説明

型内被覆成形方法

【課題】 簡単な構造の金型を使用して、塗料の漏れを効果的に防止できる型内被覆成形方法を提供する。
【解決手段】 本発明によれば、固定型と可動型の間で、製品キャビティと、該製品キャビティの金型割面に隣接して該製品キャビティを周りから囲むようにして配された補助キャビティと、を形成する型内被覆成形用金型を用いて、該補助キャビティに対して、樹脂を補充填することにより、塗料漏れを防止するためのシール部を形成する。本発明は前述の構成により、簡単な構造の補助キャビティを利用して、塗料漏れを効果的に防止する。
また、本発明において、金型割面を金型開閉方向と略直行する方向に延びる方向に形成すれば補助キャビティの製作加工が容易であり、金型割面を金型開閉方向に延びる嵌合部とすれば非常に強力なシール部を形成することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型内で樹脂成形品を成形した後、樹脂成形品を金型から取り出さないまま塗料によって被覆(塗装と称することもある)する型内被覆成形用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂成形品の表面を塗料で被覆して加飾する方法の一つとして、樹脂成形品の成形と、被覆を同一の金型で行う型内被覆成形方法(インモールドコーティング方法と称されることもある)が知られている。
【0003】
熱可塑性樹脂を基材とする型内被覆成形方法の1例を、以下、簡略に説明する。
型内被覆成形方法においては、金型キャビティ内に樹脂を射出充填することによって、樹脂成形品を金型内で成形した後、該金型をわずかに開いた状態(金型微開)とする。
前記工程で金型をわずかに開くと、金型内で成形した樹脂成形品と金型キャビティ面との間に塗料を注入することのできる隙間が生じるので、該隙間に塗料注入機を使用して塗料を注入する。そして、塗料注入後に、金型を再度型締することにより樹脂成形品の表面に塗料を均一に拡張させて硬化させる。塗料が硬化した後に、金型を開いて塗料で被覆した樹脂成形品を金型より取り出す。
【0004】
前述した従来の型内被覆成形方法によれば、熱可塑性樹脂の成形と被覆を同一の金型内で行うことができるので、浮遊している塵が硬化する以前の被覆に付着して不良となる等といったことがほとんどなく、高い品質の被覆成形品を得ることができる。
なお、型内被覆成形方法については、近年、数多くの提案がなされており、又型内被覆成形方法に用いるに好適な金型として、様々な構造の金型が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−256088公報
【0006】
型内被覆成形に使用する金型としては、特許文献1に例を示めすような技術が公知である。特許文献1に開示された発明は、主キャビティを囲む割面の横に、溝部を加工した副キャビティを設けて、塗料注入の際に、金型外へ塗料が漏れだすことを防止しようとする技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述した特許文献1に開示された従来技術は、副キャビティに形成した溝部で成形した樹脂部によって金型キャビティ部を強く挟み込んで塗料の漏れを防止する発明であるから、副キャビティに割面の全周を囲む複数の溝部を加工する必要がある。従って、副キャビティの加工に手間を要し、金型の構造が複雑になるという欠点を有していた。また、塗料漏れを防止するために形成する前述の副キャビティは、成形後に不要になる部分であるから、できるかぎり加工が簡単で、小型のものが望まれている。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造の金型を使用して、塗料の漏れを効果的に防止する型内被覆成形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明による型内被覆成形方法は、
(1) 固定型と可動型の間で、製品キャビティと、該製品キャビティの金型割面に隣接して該製品キャビティを周りから囲むようにして配された補助キャビティと、を形成するとともに、製品キャビティで成形した樹脂成形品の表面に被覆を施すための塗料注入機と、該補助キャビティに樹脂を充填するためのゲートを備えた型内被覆成形用金型を用いて、該製品キャビティと補助キャビティに樹脂を充填した後、型締力を低下させてから、補助キャビティに、再度、樹脂を充填することにより、固定型と可動型の間を微開状態として、該製品キャビティに塗料を注入するための隙間を形成し、該隙間に塗料を注入することによって、樹脂成形品を被覆する。
【0010】
(2) (1)に記載の型内被覆成形方法において、前記金型割面に、補助キャビティから製品キャビティに樹脂が流れる流路を形成した。
【0011】
(3) (1)に記載の型内被覆成形方法において、前記金型割面に、金型開閉方向に延びるシェアエッジ構造の嵌合部を形成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、製品キャビティの割面に隣接した補助キャビティに対して、樹脂を補充填することによって、塗料漏れを防止するためのシール部を形成する。従って、本発明であれば、構造が簡単な補助キャビティを利用して、塗料漏れを効果的に防止できる。
【0013】
また、金型割面を、金型開閉方向と略直行する方向に延びる方向に形成すれば、製作加工が極めて容易なフラットパーティング面を利用して補助キャビティを形成することが可能であり、構造が簡単な補助キャビティが利用できるという点で、特に効果的である。
【0014】
また、金型割面を、金型開閉方向に延びるシェアエッジ構造の嵌合部すれば、非常に強力なシール部を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に使用した第1金型の構造について説明するための図である。
【図2】本実施形態に係わり樹脂挙動を説明するための概念図である。
【図3】本実施形態に係わり第1金型を使用した際のシール構造を説明する図である。
【図4】本実施形態に使用した第2金型の構造について説明するための図である。
【図5】本実施形態に係わり第2金型を使用した際のシール構造を説明する図である。
【図6】本実施形態に使用した第3金型の構造について説明するための図である。
【図7】本実施形態に係わり第3金型を使用した際のシール構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明に係わる実施形態の好ましい例を説明する。
図1から図3は、本発明の実施形態に係わり第1の型内被覆成形用金型100(第1金型100と称することもある)を説明するための図であって、図1は第1金型の構造について説明するための図であり(a)が型開状態を示し、(b)が型閉状態を示したものである。
図2は第1金型を使用した際における金型内の樹脂の挙動を概念的に説明するための図であり(1)から(6)まで順次進行する工程の図を示す。
図3は第1金型100のシール部構造を説明するために樹脂の挙動を示した図であって(1)は比較例として補充填しなかった場合の樹脂挙動を示し、(2)は補充填した場合の樹脂挙動を示す。
【0017】
図4及び図5は、本発明の実施形態に係わり第2の型内被覆成形用金型200(第2金型200と称することもある)を説明するための図であって、図4は第2金型の構造について説明するための図であり(a)が型開状態を示し、(b)が型閉状態を示したものである。
図5は第2金型200のシール部構造を説明するために樹脂の挙動を示した図であって(1)は比較例として補充填しなかった場合の樹脂挙動を示し、(2)は補充填した場合の樹脂挙動を示す。
【0018】
図6及び図7は、本発明の実施形態に係わり第3の型内被覆成形用金型300(第3金型300と称することもある)を説明するための図であって、図6は第2金型の構造について説明するための図であり(a)が型開状態を示し、(b)が型閉状態を示したものである。
図7は第2金型200のシール部構造を説明するために樹脂の挙動を示した図であって(1)は比較例として補充填しなかった場合の樹脂挙動を示し、(2)は補充填した場合の樹脂挙動を示す。
【0019】
以下、本発明の実施形態について、第1金型100を使用した例を説明する。
図1を用いて第1金型100の構造を説明する。
本実施形態による金型100は、図1(a)及び(b)に示すように、可動型5と固定型3を備えており、可動型5と固定型3を組み合わせて閉じた際に、可動型5と固定型3の間に、樹脂成形品を成形するための製品キャビティ15が形成される。
そして、また、製品キャビティ15を形成する固定型3と可動型5の金型分割面である金型割面Wに隣接して製品キャビティ15の全周を周りから囲むようにして配置された補助キャビティ17が形成される。
【0020】
また、第1金型100は、図1に示したように、固定型3の中に、ホットランナーと第1バルブゲート60A、並びに第2バルブゲート60Bを配する構造となっており、固定型3に射出ノズル60を当接させて、樹脂を射出することによって、前述したホットランナー、第1バルブゲート60A並びに第2バルブゲート60Bを使用して金型内に樹脂を供給することができるように構成されている。
なお、第1金型100は、製品キャビティ15に第1バルブゲート60Aを、補助キャビティ17に第2バルブゲート60Bを配しており、樹脂を充填する際に両方のバルブを別個に制御することができ、製品キャビティ15と補助キャビティ17について、樹脂の充填状態を細かに制御することが可能である。
【0021】
ここで、第1金型100は、樹脂成形品の表面片側に被覆を施すことを目的として製作されている。なお、第1金型100は、後述する金型の微開時、及び金型の全開時に、図示しない係止機構により、樹脂成形品が可動型5に残る構成となっている。そのため、固定型3に、塗料注入機50が取り付けられており、塗料注入機50から製品キャビティ15に配された塗料注入ノズルを介して、製品キャビティ15内に塗料を注入することができるように構成されている。
【0022】
塗料注入機50は、図示しない駆動装置によって駆動されており、所望する量の塗料を正確に、製品キャビティ15内に注入することができるように構成されており、後述する型内被覆成形の際には、型内に塗料を注入して、樹脂成形品の被覆が可能である。
【0023】
前述したように第1金型100は、固定型3と可動型5とが組み合わされて、その内部に、所望の樹脂成形品を成形するために必要な製品キャビティ15を形成する構造となっているが、その製品キャビティ15で成形される樹脂成形品の形状は平板である。
【0024】
なお、本実施形態においては好ましい形態の1例として、図1から図3に示すような形状の補助キャビティ17を形成する第1金型100を使用した。
しかし、本発明の適応できる範囲の金型構造は、これに限るものではなく、例えば、後述する図4から図7に示したような補助キャビティを形成するような金型でも良く、それ以外の構成であっても、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない範囲で変更は可能である。
【0025】
以下、第1金型100を用いた型内被覆成形方法について説明する。
まず、図示しない射出成形機の型締装置に、図2(1)のように示すように取り付けられた可動型5と固定型3を、図2(2)に示したように組み合わせて型閉及び型締めして、製品キャビティ15、補助キャビティ17を形成する。なお、この際に製品キャビティ15と補助キャビティ17は、金型割面Wに隣接している。
【0026】
次に、図2(3)に示すように、射出ノズル60から第1バルブゲート60A及び第2バルブゲート60Bを介して、基材である熱可塑性樹脂(本実施形態においては基材としてABS樹脂を使用した)を、それぞれ製品キャビティ15並びに補助キャビティ17内に射出する。樹脂は、製品キャビティ15と補助キャビティ17について、金型が閉じた状態において、隙間なく完全に満たした状態で充填される。
【0027】
樹脂の射出充填完了後、型締力を低下させて、再度、射出ノズル60からバルブゲート60Bを介して補助キャビティ17内にのみ樹脂を射出して、補充填する。
ここで、本実施形態では、補充填の際に、第1金型100の型締力を低下させることによって、補充填する際の樹脂の充填圧力によって、金型100がわずかに開いた状態となるように調整する。
【0028】
具体的には、本実施形態において、前述の型締力は200KN、金型型開閉方向から見た製品の補助キャビティ17の投影面積は400cm、樹脂の充填圧力は30MPaとした。従って、補助キャビティ17に充填した溶融樹脂の圧力によって、第1金型100が微開する。補充填により第1金型100がわずかに型開きすると、成形された樹脂成形品は、可動型5に残るために、固定型3と樹脂成形品の間には、図2(4)に示すような塗料を注入するためスペースとして、隙間TSが形成される。
【0029】
ここで、仮に、補助キャビティ17に樹脂を補充填しない場合を想定すると、補助キャビティ17内には、樹脂の冷却収縮にともなうわずかな隙間が生じる。固定型3と可動型5の間の金型割面Wは閉じた状態となっているが、通常、金型割面Wが完全に閉じられていたとしても、塗料の漏れを防止することはできない。従って、製品キャビティに注入した塗料は、金型割面Wを介して、補助キャビティ17に生じたわずかな隙間を通り抜けて、金型の外に漏れ出してしまう。
【0030】
しかも、補助キャビティ17に樹脂を補充填しない場合は、製品キャビティ15内には樹脂の冷却収縮にともない生じる程度の隙間しか生じないから、金型を再度型締することにより樹脂成形品の表面に塗料を均一に拡張させて硬化させるという手法が難しくなってしまう。勿論、従来技術のように、型締装置を使用して強制的に第1金型100を微開すれば、製品キャビティ15内に形成される隙間は大きくなるが、その場合には、補助キャビティ17内の隙間も大きくなり、さらに、固定型3と可動型5の間の金型割面Wも微開して大きな隙間が形成されるから塗料の漏れは大きくなる。
【0031】
それに対して、本実施形態であれば、補助キャビティ17に充填した樹脂により第1金型100を微開する。従って、塗料注入のために十分な大きさの隙間TSを形成した状態においても、図3(2)に示したように、補助キャビティ17内には、補充した樹脂が完全に充填されているから、塗料注入時においても、塗料が金型外へ漏れ出すような隙間が形成されない。以上、説明したように、本実施形態においては、補助キャビティ17と補充填を利用して、塗料の漏れを防止するシール機構を形成する。
【0032】
そして、図2(5)に示したように補助キャビティ17によってシール部が形成された状態で、塗料注入機50から製品キャビティ15の隙間TS内に塗料を注入する。
隙間TS内に塗料を注入した後、型締力を大きくすることにより、第1金型100を型締しながら、隙間TSの中に注入した塗料を拡張させて、樹脂成形品Jの表面を被覆する。なお、この際においては、補助キャビティ17内の樹脂は、圧縮される。
本実施形態においては、その後、塗料を硬化させて、樹脂成形品Jを塗料で被覆した後、被覆した樹脂成形品Jを、製品として第1金型100から取り出す。
【0033】
本実施形態によれば、製品キャビティ15の金型割面Wに隣接して、製品キャビティ15を囲むようにして形成した補助キャビティ17に対して樹脂を補充填することにより、塗料漏れを防止するためのシール部を形成する。しかも、第1金型100は、製作加工が極めて容易なフラットな金型割面Wである。従って、構造が簡単で小型の補助キャビティ17により、塗料漏れを効果的に防止することが可能である。
【0034】
以下、本発明の実施形態について、第2の型内被覆成形用金型200(第2金型200と称することもある)を使用した例を説明する。
なお、説明は第2金型100の特徴部分を中心として、第1金型100で説明した内容については、適宜、省略する。
【0035】
図4を用いて第2金型200の構造を説明する。
本実施形態による第2金型200は、図4(a)及び(b)に示すように、可動型205と固定型203を備えており、可動型205と固定型203の間に、樹脂成形品を成形するための製品キャビティ215が形成される。そして、製品キャビティ215を形成する固定型203と可動型205の金型割面Wに隣接して、製品キャビティ215の全周を周りから囲むようにして配置された補助キャビティ217が形成される。
【0036】
ここで、第2金型200の特徴としては、製品キャビティ215の金型割面Wを、金型開閉方向に延びる薄肉部として形成した点にある。従って、第2金型200においては、製品キャビティ215と補助キャビティ217が、金型開閉方向に延びる薄肉部で接続されており、製品キャビティ215から補助キャビティ217の間に樹脂の流路が形成されている。なお、本実施形態においては、前述の薄肉部は、製品キャビティ215で形成する樹脂成形品の外周部の平均肉厚に対して約1/3〜1/4程度の厚みであり、後述する補助キャビティ217の平均肉厚よりも薄肉であり、厚みは概略0.5mm〜0.7mm程度の値である。
【0037】
また、第2金型200は、図4に示したように、固定型203の中に、ホットランナーとバルブゲート260Aを配する構造となっており、固定型203に射出ノズル260を当接させて、樹脂を射出することによって、前述したホットランナーとバルブゲート260Aを介して金型内に樹脂を供給することができるように構成されている。
なお、第2金型200は、バルブゲート260Aが補助キャビティ217に配されているから、樹脂を射出した場合には、補助キャビティ217から薄肉部を介して、製品キャビティ215へと、樹脂が流れて充填される構成となっている。
【0038】
第2金型200は、第1金型100と同様に、その製品キャビティ215で成形される樹脂成形品の形状は平板である。また、第2金型200は、可動型205を雄型として、固定型203を雌型とすることによって、後述する金型の微開時、及び金型の全開時に、可動型205に製品が残る構成となっている。従って、第2金型200の場合には、平板を形成する製品キャビティ15の全周にわたって、金型開閉方向に延びる薄肉部を介して、補助キャビティ17が形成されている形となっている。
【0039】
以下、第2金型200を用いた型内被覆成形方法について説明する。
まず、図示しない射出成形機の型締装置に取り付けられた可動型205と固定型203を、型閉及び型締めして、製品キャビティ215、補助キャビティ217、並びに製品キャビティ215と補助キャビティ217の間の金型割面Wに薄肉部を形成する。
【0040】
次に、射出ノズル260からバルブゲート260Aを介して、基材である熱可塑性樹脂を補助キャビティ217内に射出する。バルブゲート260Aから補助キャビティ217内に射出された樹脂は、補助キャビティ217から金型割面Wに形成した薄肉部を介して、製品キャビティ215内に充填される。樹脂は、製品キャビティ215と補助キャビティ217について、金型が完全に閉じた状態で、隙間なく完全に満たした状態で充填される。
【0041】
樹脂の射出充填完了後、すぐに金型内で樹脂が固化開始するが、その際には、前述した薄肉部の固化が最も早く進行する。樹脂の射出完了後、型締力を低下させて、薄肉部の樹脂が固化して流動性を失った時点で、再度、射出ノズル260からバルブゲート260Aを介して、補助キャビティ217内に樹脂を射出して補充填する。樹脂を補充填した際には、薄肉部の樹脂は既に固化して流動しない。従って、補充填された樹脂は補助キャビティ217内にのみ充填される。
【0042】
そして、前述した第1金型100で説明した実施形態と同様に、型締力を低下させることにより、補充填する際の樹脂の充填圧力により、第2金型200がわずかに開いた状態とする。補充填により第2金型200がわずかに型開きすると、成形された樹脂成形品は、可動型205に残るために、固定型203と樹脂成形品の間には、塗料を注入するためスペースとして隙間TSが形成される。
【0043】
本実施形態であれば、塗料注入のための隙間TSを形成した状態においても、補充した樹脂が補助キャビティ217に完全に充填されて、塗料が漏れ出すような隙間は形成されない。以上、説明した原理によって、本実施形態においては、補助キャビティ217と補充填を利用して、塗料の漏れを防止するシール部を形成する。
【0044】
本実施形態によれば、樹脂成形品の端部に形成した補助キャビティ217に対して樹脂を補充填することにより、塗料漏れを防止するためのシール部を形成する。しかも、本実施形態であれば、バルブゲートの個数が1つで済むので、金型構造がシンプルである。従って、極めて構造が簡単で小型の補助キャビティ217を利用して、塗料漏れを効果的に防止することが可能である。
【0045】
以下、本発明の実施形態について、第3の型内被覆成形用金型300(第3金型300と称することもある)を使用した例を説明する。
なお、説明は、第3金型300の特徴部分を中心として、第1金型100、或は第2金型200で前述した内容については、適宜、省略する。
【0046】
図6を用いて第3金型300の構造を説明する。
第3金型300においては、前述した第1金型100と同様に、可動型305と固定型303を組み合わせて閉じた際に、可動型305と固定型303の間に、樹脂成形品を成形するための製品キャビティ315が形成される。そして、また、製品キャビティ315金型割面Wに隣接して製品キャビティ15の全周を周りから囲むようにして配置された補助キャビティ317が形成される。
【0047】
第3金型300の特徴は、金型割面Wが、金型開閉方向に延びるシェアエッジ構造の嵌合部(シャーエッジ構造、或は食いきり構造と称されることもある)として形成されている点にある。
【0048】
なお、この嵌合部に形成される隙間の寸法については、第1金型100のようにバルブゲートを製品キャビティ315及び補助キャビティ317の両方に設ける場合は、樹脂を流す必要がないので、固定型3と可動型5がスムーズに嵌合できるだけの極めて小さな隙間であれば良い。又、第2金型200のようにバルブゲートを補助キャビティ317にのみ設ける場合は、樹脂を製品キャビティ315に流す必要があるから、第2金型200で説明した程度の薄肉部が形成できる程度の寸法となっていれば良い。
図6に示した第3金型300においては、バルブゲート360Aを補助キャビティ317にのみ設けたので、薄肉部が形成できる程度の寸法とした。
【0049】
以下、第3金型300を用いた型内被覆成形方法のシール構造について説明する。
前述した工程によって、製品キャビティ315と補助キャビティ317に樹脂の射出充填完了後、わずかに時間をおけば金型内で樹脂が固化開始するが、その際には、製品キャビティ315と補助キャビティ317を連通させる薄肉部の固化が最も早く進行する。樹脂の射出完了後、型締力を低下させて、薄肉部の樹脂が固化して流動性を失った時点で、再度、射出ノズル360からバルブゲート360Aを介して、補助キャビティ317内に樹脂を射出して補充填する。樹脂を補充填した際には、薄肉部の樹脂は既に固化して流動しないので、補充填された樹脂は、補助キャビティ317内にのみ充填されることになる。そして、補充填する際の樹脂の充填圧力によって、第3金型300がわずかに開いた状態となるように調整した。
【0050】
補充填により第3金型300がわずかに型開きすると、成形された樹脂成形品は、可動型305に残るために、固定型303と樹脂成形品の間には、塗料を注入するためスペースとして、隙間TSが形成される。本実施形態であれば、塗料注入のための隙間TSを形成した状態においても、図7(2)に示したように、補充した樹脂が補助キャビティ317に完全に充填されて、塗料が漏れ出すような隙間は形成されない。
以上、説明した原理によって、本実施形態においては、補助キャビティ317と補充填を利用して、塗料の漏れを防止する強固なシール部を形成する。
【0051】
本実施形態によれば、樹脂成形品の端部に隣接する補助キャビティ317に対して樹脂を補充填することにより、塗料漏れを防止するためのシール部を形成する。
しかも、製品キャビティ315と補助キャビティ317の金型割面Wを、金型開閉方向に延びるシェアエッジ構造の嵌合部することにより、非常に強力なシール部を形成することが可能である。従って、構造が簡単で小型の補助キャビティ317により、塗料漏れを効果的に防止することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の適応範囲は特に限定されないが、自動車部品、或いは家電品等において使用される樹脂の表面を塗料で被覆した被覆成形品において、特に好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0053】
3 固定型
5 可動型
15 製品キャビティ
17 補助キャビティ
50 塗料注入機
60 射出ノズル
60A 第1バルブゲート
60B 第2バルブゲート
100 第1の型内被覆成形用金型(第1金型)
200 第2の型内被覆成形用金型(第2金型)
203 固定型
205 可動型
215 製品キャビティ
217 補助キャビティ
250 塗料注入機
260 射出ノズル
260A バルブゲート
300 第3の型内被覆成形用金型(第3金型)
303 固定型
305 可動型
315 製品キャビティ
317 補助キャビティ
350 塗料注入機
360 射出ノズル
360A 第1バルブゲート
J 樹脂
TS 隙間(塗料注入スペース)
W 金型割面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と可動型の間で、製品キャビティと、該製品キャビティの金型割面に隣接して該製品キャビティを周りから囲むようにして配された補助キャビティと、を形成するとともに、製品キャビティで成形した樹脂成形品の表面に被覆を施すための塗料注入機と、該補助キャビティに樹脂を充填するためのゲートを備えた型内被覆成形用金型を用いて、
該製品キャビティと補助キャビティに樹脂を充填した後、型締力を低下させてから、補助キャビティに、再度、樹脂を充填することにより、固定型と可動型の間を微開状態として、該製品キャビティに塗料を注入するための隙間を形成し、該隙間に塗料を注入することによって、樹脂成形品を被覆することを特徴とした型内被覆成形方法。
【請求項2】
前記金型割面に、補助キャビティから製品キャビティに樹脂が流れる流路を形成した請求項1記載の型内被覆成形方法。
【請求項3】
前記金型割面に、金型開閉方向に延びるシェアエッジ構造の嵌合部を形成した請求項1記載の型内被覆成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86367(P2012−86367A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232235(P2010−232235)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】