垂直負荷/衝撃を緩和し回転可能な義足
義足(1)は、当該義足(1)の足根関節域を形成できるよう、足部キール(2)と、その足部キール(2)に接続されたカーフシャンク(6)とを備える。前記足部キール(2)には、足前部(3)および足後部(4)と、その間で伸長し、足前部(3)から上方向にアーチ形状に形成された比較的長い中間部(5)とが備わっている。前記カーフシャンク(6)は、前記キール中間部(5)に調整可能な締付具(8)で所定位置に取り付けられた下方向凹曲面形状下端部(7)を備える。前記締付具(8)により、義足(1)の能力を最適化するため、前記足部キール(2)の縦方向に沿った前記カーフシャンク(6)と前記足部キール(2)の相互整列を調整する。前記足部キール(2)の上方向アーチ形状中間部は、その自体の拡張作用による垂直負荷のエネルギー吸収に加えて、歩行から走行や跳躍の幅広い動作における義足の使用からの垂直負荷を吸収するため圧縮し、垂直負荷に対抗するため拡張するコイルバネを備える形状となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応用力学に関係する動的応答特性を改善した高性能な義足に関する。
【背景技術】
【0002】
足装着用の無関節式の義足の例が、マーチンらの米国特許第5,897,594号明細書に開示されている。従来のような、足根関節の機能を模倣した人工関節を備えた強固構造をもつ義足の問題解決例と違い、マーチンらの無関節式の義足には、足成形部内に弾性の足挿入部材が備わっている。その挿入部材は、縦断面がほぼC形状であり、後側が開放となっていて、義足への負荷を、上側のC形状肢節で受けて、下側のC形状肢節を経由し、それに接続された板バネへ伝播させるよう構成されている。板バネは、下側からみると凸形状であり、足裏とほぼ平行に、足挿入部を越えて足先部まで延びている。マーチンらの発明は、無関節式擬祖の装着者が自然な歩行ができ、かつ、通常歩行と同時に運動やスポーツを楽しめるよう、普通の足踵への衝撃の緩和性、弾力性、足踵から足先への移動歩行性、横方向安定性などを改善することを目的としている。しかしながら、その従来の義足では、動的応答特性に制限がある。つまり、ラン、ジャンプ、スプリント、スタート、ストップ、カットなどの動作を含む、障害者の運動能力を高めるような、応用機械性能の改善された高性能の義足が必要とされているのである。
【0003】
また、バンLフィリップの開発した義足は、周知の義足の性能にも対応し、従来の構造的限界では制限されるような多様な動作範囲に対応できる機敏性や移動性を障害者に提供できるとしている。ラン、ジャンプ、その他の動作は、その装着者が普通の足と同じように利用可能と提案する、それら従来の義足でカバーできるかも知れない。その他の例として、米国特許第6,071,313号明細書、米国特許第5,993,488号明細書、米国特許第5,899,944号明細書、米国特許第5,800,569号明細書、米国特許第5,800,568号明細書、米国特許第5,728,177号明細書、米国特許第5,728,176号明細書、米国特許第5,824,112号明細書、米国特許第5,593,457号明細書、米国特許第5,514,185号明細書、米国特許第5,181,932号明細書、米国特許第4,822,363号明細書などを参照のこと。
【発明の開示】
【0004】
障害者の競技者が高い能力を獲得するには、実際の人間の足よりも、従来の義足よりも応用物理学的に高性能の義足を使用する必要がある。所望用途に合った動作の水平要素や垂直要素を向上できるよう、微調整が可能であり、応用物理学的に高性能で、動的応答性が高く、整列調整能力がある義足を装着するのが障害者の競技者の要請である。
【0005】
本発明の義足は、上記の要請に応じるものである。本文で説明する実施例に関わる本発明の義足は、一方の端に足前部と、その反対の端に足後部と、足前部と足後部の間に縦方向に伸び、そこから上方向にアーチ形状に形成された比較的長い中間部とからなる縦方向伸長の足部キールを備える。また、下方向に凹曲面形状に形成されたカーフシャンクを備える。そして、義足の足根関節域を形成できるよう、足部キールの上方向アーチ形状中間部に、カーフシャンクの曲面形状の下端を接続するのに、調整可能な締付具が備わっている。
【0006】
前記調整可能締付具により、義足の性能を調整するため、足部キールの縦方向にそったカーフシャンクと足部キールとの相互整列を調整することができる。つまり、カーフシャンクの下方向凹曲面形状の下端と足部キールの上方向アーチ形状中間部との相互整列を、足部キールの縦方向に沿って互いに調整することにより、義足の動的応答性能や運動能力を、必要/所望する水平線形速度と垂直線形速度に関わる特定用途に合わせて変化させるのである。ここで開示する多用途義足は、双平面移動特性だけでなく、動的応答性の高低変化が可能であるため、スポーツおよび/またはレクリエーションへの参加をめざす障害者の運動能力を向上させることができる。
【0007】
本発明のさらなる特徴として、義足の使用時の垂直負荷を吸収するため圧縮作用し、対抗するため拡張作用するバネを、足部キールの上方向アーチ形状中間部に設けて、多様な運動中の垂直負荷力や垂直衝撃力を吸収または対抗できるよう、義足の高性能能力をさらに向上させている。また変更例として、足部キールのアーチ形状中間部の後端を、下方向および前方向にコイル形状にし、バネを形成している。また、バネにより、足部キールの足後部を前記の中間部に接続している。義足に垂直負荷がかかった場合、中間部のアーチ形状による拡張作用だけでなく、バネの圧縮作用によりエネルギーが蓄積される。この中間部に蓄積されたエネルギーは、義足への垂直負荷が軽減されると同時に開放される。そのため、歩行から走行や跳躍などの、垂直負荷が体重の3倍程度から13倍の高い値まで変化するような広い運動の範囲しても、破損することなく、義足の機能を維持できる。
【0008】
本発明のその他の目的や、特徴や、長所は、下記の付随図面を参照した本発明の開示の実施例の詳細な説明の内容から、より明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図面に示すように、図3〜5の実施例の義足1は、一方の端に足前部3と、他方の端に足後部4と、それら足前部と足後部との間で上方向にカーブして比較的長く伸びる足裏部5とからなる縦方向に長い足部キール2を備える。足裏の中間部5は、足前部から足後部への直線距離よりも長く、上方向に凸曲面形成されている。
【0010】
義足1には上方向に伸びるカーフシャンク6が備わり、その下端の凸曲面部7が、脱着可能な締付具8と結合具11とで、足部キールの中間部5の基部の後表面に接続されている。締付具8は、本実施例ではボルトとナットとワッシャの組み合わせであるが、締め付けにより、カーフシャンクを足部キールに確実に位置決めして接続できるのものであれば、脱着可能なクランプやその他の締付具でも構わない。
【0011】
図8に示すように、キール中間部5の基部の後表面には、縦方向に長い開孔9が設けられている。同じように、図15に示すように、カーフシャンク6の曲面後端部7にも、縦方向に長い開孔10が設けられている。そして、要求される義足の性能に合わせるため、締付具8を緩めたり戻したりして、カーフシャンク6と足部キール2の図5の縦方向のA−A断面に沿った相互整列を調整できるよう、締付具8を両方の開孔9と10に貫通取付している。つまり、締付具8と結合具11と縦方向開孔9、10とで、義足の足踵結合部分を構成するための、カーフシャンク6を足部キール2に結合させるための可変調整機構を形成しているのである。
【0012】
カーフシャンク6と足部キール2の整列調整の結果を、図1と図2に示すが、互いに隣り合う2つの円R1とR2は、足部キール中間部5とカーフシャンク6の対向する凸曲面を表している。両方の円が互いに隣接しているため、図1のAおよび図2のA1で示す両円の正接線に垂直な方向への移動が可能となる。つまり、2つの円の相互関係により、移動の方向が決定できる。結果として、義足1の動的応答力が、その位置関係に依存するのである。凹面の半径が大きいほど、動的応答性調整も大きくできる。しかしながら、半径が小さいと、応答性が早くなってしまう。
【0013】
本発明の義足のカーフシャンク6と足部キール2の整列調整により、運動時における義足の運動動作における義足の水平方向または垂直方向の線形速度が変動するよう半径値を調整できる。例えば、義足1の水平方向の線形速度を早くするには、カーフシャンク6と足部キール2の両半径の関係を変える調整を行う。つまり、水平方向線形速度特性を変えるには、下側の足部キールの円R2を、図2のように、図1の開始位置よりも遠くに設定するのである。義足1の動的応答性や運動性能がより水平方向に向けられるので、結果として、与える力が同じでも、水平方向線形速度が大きくなる。
【0014】
障害者はその実際の運動をとおして、水平方向や垂直方向の線形速度に関する、必要とする動作に合わせた設定を決定することができる。例えば、走り高跳び競技者やバスケット選手などは、短距離走者よりも大きな垂直方向の移動を必要とする。結合具11はプラスチック製またはアルミ製のもので、カーフシャンク6と足部キール2の間に装着される(図3、4、23を参照)。締付具8は、その結合具の孔12を貫通している。結合具の位置は、カーフシャンクの取付部とキール中間部5の基部の曲面とに挟まれる。
【0015】
カーフシャンク6の曲面下端部7は、放物線形状に形成されており、放物線曲率半径の最も小さい位置の最下端から前方上方へ伸びる放物線を描く。図3に示すように、カーフシャンクの曲線部は、後方に凹曲面に形成されている。放物線形状の利点は、その基端の大きい半径曲線による水平方向の線形速度の増加と共に、下側端の小さな半径曲線による応答特性の迅速化を達成できるような、動的応答性の改善である。放物線形状の上端の大きな半径曲面のおかげで、図1と2で説明した正接線Aをより垂直方向に移動させることができ、水平方向の線形速度を高めることができるのである。
【0016】
カーフシャンク6の上端には、締付具14によりパイロン調整具13が取り付けてある。そのパイロン調整具13は、さらに、締付具16によりパイロン15の下端部に固定されている。パイロン15は、障害者の下脚部に、その脚部端に固定された支持構造体(図示しない)により接続されている。
【0017】
本実施例では、足部キール2の前部、中間部、後部は一体の弾性材で構成されている。例として、地面からの反発力により歪曲した場合に対する形状保持機能をもつ、可撓性のある固形材を利用できる。具体的には、足部キールやカーフシャンクの材料として、エポキシ熱硬化樹脂で積層された高剛性グラファイト材、Delranという商品名の成形プラスチック材、脱気ポリウレタンコポリマー材などが挙げられる。前記の材料の機能性として、高剛性、軽量、小収縮性がある。熱硬化エポキシ樹脂の積層には、周知の標準真空成形法を利用できる。ポリウレタンコポリマーは雌型成形の後、機械加工をすることができる。前記材料の利用は、当然ながら個別の利点と欠点をもつ。
【0018】
前記弾性材の、剛性、柔軟性、強度などに関する物理的特性は、材料の厚さによって決まる。材料が薄ければ、密度が同じでも厚い材料に比べて歪が大きくなる。足部キールやカーフシャンクの厚さは、図3から5の実施例のように、一定であり対称性をもつ。しかし、長さ方向の厚さは下記で説明するように異なり、例えば、足前部や足後部では薄く、中間部では歪曲に対抗できるよう厚くしても構わない。
【0019】
義足1の動的応答能力に高低変化をつけるため、キール中間部5は、垂直方向曲面部の外側よりも内側の動的応答性が高くなるアーチ曲線形状に構成する。そのため、本実施例では、垂直方向アーチ凹曲線形状の内側の半径を、外側よりも大きくしてある。また、足後部4の後端17は、足踵が地面に接触した際の地面からの反発力に対して衝撃吸収できるよう圧縮作用することができるよう、上方に曲がったアーチ形状に構成されている。足後部4の足踵は、後外側角18が内側角19よりも後方向および外方向に位置しており、歩行の最初の接触局面での踵反転動作を支援する。足前部3の前端20は、歩行の最後の動作局面での足先が離れる位置での実際の足先の湾曲動作をシミュレートできるよう、上方に曲がったアーチ形状に構成されている。そして、足前部と足後部の下側には、クッション材としてゴムパッド53、54が取り付けられている。
【0020】
義足の双平面動作能力を高めるため、足前部3の裏面あいだに外側と内側の連接孔21、22が設けられている。それら連接孔21、22からは、延長スロット23、24が足前部の前端まで伸びており、それゆえ、足部キールの足前部の双平面動作能力を高めるための3つの、内側、中側、外側ストラット部25〜27が形成される。連接孔21と22は、図5のB−B線に沿って配置されており、足部キールの縦方向軸A−Aに対して350°の角度の横方向面において、内側連接孔21が外側連接孔22よりも前側に位置する。また、連接孔21と22は、サジタル面に投影した場合、横方向面に450°の角度で傾斜しており、連接孔の表側は裏側よりも前側に位置する。この配置により、締付具8から外側連接孔22までの距離が、締付具8から内側連接孔21までの距離よりも短くなるため、義足1の足先支点が、外側域のほうが内側域よりも短くなって、中間部5の動的応答能力に変化を与えることができる。
【0021】
足部キール2の足後部4の前端には、さらに、その裏面あいだに連接孔28が設けられている。連接孔28からは、延長スロット29が足後部4の後端まで後方向に伸びており、2つのストラット部30と31を形成する。それら2つのストラット部により、足後部4の双平面動作能力が高まる。
【0022】
図3の番号32に示すように、足部キール2の中間部5と足前部3の表面は、上方向に凹曲面形状に構成されているため、実際の足の動作の第5軸の機能をまねることができる。つまり、凹曲面32の縦方向軸C−Cは、足部キールの縦方向軸A−Aに対して20〜35°の角度13で配置され、その内側が外側よりも前側に位置するため、実際の足の第2〜5の中足の傾斜低ギヤ回転軸のように、歩行の際の第5軸の動作を支援できるのである。
【0023】
双平面移動能力の重要性は、障害者が不均一な地面を歩く場合や、競技者が内側や外側方向にカット移動する場合に必要となる。地面反発力ベクトルの方向が、サジタル面から前平面要素を有する平面に変化する。つまり、義足が外側方向へ押すのと反対方向の内側へ地面が作用する。その結果、カーフシャンクが内側へ傾斜し、足部キールの内側部に体重がかかるのである。その圧力に対して、足部キール2の内側ストラット25と31が表側へ反り(上方へ歪曲)外方向へ回転して、外側ストラット27と30が裏側へ反り(下方へ歪曲)内方向へ回転する。この動作の結果、足の裏面を地面(底側)に対して平坦にすることができる。
【0024】
図6と7に示すように、変更例の短距離走用の足部キール33も、本発明の義足に利用できる。その場合、義足は動的応答性を低くする必要がない。そのため、キール2の足前部や中間部の凹曲面での縦方向軸の35°外側回転の必要もなくなる。それよりも、図6と7に示すように、凹曲面のD−D軸方向が前平面に平行となるのが必要である。そのため、走者の足がサジタル面方向にのみ対応できる。さらに、足前部と中間部のE−E線に沿った2つの連接孔34、35の方向が前平面に平行となり、つまり、外側連接孔35が前方向に移動し、内側孔34に整列し、前平面に平行となる。足部キール2の前端部36も、前平面に平行である。キールの後端の足踵部37も、同じく前平面に平行である。これら変更形状により、義足の多様機能性が犠牲となる。しかし、その動作機能は、特定用途に適合できる。また、短距離走者用キール33の別の特徴を足前部の足先部に施すことができ、その表方向湾曲を15°から25〜40°まで増加させる。
【0025】
図9と10に、サイム(Syme)切断の障害者に有効な、本発明の義足のさらに別変更例の短距離走者用の足部キール38を示す。その用途のため、足部キール38の中間部には、カーフシャンクの曲面下端を足部キールに脱着可能な締付具にて取り付ける、後側の上向きの凹曲面39が備わる。この例の足部キールは、あらゆる下肢障害者が利用できるものである。また足部キール38は、サイム切断障害者の長い残留大腿部を収容できる。その性能特性として、動的応答性が非常に迅速である。そのため、適用も説明レベルの障害者に限定されない。図11と12に示す適用例の足部キール40にも、サイム切断障害者用の凹曲面部41が備わっており、義足の動的応答能力の調整を可能にし、図3〜5および図8に示した実施例のような双平面動作能力も維持できる。
【0026】
前記実施例の義足1の足部キールの複数の変更例の機能特性は、凹曲面、凸曲面、半径、拡張、収縮、および、歩行、走行、跳躍の際の地面からの反発力に対応する材質の物理的特性などを含む形状や設計の構造に関わるものである。
【0027】
図13に示す足部キール42は、図3〜5および図8に示した実施例のものと同様であるが、足部キールの厚さが、中間部から足後部の後端までテーパ状に薄くなっている点が異なる。図14に示す足部キール43は、前端と後端の両方に向けて厚さがテーパ状つまり徐々に薄くなっている。図15には、厚さが同様に変化するカーフシャンク44が図示されており、図16にも、別変更例のカーフシャンク45が図示されており、いずれも義足1に適用可能である。それぞれの足部キールやカーフシャンクの構造は、義足の機能特性に個別の変化を与え、多様な競技者の用途特性を改善するため、水平線形速度や垂直線形速度を変更調整を可能にしている。つまり、カーフシャンクの固有構造や足部キールとカーフシャンクの相互設定の組み合わせが可能なため、障害者および/または技術者は、義足の能力を、障害スポーツやレクリエーション運動などの多様な範囲から選択した動作に最適な性能に合致させることができるのである。
【0028】
図17〜22に示す義足1のカーフシャンクの変更例では、カーフシャンク46と47はC形状、カーフシャンク48と49はS形状、カーフシャンク50と51はJ形状の構造を持つ。カーフシャンクの上端は、その基端部に取り付けるピラミッド形取付板を備えた直線垂直端で構わない。そのカーフシャンクの垂直端に、ピラミッド雄材をボルト固定する。そして、カーフシャンクの基端と先端に設けた開孔に、そのピラミッド雄材と足部キール先端の形状に合致したプラスチック製またはアルミ製の充填材で挿入するのである。本発明の義足は、使用の際の柔軟性や多様性を与えられるよう、標準化された部品や寸法で構成されたモジュラー構造であるのが望ましい。
【0029】
陸上トラックの関する全走行競技は、反時計まわりに行われる。それゆえ、本発明のさらに別の変更例では、そのようなカーブ走路を走行する義足に作用する応力に対処している。エネルギー動作には、ニュートンの第3法則が適用できる。つまり等価で反対の作用が発生する。そのため、「中央寄り」力には、「中央離れ」力が作用する。向心力は回転中心に向けて作用し、遠心力は反発力として回転中心から反対の方向へ作用する。競技者がトラック曲線に沿って走る場合、向心力がカーブ中心に向けて走者を引き付ける一方で、遠心力によりカーブ中心から離れる方向へ走者が引き寄られる。走者を外側へ傾ける遠心力に対抗するため、走者は内側へ傾いて走る。トラック上の走者の回転方向は常に反時計まわりであるため、走者の左側がトラックの内側となる。そのため、本発明の特徴として、義足の左右のカーフシャンクの左側の厚さを右側よりも薄くしてあるため、障害者である走者のカーブ走行能力を向上させることができる。
【0030】
前記変更例の足部キール2、33、38、42、43は、図3、4、5、および、カーフシャンクと足部キールの変更例での図面で示す義足1の寸法構成において、それぞれ長さが29cmである。しかしながら、その義足を装着する障害者のサイズ、体重、その他特性に合わせて、義足の寸法を変更可能なのは当業者には当然理解できよう。
【0031】
次に、歩行や走行の足移動サイクルにおける義足1の動作を説明する。ニュートンの慣性、加速、反発の3つの運動法則が、足部キール2の運動学動作においての基本である。ニュートンの3つの運動法則のうちの反発動作において、足が地面を押す力の同じ大きさで反対方向の地面が足を押し返すことは周知の事実である。それは、地面反発力を呼ばれている。人間の歩行、走行、跳躍の動作に対しては、すでに、さまざまな研究がなされている。力板研究からは、ニュートンの第3法則の歩行への影響が判る。それからは、地面が足を押し返す方向が知られる。
【0032】
歩行/走行の動作における足移動サイクルは、原則段階と加速段階とに分割できる。義足が地面に接すると、足が地面を押すので、それと同じ力で反対方向に地面が足を押し返す。つまり、地面が義足の後端を押し返すのである。その力により、義足が移動する。歩行や走行時の足移動の最初は、図3と18に示すように、足内側よりも外方向で後方向にずれた後端外側角18に接触点がある。そのため、最初の接触点のずれのせいで、足は反対側へ移動、カーフシャンクは表側へ反る。カーフシャンクは、地面からの反発力に対抗する位置に縦本体部をもってくるなど、絶えず体重をシャンク部へ伝播する位置を保とうとする。それが、足を後方向へ押す地面の反発力に対抗しようと、後方への移動や表側への反りの理由である。地面からの反発力により、カーフシャンクは基部端が後方向へ移動して圧縮される。カーフシャンクは径が小さいため、圧縮すると足根関節の裏側への反りをシミュレートし、地面への圧縮により足前部が下がるのである。同時に、足部キール2の上面の後側が圧縮により上方向へ移動する。それら圧縮力の両方とも、衝撃吸収力として作用する。この衝撃吸収力は、さらに、地面が足を後方向に押して、カーフシャンクの裏側への反りが止まると、同じように衝撃吸収力として作用する、後端外側角18が足を反転させる動作により強調されることになる。
【0033】
続いて、足部キールとカーフシャンクの圧縮状態から、元の位置へ戻ろうとする負荷除去動作が開始され、蓄えられたエネルギーが開放され、加速的にカーフシャンクの基端を前方向へ移動させる。カーフシャンクが元の縦開始位置へ近づくにつれ、地面の反発力は後方向への押圧作用から垂直に上方向への押圧作用に変化する。義足は前後側裏面体重負担域を備え、それら両体重負担域が非体重負担域である長いアーチ形状中間部により接続されているため、足からの垂直方向応力によりアーチ形状中間部が拡張付勢できる。そして、前後側裏面体重負担域が拡がる。垂直応力は、地面の反発力が元の垂直方向から前方向へ変化するにつれ、長いアーチ形状のキール中間部に蓄積される。カーフシャンクが拡張して踵部の表側反りをシミュレートする。これにより、義足は前側の裏面体重負担域で枢支移動する。そして、アーチ形状の足後部を、圧縮状態から拡張状態に変化させる。その結果、蓄積された垂直方向応力エネルギーが開放され、拡張能力を高めることになる。
【0034】
足部キールとカーフシャンクのアーチ形状構造は、互いの拡張作用を抑える。その結果、カーフシャンクの前方向移動が停止し、義足は前側の裏面体重負担域で枢支移動する。足部キールの中間部の拡張により、図3〜5、図8、図11と12、図13と14に示す変更例で、動的応答能力の高低変動が可能となる。足部キールの中間部の遷移域が義足長軸から25°から35°偏移しているため、アーチ形状部の内側は外側よりも長い。このことは、加速時や減速時に足の内側を使用するときに重要となる。
【0035】
義足の内側は、外側よりも動的応答性が高い。低速で歩行または走行する場合には、外側の短いほうの足先支点を使う。正弦曲線では、体の重心が移動する。重心は、内側、外側、基部、先端と移動する。低速で歩行または走行する場合、体の重心は高速移動する場合よりもより内側や外側を移動する。加えて、モーメントや慣性が減り、大きな動的応答性に対処する能力が下がる。本発明の義足は、そのような応用物理学の原則に対応できるよう設定されている。
【0036】
地面からの反発力が義足に前方向の押圧を掛けると、義足は地面に対して後方向へ押圧するので、平面に対して垂直な方向に後方向の押圧力を向けられるような長いアーチ形状をもつキール中間部の前端を、足踵が持ち上げようとする。これは、前記の力を作用させるのに最適で高効率な方法である。義足の足後部の部分についても、同様のことがいえる。また、最初の接触の際、後方向の地面反発力が、その力方向と直交する足部キールの平坦面に作用できるような形状構成となっている。
【0037】
足踵を挙げて足先でける歩行または走行時の後半段階では、足前部の放射区域が15°から35°ていど表側へ反る。この上方への弧状態により、前方向の地面反発力がその足前部分を収縮させる。この収縮は拡張よりも抵抗性が弱く、遷移力が義足による走行動作のスイング段階にスムーズに作用する。走行動作の後半段階では、拡張されたカーフシャンクおよびキール中間部により、障害者本体の重心の推進力に加わる蓄積エネルギーが開放される。
【0038】
上記で説明したように、いくつかの変更例の連接開孔や連接ストラットには、足部キールの足前部や足後部の後端面が関係する。連接開孔の配置はマイターヒンジとして作用し、双平面能力が上がって、非平坦な地面を歩行する場合、足の平坦面の全接触能力を改善できる。
【0039】
図9〜12に示すサイム切断用足部キールは、動的応答性が歩行、走行、跳躍などの動作に関連付けられており、それぞれ動的応答性が異なる。足部キールには、4つの異なる特徴がある。まず、サイム切断残留大腿部形状を収容するため、キール中間部の後端が、平坦面でなく凹曲線形状となっている。凹局面を整列させるため、アーチ形状のキール中間部の対応する前後の半径がより積極的で小さいことが必要となる。その結果、中間部の長いアーチ形状の半径も、足後部の半径も狭くて小さい。このことは、動的応答性に少なからず影響を与える。半径が小さいと、動的応答性の潜在能力も低下する。しかしながら、説明した歩行、走行、跳躍時の地面からの反発力に対して、義足は迅速に応答できる。ゆえに、動的応答性が低くても、足動作は迅速となる。
【0040】
本発明の義足を使えば、その部品整列により特定用途の水平方向および垂直方向の部品が影響されるため、部品整列を変えて所望の特定能力を発揮できる。人間の足は、歩行、走行、跳躍のための多機能単位である。一方、頸骨腓骨状カーフシャンクの構造は、多機能単位ではない。むしろ、歩行、走行、跳躍の動作中において、基端方向や先端方向に平行な力を付与する単純な支点機能をする。また、非圧縮構造をもち、エネルギーを蓄積する潜在能力をもたない。その一方で本発明の義足は、装着者の歩行、走行、跳躍の動作や、頸骨腓骨の代替動作として、水平および垂直方向の線形速度要素と関連する。結果として、障害者の競技能力を高める可能性を内在している。その目的のため、本発明では、締付具8を締付調整して、カーフシャンクと足部キールの相互配置をキール縦方向に整列調整する。そのような調整操作を、図1と2に図示する。つまり、締付具8を使って、カーフシャンクを足部キールに所望の調整位置で固定するのである。その調整操作においては、締付具8のボルトを、カーフシャンクを足部キールのそれぞれの縦方向に長い連接開孔9と10内に対してスライド移動させて調整する。
【0041】
例えば、短距離競技中に足平面部を地面に最初に接触させて走る走者の能力を高めるための整列調整の一例として、前記の足部キールをカーフシャンクおよびそれに固定された足裏側に対して前方向へスライド移動させる。その新規整列の結果、走行動作の水平要素を改善できる。つまり、カーフシャンク裏側を足に固定し、最初の足踵の接触と反対に、平坦位置で足を地面に接触させると、地面が足を後方へ押圧し、足は逆に地面を前方向に押圧する。それにより、カーフシャンクが急激に前方向および下方向へ(拡張により)移動する。そのカーフシャンクの最初の動作方向に対抗する拡張作用により、動的応答力が発生する。その結果、足は、中間裏面体重負担域で枢支移動する。そのため、足部キールの中間部が圧縮力を抑制して拡張する。カーフシャンクの拡張とキール中間部の拡張の正味効果の結果、カーフシャンクのさらなる前方への移動が抑制され、装着者の体の膝部伸長や臀部伸長が体の重心を前方基部方向へより効果的に移動させるのである(水平速度の増加)。この場合、足平坦の走者に比べて、表側(垂直方向)へのカーフシャンクの反りが大きいため、カーフシャンクのさらなる前方への移動の抑制が減少される足踵から足先への移動走者の場合よりも、上方向よりもむしろ前方向に移動される。
【0042】
短距離走者機能を分析するため、カーフシャンクと足部キールの整列調整を行った。そこで、凹局面形状全体が前側面に平行な縦軸をもつ足部キールの優位性を用いた。カーフシャンクは、裏側へ反らせて、足部キールの後方向に移動させた。そのせいで、図3〜8に図示の多機能キールを使う平坦足走者の場合に比べて、先端円がさらに降下した。その結果、水平方向移動能力が大きくなり、動的応答性が水平方向能力へ向けられることになる。
【0043】
つまり、短距離走者の移動、応力、初期と運動体としてのモメンタム(慣性)の範囲が増加した。歩行移動の減速段階は加速段階よりも短いため、水平方向線形速度の増加が達成できる。このことは、足先が地面に接する最初の接触時に、地面からの反発力で足を後方へ押圧し、反対に地面は前方向に足に押圧される事実を意味する。応力やモメンタムが増加したカーフシャンクは、最初に平坦面接触する走者のものよりも、湾曲や降下が大きくなる。それら力の結果として、足部アーチ凹形状部には拡張力が負荷され、および、カーフシャンクにも拡張力が負荷される。それら拡張力は、上記で説明した走行におけるどの応力よりも抵抗性が強い。そのため、足の動的応答性は負荷力に比例する。人体の頸骨腓骨の代替のカーフシャンクの応答性は、エネルギー潜在力に関係し、直線構造であり、エネルギーを蓄積しない。本発明の義足の短距離走における拡張力は、歩行や走行に関連する上記で説明したどの応力よりも大きな力である。その結果、足の動的応答能力も。負荷力に比例し、人体機能と比べても、障害者の運動能力の向上が可能となる。
【0044】
図25に示す別の実施例の義足53も、カーフシャンクと足部キール間の可変結合構造、および、パイロンの下端への接続のためのカーフシャンクの内端部の構造を除けば、図3のものと同じである。本変更例の足部キール54は、プラスチック製またはアルミ製の結合要素56にてカーフシャンク55に調整可能に接続されている。結合要素56は、それぞれの脱着可能な、キールの縦方向に沿って互いに間隔おいて配置された締付具57と58により足部キールおよびカーフシャンクに取り付けて有る。結合要素をカーフシャンクに接合する締付具58は、足部キールと結合要素とを接合する締付部57よりも後側の位置にある。カーフシャンクの有効長さを増加させることにより、カーフシャフトの動的応答能力が向上する。また別の変更例として、カーフシャンクや足部キールの縦方向の連接開孔に関連させて、両者の整列を変更することも可能である。
【0045】
前記のカーフシャンク55の上端には、パイロン15を受け入れるための長孔59が設けられている。長孔に挿入した後、パイロン15を締付ボルト60、61でカーフシャンクにクランプして、開孔に沿ったカーフシャンクの自由端62、63を同時に締め付ける。このパイロン結合は、ボルトを緩めて、パイロンをカーフシャンクに対して所望の位置まで移動させた後、パイロンをその調整位置にクランプしてボルトを締めることにより、簡単に調整可能である。
【0046】
本発明のさらに別の実施例の義足64を、図28〜32に示す。この義足64は、前後の裏面体重負担部66と67、および、両体重負担部のあいだにある非体重負担域であるアーチ形状の中間部68を有する、縦方向に伸びる弾性足部キール65を備える。垂直負荷や垂直衝撃力を吸収したり対抗したりできるよう、義足の能力を向上させるために、前記中間部は、義足の使用時に垂直方向の負荷を吸収するため圧縮し、負荷に対抗するため拡張するバネ69で構成されている。バネ69の弾性負荷力は、上記の実施例で説明したように、拡張の際に発生する中間部のアーチ形構造の弾性負荷に加算される。そして、義足への垂直負荷を低減させると同時に、アーチ形状の中間部および中間部の圧縮バネ69に蓄積されたエネルギーが開放されるのである。
【0047】
前記の特徴により、垂直押圧力が付勢最小値(体重の3倍)から付勢最大値(体重の13倍)までの範囲であるような運動中に、垂直方向の押圧が付勢されても破損することなく機能全部を維持できる義足の能力が向上する。この実施例では、アーチ形状の中間部の後端が、下方かつ前方へ巻き込まれており、バネ69を形成している。なお、図31に示すように、足部キール65の後側裏面体重負担部である足後部66が、2本の溝付き締付具70、70を使ったバネ構造により、前記のアーチ形状の中間部68に接続されている。
【0048】
足部キール65は、足踵から足先が地面に接触すると同時に、圧縮により垂直負荷の吸収を開始する複合半径構造を備える。前記の後側裏面体重負担部66を構成する上方向の凹曲面形状の足後部つまり足踵支点が、足踵の接地と同時に、圧縮動作を開始する、つまり、曲率半径が短くなる。そして中間部68を拡張させるが、弾性足部キールの半径が圧縮以上に拡張に対抗するにつれ、その拡張が停止する。足を歩行の中間域へ移動させるにつれ、垂直方向の力が増加して、アーチ形状の中間部68が拡張されると、その中間部の後端のバネ69が圧縮されてエネルギーを蓄積する。さらに、足踵が地面から上がる段階に移り、垂直方向の負荷力が低下すると、足部キールのバネ69とアーチ形状中間部68により、足の動的応答性を高めるよう蓄積されたエネルギーが開放される。
【0049】
義足64を装着した障害者は、散歩などの単純な運動からバスケットボールなどの複雑な運動まで多様なレベルの運動が可能で、いかなる義足の機能をも犠牲にする必要がなく、手動での変更を行う必要もない。後側体重負担域66の前部には、足部キールの表面と裏面とを貫通する連接開孔71が設けられている。その連接開孔71から足部キールの後端まで伸びる延長スロット72により、歩行の際、後側体重負担域66の双平面移動能力を向上させる複数のストラットが形成される。さらに足後部66に、図5、17、18に図示のような形状の後端外側角を備えても構わない。足部キールの足前部67と中間部65にも、図8の斜線で示すような偏向した裏側体重負担面を設けることも可能である。そして、足前部67にも、図5、23、24で示すような複数の延長ストラットを形成することもできる。
【0050】
義足64は、さらに、足部キール65に接続された下方向前側凸曲面下端を備えており、義足の足根関節74を形成している。カーフシャンクは、装着者の足切断部の支持構造体に接続するための足根関節域上方の足肢の下側義足部を形成するため、上方へ伸長している。図示しないが、その装着目的のためカーフシャンクの上端にアダプタを装備しても構わない。足根関節上方のカーフシャンクも、前方向へ凸曲面形状に構成されている。カーフシャンクの上端は、上記の本発明の義足のカーフシャンク変更例で説明したように、ピラミッド結合板を備えた垂直直線部でもよいし、基端に接続されたアダプタを装備しても構わない。
【0051】
カーフシャンクを足部キールに接続する締付装置75は、クランプ76と、クランプを緩めたり締めたりする対向端の脱着可能締付具77、78とを備える。クランプを緩めると、足部キールの縦方向に沿ったカーフシャンクを足部キールの相互整列を調整でき、同時に、足部キールの縦方向に沿ったカーフシャンクを足部キールに結合する傾斜角度も調整できる。上記で説明したように、この調整により義足の動的応答性の方向を変えることができる。前記の実施例では、カーフシャンク73の上部が、足肢の下部義足部を形成している。この上部をさらにほぼ曲線線形状態で上方向へ延長すれば、歩行の際に義足の動的応答性を向上させられるよう、エネルギーを蓄積開放するための地面からの反発力に対応して拡張圧縮動作を可能にする。義足64には、図示しないが、クッションとして作用するゴムや発泡剤のパッドを、足部キールの足前部や足後部の下側に取り付けることもできる。また、別の変更例として、図示しないが、義足に装飾カバーを装備することもでき、当業者に当然ながら理解できるであろう。
【0052】
図29に図示のように、プラスチック製またはゴム製などのウェッジ79を、足部キールとカーフシャンク下端との前側接合部で足部キールにボンド接着する。前記のウェッジは、歩行の際の上方向へ伸びるカーフシャンクの表側への反りを制限するためのストッパとして作用する。ウェッジの大きさは、所望の表側への反り程度に調整するため、義足の縦軸がある平面において幅広や幅狭に自在に選定できる。当然ながら、第1の選択として、カーフシャンクの弾性度は、カーフシャンクや義足の動的機能を最適にするための数値に設定する。
【0053】
図33と34に示す本発明の実施例における義足75は、図28〜32のものと同様であるが、装着者の足切断部位に接続された支持構造体に直接に義足の足部キールを結合するため、アーチ形状の中間部77の後端の表面に接続具76を設けたことに違いがある。この例で接続具76は、反転したピラミッド形状をし、中間部77の後端近くの表面に取り付けられた接続板78に接合されている。ピラミッド形状の接続具は、専用の義足ソケットの対応形状ソケット材に受け入れられ、義足と義足ソケットとを接続している。義足64やカーフシャンクは、多様な弾性材で作成することができる。例えば、それらに制限されるものではないが、プラスチック、ポリマー含浸積層材(カーボンファイバー、ファイバーグラス、エポキシ熱硬化樹脂含浸Kevlar材)、バネ鋼材などの合金、アルミ、チタニウム、商品名がFlexon(弾性チタン)などの弾性素材が挙げられる。
【0054】
以上で、本発明の実施例の説明を終了する。上記の本発明の実施例は説明のためのものであって、それらに限定されるものではなく、本発明の精神、範囲、原理から逸脱することなく、当業者により様々な修正や変更が可能なのも理解できよう。より詳しくは、本発明の精神を逸脱することなく叙上の開示、図面および添付の特許請求の範囲の範囲内で構成要素および/または主題である組み合わせの配列における合理的な変形が可能である。構成要素および/または配列における変形および修正に加えて、代替の使用も当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の義足の足部キールとカーフシャンクを示し、歩行する際の義足の動的応答性や移動能力が、2つの円の正接線Aに垂直な矢印Bの方向に作用する、曲率がR1とR2の2つの隣接円の概略図である。
【図2】正接線A1に垂直な矢印B1の方向が、図1に示す状態よりも水平方向に近づくよう、前記の義足の動的応答性や移動能力の水平要素を増加させ、垂直要素を減少させた、本発明の義足内の2つの円の整列の変化を示す、図1と同様の概略図である。
【図3】障害者の下足肢に義足を固定するため、パイロンアダプタとそれに接続されたパイロンとを備えた、本発明の義足の側面図である。
【図4】図3に図示のパイロンアダプタとパイロンを備えた義足の前面図である。
【図5】図3と4に図示の実施例の上面図である。
【図6】本発明の義足で利用可能な、特に短距離走のための、本発明による足部キールの側面図である。
【図7】図6に図示の足部キールの上面図である。
【図8】双平面移動能力と同様に動的応答性の高低変動をも可能にした、図3に図示の義足の足部キールの底面図である。
【図9】サイム切断足肢をもつ障害者が短距離走を行うのに特に有効な、義足のための本発明の足部キールの別実施例の側面図である。
【図10】図9に図示の足部キールの上面図である。
【図11】義足の双平面移動能力と同様に動的応答性の高低変動をも可能にした、サイム足切断障害者のための、本発明の義足の足部キールの変更例の図である。
【図12】図11に図示の足部キールの上面図である。
【図13】足部キールの厚さが、そのキール中間部からキール足後部までテーパ形状、つまり、徐々に薄くなった本発明の足部キールの側面図である。
【図14】前記の足部キールの厚さが、そのキール中間部から足前部と足後部の両方へテーパー形状になった、前記の足部キールの変更例の側面図である。
【図15】前記のカーフシャンクの厚さがその後端に向けてテーパ形状になった、本発明の義足の放物形状のカーフシャンクのわずかに前上方からみた側面図である。
【図16】その中間部から上端と下端の両方に向けてテーパ形状になった、別のカーフシャンクを示す、図15と同様の側面図である。
【図17】その厚さが中間部から上端と下端の両方に向けてテーパ形状になった、C形状のカーフシャンクの側面図である。
【図18】その厚さが中間部から上端と下端の両方に向けて徐々に薄くなった、前記の義足のC形状カーフシャンクの別変更例の側面図である。
【図19】その厚さが中間部から両端に向けて徐々に薄くなった、前記の義足のS形状カーフシャンクの側面図である。
【図20】その厚さが両端にてテーパ形状になった、S形状カーフシャンクの別変更例の図である。
【図21】両端にてテーパ形状になった、本発明の義足のためのJ形状カーフシャンクの側面図である。
【図22】その厚さが両端にて徐々に薄くなったJ形状カーフシャンクを示す、図21と同様の側面図である。
【図23】図3に図示の前記のカーフシャンクを足部キールへ取り付けるための、本発明の義足の調整可能な締付具で使用するアルミ製またはプラスチック製の接続具のわずかに上方からみた側面図である。
【図24】前記の義足を、障害者の足肢に取り付けるパイロンへ接続するための、図3〜5に図示の前記の義足で使用するパイロンアダプタのわずかに上横方向からみた図である。
【図25】カーフシャンクと足部キールにその接続素子を接続する、2個の縦方向に離間した脱着可能な締付具を備えた接続素子の使用例を示す、図3に図示と同様の、本発明の別の義足の側面図である。
【図26】図25に図示の接続素子の拡大側面図である。
【図27】図25に図示の義足のカーフシャンクの拡大側面図である。
【図28】その足部キールのアーチ形状中間部の後端に、義足の多様な使用における義足への垂直負荷を吸収するための圧縮、それに対抗するための拡張をするバネが形成されている、本発明のさらに別の実施例の義足の後面図である。
【図29】前記の足部キールの上方向アーチ形状中間部の裏面に取り付けられたカーフシャンクを示す、図28に図示の義足の側面図である。
【図30】図28と29に図示の義足の前面図である。
【図31】図28〜30に図示の義足の足部キールの底面図である。
【図32】図28〜30に図示の義足の上面図である。
【図33】その義足の足部キールが、装着者の足切断部位の取り付けた支持構造体に直接に義足の足部キールを接続するため、そのアーチ形状中間部の後端の表面に接続具を備えることが異なる、図28〜32に図示のものと同様の、本発明の義足の別の実施例の側面図である。
【図34】図33に図示の義足の上面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、応用力学に関係する動的応答特性を改善した高性能な義足に関する。
【背景技術】
【0002】
足装着用の無関節式の義足の例が、マーチンらの米国特許第5,897,594号明細書に開示されている。従来のような、足根関節の機能を模倣した人工関節を備えた強固構造をもつ義足の問題解決例と違い、マーチンらの無関節式の義足には、足成形部内に弾性の足挿入部材が備わっている。その挿入部材は、縦断面がほぼC形状であり、後側が開放となっていて、義足への負荷を、上側のC形状肢節で受けて、下側のC形状肢節を経由し、それに接続された板バネへ伝播させるよう構成されている。板バネは、下側からみると凸形状であり、足裏とほぼ平行に、足挿入部を越えて足先部まで延びている。マーチンらの発明は、無関節式擬祖の装着者が自然な歩行ができ、かつ、通常歩行と同時に運動やスポーツを楽しめるよう、普通の足踵への衝撃の緩和性、弾力性、足踵から足先への移動歩行性、横方向安定性などを改善することを目的としている。しかしながら、その従来の義足では、動的応答特性に制限がある。つまり、ラン、ジャンプ、スプリント、スタート、ストップ、カットなどの動作を含む、障害者の運動能力を高めるような、応用機械性能の改善された高性能の義足が必要とされているのである。
【0003】
また、バンLフィリップの開発した義足は、周知の義足の性能にも対応し、従来の構造的限界では制限されるような多様な動作範囲に対応できる機敏性や移動性を障害者に提供できるとしている。ラン、ジャンプ、その他の動作は、その装着者が普通の足と同じように利用可能と提案する、それら従来の義足でカバーできるかも知れない。その他の例として、米国特許第6,071,313号明細書、米国特許第5,993,488号明細書、米国特許第5,899,944号明細書、米国特許第5,800,569号明細書、米国特許第5,800,568号明細書、米国特許第5,728,177号明細書、米国特許第5,728,176号明細書、米国特許第5,824,112号明細書、米国特許第5,593,457号明細書、米国特許第5,514,185号明細書、米国特許第5,181,932号明細書、米国特許第4,822,363号明細書などを参照のこと。
【発明の開示】
【0004】
障害者の競技者が高い能力を獲得するには、実際の人間の足よりも、従来の義足よりも応用物理学的に高性能の義足を使用する必要がある。所望用途に合った動作の水平要素や垂直要素を向上できるよう、微調整が可能であり、応用物理学的に高性能で、動的応答性が高く、整列調整能力がある義足を装着するのが障害者の競技者の要請である。
【0005】
本発明の義足は、上記の要請に応じるものである。本文で説明する実施例に関わる本発明の義足は、一方の端に足前部と、その反対の端に足後部と、足前部と足後部の間に縦方向に伸び、そこから上方向にアーチ形状に形成された比較的長い中間部とからなる縦方向伸長の足部キールを備える。また、下方向に凹曲面形状に形成されたカーフシャンクを備える。そして、義足の足根関節域を形成できるよう、足部キールの上方向アーチ形状中間部に、カーフシャンクの曲面形状の下端を接続するのに、調整可能な締付具が備わっている。
【0006】
前記調整可能締付具により、義足の性能を調整するため、足部キールの縦方向にそったカーフシャンクと足部キールとの相互整列を調整することができる。つまり、カーフシャンクの下方向凹曲面形状の下端と足部キールの上方向アーチ形状中間部との相互整列を、足部キールの縦方向に沿って互いに調整することにより、義足の動的応答性能や運動能力を、必要/所望する水平線形速度と垂直線形速度に関わる特定用途に合わせて変化させるのである。ここで開示する多用途義足は、双平面移動特性だけでなく、動的応答性の高低変化が可能であるため、スポーツおよび/またはレクリエーションへの参加をめざす障害者の運動能力を向上させることができる。
【0007】
本発明のさらなる特徴として、義足の使用時の垂直負荷を吸収するため圧縮作用し、対抗するため拡張作用するバネを、足部キールの上方向アーチ形状中間部に設けて、多様な運動中の垂直負荷力や垂直衝撃力を吸収または対抗できるよう、義足の高性能能力をさらに向上させている。また変更例として、足部キールのアーチ形状中間部の後端を、下方向および前方向にコイル形状にし、バネを形成している。また、バネにより、足部キールの足後部を前記の中間部に接続している。義足に垂直負荷がかかった場合、中間部のアーチ形状による拡張作用だけでなく、バネの圧縮作用によりエネルギーが蓄積される。この中間部に蓄積されたエネルギーは、義足への垂直負荷が軽減されると同時に開放される。そのため、歩行から走行や跳躍などの、垂直負荷が体重の3倍程度から13倍の高い値まで変化するような広い運動の範囲しても、破損することなく、義足の機能を維持できる。
【0008】
本発明のその他の目的や、特徴や、長所は、下記の付随図面を参照した本発明の開示の実施例の詳細な説明の内容から、より明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図面に示すように、図3〜5の実施例の義足1は、一方の端に足前部3と、他方の端に足後部4と、それら足前部と足後部との間で上方向にカーブして比較的長く伸びる足裏部5とからなる縦方向に長い足部キール2を備える。足裏の中間部5は、足前部から足後部への直線距離よりも長く、上方向に凸曲面形成されている。
【0010】
義足1には上方向に伸びるカーフシャンク6が備わり、その下端の凸曲面部7が、脱着可能な締付具8と結合具11とで、足部キールの中間部5の基部の後表面に接続されている。締付具8は、本実施例ではボルトとナットとワッシャの組み合わせであるが、締め付けにより、カーフシャンクを足部キールに確実に位置決めして接続できるのものであれば、脱着可能なクランプやその他の締付具でも構わない。
【0011】
図8に示すように、キール中間部5の基部の後表面には、縦方向に長い開孔9が設けられている。同じように、図15に示すように、カーフシャンク6の曲面後端部7にも、縦方向に長い開孔10が設けられている。そして、要求される義足の性能に合わせるため、締付具8を緩めたり戻したりして、カーフシャンク6と足部キール2の図5の縦方向のA−A断面に沿った相互整列を調整できるよう、締付具8を両方の開孔9と10に貫通取付している。つまり、締付具8と結合具11と縦方向開孔9、10とで、義足の足踵結合部分を構成するための、カーフシャンク6を足部キール2に結合させるための可変調整機構を形成しているのである。
【0012】
カーフシャンク6と足部キール2の整列調整の結果を、図1と図2に示すが、互いに隣り合う2つの円R1とR2は、足部キール中間部5とカーフシャンク6の対向する凸曲面を表している。両方の円が互いに隣接しているため、図1のAおよび図2のA1で示す両円の正接線に垂直な方向への移動が可能となる。つまり、2つの円の相互関係により、移動の方向が決定できる。結果として、義足1の動的応答力が、その位置関係に依存するのである。凹面の半径が大きいほど、動的応答性調整も大きくできる。しかしながら、半径が小さいと、応答性が早くなってしまう。
【0013】
本発明の義足のカーフシャンク6と足部キール2の整列調整により、運動時における義足の運動動作における義足の水平方向または垂直方向の線形速度が変動するよう半径値を調整できる。例えば、義足1の水平方向の線形速度を早くするには、カーフシャンク6と足部キール2の両半径の関係を変える調整を行う。つまり、水平方向線形速度特性を変えるには、下側の足部キールの円R2を、図2のように、図1の開始位置よりも遠くに設定するのである。義足1の動的応答性や運動性能がより水平方向に向けられるので、結果として、与える力が同じでも、水平方向線形速度が大きくなる。
【0014】
障害者はその実際の運動をとおして、水平方向や垂直方向の線形速度に関する、必要とする動作に合わせた設定を決定することができる。例えば、走り高跳び競技者やバスケット選手などは、短距離走者よりも大きな垂直方向の移動を必要とする。結合具11はプラスチック製またはアルミ製のもので、カーフシャンク6と足部キール2の間に装着される(図3、4、23を参照)。締付具8は、その結合具の孔12を貫通している。結合具の位置は、カーフシャンクの取付部とキール中間部5の基部の曲面とに挟まれる。
【0015】
カーフシャンク6の曲面下端部7は、放物線形状に形成されており、放物線曲率半径の最も小さい位置の最下端から前方上方へ伸びる放物線を描く。図3に示すように、カーフシャンクの曲線部は、後方に凹曲面に形成されている。放物線形状の利点は、その基端の大きい半径曲線による水平方向の線形速度の増加と共に、下側端の小さな半径曲線による応答特性の迅速化を達成できるような、動的応答性の改善である。放物線形状の上端の大きな半径曲面のおかげで、図1と2で説明した正接線Aをより垂直方向に移動させることができ、水平方向の線形速度を高めることができるのである。
【0016】
カーフシャンク6の上端には、締付具14によりパイロン調整具13が取り付けてある。そのパイロン調整具13は、さらに、締付具16によりパイロン15の下端部に固定されている。パイロン15は、障害者の下脚部に、その脚部端に固定された支持構造体(図示しない)により接続されている。
【0017】
本実施例では、足部キール2の前部、中間部、後部は一体の弾性材で構成されている。例として、地面からの反発力により歪曲した場合に対する形状保持機能をもつ、可撓性のある固形材を利用できる。具体的には、足部キールやカーフシャンクの材料として、エポキシ熱硬化樹脂で積層された高剛性グラファイト材、Delranという商品名の成形プラスチック材、脱気ポリウレタンコポリマー材などが挙げられる。前記の材料の機能性として、高剛性、軽量、小収縮性がある。熱硬化エポキシ樹脂の積層には、周知の標準真空成形法を利用できる。ポリウレタンコポリマーは雌型成形の後、機械加工をすることができる。前記材料の利用は、当然ながら個別の利点と欠点をもつ。
【0018】
前記弾性材の、剛性、柔軟性、強度などに関する物理的特性は、材料の厚さによって決まる。材料が薄ければ、密度が同じでも厚い材料に比べて歪が大きくなる。足部キールやカーフシャンクの厚さは、図3から5の実施例のように、一定であり対称性をもつ。しかし、長さ方向の厚さは下記で説明するように異なり、例えば、足前部や足後部では薄く、中間部では歪曲に対抗できるよう厚くしても構わない。
【0019】
義足1の動的応答能力に高低変化をつけるため、キール中間部5は、垂直方向曲面部の外側よりも内側の動的応答性が高くなるアーチ曲線形状に構成する。そのため、本実施例では、垂直方向アーチ凹曲線形状の内側の半径を、外側よりも大きくしてある。また、足後部4の後端17は、足踵が地面に接触した際の地面からの反発力に対して衝撃吸収できるよう圧縮作用することができるよう、上方に曲がったアーチ形状に構成されている。足後部4の足踵は、後外側角18が内側角19よりも後方向および外方向に位置しており、歩行の最初の接触局面での踵反転動作を支援する。足前部3の前端20は、歩行の最後の動作局面での足先が離れる位置での実際の足先の湾曲動作をシミュレートできるよう、上方に曲がったアーチ形状に構成されている。そして、足前部と足後部の下側には、クッション材としてゴムパッド53、54が取り付けられている。
【0020】
義足の双平面動作能力を高めるため、足前部3の裏面あいだに外側と内側の連接孔21、22が設けられている。それら連接孔21、22からは、延長スロット23、24が足前部の前端まで伸びており、それゆえ、足部キールの足前部の双平面動作能力を高めるための3つの、内側、中側、外側ストラット部25〜27が形成される。連接孔21と22は、図5のB−B線に沿って配置されており、足部キールの縦方向軸A−Aに対して350°の角度の横方向面において、内側連接孔21が外側連接孔22よりも前側に位置する。また、連接孔21と22は、サジタル面に投影した場合、横方向面に450°の角度で傾斜しており、連接孔の表側は裏側よりも前側に位置する。この配置により、締付具8から外側連接孔22までの距離が、締付具8から内側連接孔21までの距離よりも短くなるため、義足1の足先支点が、外側域のほうが内側域よりも短くなって、中間部5の動的応答能力に変化を与えることができる。
【0021】
足部キール2の足後部4の前端には、さらに、その裏面あいだに連接孔28が設けられている。連接孔28からは、延長スロット29が足後部4の後端まで後方向に伸びており、2つのストラット部30と31を形成する。それら2つのストラット部により、足後部4の双平面動作能力が高まる。
【0022】
図3の番号32に示すように、足部キール2の中間部5と足前部3の表面は、上方向に凹曲面形状に構成されているため、実際の足の動作の第5軸の機能をまねることができる。つまり、凹曲面32の縦方向軸C−Cは、足部キールの縦方向軸A−Aに対して20〜35°の角度13で配置され、その内側が外側よりも前側に位置するため、実際の足の第2〜5の中足の傾斜低ギヤ回転軸のように、歩行の際の第5軸の動作を支援できるのである。
【0023】
双平面移動能力の重要性は、障害者が不均一な地面を歩く場合や、競技者が内側や外側方向にカット移動する場合に必要となる。地面反発力ベクトルの方向が、サジタル面から前平面要素を有する平面に変化する。つまり、義足が外側方向へ押すのと反対方向の内側へ地面が作用する。その結果、カーフシャンクが内側へ傾斜し、足部キールの内側部に体重がかかるのである。その圧力に対して、足部キール2の内側ストラット25と31が表側へ反り(上方へ歪曲)外方向へ回転して、外側ストラット27と30が裏側へ反り(下方へ歪曲)内方向へ回転する。この動作の結果、足の裏面を地面(底側)に対して平坦にすることができる。
【0024】
図6と7に示すように、変更例の短距離走用の足部キール33も、本発明の義足に利用できる。その場合、義足は動的応答性を低くする必要がない。そのため、キール2の足前部や中間部の凹曲面での縦方向軸の35°外側回転の必要もなくなる。それよりも、図6と7に示すように、凹曲面のD−D軸方向が前平面に平行となるのが必要である。そのため、走者の足がサジタル面方向にのみ対応できる。さらに、足前部と中間部のE−E線に沿った2つの連接孔34、35の方向が前平面に平行となり、つまり、外側連接孔35が前方向に移動し、内側孔34に整列し、前平面に平行となる。足部キール2の前端部36も、前平面に平行である。キールの後端の足踵部37も、同じく前平面に平行である。これら変更形状により、義足の多様機能性が犠牲となる。しかし、その動作機能は、特定用途に適合できる。また、短距離走者用キール33の別の特徴を足前部の足先部に施すことができ、その表方向湾曲を15°から25〜40°まで増加させる。
【0025】
図9と10に、サイム(Syme)切断の障害者に有効な、本発明の義足のさらに別変更例の短距離走者用の足部キール38を示す。その用途のため、足部キール38の中間部には、カーフシャンクの曲面下端を足部キールに脱着可能な締付具にて取り付ける、後側の上向きの凹曲面39が備わる。この例の足部キールは、あらゆる下肢障害者が利用できるものである。また足部キール38は、サイム切断障害者の長い残留大腿部を収容できる。その性能特性として、動的応答性が非常に迅速である。そのため、適用も説明レベルの障害者に限定されない。図11と12に示す適用例の足部キール40にも、サイム切断障害者用の凹曲面部41が備わっており、義足の動的応答能力の調整を可能にし、図3〜5および図8に示した実施例のような双平面動作能力も維持できる。
【0026】
前記実施例の義足1の足部キールの複数の変更例の機能特性は、凹曲面、凸曲面、半径、拡張、収縮、および、歩行、走行、跳躍の際の地面からの反発力に対応する材質の物理的特性などを含む形状や設計の構造に関わるものである。
【0027】
図13に示す足部キール42は、図3〜5および図8に示した実施例のものと同様であるが、足部キールの厚さが、中間部から足後部の後端までテーパ状に薄くなっている点が異なる。図14に示す足部キール43は、前端と後端の両方に向けて厚さがテーパ状つまり徐々に薄くなっている。図15には、厚さが同様に変化するカーフシャンク44が図示されており、図16にも、別変更例のカーフシャンク45が図示されており、いずれも義足1に適用可能である。それぞれの足部キールやカーフシャンクの構造は、義足の機能特性に個別の変化を与え、多様な競技者の用途特性を改善するため、水平線形速度や垂直線形速度を変更調整を可能にしている。つまり、カーフシャンクの固有構造や足部キールとカーフシャンクの相互設定の組み合わせが可能なため、障害者および/または技術者は、義足の能力を、障害スポーツやレクリエーション運動などの多様な範囲から選択した動作に最適な性能に合致させることができるのである。
【0028】
図17〜22に示す義足1のカーフシャンクの変更例では、カーフシャンク46と47はC形状、カーフシャンク48と49はS形状、カーフシャンク50と51はJ形状の構造を持つ。カーフシャンクの上端は、その基端部に取り付けるピラミッド形取付板を備えた直線垂直端で構わない。そのカーフシャンクの垂直端に、ピラミッド雄材をボルト固定する。そして、カーフシャンクの基端と先端に設けた開孔に、そのピラミッド雄材と足部キール先端の形状に合致したプラスチック製またはアルミ製の充填材で挿入するのである。本発明の義足は、使用の際の柔軟性や多様性を与えられるよう、標準化された部品や寸法で構成されたモジュラー構造であるのが望ましい。
【0029】
陸上トラックの関する全走行競技は、反時計まわりに行われる。それゆえ、本発明のさらに別の変更例では、そのようなカーブ走路を走行する義足に作用する応力に対処している。エネルギー動作には、ニュートンの第3法則が適用できる。つまり等価で反対の作用が発生する。そのため、「中央寄り」力には、「中央離れ」力が作用する。向心力は回転中心に向けて作用し、遠心力は反発力として回転中心から反対の方向へ作用する。競技者がトラック曲線に沿って走る場合、向心力がカーブ中心に向けて走者を引き付ける一方で、遠心力によりカーブ中心から離れる方向へ走者が引き寄られる。走者を外側へ傾ける遠心力に対抗するため、走者は内側へ傾いて走る。トラック上の走者の回転方向は常に反時計まわりであるため、走者の左側がトラックの内側となる。そのため、本発明の特徴として、義足の左右のカーフシャンクの左側の厚さを右側よりも薄くしてあるため、障害者である走者のカーブ走行能力を向上させることができる。
【0030】
前記変更例の足部キール2、33、38、42、43は、図3、4、5、および、カーフシャンクと足部キールの変更例での図面で示す義足1の寸法構成において、それぞれ長さが29cmである。しかしながら、その義足を装着する障害者のサイズ、体重、その他特性に合わせて、義足の寸法を変更可能なのは当業者には当然理解できよう。
【0031】
次に、歩行や走行の足移動サイクルにおける義足1の動作を説明する。ニュートンの慣性、加速、反発の3つの運動法則が、足部キール2の運動学動作においての基本である。ニュートンの3つの運動法則のうちの反発動作において、足が地面を押す力の同じ大きさで反対方向の地面が足を押し返すことは周知の事実である。それは、地面反発力を呼ばれている。人間の歩行、走行、跳躍の動作に対しては、すでに、さまざまな研究がなされている。力板研究からは、ニュートンの第3法則の歩行への影響が判る。それからは、地面が足を押し返す方向が知られる。
【0032】
歩行/走行の動作における足移動サイクルは、原則段階と加速段階とに分割できる。義足が地面に接すると、足が地面を押すので、それと同じ力で反対方向に地面が足を押し返す。つまり、地面が義足の後端を押し返すのである。その力により、義足が移動する。歩行や走行時の足移動の最初は、図3と18に示すように、足内側よりも外方向で後方向にずれた後端外側角18に接触点がある。そのため、最初の接触点のずれのせいで、足は反対側へ移動、カーフシャンクは表側へ反る。カーフシャンクは、地面からの反発力に対抗する位置に縦本体部をもってくるなど、絶えず体重をシャンク部へ伝播する位置を保とうとする。それが、足を後方向へ押す地面の反発力に対抗しようと、後方への移動や表側への反りの理由である。地面からの反発力により、カーフシャンクは基部端が後方向へ移動して圧縮される。カーフシャンクは径が小さいため、圧縮すると足根関節の裏側への反りをシミュレートし、地面への圧縮により足前部が下がるのである。同時に、足部キール2の上面の後側が圧縮により上方向へ移動する。それら圧縮力の両方とも、衝撃吸収力として作用する。この衝撃吸収力は、さらに、地面が足を後方向に押して、カーフシャンクの裏側への反りが止まると、同じように衝撃吸収力として作用する、後端外側角18が足を反転させる動作により強調されることになる。
【0033】
続いて、足部キールとカーフシャンクの圧縮状態から、元の位置へ戻ろうとする負荷除去動作が開始され、蓄えられたエネルギーが開放され、加速的にカーフシャンクの基端を前方向へ移動させる。カーフシャンクが元の縦開始位置へ近づくにつれ、地面の反発力は後方向への押圧作用から垂直に上方向への押圧作用に変化する。義足は前後側裏面体重負担域を備え、それら両体重負担域が非体重負担域である長いアーチ形状中間部により接続されているため、足からの垂直方向応力によりアーチ形状中間部が拡張付勢できる。そして、前後側裏面体重負担域が拡がる。垂直応力は、地面の反発力が元の垂直方向から前方向へ変化するにつれ、長いアーチ形状のキール中間部に蓄積される。カーフシャンクが拡張して踵部の表側反りをシミュレートする。これにより、義足は前側の裏面体重負担域で枢支移動する。そして、アーチ形状の足後部を、圧縮状態から拡張状態に変化させる。その結果、蓄積された垂直方向応力エネルギーが開放され、拡張能力を高めることになる。
【0034】
足部キールとカーフシャンクのアーチ形状構造は、互いの拡張作用を抑える。その結果、カーフシャンクの前方向移動が停止し、義足は前側の裏面体重負担域で枢支移動する。足部キールの中間部の拡張により、図3〜5、図8、図11と12、図13と14に示す変更例で、動的応答能力の高低変動が可能となる。足部キールの中間部の遷移域が義足長軸から25°から35°偏移しているため、アーチ形状部の内側は外側よりも長い。このことは、加速時や減速時に足の内側を使用するときに重要となる。
【0035】
義足の内側は、外側よりも動的応答性が高い。低速で歩行または走行する場合には、外側の短いほうの足先支点を使う。正弦曲線では、体の重心が移動する。重心は、内側、外側、基部、先端と移動する。低速で歩行または走行する場合、体の重心は高速移動する場合よりもより内側や外側を移動する。加えて、モーメントや慣性が減り、大きな動的応答性に対処する能力が下がる。本発明の義足は、そのような応用物理学の原則に対応できるよう設定されている。
【0036】
地面からの反発力が義足に前方向の押圧を掛けると、義足は地面に対して後方向へ押圧するので、平面に対して垂直な方向に後方向の押圧力を向けられるような長いアーチ形状をもつキール中間部の前端を、足踵が持ち上げようとする。これは、前記の力を作用させるのに最適で高効率な方法である。義足の足後部の部分についても、同様のことがいえる。また、最初の接触の際、後方向の地面反発力が、その力方向と直交する足部キールの平坦面に作用できるような形状構成となっている。
【0037】
足踵を挙げて足先でける歩行または走行時の後半段階では、足前部の放射区域が15°から35°ていど表側へ反る。この上方への弧状態により、前方向の地面反発力がその足前部分を収縮させる。この収縮は拡張よりも抵抗性が弱く、遷移力が義足による走行動作のスイング段階にスムーズに作用する。走行動作の後半段階では、拡張されたカーフシャンクおよびキール中間部により、障害者本体の重心の推進力に加わる蓄積エネルギーが開放される。
【0038】
上記で説明したように、いくつかの変更例の連接開孔や連接ストラットには、足部キールの足前部や足後部の後端面が関係する。連接開孔の配置はマイターヒンジとして作用し、双平面能力が上がって、非平坦な地面を歩行する場合、足の平坦面の全接触能力を改善できる。
【0039】
図9〜12に示すサイム切断用足部キールは、動的応答性が歩行、走行、跳躍などの動作に関連付けられており、それぞれ動的応答性が異なる。足部キールには、4つの異なる特徴がある。まず、サイム切断残留大腿部形状を収容するため、キール中間部の後端が、平坦面でなく凹曲線形状となっている。凹局面を整列させるため、アーチ形状のキール中間部の対応する前後の半径がより積極的で小さいことが必要となる。その結果、中間部の長いアーチ形状の半径も、足後部の半径も狭くて小さい。このことは、動的応答性に少なからず影響を与える。半径が小さいと、動的応答性の潜在能力も低下する。しかしながら、説明した歩行、走行、跳躍時の地面からの反発力に対して、義足は迅速に応答できる。ゆえに、動的応答性が低くても、足動作は迅速となる。
【0040】
本発明の義足を使えば、その部品整列により特定用途の水平方向および垂直方向の部品が影響されるため、部品整列を変えて所望の特定能力を発揮できる。人間の足は、歩行、走行、跳躍のための多機能単位である。一方、頸骨腓骨状カーフシャンクの構造は、多機能単位ではない。むしろ、歩行、走行、跳躍の動作中において、基端方向や先端方向に平行な力を付与する単純な支点機能をする。また、非圧縮構造をもち、エネルギーを蓄積する潜在能力をもたない。その一方で本発明の義足は、装着者の歩行、走行、跳躍の動作や、頸骨腓骨の代替動作として、水平および垂直方向の線形速度要素と関連する。結果として、障害者の競技能力を高める可能性を内在している。その目的のため、本発明では、締付具8を締付調整して、カーフシャンクと足部キールの相互配置をキール縦方向に整列調整する。そのような調整操作を、図1と2に図示する。つまり、締付具8を使って、カーフシャンクを足部キールに所望の調整位置で固定するのである。その調整操作においては、締付具8のボルトを、カーフシャンクを足部キールのそれぞれの縦方向に長い連接開孔9と10内に対してスライド移動させて調整する。
【0041】
例えば、短距離競技中に足平面部を地面に最初に接触させて走る走者の能力を高めるための整列調整の一例として、前記の足部キールをカーフシャンクおよびそれに固定された足裏側に対して前方向へスライド移動させる。その新規整列の結果、走行動作の水平要素を改善できる。つまり、カーフシャンク裏側を足に固定し、最初の足踵の接触と反対に、平坦位置で足を地面に接触させると、地面が足を後方へ押圧し、足は逆に地面を前方向に押圧する。それにより、カーフシャンクが急激に前方向および下方向へ(拡張により)移動する。そのカーフシャンクの最初の動作方向に対抗する拡張作用により、動的応答力が発生する。その結果、足は、中間裏面体重負担域で枢支移動する。そのため、足部キールの中間部が圧縮力を抑制して拡張する。カーフシャンクの拡張とキール中間部の拡張の正味効果の結果、カーフシャンクのさらなる前方への移動が抑制され、装着者の体の膝部伸長や臀部伸長が体の重心を前方基部方向へより効果的に移動させるのである(水平速度の増加)。この場合、足平坦の走者に比べて、表側(垂直方向)へのカーフシャンクの反りが大きいため、カーフシャンクのさらなる前方への移動の抑制が減少される足踵から足先への移動走者の場合よりも、上方向よりもむしろ前方向に移動される。
【0042】
短距離走者機能を分析するため、カーフシャンクと足部キールの整列調整を行った。そこで、凹局面形状全体が前側面に平行な縦軸をもつ足部キールの優位性を用いた。カーフシャンクは、裏側へ反らせて、足部キールの後方向に移動させた。そのせいで、図3〜8に図示の多機能キールを使う平坦足走者の場合に比べて、先端円がさらに降下した。その結果、水平方向移動能力が大きくなり、動的応答性が水平方向能力へ向けられることになる。
【0043】
つまり、短距離走者の移動、応力、初期と運動体としてのモメンタム(慣性)の範囲が増加した。歩行移動の減速段階は加速段階よりも短いため、水平方向線形速度の増加が達成できる。このことは、足先が地面に接する最初の接触時に、地面からの反発力で足を後方へ押圧し、反対に地面は前方向に足に押圧される事実を意味する。応力やモメンタムが増加したカーフシャンクは、最初に平坦面接触する走者のものよりも、湾曲や降下が大きくなる。それら力の結果として、足部アーチ凹形状部には拡張力が負荷され、および、カーフシャンクにも拡張力が負荷される。それら拡張力は、上記で説明した走行におけるどの応力よりも抵抗性が強い。そのため、足の動的応答性は負荷力に比例する。人体の頸骨腓骨の代替のカーフシャンクの応答性は、エネルギー潜在力に関係し、直線構造であり、エネルギーを蓄積しない。本発明の義足の短距離走における拡張力は、歩行や走行に関連する上記で説明したどの応力よりも大きな力である。その結果、足の動的応答能力も。負荷力に比例し、人体機能と比べても、障害者の運動能力の向上が可能となる。
【0044】
図25に示す別の実施例の義足53も、カーフシャンクと足部キール間の可変結合構造、および、パイロンの下端への接続のためのカーフシャンクの内端部の構造を除けば、図3のものと同じである。本変更例の足部キール54は、プラスチック製またはアルミ製の結合要素56にてカーフシャンク55に調整可能に接続されている。結合要素56は、それぞれの脱着可能な、キールの縦方向に沿って互いに間隔おいて配置された締付具57と58により足部キールおよびカーフシャンクに取り付けて有る。結合要素をカーフシャンクに接合する締付具58は、足部キールと結合要素とを接合する締付部57よりも後側の位置にある。カーフシャンクの有効長さを増加させることにより、カーフシャフトの動的応答能力が向上する。また別の変更例として、カーフシャンクや足部キールの縦方向の連接開孔に関連させて、両者の整列を変更することも可能である。
【0045】
前記のカーフシャンク55の上端には、パイロン15を受け入れるための長孔59が設けられている。長孔に挿入した後、パイロン15を締付ボルト60、61でカーフシャンクにクランプして、開孔に沿ったカーフシャンクの自由端62、63を同時に締め付ける。このパイロン結合は、ボルトを緩めて、パイロンをカーフシャンクに対して所望の位置まで移動させた後、パイロンをその調整位置にクランプしてボルトを締めることにより、簡単に調整可能である。
【0046】
本発明のさらに別の実施例の義足64を、図28〜32に示す。この義足64は、前後の裏面体重負担部66と67、および、両体重負担部のあいだにある非体重負担域であるアーチ形状の中間部68を有する、縦方向に伸びる弾性足部キール65を備える。垂直負荷や垂直衝撃力を吸収したり対抗したりできるよう、義足の能力を向上させるために、前記中間部は、義足の使用時に垂直方向の負荷を吸収するため圧縮し、負荷に対抗するため拡張するバネ69で構成されている。バネ69の弾性負荷力は、上記の実施例で説明したように、拡張の際に発生する中間部のアーチ形構造の弾性負荷に加算される。そして、義足への垂直負荷を低減させると同時に、アーチ形状の中間部および中間部の圧縮バネ69に蓄積されたエネルギーが開放されるのである。
【0047】
前記の特徴により、垂直押圧力が付勢最小値(体重の3倍)から付勢最大値(体重の13倍)までの範囲であるような運動中に、垂直方向の押圧が付勢されても破損することなく機能全部を維持できる義足の能力が向上する。この実施例では、アーチ形状の中間部の後端が、下方かつ前方へ巻き込まれており、バネ69を形成している。なお、図31に示すように、足部キール65の後側裏面体重負担部である足後部66が、2本の溝付き締付具70、70を使ったバネ構造により、前記のアーチ形状の中間部68に接続されている。
【0048】
足部キール65は、足踵から足先が地面に接触すると同時に、圧縮により垂直負荷の吸収を開始する複合半径構造を備える。前記の後側裏面体重負担部66を構成する上方向の凹曲面形状の足後部つまり足踵支点が、足踵の接地と同時に、圧縮動作を開始する、つまり、曲率半径が短くなる。そして中間部68を拡張させるが、弾性足部キールの半径が圧縮以上に拡張に対抗するにつれ、その拡張が停止する。足を歩行の中間域へ移動させるにつれ、垂直方向の力が増加して、アーチ形状の中間部68が拡張されると、その中間部の後端のバネ69が圧縮されてエネルギーを蓄積する。さらに、足踵が地面から上がる段階に移り、垂直方向の負荷力が低下すると、足部キールのバネ69とアーチ形状中間部68により、足の動的応答性を高めるよう蓄積されたエネルギーが開放される。
【0049】
義足64を装着した障害者は、散歩などの単純な運動からバスケットボールなどの複雑な運動まで多様なレベルの運動が可能で、いかなる義足の機能をも犠牲にする必要がなく、手動での変更を行う必要もない。後側体重負担域66の前部には、足部キールの表面と裏面とを貫通する連接開孔71が設けられている。その連接開孔71から足部キールの後端まで伸びる延長スロット72により、歩行の際、後側体重負担域66の双平面移動能力を向上させる複数のストラットが形成される。さらに足後部66に、図5、17、18に図示のような形状の後端外側角を備えても構わない。足部キールの足前部67と中間部65にも、図8の斜線で示すような偏向した裏側体重負担面を設けることも可能である。そして、足前部67にも、図5、23、24で示すような複数の延長ストラットを形成することもできる。
【0050】
義足64は、さらに、足部キール65に接続された下方向前側凸曲面下端を備えており、義足の足根関節74を形成している。カーフシャンクは、装着者の足切断部の支持構造体に接続するための足根関節域上方の足肢の下側義足部を形成するため、上方へ伸長している。図示しないが、その装着目的のためカーフシャンクの上端にアダプタを装備しても構わない。足根関節上方のカーフシャンクも、前方向へ凸曲面形状に構成されている。カーフシャンクの上端は、上記の本発明の義足のカーフシャンク変更例で説明したように、ピラミッド結合板を備えた垂直直線部でもよいし、基端に接続されたアダプタを装備しても構わない。
【0051】
カーフシャンクを足部キールに接続する締付装置75は、クランプ76と、クランプを緩めたり締めたりする対向端の脱着可能締付具77、78とを備える。クランプを緩めると、足部キールの縦方向に沿ったカーフシャンクを足部キールの相互整列を調整でき、同時に、足部キールの縦方向に沿ったカーフシャンクを足部キールに結合する傾斜角度も調整できる。上記で説明したように、この調整により義足の動的応答性の方向を変えることができる。前記の実施例では、カーフシャンク73の上部が、足肢の下部義足部を形成している。この上部をさらにほぼ曲線線形状態で上方向へ延長すれば、歩行の際に義足の動的応答性を向上させられるよう、エネルギーを蓄積開放するための地面からの反発力に対応して拡張圧縮動作を可能にする。義足64には、図示しないが、クッションとして作用するゴムや発泡剤のパッドを、足部キールの足前部や足後部の下側に取り付けることもできる。また、別の変更例として、図示しないが、義足に装飾カバーを装備することもでき、当業者に当然ながら理解できるであろう。
【0052】
図29に図示のように、プラスチック製またはゴム製などのウェッジ79を、足部キールとカーフシャンク下端との前側接合部で足部キールにボンド接着する。前記のウェッジは、歩行の際の上方向へ伸びるカーフシャンクの表側への反りを制限するためのストッパとして作用する。ウェッジの大きさは、所望の表側への反り程度に調整するため、義足の縦軸がある平面において幅広や幅狭に自在に選定できる。当然ながら、第1の選択として、カーフシャンクの弾性度は、カーフシャンクや義足の動的機能を最適にするための数値に設定する。
【0053】
図33と34に示す本発明の実施例における義足75は、図28〜32のものと同様であるが、装着者の足切断部位に接続された支持構造体に直接に義足の足部キールを結合するため、アーチ形状の中間部77の後端の表面に接続具76を設けたことに違いがある。この例で接続具76は、反転したピラミッド形状をし、中間部77の後端近くの表面に取り付けられた接続板78に接合されている。ピラミッド形状の接続具は、専用の義足ソケットの対応形状ソケット材に受け入れられ、義足と義足ソケットとを接続している。義足64やカーフシャンクは、多様な弾性材で作成することができる。例えば、それらに制限されるものではないが、プラスチック、ポリマー含浸積層材(カーボンファイバー、ファイバーグラス、エポキシ熱硬化樹脂含浸Kevlar材)、バネ鋼材などの合金、アルミ、チタニウム、商品名がFlexon(弾性チタン)などの弾性素材が挙げられる。
【0054】
以上で、本発明の実施例の説明を終了する。上記の本発明の実施例は説明のためのものであって、それらに限定されるものではなく、本発明の精神、範囲、原理から逸脱することなく、当業者により様々な修正や変更が可能なのも理解できよう。より詳しくは、本発明の精神を逸脱することなく叙上の開示、図面および添付の特許請求の範囲の範囲内で構成要素および/または主題である組み合わせの配列における合理的な変形が可能である。構成要素および/または配列における変形および修正に加えて、代替の使用も当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の義足の足部キールとカーフシャンクを示し、歩行する際の義足の動的応答性や移動能力が、2つの円の正接線Aに垂直な矢印Bの方向に作用する、曲率がR1とR2の2つの隣接円の概略図である。
【図2】正接線A1に垂直な矢印B1の方向が、図1に示す状態よりも水平方向に近づくよう、前記の義足の動的応答性や移動能力の水平要素を増加させ、垂直要素を減少させた、本発明の義足内の2つの円の整列の変化を示す、図1と同様の概略図である。
【図3】障害者の下足肢に義足を固定するため、パイロンアダプタとそれに接続されたパイロンとを備えた、本発明の義足の側面図である。
【図4】図3に図示のパイロンアダプタとパイロンを備えた義足の前面図である。
【図5】図3と4に図示の実施例の上面図である。
【図6】本発明の義足で利用可能な、特に短距離走のための、本発明による足部キールの側面図である。
【図7】図6に図示の足部キールの上面図である。
【図8】双平面移動能力と同様に動的応答性の高低変動をも可能にした、図3に図示の義足の足部キールの底面図である。
【図9】サイム切断足肢をもつ障害者が短距離走を行うのに特に有効な、義足のための本発明の足部キールの別実施例の側面図である。
【図10】図9に図示の足部キールの上面図である。
【図11】義足の双平面移動能力と同様に動的応答性の高低変動をも可能にした、サイム足切断障害者のための、本発明の義足の足部キールの変更例の図である。
【図12】図11に図示の足部キールの上面図である。
【図13】足部キールの厚さが、そのキール中間部からキール足後部までテーパ形状、つまり、徐々に薄くなった本発明の足部キールの側面図である。
【図14】前記の足部キールの厚さが、そのキール中間部から足前部と足後部の両方へテーパー形状になった、前記の足部キールの変更例の側面図である。
【図15】前記のカーフシャンクの厚さがその後端に向けてテーパ形状になった、本発明の義足の放物形状のカーフシャンクのわずかに前上方からみた側面図である。
【図16】その中間部から上端と下端の両方に向けてテーパ形状になった、別のカーフシャンクを示す、図15と同様の側面図である。
【図17】その厚さが中間部から上端と下端の両方に向けてテーパ形状になった、C形状のカーフシャンクの側面図である。
【図18】その厚さが中間部から上端と下端の両方に向けて徐々に薄くなった、前記の義足のC形状カーフシャンクの別変更例の側面図である。
【図19】その厚さが中間部から両端に向けて徐々に薄くなった、前記の義足のS形状カーフシャンクの側面図である。
【図20】その厚さが両端にてテーパ形状になった、S形状カーフシャンクの別変更例の図である。
【図21】両端にてテーパ形状になった、本発明の義足のためのJ形状カーフシャンクの側面図である。
【図22】その厚さが両端にて徐々に薄くなったJ形状カーフシャンクを示す、図21と同様の側面図である。
【図23】図3に図示の前記のカーフシャンクを足部キールへ取り付けるための、本発明の義足の調整可能な締付具で使用するアルミ製またはプラスチック製の接続具のわずかに上方からみた側面図である。
【図24】前記の義足を、障害者の足肢に取り付けるパイロンへ接続するための、図3〜5に図示の前記の義足で使用するパイロンアダプタのわずかに上横方向からみた図である。
【図25】カーフシャンクと足部キールにその接続素子を接続する、2個の縦方向に離間した脱着可能な締付具を備えた接続素子の使用例を示す、図3に図示と同様の、本発明の別の義足の側面図である。
【図26】図25に図示の接続素子の拡大側面図である。
【図27】図25に図示の義足のカーフシャンクの拡大側面図である。
【図28】その足部キールのアーチ形状中間部の後端に、義足の多様な使用における義足への垂直負荷を吸収するための圧縮、それに対抗するための拡張をするバネが形成されている、本発明のさらに別の実施例の義足の後面図である。
【図29】前記の足部キールの上方向アーチ形状中間部の裏面に取り付けられたカーフシャンクを示す、図28に図示の義足の側面図である。
【図30】図28と29に図示の義足の前面図である。
【図31】図28〜30に図示の義足の足部キールの底面図である。
【図32】図28〜30に図示の義足の上面図である。
【図33】その義足の足部キールが、装着者の足切断部位の取り付けた支持構造体に直接に義足の足部キールを接続するため、そのアーチ形状中間部の後端の表面に接続具を備えることが異なる、図28〜32に図示のものと同様の、本発明の義足の別の実施例の側面図である。
【図34】図33に図示の義足の上面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
義足用の縦方向伸長足部キールであって、前後側の体重負担域を備え、それら両体重負担域間に非体重負荷のアーチ形状中間部を備え、前記中間部が、義足の足部キールを使用する際の垂直負荷に対し、圧縮して吸収し、拡張して対抗できるバネで構成されている義足用の縦方向伸長足部キール。
【請求項2】
前記アーチ形状中間部の後端が、前記バネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項3】
前記足部キールの後側裏面体重負担域が、前記バネにより前記アーチ形状中間部に接続されている請求項1記載の足部キール。
【請求項4】
前記アーチ形状中間部が、前記足部キールの前側裏面体重負担域まで連続的に伸びている請求項1記載の足部キール。
【請求項5】
さらに、前記足部キールを、装着者の足切断部に接続された支持構造体に接続するため、前記アーチ形状中間部の後側の表面上に取り付けられた接続具を備える請求項1記載の足部キール。
【請求項6】
前記足部キールの両前後側裏面体重負担域が、上方に凹曲面状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項7】
前記中間部が、前記前側裏面体重負担域からアーチ形状中間部の後端まで縦方向全領域にわたって、上方に凸曲面状に形成されており、その中間部後端が、バネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項8】
さらに、カーフシャンクの下端を前記足部キールに接続するため、前記中間部の後側の表面上に取り付けられた接続具を備える請求項1記載の足部キール。
【請求項9】
前記アーチ形状中間部上の接続具の縦方向位置が、調整可能である請求項8記載の足部キール。
【請求項10】
前記中間部の前側体重負担域の表面が、上方向の凹曲面形状に形成されており、前記凹曲面形状が、前記足部キールの前平面に平行に伸びる縦軸をもつ請求項1記載の足部キール。
【請求項11】
前記前側体重負担域の前端が、歩行の際の後半段階で足踵が上がり足先が離れる場合に、実際の足先が表面側へ反るのをシミュレートできるよう、上方向の凹曲面形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項12】
前記後側体重負担域の後端が、衝撃吸収のため圧縮作用して、足踵が接地するとき地面からの反発力に対抗できるよう、上方向のアーチ曲面形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項13】
前記後側体重負担域の前部が、歩行の際に義足の後側体重負担域の双平面移動能力を向上するための複数の延長ストラットを形成できるよう、前記足部キールの表面と裏面の間を貫通する連接開孔、および、その連接開孔から足部キールの後端まで伸びる延長スロットを備える請求項1記載の足部キール。
【請求項14】
義足であって、前後側の裏面体重負担域、および、その両前後体重負担域間の非体重負担域であるアーチ形状中間部を設けた縦方向に伸びる足部キールを備え、前記中間部が、義足の使用する際の垂直負荷に対し、圧縮して吸収し、拡張して対抗できるバネで構成されている義足。
【請求項15】
さらに、義足の足根関節域を形成できるよう、前記足部キールに接続された下方向および前方向に凸曲面形状に形成された下端部を設けた弾性立設カーフシャンクを備え、前記カーフシャンクが、装着者の切断部位上の支持構造体に接続するため、前記足根関節域の上方に足肢の下部義肢部を形成できるよう上方向へ伸長する請求項14記載の義足。
【請求項16】
前記足根関節域の上方のカーフシャンクが、前方向に凸曲面形状に形成されている請求項15記載の義足。
【請求項17】
さらに、前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する締付具を備え、前記締付具が、前記足部キールの縦方向に沿った前記カーフシャンクの前記足部キールとの相互整列を調整できるよう、調整可能である請求項15記載の義足。
【請求項18】
さらに、前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する締付具を備え、前記締付具が、前記足部キールの縦方向に沿って前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する傾斜角度を調整する手段を備える請求項15記載の義足。
【請求項19】
前記足肢の下側義足部を形成するカーフシャンクが、歩行の際の義足の動的応答性を向上させるため、エネルギーを蓄積開放により地面からの反発力に対抗して拡張や圧縮が可能となるよう、ほぼ曲線線形状態で上方向に伸長する請求項15記載の義足。
【請求項20】
前記アーチ形状中間部の後端が、前記バネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項14記載の義足。
【請求項21】
前記足部キールの後側裏面体重負担域が、前記バネにより前記のアーチ形状中間部に接続されている請求項14記載の義足。
【請求項22】
前記アーチ形状中間部が、前記足部キールの前側裏面体重負担域まで連続的に伸長している請求項14記載の義足。
【請求項23】
さらに、装着者の足切断部位に取り付けた支持構造体に義足を接続するため、前記アーチ形状中間部の後端の表面に設けられた接続具を備える請求項14記載の義足。
【請求項24】
前記足部キールの両前後側裏面体重負担域のそれぞれが、上方向に凹曲面形状に形成されている請求項14記載の義足。
【請求項25】
前後側の裏面体重負担域を設けた足部キールと、それら両裏面体重負担域間に伸長する非体重負担域であり、その後端でコイルバネを形成したアーチ形状中間部とを備えた義足の、多様な運動中での義足に対する垂直方向の負荷を吸収したり復元したりする方法であって、前記義足への垂直押圧力に応答して、前記アーチ形状中間部の拡張作用により弾性負荷し、前記中間部のコイルバネの圧縮作用により弾性負荷する工程と、前記義足への垂直方向の押圧力を低減すると同時に、前記中間部により蓄積されたエネルギーを復元する工程とからなる、義足の垂直方向の負荷の吸収および復元方法。
【請求項26】
前記足部キールの前後側裏面体重負担域のそれぞれが、上方向に凹曲面形状に形成されており、前記方法が、さらに、歩行の際に義足が足踵足先で地面に接触すると同時に、前記足部キールの両体重負担域の曲面形状の圧縮と拡張のそれぞれの作用により、前記垂直押圧力を吸収や対抗する工程とを備える請求項25記載の義足の垂直方向の負荷の吸収および復元方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
義足用の縦方向伸長足部キールであって、前後側の体重負担域を備え、それら両体重負担域間に非体重負荷のアーチ形状中間部を備え、前記中間部が、義足の足部キールを使用する際の垂直負荷に対し、圧縮して吸収し、拡張して対抗できるコイルバネで構成されている義足用の縦方向伸長足部キール。
【請求項2】
前記アーチ形状中間部の後端が、前記コイルバネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項3】
前記足部キールの後側裏面体重負担域が、前記コイルバネにより前記アーチ形状中間部に接続されている請求項1記載の足部キール。
【請求項4】
前記アーチ形状中間部が、前記足部キールの前側裏面体重負担域まで連続的に伸びている請求項1記載の足部キール。
【請求項5】
さらに、前記足部キールを、装着者の足切断部に接続された支持構造体に接続するため、前記アーチ形状中間部の後側の表面上に取り付けられた接続具を備える請求項1記載の足部キール。
【請求項6】
前記足部キールの両前後側裏面体重負担域が、上方に凹曲面状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項7】
前記中間部が、前記前側裏面体重負担域からアーチ形状中間部の後端まで縦方向全領域にわたって、上方に凸曲面状に形成されており、その中間部後端が、バネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項8】
さらに、カーフシャンクの下端を前記足部キールに接続するため、前記中間部の後側の表面上に取り付けられた接続具を備える請求項1記載の足部キール。
【請求項9】
前記アーチ形状中間部上の接続具の縦方向位置が、調整可能である請求項8記載の足部キール。
【請求項10】
前記中間部の前側体重負担域の表面が、上方向の凹曲面形状に形成されており、前記凹曲面形状が、前記足部キールの前平面に平行に伸びる縦軸をもつ請求項1記載の足部キール。
【請求項11】
前記前側体重負担域の前端が、歩行の際の後半段階で足踵が上がり足先が離れる場合に、実際の足先が表面側へ反るのをシミュレートできるよう、上方向の凹曲面形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項12】
前記後側体重負担域の後端が、衝撃吸収のため圧縮作用して、足踵が接地するとき地面からの反発力に対抗できるよう、上方向のアーチ曲面形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項13】
前記後側体重負担域の前部が、歩行の際に義足の後側体重負担域の双平面移動能力を向上するための複数の延長ストラットを形成できるよう、前記足部キールの表面と裏面の間を貫通する連接開孔、および、その連接開孔から足部キールの後端まで伸びる延長スロットを備える請求項1記載の足部キール。
【請求項14】
義足であって、前後側の裏面体重負担域、および、その両前後体重負担域間の非体重負担域であるアーチ形状中間部を設けた縦方向に伸びる足部キールを備え、前記中間部が、義足の使用する際の垂直負荷に対し、圧縮して吸収し、拡張して対抗できるコイルバネで構成されている義足。
【請求項15】
さらに、義足の足根関節域を形成できるよう、前記足部キールに接続された下方向および前方向に凸曲面形状に形成された下端部を設けた弾性立設カーフシャンクを備え、前記カーフシャンクが、装着者の切断部位上の支持構造体に接続するため、前記足根関節域の上方に足肢の下部義肢部を形成できるよう上方向へ伸長する請求項14記載の義足。
【請求項16】
前記足根関節域の上方のカーフシャンクが、前方向に凸曲面形状に形成されている請求項15記載の義足。
【請求項17】
さらに、前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する締付具を備え、前記締付具が、前記足部キールの縦方向に沿った前記カーフシャンクの前記足部キールとの相互整列を調整できるよう、調整可能である請求項15記載の義足。
【請求項18】
さらに、前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する締付具を備え、前記締付具が、前記足部キールの縦方向に沿って前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する傾斜角度を調整する手段を備える請求項15記載の義足。
【請求項19】
前記足肢の下側義足部を形成するカーフシャンクが、歩行の際の義足の動的応答性を向上させるため、エネルギーを蓄積開放により地面からの反発力に対抗して拡張や圧縮が可能となるよう、ほぼ曲線線形状態で上方向に伸長する請求項15記載の義足。
【請求項20】
前記アーチ形状中間部の後端が、前記コイルバネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項14記載の義足。
【請求項21】
前記足部キールの後側裏面体重負担域が、前記バネにより前記のアーチ形状中間部に接続されている請求項14記載の義足。
【請求項22】
前記アーチ形状中間部が、前記足部キールの前側裏面体重負担域まで連続的に伸長している請求項14記載の義足。
【請求項23】
さらに、装着者の足切断部位に取り付けた支持構造体に義足を接続するため、前記アーチ形状中間部の後端の表面に設けられた接続具を備える請求項14記載の義足。
【請求項24】
前記足部キールの両前後側裏面体重負担域のそれぞれが、上方向に凹曲面形状に形成されている請求項14記載の義足。
【請求項25】
前後側の裏面体重負担域を設けた足部キールと、それら両裏面体重負担域間に伸長する非体重負担域であり、その後端でコイルバネを形成したアーチ形状中間部とを備えた義足の、多様な運動中での義足に対する垂直方向の負荷を吸収したり復元したりする方法であって、前記義足への垂直押圧力に応答して、前記アーチ形状中間部の拡張作用により弾性負荷し、前記中間部のコイルバネの圧縮作用により弾性負荷する工程と、前記義足への垂直方向の押圧力を低減すると同時に、前記アーチ形状中間部の圧縮されたコイルバネにより蓄積されたエネルギーを復元する工程とからなる、義足の垂直方向の負荷の吸収および復元方法。
【請求項26】
前記足部キールの前後側裏面体重負担域のそれぞれが、上方向に凹曲面形状に形成されており、前記方法が、さらに、歩行の際に義足が足踵足先で地面に接触すると同時に、前記足部キールの両体重負担域の曲面形状の圧縮と拡張のそれぞれの作用により、前記垂直押圧力を吸収や対抗する工程とを備える請求項25記載の義足の垂直力の吸収/対抗方法。
【請求項1】
義足用の縦方向伸長足部キールであって、前後側の体重負担域を備え、それら両体重負担域間に非体重負荷のアーチ形状中間部を備え、前記中間部が、義足の足部キールを使用する際の垂直負荷に対し、圧縮して吸収し、拡張して対抗できるバネで構成されている義足用の縦方向伸長足部キール。
【請求項2】
前記アーチ形状中間部の後端が、前記バネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項3】
前記足部キールの後側裏面体重負担域が、前記バネにより前記アーチ形状中間部に接続されている請求項1記載の足部キール。
【請求項4】
前記アーチ形状中間部が、前記足部キールの前側裏面体重負担域まで連続的に伸びている請求項1記載の足部キール。
【請求項5】
さらに、前記足部キールを、装着者の足切断部に接続された支持構造体に接続するため、前記アーチ形状中間部の後側の表面上に取り付けられた接続具を備える請求項1記載の足部キール。
【請求項6】
前記足部キールの両前後側裏面体重負担域が、上方に凹曲面状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項7】
前記中間部が、前記前側裏面体重負担域からアーチ形状中間部の後端まで縦方向全領域にわたって、上方に凸曲面状に形成されており、その中間部後端が、バネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項8】
さらに、カーフシャンクの下端を前記足部キールに接続するため、前記中間部の後側の表面上に取り付けられた接続具を備える請求項1記載の足部キール。
【請求項9】
前記アーチ形状中間部上の接続具の縦方向位置が、調整可能である請求項8記載の足部キール。
【請求項10】
前記中間部の前側体重負担域の表面が、上方向の凹曲面形状に形成されており、前記凹曲面形状が、前記足部キールの前平面に平行に伸びる縦軸をもつ請求項1記載の足部キール。
【請求項11】
前記前側体重負担域の前端が、歩行の際の後半段階で足踵が上がり足先が離れる場合に、実際の足先が表面側へ反るのをシミュレートできるよう、上方向の凹曲面形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項12】
前記後側体重負担域の後端が、衝撃吸収のため圧縮作用して、足踵が接地するとき地面からの反発力に対抗できるよう、上方向のアーチ曲面形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項13】
前記後側体重負担域の前部が、歩行の際に義足の後側体重負担域の双平面移動能力を向上するための複数の延長ストラットを形成できるよう、前記足部キールの表面と裏面の間を貫通する連接開孔、および、その連接開孔から足部キールの後端まで伸びる延長スロットを備える請求項1記載の足部キール。
【請求項14】
義足であって、前後側の裏面体重負担域、および、その両前後体重負担域間の非体重負担域であるアーチ形状中間部を設けた縦方向に伸びる足部キールを備え、前記中間部が、義足の使用する際の垂直負荷に対し、圧縮して吸収し、拡張して対抗できるバネで構成されている義足。
【請求項15】
さらに、義足の足根関節域を形成できるよう、前記足部キールに接続された下方向および前方向に凸曲面形状に形成された下端部を設けた弾性立設カーフシャンクを備え、前記カーフシャンクが、装着者の切断部位上の支持構造体に接続するため、前記足根関節域の上方に足肢の下部義肢部を形成できるよう上方向へ伸長する請求項14記載の義足。
【請求項16】
前記足根関節域の上方のカーフシャンクが、前方向に凸曲面形状に形成されている請求項15記載の義足。
【請求項17】
さらに、前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する締付具を備え、前記締付具が、前記足部キールの縦方向に沿った前記カーフシャンクの前記足部キールとの相互整列を調整できるよう、調整可能である請求項15記載の義足。
【請求項18】
さらに、前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する締付具を備え、前記締付具が、前記足部キールの縦方向に沿って前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する傾斜角度を調整する手段を備える請求項15記載の義足。
【請求項19】
前記足肢の下側義足部を形成するカーフシャンクが、歩行の際の義足の動的応答性を向上させるため、エネルギーを蓄積開放により地面からの反発力に対抗して拡張や圧縮が可能となるよう、ほぼ曲線線形状態で上方向に伸長する請求項15記載の義足。
【請求項20】
前記アーチ形状中間部の後端が、前記バネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項14記載の義足。
【請求項21】
前記足部キールの後側裏面体重負担域が、前記バネにより前記のアーチ形状中間部に接続されている請求項14記載の義足。
【請求項22】
前記アーチ形状中間部が、前記足部キールの前側裏面体重負担域まで連続的に伸長している請求項14記載の義足。
【請求項23】
さらに、装着者の足切断部位に取り付けた支持構造体に義足を接続するため、前記アーチ形状中間部の後端の表面に設けられた接続具を備える請求項14記載の義足。
【請求項24】
前記足部キールの両前後側裏面体重負担域のそれぞれが、上方向に凹曲面形状に形成されている請求項14記載の義足。
【請求項25】
前後側の裏面体重負担域を設けた足部キールと、それら両裏面体重負担域間に伸長する非体重負担域であり、その後端でコイルバネを形成したアーチ形状中間部とを備えた義足の、多様な運動中での義足に対する垂直方向の負荷を吸収したり復元したりする方法であって、前記義足への垂直押圧力に応答して、前記アーチ形状中間部の拡張作用により弾性負荷し、前記中間部のコイルバネの圧縮作用により弾性負荷する工程と、前記義足への垂直方向の押圧力を低減すると同時に、前記中間部により蓄積されたエネルギーを復元する工程とからなる、義足の垂直方向の負荷の吸収および復元方法。
【請求項26】
前記足部キールの前後側裏面体重負担域のそれぞれが、上方向に凹曲面形状に形成されており、前記方法が、さらに、歩行の際に義足が足踵足先で地面に接触すると同時に、前記足部キールの両体重負担域の曲面形状の圧縮と拡張のそれぞれの作用により、前記垂直押圧力を吸収や対抗する工程とを備える請求項25記載の義足の垂直方向の負荷の吸収および復元方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
義足用の縦方向伸長足部キールであって、前後側の体重負担域を備え、それら両体重負担域間に非体重負荷のアーチ形状中間部を備え、前記中間部が、義足の足部キールを使用する際の垂直負荷に対し、圧縮して吸収し、拡張して対抗できるコイルバネで構成されている義足用の縦方向伸長足部キール。
【請求項2】
前記アーチ形状中間部の後端が、前記コイルバネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項3】
前記足部キールの後側裏面体重負担域が、前記コイルバネにより前記アーチ形状中間部に接続されている請求項1記載の足部キール。
【請求項4】
前記アーチ形状中間部が、前記足部キールの前側裏面体重負担域まで連続的に伸びている請求項1記載の足部キール。
【請求項5】
さらに、前記足部キールを、装着者の足切断部に接続された支持構造体に接続するため、前記アーチ形状中間部の後側の表面上に取り付けられた接続具を備える請求項1記載の足部キール。
【請求項6】
前記足部キールの両前後側裏面体重負担域が、上方に凹曲面状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項7】
前記中間部が、前記前側裏面体重負担域からアーチ形状中間部の後端まで縦方向全領域にわたって、上方に凸曲面状に形成されており、その中間部後端が、バネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項8】
さらに、カーフシャンクの下端を前記足部キールに接続するため、前記中間部の後側の表面上に取り付けられた接続具を備える請求項1記載の足部キール。
【請求項9】
前記アーチ形状中間部上の接続具の縦方向位置が、調整可能である請求項8記載の足部キール。
【請求項10】
前記中間部の前側体重負担域の表面が、上方向の凹曲面形状に形成されており、前記凹曲面形状が、前記足部キールの前平面に平行に伸びる縦軸をもつ請求項1記載の足部キール。
【請求項11】
前記前側体重負担域の前端が、歩行の際の後半段階で足踵が上がり足先が離れる場合に、実際の足先が表面側へ反るのをシミュレートできるよう、上方向の凹曲面形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項12】
前記後側体重負担域の後端が、衝撃吸収のため圧縮作用して、足踵が接地するとき地面からの反発力に対抗できるよう、上方向のアーチ曲面形状に形成されている請求項1記載の足部キール。
【請求項13】
前記後側体重負担域の前部が、歩行の際に義足の後側体重負担域の双平面移動能力を向上するための複数の延長ストラットを形成できるよう、前記足部キールの表面と裏面の間を貫通する連接開孔、および、その連接開孔から足部キールの後端まで伸びる延長スロットを備える請求項1記載の足部キール。
【請求項14】
義足であって、前後側の裏面体重負担域、および、その両前後体重負担域間の非体重負担域であるアーチ形状中間部を設けた縦方向に伸びる足部キールを備え、前記中間部が、義足の使用する際の垂直負荷に対し、圧縮して吸収し、拡張して対抗できるコイルバネで構成されている義足。
【請求項15】
さらに、義足の足根関節域を形成できるよう、前記足部キールに接続された下方向および前方向に凸曲面形状に形成された下端部を設けた弾性立設カーフシャンクを備え、前記カーフシャンクが、装着者の切断部位上の支持構造体に接続するため、前記足根関節域の上方に足肢の下部義肢部を形成できるよう上方向へ伸長する請求項14記載の義足。
【請求項16】
前記足根関節域の上方のカーフシャンクが、前方向に凸曲面形状に形成されている請求項15記載の義足。
【請求項17】
さらに、前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する締付具を備え、前記締付具が、前記足部キールの縦方向に沿った前記カーフシャンクの前記足部キールとの相互整列を調整できるよう、調整可能である請求項15記載の義足。
【請求項18】
さらに、前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する締付具を備え、前記締付具が、前記足部キールの縦方向に沿って前記カーフシャンクを前記足部キールに接続する傾斜角度を調整する手段を備える請求項15記載の義足。
【請求項19】
前記足肢の下側義足部を形成するカーフシャンクが、歩行の際の義足の動的応答性を向上させるため、エネルギーを蓄積開放により地面からの反発力に対抗して拡張や圧縮が可能となるよう、ほぼ曲線線形状態で上方向に伸長する請求項15記載の義足。
【請求項20】
前記アーチ形状中間部の後端が、前記コイルバネを形成できるよう、下方向および前方向にコイル形状に形成されている請求項14記載の義足。
【請求項21】
前記足部キールの後側裏面体重負担域が、前記バネにより前記のアーチ形状中間部に接続されている請求項14記載の義足。
【請求項22】
前記アーチ形状中間部が、前記足部キールの前側裏面体重負担域まで連続的に伸長している請求項14記載の義足。
【請求項23】
さらに、装着者の足切断部位に取り付けた支持構造体に義足を接続するため、前記アーチ形状中間部の後端の表面に設けられた接続具を備える請求項14記載の義足。
【請求項24】
前記足部キールの両前後側裏面体重負担域のそれぞれが、上方向に凹曲面形状に形成されている請求項14記載の義足。
【請求項25】
前後側の裏面体重負担域を設けた足部キールと、それら両裏面体重負担域間に伸長する非体重負担域であり、その後端でコイルバネを形成したアーチ形状中間部とを備えた義足の、多様な運動中での義足に対する垂直方向の負荷を吸収したり復元したりする方法であって、前記義足への垂直押圧力に応答して、前記アーチ形状中間部の拡張作用により弾性負荷し、前記中間部のコイルバネの圧縮作用により弾性負荷する工程と、前記義足への垂直方向の押圧力を低減すると同時に、前記アーチ形状中間部の圧縮されたコイルバネにより蓄積されたエネルギーを復元する工程とからなる、義足の垂直方向の負荷の吸収および復元方法。
【請求項26】
前記足部キールの前後側裏面体重負担域のそれぞれが、上方向に凹曲面形状に形成されており、前記方法が、さらに、歩行の際に義足が足踵足先で地面に接触すると同時に、前記足部キールの両体重負担域の曲面形状の圧縮と拡張のそれぞれの作用により、前記垂直押圧力を吸収や対抗する工程とを備える請求項25記載の義足の垂直力の吸収/対抗方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
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【図17】
【図18】
【図19】
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【図23】
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【図28】
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【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公表番号】特表2006−525820(P2006−525820A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571388(P2004−571388)
【出願日】平成15年3月31日(2003.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/009506
【国際公開番号】WO2004/096104
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(503224611)
【出願人】(503224622)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月31日(2003.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/009506
【国際公開番号】WO2004/096104
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(503224611)
【出願人】(503224622)
【Fターム(参考)】
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