説明

地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物

【課題】 ジェットグラウト工法等の地盤改良において、1)スライムの流動性を向上させて十分な作業性を確保すること、2)必要とされる所定の早期強度を確保すること等を同時に充足させることのできる地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を提供する。
【解決手段】 下記A成分25〜75質量%と下記B成分75〜25質量%(合計100質量%)とが混合された地盤改良用粉末添加剤(以下、粉末添加剤ともいう)を、セメント系固化材100質量部に対し0.2〜10質量部の割合で含有することを特徴とする地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を用いる。
A成分:炭素数3〜8のオレフィンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解した質量平均分子量2000〜50000のビニル共重合体から成り、該固形分濃度が10〜80質量%の水溶液
B成分:多孔質シリカ微粉末

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来より軟弱地盤改良工事における地盤改良工法として、セメントミルクを地中深く高圧噴射し、土と混合するジェットグラウト工法が採用されている。これは地中に多重管を挿入し、管を回転させながら、これらの管先端付近からセメントミルクを地中に高圧噴射し、地中の土を切削すると同時に、切削された土とセメントミルクが混合されたソイルセメントスラリー(以下、スライムという)を地上に排出しながら、地中をスライムで置換して硬化させ、地盤を安定化させる工法である。しかしながら、粘土質を多く含む粘性土や土砂をセメントミルクと混合した際には、土粒子とセメントが凝集して流動性を失い、粘度が大きく上昇して注入が不完全となり、地盤を切削した際に発生するスライムが地上に排出されず、地盤改良工事に支障を来すという問題があった。そこで、スライムが地上に上昇し易いように水を添加したり、或いは、地中へのセメントミルクの注入率を高くしたりするなどの結果、建設汚泥としてスライムの量が増加し、処理費用が増加するという問題があった。
【0002】
また、一方で、注入するセメントミルクは、通常、施工現場又はその近辺で、セメント系固化材と水と液体の混和剤を添加して製造されるため、現場計量による添加量管理が煩雑になり、作業が複雑になるという問題があった。
【0003】
そうした理由から、スライムに優れた流動性を付与してスライムの粘度を低下させることができる地盤改良用粉末添加剤をセメント系固化材に予め乾式混合したプレミックスタイプの粉末固化材が強く望まれている。本発明はかかる要求に応えることができる地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
従来、スライムの粘度を低下させる技術として、各種の添加剤を用いる方法が知られている(例えば特許文献1〜9参照)。しかし、これらの従来法では、前記した要求に充分に応えることができないという問題がある。また、液状のセメント用分散剤を無機微粉末と混合して粉末分散剤とすることが知られている(例えば特許文献10〜12参照)。しかし、従来より提案されているセメント用分散剤は、いずれもセメントコンクリートの分野を対象としたものであり、地盤改良を目的とした土の分散には効果が乏しく、前記した要求に応えることができないという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平6−256056号公報
【特許文献2】特公平6−4875号公報
【特許文献3】特公平7−96675号公報
【特許文献4】特開平10−95976号公報
【特許文献5】特開平11−254425号公報
【特許文献6】特開平11−256161号公報
【特許文献7】特開2001−172629号公報
【特許文献8】特開2004−143041号公報
【特許文献9】特開2004−175989号公報
【特許文献10】特許第2669761号公報
【特許文献11】特開平10−45451号公報
【特許文献12】特許第3619196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、地盤改良工法、特にジェットグラウト工法を利用し、超高圧で圧縮空気とセメントミルクを地盤中に回転しながら噴射して短時間で地盤を切削し混合するプロセスにおいて、1)スライムの流動性を向上させて十分な作業性を確保すること、2)必要とされる所定の早期強度を確保すること等を同時に充足させることのできる地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決すべく研究した結果、特定のビニル共重合体の水溶液と多孔質シリカ微粉末との混合物から成る粉末添加剤を所定割合で含有する地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物が正しく好適であることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、下記のA成分25〜75質量%と下記のB成分75〜25質量%(合計100質量%)とが混合された地盤改良用粉末添加剤(以下、粉末添加剤ともいう)を、セメント系固化材100質量部に対し0.2〜10質量部の割合で含有することを特徴とする地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物である。
A成分:炭素数3〜8のオレフィンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解した質量平均分子量2000〜50000のビニル共重合体から成り、該固形分濃度が10〜80質量%の水溶液
B成分:多孔質シリカ微粉末
【発明の効果】
【0009】
以上説明した本発明に係る地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物は、地盤改良工事の現場作業において、投入管理が簡便であり、且つ、特に地盤の土粒子径が75μm以下の細粒分を50質量%以上含むか、5μm以下の粘土分やシルト分を20質量%以上含むような細粒分の多い土壌、すなわち、高粘性の土壌に対して顕著な流動性を付与することができる。その結果、地中へのセメントミルクの注入率を上げる必要がなく、或いは、必要に応じて下げることができるため、建設汚泥となるスライムの発生量を抑えることができると同時に、セメントミルクと土壌との均一混合性を促すことにより、作業性確保に必要な地盤改良土の初期強度と長期強度を十分に発現することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における粉末添加剤はA成分とB成分から成るものである。A成分は、炭素数3〜8のオレフィンと無水マレイン酸無水物との共重合物をアルカリ加水分解したビニル共重合体の水溶液である。炭素数3〜8のオレフィンとしては、例えば、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、n−ペンテン、シクロペンテン、2−メチル−1−ブテン、n−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−ブチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、1−オクテン、ジイソブチレン及びこれらの混合物が挙げられるが、なかでも炭素数4のオレフィンが好ましく、特にイソブチレンが好ましい。
【0011】
炭素数3〜8のオレフィンと無水マレイン酸無水物との共重合体は、公知の方法で得ることができる。例えば、溶媒としてエチルベンゼン、無水マレイン酸、ラジカル連鎖移動剤及びラジカル開始剤をオートクレーブに仕込み、反応系を窒素置換した後、炭素数3〜8のオレフィンを圧入し、温度60〜120℃で圧力0.2〜0.5N/mmの条件下に2〜10時間ラジカル共重合反応させて、共重合物を沈殿物として得ることができる。
【0012】
所望の共重合物を得るためには、ラジカル開始剤やラジカル連鎖移動剤の種類及び使用量、溶媒の種類及び使用量、重合温度、重合時間等を適宜選択する。ここで用いるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、クメンハイドロパーオキサイド等の非水系の開始剤等が挙げられる。
【0013】
炭素数3〜8のオレフィンと無水マレイン酸無水物との共重合体において、双方の共重合比率は、炭素数3〜8のオレフィン/無水マレイン酸=45〜55/55〜45(モル比)となるようにするのが好ましく、50/50(モル比)に近い比率となるようにするのがより好ましい。
【0014】
A成分の水溶液に含まれるビニル共重合体は、以上説明した炭素数3〜8のオレフィンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解したものである。炭素数3〜8のオレフィンと無水マレイン酸との共重合体をアルカリ加水分解するときのアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましく、更にはかかるアルカリ金属水酸化物の水溶液がより好ましく、工業的見地から安価な水酸化ナトリウム水溶液が特に好ましい。また、A成分の水溶液に含まれる水溶性ビニル共重合体は、炭素数3〜8のオレフィンと無水マレイン酸の共重合体のアルカリ加水分解による部分中和物であっても又は完全中和物であってもよい。
【0015】
A成分としてのビニル共重合体水溶液中のビニル共重合体は、質量平均分子量が2000〜50000のものであるが、3000〜35000のものとするのが好ましい。ここで質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(以下単にGPC法という)で測定したプルラン換算の質量平均分子量を意味する。
【0016】
A成分は、上記ビニル共重合体を固形分濃度で10〜80質量%含む。
【0017】
B成分として用いる多孔質シリカ微粉末は、SiO・nHOの組成で示される非晶質の珪酸である。多孔質シリカ微粉末としては、水ガラスを塩酸等の酸で中和し、析出した沈殿物を水洗し、乾燥して粉末状とした湿式シリカと呼ばれるものが好ましい。かかる多孔質シリカ微粉末のなかでも、B成分としては、比表面積が50〜450m/gで、且つ平均粒径が0.1〜500μmのものが好ましく、特に吸油量(JIS−K5101−19による吸油量)が100ml/100gを超えるものが好ましい。
【0018】
本発明における粉末添加剤は、以上説明したA成分とB成分とから成り、且つ、A成分25〜75質量%とB成分75〜25質量%(合計100質量%)から成るものであるが、A成分55〜65質量%とB成分45〜35質量%(合計100質量%)から成るものが好ましい。A成分はビニル共重合物の水溶液であるが、A成分とB成分を室温で混合するだけで、乾燥や粉砕することなく、ブロッキングのない、さらっとした感触の、均一な粉末添加剤を得るためであり、しかもそれを所定量添加したセメント系固化材に優れた流動性及び初期強度を付与できるプレミックス粉末セメント組成物を得るためである。
【0019】
本発明に係る粉末添加剤は、攪拌羽根を備えたミキサーに、先ず、B成分を投入し、A成分を少しずつ投入することにより製造することができる。製造物は通常、粒径が3000μm以下の粉末となるが、かかる粉末添加剤をプレミックス粉末セメント製品に使用する場合には、その粒径を揃えたものとするのが好ましく、粒径が2000μm以下で且つ平均粒径が1〜1500μmとなるよう篩等の分級装置を用いて分級するのが好ましい。
【0020】
本発明に使用するセメント系固化材としては、普通ポルトランドセメント、早強セメント、超早強セメント、中庸熱セメントなどの各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの混合セメント等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上の混合物が適宜使用できる。限定するものではないが、多くの場合、通常は普通ポルトランドセメントや高炉セメントが使用される。また、各種ポルトランドセメントの70質量%以下の範囲内で、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカヒューム、石灰石微粉末、石膏などの微粉末混和材料を含有させたものであってもよい。
【0021】
本発明に係る地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物は、以上説明した粉末添加剤をセメント系固化材100質量部に対し、0.2〜10質量部の割合で含有するものである。0.2質量部未満の場合には流動性が不足し、逆に10質量部を越えると、凝結遅延性が大きくなり初期強度発現が低下して目的とする十分な効果が得られない。好ましくは、1.0〜6.0質量部の割合で含有する。更には、土壌の性状との関係で、以上のような含有割合の範囲内にて、適宜選択するのがより好ましい。
【0022】
また、本発明に係る地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物の使用に際しては、合目的的に他の剤を併用することができる。かかる他の剤としては、消泡剤、防腐剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、防水剤等が挙げられる。
【0023】
次に、本発明の地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物の使用方法について説明する。すなわち、基本的には、地盤改良用粉末添加剤を所定割合で含有する本発明の地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を、ミキサーを用いて、その質量の100〜300%、好ましくは125〜275%の混練水と混合して地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物スラリーを調製し、該スラリーを改良すべき地盤中に注入・混合し、硬化させる方法である。ジェットグラウト工法では通常、改良すべき対象土壌容積の0.3〜1.5倍の容積、好ましくは、0.5〜1.2倍の容積のセメントミルクが高圧ポンプを用いて地盤中に注入・噴射混合されて使用される。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0025】
(1)試験区分1(地盤改良用粉末添加剤のA成分中のビニル共重合体の合成)
<ビニル共重合体(a−1)の合成>
無水マレイン酸98g(1モル)及び溶媒としてエチルベンゼン640g、分子量調節剤として3−メルカプトプロピオン酸0.6g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2gを2リットル容量のオートクレーブに仕込み、攪拌しながら均一に溶解したのち雰囲気を窒素置換した。次に、イソブチレン59g(1.05モル)を圧入したのち、反応系の温度を85℃まで加温し、85℃に保ちながらラジカル重合反応を6時間継続して反応を完結した。重合反応終了後、反応系の温度を室温まで冷却し、脱気後、攪拌を止めて沈殿したポリマーを取り出し濾過乾燥して淡黄色粉末状のポリマー141gを得た。分析したところ、無水マレイン酸/イソブチレン=50/50(モル比)の組成割合から成るイソブチレンと無水マレイン酸共重合物であった。次に、この共重合物50g、30%水酸化ナトリウム水溶液51g、水道水20gを攪拌装置及び冷却コンデンサーのついたフラスコに入れ、攪拌しながら加温して均一溶解し、イソブチレンと無水マレイン酸共重合物のアルカリ加水分解物の塩(a−1)からなる固形分濃度50質量%のビニル共重合体水溶液を得た。これをGPCで分子量を測定したところ、質量平均分子量が19500(プルラン換算)であった。
【0026】
<ビニル共重合体(a−2)〜(a−4)及び(ar−1)〜(ar−3)の合成>
前記(a−1)の合成と同様にして、炭素数3〜8のオレフィンと無水マレイン酸共重合物のアルカリ加水分解物の塩(a−2)〜(a−4)及び(ar−1)〜(ar−3)を合成し、固形分濃度50質量%のビニル共重合体を得た。以上で合成したビニル共重合体の内容を表1に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
表1において、
*1:構成単位を形成することとなる単量体の種類
*2:イソブチレン
*3:イソブチレン/1−ペンテン=60/40(モル比)の混合物
*4:ジイソブチレン
【0029】
(2)試験区分2(地盤改良用粉末添加剤の製造)
<製造例1>地盤改良用粉末添加剤(M−1)の製造
B成分としての多孔質シリカ微粉末(株式会社トクヤマ製のトクシールNR、比表面積180m/g、平均粒径85μm)4kgをリボンミキサーに仕込んだ。次に、A成分として固形分濃度50質量%のビニル共重合体(a−1)の水溶液6kgを前記のリボンミキサーに攪拌しながら少しずつ分割投入して充分に混合した後、篩を用いて分級し、粒径が500μm未満で、平均粒径90μmの地盤改良用粉末添加剤(M−1)10kgを得た。
【0030】
<製造例2〜6及び比較製造例1〜3>(M−2)〜(M−6)及び(R−1)〜(R−5)の製造
製造例1の地盤改良用粉末添加剤(M−1)の調製と同様にして、製造例2〜6及び比較製造例1〜5の地盤改良用粉末添加剤(M−2)〜(M−6)及び(R−1)〜(R−5)を得た。以上の各例で調製した地盤改良用粉末添加剤の内容を表2にまとめて示した。
【0031】
【表2】

【0032】
表2において、
・a−1〜a−4:試験区分1で合成したビニル共重合体
・平均粒径は粉末を走査型電子顕微鏡で写真撮影し、この写真撮影の画像から100個の粒子を任意に選定して、選定した個々の粒子について長径(粒子の中心を通る最長の径d1)と短径(粒子の中心を通る最短の径d2)を測定し、(d1+d2)/2の平均値で求めた。
・比較例4及び5は粉末状にならなかったので平均粒径を測定しなかった。
*5:ビニル共重合体は固形分濃度が50質量%の水溶液として使用。
*6:比表面積20m/g、平均粒径0.3μmのシリカフューム微粉末
*7:比表面積0.8m/g、平均粒径2.5μmの炭酸カルシウム微粉末
【0033】
(3)試験区分3(地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物の製造)
<製造例7〜18及び比較製造例6〜12>(PM−1)〜(PM−12)及び(PR−1)〜(PR−7)
試験区分2で製造した地盤改良用粉末添加剤のうちで、状態が粉末であるものを用いた。セメント系固化材は、普通ポルトランドセメント(NC、密度=3.16g/cm、以下同じ)、及び普通ポルトランドセメント30質量%と高炉セメントB種(BB、密度=3.04g/cm、以下同じ)70質量%からなる混合物(NC+BB、合計100質量%)を用いた。先ず、2Lのホバートミキサーにセメント系固化材1000部を投入し、次に、試験区分2で製造した地盤改良用粉末添加剤を10〜60部の範囲で加減して加え、乾式混合して地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を製造した。得られた地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を表3にまとめて示す。
【0034】
【表3】

【0035】
表3において、
・NC:普通ポルトランドセメント
・NC+BB:普通ポルトランドセメント30質量%と高炉セメントB種70質量%からなる混合物
【0036】
(4)試験区分4(地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物スラリーの調製及び評価)
試験区分3で調製した地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を用いて次のようにスラリーを調製し、評価した。
<実施例1〜9及び比較例3〜8>地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を使用した、表4に記載の配合No.1あるいは2による地盤改良セメント組成物スラリー
表3に記載の地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物及び水を、表4に従い計量し、ホバートミキサーに入れて均一に混合し、セメントミルクを調製した。このセメントミルクに表5に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1630gを加えて混合し、地盤改良セメント組成物スラリーを調製した。
調製した地盤改良セメント組成物スラリーについて、該スラリーの粘度、及び該スラリーの硬化物の一軸圧縮強度を測定し、結果を表6に示した。
【0037】
<比較例1〜2>地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を使用しない、表4に記載の配合No.3あるいは4による地盤改良セメントスラリーの調製
普通ポルトランドセメントあるいは普通ポルトランドセメント30質量%と高炉セメントB種70質量%からなる混合物と水を、表4に従い計量し、ホバートミキサーに入れて均一に混合し、セメントミルクを調製した。このセメントミルクに表5に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1630gを加えて混合し、地盤改良セメントスラリーを調製した。
調製した地盤改良セメント組成物スラリーについて、該スラリーの粘度、及び該スラリーの硬化物の一軸圧縮強度を測定し、結果を表6に示した。
【0038】
<実施例10〜12及び比較例9〜11>地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を使用した、表4に記載の配合No.5による地盤改良セメント組成物スラリーの調製
表3に記載の地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物及び水を、表4に従い計量し、ホバートミキサーに入れて均一に混合し、セメントミルクを調製した。このセメントミルクに表5に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1630gを加えて混合し、地盤改良セメント組成物スラリーを調製した。
調製した地盤改良セメント組成物スラリーについて、該スラリーの粘度、及び該スラリーの硬化物の一軸圧縮強度を測定し、結果を表6に示した。
【0039】
<比較例12>地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物を使用しない、表4に記載の配合No.6による地盤改良セメントスラリーの調製
普通ポルトランドセメント30質量%と高炉セメントB種70質量%(合計100質量%)からなるセメント系固化材323g、水646gをホバートミキサーに入れて均一に混合し、セメントミルクを調製した。このセメントミルクに表5に記載の物性値を有する掘削土(大阪海成粘土)1630gを加えて混合し、地盤改良セメントスラリーを調製した。
調製した地盤改良セメント組成物スラリーについて、該スラリーの粘度、及び該スラリーの硬化物の一軸圧縮強度を測定し、結果を表6に示した。
【0040】
【表4】

【0041】
表4において、
*8:注入率=掘削土1m当たりに注入するセメントミルクの容量割合(%)
*9:配合No.3はNC、配合No.4及びNo.6はNC+BB
【0042】
【表5】

【0043】
表5において、
*10:粒子径5μm未満の細粒分粒子
*11:粒子径5μm〜75μm未満のシルト分粒子
*12:粒子径75μm〜2mmの砂分粒子
【0044】
<地盤改良セメント組成物スラリーの物性評価>
地盤改良セメント組成物スラリーの粘度、該スラリーの硬化物の一軸圧縮強度はつぎのようにして求めた。
【0045】
・粘度:B型粘度計を用い、練り混ぜ直後と30分後に、20℃にて粘度を測定した。測定値が小さいほど粘度が小さく、流動性が優れていることを示す。施工現場で注入・噴射・混合が可能な流動性を有する地盤改良セメント組成物スラリーとするためには、調製した地盤改良セメント組成物スラリーの粘度の値が10000mPa・S以下であることが好ましい。
【0046】
・一軸圧縮強度試験:JIS−A1108に準拠し、直径50mm×高さ100mmの型枠を用いて成形した成型品について、材齢1日、7日及び28日の圧縮強度(kN/m2)を測定した。
【0047】
【表6】

【0048】
表6において、
*13:本発明のプレミックス粉末セメント組成物(PM−2)に使用された共重合体を、セメント用分散剤として使用されるマレイン酸とメトキシポリ(30モル)エチレングリコールアリルエーテルの共重合体(重量平均分子量23000)に置き換えた以外は全く同じ組成のものを用いた。
*14:上記同様にして、セメント用分散剤(竹本油脂社製のチューポールHP−11)に置き換えた以外は全く同じ組成のものを用いた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分25〜75質量%と下記のB成分75〜25質量%(合計100質量%)とが混合された地盤改良用粉末添加剤を、セメント系固化材100質量部に対し0.2〜10質量部の割合で含有することを特徴とする地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物。
A成分:炭素数3〜8のオレフィンと無水マレイン酸との共重合物をアルカリ加水分解した質量平均分子量2000〜50000のビニル共重合体から成り、該固形分濃度が10〜80質量%の水溶液
B成分:多孔質シリカ微粉末
【請求項2】
ジェットグラウト工法で使用する請求項1記載の地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物。
【請求項3】
炭素数3〜8のオレフィンが炭素数4のイソブチレンである請求項1又は2に記載の地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物。
【請求項4】
B成分が、比表面積50〜450m/g、且つ平均粒径0.1〜500μmの多孔質シリカ微粉末である請求項1〜3のいずれかに記載の地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物。
【請求項5】
A成分の固形分濃度が40〜60質量%の水溶液を用い、且つ該A成分を35〜65質量%及びB成分65〜35質量%(合計100質量%)から成る粉末添加剤を用いる請求項1〜4のいずれかに記載の地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物。
【請求項6】
セメント系固化材として普通ポルトランドセメント及び/又は高炉セメントを使用する請求項1〜5のいずれかに記載の地盤改良用プレミックス粉末セメント組成物。

【公開番号】特開2007−63414(P2007−63414A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251451(P2005−251451)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】