説明

地盤振動伝播抑制構造およびその構築方法

【課題】 工場等の振動発生源や、鉄道振動や道路交通等の振動源から地盤を介して伝播する振動を低減し、近隣家屋等の既存施設への悪影響を防止する。
【解決手段】 振動発生源1と、その影響を受ける施設60との間の地盤3の所定範囲に掘削された連続溝内に、現地発生土と固化材とを混合してなるソイルセメントからなる高弾性基材に、低弾性樹脂部材としての多数の略小球状の合成樹脂成形部材を混合固化してなる振動伝播抑制構造10を設ける。内部の低弾性樹脂部材の振動エネルギー吸収により、振動発生源1からの振動の伝播を確実に減衰させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤振動伝播抑制構造およびその構築方法に係り、特に工場等の加工装置等の振動発生源や、鉄道振動や道路交通等の振動源から地盤を介して伝播する振動を低減し、近隣家屋等の既存施設への悪影響を抑えることのできる地盤振動伝播抑制構造およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動公害は、工場等の事業所に設置されたプレス機等の稼働時に発生する振動や、鉄道の列車通過時、道路の車両通行等における振動が地盤を伝播して、近隣家屋等に低周波の振動による悪影響を生じさせるものとして知られている。たとえば、振動発生源の近隣住民は、直接伝わる振動に加え、室内の物が揺れるという間接的な振動も体感し、多くの者が感覚的、生理的な不快感、苦痛を感じる。
【0003】
このような振動源からの低周波振動が地盤を伝播するのを遮断するために、振動源と受振側である住宅等の間を仕切るように、図9各図に示したような、防振溝55を構築する対策がとられることがある。図9(a)において、工場50内に設置されたプレス機等の振動発生源51からは、一例として模式的に破線で示したような振動が地盤内を伝播して周囲に広がる。図示した振動伝播対策工では、設けられた防振溝55内は空あるいは水57を満たすことにより、振動が伝播する地盤を遮断するような媒質層を設け、水平方向へのせん断波(横波)の伝播を遮断し、周辺民家60等に振動が及ばない対策が施されている。
【0004】
また、地下鉄と、その近隣に建つ建物との間の地盤に制振性能を有する制振ボールを深さ方向に並べて壁状にして、緩衝壁を形成する地盤振動低減方法も提案されている。この緩衝壁は、所定深さまでアースオーガー等の掘削機で杭状の孔を掘削し、その中に所定の固有振動するように設定された制振ボールを縦方向に積み重ねて挿入し、ボールが縦方向に連続した1本の柱状体を形成し、それを横方向に連続して造成して柱列状に形成したものである。
【特許文献1】特開平5−321284号公報参照。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図9各図に示した防振溝55では、山留め壁間に何も充填しない空間を形成させる場合にも切梁等が多段に配置されるので、それら切梁を介して振動が伝播してしまうおそれがある。そのため、山留めアンカー等でそれぞれの側の山留め壁を自立させる必要がある。したがって、アンカー打設作業等が可能となるだけの空間を確保しなくてはならず、防振性能のみを考慮した場合に比べて、溝の規模が大きくなるという問題がある。また、水57を満たす場合には、帯水層中に施工、あるいは遮水性山留め壁を施工しなければならず、ポンプ(図示せず)を稼働させて防振溝55内の水量管理等を行う必要がある。また、水57を媒質として満たされた防振溝55は、せん断波の水平方向への伝播はスロッシング等によるエネルギー吸収が見込まれ振動抑制を達成できるが、疎密波(縦波)は非圧縮性流体としての水中をそのまま伝播しまうので、振動抑制の効果を得ることはできない。
【0006】
また、特許文献1に開示された制振ボールを用いた緩衝壁では、1列の柱列壁の壁厚に相当する程度の直径のゴム製ボールを深さ方向に積み上げるようにして使用する。したがって、壁体の下部のボールが過度な上部荷重等を受けて破損した場合には、緩衝壁に作用する土圧に抵抗できない部分が生じ、緩衝壁が地中で分断されてしまうおそれもある。また、ゴム製ボール自体の固有振動数を設定して利用したり、内部に流体を充填し、液体のスロッシング等によるエネルギー吸収を期待することも考慮されているが、ボールの耐久性の観点から永久構造物としての機能を期待することは難しい。そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、耐久性を有し、体積弾性率が小さく、疎密波の地盤内伝播を確実に阻止できるようにした地盤振動伝播抑制構造およびその構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は振動発生源と、その影響を受ける施設との間の地盤の所定範囲に掘削された連続溝内に、高弾性基材に低弾性樹脂部材を混合固化してなる振動伝播抑制部材を設けたことを特徴とする。
【0008】
このとき、前記低弾性樹脂部材は、多数の略小球状の合成樹脂成形部材、あるいは多数の略小球状の合成ゴム成形部材を、前記高弾性基材に混合することが好ましい。
【0009】
前記低弾性樹脂部材は、所定の粒度分布からなる不整形発泡樹脂材を、前記高弾性基材に混合することが好ましい。
【0010】
前記高弾性基材は、現地発生土と固化材とを混合してなるソイルセメントとすることが好ましい。
【0011】
前記振動伝播抑制部材は、かさ密度が0.95Mg/m3〜1.05Mg/m3となるように、低弾性樹脂部材を高弾性基材に混合して密度調整することが好ましい。
【0012】
別の発明の構成として、振動発生源と、その影響を受ける施設との間の地盤の所定範囲に掘削された連続溝内に、低弾性樹脂成形板材を挿入してなる振動伝播抑制部材を設けるたことを特徴とする。
【0013】
構築方法として、振動発生源と、その影響を受ける施設との間の地盤の所定範囲に、側方連続掘削により連続溝を掘削し、掘削発生土と混合されて高弾性基材となる固化材と、低弾性樹脂部材とを混合撹拌し、この混合された材料を、前記連続内に戻して固化させ、前記連続溝に地中壁体からなる振動伝播抑制構造を構築することを特徴とする。
【0014】
地盤内に設置されたチェーンソーを側方に移動して前記連続溝を掘削するとともに、前記チェーンソーの回転によって、前記掘削発生土と固化材と低弾性樹脂部材とを混合撹拌して、前記連続溝内に戻すようにすることが好ましい。
【0015】
他の構築方法として、振動発生源と、その影響を受ける施設との間の地盤の所定範囲に、撤去可能な仮設山留め部材で側方が補強された連続溝を掘削して、該連続溝を安定液で保持した後、低弾性樹脂成形部材を前記連続溝内に挿入、沈設して地中壁体を構築し、前記仮設山留め部材を撤去し、地盤振動伝播抑制構造を構築することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、振動発生源と、その影響を受ける施設との間の地盤の所定範囲に設けられた地中壁体状の地盤振動伝播抑制構造の低弾性樹脂部材の振動エネルギー吸収により、前記振動発生源からの振動を確実に減衰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の地盤振動伝播抑制構造およびその構築方法の実施するための最良の形態として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の地盤振動伝播抑制構造としての地中壁体の一実施例の構築例を模式的に示した概略斜視図である。同図に示したように、たとえば工場等に設置されたプレス機等の振動発生源1に対して、その近隣に建っている既存建物60との間に、所定の幅にわたり、地盤振動伝播抑制構造としての地中壁体10が構築されている。同図には、模式的に振動発生源1からの振動の地盤3内の伝播の状態が模式的な同心円(半球)状に示されている。このように、発生振動は地盤3内を伝播し、既存建物60との間に位置する地盤振動伝播抑制構造としての地中壁体10により、その振動がほとんど吸収され、地中壁体10の外側に位置する既存建物60への振動の影響を最小限にすることができる。
【0019】
本実施例では、振動発生源1と既存建物60と間が80m程度離れており、地中壁体10は振動発生源1から約60mの位置に、幅W=80m,壁厚B=1m、壁体長L=12mの規模からなる。この地中壁体10の規模(延長(幅)、壁厚、壁体長)は、一般に、発生振動の振動レベルと、振動発生源1と近隣住戸等の既存建物60との間において、振動が伝播する地盤3の地盤特性とを考慮して、かつ壁体10の端部での回折の影響が最小になるような規模で、かつ既存建物60の敷地を侵さないように構築する。
【0020】
以下、地盤振動伝播抑制構造としての地中壁体10の構成について、図2各図〜図4を参照して説明する。
図2(a)は、壁厚Bを有するように、鋼矢板等による2列の山留め壁5を構築して掘削された溝11内に安定液を満たして山留め壁5の自立を保持させておき、その後、溝11の内寸を考慮した所定寸法のブロック状に成形された発泡ポリスチレンブロック12にウエイト(図示せず)を組み込んだ振動伝播抑制部材としての地中壁体部材を、安定液と置換しながら溝底部からブロック12ごとに積層されるように沈設したものである。この発泡ポリスチレンブロック12は、浮力をキャンセルするために、成形体の一部にウエイト(図示せず)を埋設したり、密度の大きな樹脂成形部材を貼り合わせたりして、ブロック12のかさ密度が0.95Mg/m3〜1.05Mg/m3となるようにして、安定液と置換するように安定液内に沈める。溝11内でブロック12体を壁体長分だけ積層して、地中壁体10を完成させることができる。
【0021】
図2(b)は、図2(a)と異なり、図7を参照して後述するように、溝11内に山留め壁を構築することなく、溝11を掘削するのと同時に、地盤中に体積弾性率が小さく、疎密波とせん断波を伝達しにくい材料を充填して、振動伝播抑制部材を構築した実施例を示している。その具体的構成については、図3各図を参照して説明する。
【0022】
振動伝播抑制部材は、通常、図1に示したように、振動発生源1と既存建物60との間の地盤内に地中壁体10として構築することを前提としているが、たとえば、ビル等の既存建物7と振動発生源(図示せず)とが接近しているような場合には、図2(c)に示したように、既存建物7の地下構造部の外壁面に沿って振動伝播抑制部材を構築するための溝11を掘削し、地中壁体10の一部と既存建物7の外壁面とを一体化させて、地中壁体10の安定化と、省スペース化を図ることも可能である。この場合、構築する地中壁体10は、同図(a)に示したように、山留め壁を既存建物と離れた側のみに構築し、他方は既存建物の地下外壁面を利用し、その溝11内にブロック12(図2(a))を挿入して構築することも可能である。
【0023】
ここで、地中壁体10の構成について、図3各図、図4各図を参照して説明する。図3(a)は、図2(b)と同様の構成を示した地中壁体10の全体断面図である。この地中壁体10は、図3(b)に拡大して示したように、固化して比較的高弾性な壁体剛性を示す高弾性基材としてのマトリックス部13と、マトリックス部13内に所定混合割合で混合された低弾性充填材15とから構成されている。マトリックス部13としては、原位置土とセメント系硬化材とを混合撹拌して製造したソイルセメント、コンクリート廃材を所定の加熱摩滅処理して得たコンクリート微粉体を用いた貧配合低強度コンクリート、ベントナイトとセメントミルクとの混合固化体等を適宜選定することができる。
【0024】
低弾性充填材15としては、直径1mm〜10cmの各種寸法からなる略小球状に成形された発泡ウレタンスポンジボール、発泡ポリスチレンボール、合成ゴム中実ボール、ガス封入された中空ゴムボール等を用いることができる。このときの直径の異なるボールを適当な比率で混合することで、各ボール間の隙間を小さな直径のボールが塞ぐので、低弾性充填材の充填密度を高めることができる。このとき、材質がスポンジのボールは、マトリックス材料がスポンジの空隙に含浸するので浮力を抑えることができるので、壁体内に均一に混合させることができる。また、発泡スチレンボールは、適当数の孔を形成しておくことで、同様にセメント分が孔に詰まって密度が増し、浮力が小さくなるので、マトリックス材料が硬化する前に溝内で均一に混合させることができる。また、ボール状体でなく、所定の粒度分布で混合された、不整形な発泡ポリウレタン材や発泡ポリスチレン材料を使用することも好ましい。この場合、角張った形状で、様々な寸法(粒度分布)の不整形材料を混在させることにより、各部材間のインタラクション(噛み合い)効果によって、マトリックス部13内で均一な分布を図ることができる。
【0025】
図4各図は、振動伝播抑制部材としての地中壁体10に図2(a)の構成に近い土留め壁体としての剛性を期待したサンドイッチ構造からなる地中壁体10の実施例である。地中壁体10の構築地盤が比較的軟弱な層である場合、振動の減衰を原地盤で期待することも可能であるが、振動伝播抑制部材を必要とする場合、図3に示した場合に比べ、地中壁体10の剛性を高めておくことが望ましい。そこで、図4各図に示したように、地中壁体10の外壁面に上述したマトリックス材料のみからなる高弾性壁体17を構築し、高弾性壁体17に挟まれた中間部に、図3で説明したマトリックス13と低弾性充填材15とを混合した内部壁16を設けた。これにより、外壁部17で壁体に作用する周辺地盤に対する抗土圧構造としての機能を果たすと共に、内部壁16により振動伝播抑制部材としての機能を併せて達成できる。
【0026】
図5、図6各図は、上述した振動伝播抑制部材として用いた発泡ポリスチレンブロック12(図2(a))に、外被鋼板を取り付けた地中壁体10の変形例を示している。図5(a)は、地中壁体10を側面視した図で、壁体の厚さ方向に両側の外被鋼板のフランジ19aが所定の隙間18aをあけて地中壁体10の側面を覆っている状態を示している。同図(b)は、外被鋼板19の上部の一部を切欠いて、ブロック12の一部が見えるように示した正面図である。また、外被鋼板19は、図6(a)に示したように、内部の発泡ポリスチレンブロック12を覆っているため、この地中壁体10として機能する際、外被鋼板19には周辺地盤の常時の主働土圧が側圧として作用する。常時の土圧が作用した状態(図6(a−1))では、内部の発泡ポリスチレンブロック12は変形しないので、地中壁体10の外被鋼板19のフランジ19a間の隙間18aはそのまま保持されている。(図6(a−1)参照)。ここで、図6(a−2)に示したように、地震時荷重等の過大な側圧が作用した場合には、フランジ19a間の隙間18が押し塞がれ、外被鋼板19が側圧を負担する。これにより、この振動伝播抑制部材は地震時等において、地盤変形抑制効果を発揮する。そのため、周囲に建物の杭基礎等がある場合に、杭基礎周囲の過度な地盤変形を防止する役割を果たすことができる。図6(b−1)の外被鋼板19は、フランジ19a同士が当接して変形が抑止されるのでなく、片側の外被鋼板19のフランジ先端が他方の外被鋼板19の内面に当接するような形状の外被鋼板19の組み合わせからなる。図6(a−1)に示した位置の外被鋼板19に横方向のズレが生じるような外力が作用した場合には、互いのフランジ19aの先端位置がずれてしまい、フランジ19a同士が当接できない場合が生じる。しかし、図6(b−1)では対向する外被鋼板19のフランジ19aの先端が一部重なった状態にあるので、水平外力を受けた場合にもズレが生じないという利点がある。
【0027】
次に、図2(b)に示した、低弾性充填材15を混合した地中壁体10の構築方法について、図7及び図8各図を参照して説明する。
地盤に連続して所定幅、深さの溝を掘削可能な知の掘削装置20が知られている。この種の掘削装置20は、溝形状、深さに応じたチェーンソー機構21を有し、チェーンソー21の刃部チェーン21aの回転により地盤3に連続帯状の溝を掘削することができる。たとえば、この種の公知の掘削装置を用いた工法としては「TDR工法」が知られている。この工法では、溝掘削を行うのと並行して、掘削した土質材料にセメント系固化材を混入させた未固化材料を、チェーンソー刃部21aが回転して掘削された領域22に戻る部分に供給され、この混合物が既掘削空間(溝)で硬化することにより、掘削空間を安定液等で保持することなく、溝掘削後も連続した地中壁体10を構築することができる。この地中壁体10の構築時に、セメント系固化材を供給する際に、低弾性充填材15をあわせて混合した未固化材料を、チェーンソー刃部21aが回転して掘削された領域22に供給することで、公知工法をそのまま適用して、低弾性充填材15を混合した地中壁体10を構築することができる。
【0028】
また、セメント系固化材と低弾性充填材15との混合物に代えて、2液混合タイプの発泡ウレタン樹脂製造装置23を、掘削装置20に付帯させ、この低弾性材料としての発泡ウレタン樹脂の製造装置23を掘削装置20の一部に組み込み、回転するチェーンソー21付近の地表側から供給することで、低弾性充填材15を所定配合でソイルセメント等をマトリックス13とする地中壁体10の未固化材料として供給することもできる。
【0029】
図8各図は、従来の多軸オーガー等の溝形掘削機(図示せず)を壁体の構築方向に所定ピッチで移動させて所定長のブロック12単位の掘削溝33を掘削し、各ブロック12を一単位とした掘削溝33内にブロック12挿入して地中壁体10を構築する手順について示している。図8(a)の正面図、平面図に示したように、たとえば多軸オーガーの1回の掘り下げ動作で掘削可能な範囲の間隔をあけてH形鋼を地中に挿入し、各H形鋼31をガイドにして2本の隣接位置にあるH形鋼31の間を、上述の多軸オーガーを用いて溝状に掘削する。掘削深さが増すのにあわせて、H形鋼31の外側面に仮山留用鋼板32を仮止めして、土圧抵抗材として機能させる。このとき、オーガー掘削によりH形鋼31の周辺の地山が緩んでいるので、オーガーによる掘り下げにあわせて所定深さ分の仮山留用鋼板32を容易に挿入することができる。その後、所定の壁体深さまで掘削が完了したら、オーガーを地中から撤去して、掘削溝33内を安定液(泥水)で置き換える。その後、溝内寸法に合致した発泡ポリスチレンブロック12を安定液と置換するように、溝内に吊り下ろして積層していき、地中壁体10を構築する。このとき、上述したように、発泡ポリスチレンブロック12は軽いので、安定液内への沈設を容易にするために、かさ密度が安定液(泥水)の比重に近くなるように、他の壁体材料と貼り合わせたり、ウエイト(図示せず)を設けて、例えばかさ密度が0.95Mg/m3〜1.05Mg/m3程度になるように調整することで、振動伝播抑制材としての設置を、より効率的に行える。その後、H形鋼31間に仮止めしておいた仮山留用鋼板32を撤去する。
【0030】
地中壁体10の完成後、壁体間に位置するH形鋼31は引き抜いて撤去してもよいし、そのまま地中に残置しても良い。H形鋼31を地中壁に残置した場合、将来、振動伝播抑制材の材質が劣化して、再度掘削して振動伝播抑制部材を更新する際に、このH形鋼31が掘削機のガイドとなり、かつ区間仕切材となるので、振動伝播抑制部材の維持管理が容易になるという効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の振動伝播抑制構造の配置構成例を示した概略斜視図。
【図2】図1に示した振動伝播抑制構造を構成する地中壁体の構成例を示した壁体側面図。
【図3】地中壁体の内部構成の一実施例を示した側面図、断面図。
【図4】地中壁体の内部構成の他の実施例を示した側面図、断面図。
【図5】地中壁体の他の実施例を示した側面図、一部断面を示した正面図。
【図6】図5に示した地中壁体の土圧作用時の変形状態を模式的に示した平断面図。
【図7】連続溝形成手段と、連続壁内の振動伝播抑制構造の構築状態を示した状態説明図。
【図8】振動伝播抑制構造を構築する他の手段における構築状態を示した施工順序図。
【図9】従来の振動伝播抑制構造としての防振溝の構成及びその振動の伝播状態を模式的に示した説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 振動発生源
3 地盤
5 山留め壁
10 振動伝播抑制部材(地中壁体)
11 溝
12 発泡ポリスチレンブロック
13 マトリックス
15 低弾性樹脂部材
16 内部壁
17 外部壁
19 外被鋼板
20 掘削装置
21 チェーンソー
31 H形鋼
32 仮設山留用鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生源と、その影響を受ける施設との間の地盤の所定範囲に掘削された連続溝内に、高弾性基材に低弾性樹脂部材を混合固化してなる振動伝播抑制部材を設けたことを特徴とする地盤振動伝播抑制構造。
【請求項2】
前記低弾性樹脂部材は、多数の略小球状の合成樹脂成形部材を、前記高弾性基材に混合したことを特徴とする請求項1に記載の地盤振動伝播抑制構造。
【請求項3】
前記低弾性樹脂部材は、多数の略小球状の合成ゴム成形部材を、前記高弾性基材に混合したことを特徴とする請求項1記載の地盤振動伝播抑制構造。
【請求項4】
前記低弾性樹脂部材は、所定の粒度分布からなる不整形発泡樹脂材を、前記高弾性基材に混合したことを特徴とする請求項1記載の地盤振動伝播抑制構造。
【請求項5】
前記高弾性基材は、現地発生土と固化材とを混合してなるソイルセメントであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の地盤振動伝播抑制構造。
【請求項6】
前記振動伝播抑制部材は、かさ密度が0.95Mg/m3〜1.05Mg/m3となるように、低弾性樹脂部材を高弾性基材に混合して密度調整されたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の地盤振動伝播抑制構造。
【請求項7】
振動発生源と、その影響を受ける施設との間の地盤の所定範囲に掘削された連続溝内に、低弾性樹脂成形板材を挿入してなる振動伝播抑制部材を設けたことを特徴とする地盤振動伝播抑制構造。
【請求項8】
振動発生源と、その影響を受ける施設との間の地盤の所定範囲に、側方連続掘削により連続溝を掘削し、掘削発生土と混合されて高弾性基材となる固化材と、低弾性樹脂部材とを混合撹拌し、この混合された材料を、前記連続内に戻して固化させ、前記連続溝に地中壁体からなる振動伝播抑制構造を構築することを特徴とする構築方法。
【請求項9】
地盤内に設置されたチェーンソーを側方に移動して前記連続溝を掘削するとともに、前記チェーンソーの回転によって、前記掘削発生土と固化材と低弾性樹脂部材とを混合撹拌して、前記連続溝内に戻すようにしたことを特徴とする請求項8に記載の構築方法。
【請求項10】
振動発生源と、その影響を受ける施設との間の地盤の所定範囲に、撤去可能な仮設山留め部材で側方が補強された連続溝を掘削して、該連続溝を安定液で保持した後、低弾性樹脂成形部材を前記連続溝内に挿入、沈設して地中壁体を構築し、前記仮設山留め部材を撤去し、地盤振動伝播抑制構造を構築することを特徴とする構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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