説明

地盤改良薬液の注入方法

【課題】軟弱な砂質地盤であっても、地盤改良薬液を設定した範囲に安定して注入できる地盤改良薬液の注入方法を提供する。
【解決手段】地盤に存在する地下水よりも大きな比重を有する水ガラス系の緩結性充填材Dが注入された挿入孔Sに挿入している外管3の表面に設けた外管パッカー11を膨張させた後、この外管パッカー11の間に位置する注入口3aから、外管3に挿入した内管を通じて供給した瞬結性固化液Cを地盤に注入してパッカーPを形成し、次いで、この内管を外管3から引き抜いた後、別の内管5Bを外管3に挿入し、内管5Bを通じて、膨張させている2つのパッカー6bの間にある第3吐出口5cから地盤改良薬液Gを供給して、パッカーPとは別の位置にある多孔被覆材10により覆われた注入口3aを通じて地盤に注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良薬液の注入方法に関し、さらに詳しくは、軟弱な砂質地盤であっても、地盤改良薬液を設定した範囲に安定して注入できる地盤改良薬液の注入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤を強化するために、外管と内管のそれぞれにパッカーを有する二重管を用いて対象地盤に地盤改良薬液を注入する方法が種々提案されている。軟弱な地盤の場合には、削孔した挿入孔に外管を挿入した後、外管に設けたパッカーを膨張させる方法や、外管に設けたパッカーを、挿入孔の内周面とすき間を有するように膨張させて施工を行なう方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
これらの方法では、外管に設けたパッカーが位置する付近の挿入孔の内周面に崩落が生じると、外管に設けたパッカーを膨張させた際に、パッカーと挿入孔の内周面とのすき間が大きくなり過ぎて、瞬結性固化液がこのすき間に浸入して地盤改良薬液の注入口を塞いでしまって注入ができなくなることがある。そのため、挿入孔の内周面の崩落を生じさせないことが重要であるが、従来、特にその対策は講じられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−57826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、軟弱な砂質地盤であっても、地盤改良薬液を設定した範囲に安定して注入できる地盤改良薬液の注入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の地盤改良薬液の注入方法は、地盤に削孔した挿入孔に、軸方向に離間して複数の注入口を周壁に設けた外管を挿入し、次いで、外管に内管を所定位置まで挿入し、この内管の表面に軸方向に離間して設けた2つの膨縮可能なパッカーを膨張させて外管の内周面に圧接させた状態にして、この2つの膨張させているパッカーの間に位置する内管の周壁に設けた吐出口から地盤改良薬液を供給して、外管の注入口から地盤に注入する地盤改良薬液の注入方法であって、前記外管の表面に少なくとも1つの注入口を挟んで軸方向に離間して2つの膨張可能な外管パッカーを設けるとともに、この外管パッカーを設けた位置とは別の位置にある注入口を多孔被覆材により覆っておき、その地盤に存在する地下水よりも大きな比重を有する水ガラス系の緩結性充填材が注入されている前記挿入孔に、前記外管を挿入した状態にして、収縮状態の前記外管パッカーを膨張させて、この膨張させた外管パッカーの間に位置する注入口から瞬結性固化液を地盤に注入して、この注入口周辺に瞬結性固化液からなるパッカーを形成し、次いで、前記多孔被覆材により覆われた注入口から地盤改良薬液を地盤に注入することを特徴とするものである。
【0007】
ここで、前記挿入孔を削孔した後のケーシングロッドの内部に前記緩結性充填材を注入し、このケーシングロッドに前記外管を挿入した後、ケーシングロッドを地盤上に引き抜くことにより、前記緩結性充填材が注入されている挿入孔に外管を挿入した状態にすることもできる。或いは、前記挿入孔を削孔した後のケーシングロッドに前記外管を挿入し、このケーシングロッドと外管とのすき間に前記緩結性充填材を注入した後、ケーシングロッドを地盤上に引き抜くことにより、前記緩結性充填材が注入されている挿入孔に外管を挿入した状態にすることもできる。
【0008】
前記内管とは別の内管を外管に挿入し、この別の内管の表面に軸方向に離間して設けた2つの膨縮可能なパッカーを膨張させて外管の内周面に圧接させた状態にして、この2つの膨張させているパッカーの間に位置する内管の周壁に設けた吐出口から瞬結性固化液を供給することにより、外管の注入口から地盤に注入して、前記瞬結性固化液からなるパッカーを形成した後、この内管を引き抜いて、前記地盤改良薬液を供給する内管を外管に挿入することもできる。或いは、前記内管の表面に軸方向に離間して設けた2つの膨縮可能なパッカーを膨張させて外管の内周面に圧接させた状態にして、この2つの膨張させているパッカーの間に位置する内管の周壁に設けた吐出口から瞬結性固化液を供給することにより、外管の注入口から地盤に注入して、前記瞬結性固化液からなるパッカーを形成した後、この内管により地盤改良薬液を供給することもできる。
【0009】
本発明の地盤改良薬液の注入方法では、前記2つの膨張させているパッカーの間に位置する内管の周壁に設けた吐出口から瞬結性固化液を供給した際に、この供給した瞬結性固化液を前記外管パッカーの内部に充填することにより、外管パッカーを挿入孔の内周面とすき間を有するように膨張させるとともに、この膨張させた外管パッカーの間に位置する供給口から瞬結性固化液を地盤に注入することもできる。また、前記挿入孔を途中で向きを変えて水平方向に形成することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地盤に削孔した挿入孔に、軸方向に離間して複数の注入口を周壁に設けた外管を挿入し、次いで、外管に内管を所定位置まで挿入し、この内管の表面に軸方向に離間して設けた2つの膨縮可能なパッカーを膨張させて外管の内周面に圧接させた状態にして、この2つの膨張させているパッカーの間に位置する内管の周壁に設けた吐出口から地盤改良薬液を供給して、外管の注入口から地盤に注入するに際して、外管の表面に設けた膨張可能な外管パッカーを用いて、瞬結性固化液によるパッカーを形成することで、挿入孔の内周面と外管の外周面とのすき間を確実にシールすることができる。ここで、その地盤に存在する地下水よりも大きな比重を有する水ガラス系の緩結性充填材が注入されている挿入孔に、外管を挿入した状態にしているので、この緩結性充填材によって挿入孔の内周面は、緩結性充填材を注入しない場合に比して遥かに崩落し難くなる。
【0011】
そのため、瞬結性固化液により形成されたパッカーとは別の位置にある注入口から地盤改良薬液を地盤に注入する際に、注入口が瞬結性固化液によって塞がれることがなく、また、挿入孔の内周面と外管の外周面とのすき間への地盤改良薬液の流出を抑えることができる。
【0012】
一方で、緩結性充填材は水ガラス系なので、瞬結性固化液および地盤改良薬液の地盤への注入を実質的に妨げることもない。また、緩結性充填材の比重がその地盤に存在する地下水よりも大きいので、挿入孔に流入しようとする地下水の移動が防止でき、挿入孔の内周面が崩落し難くなる。
【0013】
また、多孔被覆材により覆われた注入口から地盤改良薬液を地盤に注入することにより、注入圧力が大きくても、地盤改良薬液が多孔被覆材によって適度に減圧されつつ広い範囲に行き渡るようになる。これにより、注入圧力を大きくした場合であっても、相対的に地盤の弱い特定領域にのみに、地盤改良薬液が地盤を裂くように浸入することがなくなり、設定した範囲に安定して地盤改良薬液を注入することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】地盤を削孔した後のケーシングロッドの内部に緩結性充填材を注入している状態を例示する説明図である。
【図2】図1のケーシングロッドに外管を挿入した状態を例示する説明図である。
【図3】緩結性充填材が注入されている挿入孔に、外管が挿入されている状態を例示する説明図である。
【図4】地盤を削孔した後のケーシングロッドと外管とのすき間に緩結性充填材を注入している状態を例示する説明図である。
【図5】外管に瞬結性固化液を供給する内管を挿入した状態を例示する説明図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図5のB−B断面図である。
【図8】外管パッカーが膨張した状態を例示する説明図である。
【図9】瞬結性固化液を地盤に注入している状態を例示する説明図である。
【図10】外管に地盤改良薬液を供給する内管を挿入した状態を例示する説明図である。
【図11】図10のB1−B1断面図である。
【図12】地盤改良薬液を地盤に注入している状態を例示する説明図である。
【図13】形成された改良地盤を例示する説明図である。
【図14】切り換え手段を備えた内管を例示する断面図である。
【図15】水平方向にケーシングロッドを延ばして挿入孔を形成している状態を例示する説明図である。
【図16】ケーシングロッドに外管を挿入している状態を例示する説明図である。
【図17】外管の先端に設けたアンカーを膨張させた後に、ケーシングロッドを引抜いた状態を例示する説明図である。
【図18】瞬結性固化液を地盤に注入している状態を例示する説明図である。
【図19】地盤改良薬液を地盤に注入している状態を例示する説明図である。
【図20】形成された改良地盤を例示する説明図である。
【図21】外管の別の例を示す説明図である。
【図22】図21の外管に挿入した内管から瞬結性固化液を供給して外管パッカーを膨張させている状態を例示する説明図である。
【図23】瞬結性固化液を地盤に注入している状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の地盤改良薬液の注入方法を実施形態に基づいて説明する。まず、地盤を上下に削孔して形成した挿入孔を用いる場合を例にして説明する。
【0016】
本発明の地盤改良薬液の注入方法の実施に使用する注入装置は、図5〜図7に例示するように、地盤を削孔して形成された挿入孔Sに挿入する外管3と、この外管3に挿入して外管軸方向に移動可能な内管5Aとを有している。この内管5Aは、瞬結性固化液Cを供給する。さらに、この内管5Aとは別に、図10、図11に例示するように、外管3に挿入して外管軸方向に移動可能な地盤改良薬液Gを供給する内管5Bを有している。
【0017】
外管3の周壁には、管内側と管外側とを連通する複数の注入口3aが外管軸方向に離間して形成されている。また、外管3の表面に外管軸方向に離間して2つの膨張可能な外管パッカー11が設けられている。この2つの外管パッカー11は、互いの間の外管3の周壁に少なくとも1つの注入口3aが存在するように配置されている。外管パッカー11としては、水分を吸収して膨張する膨潤材または、内部に流入出する気体や液体の流体圧力により膨縮可能なシール材を例示できる。
【0018】
この2つの外管パッカー11は、膨張した際に、挿入孔Sの内周面との間にすき間を有するように構成されている。即ち、それぞれの外管パッカー11を膨張させた際に挿入孔Sの内周面との間にすき間を有するように調整するすき間調整手段を有している。すき間調整手段としては、外管パッカー11自体の仕様を、最大に膨張させた際に挿入孔Sの内周面との間にすき間を有するように設定することが例示できる。その他のすき間調整手段としては、外管パッカー11を膨張させるために供給する流体の流量調整手段、流体圧調整手段、後述する逆止弁12や、これらを組み合わせたものを例示できる。
【0019】
膨張した外管パッカー11と挿入孔Sの内周面とのすき間の大きさの下限は、瞬結性固化液Cが通過できればよく、上限は1.0cm、好ましくは0.5cm程度である。したがって、膨張した外管パッカー11が挿入孔Sの内周面を圧接せずに接触している程度であり、瞬結性固化液Cが通過できれば、本発明のすき間に該当する。
【0020】
尚、本発明では、膨張した外管パッカー11を挿入孔Sの内周面に接するように設定することもできる。
【0021】
外管パッカー11を設けた位置とは別の位置の外管3の表面には、多孔被覆材10が設けられている。多孔被覆材10が設けられた領域にある注入口3aは、多孔被覆材10により覆われた状態になっている。
【0022】
本発明では、外管パッカー11の間に配置された注入口3aを通じて2液タイプの瞬結性固化液Cを地盤に注入し、多孔被覆材10により覆われた注入口3aを通じて地盤改良薬液Gを地盤に注入する。地盤改良薬液Gとしては、水ガラス系グラウト、セメント系グラウト等を例示でき、ゲル化タイムは、例えば1日程度である。2液タイプの瞬結性固化液Cは、例えばC1液とC2液とを混合して急速に固化するものであり、固化時間が5秒〜30秒程度のものである。瞬結性固化液Cとしては、水ガラス系グラウト、可塑性グラウト等を例示することができる。
【0023】
注入口3aは、例えば、直径3mm〜10mm程度の大きさであり、その数は適宜決定され、例えば、外管パッカー11の間、多孔被覆材10が設けられた領域には、それぞれ3個〜8個程度設けられる。
【0024】
多孔被覆材10は、注入口3aよりも面積の小さな貫通孔を多数有し、樹脂や金属等により形成されている。多孔被覆材10の形態としては、樹脂メッシュ、金属メッシュ等の網状体や多孔板を例示できる。多孔被覆材10の厚さは、例えば、0.2mm〜1.0mm程度に設定され、微小な貫通孔を多数有する仕様が好ましい。
【0025】
多孔被覆材10としては、樹脂繊維を編組することにより形成した筒状の編み上げ体を用いることもできる。例えば、線径0.1mm〜0.5mm程度のナイロン樹脂繊維を複数並列して帯状体を形成し、複数の帯状体を所定の編組角度で編み上げて筒状に形成する。
【0026】
この実施形態では、先端を封止した円筒体を外管3として用いて、先端部に形成された注入口3aが多孔被覆材10により覆われている。そして、多孔被覆材10に覆われた領域よりも後端側にある注入口3aを、2つの外管パッカー11が前後(外管軸方向)に挟むように外管3の表面に巻き付けられている。外管3の外径は、例えば、40mm〜50mm程度、周壁の厚さは、2mm〜5mm程度である。
【0027】
内管5Aは、その表面に内管軸方向に離間した2つの膨縮可能なパッカー6aを有し、2つの膨縮可能なパッカー6aの間の周壁には、瞬結性固化液CのC1液を供給する第1吐出口5a、C2液を供給する第2吐出口5bが配置されている。内管5Aの内部は、図6に例示するように2分割されて、C1液が流通する第1固化液流路7aとC2液が流通する第2固化液流路7bの2つの流路が形成された構造になっている。第1吐出口5aおよび第2吐出口5bは、吐出先が互いに近接するように形成されている。
【0028】
また、内管5Aの内部には、パッカー膨張用パイプ8aが内管軸方向に延設され、それぞれのパッカー6aに接続している。パッカー6aは、ゴム等の膨縮可能な中空弾性体で形成され、パッカー膨張用パイプ8aを通じた流体の流入により膨張し、流体の流出によって収縮する。
【0029】
もう一方の内管5Bは、図10、図11に例示するように、その表面に内管軸方向に離間した2つの膨縮可能なパッカー6bを有し、2つの膨縮可能なパッカー6bの間の周壁には、地盤改良薬液Gを供給する第3吐出口5cが配置されている。内管5Bの内部は、地盤改良薬液Gが流通する薬液流路7cになっている。
【0030】
また、内管5Bの内部には、パッカー膨張用パイプ8bが内管軸方向に延設され、それぞれのパッカー6bに接続している。パッカー6bは、ゴム等の膨縮可能な中空弾性体で形成され、パッカー膨張用パイプ8bを通じた流体の流入により膨張し、流体の流出によって収縮する。
【0031】
この実施形態では、先端を封止した円筒体が内管5A、5Bとして用いられている。
地盤を地盤改良薬液Gにより改良して強化する場合には、図1に例示するように、まず、削孔機からケーシングロッド2を下方に延ばして地盤を上下方向に削孔して挿入孔Sを形成する。その後、このケーシングロッド2の内部に緩結性充填材Dを注入する。
【0032】
次いで、図2に例示するように、緩結性充填材Dが注入されているケーシングロッド2に外管3を挿入する。その後、ケーシングロッド2を地盤上に引き抜く。これにより、図3に例示するように、外管3は緩結性充填材Dが注入されている挿入孔Sに挿入された状態になる。
【0033】
或いは、図4に例示するように、挿入孔Sを削孔した後のケーシングロッド2に外管3を挿入し、このケーシングロッド2と外管3とのすき間に緩結性充填材Dを注入する。その後、ケーシングロッド2を地盤上に引き抜く。これにより、図3に例示するように、外管3は緩結性充填材Dが注入されている挿入孔Sに挿入された状態になる。
【0034】
このように本発明では、ケーシングロッド2を地盤上に引き抜く前に、ケーシングロッド2の内部に緩結性充填材Dを注入する。その後、ケーシングロッド2を地盤上に引き抜くことにより、緩結性充填材Dが注入されている挿入孔Sに、外管3を挿入した状態にする。
【0035】
外管3を挿入孔Sに挿入したまま、ケーシングロッド2を円滑に地盤上に引き抜くには、外管3の下方先端に膨張可能なアンカーを設けておくとよい。このような外管3を用いた場合は、アンカーをケーシングロッド2の下方先端から突出させた位置で、ケーシングロッド2の内径よりも大きく膨張させることにより外管3を地盤に固定し、その後、ケーシングロッド2を引き抜く。
【0036】
ここで、地盤が非常に軟弱な場合は、ケーシングロッド2を地盤上に引き抜いた後に、地下水が挿入孔Sに流入すると、挿入孔Sの内周面が崩落し易くなる。そこで、本発明では、地下水を挿入孔Sに流入させないように機能する緩結性充填材Dを挿入孔Sに注入する。これにより、軟弱で崩落し易い砂質地質であっても、挿入孔Sの内周面の崩落発生を抑制することができる。
【0037】
緩結性充填材Dとしては、地盤改良工事を実施する対象地盤に存在する地下水よりも比重が大きい水ガラス系の緩結性固化液を用いる。緩結性充填材Dが液状から固化(ゲル化)するまでの固化時間(ゲル化タイム)は、例えば、1週間から1月程度である。緩結性充填材Dとしては、具体的に、水ガラス系グラウト等を例示できる。
【0038】
後述するように、後工程において挿入孔Sから挿入孔Sの外周の地盤に向かって、瞬結性固化液Cと地盤改良薬液Gを注入する。そのため、ベントナイト等の多数の粘土粒子分を含んだ充填材を使用すると、瞬結性固化液Cおよび地盤改良薬液Gの地盤への注入が充填材によって妨害される。このような問題を回避するため、緩結性充填材Dとして水ガラス系の緩結性固化液を用いる。
【0039】
砂質土の場合は、地下水が挿入孔Sの内部に移動しなければ、挿入孔Sの内周面は崩落しない。そこで、緩結性充填材Dの比重は、その地盤に存在する地下水よりも大きくする。例えば、地盤に存在する地下水が真水であれば、緩結性充填材Dの比重を1.0超にし、地盤に存在する地下水が海水(比重は1.03程度)であれば、緩結性充填材Dの比重を1.03超にする。緩結性充填材Dの比重の上限は、例えば、1.20程度であり、緩結性充填材D比重の範囲は概ね1.01〜1.20となる。
【0040】
緩結性充填材Dが注入されている挿入孔Sに、外管3を挿入した状態にした後は、図5に例示するように、外管3に内管5Aを挿入する。収縮状態の外管パッカー11は、図8に例示するように、挿入孔Sの内周面とすき間を有するように膨張させた状態にする。
【0041】
次いで、膨張させている2つの外管パッカー11の間にある注入口3aの位置に、外管3に挿入している内管5Aの第1吐出口5aおよび第2吐出口5bを合わせるように位置決めする。この位置決めの際には、パッカー6aを収縮状態にしておく。
【0042】
位置決め後は、図9に例示するように、パッカー6aを膨張させて外管3の内周面に圧接させた状態にする。この状態で、C1液を第1吐出口5aから供給し、C2液を第2吐出口5bから供給する。これにより、C1液とC2液とが混合されて瞬結性固化液Cとなる。第1吐出口5aおよび第2吐出口5bは、膨張させている2つのパッカー6aによって挟まれているので、C1液およびC2液が、外管3の内周面と内管5Aの外周面とのすき間に流出することがない。
【0043】
このようにして地盤に注入する直前にC1液とC2液とを混合させた瞬結性固化液Cを、膨張させている2つのパッカー6aの間に位置する注入口3aを通じて地盤に注入する。瞬結性固化液Cを注入する注入口3aは、2つの外管パッカー11によって挟まれているので、瞬結性固化液Cは、この2つの外管パッカー11の間に誘導されて地盤に注入される。
【0044】
瞬結性固化液Cを注入する注入口3aの外周に充填されている緩結性充填材Dは、注入された瞬結性固化液Cによって、地盤の中に押しやられる。水ガラス系の緩結性充填材Dなので粘土粒子分が含まれず、また、この時点で固化していないので、瞬結性固化液Cの地盤への注入を実質的に妨げることがない。
【0045】
ここで、それぞれの外管パッカー11と挿入孔Sの内周面との間に、所定のすき間があいているので、外管パッカー11が挿入孔Sの内周面を圧接することがない。そのため、挿入孔Sの内周面の強度が低い(弱い砂質地盤)等の場合であっても、膨張する外管パッカー11によって挿入孔Sの内周面が崩れることがない。尚、砂質地盤の中でも、膨張した外管パッカー11が接しても挿入孔Sの内周面が崩れるおそれが少ない地盤に対して施工を行なう場合には、外管パッカー11を挿入孔Sの内周面に接するように膨張させることもできる。
【0046】
また、このすき間を通じて瞬結性固化液Cが外管パッカー11の外側にも回り込むので、地盤のより広い範囲に瞬結性固化液Cを注入させることができる。一方で、外管パッカー11を膨張させない場合に比べて、挿入孔Sの内周面と外管3の外周面とのすき間は小さくなるので、外管パッカー11と挿入孔Sの内周面とのすき間(最大でも1.0cm程度)を通じて瞬結性固化液Cが過剰に流出することもない。そのため、瞬結性固化液Cは、地盤に確実に注入されるとともに急速に固化して、この注入口3aの周辺に強固なパッカーPを形成することができる。
【0047】
これにより、挿入孔Sの内周面と外管3の外周面とのすき間を、瞬結性固化液Cにより形成されたパッカーPによって、確実にシールすることができる。特に、図6で例示したように吐出先が近接するように成形された第1吐出口5aおよび第2吐出口5bを採用すると、C1液とC2液とが衝突するように混合されるので、互いを均一に混合させ易くなる。
【0048】
次いで、パッカー6aを収縮状態にして内管5Aを外管3から引き抜いて、図10に例示するように別の内管5Bを外管3に挿入する。そして、多孔被覆材10により覆われている注入口3aの位置に、第3吐出口5cを合わせるように位置決めする。この位置決めの際には、パッカー6bを収縮状態にしておく。
【0049】
位置決め後は、図11に例示するパッカー膨張用パイプ8bを通じて供給した流体によってパッカー6bを膨張させて外管3の内周面に圧接させた状態にする。この状態で、図12に例示するように、地盤改良薬液Gを第3吐出口5cから供給する。第3吐出口5cは、膨張させている2つのパッカー6bによって挟まれているので、地盤改良薬液Gが外管3の内周面と内管5Bの外周面とのすき間に流出することがない。
【0050】
供給された地盤改良薬液Gは、注入口3aを通じて地盤に注入されるが、注入する地盤改良薬液Gが挿入孔Sの内周面と外管3の外周面とのすき間に流出しても、その流出はパッカーPによって阻止される。
【0051】
地盤改良薬液Gを注入する注入口3aの外周に充填されている緩結性充填材Dは、注入された地盤改良薬液Gによって、地盤の中に押しやられる。水ガラス系の緩結性充填材Dなので粘土粒子分が含まれず、また、この時点で固化していないので、地盤改良薬液Gの地盤への注入を実質的に妨げることがない。
【0052】
また、地盤改良薬液Gは地盤に注入される際に、注入口3aを覆う多孔被覆材10を通過する。そのため、注入圧力が大きくても多孔被覆材10によって適度に減圧され、地盤改良薬液Gが注入口3aから外管軸直交方向(水平方向)に単に直進するのではなく、広い範囲に行き渡るようになる。
【0053】
このように、注入圧力を大きくした場合であっても、相対的に地盤の弱い特定領域にのみに、地盤改良薬液Gが地盤を裂くように浸入することがなくなり、図13に例示するように、設定した所定の範囲に安定して地盤改良薬液Gを注入することが可能になる。
【0054】
さらに別の高さ位置で地盤改良薬液Gを地盤に注入する場合には、上記した外管パッカー11および多孔被覆材10を、外管3の別の高さ位置にも設ける。そして、外管3に挿入した内管5A、5Bを、適切な位置に順次移動させて、上記と同様の手順を行なう。
【0055】
緩結性充填材Dは、挿入孔Sの上端まで注入、充填するようにしてもよいが、少なくとも、最も高い位置で瞬結性固化液Cを注入する注入口3aを覆う高さ位置までは、注入する。
【0056】
多孔被覆材10として樹脂繊維からなる筒状の編み上げ体を用いた場合には、それぞれの樹脂繊維のすき間を地盤改良薬液Gが通過して地盤に注入される。この場合には、樹脂繊維が互いに上下に交差するように編まれており、上下に重なる樹脂繊維のすき間にも地盤改良薬液Gが通過するので、注入圧力が均等になり易く、安定して広範囲に地盤改良薬液Gを行き渡らせるにはさらに有利になる。
【0057】
上記実施形態では、瞬結性固化液Cと地盤改良薬液Gとをそれぞれ異なる内管5A、5Bを用いて供給するようにしたが、図14に例示するように、同じ1つの内管5Cによって、瞬結性固化液Cと地盤改良薬液Gとを供給することもできる。この内管5Cは、図6に示した内管5Aに、地盤改良薬液Gと瞬結性固化液Cを切り換えて供給する切り換え手段9を設けたものである。切り換え手段9は地盤上に設置され、切り換え手段9から延びる配管が内管5Cの後端部に接続される。
【0058】
この内管5Cを用いる場合には、瞬結性固化液CによってパッカーPを形成するまでは、切り換え手段9の設定によって、内管5Cに瞬結性固化液C(C1液、C2液)を供給して、上記実施形態と同様の手順を行なう。その後、地盤改良薬液Gを地盤に注入する際には、切り換え手段9の設定を、内管5Cに地盤改良薬液Gを供給するように切り換える。即ち、第1固化液流路7aおよび第2固化液流路7bを薬液流路7cに切り換え、内管5Cを外管軸方向に移動させて所定位置に位置決めする。そして、第1吐出口5aおよび第2吐出口5bを第3吐出口5cとして機能させて地盤改良薬液Gを供給し、多孔被覆材10により覆われた注入口3aから地盤改良薬液Gを地盤に注入する。
【0059】
本発明は、上記実施形態のように、垂直方向に形成した挿入孔Sを用いるだけでなく、斜め方向に傾斜した挿入孔Sや、途中で屈曲して水平方向に形成した挿入孔Sを用いる場合にも適用することができる。構造物が立設している地盤を改良して強化する場合は、挿入孔Sを途中で屈曲させて水平方向に形成する。この場合は、図15に例示するように削孔機1からケーシングロッド2を斜めに延ばして地盤を削孔し、途中で削孔方向を水平に変えて構造物13の下方の地盤に挿入孔Sを形成する。
【0060】
次いで、図16に例示するように挿入孔Sに内接しているケーシングロッド2に、先端にアンカー4を有する外管3を挿入する。このアンカー4は、例えば、ゴム等の中空弾性体で形成する。この実施形態では挿入孔Sが屈曲しているので、可撓性に優れた外管3、内管5A、5Bを用いることが好ましい。
【0061】
次いで、図17に例示するように、ケーシングロッド2の先端から突出させたアンカー4の内部に流体を供給して、ケーシングロッド2の内径よりも大きく膨張させて外管3を地盤に固定する。その後、ケーシングロッド2を地上に引き抜く。これにより、ケーシングロッド2を引き抜いた挿入孔Sの内周面と外管3の外周面との間にすき間が形成される。
【0062】
この実施形態の場合も、ケーシングロッド2の内部に緩結性充填材Dを注入した後、ケーシングロッド2に外管3を挿入し、次いで、ケーシングロッド2を地盤上に引き抜くことにより、緩結性充填材Dが注入されている挿入孔Sに、外管3が挿入された状態にする。或いは、挿入孔Sを削孔した後のケーシングロッド2に外管3を挿入した後、ケーシングロッド2と外管3とのすき間に緩結性充填材Dを注入する。次いで、ケーシングロッド2を地盤上に引き抜くことにより、緩結性充填材Dが注入されている挿入孔Sに、外管3が挿入された状態にする。
【0063】
次いで、先の実施形態と同様に、外管3に内管5Aを挿入して第1吐出口5aおよび第2吐出口5bを所定位置に位置決めして、図18に例示するように、膨張させた外管パッカー11の間に位置する注入口3aから瞬結性固化液Cを地盤に注入して、この注入口3a周辺に瞬結性固化液CからなるパッカーPを形成する。次いで、内管5Aを外管軸方向に移動させて、第1吐出口5aおよび第2吐出口5bを別の所定位置に位置決めして、同様の手順により別の位置にパッカーPを形成する。このようにして、多孔被覆材10により覆われた注入口3aを外管軸方向に挟むようにパッカーPを形成する。
【0064】
次いで、先の実施形態と同様に、内管5Aを外管3から引き抜いて、別の内管5Bを外管3に挿入する。そして、図19に例示するように内管5Bの第3吐出口5cを、多孔被覆材10によって覆われた注入口3aの位置に位置決めして、膨張させているパッカー6bの間にある第3吐出口5cから地盤改良薬液Gを供給して、注入口3aを通じて地盤に注入する。
【0065】
この実施形態においても、先の実施形態と同じ効果を得ることができる。即ち、緩結性充填材Dによって挿入孔Sの内周面が崩落し難くなる一方で、緩結性充填材Dによって、瞬結性固化液Cおよび地盤改良薬液Gの地盤への注入が実質的に妨げられることはない。
【0066】
また、注入圧力を大きくした場合であっても、相対的に地盤の弱い特定領域にのみに、地盤改良薬液Gが地盤を裂くように浸入することがなくなり、地盤の広い範囲に安定して地盤改良薬液Gを注入することが可能になる。そして、図20に例示するように、構造物13の立設する地盤を地盤改良薬液Gにより強化された改良地盤にすることができる。
【0067】
この実施形態においても、同じ1つの内管5Cによって、瞬結性固化液Cと地盤改良薬液Gとを供給することもできる。本発明において、外管3に設ける外管パッカー11、多孔被覆材11の設置箇所の数は特に限定されるものではない。
【0068】
本発明においては、外管パッカー11を、その内部に瞬結性固化液Cを充填することにより、上記の実施形態と同様、挿入孔Sの内周面との間にすき間を有するように膨張させることもできる。この場合は、図21に例示するように、2つの膨張可能な外管パッカー11を設けた位置の外管3の表面に、管内側と管外側とを連通する注入口3b、3cを設ける。換言すれば、注入口3b、3cを形成したそれぞれの位置に膨張可能な外管パッカー11を配置する。そして、これら注入口3b、3cを通じて瞬結性固化液Cを2つの外管パッカー11の内部に充填して膨張させる構成にする。
【0069】
具体的には、地盤に瞬結性固化液Cを注入する注入口3aを挟んで管軸方向前後に注入口3b、3cを配置し、注入口3aには逆止弁12を設ける。逆止弁12は、例えば、注入口3aを覆うようにゴム等の弾性体からなるベルト状体を外管3の表面に巻き付けて形成する。この逆止弁12は、2つのベルト状体を注入口3a上の位置で突き合わせている。
【0070】
そして、外管パッカー11を膨張させる際には、図22に例示するように、外管パッカー11、11が設けられた範囲に、外管3に挿入している内管5Aの2つの膨張可能なパッカー6aの間の範囲が重複するようにして、第1吐出口5aおよび第2吐出口5bを合わせるように位置決めする。位置決め後は、それぞれのパッカー6aを膨張させて外管3の内周面に圧接させた状態にして、C1液を第1吐出口5aから供給し、C2液を第2吐出口5bから供給する。
【0071】
これによりC1液とC2液とが混合された瞬結性固化液Cが、注入口3b、3cを通じて外管パッカー11の内部に進入する。この進入した瞬結性固化液Cが外管パッカー11の内部に充填することにより、外管パッカー11が挿入孔Sの内周面との間に所定のすき間を有して膨張した状態になる。
【0072】
これとともに、図23に例示するように、内管5Aを通じて供給された瞬結性固化液Cは、注入口3aを通じて逆止弁12の突合せ面から漏れ出るように押出されて地盤に注入される。瞬結性固化液Cを注入する注入口3aは、2つの膨張させている外管パッカー11によって挟まれているので、瞬結性固化液Cは、この2つの外管パッカー11の間に誘導されて地盤に注入される。
【0073】
また、それぞれの外管パッカー11と挿入孔Sの内周面との間に、所定のすき間(例えば、1.0cm以下)があいているので、挿入孔Sの内周面の強度が低い(弱い砂質地盤)等の場合であっても、膨張する外管パッカー11によって挿入孔Sの内周面が崩れることがない。そして、このすき間を通じて瞬結性固化液Cが外管パッカー11の外側にも回り込んで、地盤のより広い範囲に瞬結性固化液Cを注入させることができる。
【0074】
そのため、瞬結性固化液Cは、地盤に確実に注入されるとともに急速に固化して、この注入口3aの周辺に強固なパッカーPを形成する。これにより、挿入孔Sの内周面と外管3の外周面とのすき間を、瞬結性固化液Cにより形成されたパッカーPによって、確実にシールすることができる。
【0075】
ここで、注入口3aから瞬結性固化液Cが地盤に供給される前に、確実に外管パッカー11に瞬結性固化液Cを充填して膨張させるために、注入口3aを通じてよりも、それぞれの注入口3b、3cを通じて瞬結性固化液Cを外部に供給し易い構造にする。そこで、例えば、地盤に瞬結性固化液Cを供給する注入口3aの面積(複数の注入口3aの場合は、それらを合算した総面積)を、外管パッカー11に瞬結性固化液Cを供給するそれぞれの注入口3b、3cの面積(複数の注入口3b、3cの場合は、それぞれ、それらを合算した総面積)よりも小さくする。または、逆止弁12の剛性を高めてより弾性変形しにくくする。或いは、それぞれの注入口3b、3cの面積を注入口3aの面積よりも大きくするとともに、逆止弁12の剛性を高めてより弾性変形しにくくして、注入口3aよりも注入口3b、3cを通じて瞬結性固化液Cを外部に供給し易い構造にする。
【0076】
尚、逆止弁12は、その仕様(剛性等)を変更することにより、外管パッカー11の膨張具合を調整できるので、既述したように、すき間調整手段として機能させることができる。
【0077】
また、注入口3b、3cのうち、瞬結性固化液Cの供給源から遠い位置にある外管3の先端側の注入口3cの方が瞬結性固化液Cを外部に供給しにくくなる。外管3が上下に延びている場合は、瞬結性固化液Cの供給源から遠い位置にある下方側の注入口3cの方が、上方側にある注入口3bに比して瞬結性固化液Cを外部に供給しにくくなる。
【0078】
そこで、例えば、注入口3cの面積(複数の注入口3cの場合は、それらを合算した総面積)を注入口3bの面積(複数の注入口3bの場合は、それらを合算した総面積)よりも大きくする。
【0079】
このように瞬結性固化液Cによって外管パッカー11を膨張させる構造にすると、外管パッカー11を膨張させる流体を流通させるためのパイプを特別に設ける必要がなくなる。瞬結性固化液Cによって外管パッカー11を膨張させる方法、構造は、既述した同じ1つの内管5Cによって瞬結性固化液Cと地盤改良薬液Gとを供給する実施形態に用いることもできる。
【0080】
瞬結性固化液Cや地盤改良薬液Gの供給速度(即ち、吐出速度)、ゲル化時間(固化するのに要する時間)は、施工現場の地盤の地質等の条件によって適宜設定する。例えば、瞬結性固化液Cのゲル化時間tcと、瞬結性固化液Cの供給速度と相関関係がある瞬結性固化液Cを充填する時間(充填時間t)とに注目すると以下のようになる。尚、瞬結性固化液Cの固化は流動しなくなった直後から始まる。
【0081】
瞬結性固化液Cを外管パッカー11に充填し始めると、外管パッカー11が膨張を開始するとともに、注入口3aを通じて逆止弁12の突合せ面から瞬結性固化液Cが地盤に注入され始める。充填時間tがゲル化時間tc以上の場合は、瞬結性固化液Cが外管パッカー11の内部で固化するため、外管パッカー11が膨張した状態が維持される。
【0082】
そして、外管3の外周面と挿入孔Sの内周面との間には、この膨張状態を維持した外管パッカー11と、膨張した外管パッカー11の周辺に供給された瞬結性固化液Cおよび地盤に注入された瞬結性固化液CとによりパッカーPが形成される。
【0083】
一方、充填時間tがゲル化時間tcよりも短い場合は、外管パッカー11の内部の瞬結性固化液Cが固化していないため、瞬結性固化液Cが膨張した外管パッカー11の周辺および地盤に注入された後、外管パッカー11が収縮する。そして、外管3の外周面と挿入孔Sの内周面との間には、外管パッカー11の周辺に供給された瞬結性固化液Cおよび地盤に注入された瞬結性固化液CとによりパッカーPが形成される。
【0084】
このように、ゲル化時間tcと充填時間tの大小関係に関わらず、確実に瞬結性固化液CによるパッカーPを形成することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 削孔機
2 ケーシングロッド
3 外管
3a、3b、3c 注入口
4 アンカー
5A、5B、5C 内管
5a 第1吐出口
5b 第2吐出口
5c 第3吐出口
6a、6b 膨縮可能なパッカー
7a 第1固化液流路
7b 第2固化液流路
7c 薬液流路
8a、8b パッカー膨張用パイプ
9 切り換え手段
10 多孔被覆材
11 外管パッカー
12 逆止弁
13 構造物
S 挿入孔
G 地盤改良薬液
P パッカー
C 瞬結性固化液
D 緩結性充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に削孔した挿入孔に、軸方向に離間して複数の注入口を周壁に設けた外管を挿入し、次いで、外管に内管を所定位置まで挿入し、この内管の表面に軸方向に離間して設けた2つの膨縮可能なパッカーを膨張させて外管の内周面に圧接させた状態にして、この2つの膨張させているパッカーの間に位置する内管の周壁に設けた吐出口から地盤改良薬液を供給して、外管の注入口から地盤に注入する地盤改良薬液の注入方法であって、前記外管の表面に少なくとも1つの注入口を挟んで軸方向に離間して2つの膨張可能な外管パッカーを設けるとともに、この外管パッカーを設けた位置とは別の位置にある注入口を多孔被覆材により覆っておき、その地盤に存在する地下水よりも大きな比重を有する水ガラス系の緩結性充填材が注入されている前記挿入孔に、前記外管を挿入した状態にして、収縮状態の前記外管パッカーを膨張させて、この膨張させた外管パッカーの間に位置する注入口から瞬結性固化液を地盤に注入して、この注入口周辺に瞬結性固化液からなるパッカーを形成し、次いで、前記多孔被覆材により覆われた注入口から地盤改良薬液を地盤に注入する地盤改良薬液の注入方法。
【請求項2】
前記挿入孔を削孔した後のケーシングロッドの内部に前記緩結性充填材を注入し、このケーシングロッドに前記外管を挿入した後、ケーシングロッドを地盤上に引き抜くことにより、前記緩結性充填材が注入されている挿入孔に外管を挿入した状態にする請求項1に記載の地盤改良薬液の注入方法。
【請求項3】
前記挿入孔を削孔した後のケーシングロッドに前記外管を挿入し、このケーシングロッドと外管とのすき間に前記緩結性充填材を注入した後、ケーシングロッドを地盤上に引き抜くことにより、前記緩結性充填材が注入されている挿入孔に外管を挿入した状態にする請求項1に記載の地盤改良薬液の注入方法。
【請求項4】
前記内管とは別の内管を外管に挿入し、この別の内管の表面に軸方向に離間して設けた2つの膨縮可能なパッカーを膨張させて外管の内周面に圧接させた状態にして、この2つの膨張させているパッカーの間に位置する内管の周壁に設けた吐出口から前記瞬結性固化液を供給することにより、前記膨張させた外管パッカーの間に位置する注入口から地盤に注入して、前記瞬結性固化液からなるパッカーを形成した後、この内管を引き抜いて、前記地盤改良薬液を供給する内管を外管に挿入する請求項1〜3のいずれかに記載の地盤改良薬液の注入方法。
【請求項5】
前記内管の表面に軸方向に離間して設けた2つの膨縮可能なパッカーを膨張させて外管の内周面に圧接させた状態にして、この2つの膨張させているパッカーの間に位置する内管の周壁に設けた吐出口から前記瞬結性固化液を供給することにより、前記膨張させた外管パッカーの間に位置する注入口から地盤に注入して、前記瞬結性固化液からなるパッカーを形成した後、この内管により地盤改良薬液を供給する請求項1〜3のいずれかに記載の地盤改良薬液の注入方法。
【請求項6】
前記2つの膨張させているパッカーの間に位置する内管の周壁に設けた吐出口から瞬結性固化液を供給した際に、この供給した瞬結性固化液を前記外管パッカーの内部に充填することにより、外管パッカーを挿入孔の内周面とすき間を有するように膨張させるとともに、この膨張させた外管パッカーの間に位置する注入口から瞬結性固化液を地盤に注入する請求項4または5に記載の地盤改良薬液の注入方法。
【請求項7】
前記挿入孔を途中で向きを変えて水平方向に形成した請求項1〜6のいずれかに記載の地盤改良薬液の注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−32831(P2011−32831A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182868(P2009−182868)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【Fターム(参考)】