のような手順で実行される。まず、算出部13aがマーカ位置基準線上に表示されるピンの場所を算出する(ステップS301)。続いて、算出部13aは表示領域外のランドマークを表示領域内の基準点(中心点)から近い順に並べ替える(ステップS302)。
【0054】
続いて、算出部13aはマーカ表示対象領域を決定する(ステップS303)。具体的には、算出部13aは、表示領域の各辺に設けられたマーカ位置基準線毎に、上記ステップS301で算出したピンの個数と基準線上に表示するマーカの個数との和が表示上限数以下になるようにマーカ表示対象領域を確定する。そして、確定した複数のマーカ表示対象領域のうち基準点から外縁部までの距離が最小の領域に合わせて、一つの円形のマーカ表示対象領域を決定する。
【0055】
続いて、算出部13aはマーカ表示対象領域内のランドマークのそれぞれについて、基準点及びランドマークを結ぶ線分とマーカ位置基準線との交点を算出し、各交点に対して、基準点からの距離が短い順に識別番号を昇順に付与する(ステップS304)。上記ステップS301〜S304は算出ステップに相当する。
【0056】
続いて、判定部13bがマーカ同士の重なり合いの有無を判定する(ステップS305、判定ステップ)。そして、重なり合うマーカが存在する場合には(ステップS305;YES)、補正部13cがマーカの重畳部分の長さと識別番号とに基づいてマーカの描画位置を補正する(ステップS306、補正ステップ)。その後、処理はステップS305に戻る。
【0057】
マーカ同士の重なり合いが存在しない、又は解消された場合には(ステップS305;NO)、マーカ描画部13dが表示領域にマーカを表示する(ステップS307、マーカ描画ステップ)。このとき、マーカ描画部13dは必要に応じて交点の並べ替えを実行する。これにより、表示領域に地図及びマーカが表示される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、マーカの描画位置が算出されると、その位置に基づいてマーカを描画した場合に複数のマーカが重なり合うか否かが判定される。そして、マーカの重なりが発生する場合には、識別番号(ランドマークまでの距離の大小関係)と重畳部分の長さ(マーカ同士の重畳の程度)とに基づいて、一度決定されたマーカの描画位置が補正される。そして、補正された描画位置に基づいて、マーカが重ならないように描画される。これにより、マーカをユーザにとって分かりやすく表示することが可能になる。マーカが重なることなく表示されることで、ユーザは画面外のランドマークの方向を明確に知り、マーカを容易に選択することができる。言い換えれば、ユーザは地図情報を効率的に検索したり取得したりできる。
【0059】
また、本実施形態によれば、重なり合うマーカの位置を補正する際に、基準点に近いマーカよりも基準点から遠いマーカの方がより大きく移動する。これにより、表示領域に近いマーカの表示角度が大きく変わるのを防止して、ユーザにとってより分かりやすいマーカ表示を実現できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、ランドマークの並び順に併せてマーカが表示されるので、ユーザにとってより分かりやすいマーカ表示を実現できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、ランドマークの個数が多い場合には基準点に近いものに絞ってマーカが表示されるので、比較的近くに位置するランドマークの情報をユーザに分かりやすく提示することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、マーカが選択されるとそのマーカで示されるランドマークを中心とする地図が描画されると共に、表示領域外のランドマークを示すマーカを描画するための一連の処理が実行される。これにより、ユーザはマーカを選択するだけで所望のランドマーク周辺の地図情報を入手できる。
【0063】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で以下のような様々な変形が可能である。
【0064】
マーカの描画位置を補正するだけではマーカの重なり合いを解消できない場合には、マーカの大きさを小さくするように地図表示システムを構成してもよい。例えば、補正手段による補正処理をn回繰り返してもマーカの重畳が発生している場合に、判定手段は、表示するマーカの大きさを小さくすることを決定する。そして、この決定に基づいて、補正手段が各マーカの大きさを変更する。
【0065】
具体的には、補正手段は、基準点に近いランドマークのマーカの縮小度合いよりも、基準点から遠いランドマークのマーカの縮小度合いが大きくなるようにマーカの大きさを小さくすることで、マーカの重なり合いを解消する。このとき、基準点に近いランドマークのマーカの大きさは変えなくてもよい。例えば、補正処理をn回繰り返したが図9(a)に示すようにマーカが重なり合っている場合には、図9(b)に示すように、補正手段はマーカReの大きさを維持しつつマーカRd,Rfを小さくする。
【0066】
このようにマーカの大きさを小さくすることにより、マーカの重畳をより確実に解消することができる。また、ランドマークまでの距離に応じてマーカの縮小度合いを決めることで、表示領域外のランドマークまでの距離感をユーザに視覚的に伝えることができる。
【0067】
上記実施形態では、ランドマーク毎にマーカを表示したが、複数のランドマークを一つのマーカで表示してもよい(ランドマークのクラスタ化)。
【0068】
例えば、図10に示すように、算出手段が上記マーカ表示対象領域DAに加えて、その外側にクラスタマーカ表示対象領域DBを設定する。そして、領域DBについては、算出手段は所定範囲(クラスタ範囲)内に存在する複数のランドマークをグループ化し、そのグループを示すマーカの描画位置を算出する。図10の例では、算出手段はランドマークのグループ(クラスタ)C1,C2,C3を設定し、これらのクラスタに対応する交点QC1,QC2,QC3を算出している。ここで、クラスタの交点は、基準点A及びクラスタの中心点を結ぶ線分とマーカ位置基準線とが交わる所である。なお、クラスタ範囲は、ランドマークの密集度合いに応じて動的に決めてもよいし、固定(例えば半径1kmの円に相当する範囲)でもよい。
【0069】
また、算出手段は、表示領域内の基準点に近いエリアについてはクラスタ半径を小さく設定し、基準点Aから遠ざかるにつれてクラスタ半径を大きく設定してもよい。例えば図11に示すように、算出手段は、基準点Aに近いランドマークに対してはそのランドマークのみを含むようなクラスタC11,C12を設定し、基準点Aから遠ざかるにつれてクラスタ化する範囲を大きくする(クラスタC13〜C17)。交点の算出方法は、図10における交点QC1〜QC3の求め方と同様である。
【0070】
なお、図10や図11のような手法で算出したクラスタに対しては、例えば図12に示すように、クラスタ内のランドマークの個数を表示したマーカを用いてもよい。この際には、図6(b)に示した例と同様に、クラスタ中心までの距離を付記してもよい。
【0071】
このように、複数のランドマークをまとめて一つのマーカで表示することにより、表示領域外に存在するランドマークをより多くユーザに示すことができる。また、表示領域内の基準点から離れるにつれてクラスタ半径を大きくすることで、ランドマークの位置に応じてその情報を段階的にユーザに提供することができる。すなわち、近くにあるランドマークについては詳細な情報を提供し、遠くにあるランドマークについては大まかな情報を提供することができる。
【0072】
上記実施形態ではマーカ描画部13dが必要に応じてマーカの並び順を変更したが、この処理を省略してもよい。また、上記実施形態では、算出部13aが表示するマーカの個数を抑えるためにマーカ表示対象領域を設定したが、この処理を省略し、取得した地図データ上のすべてのランドマークについてマーカを描画してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…地図表示システム、10…移動端末、11…地図取得部(取得手段)、12…地図描画部(地図描画手段)、13…マーカ制御部、13a…算出部(算出手段)、13b…判定部(判定手段)、13c…補正部(補正手段)、13d…マーカ描画部(マーカ描画手段)、20…地図サーバ、21…地図データベース、22…検索部、D…表示領域、A…基準点。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示領域外に存在するランドマークの方向を示すマーカを地図に重畳して表示する地図表示システム及び地図表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地図の表示領域外に存在するランドマークの方向を示すマーカを表示させる手法が知られている。例えば下記特許文献1には、表示領域外にある市町村の方向に合わせてその市町村の名前を表示させる方面表示方法が記載されている。この方法では、町ごとに区切られた基準単位矩形領域を予め設定し、現在位置を含む基準単位矩形領域からみて所定方向に隣接する隣接単位矩形領域を読み出して方面表示を決定することで、表示部分から一定の距離内にある単位矩形領域の名称を表示する。この方法では、町名が表示された矩形のマーカを用いているが、文字を含まない矢印またはピン形状の図形をマーカとして表示する手法も知られている。また、市町村ではなく、景勝地や施設などを示すマーカを表示する手法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−140928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、表示領域外に存在するランドマークの個数が多かったり、複数のランドマークが近接している場合などには、マーカ(方向表示)が重なり合って表示されてしまうことがある。そうすると、ユーザが表示領域外のランドマークに関する情報を得ることができない場合が生じ得る。また、クリック操作等によりマーカを選択可能にしている場合には、マーカが重なって表示されてしまうと、ユーザがマーカを正しく指定することが困難になってしまう。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、表示領域外に存在するランドマークを示すマーカをユーザにとって分かりやすく表示することが可能な地図表示システム及び地図表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の地図表示システムは、地図データベースから地図データを取得する取得手段と、取得手段により取得された地図データに基づいて地図を表示領域に描画する地図描画手段と、表示領域内の所定の基準点と、該表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する算出手段と、算出手段による算出に基づいてマーカを描画すると複数のマーカが重なり合うか否かを判定する判定手段と、判定手段により複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、該複数のマーカのそれぞれについて算出された、表示領域から該マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、該複数のマーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する補正手段と、算出手段による算出結果と補正手段による補正結果とに基づいて、一又は複数のマーカを表示領域に描画するマーカ描画手段と、を備える。
【0007】
また、本発明の地図表示方法は、地図表示システムにより実行される地図表示方法であって、地図データベースから地図データを取得する取得ステップと、取得ステップにおいて取得された地図データに基づいて地図を表示領域に描画する地図描画ステップと、表示領域内の所定の基準点と、該表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する算出ステップと、算出ステップにおける算出に基づいてマーカを描画すると複数のマーカが重なり合うか否かを判定する判定ステップと、判定ステップにおいて複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、該複数のマーカのそれぞれについて算出された、表示領域から該マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、該複数のマーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する補正ステップと、算出ステップでの算出結果と補正ステップでの補正結果とに基づいて、一又は複数のマーカを表示領域に描画するマーカ描画ステップと、を含む。
【0008】
このような地図表示システム及び地図表示方法によれば、ランドマークの方向を示すマーカの描画位置が算出されると、その位置に基づいてマーカを描画した場合に複数のマーカが重なり合うか否かが判定される。そして、マーカの重なりが発生する場合には、ランドマークまでの距離の大小関係とマーカ同士の重畳の程度とに基づいて、一度決定されたマーカの描画位置が補正される。そして、補正された描画位置に基づいて、マーカが重ならないように描画される。これにより、マーカをユーザにとって分かりやすく表示することが可能になる。
【0009】
本発明の地図表示システムでは、補正手段が、表示領域からマーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係を示す値と、重なり合うマーカの重畳部分の長さとに基づいて、距離が短いマーカよりも距離が長いマーカの補正量を大きくすることで、各マーカの描画位置を補正することが好ましい。
【0010】
この場合、重なり合うマーカの位置を補正する際に、基準点に近いマーカよりも基準点から遠いマーカの方がより大きく移動する。これにより、表示領域に近いマーカの表示角度が大きく変わるのを防止して、ユーザにとってより分かりやすいマーカ表示を実現できる。
【0011】
本発明の地図表示システムでは、マーカ描画手段が、表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの並び順と、該一又は複数のランドマークに対応する一又は複数のマーカ順の並びとが一致しない場合に、該マーカの並び順を該ランドマークの並び順に一致させることが好ましい。
【0012】
この場合、ランドマークの並び順に併せてマーカが表示されるので、ユーザにとってより分かりやすいマーカ表示を実現できる。
【0013】
本発明の地図表示システムでは、算出手段が、表示領域に表示可能なマーカの個数と該表示領域外に位置するランドマークの個数とを比較し、該ランドマークの個数の方が大きい場合には、表示対象のランドマークの個数が表示可能なマーカの個数以下になるまで、基準点から最も遠いランドマークから順に描画対象から除外することが好ましい。
【0014】
この場合、ランドマークの個数が多い場合には基準点に近いものに絞ってマーカが表示されるので、比較的近くに位置するランドマークの情報をユーザに分かりやすく提示することができる。
【0015】
本発明の地図表示システムでは、補正手段が、補正を所定の回数繰り返しても複数のマーカが重なり合っている場合に、表示領域に近いランドマークに対応するマーカの縮小度合いよりも、該表示領域から遠いランドマークに対応するマーカの縮小度合いが大きくなるように、重なり合っている各マーカの大きさを小さくすることで、該複数のマーカの重なり合いを解消することが好ましい。
【0016】
この場合、描画位置の補正だけではマーカの重なり合いを解消できないと、重なり合っている各マーカを小さくする処理が実行されるので、マーカの重畳をより確実に解消することができる。また、ランドマークまでの距離に応じてマーカの縮小度合いを決めることで、ランドマークまでの距離感をユーザに視覚的に伝えることができる。
【0017】
本発明の地図表示システムでは、算出手段が、基準点から所定の距離以上離れているランドマークについては、所定の範囲内に存在するランドマークをグループ化し、そのグループを示すマーカの描画位置を算出することが好ましい。
【0018】
この場合、基準点から遠くにあるランドマークがグループ化され、一つのマーカで表現される。このように、複数のランドマークをまとめて一つのマーカで表示することにより、表示領域外に存在するランドマークをより多くユーザに示すことができる。
【0019】
本発明の地図表示システムでは、マーカ描画手段により描画されたマーカが選択された場合に、取得手段が、選択されたマーカで示されるランドマークを中心とする新たな地図データを取得し、地図描画手段、算出手段、判定手段、補正手段及びマーカ描画手段が、新たな地図データに対する処理を実行することが好ましい。
【0020】
この場合、マーカが選択されるとそのマーカで示されるランドマークを中心とする地図が描画されると共に、表示領域外のランドマークを示すマーカを描画するための一連の処理が実行される。これにより、ユーザはマーカを選択するだけで所望のランドマーク周辺の地図情報を入手できる。
【発明の効果】
【0021】
このような地図表示システム及び地図表示方法によれば、マーカの重畳部分の長さと複数のランドマークまでの距離の大小関係とに基づいてマーカの描画位置を補正することでマーカの重畳を解消するので、マーカをユーザにとって分かりやすく表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る地図表示システムの機能構成を示す図である。
【図2】図1に示す移動端末のハードウェア構成を示す図である。
【図3】図1に示す算出部の処理を模式的に示す図である。
【図4】算出されたマーカの位置関係の例を示す図であり、(a)はマーカの重なり合いがない場合、(b)はマーカが重なり合う場合である。
【図5】図1に示すマーカ描画部における交点の並べ替え処理を示す図であり、(a)は並べ替え前の状態、(b)は並べ替えた後の状態をそれぞれ示している。
【図6】マーカの例を示す図であり、(a)はランドマークのイメージを含むマーカ、(b)は更に距離情報を付加したマーカである。
【図7】図1に示す地図表示システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】図7に示すマーカ描画処理の詳細を示すフローチャートである。
【図9】変形例に係るマーカ縮小処理を示す図であり、(a)は縮小処理前の状態、(b)は縮小処理後の状態をそれぞれ示している。
【図10】変形例に係るランドマークのクラスタ化を説明する図である。
【図11】変形例に係るランドマークのクラスタ化を説明する図である。
【図12】グループ化されたランドマークを示すマーカの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
まず、図1〜6を用いて、実施形態に係る地図表示システム1の機能及び構成を説明する。図1は地図表示システム1の機能構成を示す図である。図2は移動端末10のハードウェア構成を示す図である。図3は算出部13aの処理を模式的に示す図である。図4は算出されたマーカの位置関係の例を示す図である。図5はマーカ描画部13dにおける交点の並べ替え処理を示す図である。図6はマーカの例を示す図である。
【0025】
地図表示システム1は、表示画面を備える移動端末10と、地図データを移動端末10に提供する地図サーバ20とを備えている。移動端末10と地図サーバ20とは、図示しないネットワークを介して互いに通信することが可能である。
【0026】
移動端末10は、ユーザによる検索条件の入力や、地図の表示部分の変更などを契機として地図サーバ20から地図データを取得し、そのデータを画面に表示する装置である。移動端末10としては、例えば携帯電話機やカーナビゲーションシステム、パーソナルコンピュータなどが挙げられるが、端末の種類は限定されない。また、地図表示機能を備える固定端末に本発明を適用してもよい。
【0027】
地図サーバ20は、移動端末10からの要求に応じて地図データを提供するコンピュータである。地図サーバ20は、地図データベース21及び検索部22を備えている。地図データベース21は、ランドマークの位置情報を含む地図データを記憶する部分である。検索部22は、移動端末10からの要求に基づいて地図データベース21から地図データと指定された検索条件を満たすランドマークの位置情報とを読み出して移動端末10に送信する部分である。ここで、ランドマークとは目標となり得る場所であり、例えば建築物や景勝地などが挙げられる。
【0028】
次に、移動端末10の機能構成を説明する。図1に示すように、移動端末10は機能的構成要素として地図取得部(取得手段)11、地図描画部(地図描画手段)12及びマーカ制御部13を備えている。
【0029】
図2に示すように、移動端末10は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどを実行するCPU101と、ROM及びRAMで構成される主記憶部102と、メモリなどで構成される補助記憶部103と、ネットワークを介してデータ通信を行う通信制御部104と、液晶モニタなどで構成される表示部105と、入力キーやタッチパネルなどで構成される操作部106とで構成される。図1に示す移動端末10の各機能は、CPU101及び主記憶部102の上に所定のソフトウェアを読み込ませ、CPU101の制御の下で通信制御部104を動作させたり、主記憶部102や補助記憶部103に対してデータを読み書きしたりすることで実現される。
【0030】
地図取得部11は、地図サーバ20から地図データとランドマークの位置情報とを取得する部分である。地図取得部11は、ユーザによる検索条件の入力や、地図の表示部分の変更などを契機として、ランドマークの検索条件と現在位置の情報とを地図サーバ20に送信する。その後、地図取得部11は、地図サーバ20から送られてきた地図データを受信して地図描画部12に出力する。このとき、地図取得部11は、表示する部分の地図データだけでなく、その周辺の地図データ(表示領域外の地図データ)も取得する。
【0031】
地図描画部12は、地図取得部11により取得された地図データに基づいて地図を表示領域(画面の全体又は一部)に描画する部分である。地図描画部12は入力された地図データの一部を描画するが、その際に、表示領域内に存在するランドマークの位置を示すピン形状の図形(以下では単に「ピン」という)を描画する。その後、地図描画部12は地図データと描画領域を示す情報とをマーカ制御部13に出力する。
【0032】
マーカ制御部13は、表示領域外に位置するランドマークの方向を示すマーカの描画処理を実行する部分である。マーカ制御部13は、算出部(算出手段)13a、判定部(判定手段)13b、補正部(補正手段)13c及びマーカ描画部(マーカ描画手段)13dを備えている。
【0033】
算出部13aは、表示領域内の所定の基準点と、表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する部分である。
【0034】
算出部13aの機能を図3を用いて説明する。図3では、入力された地図データの範囲をMで表し、表示領域をDで示している。図3では、説明を簡単にするために、地図データMの上方にあるランドマークP1〜P6のみを示しているが、当然ながらランドマークは地図データM及び表示領域Dの全域にわたって存在し得る。
【0035】
まず、算出部13aは、表示領域Dの縁部付近に設定したマーカ位置基準線L1〜L4と、表示領域内のランドマークを示すピンとが重なる場所(例えば、図3において基準線L1とピンNとが重なっている場所Q6)を算出する。そして、算出部13aはそのような場所の個数Xaをマーカ位置基準線L1〜L4毎に算出する。
【0036】
続いて、算出部13aは、表示領域Dの外にあるランドマークを基準点(表示領域Dの中心点)Aから近い順に並べ替える。図3の例では、算出部13aはP1,P2,P3,P4,P5の順に各ランドマークを順位付けする。また、算出部13aは、マーカ位置基準線L1〜L4毎に、表示領域D外のランドマークの個数Xbを算出する。ここで、マーカ位置基準線L1に対応するランドマークとは、ランドマークと基準点Aとを結ぶ線分が基準線L1と交わるものを言う。同様に、マーカ位置基準線L2に対応するランドマークとは、そのような線分が基準線L2と交わるものをいう。マーカ位置基準線L3,L4についても、対応するランドマークを同様に決定する。図3の例では、マーカ位置基準線L1に対する個数Xbは5である。
【0037】
続いて、算出部13aは、マーカ位置基準線L1〜L4のそれぞれについて、その基準線上に表示するマーカの個数を決定する。このために、算出部13aはマーカ位置基準線L1〜L4毎に予め定められた表示上限数K1〜K4を保持しており、各マーカ位置基準線について値(Xa+Xb)がその表示上限数以下か否かを判定する。このとき、Xa+Xb>Kn (n=1〜4)であれば、算出部13aは、そのマーカ位置基準線上に表示するマーカを減らすために、マーカ表示対象領域を基準点Aに向けて縮小する。図3の例では、算出部13aは、マーカ位置基準線L1に表示するマーカを減らすために、基準線L1に対するマーカ表示対象領域を破線H1,H2,H3で囲まれた扇形の領域に縮小し、基準点Aから最も遠いランドマークP5をマーカ表示対象から外している。
【0038】
算出部13aは、マーカ位置基準線L1について、表示するマーカの個数が表示上限数を満たした時の基準点Aから破線H3までの距離D1を記憶する。算出部13aは、マーカ位置基準線L2〜L3についても同様に距離D2〜D4を算出する。そして、算出部13aは距離D1〜D4の最小値をマーカ表示上限距離DLとして決定し、基準点Aを中心とし半径がDLである円形領域をマーカ表示対象領域として決定する。図3では、破線H3で示される半径D1の円形領域をマーカ表示対象領域DAとしているが、距離D1〜D4の大小関係によっては、マーカ表示対象領域はより小さくなり得る。
【0039】
すなわち、算出部13aは、表示領域に表示可能なマーカの個数と表示領域外に位置するランドマークの個数とを比較する。そして、ランドマークの個数の方が大きい場合には、算出部13aは、表示対象のランドマークの個数が表示可能なマーカの個数以下になるまで、基準点から最も遠いランドマークから順に描画対象から除外する。
【0040】
続いて、算出部13aは、マーカ表示対象領域DA内で且つ表示領域D外のランドマークのそれぞれについて、基準点A及びランドマークを結ぶ線分とマーカ位置基準線との交点を算出する。この交点が、仮決めされたマーカの描画位置となる。図3の例では、算出部13aはランドマークP1〜P4について交点Q1〜Q4を算出している。続いて、算出部13aは、マーカ位置基準線L1〜L4毎に、基準線上にある交点に対して、基準点Aからの距離が短い順に識別番号を割り振る。図3の例では、算出部13aは交点Q1〜Q4の識別番号をそれぞれ1、2、3、4と設定する。そして、算出部13aは、マーカの交点に関する情報(位置及び識別番号)と、そのマーカに対応するランドマークの位置情報とを判定部13bに出力する。
【0041】
判定部13bは、算出部13aによる算出に基づいてマーカを描画すると複数のマーカが重なり合うか否かを判定する部分である。判定部13bは、後述する補正部13cから入力された交点情報に基づいて同様の判定を実行することもある。判定部13bは、入力された交点の位置情報と、予め記憶しているマーカの図形情報とに基づいて、どのマーカが他のマーカと重なっているかを判定する。例えば、図4(a)の場合には、判定部13bは、マーカRa〜Rcは他のマーカと重なっていないと判定する。これに対して図4(b)の場合には、判定部13bは、マーカRa及びRbが重なり、マーカRb及びRcが重なると判定する。
【0042】
マーカの重なり合いが発生している場合には、判定部13bは、交点情報とマーカの重なり合いに関する情報とを判定結果として補正部13cに出力する。一方、重なり合いが発生していない場合には、判定部13bは交点情報及びランドマーク位置情報をマーカ描画部13dに出力する。
【0043】
補正部13cは、判定部13bにより複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、該複数のマーカのそれぞれについて算出された、表示領域から該マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、それら複数のマーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する部分である。
【0044】
交点Qiに対応するマーカRiと交点Qjに対応するマーカRjとが重なり合うと判定された場合には、補正部13cはまずそれら二つのマーカの重畳部分の長さを算出する。続いて、補正部13cは、下記式により交点Qi,Qj(マーカRi,Rj)それぞれの移動量(補正量)Vi,Vjを算出する。
Vi=(重畳部分の長さ)÷(交点Qiの識別番号+交点Qjの識別番号)
×(交点Qiの識別番号)
Vj=(重畳部分の長さ)÷(交点Qiの識別番号+交点Qjの識別番号)
×(交点Qjの識別番号)
【0045】
そして、補正部13cは、交点Qi,Qjが互いに離れるように、交点QiをViだけ移動させ交点QjをVjだけ移動させる。識別番号は基準点からランドマークまでの距離の大小関係を表しており、距離が長いほど大きな値が設定されるので、基準点から遠くにあるランドマークを示すマーカほどその移動量は大きくなる。図3において、交点Q1に対応するマーカR1と交点Q4に対応するマーカR4とが重なり合うと仮定した場合には、交点Q1,Q4の識別番号はそれぞれ1,4なので、結果的に交点Q4は交点Q1の4倍の量だけ左に移動することになる。
【0046】
補正部13cは、重畳しているマーカの分だけ上記補正処理を実行し、それが終わると補正後の交点情報を判定部13bに出力する。これは、補正により新たな重なり合いが発生している可能性があるからである。
【0047】
マーカ描画部13dは、算出部13aによる算出結果と補正部13cによる補正結果とに基づいて、一又は複数のマーカを表示領域に描画する部分である。マーカ描画部13dは、判定部13bから入力された交点情報及びランドマーク位置情報に基づいて、ランドマークの方向を示すようにマーカをマーカ位置基準線上に描画する。これにより、表示画面を見たユーザは、表示されている地図の外にあるランドマークの方向を知ることができる。
【0048】
マーカを描画する際に、マーカ描画部13dは表示領域外のランドマークの並び順と、そのランドマークに対応するマーカの並び順とが一致するか否かを判定し、一致しない場合には、マーカをランドマークの並び順に合わせて並べ替える。これは、上記補正部13cによる処理により交点同士の相対的な位置関係まで変わる場合があるからである。例えば図5(a)に示すように、上記補正処理により交点Q3と交点Q4とが左右で入れ替わった場合には、ランドマークの並びP2,P1,P4,P3と、交点の並びQ2,Q1,Q3,Q4とが一致しなくなる。この場合、マーカ描画部13dは図5(b)に示すように交点Q3とQ4とを入れ替える。
【0049】
なお、マーカの描画方法は限定されない。例えば、図6(a)に示すようにマーカ内部にランドマークのイメージを描いてもよいし、図6(b)に示すように更にランドマークまでの距離を付加してもよい。距離を表示させる場合には、算出部13aあるいはマーカ制御部13がランドマーク位置情報と地図取得部11が用いた現在位置の情報とに基づいてその距離を算出すればよい。図6ではマーカはピン形状の図形で示されるが、マーカの形状は任意に決めてよい。
【0050】
ユーザがマーカを選択した場合には、地図取得部11がそのマーカに対応するランドマークを中心とする所定範囲の地図データを取得し、その後、地図描画部12及びマーカ制御部13が新たな地図データに基づいて上記処理を実行する。これにより、選択されたランドマークを中心とする地図と、新たなピン及びマーカとが表示領域に描画される。なお、マーカの選択方法は任意に決定できる。例えば、タッチパネルを用いているならば、ユーザがパネル上のマーカに指を触れた際にそのマーカが選択されたと判定すればよい。また、タッチパネルでないならば、ユーザが十字キーやテンキーなどによりマーカを指定した際にそのマーカが選択されたと判定すればよい。
【0051】
次に、図7及び8を用いて、図1に示す地図表示システム1の動作を説明するとともに本実施形態に係る地図表示方法について説明する。図7は地図表示システム1の動作を示すフローチャートである。図8はマーカ描画処理の詳細を示すフローチャートである。
【0052】
地図の表示や表示範囲の変更などの指示が受け付けられると、地図取得部11がランドマークの検索条件と現在位置の情報とを地図サーバ20に送信することで地図データと指定された検索条件を満たすランドマークの位置情報とを取得する(ステップS1、取得ステップ)。続いて、地図描画部12が地図データとランドマークの位置情報とに基づいて表示領域に地図及びピンを描画する(ステップS2、地図描画ステップ)。続いて、マーカ制御部13が表示領域にマーカを描画する(ステップS3)。
【0053】
マーカ描画処理は以下のような手順で実行される。まず、算出部13aがマーカ位置基準線上に表示されるピンの場所を算出する(ステップS301)。続いて、算出部13aは表示領域外のランドマークを表示領域内の基準点(中心点)から近い順に並べ替える(ステップS302)。
【0054】
続いて、算出部13aはマーカ表示対象領域を決定する(ステップS303)。具体的には、算出部13aは、表示領域の各辺に設けられたマーカ位置基準線毎に、上記ステップS301で算出したピンの個数と基準線上に表示するマーカの個数との和が表示上限数以下になるようにマーカ表示対象領域を確定する。そして、確定した複数のマーカ表示対象領域のうち基準点から外縁部までの距離が最小の領域に合わせて、一つの円形のマーカ表示対象領域を決定する。
【0055】
続いて、算出部13aはマーカ表示対象領域内のランドマークのそれぞれについて、基準点及びランドマークを結ぶ線分とマーカ位置基準線との交点を算出し、各交点に対して、基準点からの距離が短い順に識別番号を昇順に付与する(ステップS304)。上記ステップS301〜S304は算出ステップに相当する。
【0056】
続いて、判定部13bがマーカ同士の重なり合いの有無を判定する(ステップS305、判定ステップ)。そして、重なり合うマーカが存在する場合には(ステップS305;YES)、補正部13cがマーカの重畳部分の長さと識別番号とに基づいてマーカの描画位置を補正する(ステップS306、補正ステップ)。その後、処理はステップS305に戻る。
【0057】
マーカ同士の重なり合いが存在しない、又は解消された場合には(ステップS305;NO)、マーカ描画部13dが表示領域にマーカを表示する(ステップS307、マーカ描画ステップ)。このとき、マーカ描画部13dは必要に応じて交点の並べ替えを実行する。これにより、表示領域に地図及びマーカが表示される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、マーカの描画位置が算出されると、その位置に基づいてマーカを描画した場合に複数のマーカが重なり合うか否かが判定される。そして、マーカの重なりが発生する場合には、識別番号(ランドマークまでの距離の大小関係)と重畳部分の長さ(マーカ同士の重畳の程度)とに基づいて、一度決定されたマーカの描画位置が補正される。そして、補正された描画位置に基づいて、マーカが重ならないように描画される。これにより、マーカをユーザにとって分かりやすく表示することが可能になる。マーカが重なることなく表示されることで、ユーザは画面外のランドマークの方向を明確に知り、マーカを容易に選択することができる。言い換えれば、ユーザは地図情報を効率的に検索したり取得したりできる。
【0059】
また、本実施形態によれば、重なり合うマーカの位置を補正する際に、基準点に近いマーカよりも基準点から遠いマーカの方がより大きく移動する。これにより、表示領域に近いマーカの表示角度が大きく変わるのを防止して、ユーザにとってより分かりやすいマーカ表示を実現できる。
【0060】
また、本実施形態によれば、ランドマークの並び順に併せてマーカが表示されるので、ユーザにとってより分かりやすいマーカ表示を実現できる。
【0061】
また、本実施形態によれば、ランドマークの個数が多い場合には基準点に近いものに絞ってマーカが表示されるので、比較的近くに位置するランドマークの情報をユーザに分かりやすく提示することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、マーカが選択されるとそのマーカで示されるランドマークを中心とする地図が描画されると共に、表示領域外のランドマークを示すマーカを描画するための一連の処理が実行される。これにより、ユーザはマーカを選択するだけで所望のランドマーク周辺の地図情報を入手できる。
【0063】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で以下のような様々な変形が可能である。
【0064】
マーカの描画位置を補正するだけではマーカの重なり合いを解消できない場合には、マーカの大きさを小さくするように地図表示システムを構成してもよい。例えば、補正手段による補正処理をn回繰り返してもマーカの重畳が発生している場合に、判定手段は、表示するマーカの大きさを小さくすることを決定する。そして、この決定に基づいて、補正手段が各マーカの大きさを変更する。
【0065】
具体的には、補正手段は、基準点に近いランドマークのマーカの縮小度合いよりも、基準点から遠いランドマークのマーカの縮小度合いが大きくなるようにマーカの大きさを小さくすることで、マーカの重なり合いを解消する。このとき、基準点に近いランドマークのマーカの大きさは変えなくてもよい。例えば、補正処理をn回繰り返したが図9(a)に示すようにマーカが重なり合っている場合には、図9(b)に示すように、補正手段はマーカReの大きさを維持しつつマーカRd,Rfを小さくする。
【0066】
このようにマーカの大きさを小さくすることにより、マーカの重畳をより確実に解消することができる。また、ランドマークまでの距離に応じてマーカの縮小度合いを決めることで、表示領域外のランドマークまでの距離感をユーザに視覚的に伝えることができる。
【0067】
上記実施形態では、ランドマーク毎にマーカを表示したが、複数のランドマークを一つのマーカで表示してもよい(ランドマークのクラスタ化)。
【0068】
例えば、図10に示すように、算出手段が上記マーカ表示対象領域DAに加えて、その外側にクラスタマーカ表示対象領域DBを設定する。そして、領域DBについては、算出手段は所定範囲(クラスタ範囲)内に存在する複数のランドマークをグループ化し、そのグループを示すマーカの描画位置を算出する。図10の例では、算出手段はランドマークのグループ(クラスタ)C1,C2,C3を設定し、これらのクラスタに対応する交点QC1,QC2,QC3を算出している。ここで、クラスタの交点は、基準点A及びクラスタの中心点を結ぶ線分とマーカ位置基準線とが交わる所である。なお、クラスタ範囲は、ランドマークの密集度合いに応じて動的に決めてもよいし、固定(例えば半径1kmの円に相当する範囲)でもよい。
【0069】
また、算出手段は、表示領域内の基準点に近いエリアについてはクラスタ半径を小さく設定し、基準点Aから遠ざかるにつれてクラスタ半径を大きく設定してもよい。例えば図11に示すように、算出手段は、基準点Aに近いランドマークに対してはそのランドマークのみを含むようなクラスタC11,C12を設定し、基準点Aから遠ざかるにつれてクラスタ化する範囲を大きくする(クラスタC13〜C17)。交点の算出方法は、図10における交点QC1〜QC3の求め方と同様である。
【0070】
なお、図10や図11のような手法で算出したクラスタに対しては、例えば図12に示すように、クラスタ内のランドマークの個数を表示したマーカを用いてもよい。この際には、図6(b)に示した例と同様に、クラスタ中心までの距離を付記してもよい。
【0071】
このように、複数のランドマークをまとめて一つのマーカで表示することにより、表示領域外に存在するランドマークをより多くユーザに示すことができる。また、表示領域内の基準点から離れるにつれてクラスタ半径を大きくすることで、ランドマークの位置に応じてその情報を段階的にユーザに提供することができる。すなわち、近くにあるランドマークについては詳細な情報を提供し、遠くにあるランドマークについては大まかな情報を提供することができる。
【0072】
上記実施形態ではマーカ描画部13dが必要に応じてマーカの並び順を変更したが、この処理を省略してもよい。また、上記実施形態では、算出部13aが表示するマーカの個数を抑えるためにマーカ表示対象領域を設定したが、この処理を省略し、取得した地図データ上のすべてのランドマークについてマーカを描画してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…地図表示システム、10…移動端末、11…地図取得部(取得手段)、12…地図描画部(地図描画手段)、13…マーカ制御部、13a…算出部(算出手段)、13b…判定部(判定手段)、13c…補正部(補正手段)、13d…マーカ描画部(マーカ描画手段)、20…地図サーバ、21…地図データベース、22…検索部、D…表示領域、A…基準点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データベースから地図データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された地図データに基づいて地図を表示領域に描画する地図描画手段と、
前記表示領域内の所定の基準点と、該表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する算出手段と、
前記算出手段による算出に基づいて前記マーカを描画すると複数のマーカが重なり合うか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、該複数のマーカのそれぞれについて算出された、前記表示領域から該マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、該複数のマーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する補正手段と、
前記算出手段による算出結果と前記補正手段による補正結果とに基づいて、前記一又は複数のマーカを前記表示領域に描画するマーカ描画手段と、
を備える地図表示システム。
【請求項2】
前記補正手段が、前記表示領域から前記マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係を示す値と、重なり合うマーカの重畳部分の長さとに基づいて、前記距離が短いマーカよりも前記距離が長いマーカの補正量を大きくすることで、各マーカの描画位置を補正する、
請求項1に記載の地図表示システム。
【請求項3】
前記マーカ描画手段が、前記表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの並び順と、該一又は複数のランドマークに対応する一又は複数のマーカ順の並びとが一致しない場合に、該マーカの並び順を該ランドマークの並び順に一致させる、
請求項1又は2に記載の地図表示システム。
【請求項4】
前記算出手段が、前記表示領域に表示可能なマーカの個数と該表示領域外に位置するランドマークの個数とを比較し、該ランドマークの個数の方が大きい場合には、表示対象のランドマークの個数が前記表示可能なマーカの個数以下になるまで、前記基準点から最も遠いランドマークから順に描画対象から除外する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項5】
前記補正手段が、前記補正を所定の回数繰り返しても複数のマーカが重なり合っている場合に、前記表示領域に近いランドマークに対応するマーカの縮小度合いよりも、該表示領域から遠いランドマークに対応するマーカの縮小度合いが大きくなるように、重なり合っている各マーカの大きさを小さくすることで、該複数のマーカの重なり合いを解消する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項6】
前記算出手段が、前記基準点から所定の距離以上離れているランドマークについては、所定の範囲内に存在するランドマークをグループ化し、そのグループを示すマーカの描画位置を算出する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項7】
前記マーカ描画手段により描画されたマーカが選択された場合に、前記取得手段が、選択されたマーカで示されるランドマークを中心とする新たな地図データを取得し、
前記地図描画手段、前記算出手段、前記判定手段、前記補正手段及び前記マーカ描画手段が、前記新たな地図データに対する処理を実行する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項8】
地図表示システムにより実行される地図表示方法であって、
地図データベースから地図データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された地図データに基づいて地図を表示領域に描画する地図描画ステップと、
前記表示領域内の所定の基準点と、該表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにおける算出に基づいて前記マーカを描画すると複数のマーカが重なり合うか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、該複数のマーカのそれぞれについて算出された、前記表示領域から該マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、該複数のマーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する補正ステップと、
前記算出ステップでの算出結果と前記補正ステップでの補正結果とに基づいて、前記一又は複数のマーカを前記表示領域に描画するマーカ描画ステップと、
を含む地図表示方法。
【請求項1】
地図データベースから地図データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された地図データに基づいて地図を表示領域に描画する地図描画手段と、
前記表示領域内の所定の基準点と、該表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する算出手段と、
前記算出手段による算出に基づいて前記マーカを描画すると複数のマーカが重なり合うか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、該複数のマーカのそれぞれについて算出された、前記表示領域から該マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、該複数のマーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する補正手段と、
前記算出手段による算出結果と前記補正手段による補正結果とに基づいて、前記一又は複数のマーカを前記表示領域に描画するマーカ描画手段と、
を備える地図表示システム。
【請求項2】
前記補正手段が、前記表示領域から前記マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係を示す値と、重なり合うマーカの重畳部分の長さとに基づいて、前記距離が短いマーカよりも前記距離が長いマーカの補正量を大きくすることで、各マーカの描画位置を補正する、
請求項1に記載の地図表示システム。
【請求項3】
前記マーカ描画手段が、前記表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの並び順と、該一又は複数のランドマークに対応する一又は複数のマーカ順の並びとが一致しない場合に、該マーカの並び順を該ランドマークの並び順に一致させる、
請求項1又は2に記載の地図表示システム。
【請求項4】
前記算出手段が、前記表示領域に表示可能なマーカの個数と該表示領域外に位置するランドマークの個数とを比較し、該ランドマークの個数の方が大きい場合には、表示対象のランドマークの個数が前記表示可能なマーカの個数以下になるまで、前記基準点から最も遠いランドマークから順に描画対象から除外する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項5】
前記補正手段が、前記補正を所定の回数繰り返しても複数のマーカが重なり合っている場合に、前記表示領域に近いランドマークに対応するマーカの縮小度合いよりも、該表示領域から遠いランドマークに対応するマーカの縮小度合いが大きくなるように、重なり合っている各マーカの大きさを小さくすることで、該複数のマーカの重なり合いを解消する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項6】
前記算出手段が、前記基準点から所定の距離以上離れているランドマークについては、所定の範囲内に存在するランドマークをグループ化し、そのグループを示すマーカの描画位置を算出する、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項7】
前記マーカ描画手段により描画されたマーカが選択された場合に、前記取得手段が、選択されたマーカで示されるランドマークを中心とする新たな地図データを取得し、
前記地図描画手段、前記算出手段、前記判定手段、前記補正手段及び前記マーカ描画手段が、前記新たな地図データに対する処理を実行する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項8】
地図表示システムにより実行される地図表示方法であって、
地図データベースから地図データを取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された地図データに基づいて地図を表示領域に描画する地図描画ステップと、
前記表示領域内の所定の基準点と、該表示領域外に位置する一又は複数のランドマークの位置とに基づいて、各ランドマークの方向を示す一又は複数のマーカの描画位置を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにおける算出に基づいて前記マーカを描画すると複数のマーカが重なり合うか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて複数のマーカが重なり合うと判定された場合に、該複数のマーカのそれぞれについて算出された、前記表示領域から該マーカに対応するランドマークまでの距離の大小関係と、マーカ同士の重畳の程度とに基づいて、該複数のマーカが重ならないように各マーカの描画位置を補正する補正ステップと、
前記算出ステップでの算出結果と前記補正ステップでの補正結果とに基づいて、前記一又は複数のマーカを前記表示領域に描画するマーカ描画ステップと、
を含む地図表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−197588(P2010−197588A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40852(P2009−40852)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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