垂直離着陸機
【課題】 ラジコン模型飛行機の垂直離着陸機の場合は、実機に比べてあまり複雑な構造や制御が出来ない。また、軽量にしなければホバリングそのものが出来なくなるほか、動力を2基以上にして複数で用いる場合は、そのパワーバランスなども難しい要素となる。
【解決手段】動力は1基としてラジコン模型飛行機に通常つかわれているプロペラを用い、上向きに装着して、ホバリング時はその推力の一部を分流した空気により前後左右の制御を行う方式とした。ホバリングから前進飛行に移る場合は、下部の開閉扉を閉じることにより、推力を後ろ側に偏向させ、通常の前進飛行を行うことが出来る。
【解決手段】動力は1基としてラジコン模型飛行機に通常つかわれているプロペラを用い、上向きに装着して、ホバリング時はその推力の一部を分流した空気により前後左右の制御を行う方式とした。ホバリングから前進飛行に移る場合は、下部の開閉扉を閉じることにより、推力を後ろ側に偏向させ、通常の前進飛行を行うことが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にラジコン模型飛行機に関するものであるが、実機の分野にも適応可能である。
【背景技術】
【0002】
ラジコン模型飛行機の垂直離着陸として、これまで色々なタイプが考えられ、製作や実験などがなされて来たほか、そのほかのアイデアも公表されている。
【非特許文献1】ラジコン技術誌2003年2月号p192、193
【非特許文献2】ラジコン技術誌2003年3月号p194、195
【非特許文献3】ラジコン技術誌2003年7月号p32、34
【非特許文献4】ラジコン技術誌2005年9月号p27〜29
また、実機における従来の垂直離着陸機としては、主翼に2基あるいは4基のプロペラを有し、垂直上昇時にはプロペラあるいは翼全体を上向きに回転偏向し上昇推力を得て、前進飛行時にはプロペラあるいは翼全体を前方向に回転偏向して通常の飛行機のように飛行するタイプや、垂直上昇用のプロペラあるいはダクトファンと前進飛行用のプロペラを別々に装備して使い分けるタイプなとがある。 また、4基のダクトファンを装備し、垂直上昇時にはダクトファン全体を下方に向けて上昇しながら4基それぞれのダクトファン推力を加減することにより姿勢制御を行い、前進飛行時には同じくダクトファン全体を前方向に向けて飛行させるタイプもある。 そのほか、主にホバリング飛行するものでは、ダクトファン1基のタイプでは、ダクト内の下部に噴流方向制御用の複数の翼を設け、それによって前後左右の姿勢を制御するもの、また、複数のダクトファンを装備し、それぞれのダクトファンの推力あるいは噴流方向制御用の翼を動かすことにより前後左右の姿勢あるいはロール軸を制御するものなどがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
主翼に回転偏向可能な2基あるいは4基のプロペラを装備するタイプの場合、前進飛行時は通常の飛行機として問題は無いが、垂直上昇時では、左右の姿勢を制御するため
には、左右のプロペラの回転数あるいはピッチを変え、推力を変化させなければならず、また、前後の姿勢を制御するためには上方向に向けたプロペラの推力方向を前後に細かく偏向して制御するか、尾部あるいは前部に姿勢制御用のプロペラあるいは噴流ノズルを装備して制御を行う必要があり、複雑でかつ難しい。
【0004】
1基のダクトファンタイプの場合は、ダクト下部に設けた噴流方向を変える翼を動かすことによりヨー軸を含めた姿勢を制御するが、重心が上にあり、噴流を直接偏向して行うことから、安定をとるためには高性能なジャイロが必要であり、制御はかなり微妙で難しい。 4基のダクトファンタイプの場合はダクト本体を回転させなければならないため、その機構が大変なこと、また、それをエンジンが1基で行う場合は、動力軸をどのようにもって行くかの問題、エンジンが4基で独立した場合であっても、各推力を制御するために、それぞれの回転数あるいはファンのピッチを変えなければならず、構造が複雑になり制御も難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明においては、エンジンは1基として胴体内に固定したまま垂直方向にダクトを設け、ダクト下部に設けた複数枚の扉を開け閉めすることにより、ホバリング時には噴流をそのまま下方に出し、上昇推力を得て、水平飛行を行うには下方の扉を閉めて噴流を後方に吹き出す方法とし、ホバリング時はプロペラダクト内から噴流の一部を前後左右にある程度離れた位置まで導き、それを吹き出すことによってピッチ・ロール・ヨー3軸の制御を行う方法とした。
【0006】
その場合、請求項2に記載したとおり、姿勢制御用のダクトから吹き出す噴流を通常状態では上下に等しく出すことにより、空気中で「くさび」の役目をすることとなり、姿勢保持の効果が高くなる。 また、姿勢を変化させる場合は、上下の吹き出しの強さを変え、左右あるいは前後で互いに逆方向にすることで、強い回転モーメントを発生させることが出来る。 姿勢制御ダクトの長さについては、長い方が制御する回転モーメントは大きくなるが、あまり長くするとダクト内の流体抵抗が増えることによって吹き出す噴流の勢いが弱まり、かえって回転モーメントは弱くなってしまうので、概ねプロペラダクト直径の1〜2倍程度以内が良いと思われる。
【0007】
また、請求項3に記載したとおり、ヨー軸制御のための回転力を発生させる方法については、前後左右の姿勢制御用ダクト先端から吹き出す噴流を上下方向のまま、ダクト長手方向を上から見て直角方向に前方向又は後方向に吹き出し噴流の向きを変えることにより行うものである。 その場合、吹き出し噴流の向きを変える構造は、複数の案内板で構成した偏向装置を姿勢制御ダクト吹き出し口の上下に設け、上下同時に前後に動かすものである。 偏向角度は最大45度程度とし、それにより噴流が前あるいは後に斜めに吹き出すことよって、ヨー軸回りの回転力を得る。 それを前後あるいは左右2対に、あるいはそのすべての4対に設置する。
【0008】
これら各軸の制御は人間の操作では追いつけないめ、各軸のコントロール用サーボにはジャイロを付加する。
【0009】
姿勢制御用ダクトの噴流取り入れ口は、プロペラダクト内に前後・左右の4箇所にあるが、水平飛行を行う場合は閉じる構造である。 理由は、そのまま姿勢制御用のダクトから噴流を出したまま飛行した場合、その噴流が大きな空気抵抗となり、飛行できないほどの速度に落ちてしまうからである。 その開閉構造としては、図9のようにヒンジによる開閉及びスライド式などが考えられる。 また、姿勢制御用噴流を多く取り出せば制御の力が強くなり、それだけ姿勢制御がやりやすく、操縦時の反応や安定性も強くなる。 しかし反面、機体を浮上させる力が減少するため、垂直上昇そのもが出来なくなる恐れが出てくる。 そのため、姿勢制御用噴流の取り入れ口の大きさ(面積)は、4箇所合わせてプロペラダクト面積(円面積)の2割から3割程度以内とする。
【0010】
プロペラダクト下方に設置する噴流を下方と後方に振り分ける開閉扉の構造は、図8のとおり、縦方向あるいは横方向に一斉に連動して動く数枚の回転扉によって構成される。 その場合、噴流の勢いに逆らって開閉しなければならないため、その駆動力を軽減するためは、扉の水平方向中央に回転軸をもってくる構造とする。
【0011】
水平飛行時において、後方に出る噴流の中心点は構造上、上下方向で機体重心よりもやや下側にあるため、機体の頭上げが起こる。 それを防止するため、図11のとおり、後方噴流の底面を後方へある程度の長さに伸ばしながら後半部をやや上向に上げて噴流の中心を底面より上に上げるよう偏向板を取り付ける。 または図12のとおり、噴出口を水平に後ろに伸ばすとともに、出口部を下方にやや傾ける方法により、噴流のスラスト中心が機体重心付近を押すことととなり頭上げを防止し、安定した飛行を行うことが出来る。
【0012】
噴流出口の形状については、構造上、出口付近の高さが低いこと及び、により、噴流出口幅をダクト径と同じまま延長した場合、噴流出口面積がダクト面積よりかなり少なくなるため、排出抵抗が大きくなり、前進時の推力がかなり低下する。 また、上述の噴流偏向によっても、さらに推力の低下が生じる。その推力低下を少なくするためには、図13のとおり、ダクト下部を前方から横幅を徐々に広げ、出口付近は機体縦方向に平行になるよう噴流を整えるような構造にすることにより、出口面積が大きくなりかつ、噴流の横への広がりを防止して推力を大幅に増加させることが出来る。 併せて側面形状についても、ダクト前方の上方から徐々にカーブを付け、ダクト内の流れをスムースにさせれば、さらに効果的となる。 その際は、下部開閉扉は機体軸に対して直角方向の扉を複数設ける構造とすれば良い。
【0013】
プロペラダクト上部空気取り入れ口は吸入効率を良くするため、入り口周辺部を外側に向けて半径を大きく円弧状に張り出す。(ファンネルとも言う) これによって、吸入効率が上かり、ホバリング時の推力が増加する。 また、水平飛行時における吸入効率を良くするためには、プロペラダクト面を水平面からやや前方向に傾ける構造とすれば良い。
【0014】
エンジンの燃料タンクはプロペラ中心に対して左右あるいは前後に2個所に分けて置き、両方が同時に減って行くようにして燃料の増減による重心位置の移動を無くするシステムとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による垂直離着陸機により、ラジコン飛行機を飛ばす場合、少なくとも長さ100m程度、幅10m程度以上の滑走路が必要であったものが、周囲に障害物が無い環境さえあれば、離発着用として最小では数平方メートル程度の空き地があれば良いことから、これまでのように飛行場の確保に苦労することが無くラジコン飛行機を飛ばす楽しみを容易に得ることが出来る。 また、ラジコンによる航空撮影用のプラットフォームとして使う場合は、一般的に使われているヘリコプターに比べて構造が簡単であり、製造コストも格段に安く作れることから、撮影費用なども安く出来るほか、ヘリコプターのように大きな回転翼が無く、操縦不能その他の要因による墜落の場合においても安全性が高く、また、非常用のパラシュートも装備可能となるため、より安全に回収でき、そのまま墜落した場合であっても、回転するプロペラが内部にあるため、ヘリコプター等の航空機よりは他に与える損傷を少なく出来る。 さらに、本発明による垂直離着陸機はラジコン飛行機として利用するほかに、産業用の航空写真撮影用プラットフォームとして利用できる。 また、人間が乗れる実機への応用も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明になる垂直離着陸機を飛行させる場合、通常は、機首を風上に向けた状態で所定の位置からホバリングモード(下部開閉口及び姿勢制御用空気取り入れ口を開いた状態で、なおかつジャイロ作動状態)で浮き上がり、ある程度の高度(機体全長の10倍程度以上)を取ったら、やや前傾で前進しながら飛行モード(下部開閉口及び姿勢制御用空気取り入れ口を閉じた状態で、なおかつジャイロは非作動状態)に切り替えて前進飛行を行う。 前進飛行からホバリングに移る場合は、着陸地点に向かいながら前進飛行の速度を落とし、適当な高度でホバリングモードに切り替え着陸する。 なお、一般的な飛行機のように前進飛行状態で滑走しながらの離陸や着陸も可能である。
【実施例】
【0017】
実施例としては図1の機体が挙げられるが、目的とする性能を有するためには、従来の同じエンジンサイズの機体に比べてかなり軽量にする必要がある。エンジンサイズが40クラスの場合、通常の機体であれば3Kgから4Kg程度であるが、それを少なくとも2.5Kg程度にしなければならない。 そのためには、機体構造素材としてカーボンFRPなどを使用するほか、翼の構造などもバルサやフイルム張りを用いる構造とする。
【産業上の利用可能性】
【0018】
主にホビー用及び産業用として利用。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】全体図
【図2】ホバリング時における姿勢制御の状態
【図3】ホバリング時における横から見た内部の空気の流れ
【図4】ホバリング時において機体を後方に回転させる(ピッチアップ)姿勢に変えようとする場合の空気の流れ
【図5】前進飛行を行う場合の空気の流れ
【図6】機体横方向から見たヨー軸制御のための噴流の出る方向
【図7】ヨー軸制御のための噴流排出方向を変える装置部の構造例
【図8】ダクト下方の噴流吹き出し方向を変える扉の構造図、2方式
【図9】ダクト内の姿勢制御用空気取り入れ口の開閉機構、2方式
【図10】ダクト内噴流をスムーズに後方に流すための整流板取り付けた状態
【図11】飛行時におけるピッチアップを防ぐため、後方排出噴流の中心を重心に近づけるための整流板を取り付けた状態
【図12】同じく、飛行時におけるピッチアップを防ぐため、後方排出噴流の中心を 重心に近づけるための整流板を後方に設置する場合の例
【図13】前進飛行時の推力を増加(後方噴流出口面積増加)させるための噴流出口 形状
【図14】機体のデザインをデルタ翼型とした場合の例
【図15】航空写真撮影用プラットフォームとして応用する例
【符号の説明】
【0020】
1 エンジン
2 姿勢制御用噴流吹き出し口(上下)
3 プロペラ
4 推進用噴流吹き出し口
5 撮影機材
6 機体認識用マーカー
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にラジコン模型飛行機に関するものであるが、実機の分野にも適応可能である。
【背景技術】
【0002】
ラジコン模型飛行機の垂直離着陸として、これまで色々なタイプが考えられ、製作や実験などがなされて来たほか、そのほかのアイデアも公表されている。
【非特許文献1】ラジコン技術誌2003年2月号p192、193
【非特許文献2】ラジコン技術誌2003年3月号p194、195
【非特許文献3】ラジコン技術誌2003年7月号p32、34
【非特許文献4】ラジコン技術誌2005年9月号p27〜29
また、実機における従来の垂直離着陸機としては、主翼に2基あるいは4基のプロペラを有し、垂直上昇時にはプロペラあるいは翼全体を上向きに回転偏向し上昇推力を得て、前進飛行時にはプロペラあるいは翼全体を前方向に回転偏向して通常の飛行機のように飛行するタイプや、垂直上昇用のプロペラあるいはダクトファンと前進飛行用のプロペラを別々に装備して使い分けるタイプなとがある。 また、4基のダクトファンを装備し、垂直上昇時にはダクトファン全体を下方に向けて上昇しながら4基それぞれのダクトファン推力を加減することにより姿勢制御を行い、前進飛行時には同じくダクトファン全体を前方向に向けて飛行させるタイプもある。 そのほか、主にホバリング飛行するものでは、ダクトファン1基のタイプでは、ダクト内の下部に噴流方向制御用の複数の翼を設け、それによって前後左右の姿勢を制御するもの、また、複数のダクトファンを装備し、それぞれのダクトファンの推力あるいは噴流方向制御用の翼を動かすことにより前後左右の姿勢あるいはロール軸を制御するものなどがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
主翼に回転偏向可能な2基あるいは4基のプロペラを装備するタイプの場合、前進飛行時は通常の飛行機として問題は無いが、垂直上昇時では、左右の姿勢を制御するため
には、左右のプロペラの回転数あるいはピッチを変え、推力を変化させなければならず、また、前後の姿勢を制御するためには上方向に向けたプロペラの推力方向を前後に細かく偏向して制御するか、尾部あるいは前部に姿勢制御用のプロペラあるいは噴流ノズルを装備して制御を行う必要があり、複雑でかつ難しい。
【0004】
1基のダクトファンタイプの場合は、ダクト下部に設けた噴流方向を変える翼を動かすことによりヨー軸を含めた姿勢を制御するが、重心が上にあり、噴流を直接偏向して行うことから、安定をとるためには高性能なジャイロが必要であり、制御はかなり微妙で難しい。 4基のダクトファンタイプの場合はダクト本体を回転させなければならないため、その機構が大変なこと、また、それをエンジンが1基で行う場合は、動力軸をどのようにもって行くかの問題、エンジンが4基で独立した場合であっても、各推力を制御するために、それぞれの回転数あるいはファンのピッチを変えなければならず、構造が複雑になり制御も難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明においては、エンジンは1基として胴体内に固定したまま垂直方向にダクトを設け、ダクト下部に設けた複数枚の扉を開け閉めすることにより、ホバリング時には噴流をそのまま下方に出し、上昇推力を得て、水平飛行を行うには下方の扉を閉めて噴流を後方に吹き出す方法とし、ホバリング時はプロペラダクト内から噴流の一部を前後左右にある程度離れた位置まで導き、それを吹き出すことによってピッチ・ロール・ヨー3軸の制御を行う方法とした。
【0006】
その場合、請求項2に記載したとおり、姿勢制御用のダクトから吹き出す噴流を通常状態では上下に等しく出すことにより、空気中で「くさび」の役目をすることとなり、姿勢保持の効果が高くなる。 また、姿勢を変化させる場合は、上下の吹き出しの強さを変え、左右あるいは前後で互いに逆方向にすることで、強い回転モーメントを発生させることが出来る。 姿勢制御ダクトの長さについては、長い方が制御する回転モーメントは大きくなるが、あまり長くするとダクト内の流体抵抗が増えることによって吹き出す噴流の勢いが弱まり、かえって回転モーメントは弱くなってしまうので、概ねプロペラダクト直径の1〜2倍程度以内が良いと思われる。
【0007】
また、請求項3に記載したとおり、ヨー軸制御のための回転力を発生させる方法については、前後左右の姿勢制御用ダクト先端から吹き出す噴流を上下方向のまま、ダクト長手方向を上から見て直角方向に前方向又は後方向に吹き出し噴流の向きを変えることにより行うものである。 その場合、吹き出し噴流の向きを変える構造は、複数の案内板で構成した偏向装置を姿勢制御ダクト吹き出し口の上下に設け、上下同時に前後に動かすものである。 偏向角度は最大45度程度とし、それにより噴流が前あるいは後に斜めに吹き出すことよって、ヨー軸回りの回転力を得る。 それを前後あるいは左右2対に、あるいはそのすべての4対に設置する。
【0008】
これら各軸の制御は人間の操作では追いつけないめ、各軸のコントロール用サーボにはジャイロを付加する。
【0009】
姿勢制御用ダクトの噴流取り入れ口は、プロペラダクト内に前後・左右の4箇所にあるが、水平飛行を行う場合は閉じる構造である。 理由は、そのまま姿勢制御用のダクトから噴流を出したまま飛行した場合、その噴流が大きな空気抵抗となり、飛行できないほどの速度に落ちてしまうからである。 その開閉構造としては、図9のようにヒンジによる開閉及びスライド式などが考えられる。 また、姿勢制御用噴流を多く取り出せば制御の力が強くなり、それだけ姿勢制御がやりやすく、操縦時の反応や安定性も強くなる。 しかし反面、機体を浮上させる力が減少するため、垂直上昇そのもが出来なくなる恐れが出てくる。 そのため、姿勢制御用噴流の取り入れ口の大きさ(面積)は、4箇所合わせてプロペラダクト面積(円面積)の2割から3割程度以内とする。
【0010】
プロペラダクト下方に設置する噴流を下方と後方に振り分ける開閉扉の構造は、図8のとおり、縦方向あるいは横方向に一斉に連動して動く数枚の回転扉によって構成される。 その場合、噴流の勢いに逆らって開閉しなければならないため、その駆動力を軽減するためは、扉の水平方向中央に回転軸をもってくる構造とする。
【0011】
水平飛行時において、後方に出る噴流の中心点は構造上、上下方向で機体重心よりもやや下側にあるため、機体の頭上げが起こる。 それを防止するため、図11のとおり、後方噴流の底面を後方へある程度の長さに伸ばしながら後半部をやや上向に上げて噴流の中心を底面より上に上げるよう偏向板を取り付ける。 または図12のとおり、噴出口を水平に後ろに伸ばすとともに、出口部を下方にやや傾ける方法により、噴流のスラスト中心が機体重心付近を押すことととなり頭上げを防止し、安定した飛行を行うことが出来る。
【0012】
噴流出口の形状については、構造上、出口付近の高さが低いこと及び、により、噴流出口幅をダクト径と同じまま延長した場合、噴流出口面積がダクト面積よりかなり少なくなるため、排出抵抗が大きくなり、前進時の推力がかなり低下する。 また、上述の噴流偏向によっても、さらに推力の低下が生じる。その推力低下を少なくするためには、図13のとおり、ダクト下部を前方から横幅を徐々に広げ、出口付近は機体縦方向に平行になるよう噴流を整えるような構造にすることにより、出口面積が大きくなりかつ、噴流の横への広がりを防止して推力を大幅に増加させることが出来る。 併せて側面形状についても、ダクト前方の上方から徐々にカーブを付け、ダクト内の流れをスムースにさせれば、さらに効果的となる。 その際は、下部開閉扉は機体軸に対して直角方向の扉を複数設ける構造とすれば良い。
【0013】
プロペラダクト上部空気取り入れ口は吸入効率を良くするため、入り口周辺部を外側に向けて半径を大きく円弧状に張り出す。(ファンネルとも言う) これによって、吸入効率が上かり、ホバリング時の推力が増加する。 また、水平飛行時における吸入効率を良くするためには、プロペラダクト面を水平面からやや前方向に傾ける構造とすれば良い。
【0014】
エンジンの燃料タンクはプロペラ中心に対して左右あるいは前後に2個所に分けて置き、両方が同時に減って行くようにして燃料の増減による重心位置の移動を無くするシステムとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による垂直離着陸機により、ラジコン飛行機を飛ばす場合、少なくとも長さ100m程度、幅10m程度以上の滑走路が必要であったものが、周囲に障害物が無い環境さえあれば、離発着用として最小では数平方メートル程度の空き地があれば良いことから、これまでのように飛行場の確保に苦労することが無くラジコン飛行機を飛ばす楽しみを容易に得ることが出来る。 また、ラジコンによる航空撮影用のプラットフォームとして使う場合は、一般的に使われているヘリコプターに比べて構造が簡単であり、製造コストも格段に安く作れることから、撮影費用なども安く出来るほか、ヘリコプターのように大きな回転翼が無く、操縦不能その他の要因による墜落の場合においても安全性が高く、また、非常用のパラシュートも装備可能となるため、より安全に回収でき、そのまま墜落した場合であっても、回転するプロペラが内部にあるため、ヘリコプター等の航空機よりは他に与える損傷を少なく出来る。 さらに、本発明による垂直離着陸機はラジコン飛行機として利用するほかに、産業用の航空写真撮影用プラットフォームとして利用できる。 また、人間が乗れる実機への応用も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明になる垂直離着陸機を飛行させる場合、通常は、機首を風上に向けた状態で所定の位置からホバリングモード(下部開閉口及び姿勢制御用空気取り入れ口を開いた状態で、なおかつジャイロ作動状態)で浮き上がり、ある程度の高度(機体全長の10倍程度以上)を取ったら、やや前傾で前進しながら飛行モード(下部開閉口及び姿勢制御用空気取り入れ口を閉じた状態で、なおかつジャイロは非作動状態)に切り替えて前進飛行を行う。 前進飛行からホバリングに移る場合は、着陸地点に向かいながら前進飛行の速度を落とし、適当な高度でホバリングモードに切り替え着陸する。 なお、一般的な飛行機のように前進飛行状態で滑走しながらの離陸や着陸も可能である。
【実施例】
【0017】
実施例としては図1の機体が挙げられるが、目的とする性能を有するためには、従来の同じエンジンサイズの機体に比べてかなり軽量にする必要がある。エンジンサイズが40クラスの場合、通常の機体であれば3Kgから4Kg程度であるが、それを少なくとも2.5Kg程度にしなければならない。 そのためには、機体構造素材としてカーボンFRPなどを使用するほか、翼の構造などもバルサやフイルム張りを用いる構造とする。
【産業上の利用可能性】
【0018】
主にホビー用及び産業用として利用。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】全体図
【図2】ホバリング時における姿勢制御の状態
【図3】ホバリング時における横から見た内部の空気の流れ
【図4】ホバリング時において機体を後方に回転させる(ピッチアップ)姿勢に変えようとする場合の空気の流れ
【図5】前進飛行を行う場合の空気の流れ
【図6】機体横方向から見たヨー軸制御のための噴流の出る方向
【図7】ヨー軸制御のための噴流排出方向を変える装置部の構造例
【図8】ダクト下方の噴流吹き出し方向を変える扉の構造図、2方式
【図9】ダクト内の姿勢制御用空気取り入れ口の開閉機構、2方式
【図10】ダクト内噴流をスムーズに後方に流すための整流板取り付けた状態
【図11】飛行時におけるピッチアップを防ぐため、後方排出噴流の中心を重心に近づけるための整流板を取り付けた状態
【図12】同じく、飛行時におけるピッチアップを防ぐため、後方排出噴流の中心を 重心に近づけるための整流板を後方に設置する場合の例
【図13】前進飛行時の推力を増加(後方噴流出口面積増加)させるための噴流出口 形状
【図14】機体のデザインをデルタ翼型とした場合の例
【図15】航空写真撮影用プラットフォームとして応用する例
【符号の説明】
【0020】
1 エンジン
2 姿勢制御用噴流吹き出し口(上下)
3 プロペラ
4 推進用噴流吹き出し口
5 撮影機材
6 機体認識用マーカー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体中央上向き又は若干前方向に傾けてダクト内にプロペラを装着したエンジンを装備し、ホバリング時はそのまま下方に噴流を出すことにより上昇推力を確保するとともに、その噴流の一部を前後左右の吹き出し口に導き、そこでの噴出方向を調整することにより、ピッチ・ヨー・ロール3軸の姿勢制御を行い、前進飛行を行う場合は、ダクト下部の開閉扉を閉じて噴流を後方に出すことにより、前方への推進力を得ることを特徴とする垂直離着陸機。
【請求項2】
ホバリング時におけるピッチ及びロール軸の制御について、通常状態では、各吹き出し口の内部に設けた噴流制御弁を中立にすることにより、吹き出し口からの噴流を上下に等しく出し、その時の姿勢を保つ強い安定力を得るとともに、姿勢を変える場合は、各噴流制御弁を動かし、上下の吹き出し量を変えるが、その際、前後あるいは左右の吹き出し口から出る上下の噴流の量をそれぞれ逆にすることにより、傾き力を得る構造・方式。
【請求項3】
ホバリング時におけるヨー軸の制御について、左右あるいは前後の吹き出し口から出る噴流を上下同時に、機体上面方向から見て、吹き出し口より直角方向へ偏向できる構造とし、その際、吹き出し方向を左右あるいは前後で反対にすることにより、ヨー軸の回転力を得る構造・方式。
【請求項1】
胴体中央上向き又は若干前方向に傾けてダクト内にプロペラを装着したエンジンを装備し、ホバリング時はそのまま下方に噴流を出すことにより上昇推力を確保するとともに、その噴流の一部を前後左右の吹き出し口に導き、そこでの噴出方向を調整することにより、ピッチ・ヨー・ロール3軸の姿勢制御を行い、前進飛行を行う場合は、ダクト下部の開閉扉を閉じて噴流を後方に出すことにより、前方への推進力を得ることを特徴とする垂直離着陸機。
【請求項2】
ホバリング時におけるピッチ及びロール軸の制御について、通常状態では、各吹き出し口の内部に設けた噴流制御弁を中立にすることにより、吹き出し口からの噴流を上下に等しく出し、その時の姿勢を保つ強い安定力を得るとともに、姿勢を変える場合は、各噴流制御弁を動かし、上下の吹き出し量を変えるが、その際、前後あるいは左右の吹き出し口から出る上下の噴流の量をそれぞれ逆にすることにより、傾き力を得る構造・方式。
【請求項3】
ホバリング時におけるヨー軸の制御について、左右あるいは前後の吹き出し口から出る噴流を上下同時に、機体上面方向から見て、吹き出し口より直角方向へ偏向できる構造とし、その際、吹き出し方向を左右あるいは前後で反対にすることにより、ヨー軸の回転力を得る構造・方式。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−203008(P2007−203008A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53771(P2006−53771)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(506069712)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(506069712)
【Fターム(参考)】
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