説明

地絡検出方法

【課題】より簡便に、間欠地絡が発生しているフィーダ線を特定可能な地絡検出方法を提供する。
【解決手段】母線1に複数のフィーダ線2,3,4が接続されると共に、各フィーダ線2,3,4に対し零相変流器ZCTが設けられた配電系統での地絡検出方法であって、上記零相変流器ZCTの2次側端子電圧を測定し、その測定した端子電圧に基づき地絡が発生しているフィーダ線2を検出する。また、上記零相変流器ZCTの2次側電流で作動する継電器DGを有し、上記継電器DGが非作動状態の場合に、上記2次側端子電圧に基づき地絡の発生しているフィーダ線の検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のフィーダ線から地絡が発生したフィーダ線を検出する地絡検出の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
給電の配電系統では、1つの母線に対し複数のフィーダ線が分岐接続すると共に、配電系統を保護するための保護回路が組み込まれている。その保護回路は、地絡の発生を検出すると、地絡を検出したフィーダ線の交流遮断器CBを遮断状態に変更して配電系統を保護する。
上記保護回路は、母線電圧から地絡故障による零相電圧の上昇を検出する地絡過電圧継電器(0VG)と、各フィーダ線に設けられた零相変流器(ZCT)と、零相変流器からの電流に基づき地絡故障による各フィーダ線零相電流の方向から地絡したフィーダ線(以下地絡フィーダとも呼ぶ)を特定する地絡方向継電器(DG)と、を備える。
【0003】
上記地絡が発生したフィーダ線を特定して配電系統を保護する方法としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。この従来技術では、地絡過電圧継電器が地絡故障による零相電圧上昇を検出し、更に、地絡方向継電器の検出に基づき地絡故障による各フィーダ線零相電流の方向から地絡したフィーダ線を検出するという、2つの条件のアンド条件によって地絡フィーダを特定し、特定した地絡フィーダを遮断することで、配電系統を保護する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−70448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような給電の配電系統においては、完全地絡に陥る前段階の微小な間欠地絡の状態では、零相電圧上昇を地絡過電圧継電器(0VG)が検出しても、各地絡方向継電器(DG)が動作しない場合が多い。このような場合、「どのフィーダ線が地絡しているのか」は特定できない。
現状では、この微小な間欠地絡が発生しているフィーダ線を特定する場合には、完全地絡が発生する前に各フィーダ線を一時的に停電させて各フィーダ線の精密調査を実行する必要があった。または、完全地絡に達するまで待ち、DG動作(=遮断器トリップ)を侍って地絡点を確認していた。
【0006】
しかしこのような方法では、健全設備の長時間停電を招いたり、遮断器トリップによって設備が突然停電することで設備破損を引き起こすおそれがあったりするなどの問題があった。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、より簡便に、間欠地絡が発生しているフィーダ線を特定可能な地絡検出技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、母線に複数のフィーダ線が接続されると共に、各フィーダ線に対し零相変流器が設けられた配電系統での地絡検出方法であって、上記零相変流器の2次側端子電圧を測定し、その測定した端子電圧に基づき地絡が発生しているフィーダ線を検出することを特徴とする。
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記零相変流器の2次側電流で作動する継電器を有し、母線の零相電圧から地絡発生を判定し、各零相変流器で検出される零相電流による継電器の作動で地絡が発生しているフィーダ線を検出する地絡検出方法において、
上記継電器が非作動状態の場合に、上記端子電圧に基づき地絡の発生しているフィーダ線の検出を行うことを特徴とする。
【0008】
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記零相変流器の2次側電流が入力される継電器を有し、
上記零相変流器の2次側端子電圧の測定は、上記継電器のインピーダンスを利用して検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地絡過電圧継電器と地絡方向継電器の両方の条件を満足することで配電線路の地絡故障除去を行う配電系統であっても、地絡方向継電器が動作に至らない微小な地絡故障が発生したフィーダ線を、簡便に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る配電系統の一例を示す図である。
【図2】地絡発生時の電流の流れを説明する図である。
【図3】人工的に特定のフィーダ線で地絡を起こした場合の電圧の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の配電系統の一例を示す図である。
この実施形態の配電系統は、図1に示すように、一つの母線1に対して3つのフィーダ線2,3,4が分岐していると共に、当該母線1に接地変圧器GPTが接続されている場合の例である。
各フィーダ線2,3,4にはそれぞれ、交流遮断器CBと零相変流器ZCTとが直列に設けられている。符号DGは地絡方向継電器である。
交流遮断器CBは、対応するフィーダ線2,3,4を母線1から切り離す遮断機能を有する。
【0012】
零相変流器ZCTは、一次側巻線を三相導体としたもので、常時あるいは短絡故障時には各相電流のベクトル和はゼロであるので、2次側に電流は流れない。一方、いずれかのフィーダ線2で地絡が発生すると、各零相変流器ZCTの一次側には保護責務区間以外の場所で発生した地絡故障時にも設置箇所より負荷側の対地静電容量を通じて地絡電流の分流分が流れる。このとき、地絡が発生したフィーダ線2(地絡フィーダ)では、地絡電流はケーブルの対地静電容量を介して環流し、他のフィーダ線3,4の対地充電電流と合わせて図2のような電流の流れが一時的に形成される。このため、各フィーダの零相変流器の2次側に流れる中性点電流(零相電流)は、地絡フィーダ2とそれ以外のフィーダ線3,4とで流れる方向が逆になる。なお、図2の例は非接地系の場合であるが、接地系では地絡電流が接地点から帰る回路となる。
【0013】
接地変圧器GPTは、配電変電所等に設けられて、結線は3次のオープンデルタの発生電圧(零相電圧)にて地絡過電圧継電器(0VG)を動作させる。なお、3次に制限抵抗を入れて中性点を安定させて対地静電容量の無い状態での完全地絡電流を決定する。本実施形態では、地絡過電圧継電器(0VG)として接地形計器用変圧器6(零相電圧計)で零相電圧を検出する。地絡過電圧継電器(0VG)を使用しても問題はない。
地絡方向継電器DGは、零相変流器ZCTの2次電流である零相電流と、接地形計器用変圧器6が検出する零相電圧の位相関係から地絡を有無を検出し、地絡検出の場合には対応する交流遮断器CBを作動して地絡フィーダを選択遮断する。
【0014】
更に、本実施形態では、地絡検出用の電圧測定オシロスコープ5を備える。なお、オシロスコープ5のサンプリング周波数は、例えば10kHz程度とする。オシロスコープ5のサンプリング周波数は、地絡方向継電器DGのサンプリング周波数よりも高く設定することが好ましい。
オシロスコープ5は、接地形計器用変圧器6が検出する零相電圧を入力すると共に、各零相変流器ZCTの2次側に並列に接続して各零相変流器ZCTの2次側に流れる零相電流に応じた2次側端子電圧を検出する。そして、上記零相電圧及び各零相変流器ZCTの2次側端子電圧を、時系列で画面に表示すると共に、その時系列データを記録装置に記憶する。
【0015】
そして、上記オシロスコープ5が出力する表示画面及び記録装置の記録に基づき、零相電圧が相対的に急峻していることを検出すると、地絡発生と判定し、更に、その地絡検出時の各2次側端子電圧のピークの向きを比較して、位相が他の2次側端子電圧と逆相に立ち上がっている2次側端子電圧に対応するフィーダ線2を地絡フィーダとして特定する。そして、地絡フィーダと特定したフィーダ線2の交流遮断器CBを遮断する。
このとき、地絡方向継電器DGが動作して地絡フィーダと特定したフィーダ線2の交流遮断器CBを遮断した場合には、上記零相電圧及び各零相変流器ZCTの2次側端子電圧によって地絡フィーダの判定をする必要はない。
【0016】
(作用その他)
本実施形態では、配電系統の零相電圧(母線10VG)が検出されたが、フィーダ線2,3,4の零相電流によって地絡方向継電器DGが作動しない状態で、各フィーダ線2,3,4の零相変流器ZCTの2次側端子電圧を測定する。零相変流器ZCTにより検出される零相電流は方向を持っており、地絡フィーダと非地絡フィーダとでは零相電流の方向が反対となる。このとき零相電流により零相変流器ZCTの2次側端子に誘起される電圧の方向も、地絡/非地絡フィーダで反対となるため、この端子の電圧を測定することで、地絡発生しているフィーダ線2,3,4を特定することが出来る。
ここで、上記零相変流器ZCTの2次側端子に誘起される電圧は、零相変流器ZCTの2次側に流れる零相電流と地絡方向継電器DGが持つインピーダンスにより誘起される。
【0017】
また、図1において、地絡点Fに流れる地絡電流Ifは、地絡点を含む線路から流れこむ地絡電流Inと、他の線路から流れ込む地絡電流lcの和となる。そのため各線路に取り付けられたZCTにより検出される零相電流は、地絡線路と非地絡線路では方向が逆になる。
ここで、零相変流器ZCTで検出する零相電流は、ラジオノイズなどで変動している。このため、より精度良く零相電流を検出して微小な間欠地絡の発生を検出することを考えると、零相変流器ZCTの2次側に直列に別途抵抗を割り込まして電流センサで測定する必要がある。しかしこの場合には、割り込ました抵抗のインピーダンスによって零相電流の感度が低下してしまう。また、一旦離線して割り込ませる必要があるため、対応する保護責務区間を一旦停電させる必要がある。
【0018】
これに対し、本実施形態では、2次側端子に誘起される電圧を測定するため、離線の必要が無く、2次側端子に対して並列に接続されることから零相電流の低下を招く事がない。すなわち、本実施形態では、測定する電圧値を精度良く且つ簡便に検出することが可能となる。つまり、電圧要素で検出することにより改造の手間を省略し、零相電流の方向のみを精度良く検出することが出来る。
【0019】
ここで、地絡フィーダを検出するため、地絡方向継電器DGが動作するよりも細かい精度で各フィーダ線2,3,4零相電流の方向を検出する必要がある。このため、本実施形態では、地絡方向継電器DGが動作しない微小な間欠地絡を検出するため、サンプリング周波数10kHz程度のオシロスコープ5を用いる。測定端子はZCT2次側に取り付けるが、安全のためDG継電器近傍で測定することが望ましい。
【0020】
以上のように、本実施形態の地絡検出方法では、設備の停電が必要なく、また高圧充電部に接近する必要も無いため、安全に、しかも地絡による零相電圧が出た瞬間にすばやく地絡フィーダを判別することが可能である。このため、従来発生していた「健全設備停電させての調査作業、および設備停電に伴う損失」、「地絡トリップ故障による設備・機会損失」を避けることが出来るほか、故障点を早期に発見することにより設備劣化を最小限にとどめることが可能である。
【0021】
ここで、上記実施形態では、母線1の零相電圧から地絡発生を検出した場合に、零相変流器ZCTの2次側端子に誘起される電圧の方向が逆になっている零相変流器ZCTに対応するフィーダ線2を地絡フィーダと判定する場合を例示した。図3から分かるように、地絡フィーダの2次側端子に誘起される電圧は、他の地絡フィーダの2次側端子に誘起される電圧よりも大きいので、その2次側端子に誘起される電圧が一番大きなフィーダ線2(若しくは前後の電圧値に対する比が一番大きなフィーダ線2)を地絡フィーダと判定しても良い。
【0022】
また、上記実施形態では、オシロスコープ5で零相電圧及び各2次端子電圧を検出し比較することで地絡フィーダの検出を行う場合を例示しているが、これに限定されない。各電圧の時系列データに基づき、地絡フィーダの検出を自動判定するようにしても良い。
例えば、検出した零相電圧及び各2次端子電圧を予め設定してサンプリング周期で取得して記憶しつつ、検出した零相電圧が予め設定した地絡検出電圧以上となっていることを検出すると、その地絡検出電圧以上となったときの当該零相電圧の立上り時刻前後で検出した、各2次端子電圧のピーク電圧を取得し、その2次端子電圧のピーク電圧の向き若しくは大きさに基づき、他の2次端子電圧とは逆相若しくは大きさが異なる電圧値の2次端子電圧に対応するフィーダを地絡フィーダと判定し、その地絡フィーダの交流遮断器CBに遮断動作信号を出力する。
【符号の説明】
【0023】
1 母線
2、3,4 フィーダ線
2 地絡フィーダ
5 オシロスコープ
6 接地形計器用変圧器
CB 交流遮断器
DG 地絡方向継電器
GPT 接地変圧器
ZCT 零相変流器
If 地絡電流
In 地絡電流
lc 地絡電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母線に複数のフィーダ線が接続されると共に、各フィーダ線に対し零相変流器が設けられた配電系統での地絡検出方法であって、
上記零相変流器の2次側端子電圧を測定し、その測定した端子電圧に基づき地絡が発生しているフィーダ線を検出することを特徴とする地絡検出方法。
【請求項2】
上記零相変流器の2次側電流で作動する継電器を有し、母線の零相電圧から地絡発生を判定し、各零相変流器で検出される零相電流による継電器の作動で地絡が発生しているフィーダ線を検出する地絡検出方法において、
上記継電器が非作動状態の場合に、上記端子電圧に基づき地絡の発生しているフィーダ線の検出を行うことを特徴とする請求項1に記載した地絡検出方法。
【請求項3】
上記零相変流器の2次側電流が入力される継電器を有し、
上記零相変流器の2次側端子電圧の測定は、上記継電器のインピーダンスを利用して検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した地絡検出方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−113632(P2013−113632A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258069(P2011−258069)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】