説明

均一な不織材料及びラミネート並びにそれらのための方法

本発明は、1.2以下、望ましくは約1.0以下のMD:CD引張比として測定されるような、材料形成における高い均一性、並びに繊維方向性及び材料特性のMD対CDバランスを有する連続繊維不織ウェブと、該不織ウェブのラミネートを提供する。本発明はまた、不織ウェブを形成する方法を含むが、この方法では、繊維製造装置が、MD方向に対して90度より小さい角度をなすように配向されており、繊維は、繊維製造装置の中央線に対して、約10〜約80度である角度Bをなすように配向された偏向器によって偏向される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質かつ極めて均一な不織ウェブを形成する方法、及びこのような方法によって製造される不織ウェブ又は不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
今日使用されている多くの医療用ケア衣類及び製品、保護着衣類、埋葬及び獣医用製品、並びに個人用ケア製品は、部分的又は全体的に不織ウェブ材料で構成されている。こうした製品の例としては、手術用ドレープ、手術着及び包帯のような医療用及び健康ケア製品、カバーオール及び白衣のような保護用作業衣類、並びにおむつ、トレーニングパンツ、水着、失禁衣類及び失禁パッド、衛生ナプキン、拭取材のような幼児、子供及び成人の個人用ケア吸収性製品などが挙げられるが、これらに限定されない。こうした用途において、不織繊維性ウェブは、従来の織物又は編物生地材料の特性に匹敵し得るような、感触の良い、快適で審美的な特性を与える。不織ウェブ材料はまた、メッシュ全体にわたる圧力降下が低いままであると同時に、粒子状物質を捕捉するのに適した小さい平均孔径をもつ微細繊維のフィルターメッシュに形成できるので、液体と気体又は空気との両方のろ過用途のためのろ過媒体として広く利用される。
不織ウェブ材料は、編布又は織布におけるような規則的で識別可能な様式ではなく、むしろ、ほぼランダムな様式で互いに重なり合わされた個々の繊維又はフィラメントの物理的構造を有する。繊維は、連続又は不連続とすることができ、一般的な分類のポリオレフィン、ポリエステル及びポリアミドからの熱可塑性ポリマー又はコポリマー樹脂、並びに多数の他のポリマーから製造されることが多い。ポリマー又はコンジュゲート多成分繊維のブレンドも使用できる。スパンボンド及びメルトブローのような溶融押出成形方法によって形成される不織繊維性ウェブ、及びステープル繊維のカーディング又は空気堆積のような乾燥堆積方法によって形成される不織繊維性ウェブは、当該技術分野において周知である。さらに、不織布は、スパンボンド/メルトブロー(SM)及びスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)ラミネート布地におけるような他の不織層と共に複合材料において使用することができ、さらに熱可塑性フィルムと組み合わせても使用することができる。不織布はまた、最終用途に応じて、種々の所望特性を付与するために、結合され、エンボス加工され、処理され、及び/又は色付けされてもよい。
【0003】
スパンボンド繊維のような連続フィラメントヤーン及び連続フィラメントを紡糸するための、並びにメルトブロー繊維のような超極細繊維を紡糸するための溶融押出成形方法と、それらから不織ウェブ又は不織布を形成するための関連方法は、当該技術分野において周知である。通常、スパンボンド不織ウェブのような連続繊維不織ウェブは、機械横方向、すなわち「CD」に配向された、紡糸口金のような繊維押出成形装置と、繊維引き延ばし装置(FDU)のような繊維を細くする装置とを用いて形成される。すなわち、この装置はウェブの製造方向に対して90度の角度をなすように配向されている。不織ウェブの製造方向は、「縦方向」、すなわち「MD」として知られている。また、超極細繊維を紡糸し、メルトブローウェブのような超極細繊維ウェブを製造するための、当該技術分野において既知の溶融押出成形方法は、超極細繊維押出成形装置が一般にウェブの製造方向に対して90度の角度をなすように配向される。繊維は形成面に対して全体としてランダムな様式で堆積されるが、依然として、繊維は一般にCD配向された紡糸口金及びFDUを実質的にMDと平行な方向に出て行くので、得られた不織ウェブは、多くの繊維がCDよりもMDに配向される全体的の平均繊維方向性を有する。例えば、材料引張強度及びウェブ伸長性のような特性は、繊維配向に強く影響される。例えば、スパンボンド不織ウェブのような連続繊維不織ウェブに関して典型的なMD:CD引張強度比は、一般に、1.5:1より大きく、通常は2:1又はさらにそれ以上である。そのため、材料の特性がMD及びCD材料方向に関してバランスのとれた不織ウェブを製造するのが困難であった。
従って、これまでに知られているものよりも材料特性のバランスが改善され、全体の均一性がより高い不織ウェブを提供する製造方法が必要とされ続けている。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、材料形成における全体としての均一性が高く、繊維方向性のMD対CDバランス、並びに材料特性のMD対CDバランスをもつ不織ウェブを提供する。本発明の1つの態様では、不織ウェブは、MD:CD引張比によって測定されたとき、1.2以下、望ましくは約1.0以下の繊維方向性及び材料特性についてのMD対CDバランスを有する。本発明の別の態様では、最終用途によって、MDよりもCDにおける繊維方向性(故に、引張強度)がより大きい不織ウェブが望ましい場合には、不織ウェブは、望ましくは1.0未満のMD:CD引張比、より望ましくは0.9未満のMD:CD引張比を有する。本発明はまた、その均一不織ウェブが、例えば障壁材料層のような1以上の追加層に積層された不織ラミネート材料も提供する。ウェブは、オレフィンポリマーを含むことが望ましく、また添加剤処理を含むことが望ましい場合もある。
本発明はまた、極めて均一な特性バランスのとれた不織ウェブを形成する方法を提供するが、ここで連続繊維の供給源、すなわち押出成形及び/又は引き延ばし装置のような繊維製造装置は、ウェブの製造方向、すなわちMD方向に対して約90度より小さい角度A(又は−A)をなすように配向され、形成面に堆積される前の繊維が、繊維製造装置の中央線に対して約10〜約80度の角度Bをなすように配向された偏向器によって偏向され、そして繊維は可動面に集積されてウェブを形成する。望ましくは、Aは約30〜約60度であり、約45度であってもよい。偏向器は、例えば偏向装置のセグメント又は「歯」が角度Bをなすように配向されたセグメント化された又は「歯のある」偏向装置のような物理的偏向装置とすることができる。偏向器がセグメント化又は「歯付きの」機械的偏向器である場合、装置のセグメント又は歯は繊維流中に位置する。望ましくは、Bは約30〜約60度とすることができる。さらに、繊維は不織ウェブに形成される前に帯電されるのが望ましい。
さらに、連続繊維の第1及び第2供給源を、共にMD方向に対して、第1の供給源が角度Aをなし、約−Aをなすように配向して設け、繊維を、Bが約10〜約80度であるとして、第1の供給源に対して角度Bをなすように配向された、第1の偏向量及び第2の供給源に対して−Bをなすように配向された第2偏向器で偏向させ、第1及び第2繊維供給源から繊維を移動形成面上に集積して多層不織ウェブを形成するステップを含む多層不織ウェブを製造する方法が提供される。
【0005】
定義
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる「含む」という用語は、包括的又は制限のないものであり、列挙されていない追加要素、組成成分又は方法段階を排除しない。
本明細書に用いられる「ポリマー」という用語には、一般に、ホモポリマー、コポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダム及び交互コポリマー、ターポリマーなど、並びにそれらのブレンド及び修飾物が含まれるが、これらに限定されない。さらに、特に具体的に断らない限り、この「ポリマー」という用語は、材料の可能な空間構成を全て含む。これらの構成には、イソタクチック、シンジオタクチック、及びランダム対称が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書に用いられる「繊維」という用語は、特に断らない限り、ステープル長の繊維及び連続繊維の両方を指す。
本明細書に用いられる「一成分」繊維という用語は、ただ1つのポリマーを用いて1以上の押出成形機から形成された繊維を指す。これは、着色、静電気防止特性、光沢、親水性などのために少量の添加剤が添加された1つのポリマーから形成された繊維を排除することを意味しない。このような添加剤、例えば着色のための二酸化チタンは、一般に、5重量%未満、より典型的には約2重量%の量で存在する。
本明細書に用いられる「多成分繊維」という用語は、別々の押出成形機から押出成形されるが、共に紡糸されて1つの繊維を形成する、少なくとも2成分のポリマー又は異なる特性若しくは添加剤を有する同一ポリマーから形成された繊維のことを指す。多成分繊維はまた、コンジュゲート繊維又は2成分繊維と称される場合がある。ポリマーは、多成分繊維の断面にわたって実質的に一定に位置された個別の区域に配置され、多成分繊維の長さに沿って連続的に延びる。このような多成分繊維の構成は、例えば一方のポリマーが他方のポリマーを囲む鞘/芯配置であってもよく、或いは並列配置、「海中の島々」配置であってもよく、或いはパイ−くさび形状として、又は丸い、楕円、又は長方形の断面を有する繊維における縞として配置されてもよい。多成分繊維は、Kanekoらの米国特許第5,108,820号、Strackらの米国特許第5,336,552号、及びPikeらの米国特許第5,382,400号に教示されている。2成分繊維に関して、ポリマーは75/25、50/50、25/75の比又はこれ以外の所望の比のいずれで存在してもよい。
本明細書で用いられる「不織ウェブ」又は「不織材料」という用語は、互いに重なり合わされているが、編布又は織布のような識別可能な様式ではない個々の繊維又はフィラメントの構造を有するウェブを意味する。不織ウェブは、例えばメルトブロー法、スパンボンド法、空気堆積方法及びカーデッドウェブ方法のような多くの製法により形成されている。不織布の坪量は、普通は1平方メートルあたりのグラム(gsm)又は1平方ヤードあたりの材料のオンス(osy)で表わされ、有用な繊維直径は、普通、ミクロンで表される。(osyからgsmに変換するためにはosyに33.91を掛けることに留意されたい。)
【0006】
「スパンボンド」又は「スパンボンド不織ウェブ」という用語は、紡糸口金の複数の毛細管から溶融熱可塑性ポリマーを繊維として押出成形することによって形成される小直径繊維の不織繊維又はフィラメント材料のことを指す。押出成形された繊維は、冷却されると同時に引き出し機構又は他の周知の引き延ばし機構によって引き延ばされる。引き延ばされた繊維は、一般にランダムな様式で形成面に堆積又は載置されて、緩く交絡した繊維ウェブを形成し、次いで堆積繊維ウェブを結合プロセスに供し、物理的な一体性及び寸法安定性を付与する。スパンボンド布地の製造は、例えばAppelらの米国特許第4,340,563号及びMatsukiらの米国特許第3,802,817号に開示されている。通常、スパンボンド繊維又はフィラメントは、2デニールを超え、約6デニールまで、又はそれ以上の単位長さあたりの重さを有するが、より細いスパンボンド繊維を製造することもできる。繊維直径に関して、スパンボンド繊維は、一般に7ミクロンを超える、より詳細には約10〜約25ミクロンの平均直径を有する。
本明細書に用いられる「メルトブロー繊維」という用語は、複数の微細な、普通は円形のダイ毛細管を通して溶融熱可塑性材料を溶融糸又は繊維として、収束する高速気体(例えば空気)流の中に押し出して、溶融熱可塑性材料の繊維を細くしてそれらの直径を低下させることによって形成される繊維又は超極細繊維を意味する。その後、メルトブロー繊維は、高速気体流によって運ばれ、集積面に堆積され、ランダムに分散したメルトブロー繊維のウェブを形成する。このような方法は、例えばBuntinの米国特許第3,849,241号に開示されている。メルトブロー繊維は、連続又は不連続とすることができ、一般に平均直径が10ミクロンより小さく、多くの場合平均直径は7、さらには5ミクロンより小さく、集積面に堆積するときは一般に粘着性である。
【0007】
「ステープル繊維」という用語は、通常スパンボンド繊維と同様の平均直径を有する不連続な繊維のことを指す。ステープル繊維は、従来の繊維紡糸法を用いて製造することができ、次いでステープル長、通常は約1インチ〜約8インチに切断される。このようなステープル繊維は、その後カーディング処理又は空気堆積され、熱結合又は接着剤結合されて不織布を形成する。
本明細書に用いられる「熱点結合」は、結合されるべき布地又は繊維ウェブ或いはその他のシート層材料を、加熱されたカレンダロールとアンビルロールとの間に通すことを含む。カレンダロールは普通、必須ではないが、布地全体がその表面全体にわたって結合しないようにパターン付けされる。結果として、カレンダロールにおける種々のパターンが機能並びに審美的理由で開発されている。パターンの一例は点であり、ハンセン・アンド・ペニングスの米国特許第3,855,046号に教示されるような、約30%が約200結合/平方インチの結合域であるハンセン・ペニングス、すなわち「H&P」パターンである。H&Pパターンは、正方形点又はピン結合域を有し、各ピンは一辺の寸法が0.038インチ(0.965mm)、各ピンの間隔が0.070インチ(1.778mm)で、結合深さが0.023インチ(0.584mm)である。得られたパターンは、約29.5%の結合域を有する。別の典型的な点結合パターンは、一辺の寸法が0.037インチ(0.94mm)、ピンの間隔が0.097インチ(2.464mm)、ピンの深さが0.039インチ(0.991mm)を有する正方形のピンによる15%の結合域を与える、拡張ハンセン・ペニングス、すなわち「EHP」結合パターンである。他の一般的なパターンには、繰り返され、僅かにずらされたダイアモンドパターン、及びその名が示す通り例えば網戸を思わせるようなワイヤ織パターンが含まれる。通常は、結合域の割合は、布地ラミネートウェブの面積の約10%〜約30%まで変化する。熱点結合は、層内で繊維を結合することによって個々の層に一体性を付与し、及び/又は多層ラミネートの場合には、点結合が層を互いに保持して、粘着性ラミネートを形成する。
本明細書に用いられる「親水性」という用語は、ポリマー材料が水性媒体、すなわち水が主成分である液状媒体によって湿潤可能となるような表面自由エネルギーを有することを意味する。「疎水性」という用語には、定義されたような親水性でない材料が含まれる。「本質的に疎水性」という語句は、疎水性に影響する添加剤又は処理のない、化学的な組成状態で疎水性である材料のことを指す。疎水性材料は、界面活性剤などで内部又は外部処理されて親水性にすることができることが認識される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、材料形成における全体としての均一性が高く、繊維方向性のMD対CDバランス、並びに材料特性のMD対CDバランスをもつ連続繊維不織ウェブを提供する。本発明の1つの態様では、不織ウェブは、MD:CD引張比によって測定されたとき、望ましくは1.2以下、より望ましくは約1.0の繊維方向性及び材料特性のMD対CDバランスを有する。本発明の別の態様においては、最終用途によって、MDよりもCDにおける繊維方向性(故に、引張強度)がより大きい不織ウェブが望ましい場合には、不織ウェブは、望ましくは1.0より小さいMD:CD引張比、より望ましくは0.9より小さいMD:CD引張比を有する。本発明はまた、スパンボンド−スパンボンドラミネートのような不織ウェブの多層ラミネート、並びにフィルム及び溶融紡糸された超極細繊維層のような障壁材料を含むラミネートをも提供する。また、高度に均一で、特性のバランスのとれた連続繊維不織ウェブを形成する方法及び多層不織ウェブを形成する方法をも提供する。
偏向器は、例えばセグメント化された又は「歯付きの」偏向器装置のような物理的な偏向装置とすることができ、このような装置では偏向装置の歯は、繊維供給源(繊維紡糸口金及び繊維引き延ばし装置のような繊維製造装置)の中央線に対して角度Bをなすように配向されており、ここで角度Bは10度〜約80度であり、装置の「歯」は繊維流中に位置する。さらに、繊維は帯電されるのが望ましい場合がある。
【0009】
本発明は、図を参照してより十分に説明される。図1Aでは、MD、すなわち材料製造方向に対する、繊維製造装置70である連続繊維の供給源の配向を示す例示的なプロセスの平面概略図を示す。図1Aはまた、繊維製造装置70の中央線に対する偏向器90の配向を示す。図1Aに示されるように、製造方向、すなわちMDは、矢印MDによって示される。MD方向を最初の角度又は0度とし、時計回りに角度を測ると、繊維製造装置70は、MD方向に対して90度未満の角度Aをなすように配向される。望ましくはAは約30度〜約60度であり、ここではAは約A=45度で示されている。偏向器90は、明確にするために単一のセグメント化された機械的偏向器の「歯」として示されているが、当業者には認識されるように、多数の歯が、繊維製造装置の長さに沿って実質的に並列に位置し得る。偏向器90は、繊維製造装置の中央線に対して測定される場合は、角度Bをなすように配向される。角度Bは約10度〜約80度であるべきであり、望ましくは約30度〜約60度である。ここで繊維製造装置の中央線は、図1Aにおいて点線で示され、偏向器90が繊維供給源に対してB=約45度をなすように配向されていることがわかる。
当業者に認識されるように、図1Aに示される例示的なプロセスは、図1Bに示されるような等価なプロセスに裏返すことができ、この場合、繊維製造装置70は、MDに対して「−A」の角度(すなわち、MDから反時計周りに測定される角度)をなすように配向され、偏向器90は、繊維供給源又は繊維製造装置の中央線に対して「−B」の角度(すなわち、繊維製造装置の中央線から反時計周りに測定される角度)をなすように配向される。
【0010】
図2を参照すれば、不織ウェブを製造するための例示的なプロセスが側面図として示され、より詳細に開示される。図2を参照すると、加工ライン10は、一成分連続繊維の製造に関して記載されるが、本発明はまた、多成分繊維(すなわち、2以上の成分を有する繊維)を用いて製造される不織ウェブの使用を包含することを理解すべきである。
加工ライン10は、ポリマーホッパー20から押出成形機30に供給されるポリマーを溶融し、押出成形するための押出成形機30を含む。ポリマーは、押出成形機30からポリマー導管40を通って紡糸口金50に供給され、この紡糸口金は(例えば、図1に示されるように)、MDに対して90度より小さい角度Aをなすように配向される。再び図2を参照すると、紡糸口金50は、上述されるように一成分又は多成分とすることができる繊維60を形成する。多成分繊維が所望される場合、第2のポリマーホッパーから供給される第2の押出成形機が使用される。多成分連続繊維を押出成形するための紡糸口金は、当業者に周知であるので、ここでは詳細に説明しないが、多成分繊維を製造するための例示的な紡糸パックは、Cookの米国特許第5,989,004号に記載されており、その全体の内容が本明細書に参考として組み込まれる。
本発明に好適なポリマーとしては、不織ウェブ及び材料の製造に好適な既知のポリマー、及び例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、及びそれらのコポリマー及びブレンドが挙げられる。好適なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレン;ポリプロピレン、例えばイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン及びアタクチックポリプロピレンのブレンド;ポリブチレン、例えば、ポリ(1−ブテン)及びポリ(2−ブテン);ポリペンテン、例えばポリ(1−ペンテン)及びポリ(2−ペンテン);ポリ(3−メチル−1−ペンテン);ポリ(4−メチル−1−ペンテン);並びにこれらのコポリマー及びブレンドが挙げられる。好適なコポリマーとしては、2以上の異なる不飽和オレフィンモノマーから調製されるランダム及びブロックコポリマー、例えばエチレン/プロピレン及びエチレン/ブチレンコポリマーが挙げられる。好適なポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン4/6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/10、ナイロン6/12、ナイロン12/12、カプロラクタム及びアルキレンオキシドジアミンのコポリマーなど、並びにこれらのブレンド及びコポリマーが挙げられる。好適なポリエステルとしては、ポリラクチド及びポリ乳酸ポリマー、並びにポリエチレンテレフタレート、ポリ−ブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレン−1,4−ジメチレンテレフタレート、及びそれらのイソフタレートコポリマー、並びにそれらのブレンドが挙げられる。
【0011】
紡糸口金50は、1以上の列に配置された開口部を有する。紡糸口金の開口部は、ポリマーが紡糸口金を通って押出成形される場合に、繊維60の下方に延びるカーテンを形成する。図2の例示的な加工ライン10はまた、紡糸口金50から延びる繊維60のカーテンと隣接して位置する急冷ブロア64を含む。急冷エアブロア64からの空気は、紡糸口金50から延びた繊維60を急冷する。急冷空気は、図2に示されるように、繊維カーテンの片側、又は繊維カーテンの両側から向けられることができる。本明細書で用いられる「急冷」という用語は、例えばチルド空気流、周囲温度空気流、又はわずかに若しくは穏やかに加熱された空気流を用いるなど、繊維よりも冷たい媒体を用いて繊維の温度を低下させることを単に意味する。プロセスはさらに、望ましくは紡糸口金50の上方、又は近位に取り付けられる真空ダクトのような、溶融ポリマーから製造される蒸気を運び去るための手段(図示せず)を含んでもよい。
急冷された繊維を受け入れる繊維引き延ばしユニット又はアスピレータ70は、紡糸口金50及び急冷ブロア64の下方に位置する。繊維引き延ばしユニット70は、MDに対して紡糸口金50とほぼ同じ角度をなすように配向される(すなわち、90度未満の角度A)。ポリマーを溶融紡糸するのに使用するための繊維引き延ばしユニット又はアスピレータは、当該技術分野において周知である。本発明の方法に用いるのに好適な繊維引き延ばしユニットとしては、例えばMathukiらの米国特許第3,802,817号、並びにAppelらの米国特許第4,340,563号及び同第4,405,297号に示される種類の線状繊維アスピレータが挙げられ、これら全てを本明細書に参考として組み込む。
【0012】
一般的に言えば、繊維引き延ばしユニット70は、細長い垂直経路を含み、それを通る繊維は、経路の片側から入り、経路を通って下方に流れる吸引空気によって引き延ばされる。吸引空気は、ブロア(図示せず)によって供給される。吸引空気は、加熱されてもよく、又は加熱されなくてもよい。吸引空気が繊維引き延ばしユニット70の経路を通る繊維を引張り、繊維を細くする、すなわち繊維の直径を小さくする。捲縮可能な構成の多成分繊維を使用し、繊維の堆積の前に繊維の潜在的な螺旋クリンプを顕在化させるのが望ましい場合、ブロアは繊維引き延ばしユニット70に加熱された吸引空気を供給する。この点に関して、Pikeらの米国特許第5,382,400号に記載されるように、加熱された吸引空気は、繊維を細くすると共に、潜在的な螺旋クリンプを顕在化する。繊維の堆積の後、ある時点で繊維の潜在的な螺旋クリンプを顕在化することが所望される場合、ブロアは、繊維引き延ばしユニット70に加熱されていない吸引空気を供給する。この場合、潜在的なクリンプを顕在化するための熱は、繊維の堆積の後、ある時点でウェブに供給されてもよい。
不織ウェブ中の繊維分布にわたる追加の制御として帯電装置を用いるのが望ましい場合もある。この場合、当該技術分野において既知の帯電装置は、繊維が繊維引き延ばしユニットの細長い垂直経路を出て行くときに繊維を帯電させるために、繊維引き延ばしユニット70の下方に配置することができる。一般的に言えば、帯電装置は、コロナ放電を発生させ、それによって繊維を帯電させる1以上の列の電気エミッタピンで構成され、繊維は一旦荷電されると互いに反発し、個々の繊維群が共に凝集又は「ローピングする」のを防ぐのに役立つ。改善された繊維分布をもった不織布を製造するために繊維を荷電する例示的な方法は、同一出願人に譲渡された2002年7月4日に公開されたPCT公開WO02/52071に開示されている。
【0013】
偏向器90は、繊維引き延ばしユニット70の出口に位置する。偏向器90は、図4において全体を200で示されるように、支持体240にボルト230によって取り付けられた間隔の空いたセグメント又は「歯」220によって形成される溝210によってセグメント化されるような、セグメント化機械的偏向器であってもよい。歯220は、繊維が繊維引き延ばしユニット70を出る繊維カーテン中に延びる。歯220は、繊維分布の追加の制御を提供するために、例えば約3ミリメートルの間隔で分離することができる。歯220の形状及び間隔は、繊維の堆積時点で目的とする程度の繊維分離を生じさせるように変更することができる。また、歯220は、所望の角度に調整可能であるように、ボルト230に対してピボット運動可能にすることができる。セグメント化偏向器の歯は、繊維製造装置の中央線に対して角度Bをなすように配向されるのが重要であり、ここで角度Bは約10〜約80度である。偏向器は、繊維引き延ばしユニットに取り付けられるか、又はその下方に吊り下げられてもよく、或いは繊維引き延ばしユニットに物理的に取り付けられることなく、加工装置の特定の他の部分に取り付けられてもよい。
また、繊維引き延ばしユニット70の出口開口部からの細くなった繊維100を受け取るために、繊維引き延ばしユニット70の下方に位置するエンドレス有孔形成面110が図2に示される。細くされた繊維を有孔形成面110上に引っ張るために、有孔形成面110の下方に位置する真空源(図示せず)を使用するのが有益である。有孔形成面110上で受け取られた繊維は、緩い連続繊維120の不織ウェブを含み、それは望ましくはまず圧密化手段130を用いて圧密化されて、ウェブを結合装置に移動させるのを補助してもよい。圧密化手段130は、当該技術分野において既知のような機械的圧縮ロールであってもよく、又は本明細書に参考として組み込まれるArnoldらの米国特許第5,707,468号に記載されるような、ウェブ上又はウェブの中に加熱された空気を吹き込むエアナイフであってもよい。
【0014】
加工ライン10はさらに、図2に示されるカレンダロール150及び160のような結合装置を含み、その装置は、上述したように不織ウェブを熱点結合又は点結合するために使用することができる。或いは繊維が、異なる融点をもつ成分ポリマーを有する多成分繊維である場合、当業者に周知の通気結合機を利用するのが有利である。一般的に言えば、通気結合機は、連続多成分繊維のウェブ中に加熱された空気流を向け、それによって、より低い溶融ポリマー成分のポリマー溶融温度を有するか、又はより低い溶融ポリマー成分のポリマー溶融温度よりも高く、より高い溶融ポリマー成分の溶融温度よりも低い温度を有する加熱空気を望ましく利用して繊維間結合を形成する。さらに他の選択肢としては、ウェブは、例えば接着剤結合手段、超音波結合手段、又は水圧交絡又はニードリングのような交絡手段といった当該技術分野において既知の他の手段を利用することによって結合することができる。
最後に、加工ライン10はさらに、結合ウェブ170を取り上げるための巻き取りロール180を含む。ここでは示さないが、当該技術分野において既知の種々の追加の潜在的な加工及び/又は仕上げ段階、例えばウェブスリッティング、伸張、処理、又は不織布をフィルム若しくはその他の不織層のような他の材料との複合体にするラミネーションを、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。ウェブ処理の例としては、ウェブに永久的な帯電を誘導するためのエレクトレット処理、或いは帯電防止処理が挙げられる。ウェブ処理の別の例としては、疎水性熱可塑性材料を含むウェブに濡れ性又は親水性を付与するための処理が挙げられる。濡れ性処理添加剤は、内部処理としてポリマー溶融物に導入されてもよく、又は繊維若しくはウェブ形成の後のいずれかの時点で局所的に添加されてもよい。ウェブ処理のさらに別の例としては、アルコール、アルデヒド及びケトンのような低表面エネルギー液体に対する反発性を付与するための処理が挙げられる。こうした液体反発性処理の例としては、局所的に又は繊維が押出成形される熱可塑性溶融物内部にフルオロカーボン化合物を添加することによってウェブ又はウェブ繊維に添加される、フルオロカーボン成分が挙げられる。さらに、巻き取りロール180上に不織ウェブを取り上げるための代替案として、不織ウェブは、巻き取ることなしに、種々の転換又は製品形成操作に向けられることができる。
【0015】
特定の実施形態において、それぞれ角度A及びBをなすように配向された繊維製造装置及び偏向器を有するのが極めて望ましく、それによって繊維製造装置を出てきた製造された繊維は、MDに対して90度配向された繊維製造装置を用いることで、典型的にほぼMDに対して平行な繊維よりも内在するMD配向が少なくなり、そのためMD及びCD材料方向に対してよりバランスのとれた材料特性を有する不織ウェブが製造される。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、本明細書に記載されるような繊維製造装置及び偏向器のための角度設定の選択によって、繊維は、従来のプロセス(すなわち、MDに対して90度をなすように配向された繊維押出成形機を有するもの)よりCDの方に多く向けられ、それによって従来のウェブよりもMD配向の少ないウェブ全体の平均繊維配向をもたらし、それによってよりバランスのとれたMD対CDの材料特性を有するウェブが得られる。1つの特定例としては、繊維製造装置は、MDに対しておよそ45度の角度Aをなすように配向することができ、偏向器は繊維製造装置の中央線に対して角度Bをなすように配向され、それによって少なくとも最初に繊維が繊維引き延ばしユニットから出た時にCDに向いた繊維が多くなるはずであり、ウェブの繊維が主にMDに配向される状況を避けられるはずである。
本発明の別の実施形態としては、極めて均一な不織ウェブは、極めて均一な不織ウェブの少なくとも1つの層、及び織布層又は追加の不織布層又はフィルムのような少なくとも1つの追加の層を含有するラミネートに使用できる。ラミネートのための追加の層は、液体及び/又は微生物障壁特性のような追加及び/又は補助特性を付与するために選択することができる。従って、ラミネート構造は、種々の皮膚接触用途、例えば保護衣類、オムツカバー、成人用ケア製品、トレーニングパンツ及び衛生ナプキン、種々のドレープ、手術着などを含む種々の用途に極めて好適である。ラミネートの層は、ラミネート構造に適した当該技術分野において既知の結合方法、例えば熱、超音波又は接着剤結合方法又は機械的若しくは水圧交絡方法によって一体化構造を形成するように結合することができる。
【0016】
例として、通気性フィルムは、有用な特性の所望の組み合わせ、例えば柔らかい肌触り、強度及び障壁特性を示す通気性障壁ラミネートを提供するために不織ウェブに積層することができる。別の例としては、不織ウェブは、布様の肌触りを有する強い高障壁ラミネートを提供するために、非通気性フィルムに積層することができる。これらのラミネート構造は、所望の布様の肌触り特性、改善された強度特性及び高度の障壁特性を提供する。
本発明に極めて好適な別のラミネート構造は、Brockらの米国特許第4,041,203号に開示されており、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。図3は、ラミネート構造としての本発明の不織ウェブを製造する別の例示的なプロセスの平面図を示す。図3を参照すると、工程は、例えばスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド(SMS)不織ウェブとして当該技術分野において既知の多層不織ウェブを製造するように配置される。図3において、工程は、第1のスパンボンド紡糸口金52及び第2のスパンボンド紡糸口金54として連続繊維紡糸口金の2つのバンク、並びに第1の紡糸口金及び第2の紡糸口金間に配置されるメルトブローダイ72、74、76及び78の4つのバンクを含む。第1の紡糸口金52は、MDに対して90度より小さい角度Aをなすように配向され、ここで示されるようにMDに対して約45度をなすように配向することができる。繊維押出成形及び製造装置の全てを同様に配向させることができるが、図3に示される実施形態では、第2の紡糸口金54は、第1のスパンボンド紡糸口金52の角度からおよそ90度の角度をなすように配向される。すなわち、第2の紡糸口金54は、図1Bを参照して説明されたように、およそ−Aの角度をなすように配向される。これらは、裏返すことができる、すなわち第1の紡糸口金52は、Aをなすように配向された第2の紡糸口金54に対して−Aをなすように配向させることができることに留意されたい。メルトブローダイ72及び74は、第1の紡糸口金52とおよそ同一の角度、すなわち、およそ角度Aをなすように配向されることが示されるが、メルトブローダイ76及び78は、第2の紡糸口金54とおよそ同一の角度−Aをなすように配向される。第1の紡糸口金52及び第2の紡糸口金54にそれぞれ関連した繊維引き延ばしユニット(図示せず)は、図2及び加工ライン10に従って説明されたように装備される。すなわち、図3に示されるプロセスの繊維引き延ばしユニットは、第2の紡糸口金54及びそれに関連する繊維引き延ばしユニットに関して、繊維偏向器の角度がおよそ−Bである以外、図2に関して記載されたような繊維偏向器を有する。図2及び加工ライン10を参照して説明したように、繊維が凝集し又は「ローピング」して塊になるのを防止するためなどのように、繊維分布にわたる追加の制御を付与するのが望ましい場合には、帯電装置も利用できる。
【0017】
メルトブローダイ72、74、76及び78は、当業者に周知のメルトブローダイのいずれとすることもできるので、ここでは詳細には説明しない。一般的に言えば、メルトブロー方法は、複数の微細な、普通は円形ダイ毛細管を通して溶融熱可塑性材料を溶融糸又は繊維として収束した高速気体(例えば空気)流の中に押し出すことによって繊維を形成することを含み、それによって、溶融熱可塑性材料の繊維が細くされて、その直径が小さくなる。その後、メルトブロー繊維は、高速気体流によって運ばれ、収集面に堆積されて、ランダムに分配されたメルトブロー繊維ウェブを形成する。こうした方法は、例えば、Buntinの米国特許第3,849,241号に開示されている。メルトブロー繊維は、連続でも不連続でもよく、一般に直径が10ミクロン未満であり、一般に収集面上に堆積されるときは粘着性である。メルトブロー繊維を形成するための例示的な装置及び方法は、Haynesらの米国特許第6,001,303号に記載されており、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
再び図3を参照すると、第2の紡糸口金54とメルトブローダイ78との間に位置する圧密化手段66、例えば第2の紡糸口金54から形成される繊維ウェブ中に及び繊維ウェブを通して加熱空気を吹込むエアナイフが示されている。このようなエアナイフは、本明細書に参考として組み込まれるArnoldらの米国特許第5,707,468号に記載されている。圧密化手段66は、第2の紡糸口金54から形成される不織ウェブを、メルトブロー方法72、74、76及び78における高速気体流による断絶から保護するために、最初に又は前もって圧密化するように作用する。圧密化手段66はまた、当該技術分野において既知のような圧縮ローラであるのが望ましい場合がある。しかし、圧密化手段66が圧縮ローラである場合、それは、図3に示されるように紡糸口金54に平行な角度よりむしろ、MDに対して約90度で通常配向される。プロセスはまた、第2の紡糸口金54の後に付加される、ウェブの一部又は層を最初に又は前もって圧密化するための圧密化手段68を含む。初期又は事前の圧密化手段68は、第1の紡糸口金52から下流に(材料プロセスの点では後で)配置される圧縮ロールであるのが望ましい場合がある。
【0018】
図3に示される工程は、スパンボンド紡糸口金の2つのバンク、及びメルトブローダイの4つのバンクを有するように構成されるが、これらの数は本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく変更できることを当業者は理解するであろう。例として、より少ないか又はより多いメルトブローダイバンクを利用することができ、或いは複数の連続繊維紡糸口金を第1又は第2の紡糸口金の位置又はその両方にて使用することができる。さらに、種々の他のプロセス段階及び/又はパラメータは、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの観点で変更できることを当業者は理解するであろう。例えば、不織ラミネート材料の一部又は全ての層は、個々に、そして別々に製造することができ、ロールに巻き取られ、次いで別個の段階として多層不織ラミネート材料に組み合わせられる。或いは、2つの外側不織層は、図3に示されるように、スパンボンド紡糸口金バンク52及び54にて形成され、事前形成された障壁層、例えばメルトブロー超極細繊維層は、メルトブローダイバンク72、74、76及び78を用いる代わりに、それらの間で繰り出されてもよい。この点に関して、不織ラミネート材料の強度特性の大部分は、障壁材料層によるのではなく、連続繊維対向層によって与えられるので、障壁層は、図3に示されるように配向されるのではなく、MDに対して従来通り90度をなすように配向された装置から製造することができることに留意することが重要である。しかし、図3に示されるような障壁材料の製造装置の向きにより、有利なことに、連続繊維ウェブに関して以下で説明されるのと同じ任意の高速製造速度又はより細い繊維製造の利益が得られる。
本発明の連続繊維の不織ウェブ及びラミネート布は、布地の均一性、均一繊維被膜、並びに引張強度及び伸びのような材料特性の均一性といった所望の特性の組み合わせを提供する。さらに、この不織ウェブ製造方法は、先行技術の製造方法よりも極めて有利である。ウェブの繊維をMD、すなわちウェブ製造方向に偏りをもつように本質的に配向する先行技術の不織ウェブ方法とは異なり、この方法は、繊維の配向がMD及びCDに関してよりバランスのとれた連続繊維不織ウェブを提供する。従って、この方法は、強度、伸び、及びその他の特性の所望のMD対CDバランスを有する連続繊維不織ウェブを提供する。さらに、この方法は、非常に速い製造速度での不織ウェブ製造、又は通常のウェブ製造速度でのより細い繊維ウェブの製造を提供する。
【0019】
増大した製造速度の具体的な例として、図1、図1B及び図3に示される紡糸口金は、角度A(又は第2の紡糸口金に関しては角度−A)をなすように配向されることが示されており、それは、図示されるように、MDに対しておよそ45度である。45−45−90の三角形の斜辺は側辺の長さ×2の平方根であるので、故にこれらの紡糸口金は、MDに対して90度をなすように配向された従来の紡糸口金の場合よりも(同じCD幅の材料では)およそ[2]1/2又は1.41倍長い。この場合、紡糸口金毛細管の間隔及び紡糸口金毛細管の孔あたりのポリマー押出成形速度が2つの方法について同じならば、不織ウェブ製造速度は、従来の90度配向の紡糸口金を用いる方法よりもおよそ1.41倍速い。より大きい、又はより小さい角度Aは、45度に等しいAの場合よりも、それぞれ製造速度がより遅く、又はより速くなるが、同じ毛細管間隔及び処理量のとき、速度は常に、従来の90度配向の方法よりも速い。
通常のウェブ製造速度でのより細い繊維ウェブの例として、より細い繊維を製造するための当該技術分野において既知の1つの手段は、毛細管の孔あたりの押出成形速度を低下させることである。上述されるように、紡糸口金がおよそ45度に等しいAをなして配向される特定の例では、不織ウェブ製造速度及び紡糸口金毛細管の間隔が2つの方法において同じならば、毛細管の孔あたりのポリマー押出成形速度は、90度配向された紡糸口金を用いる従来の方法の孔あたりの押出成形速度のおよそ71%(又は[2]-1/2倍)に低下される。そのため、本発明の方法を用いれば、孔あたりの押出成形速度が低下するので、MDに対して90度をなすように配向された従来の方法で必要とされるような全体の不織ウェブ製造速度を犠牲にすることなく、より細い繊維を得ることが可能になる。より細い繊維は、改善されたウェブの布様特性及び柔らかさ、並びに改善されたウェブ層の均一性及び全体の強度に関して望ましいことが多い。
本発明の不織ウェブは、種々の用途、例えば保護衣類、衛生ラップ、手術着、拭取布及び吸収性物品のライナー及びカバーのような使い捨て物品を含む用途に極めて好適である。
次の実施例は、例示の目的で提供され、本発明をそれらに限定するものではない。
【実施例】
【0020】
ポリプロピレンスパンボンド材料を、本発明の不織ウェブ材料及び/又は方法の実施例として、製造し、熱点結合し、巻き取り機に巻き取った。スパンボンドウェブ材料を、繊維製造装置(すなわち、繊維押出成形及び繊維引き延ばし設備)を用いて製造したが、その装置は、図1Aに示されるようにMD方向に対しておよそ45度に配向させた。使用した偏向器は、図4に示されるセグメント化偏向器と同様のセグメント化又は「歯のある」機械的偏向器であり、図1Aに示されるように、繊維製造装置に対しておよそ45度にその歯が配向されるように設定した。特定の実施例に関して、繊維は、本明細書において上述されたPCT公開WO02/52071に開示されるものと実質的に同様の様式で、15又は20キロボルト(「kV」)の印加電圧にて帯電させた。
スパンボンド材料を、約20gsm(実施例E2及びE3)及び40gsm(実施例E1及びE4)の坪量で製造し、総重量が約40gsmとなる「ダブルパス」の20gsm材料(実施例E5及びE6)を製造した。「ダブルパス」材料は、20gsm材料を結合させ、第1のロールとして巻き取り、次いで形成面上でこの事前製造された材料を反転させ及び繰り出すことによって製造され、その結果、第2の20gsmウェブが、事前製造された材料の頂部に形成され、次いで2つのウェブが、熱点結合によってスパンボンド−スパンボンドラミネートとして共に結合された。「反転」とは、材料が形成された時に形成面と接触していた事前形成材料の表面を、再び形成面に対向させるのではなく、第2の経路のための形成面に対向させたことを意味する。これは、図3に示されるプロセスを模擬するために行われたが、このとき、一方の連続繊維紡糸口金は、MDに対して角度A(約45度)をなすように配向され、他方の連続繊維紡糸口金は、約−Aをなすように配向される。
引張強度試験は、ASTM D5034−90に従ってグラブ引張強度として行った。グラブ引張用に試験されるべき100mm×150mmの長方形サンプルは、材料サンプルの各々から得た。引張強度の均一性を評価するために、サンプルをMD及びCD方向にて試験した;すなわち、サンプルをそれらの150mmの長軸がMD方向又はCD方向のいずれかに平行となるように切断した。次いで、MD対CD引張強度比(「MD:CD」)を、MD引張結果をCD引張結果で割ることによって計算した。引張強度結果、材料の坪量及び帯電電圧(印加した場合)を、表1に要約する。
【0021】
表1

表1からわかるように、本明細書に記載される方法を用いて製造された連続繊維ウェブは、引張強度の高い均一性を有し、一般に約1.5以下、多くの場合は1.2以下、又はさらに約1.0以下程度に低いMD:CD引張強度比を示す。
多数の他の特許が本明細書で言及されているが、参考としてここに組み込まれる技術と、本明細書の技術との間に何らかの不一致又は矛盾がある範囲では、本明細書ではこれを比較対象とする。さらに、本発明は特定の実施形態について詳細に説明されたが、種々の代替、変更及び/又は他の変形が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得ることを当業者は理解する。
そのため、こうした全ての変更、代替、及びその他の変形は特許請求の範囲に包含されることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】繊維製造装置のウェブ製造方向、すなわちMDに対する例示的な配向、及び繊維製造装置に対する偏向器の例示的な配向を示す上から見た又は平面図である。
【図1B】繊維製造装置のウェブ製造方向、すなわちMDに対する例示的な配向、及び繊維製造装置に対する偏向器の例示的な配向を示す第2の上から見た又は平面図である。
【図2】本発明の極めて均一な不織ウェブを製造する例示的なプロセスの概略図である。
【図3】メルトブロー層と組み合わせたラミネートとして本発明の極めて均一な不織ウェブを製造する別の例示的なプロセスの平面図である。
【図4】間隔の空いたセグメント又は「歯」を有するセグメント化機械的偏向装置を示す斜視図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に連続する繊維の第1ウェブを少なくとも含み、そのMD:CD引張比が約1.2又はそれ以下である、高度に均一な不織材料。
【請求項2】
前記MD:CD引張比が約1.0又はそれ以下であることを特徴とする請求項1に記載の不織材料。
【請求項3】
実質的に連続する繊維の第2ウェブがさらに結合されたことを特徴とする請求項1に記載の不織材料。
【請求項4】
プロピレン及びエチレンのポリマー及びコポリマーからなる群から選択されたオレフィンポリマーを含むことを特徴とする請求項3に記載の不織材料。
【請求項5】
プロピレン及びエチレンのポリマー及びコポリマーからなる群から選択されたオレフィンポリマーを含むことを特徴とする請求項2に記載の不織材料。
【請求項6】
1つ又はそれ以上の前記連続繊維ウェブが、プロピレン及びエチレンのポリマー及びコポリマーからなる群から選択されたオレフィンポリマーを含むことを特徴とする請求項4に記載の不織材料。
【請求項7】
前記不織ウェブに結合された熱可塑性フィルム層をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の不織材料。
【請求項8】
前記実質的に連続する繊維の第1ウェブと前記実質的に連続する繊維の第2ウェブとの間に対向する関係で挟まれ、結合された少なくとも1つの障壁材料層をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の不織材料。
【請求項9】
前記少なくとも1つの障壁材料層は、少なくとも1つのメルトスパン超極細繊維ウェブ層であることを特徴とする請求項9に記載の不織材料。
【請求項10】
前記第1及び第2連続繊維ウェブはスパンボンドウェブであり、前記少なくとも1つのメルトスパン超極細繊維ウェブはメルトブローウェブであることを特徴とする請求項10に記載の不織材料。
【請求項11】
前記スパンボンド及び前記メルトブローウェブは、プロピレン、エチレン及びブテンのポリマー及びコポリマー並びにこれらのブレンドからなる群から選択されたオレフィンポリマーを含むことを特徴とする請求項11に記載の不織材料。
【請求項12】
前記メルトブローウェブはさらに、フルオロカーボン化合物添加剤を含むことを特徴とする請求項12に記載の不織材料。
【請求項13】
少なくとも1つの前記スパンボンドウェブがフルオロカーボン化合物添加剤を含むことを特徴とする請求項13に記載の不織材料。
【請求項14】
連続繊維不織ウェブを形成する方法であって、
a)MD方向に対して約90度より小さい約A又は約−Aの角度に配向された連続繊維の供給源を設け、
b)前記連続繊維の供給源に対して約10度から約80度の約B又は約−Bの角度に配向された偏向器で前記繊維を方向付け、
c)前記繊維を移動面上に集積して前記不織ウェブを形成する、
ステップを含む方法。
【請求項15】
前記Aが約30度から約60度であり、前記Bが約30度から約60度であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項16】
前記繊維を前記移動面上に集積するステップの前に、前記繊維を帯電させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項17】
圧縮ロール及び高温エアナイフからなる群から選択された手段によって、前記形成された不織ウェブを事前に圧密化するステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記偏向器が機械的にセグメント化された偏向器であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記Aが約45度であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項20】
多層不織ウェブを形成する方法であって、
a)MD方向に対して約90度より小さい約Aの角度に配向された連続繊維の第1供給源と、MD方向に対して約−Aの角度に配向された連続繊維の第2供給源とを設け、
b)前記第1繊維供給源に対して約10度から約80度のBの角度に配向された第1偏向器で前記第1繊維供給源からの前記繊維を方向付け、前記第2繊維供給源に対して約−Bの角度に配向された第2偏向器で前記第2繊維供給源からの前記繊維を方向付け、
c)前記第1繊維供給源及び前記第2繊維供給源からの前記繊維を移動面上に集積して前記多層不織ウェブを形成する、
ステップを含む方法。
【請求項21】
前記Aが約30度から約60度であり、前記Bが約30度から約60度であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項22】
前記第1繊維供給源と前記第2繊維供給源との間に配置された少なくとも1つのメルトスパン超極細繊維の供給源を設けるステップをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項23】
前記繊維を前記移動面上に集積するステップの前に、前記繊維を静電気的に帯電させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
圧縮ロール及び高温エアナイフからなる群から選択された手段によって、前記形成された不織ウェブを事前に圧密化するステップをさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1及び第2偏向器が機械的にセグメント化された偏向器であることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記Aが約45度であることを特徴とする請求項26に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−507426(P2006−507426A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555353(P2004−555353)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/034274
【国際公開番号】WO2004/048664
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】