説明

垂直軸形風車の直線翼、直線翼垂直軸形風車

【課題】高い強度を保ちつつ、従来よりも部品点数を削減して更なる軽量化及び低コストを実現可能な直線翼を提供する。
【解決手段】垂直軸形風車に適用され、風によって回転可能な直線翼1を、垂直軸のラジアル方向に対面する翼内周縁部42及び翼外周縁部41と回転方向に対面する翼前縁部43及び翼後縁部44とを一体に有し且つ翼外周縁部41に開口部を形成した翼外郭部本体4と、開口部を閉止する位置に溶接で固定され且つ翼外郭部本体4と共に翼断面形状が翼型となる翼外郭部2を構成する蓋部5と、翼外郭部2の内部空間に配置され且つ翼外郭部2のうち第1外郭面21に接触した状態で溶接によって固定可能な複数の頂点部31及び第2外郭面22に接触した状態で溶接によって固定可能な複数の頂点部32を有する翼断面形状がジグザグ状の芯材3とによって構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直軸形風車に適用される直線翼、及び垂直軸形風車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転可能な垂直軸の周囲に複数の直線翼(羽根や風車ブレードとも称される)を配置した垂直軸型風車が知られている。この種の直線翼には、発電効率の向上を図るため、軽量であることや、強風や高速回転にも耐え得る強度を有することが要求されている。
【0003】
本出願人は、このような要求に応えるべく、縦長の姿勢で垂直軸のラジアル方向に並べて配置される複数の骨材と、骨材に挿し通した状態で高さ方向に所定ピッチで固定される多数の翼状板と、翼状板の周囲に張られる外形付与板(外皮)とからなる骨組み構造の直線翼を案出し、既に特許出願している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−30375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、軽量化及び強度の向上を図った特許文献1記載の直線翼であっても、複数の骨材を垂直軸のラジアル方向に複数配置したり、多数の翼状板を垂直方向に所定ピッチで配置する必要があるため、部品点数が多く、各部品をそれぞれ溶接やリベットによって他の部品に固定する処理も多くなり、このような点で更なる改善の余地があると考えられる。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、主たる目的は、高い強度を保ちつつ、従来よりも部品点数を削減して更なる軽量化及び低コストを実現可能な直線翼、及びこのような直線翼を備えた垂直軸形風車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、垂直姿勢で配置され回転可能な垂直軸を備えた垂直軸形風車に適用され、風によって垂直軸の回転方向に回転可能な直線翼に関するものである。
【0008】
そして、本発明の直線翼は、垂直軸のラジアル方向に対面する翼内周縁部及び翼外周縁部と回転方向に対面する翼前縁部及び翼後縁部とを一体に有し、且つ翼内周縁部又は翼外周縁部の一方に開口部を形成した一定の翼断面形状を有する翼外郭部本体と、開口部を閉止する位置に溶接によって固定され且つ翼外郭部本体と共に翼断面形状が翼型となる翼外郭部を構成する蓋部と、中空筒状である翼外郭部の内部空間に開口部を通じて配置され且つ翼外郭部のうち垂直軸のラジアル方向に対面する一方の面に接触した状態で溶接によって固定した1つ以上の第1頂点部及び他方の面に接触した状態で溶接によって固定した2つ以上の第2頂点部を有する翼断面形状がジグザグ状の芯材とから構成していることを特徴としている。
【0009】
ここで「翼外郭部のうち垂直軸のラジアル方向に対面する一方の面」は、翼外郭部本体の翼内周縁部又は翼外周縁部の何れか一方によって形成される面であり、「翼外郭部のうち垂直軸のラジアル方向に対面する他方の面」は、翼外郭部本体の翼内周縁部又は翼外周縁部の他方によって形成される面である。そして、本発明の直線翼は、翼外郭部本体の翼内周縁部又は翼外周縁部の何れか一方には長手方向全域に亘って開口部を形成し、この開口部を閉止する位置に固定配置される蓋部と翼外郭部本体とによって翼断面形状が翼型となる翼外郭部を構成している。したがって、蓋部は、翼外郭部のうち垂直軸のラジアル方向に対面する何れか一方の面の一部を形成するものである。
【0010】
このような直線翼であれば、翼断面形状が翼型をなす中空状の翼外郭部の内部空間に開口部から芯材を収容し、ジグザグ状をなす芯材の第1頂点部及び第2頂点部を翼外郭部のうち垂直軸のラジアル方向に対向する面にそれぞれ接触させた状態で溶接によって固定しているため、この芯材により翼外郭部の翼断面形状を所望の翼型に維持することができ、風や高速回転にも耐える強度を得ることができる。なお、翼断面形状が翼型である翼外郭部のうち垂直翼の回転方向に対向する面は曲げ剛性が高いため、芯材の頂点部を接触させて溶接で固定する対象を、垂直軸のラジアル方向に対向する面に限定することができる。
【0011】
さらに、本実施形態に係る直線翼は、翼外郭部を翼外郭部本体及び蓋部の2つの部材のみで構成し、この翼外郭部内に芯材を収容して固定したものであるため、芯材と合わせてわずか3つの部材のみで構成することができ、従来の直線翼と比較して部品点数の削減及び更なる軽量化を実現することができる。また、翼外郭部の一部を蓋部で構成しているため、蓋部を翼外郭部本体に固定する前の時点で翼外郭部本体の開口部から芯材を翼外郭部本体内に簡単且つスムーズに収容することができる。
【0012】
本発明において、芯材自体の剛性も高めつつ、芯材と翼外郭部との溶接箇所を効率良く増やすためには、翼断面形状がW字形状の芯材を適用することが好ましい。
【0013】
また、本発明の垂直軸形風車は、垂直姿勢で配置され回転可能な垂直軸と、垂直軸の周囲に垂直軸の回転方向に沿って複数配置した上述の直線翼とを備えていることを特徴としている。直線翼の枚数は2枚以上であれば特に限定されることはない。
【0014】
このような垂直軸形風車であれば、直接翼の軽量化によって発電効率の更なる向上を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、翼外郭部本体と蓋部とによって翼断面形状が翼型の翼外郭部を構成し、翼断面形状がジグザグ形状の芯材の各頂点部を翼外郭部の内向き面に接触させた状態で溶接することによって、翼外郭部の内部空間に芯材を収容した極めてシンプルな構造の直線翼を得ることができ、例えば多数の翼状板を高さ方向に所定ピッチで配置した直線翼と比較して、3パーツという少ない部品点数でありながら、有効な強度を保持し、更なる軽量化を実現できる直線翼、及びこのような直線翼を備えた垂直軸形風車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る直線翼を備えた垂直軸形風車の全体概略図。
【図2】同実施形態に係る直線翼の全体概略図。
【図3】同実施形態に係る直線翼の翼断面図
【図4】図3に示す直線翼の分解図。
【図5】同実施形態に係る直線翼の溶接工程を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る直線翼1は、図1に示すように、直線翼垂直軸形風車X(「直線翼ダリウス形風車」とも称され、以下では単に「垂直軸形風車X」と称する場合がある)の一部を構成するものである。垂直軸形風車Xは、垂直姿勢で回転可能に配置した垂直軸Aと、垂直軸Aの周方向に複数枚取り付けた直線翼1とを備えたものである。直線翼1は、平面視において垂直軸Aを中心として対称に配置される。図1では2枚の直線翼1を備えた垂直軸形風車Xを示しているが、3枚以上の直線翼1を垂直軸Aの周囲に等ピッチで配置してもよい。
【0019】
垂直軸Aの上端部には、直線翼1を支持する支持部材Bを保持可能な保持部Cを設けている。本実施形態の垂直軸形風車Xは、直線翼1の上端部側及び下端部側をそれぞれ支持部材Bで支持するように構成している。垂直軸Aは、下端部側領域を一点鎖線で示す垂直軸保持部D内に収容した状態で軸受Eを介して回転自在に支持されている。本実施形態では、基礎に設置した台座上に垂直軸保持部Dを固定している。また、垂直軸Aの下端部には、適宜の変速機構Fを介して発電機Gを連結することにより、垂直軸形風車Xは風力発電機として機能する。
【0020】
直線翼1は、図2に示すように、外形が一般的な垂直軸形風車に用いられる直線翼形状である翼外郭部2と、翼外郭部2の内部空間2Sに収容可能な芯材3とを備えたものである。この直線翼1は、縦長の姿勢で配置されるものであり、何れの箇所における翼断面形状(水平方向の断面形状)が全て同一形状となる長尺物である。
【0021】
翼外郭部2は、垂直軸Aのラジアル方向において凸状の流線形となる第1外郭面21(本発明の「翼外郭部のうち垂直軸のラジアル方向に対面する一方の面」に相当)と、垂直軸Aのラジアル方向Rにおいて第1外郭面21に対向する面を形成し且つ垂直軸Aのラジアル方向において凸状の流線形となる第2外郭面22(本発明の「翼外郭部のうち垂直軸のラジアル方向に対面する他方の面」に相当)と、風を受けて回転する直線翼1の回転方向T先端側の領域である翼前縁領域23と、垂直軸Aの回転方向T後端側の領域である翼後縁領域24とを有するものである。なお、直線翼1の回転方向は垂直軸Aの回転方向と同一方向である。また、第2外郭面22は、フラット状の面であってもよいが、本実施形態では第2外郭面22として、第1外郭面21よりも緩い凸状の湾曲面(第1外郭面21よりも直線に近い湾曲面)を採用している。また、翼前縁領域23は、第1外郭面21及び第2外郭面22の先端端部同士を接続する滑らかな曲面であり、翼後縁領域24は、第1外郭面21と第2外郭面22の後端部同士を接続してほぼ鋭角をなしている。なお、本発明の「翼外郭部のうち垂直軸のラジアル方向に対面する一方の面」に相当する面である第1外郭面を、垂直軸Aのラジアル方向において凹状の流線形となる面に設定したり、本発明の「翼外郭部のうち垂直軸のラジアル方向に対面する他方の面」に相当する面である第2外郭面を、垂直軸Aのラジアル方向において凹状の流線形となる面に設定することもできる。
【0022】
そして、本実施形態では、図3に示すように、第2外郭面22、翼前縁領域23及び翼後縁領域24を、単一の翼外郭部本体4によって構成するとともに、第1外郭面21を翼外郭部本体4と翼外郭部本体4に形成した開口部4Kを閉止する蓋部5とによって構成している。すなわち、本実施形態の翼外郭部本体4は、第1外郭面21の一部を形成する翼外周縁部41と、第2外郭面22を形成する翼内周縁部42と、翼前縁領域23を形成する翼前縁部43と、翼後縁領域24を形成する翼後縁部44とを一体に有する薄板状の金属箔(例えばステンレス箔)からなるものである。翼外周縁部41には長手方向全域に亘って開口部4Kを形成し、この開口部4Kを蓋部5で蓋封した状態で、蓋部5が翼外周縁部41とともに翼外郭部2の第1外郭面21を構成する。蓋部5は、翼外郭部本体4と同様に薄板状の金属箔(例えばステンレス箔)からなり、板厚も翼外郭部本体4の板厚とほぼ同じである。本実施形態では、蓋部5のうち翼外周縁部41に形成した開口部4Kの開口幅方向に沿った寸法(蓋部5の幅寸法)を、開口部4Kの開口幅寸法よりも大きく設定し、開口部4Kの開口縁4Kaにおいて蓋部5の内向き面が翼外周縁部41の外向き面に対面し得るように構成している。本実施形態における「内向き面」とは翼外郭部2の内部空間2S側を向く面であり、「外向き面」は「反内向き面」、つまり翼外郭部2の内部空間2S側を向く面とは反対側の面を意味する。
【0023】
翼外郭部本体4は、例えば一枚の金属箔を上述の各面を形成するように適宜箇所を折り曲げたり、湾曲させて形成したものである。また、蓋部5は、例えば一枚の金属箔を適宜の形状に湾曲させて形成したものである。
【0024】
芯材3は、翼外郭部2と同じ高さ寸法を有し、翼断面形状をW字形状に設定したものである。W字形状の芯材3には5つの頂点部31があり、翼外郭部2内に収容した状態で3つの頂点部31が第1外郭面21に接触するとともに、2つの頂点部32が第2外郭面22に接触している。以下の説明では、芯材3の頂点部31のうち第1外郭面21に接触する頂点部31を「第1外郭面側頂点部31」(本発明の「第1頂点部」に相当)とし、第2外郭面22に接触する頂点部32を「第2外郭面側頂点部32」(本発明の「第2頂点部」に相当)とする。また、第1外郭面側頂点部31のうち、翼外郭部本体4の翼外周縁部41に形成した開口部4Kの開口縁4Ka近傍に配置される第1外郭面側頂点部31を、開口部4Kの開口縁4Kaに添接し且つ翼外周縁部41の外向き面にも添接するL字状に形成し、蓋部5で開口部4Kを閉じた状態において第1外郭面側頂点部31が翼外周縁部41の外向き面と蓋部5の内向き面との間に挟まれるように設定している。したがって、開口部4Kの開口縁4Ka近傍では、翼外郭部2の内部空間2S側から順に翼外周縁部41、芯材3の第1外郭面側頂点部31、蓋部5が重なっている。芯材3は、例えば一枚の金属箔(例えばステンレス箔)を適宜の形状に折り曲げ加工して形成したものである。
【0025】
次に、このような直線翼1の製作手順を説明する。
【0026】
先ず、翼外郭部本体4の翼外周縁部41に形成した開口部4Kから芯材3を翼外郭部2の内部空間2Sに挿入して(芯材挿入工程)、翼外郭部2の第2外郭面22の内向き面に芯材3の第2外郭面側頂点部32を接触させた状態で溶接処理によって固定する(第1次溶接工程)。ここで、翼外郭部2の第2外郭面22の内向き面は、翼外郭部本体4の翼内周縁部42の内向き面である。第1次溶接工程の終了時点では、開放されている翼外周縁部41の開口部4Kから芯材3の第1外郭面側頂点部31にアクセスすることが可能である。
【0027】
次いで、翼外周縁部41の開口部4Kを閉じる位置に蓋部5を配置して第1外郭面21を形成すると、この第1外郭面21の内向き面に芯材3の第1外郭面側頂点部31が接触した状態となり、この状態で接触箇所を溶接処理によって固定する(第2次溶接工程)。ここで、翼外郭部2の第2外郭面22の内向き面は、翼外郭部本体4の翼内周縁部42の内向き面と、蓋部5の内向き面である。本実施形態では、上述したように、蓋部5で翼外周縁部41の開口部4Kを閉じた状態において、開口部4Kの開口縁4Ka近傍では、翼外周縁部41の外向き面と蓋部5の内向き面との間に第1外郭面側頂点部31が挟まれている。したがって、翼外郭部2の内部空間2S側から順に翼外周縁部41、芯材3の第1外郭面側頂点部31、蓋部5が重なった箇所に溶接処理を施すことにより、これら各部を一体的に固定することができる。この場合、蓋部5は第1外郭面21の一部を形成するものであることから、蓋部5の内向き面に第1外郭面側頂点部31を接触させて溶接している構成は、第1外郭面21の内向き面に頂点部31を接触させて溶接している構成であるといえる。また、芯材3における3つの第1外郭面側頂点部31のうち中央の第1外郭面側頂点部31は、蓋部5の内向き面に接触した状態で溶接処理により固定されるものである。
【0028】
また、本実施形態では、第1次溶接工程及び第2次溶接工程でYAGレーザ溶接処理を行っている。YAGレーザ溶接処理を適用することによって、溶接箇所に歪みが生じる事態を防止・抑制することができ、高精度の仕上がり面(溶接面)を形成することができる。具体的には、図5に示すように、第1次溶接工程及び第2次溶接工程では、芯材3の各頂点部31(第1外郭面側頂点部31、第2外郭面側頂点部32)を翼外郭部2の第1外郭面21又は第2外郭面22に対して翼外郭部2の内部空間2S側から押し当てる位置に溶接用ジグJを配置した状態で、ノズルNからレーザ光を溶接箇所に集光して金属箔を溶融して一体化させる溶接処理を行っている。ここで、第1次溶接工程では、溶接用ジグJを翼外周縁部41の開口部4Kから翼外郭部2の内部空間2Sに挿入することが可能である。一方、第2次溶接工程は、翼外周縁部41の開口部4Kを蓋部5で蓋封した状態で行う工程であるため、溶接用ジグJを開口部4Kから翼外郭部2の内部空間2Sに挿入することは不可能である。したがって、第2次溶接工程では、翼外郭部2のうち開放されている長手方向の端部から溶接用ジグJを翼外郭部2の内部空間2Sに挿入すればよい。なお、溶接用ジグJを翼外郭部2の内部空間2Sから取り出すタイミングは、各溶接箇所の溶接処理が終了する度であってもよいし、全ての溶接箇所の溶接処理が終了してからであってもよい。なお、図3乃至図5では、説明の便宜上、翼外郭部本体4、芯材3及び蓋部5の板厚を誇張して示しており、第1外郭面21のうち開口縁4Ka近傍領域に段差が生じているが、実際の第1外郭面21は全体的に滑らかな流線形の面に仕上げられる。
【0029】
以上の手順を経ることによって、翼外郭部本体4、蓋部5及び芯材3を分離不能に固定し、翼外郭部2の内部空間2Sに芯材3を収容した直線翼1を製作することができる。
【0030】
このような構成を有する直線翼1は、翼断面形状が翼型である中空状の翼外郭部2の内部空間2Sに芯材3を収容し、芯材3の頂点部31,32を翼外郭部2の第1外郭面21の内向き面や第2外郭面22の内向き面に接触させているため、この芯材3によって翼外郭部2の翼断面形状を所望の翼型に維持することができ、風や高速回転にも耐える強度を有する。しかも、本実施形態に係る直線翼1は、翼外郭部2を翼外郭部本体4と蓋部5の2パーツで構成し、この翼外郭部2内に芯材3を収容して固定したものであるため、わずか3パーツのみで構成することができ、従来の直線翼と比較して部品点数の削減及び更なる軽量化を実現することができる。また、本実施形態の垂直翼1であれば、部品点数の削減によって製造コスト(製作コスト)の低減化をも図ることができる。
【0031】
特に、本実施形態に係る直線翼1は、翼断面形状がW字状の芯材3を適用しているため、計5つの頂点部31,32を第1外郭面21の内向き面及び第2外郭面22の内向き面に対してそれぞれ複数箇所で接触させることができ、簡素な形状でありながら直線翼1の強度向上を有効に図ることができる。
【0032】
そして、このような直線翼1を備えた垂直軸形風車X(垂直軸形風力発電装置)であれば、必要な強度を確保しつつ軽量化も実現した垂直翼による発電が可能になり、発電効率を向上させることができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、翼外郭部本体のうち開口部を形成する箇所が、翼外周縁部ではなく翼内周縁部であってもよい。また、第1外郭面が垂直軸のラジアル方向において相対的に内側の面となり、第2外郭面が相対的に外側の面となるように直線翼を配置することも可能である。この場合、翼外郭部本体の翼外周縁部は翼外郭部の第2外郭面を形成するものになり、翼外郭部本体の翼内周縁部は翼外郭部の第1外郭面を形成するものになる。なお、芯材の第1頂点部が接触する対象は、翼外郭部の第1外郭面又は第2外郭面の何れであってもよい。具体的には、上述した実施形態における第1外郭面側頂点部31を第2外郭面22に接触させ、第2外郭面側頂点部32を第1外郭面21に接触させることも可能である。この場合には、第2外郭面に接触する頂点部の数が、第1外郭面に接触する頂点部の数よりも多くなる。
【0034】
また、芯材の板厚を、翼外郭部を構成する翼外郭部本体及び蓋部の板厚よりも相対的に大きく設定すれば、直線翼の更なる強度向上を期待できる。また、翼外郭部を構成する翼外郭部本体及び蓋部の板厚を翼外郭部に要求される強度を満たす範囲内で可能な限り薄く設定すれば、直線翼全体の軽量化をより一層図ることができる。
【0035】
芯材として、翼断面形状が、V字形状又はN字形状のものや、或いはV字形状、N字形状、W字形状を適宜組み合わせた形状のものを適用することもできる。芯材の翼断面形状を適宜変更したり、選択することによって、垂直軸のラジアル方向に対面する一方の面(第1外郭面)や、垂直軸のラジアル方向に対面する他方の面にそれぞれ接触させる頂点部の数を変更したり、調整することができる。
【0036】
また、YAGレーザ溶接処理以外の溶接処理によって翼外郭部と芯材との接触箇所を固定しても構わない。
【0037】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…直線翼
2…翼外郭部
21…垂直軸のラジアル方向に対面する一方の面(第1外郭面)
22…垂直軸のラジアル方向に対面する他方の面(第2外郭面)
2S…内部空間
3…芯材
31…第1頂点部(第1外郭面側頂点部)
32…第2頂点部(第2外郭面側頂点部)
4…翼外郭部本体
41…翼外周縁部
42…翼内周縁部
43…翼前縁部
44…翼後縁部
4K…開口部
5…蓋部
A…垂直軸
X…垂直軸形風車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直姿勢で配置され回転可能な垂直軸を備えた垂直軸形風車に適用され、風によって前記垂直軸の回転方向に回転可能な直線翼であって、
前記垂直軸のラジアル方向に対面する翼内周縁部及び翼外周縁部と前記回転方向に対面する翼前縁部及び翼後縁部とを一体に有し、且つ前記翼内周縁部又は前記翼外周縁部の一方に開口部を形成した一定の翼断面形状を有する翼外郭部本体と、
前記開口部を閉止する位置に溶接によって固定され且つ前記翼外郭部本体と共に翼断面形状が翼型となる翼外郭部を構成する蓋部と、
中空筒状である前記翼外郭部の内部空間に前記開口部を通じて配置され且つ前記翼外郭部のうち前記垂直軸のラジアル方向に対面する一方の面に接触した状態で溶接によって固定した1つ以上の第1頂点部及び他方の面に接触した状態で溶接によって固定した2つ以上の第2頂点部を有する翼断面形状がジグザグ状の芯材とから構成していることを特徴とする直線翼。
【請求項2】
前記芯材の翼断面形状がW字形状である請求項1に記載の直線翼。
【請求項3】
垂直姿勢で配置され回転可能な垂直軸と、前記垂直軸の周囲に垂直軸の回転方向に沿って複数配置した請求項1又は2に記載の直線翼とを備えていることを特徴とする垂直軸形風車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−87632(P2013−87632A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225995(P2011−225995)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】