説明

型分類不能なHaemophilusinfluenzae由来のポリペプチド

【課題】型分類不能なH.influenzae株によって引き起こされる感染の予防および/または処置のためのワクチンの開発における使用のためのポリペプチドを提供する。
【解決手段】型分類不能なHaemophilus influenzae(NTHi)アミノ酸配列を含むポリペプチドが、本発明によって提供される。2500種を超える具体的なNTHiタンパク質が、開示される。本発明はまた、関連するポリペプチド、核酸、抗体および方法を提供する。これらは全て、H.influenzaeによって引き起こされる疾患および/または感染(例えば、中耳炎)を処置もしくは予防するための医薬において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中で引用された全ての文献は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、Haemophilus influenzaeの免疫学およびワクチン学(vaccinology)の分野内にある。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)は、小さな、非運動性の、グラム陰性球杆菌である。これは、呼吸性の病原体であり、広い範囲のヒト感染を引き起こす。これらの感染としては、以下が挙げられる:上気道の無症候性集落形成(すなわち、保因);中耳炎(中耳の炎症)、気管支炎、結膜炎、静脈洞炎、尿路感染および肺炎を引き起こす、集落化した粘膜表面から広がる感染;ならびに、菌血症、化膿性関節炎、喉頭蓋炎、肺炎、蓄膿症、心膜炎、蜂巣炎、骨髄炎および髄膜炎のような侵襲性感染。H.influenzaeは、完全なゲノム配列が公表された最初の細菌であった(非特許文献1;参考文献[1])。
【0004】
H.influenzae株は、莢膜に包まれている(capsulated)(型分類可能である)か、もしくは莢膜に包まれていない(型分類不能である)。そして、莢膜に包まれている株の6種の主要な血清型(a〜f)が存在する。H.influenzaeによって起こる侵襲性疾患の95%は、H.influenzae b型(「Hib」)株によって引き起こされる。Hib疾患の最も深刻な症状は髄膜炎であるが、1980年代の結合体化Hib莢膜多糖類に基づくワクチンの導入により、この疾患の発生率は大いに低減した。
【0005】
現在、Hib感染は、ワクチン接種によって制御され得るが、他の病原性H.influenzae株は、危険であり続けている。例えば、型分類不能なH.influenzae(NTHi)は、中耳炎(OM)(特に、慢性的OM)の原因である。OMは、滅多に死亡率に結びつかないが、OMは、有意な罹患率に結びつく。難聴は、最も一般的なOMの合併症であり、行動、学習および言語発達の遅延が、早発性の滲出を伴うOMのさらなる結果である。急性のOMは、米国の小児において最も一般的な細菌感染である。型分類不能なH.influenzae生物群であるaegyptiusは、流行性結膜炎およびブラジル紫斑熱(BPF)を引き起こす(非特許文献2;参考文献[2])。BPFの死亡率は70%に達する。
【0006】
現在、抗生物質は、集合的にOMとして知られる範囲の臨床的実体に対する主要な手段であるが、OMのための抗生物質の広範な使用は、多重抗生物質耐性微生物の出現ゆえに論争となっている。OMの病因およびOMに対する免疫応答のいずれの理解も不完全であることに起因して、ワクチンの進歩は遅い。
【0007】
d血清型のKW20株のゲノム配列(非特許文献1および非特許文献3;参考文献[1]、[3])は、基本的なH.influenzae生物学を理解するために有用であるが、d血清型株は一般に病原体ではないので、病原性H.influenzae株に対抗するためにはあまり有用ではなかった。
【0008】
型分類不能なH.influenzae株によって引き起こされる感染の予防および/または処置のためのワクチンの開発における使用のためのポリペプチドを提供することが、本発明の目的である。特に、中耳炎の予防および/または処置のための改善されたワクチンにおける使用のためのポリペプチドを提供することが、目的である。このポリペプチドはまた、診断目的のためにも有用であり得、そして抗生物質の標的としても有用であり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Fleischmannら,Science,第269巻,1995年,p.496−512
【非特許文献2】Liら,Mol Microbial,第47巻,2003年,p.1101−1111
【非特許文献3】GenBank登録番号NC_000907
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の開示)
(ポリペプチド)
本発明は、実施例において開示されるH.influenzaeアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。これらのアミノ酸配列は、2〜5080の間の偶数の配列番号である。従って、2540のアミノ酸配列が存在し、これらは、NTHnnnnと呼ばれ、ここで、nnnnは、0001〜2832の間の数字である(配列を有さない292のNTHnnnn番号が存在する;表Iを参照)。本発明のさらなるNTHi配列は、5088以上の配列番号で示される。
【0011】
本発明はまた、実施例において開示されるH.influenzaeアミノ酸配列に対して配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。特定の配列に依存して、配列同一性の程度は、好ましくは、50%よりも大きい(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上)。これらのポリペプチドは、ホモログ、オルソログ、対立遺伝子改変体および機能的変異体を含む。代表的には、2つのポリペプチド配列間の50%以上の同一性は、機能的等価性の指標であるとみなされる。ポリペプチド間の同一性は、好ましくはMPSRCHプログラム(Oxford Molecular)において、ギャップ開始ペナルティ=12およびギャップ伸長ペナルティ=1のパラメータでアフィンギャップ検索を用いて実行されるSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。
【0012】
これらのポリペプチドは、実施例のNTHi配列と比較して、1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、など)の保存的アミノ酸置換(すなわち、1つのアミノ酸と同族の側鎖を有する別のアミノ酸との置換)を含み得る。遺伝的にコードされるアミノ酸は、一般的に、4つのファミリーに分けられる:(1)酸性(すなわち、アスパラギン酸、グルタミン酸);(2)塩基性(すなわち、リジン、アルギニン、ヒスチジン);(3)非極性(すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);ならびに(4)非荷電極性(すなわち、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、時々、芳香族アミノ酸として共に分類される。一般に、これらのファミリー間での1個のアミノ酸の置換は、生物学的活性に大きな影響を有さない。このポリペプチドはまた、実施例のNTHi配列に対して、1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、など)の1アミノ酸欠失をも含み得る。このポリペプチドはまた、実施例のNTHi配列に対して、1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、など)の挿入(例えば、各々1個、2個、3個、4個もしくは5個のアミノ酸)をも含み得る。
【0013】
本発明の好ましいポリペプチドは、表IIに列挙される。これらには、脂質付加された(lipidated)ポリペプチド、外膜に局在するポリペプチド、内膜に局在するポリペプチド、ペリプラズムに局在するポリペプチド、または非病原性H.influenzae株において見出されないポリペプチドが含まれる。特に好ましいポリペプチドは、これらのカテゴリーの1以上に該当するポリペプチドである(例えば、外膜に局在し、かつまた非病原性H.influenzae株において見出されないポリペプチド)。
【0014】
特に好ましいポリペプチドは、NTH0867である。NTH0861、NTH0863およびNTH0865もまた、好ましい。以下に記載されるように、これらの4個のタンパク質は、以下の配列番号によって表される:1566、5095、1570、5094、1574、5903、1578および5092。これらの8個の配列番号の中で、配列番号1566〜1578が好ましい。
【0015】
本発明は、実施例において開示されるH.influenzaeアミノ酸配列のフラグメントを含むポリペプチドをさらに提供する。このフラグメントは、特定の配列に由来する少なくともn個の連続するアミノ酸を含まねばならない。その具体的な配列に依存して、nは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100またはそれ以上)である。
【0016】
このフラグメントは、この配列の少なくとも1つのT細胞エピトープもしくは好ましくはB細胞エピトープを含み得る。T細胞エピトープおよびB細胞エピトープは、実験的に(例えば、PEPSCAN(参考文献[4]、[5])もしくは類似の方法を用いて)同定され得るか、またはこれらは、例えば、Jameson−Wolf抗原性指標(参考文献[6])、マトリクスベースのアプローチ(参考文献[7])、TEPITOPE(参考文献[8])、ニューラルネットワーク(参考文献[9])、OptiMer & EpiMer(参考文献[10]、[11])、ADEPT(参考文献[12])、Tsites(参考文献[13])、親水性(参考文献[14])、抗原性指標(参考文献[15])、または参考文献[16]で開示される方法を用いて、予測され得る。他の好ましいフラグメントは、(a)本発明のNTHiポリペプチドのN末端シグナルペプチド、(b)NTHiポリペプチドであるがそのN末端シグナルペプチドを有さないポリペプチド、(c)NTHiポリペプチドであるがそのN末端アミノ酸残基を有さないポリペプチド、である。
【0017】
本発明のポリペプチドは、多くの方法で(例えば、(全体もしくは一部の)化学合成によるか、より長いポリペプチドをプロテアーゼを用いて切断することによるか、RNAからの翻訳によるか、(例えば、組換え体発現に由来する)細胞培養物からの精製によるか、生物それ自体に由来する(例えば、細菌培養後、もしくは患者から直接的に由来する)などによって)調製され得る。40未満のアミノ酸長のペプチドの産生のための好ましい方法としては、インビトロ化学合成が挙げられる(参考文献[17]、[18])。固相ペプチド合成は、特に好ましく、例えば、tBoc化学もしくはFmoc化学(参考文献[19])に基づく方法である。酵素学的合成(参考文献[20])もまた、部分的にもしくは全体で使用され得る。化学的合成の代替として、生物学的合成が使用され得る(例えば、このポリペプチドは、翻訳によって産生され得る)。これは、インビトロもしくはインビボで実施され得る。生物学的方法は、一般に、Lアミノ酸に基づくポリペプチドの産生に制限されるが、(例えば、アミノアシルtRNA分子の)転写機構の操作は、Dアミノ酸(または、ヨードチロシンもしくはメチルフェニルアラニン、アジドホモアラニンなどのような他の非天然アミノ酸)の導入を可能にするために使用され得る(参考文献[21])。しかし、Dアミノ酸が含まれる場合、化学合成を使用することが好ましい。本発明のポリペプチドは、C末端および/もしくはN末端において共有結合性の改変を有し得る。
【0018】
本発明のポリペプチドは、種々の形態(例えば、天然形態、融合形態、グリコシル化形態、非グリコシル化形態、脂質化形態、非脂質化形態、リン酸化形態、非リン酸化形態、ミリストイル化形態、非ミリストイル化形態、単量体形態、多量体形態、粒状形態、変性形態など)をとり得る。
【0019】
本発明のポリペプチドは、好ましくは、精製形態もしくは実質的に精製された形態(すなわち、実質的に他のポリペプチドを含まない(例えば、天然に存在するポリペプチドを含まない)、特に他のヘモフィルス属ポリペプチドもしくは宿主細胞ポリペプチドを含まない形態)で提供され、少なくとも(重量%で)約50%純粋であり、通常は少なくとも約90%純粋である(すなわち、組成物の約50%未満、より好ましくは約10%(例えば、5%)未満が、他の発現されたポリペプチドで構成される)。本発明のポリペプチドは、好ましくは、H.influenzaeポリペプチドである。本発明のポリペプチドは、好ましくは、関連する配列について表IIIに示される機能を有する。
【0020】
本発明のポリペプチドは、固体支持体に結合され得る。本発明のポリペプチドは、検出可能な標識(例えば、放射活性標識もしくは蛍光標識、もしくはビオチン標識)を含み得る。
【0021】
用語「ポリペプチド」とは、任意の長さのアミノ酸ポリマーをいう。このポリマーは、直鎖状もしくは分枝状であり得、改変アミノ酸を含み得、そして非アミノ酸によって中断され得る。この用語はまた、天然に改変されているかもしくは介入(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または例えば標識化成分との結合体化のような任意の他の操作もしくは改変)によって改変されている、アミノ酸ポリマーをも包含する。この定義にはまた、例えば、1個以上のアミノ酸のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ならびに当該分野で公知の他の改変を含むポリペプチドも、含まれる。ポリペプチドは、1本の鎖として存在し得るか、もしくは結合した鎖として存在し得る。本発明のポリペプチドは、天然的にグリコシル化されても、または非天然的にグリコシル化されても(すなわち、このポリペプチドは、対応する天然に存在するポリペプチドに見出されるグリコシル化パターンと異なるグリコシル化パターンを有する)よい。
【0022】
本発明は、−X−Y−配列もしくは−Y−X−配列を含むポリペプチドを提供する。ここで、−X−は、上で規定されたアミノ酸配列であり、そして−Y−は、上で規定された配列ではない。すなわち、本発明は、融合タンパク質を提供する。ポリペプチドをコードする配列のN末端コドンがATGでない場合、このコドンは、このコドンが開始コドンである場合に存在するMetではなく、このコドンについての標準的アミノ酸に転写される。
【0023】
本発明は、本発明のポリペプチドを産生するためのプロセスを提供し、このプロセスは、ポリペプチド発現を誘導する条件下で本発明の宿主細胞を培養する工程を包含する。
【0024】
本発明は、本発明のポリペプチドを産生するためのプロセスを提供し、ここで、このポリペプチドは、化学的手段を用いて部分的にもしくは全体的に合成される。
【0025】
本発明は、本発明の2以上のポリペプチドを含む組成物を、提供する。
【0026】
本発明はまた、式NH−A−[−X−L−]−B−COOHによって表される、ハイブリッドポリペプチドも提供する。式中、Xは、上で規定される本発明のポリペプチドであり、Lは、任意のリンカーアミノ酸配列であり、Aは、任意のN末端アミノ酸配列であり、Bは、任意のC末端アミノ酸配列であり、そしてnは、1より大きい整数である。nの値は2とxとの間であり、そしてxの値は、代表的に、3、4、5、6、7、8、9もしくは10である。好ましくは、nは、2、3もしくは4である;より好ましくは2もしくは3である;最も好ましくは、n=2である。各nの場合について、−X−は同じであっても異なってもよい。[−X−L−]の各nの場合について、リンカーアミノ酸配列−L−は、存在してもしなくてもよい。例えば、n=2である場合、このハイブリッドは、NH−X−L−X−L−COOH、NH−X−X−COOH、NH−X−L−X−COOH、NH−X−X−L−COOHなどである。リンカーアミノ酸配列は、代表的に短い(例えば、20以下、すなわち、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1のアミノ酸)。例としては、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリグリシンリンカー(すなわち、Glyであり、ここでn=2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上)、およびヒスチジンタグ(すなわち、Hisであり、ここでn=3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上)が挙げられる。他の適切なリンカーアミノ酸配列は、当業者に明らかである。−A−および−B−は、任意の配列であり、代表的に短い(例えば、40以下、すなわち39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1のアミノ酸)。例としては、ポリペプチド輸送を指向するリーダー配列、またはクローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド(例えば、ヒスチジンタグすなわちHisであり、ここでn=3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれ以上)が挙げられる。他の適切なN末端アミノ酸配列およびC末端アミノ酸配列は、当業者に明らかである。
【0027】
本発明のポリペプチドのインビボ免疫原性を評価するために、種々の試験が使用され得る。例えば、ポリペプチドは、組換え的に発現され得、免疫ブロットによって患者血清をスクリーニングするために使用され得る。このポリペプチドと患者血清との間の陽性反応は、この患者が以前に当該タンパク質(すなわち、このタンパク質は免疫原である)に対する免疫応答を惹起していることを示す。この方法はまた、免疫優勢タンパク質を同定するためにも使用され得る。
【0028】
(抗体)
本発明は、本発明のポリペプチドに結合する抗体を提供する。これらは、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよく、そして任意の適切な手段によって(例えば、組換え発現によって)産生され得る。ヒト免疫系との適合性を増大させるために、この抗体は、キメラ化もしくはヒト化され得る(例えば、参考文献[22]および[23])か、または完全なヒト抗体が使用され得る。この抗体は、(例えば、診断的アッセイのための)検出可能な標識を含み得る。本発明の抗体は、固体支持体に結合され得る。本発明の抗体は、好ましくは、中和抗体である。
【0029】
モノクローナル抗体は、個々のポリペプチド(このポリペプチドに対してこの抗体が指向される)の同定および精製において特に有用である。本発明のモノクローナル抗体はまた、イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合化イムノソルベントアッセイ(ELISA)などにおける試薬としても使用され得る。これらの適用において、この抗体は、分析的に検出可能な試薬(例えば、放射性同位体、蛍光分子もしくは酵素)によって標識され得る。上記の方法によって産生されるこのモノクローナル抗体はまた、本発明のポリペプチドの分子同定および特徴付け(エピトープマッピング)のためにも使用され得る。
【0030】
本発明の抗体は、好ましくは、精製形態もしくは実質的に精製された形態で提供される。代表的に、抗体は、他のペプチドが実質的に存在しない(例えば、この組成物の(重量%で)90%未満、通常は60%未満、より通常は50%未満が、他のポリペプチドで構成される)組成物中に存在する。
【0031】
本発明の抗体は、任意のイソ型(例えば、IgA、IgG、IgM、すなわちα重鎖、γ重鎖もしくはμ重鎖)であり得るが、一般に、IgGである。IgGイソ型において、抗体は、IgG1サブクラス、IgG2サブクラス、IgG3サブクラスもしくはIgG4サブクラスであり得る。本発明の抗体は、κ軽鎖もしくはλ軽鎖を有し得る。
【0032】
本発明の抗体は、種々の形態をとり得る。これらの形態としては、全長抗体、抗体フラグメント(例えば、F(ab’)2フラグメントおよびF(ab)フラグメント、Fvフラグメント(非共有結合性ヘテロダイマー))、単鎖抗体(例えば、単鎖Fv分子(scFv)、ミニボディ(minibody)、オリゴボディ(oligobody)などが挙げられる。用語「抗体」は、任意の特定の起源を意味せず、従来的でないプロセス(例えば、ファージディスプレイ)によって得られた抗体を含む。
【0033】
本発明は、本発明のポリペプチドを検出するためのプロセスを提供し、このプロセスは、(a)抗体−抗原複合体の形成に適した条件下で本発明の抗体を生物学的サンプルに接触させる工程、および(b)この複合体を検出する工程、を包含する。
【0034】
本発明は、本発明の抗体を検出するためのプロセスを提供し、このプロセスは、(a)抗体−抗原複合体の形成に適した条件下で本発明のポリペプチドを生物学的サンプル(例えば、血液サンプルもしく血清サンプル)に接触させる工程、および(b)この複合体を検出する工程、を包含する。
【0035】
(核酸)
本発明は、実施例において開示されるH.influenzaeヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。これらの核酸配列は、1〜5080の間の奇数の配列番号である。
【0036】
本発明はまた、実施例において開示されるH.influenzaeヌクレオチド配列に対して配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。配列間の同一性は、好ましくは、上述のSmith−Waterman検索アルゴリズムによって決定される。
【0037】
本発明はまた、実施例において開示されるH.influenzae核酸にハイブリダイズ可能な核酸を提供する。ハイブリダイゼーション反応は、異なる「ストリンジェンシー」条件下で実施され得る。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを増加させる条件は、当該分野において周知であり、そして公開されている(例えば、参考文献[24]の7.52ページ)。該当する条件の例としては、以下が挙げられる(ストリンジェンシーが増加する順に):25℃、37℃、50℃、55℃および68℃のインキュベーション温度;10×SSC、6×SSC、1×SSC、0.1×SSC(ここで、SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸緩衝液)の緩衝液濃度、ならびに他の緩衝液系を用いる等価条件;0%、25%、50%および75%のホルムアミド濃度;5分間〜24時間のインキュベーション時間;1回、2回またはそれ以上の洗浄工程;1分間、2分間もしくは15分間の洗浄インキュベーション時間;ならびに、6×SSC、1×SSC、0.1×SSCもしくは脱イオン水である洗浄溶液。ハイブリダイゼーション技術およびその最適化は、当該分野で周知である(例えば、参考文献[24]〜[27]などを参照)。
【0038】
幾つかの実施形態において、本発明の核酸は、低ストリンジェンシー条件下で本発明の標的にハイブリダイズする;他の実施形態において、この核酸は、中間的ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする;好ましい実施形態において、この核酸は、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。1組の例示的な低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、50℃および10×SSCである。1組の例示的な中間的ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、55℃および1×SSCである。1組の例示的な高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、68℃および0.1×SSCである。
【0039】
これらの配列のフラグメントを含む核酸もまた、提供される。これらの核酸は、H.influenzae配列に由来する少なくともn個の連続する核酸を含まなければならない。具体的な配列に依存して、nは、10以上(例えば、12、14、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200またはそれ以上)である。
【0040】
本発明は、式5’−X−Y−Z−3’の核酸を提供する。式中、−X−は、x個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である;−Z−は、z個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である;−Y−は、(a)1〜5079の奇数の配列番号の1つのフラグメント、もしくは(b)(a)の相補鎖のいずれかからなるヌクレオチド配列であり;そして、この核酸5’−X−Y−Z−3’は、(i)1〜5079の奇数の配列番号のフラグメントでも、(ii)(i)の相補鎖でもない。−X−部分および/または−Z−部分は、プロモーター配列(もしくはその相補鎖)を含み得る。
【0041】
本発明はまた、本発明のポリペプチドおよびポリペプチドフラグメントをコードする核酸を提供する。
【0042】
本発明は、配列表に開示される配列に対して相補的な配列(例えば、アンチセンスもしくはプローブ検出のため、もしくはプライマーとしての使用のため)、ならびに、実際に示される方向性の配列を含む核酸を含む。
【0043】
本発明の核酸は、ハイブリダイゼーション反応(例えば、ノーザンブロットもしくはサザンブロット、または核酸マイクロアレイもしくは「遺伝子チップ(gene chip)」)において、ならびに増幅反応(例えば、PCR、SDA、SSSR、LCR、TMA、NASBAなど)および他の核酸技術において使用され得る。
【0044】
本発明に従う核酸は、種々の形態(例えば、一本鎖形態、二本鎖形態、ベクター形態、プライマー形態、プローブ形態、標識化形態など)をとり得る。本発明の核酸は、環状もしくは分枝状であり得るが、一般的に、直鎖状である。特定されるかもしくは要求されない限り、核酸を用いる本発明の任意の実施形態は、二本鎖形態およびその二本鎖形態を構成する2本の相補的な一本鎖形態の各々の両方を使用し得る。プライマーおよびプローブは、一般的に、一本鎖であり、アンチセンス核酸である。
【0045】
本発明の核酸は、好ましくは、精製形態もしくは実質的に精製された形態(すなわち、実質的に他の核酸を含まない(例えば、天然に存在する核酸を含まない)、特に他のヘモフィルス属核酸もしくは宿主細胞核酸を含まない形態)で提供され、一般的に、少なくとも(重量%で)50%純粋であり、通常、少なくとも約90%純粋である。本発明の核酸は、好ましくは、H.influenzae核酸である。
【0046】
本発明の核酸は、多くの方法で(例えば、全体または一部の化学合成(例えば、DNAのホスホラミダイト合成)によるか、より長い核酸をヌクレアーゼ(例えば、制限酵素)を用いて切断することによるか、より短い核酸もしくはヌクレオチドを(例えば、リガーゼもしくはポリメラーゼを用いて)結合することによるか、ゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーに由来するか、などによって)調製され得る。
【0047】
本発明の核酸は、固体支持体(例えば、ビーズ、プレート、フィルター、フィルム、スライドガラス、マイクロアレイ支持体、樹脂など)に結合され得る。本発明の核酸は、例えば、放射活性標識もしくは蛍光標識、またはビオチン標識によって標識化され得る。これは、核酸が検出技術において使用される場合(例えば、核酸がプライマーもしくはプローブである場合)、特に有用である。
【0048】
用語「核酸」は、一般的な意味において、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を包含し、このヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそのアナログを含む。これは、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッドを含む。これはまた、DNAアナログもしくはRNAアナログ(例えば、改変骨格(例えば、ペプチド核酸(PNA)もしくはホスホロチオエート)または改変塩基を含むDNAアナログもしくはRNAアナログ)も含む。従って、本発明は、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、DNA、cDNA、組換え核酸、分枝状核酸、プラスミド、ベクター、プライマーなどを含む。本発明の核酸がRNAの形態をとる場合、5’キャップを有しても有さなくてもよい。
【0049】
本発明の核酸は、NTHi配列を含むが、本発明の核酸はまた、(例えば、上で規定されるような、式5’−X−Y−Z−3’の核酸において)非NTHi配列も含む。これは、プライマーのために特に有用であり、このプライマーは、従って、PCAV核酸標的に相補的な第1の配列およびこの核酸標的に相補的でない第2の配列を含み得る。プライマーにおけるこのような任意の非相補配列は、好ましくは、相補配列の5’側である。代表的な非相補配列は、制限酵素部位およびプロモーター配列を含む。
【0050】
本発明の核酸は、多くの方法で(例えば、(少なくとも部分的に)化学合成によるか、より長い核酸をヌクレアーゼ(例えば、制限酵素)を用いて切断することによるか、より短い核酸を(例えば、リガーゼもしくはポリメラーゼを用いて)結合させることによるか、ゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーに由来するか、などによって)調製され得る。
【0051】
本発明の核酸は、ベクターの一部分、すなわち、1以上の細胞型の形質導入/トランスフェクションのために設計された核酸構築物の一部分であり得る。ベクターは、例えば、挿入されたヌクレオチドの単離、増殖(propagation)および複製のための「クローニングベクター」であり得るか、宿主細胞におけるヌクレオチド配列の発現のために設計された「発現ベクター」であり得るか、組換えウイルスもしくはウイルス様粒子の産生をもたらすように設計された「ウイルスベクター」であり得るか、または1種以上のベクターの特性を含む「シャトルベクター」であり得る。好ましいベクターは、プラスミドである。「宿主細胞」は、外因性核酸のレシピエントであり得るかもしくはレシピエントであった、個々の細胞もしくは細胞培養物を含む。宿主細胞は、1つの宿主細胞の子孫細胞(progeny)を含み、この子孫細胞は、天然の変異および/または変化、偶発的な変異および/または変化、もしくは計画的な変異および/または変化に起因して、元の親細胞と必ずしも完全に同一ではないことがある。宿主細胞は、本発明の核酸により、インビボもしくはインビトロでトランスフェクションされたかまたは感染された細胞を含む。
【0052】
核酸がDNAである場合、RNA配列中の「U」は、DNAにおいて「T」によって置き換えられることが理解される。同様に、核酸がRNAである場合、DNA配列中の「T」は、RNAにおいて「U」によって置き換えられることが理解される。
【0053】
用語「相補鎖」もしくは「相補的」は、核酸に関連して使用される場合、Watson−Crick塩基対をいう。従って、Cの相補鎖はGであり、Gの相補鎖はCであり、Aの相補鎖はT(もしくはU)であり、そしてT(もしくはU)の相補鎖はAである。例えば、相補的なピリミジン(CもしくはT)に対して、例えばI(プリンイノシン)のような塩基を使用することもまた、可能である。この用語はまた、方向も意味する;5’−ACAGT−3’の相補鎖は、5’−TGTCA−3’ではなく5’−ACTGT−3’である。
【0054】
本発明の核酸は、例えば、ポリペプチドを産生するために使用され得るか、生物学的サンプル中の核酸の検出のためのハイブリダイゼーションプローブとして使用され得るか、核酸のさらなるコピーを作製するために使用され得るか、リボザイムもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製するために使用され得るか、一本鎖DNAプライマーもしくは一本鎖DNAプローブとして使用され得るか、またはオリゴヌクレオチドを形成する三本鎖として使用され得る。
【0055】
本発明は、本発明の核酸を産生するためのプロセスを提供し、このプロセスにおいて、この核酸は、部分的にもしくは全体的に、化学的手段を用いて合成される。
【0056】
本発明は、本発明の核酸配列を含むベクター(例えば、クローニングベクターもしくは発現ベクター)およびこのようなベクターによって形質転換された宿主細胞を提供する。
【0057】
本発明はまた、ヘモフィルス属細菌(例えば、H.influenzae)核酸配列に含まれる鋳型配列を増幅するためのプライマー(例えば、PCRプライマー)を含むキットを提供し、このキットは、第1のプライマーおよび第2のプライマーを含み、ここで第1のプライマーはこの鋳型配列に対して実質的に相補的であり、そして第2のプライマーはこの鋳型配列の相補鎖に対して実質的に相補的であり、ここで、このプライマーの実質的な相補性を有する一部分は、増幅される鋳型配列の末端を規定する。この第1のプライマーおよび/または第2のプライマーは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を含み得る。
【0058】
本発明はまた、一本鎖核酸もしくは二本鎖核酸(またはこれらの混合物)に含まれるヘモフィルス属鋳型核酸配列の増幅を可能にする、第1の一本鎖オリゴヌクレオチドおよび第2の一本鎖オリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。ここで、(a)第1のオリゴヌクレオチドは、この鋳型核酸配列に対して実質的に相補的であるプライマー配列を含み;(b)第2のオリゴヌクレオチドは、この鋳型核酸配列の相補鎖に対して実質的に相補的であるプライマー配列を含み;(c)第1のオリゴヌクレオチドおよび/または第2のオリゴヌクレオチドは、この鋳型核酸に対して相補的でない配列を含み;そして(d)これらのプライマー配列は、増幅される鋳型配列の末端を規定する。(c)の特徴を有する非相補的配列は、好ましくは、プライマー配列の上流(すなわち、5’側)である。これらの配列の1つもしくは両方は、制限酵素部位(例えば、参考文献[28])もしくはプロモーター配列(例えば、参考文献[29])を含み得る。第1のオリゴヌクレオチドおよび/または第2のオリゴヌクレオチドは、検出可能な標識(例えば、蛍光標識)を含み得る。
【0059】
この鋳型配列は、ゲノム配列の任意の部分であり得る。
【0060】
本発明は、本発明の核酸の検出のためのプロセスを提供し、このプロセスは、以下の工程を包含する:(a)ハイブリダイズする条件下で本発明に従う核酸プローブを生物学的サンプルに接触させ、二本鎖を形成させる工程;ならびに(b)この二本鎖を検出する工程。
【0061】
本発明は、生物学的サンプル(例えば、血液)においてH.influenzaeを検出するためのプロセスを提供し、このプロセスは、ハイブリダイズする条件下で本発明に従う核酸をこの生物学的サンプルと接触させる工程を包含する。このプロセスは、核酸増幅(例えば、PCR、SDA、SSSR、LCR、TMA、NASBAなど)もしくはハイブリダイゼーション(たとえば、マイクロアレイ、ブロット、溶液中でのプローブとのハイブリダイゼーションなど)を包含し得る。臨床サンプルにおけるH.influenzaeのPCR検出が、報告されている(例えば、参考文献[30]および[31]を参照)。核酸に基づく臨床アッセイは、一般に、参考文献[32]に記載される。
【0062】
本発明は、標的配列のフラグメントを調製するためのプロセスを提供する。ここで、このフラグメントは、核酸プライマーの伸長によって調製される。標的配列および/またはプライマーは、本発明の核酸である。プライマー伸長反応は、核酸増幅(例えば、PCR、SDA、SSSR、LCR、TMA、NASBAなど)を含み得る。
【0063】
本発明に従う核酸増幅は、定量的かつ/もしくは実時間の増幅であり得る。
【0064】
本発明の特定の実施形態について、核酸は、好ましくは、少なくとも7ヌクレオチド長である(例えば、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、90個、100個、110個、120個、130個、140個、150個、160個、170個、180個、190個、200個、225個、250個、275個、300個のヌクレオチドであるか、もしくはそれより長い)。
【0065】
本発明の特定の実施形態について、核酸は、好ましくは最長で500ヌクレオチド長である(例えば、450個、400個、350個、300個、250個、200個、150個、140個、130個、120個、110個、100個、90個、80個、75個、70個、65個、60個、55個、50個、45個、40個、39個、38個、37個、36個、35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個のヌクレオチドであるかもしくはそれより短い)。
【0066】
本発明のプライマーおよびプローブ、ならびにハイブリダイゼーションのために使用される他の核酸は、好ましくは、10と30との間のヌクレオチド長である(例えば、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、もしくは30個のヌクレオチドである)。
【0067】
(薬学的組成物)
本発明は、以下を含有する組成物を提供する:(a)本発明のポリペプチド、抗体、および/または核酸;ならびに(b)薬学的に受容可能なキャリア。これらの組成物は、例えば、免疫原性組成物、もしくは診断試薬、もしくはワクチンとして適し得る。本発明に従うワクチンは、予防的(すなわち、感染を予防する)もしくは治療的(すなわち、感染を処置する)のいずれかであり得るが、代表的には、予防的である。
【0068】
「薬学的に受容可能なキャリア」としては、この組成物を与えられる個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体で誘導しない、任意のキャリアが挙げられる。適切なキャリアは、代表的に、大型で、ゆっくりと代謝される高分子(例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸コポリマー、ショ糖、トレハロース、乳糖および脂質凝集体(例えば、油滴もしくはリポソーム))である。このようなキャリアは、当業者に周知である。このワクチンはまた、希釈剤(例えば、水、生理食塩水、グリセロールなど)を含有し得る。さらに、補助的な物質(例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝化物質など)が、存在し得る。無菌の発熱物質非含有の、リン酸緩衝化生理食塩水は、代表的なキャリアである。薬学的に受容可能な賦形剤の十分な考察は、参考文献[138]において得られる。
【0069】
本発明の組成物は、特に、多回用量様式で包装される場合、抗菌剤を含み得る。
【0070】
本発明の組成物は、界面活性剤(例えば、Tween(ポリソルベート)(例えば、Tween80)を含み得る。界面活性剤は、一般に、低レベル(例えば、<0.01%)で存在する。
【0071】
本発明の組成物は、等張性を与えるために、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含み得る。10±2mg/mlのNaClが、代表的である。
【0072】
本発明の組成物は、一般に、緩衝液を含む。リン酸緩衝液が、一般的である。
【0073】
本発明の組成物は、特に、これらが凍結乾燥される場合もしくは凍結乾燥物質から再構築されている物質を含む場合、糖アルコール(例えば、マンニトール)もしくは二糖(例えば、ショ糖もしくはトレハロース)を、例えば約15〜30mg/ml(例えば、25mg/ml)で含み得る。凍結乾燥のための組成物のpHは、凍結乾燥の前にほぼ6.1に調整され得る。
【0074】
本発明のポリペプチドは、他の免疫調節剤と組み合わせて投与され得る。特に、組成物は、通常、ワクチンアジュバントを含む。本発明の組成物中で使用され得るアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
(A.無機物含有組成物)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適する無機物含有組成物としては、無機塩類(例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩)が挙げられる。本発明は、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩などの無機塩類(例えば、参考文献[33]の第8章および第9章を参照)、もしくは異なる無機化合物の混合物を任意の適切な形態(例えば、ゲル形態、結晶化形態、不定形など)をとる化合物と共に含み、吸着剤を含むことが好ましい。この無機物含有組成物はまた、金属塩の粒子として処方され得る(参考文献[34])。
【0076】
特に、H.influenzae多糖類抗原を含む組成物において、リン酸アルミニウムが特に好ましく、そして、代表的なアジュバントは、0.84〜0.92の間のPO/Alモル濃度比を有する不定形ヒドロキシリン酸アルミニウム(0.6mg Al3+/mlで含まれる)である。低用量のリン酸アルミニウム(例えば、1用量あたり、1結合体あたり50〜100μg Al3+)を有する吸着剤が、使用され得る。組成物中に1を超える結合体が存在する場合、全ての結合体が吸着される必要はない。
【0077】
(B.油エマルジョン)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適する油エマルジョン組成物としては、MF59(参考文献[33]の第10章ならびに参考文献[35]を参照)(マイクロフルイタイザーを用いてサブミクロン粒子に処方される、5%スクアレン、0.5% Tween80、および0.5% Span85)のようなスクアレン−水エマルジョンが挙げれらる。完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)もまた、使用され得る。
【0078】
(C.サポニン処方物(参考文献[33]の第22章))
サポニン処方物もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。サポニンは、ステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの不均質な群であり、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根および花にさえ見出され得る。Quillaia saponaria Molinaの樹の樹皮に由来するサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(ブライダルベール)、およびSaponaria officianalis(サボンソウ根)から商業的に得られ得る。サポニンアジュバント処方物としては、精製された処方物(例えば、QS21)、および脂質処方物(例えば、ISCOM)が挙げられる。QS21は、StimulonTMとして市販される。
【0079】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを使用して精製されている。これらの技術を使用して特定の精製画分が同定されており、これらとしては、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。好ましくは、このサポニンは、QS21である。QS21の生成方法は、参考文献[36]に開示される。サポニン処方物はまた、ステロール(例えば、コレステロール)を含有し得る(参考文献[37])。
【0080】
サポニンとコレステロールとの組み合わせは、免疫刺激性複合体(ISCOM)と称される独特な粒子を形成するために使用され得る(参考文献[33]の第23章)。ISCOMとしてはまた、代表的に、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンのようなリン脂質が挙げられる。任意の公知のサポニンが、ISCOM中に使用され得る。好ましくは、このISCOMは、QuilA、QHAおよびQHCの1種以上を含む。ISCOMは、参考文献[37]〜[39]にさらに記載される。必要に応じて、ISCOMは、さらなる界面活性剤は欠いているかもしれない(参考文献[40])。
【0081】
サポニンベースのアジュバントの開発の概説は、参考文献[41]および[42]に見出され得る。
【0082】
(D.ビロゾームおよびウイルス様粒子)
ビロゾームおよびウイルス様粒子(VLP)もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。これらの構造物は、一般的に、ウイルス由来の1種以上のタンパク質を含み、このタンパク質は、必要に応じてリン脂質と組み合わされるか、またはリン脂質と一緒に処方される。これらの構造物は、一般的に、非病原性、非複製性(non−replicating)であり、そして一般的にはネイティブなウイルスゲノムを全く含まない。これらのウイルスタンパク質は組換え的に生成されても、ウイルス全体から単離されてもよい。ビロゾームまたはVLPにおいて使用するために適したこれらのウイルスタンパク質としては、インフルエンザウイルスに由来するタンパク質(例えばHAまたはNA)、B型肝炎ウイルスに由来するタンパク質(例えば、コアタンパク質またはカプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルスに由来するタンパク質、麻疹ウイルスに由来するタンパク質、シンドビスウイルスに由来するタンパク質、ロタウイルスに由来するタンパク質、口蹄疫ウイルスに由来するタンパク質、レトロウイルスに由来するタンパク質、ノーウォークウイルスに由来するタンパク質、ヒトパピローマウイルスに由来するタンパク質、HIVに由来するタンパク質、RNAファージに由来するタンパク質、Qβファージに由来するタンパク質(例えば、コートタンパク質)、GAファージに由来するタンパク質、frファージに由来するタンパク質、AP205ファージに由来するタンパク質、およびTyに由来するタンパク質(例えば、レトロトランスポゾンTyのp1タンパク質)が挙げられる。VLPは、参考文献[43]〜[48]においてさらに議論される。ビロソームは、例えば、参考文献[49]においてさらに議論される。
【0083】
(E.細菌性誘導体または微生物性誘導体)
本発明における使用のために適したアジュバントとしては、腸内細菌のリポ多糖(LPS)の非毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチドおよびADPリボシル化毒素ならびにこれらの無毒化誘導体のような、細菌性誘導体または微生物性誘導体が挙げられる。
【0084】
LPSの非毒性誘導体としては、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAと、4個、5個または6個のアシル化鎖との混合物である。3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい「小粒子」形態は、参考文献[50]に開示される。3dMPLのこのような「小粒子」は、0.22μmのメンブレンを通して濾過滅菌されるために十分なほど小さい(参考文献[50])。他の非毒性LPS誘導体としては、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC−529)のようなモノホスホリルリピドA模倣物が挙げられる(参考文献[51]、[52])。
【0085】
リピドA誘導体としては、Escherichia coli由来のリピドAの誘導体(例えば、OM−174)が挙げられる。OM−174は、例えば、参考文献[53]および[54]に記載される。
【0086】
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適した免疫刺激性オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフを含むヌクレオチド配列(グアノシンにリン酸結合によって連結されるメチル化されていないシトシンを含むジヌクレオチド配列)が挙げられる。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含む二本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドもまた、免疫刺激性であることが示されている。
【0087】
これらのCpGは、ヌクレオチドの修飾物/アナログ(例えば、ホスホロチオエート修飾物)を含み得、そして二本鎖であっても一本鎖であってもよい。参考文献[55]、[56]および[57]は、可能性のあるアナログ置換(例えば、グアノシンの2’−デオキシ−7−デアザグアノシンによる置換)を開示する。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、参考文献[58]〜[63]においてさらに議論される。
【0088】
このCpG配列は、TLR9(例えば、モチーフGTCGTTまたはモチーフTTCGTT)に対して指向され得る(参考文献[64])。このCpG配列は、Th1免疫応答の誘導に特異的(例えば、CpG−A ODN)であり得るか、またはこのCpG配列は、B細胞の応答の誘導により特異的(例えば、CpG−B ODN)であり得る。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、参考文献[65]〜[67]において議論される。好ましくは、CpGは、CpG−A ODNである。
【0089】
好ましくは、このCpGオリゴヌクレオチドは、5’末端がレセプターの認識のために使用され得るように構築される。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列は、それらの3’末端同士で接続されて、「イムノマー(immunomer)」を形成し得る。例えば、参考文献[64]および[68]〜[70]を参照。
【0090】
細菌性ADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体は、本発明においてアジュバントとして使用され得る。好ましくは、このタンパク質は、E.coli(すなわち、E.coliの易熱性エンテロトキシン「LT」)、コレラ(「CT」)、または百日咳(「PT」)に由来する。無毒化ADPリボシル化毒素の粘膜アジュバントとしての使用は、参考文献[71]に記載され、そして非経口アジュバントとしての使用は参考文献[72]に記載される。毒素もしくはトキソイドは、好ましくは、AサブユニットおよびBサブユニットの両方を含む、ホロトキシン(holotoxin)の形態である。好ましくは、このAサブユニットは、無毒化変異を含む;好ましくは、このBサブユニットは、変異されない。好ましくは、このアジュバントは、無毒化LT変異体(例えば、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192)である。ADPリボシル化毒素およびその無毒化誘導体(特に、LT−K63およびLT−R72)のアジュバントとしての使用は、参考文献[73]〜[80]において見出され得る。アミノ酸置換についての数値的参照は、好ましくは、参考文献[81](その全体は、参考として本明細書中で具体的に援用される)において示されるADPリボシル化毒素のAサブユニットおよびBサブユニットのアライメントに基づく。
【0091】
(F.ヒト免疫調節物質)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適した免疫調節物質としては、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12(参考文献[82])など)[83]、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子のようなサイトカインが挙げられる。
【0092】
(G.生体接着物および粘膜接着物)
生体接着物および粘膜接着物はまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。適切な生体接着物としては、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア(参考文献[84])または粘膜接着物(例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類およびカルボキシメチルセルロースの架橋した誘導体)が挙げられる。キトサンおよびその誘導体もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る(参考文献[85])。
【0093】
(H.微粒子)
微粒子もまた、本発明においてアジュバントとして使用され得る。微粒子(すなわち、直径が約100nm〜約150μmの粒子、より好ましくは直径が約200nm〜約30μmの粒子、および最も好ましくは直径が約500nm〜約10μmの粒子)は、生分解性かつ非毒性の物質(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成され、この物質としては、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)が好ましい。必要に応じて、この微粒子は、(例えば、SDSによって)負に荷電した表面を有するか、または(例えば、CTABのようなカチオン性界面活性剤によって)正に荷電した表面を有するように処理される。
【0094】
(I.リポソーム(参考文献[33]の第13章および第14章))
アジュバントとしての使用のために適したリポソーム処方物の例は、参考文献[86]〜[88]において記載される。
【0095】
(J.ポリオキシエチレンエーテル処方物およびポリオキシエチレンエステル処方物)
本発明における使用のために適したアジュバントとしては、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが挙げられる(参考文献[89])。このような処方物は、オクトオキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステルの界面活性剤(参考文献[90])、および少なくとも1種のさらなる非イオン性界面活性剤(例えば、オクトオキシノール)と組み合わせた、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルエステルの界面活性剤(参考文献[91])をさらに含む。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステロイルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステロイルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0096】
(K.ポリホスファゼン(PCPP))
PCPP処方物は、例えば、参考文献[92]および[93]において記載される。
【0097】
(L.ムラミルペプチド)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適したムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)が挙げられる。
【0098】
(M.イミダゾキノリン化合物)
本発明におけるアジュバントとしての使用のために適したイミダゾキノリン化合物の例としては、参考文献[94]および[95]においてさらに記載される、イミクアモド(Imiquamod)およびそのホモログ(例えば、「Resiquimod 3M」)が挙げられる。
【0099】
本発明はまた、上で同定されるアジュバントの1種以上の局面の組み合わせを含有し得る。例えば、以下のアジュバント組成物が、本発明において使用され得る:(1)サポニンおよび水中油型エマルジョン(参考文献[96]);(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)(参考文献[97]);(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて+ステロール)(参考文献[98]);(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型エマルジョンとの組み合わせ(参考文献[99]);(6)10%のスクアレン、0.4%のTween80TM、5%のプルロニックブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含み、サブミクロンエマルジョンにマイクロフルイダイズされるか、またはボルテックスされてより大きい粒子サイズのエマルジョンを生成するSAF;(7)2%のスクアレン、0.2%のTween80、およびモノホスホリルリピドA(MPL)と、トレハロースジミコレート(TDM)と、細胞壁骨格(CWS)とからなる群由来の1種以上の細菌の細胞壁構成成分を含む(好ましくは、MPL+CWS(DetoxTM))RibiTMアジュバントシステム(RAS)(Ribi Immunochem);ならびに(8)1種以上の無機塩類(例えば、アルミニウム塩)+LPSの非毒性誘導体(例えば、3dPML)。
【0100】
免疫刺激剤として機能する他の物質は、参考文献[33]の第7章において開示される。
【0101】
水酸化アルミニウムアジュバントもしくはリン酸アルミニウムアジュバントの使用が特に好ましく、そして抗原は、一般に、これらの塩に吸着される。リン酸カルシウムは、別の好ましいアジュバントである。
【0102】
本発明の組成物のpHは、好ましくは、6と8との間であり、好ましくは、約7である。安定なpHは、緩衝液の使用によって維持され得る。組成物が水酸化アルミニウム塩を含む場合、ヒスチジン緩衝液を使用することが好ましい(参考文献[100])。この組成物は、無菌であり、かつ/または発熱物質非含有である。本発明の組成物は、ヒトに関して等張であり得る。
【0103】
組成物は、バイアル中で提示され得るか、または、既に充填されているシリンジにおいて提示され得る。このシリンジは、針と共に提供されても、針なしで提供されてもよい。シリンジは、この組成物の単回用量を含む。一方、バイアルは、単回用量もしくは多回用量を含み得る。注射可能組成物は、通常、液体溶液もしくは液体懸濁液である。あるいは、注射可能組成物は、注射前に液体ビヒクル中に溶解するかもしくは懸濁するための、(例えば、凍結乾燥された)固体形態で提供され得る。
【0104】
本発明の組成物は、単位用量形態もしくは多回用量形態で包装され得る。多回用量形態については、バイアルが、事前に充填されたシリンジより好ましい。有効投薬容量は、慣用的に確立され得るが、この組成物の注射のための代表的なヒト用量は、0.5mlの容量である。
【0105】
本発明の組成物が、使用前にその場で調製され(例えば、組成物は凍結乾燥形態で提供される)、そしてキットとして提供される場合、このキットは、2つのバイアルを含み得るか、もしくは、1つの既に充填されたシリンジおよび1つのバイアルを含み得、シリンジの内容物は、注射前にバイアルの内容物を再活性化するために使用される。
【0106】
ワクチンとして使用される免疫原性組成物は、免疫学的に有効な量の抗原、ならびに必要な場合、任意の他の成分を含む。「免疫学的に有効な量」とは、個体に対して単回容量もしくは連続の一部のどちらかで投与される、処置もしくは予防のために有効な量を意味する。この量は、処置される個体の健康状態および物理的状態、年齢、処置される個体の分類学的な群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、抗体を合成する個体の免疫系の能力、所望される保護の程度、ワクチンの処方、処置する医師の医学的状況の評価、および他の関連する要因に基づいて変わる。この量は、慣用的試験を通して決定され得る比較的広い範囲に収まることが予測され、そして1用量あたりの各髄膜炎菌性糖抗原の代表的な量は、1種の抗原につき1μgと10mgとの間である。
【0107】
(薬学的使用)
本発明はまた、患者を処置する方法も提供する。この方法は、この患者に治療的に有効な量の本発明の組成物を投与する工程を包含する。この患者は、疾患自体に由来する危険に瀕している患者であっても、または妊婦であってもよい(「母子免疫(maternal immunisation)」)。
【0108】
本発明は、医薬(例えば、免疫原性組成物もしくはワクチン)としての使用もしくは診断試薬としての使用のための、本発明の核酸、ポリペプチド、もしくは抗体を提供する。本発明はまた、以下の製造における本発明の核酸、ポリペプチド、もしくは抗体の使用を提供する:(i)H.influenzaeによって引き起こされる疾患および/もしくは感染を処置または予防するための医薬;(ii)H.influenzaeもしくはH.influenzaeに対して惹起された抗体の存在を検出する診断試薬;ならびに/あるいは(iii)H.influenzaeに対して抗体を惹起し得る試薬。このH.influenzaeは、血清型もしくは株であるが、しかし好ましくは型分類不能なH.influenzaeである。この疾患は、例えば、中耳炎(急性中耳炎を含む)、気管支炎、結膜炎、静脈洞炎、尿路感染、肺炎、菌血症、化膿性関節炎、喉頭蓋炎、肺炎、蓄膿症、心膜炎、蜂巣炎、骨髄炎、下気道感染もしくは髄膜炎であり得る。本発明は、免疫応答(この免疫応答は、細菌が咽喉からエウスターキオ管を通って中耳へ移動し、次いでこの中耳で集落形成することを妨げる)を誘発することによって中耳の炎症を予防するために特に有用である。
【0109】
この患者は、好ましくはヒトである。ワクチンが予防的使用のためのワクチンである場合、ヒトは、好ましくは小児である(例えば、幼児もしくは乳児)。ワクチンが治療的使用のためのワクチンである場合、ヒトは、好ましくは成人である。小児を意図するワクチンはまた、例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価するために、成人に対しても投与され得る。
【0110】
治療的処置の効力を調べる1つの方法は、本発明の組成物の投与後、NTHi感染をモニタリングすることを含む。予防的処置の効力を調べる1つの方法は、投与後、投与したポリペプチドに対する免疫応答をモニタリングすることを含む。本発明の組成物の免疫原性は、試験被験体(例えば、12〜16月齢の小児もしくは動物モデル(例えば、チンチラモデル(参考文献[146])))に対してこれらを投与し、次いでIgGのELISA力価(GMT)を含む標準的パラメーターを決定することによって決定され得る。これらの免疫応答は、一般に、組成物の投与のおよそ4週間後に決定され、そして組成物の投与前の値と比較される。1より多い用量の組成物が投与される場合、1回を超える投与後決定が行われ得る。
【0111】
ポリペプチド抗原の投与は、免疫を誘導するための処置の好ましい方法である。本発明の抗体の投与は、処置の別の好ましい方法である。受動的免疫化の方法は、新生児もしくは妊婦について特に有用である。この方法は、代表的に、ヒト化モノクローナル抗体もしくは完全なヒトモノクローナル抗体を使用する。
【0112】
本発明の組成物は、一般に、患者に直接投与される。直接送達は、非経口注射(例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射もしくは組織の間隙空間への注射)によって、または直腸投与、経口投与、経膣投与、局所投与、経皮投与、鼻内投与、眼内投与、耳内投与、肺投与もしくは他の粘膜投与によって、達成され得る。大腿もしくは上腕への筋肉内投与が、好ましい。注射は、針(例えば、皮下針)を介し得るが、無針注射もまた、代替的に使用され得る。代表的な筋肉内用量は、0.5mlである。
【0113】
本発明は、全身性免疫および/もしくは粘膜免疫を誘発するために使用され得る。
【0114】
投薬処置は、単回用量計画もしくは多回用量計画であり得る。多回用量は、初回免疫化計画において、ならびに/または追加免疫化計画において使用され得る。初回用量計画の後、追加用量計画を行い得る。初回刺激用量間(例えば、4〜16週間)、および初回刺激と追加刺激との間の適切な時期は、慣用的に決定され得る。
【0115】
細菌感染は、身体の種々の領域に影響し、従って、組成物は、種々の形態で調製され得る。例えば、この組成物は、液体溶液もしくは液体懸濁液のどちらかとして、注射可能に調製され得る。注射前に液体ビヒクル中の溶解もしくは懸濁するために適した固体形態(例えば、凍結乾燥組成物)もまた、調製され得る。この組成物は、局所的投与のために(例えば、軟膏、クリーム剤もしくは散剤として)調製され得る。この組成物は、経口投与のために(例えば、錠剤もしくはカプセル剤、もしくは(必要に応じて香味付けされた)シロップ剤として)調製され得る。この組成物は、肺投与のために(例えば、微細粉末もしくはスプレーを用いる吸入剤として)調製され得る。この組成物は、坐剤もしくはペッサリーとして調製され得る。この組成物は、鼻内投与、耳内投与、眼内投与のために(例えば、スプレー剤、滴剤、ゲル剤もしくは散剤として)調製され得る(例えば、参考文献[101]および[102])。
【0116】
(組み合わせ)
実施例において記載される2500を超えるタンパク質の中で、NTH0861、NTH0863、NTH0865およびNTH0867は、本発明での(特にワクチンにおける)使用のために、特に好ましい。そして、これらの4種のタンパク質は、併用して使用され得る。従って、本発明は、以下を含有する組成物を提供する:(a)NTH0861タンパク質;および(b)少なくとも1種のさらなるNTHiタンパク質。本発明はまた、以下を含有する組成物を提供する:(a)NTH0863タンパク質;および(b)少なくとも1種のさらなるNTHiタンパク質。本発明はまた、以下を含有する組成物を提供する:(a)NTH0865タンパク質;および(b)少なくとも1種のさらなるNTHiタンパク質。本発明はまた、以下を含有する組成物を提供する:(a)NTH0867タンパク質;および(b)少なくとも1種のさらなるNTHiタンパク質。さらなるNTHiタンパク質は、上述のように、本発明のタンパク質から選択され得る。
【0117】
この組成物は、好ましくは、これらの4種のタンパク質の中から選択され、従って、本発明は、以下の2種以上(すなわち、2種、3種もしくは4種)を含有する組成物を提供する:NTH0861、NTH0863、NTH0865および/またはNTH0867。好ましい組成物は、以下を含有する:(1)NTH0861およびNTH0863;(2)NTH0861およびNTH0865;(3)NTH0861およびNTH0867;(4)NTH0863およびNTH0865;(5)NTH0863およびNTH0867;(6)NTH0865およびNTH0867;(7)NTH0861、NTH0863およびNTH0865;(8)NTH0861、NTH0863およびNTH0867;(9)NTH0863、NTH0865およびNTH0867;(10)NTH0861、NTH0865およびNTH0867;(11)NTH0861、NTH0863、NTH0865およびNTH0867。
【0118】
NTH0861タンパク質は、好ましくは、配列番号1566、配列番号5095、または配列番号1566および/もしくは配列番号5095に対して(上述したような)配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。NTH0863タンパク質は、好ましくは、配列番号1570もしくは配列番号5094、または配列番号1570および/もしくは配列番号5094に対して(上述したような)配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。NTH0865タンパク質は、好ましくは、配列番号1574もしくは配列番号5093、または配列番号1574および/もしくは配列番号5093に対して(上述したような)配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。NTH0867タンパク質は、好ましくは、配列番号1578もしくは配列番号5092、または配列番号1578および/もしくは配列番号5092に対して(上述したような)配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0119】
(本発明の組成物のさらなる抗原性成分)
本発明はまた、本発明のポリペプチドおよび1種以上の以下のさらなる抗原を含有する組成物を提供する:
− A、C、W135および/またはYの血清型のN.meningitidis(好ましくは4種全て)に由来する糖抗原、例えば、参考文献[103]に開示されるC血清型に由来するオリゴ糖(参考文献[104]もまた参照のこと)または参考文献[105]のオリゴ糖。
− Streptococcus pneumoniaeに由来する糖抗原(例えば、参考文献[106]、[107]、[108]。
− A型肝炎ウイルス(例えば、不活化ウイルス)に由来する抗原(例えば、参考文献[109]、[110])。
− B型肝炎ウイルスに由来する抗原、例えば、表面抗原および/またはコア抗原(例えば、参考文献[110]、[111])。
− ジフテリア抗原、例えば、ジフテリアトキソイド(例えば、参考文献[112]の第3章)、例えば、CRM197変異体(例えば、参考文献[113])。
− 破傷風抗原、例えば、破傷風トキソイド(例えば、参考文献[112]の第4章)。− Bortella pertussisに由来する抗原、例えば百日咳ホロトキシン(PT)およびB.pertussisに由来する線維状赤血球凝集素(FHA)、また必要に応じて、ペルタクチンおよび/または凝集原2および凝集原3と併用される(例えば、参考文献[114]および[115])。
− Haemophilus influenzae Bに由来する糖抗原(例えば、参考文献[104])。
− ポリオ抗原(類)(例えば、参考文献[116]、[117])、例えば、IPV。− 麻疹抗原、おたふくかぜ抗原および/または風疹抗原(例えば、参考文献[112]の第9章、第10章および第11章)。
− インフルエンザ抗原(類)(例えば、参考文献[112]の第19章)、例えば、凝集原および/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質。
− Moraxella catarrhalis由来の抗原(例えば、参考文献[118])。
− Streptococcus agalactiae(B型連鎖球菌)由来のタンパク質抗原(例えば、参考文献[119]、[120])。
− Streptococcus agalactiae(B型連鎖球菌)由来の糖抗原。
− Streptococcus pyogenes(A型連鎖球菌)由来の抗原(例えば、参考文献[120]、[121]、[122])。
− Staphylococcus aureus由来の抗原(例えば、参考文献[123])。
この組成物は、1種以上のこれらのさらなる抗原を含有し得る。
【0120】
毒性タンパク質抗原は、必要な場合、無毒化され得る。(例えば、百日咳毒素の無毒化は、化学的手段および/または遺伝的手段による(参考文献[115]))。
【0121】
ジフテリア抗原がこの組成物中に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原もまた含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および百日咳抗原もまた含まれることが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリア抗原および破傷風抗原もまた含まれることが好ましい。従って、DTP併用が好ましい。
【0122】
糖抗原は、好ましくは、結合体の形態である。結合体のためのキャリアタンパク質としては、ジフテリア毒素、破傷風毒素、N.meningitidis外膜タンパク質(参考文献[124])、合成ペプチド(参考文献[125]、[126])熱ショックタンパク質(参考文献[127]、[128])、百日咳タンパク質(参考文献[129]、[130])、H.influenzae由来のDタンパク質(参考文献[131])、サイトカイン(参考文献[132])、リンホカイン(参考文献[132])、連鎖球菌タンパク質、ホルモン(参考文献[132])、成長因子(参考文献[132])、C.difficile由来のA毒素もしくはB毒素(参考文献[133])、鉄取り込みタンパク質(iron−uptake protein)(参考文献[134])、などが挙げられる。好ましいキャリアタンパク質は、CRM197ジフテリアトキソイド(参考文献[135])である。
【0123】
上記組成物中の抗原は、代表的に、それぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の所定の抗原の濃度は、この抗原に対する免疫応答を誘発するために十分である。
【0124】
本発明の免疫原性組成物においてタンパク質抗原を使用することの代替法として、その抗原をコードする核酸(好ましくは、例えばプラスミド形態のDNA)が、使用され得る。
【0125】
抗原は、好ましくは、アルミニウム塩に吸着される。
【0126】
(スクリーニング方法)
本発明は、試験化合物が本発明のポリペプチドに結合するか否かを決定するためのプロセスを提供する。試験化合物が本発明のポリペプチドに結合し、そしてこの結合がH.influenzae菌の生活環を阻害する場合、この試験化合物は、抗生物質として使用され得るか、もしくは抗生物質の設計のためのリード化合物として使用され得る。このプロセスは、代表的に、試験化合物を本発明のポリペプチドと接触させる工程、およびこの試験化合物がこのポリペプチドに結合するか否かを決定する工程、を包含する。これらのプロセスにおいて使用するための本発明の好ましいポリペプチドは、酵素(例えば、tRNAシンテターゼ)、膜トランスポーターおよびリボソームポリペプチドである。適切な試験化合物としては、ポリペプチド、ポリペプチド、炭水化物、脂質、核酸(例えば、DNA、RNA、およびこれらの改変形態)、ならびに小有機化合物(例えば、200〜2000DaのMW)が挙げられる。この試験化合物は、個々に提供され得るが、代表的には、ライブラリー(例えば、コンビナトリアルライブラリー)の一部分である。結合相互作用を検出するための方法としては、NMR、フィルター結合アッセイ、ゲル遅延度アッセイ(gel−retardation assay)、置換アッセイ、表面プラズモン共鳴、逆ツーハイブリッドなどが挙げられる。本発明のポリペプチドに結合する化合物は、この化合物をGBS細菌に接触させ、次いで増殖の阻害についてモニタリングすることによって、抗生物質活性について試験され得る。本発明はまた、これらの方法を用いて同定される化合物も提供する。
【0127】
好ましくは、このプロセスは、以下の工程を包含する:(a)本発明のポリペプチドを、1以上の候補化合物と接触させて、混合物を得る工程;(b)この混合物をインキュベートし、ポリペプチドとこの候補化合物とを相互作用させる工程;および(c)この候補化合物がこのポリペプチドに結合するか否か、もしくはこのポリペプチドの活性を調節するか否かを評価する工程。
【0128】
一旦、候補化合物が本発明のポリペプチドに結合する化合物としてインビトロで同定されると、次いで、さらなる実験を実施して、この化合物の細菌増殖および/または細菌生存を阻害するインビボ機能を確認することが所望され得る。従って、上記方法は、この化合物をNTHi細菌と接触させ、その効果を評価するさらなる工程を包含する。
【0129】
このスクリーニングプロセスにおいて使用されるポリペプチドは、溶液中で遊離していてもよく、固体支持体に固定されてもよく、細胞表面に局在してもよく、もしくは細胞内に局在してもよい。好ましくは、候補化合物のこのポリペプチドへの結合は、この候補化合物に直接的もしくは間接的に結合する標識によって検出される。この標識は、フルオロフォア、放射性同位体、もしくは他の検出可能な標識であり得る。
【0130】
(概説)
本発明は、配列表の配列の1以上を含む、コンピューター読み取り可能媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、CD−ROM、DVDなど)ならびに/またはコンピューターメモリおよび/もしくはコンピューターデータベースを提供する。
【0131】
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」ならびに「含む(consisting)」を包含する。例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなってもよく、もしくはさらなる何かを含んでもよい(例えば、X+Y)。
【0132】
用語「約」は、数値xに関して、例えば、x±10%を意味する。
【0133】
語「実質的に」は、「完全に」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを全く含まなくてもよい。必要な場合、語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【0134】
配列表におけるアミノ酸配列におけるN末端残基は、対応するヌクレオチド配列中の第1のコドンによってコードされるアミノ酸として与えられる。第1のコドンがATGでない場合、第1のコドンが開始コドンである場合はメチオニンとして翻訳されるが、この配列が融合パートナーのC末端に存在する場合には、示される非Metで転写されることが理解される。本発明は、示される任意の非Met残基の代わりにN末端メチオニン残基(例えば、ホルミルメチオニン残基)を有する、配列表のアミノ酸配列の各々を、具体的に開示しかつ包含する。
【0135】
代替的開始コドンは、生物学において使用され得る。配列表中のアミノ酸配列は、特定の開始コドンに基づくが、下流の開始コドンが代替的に使用されてもよい。従って、本発明は、配列表中に示されるN末端残基の下流である、この配列由来の任意のメチオニン残基で開始される、配列表のアミノ酸配列の各々を具体的に開示しかつ包含する(例えば、配列番号5088、配列番号5089および配列番号5090)。
【0136】
上記本文に示されるように、本発明の核酸およびポリペプチドは、以下のような配列を含み得る:
(a)配列表において開示される配列に対して同一である(すなわち、100%同一である)配列;
(b)配列表において開示される配列と同一性を共有する配列;
(c)(a)もしくは(b)と比較して、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個の1ヌクレオチドもしくは1アミノ酸の変化(欠失、挿入、置換)を有する配列であって、この変化は別々の位置であっても連続してもよい、配列;ならびに
(d)ペアワイズアライメントアルゴリズムを用いて配列表からの特定の配列と並列された場合に、(アミノ酸もしくはヌクレオチドの)x個のモノマーの移動ウィンドウを始点(N末端もしくは5’)から終点(C末端もしくは3’)まで動かして、p個のモノマー(ここで、p>xである)に伸びるアライメントについて、p−x+1個のこのようなウィンドウが存在し、各ウィンドウが少なくともxy個の並列された同一のモノマーを有する(ここで、xは、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択され、yは、0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択され、そしてxyが整数でない場合、最も近い整数に切り上げられる)ような、配列。好ましいペアワイズアライメントアルゴリズムは、Needleman−Wunschグローバルアライメントアルゴリズム(参考文献[136])であり、初期パラメータを用いる(例えば、ギャップ開始ペナルティ=10.0、およびギャップ伸長ペナルティ=0.5、EBLOSUM62スコアリングマトリクスを用いる)。このアルゴリズムは、従来、EMBOSSパッケージ(参考文献[137])のニードルツール(needle tool)において実行されている。
【0137】
本発明の核酸およびポリペプチドは、さらに、(a)〜(d)の配列のN末端/5’および/またはC末端/3’に、さらなる配列を有し得る。
【0138】
本発明の実施は、他に示されない限り、当業者の範囲内の、従来の化学方法、生化学方法、分子生物学方法、免疫学方法および薬理学方法を使用する。このような技術は、文献において完全に説明される。例えば、参考文献[138]〜[145]などを参照のこと。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
以下:
【化1】


【化2】


【化3】


【化4−1】


の配列番号の1以上に対して少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
(項目2)
以下:
【化4−2】


【化5】


【化6】


【化7−1】


の配列番号のアミノ酸配列の1以上を含む、項目1に記載のポリペプチド。
(項目3)
以下:
【化7−2】


【化8】


【化9】


【化10−1】


の配列番号の1以上に由来する、少なくとも7個の連続するアミノ酸のフラグメントを含む、ポリペプチド。
(項目4)
前記フラグメントが、前記配列番号のアミノ酸配列に由来するT細胞エピトープもしくはB細胞エピトープを含む、項目3に記載のポリペプチド。
(項目5)
項目1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドに結合する、抗体。
(項目6)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目5に記載の抗体。
(項目7)
以下:
【化10−2】


【化11】


【化12】


【化13】


【化14−1】


の配列番号の1以上に対して少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を
含む、核酸。
(項目8)
以下:
【化14−2】


【化15】


【化16】


【化17−1】


の配列番号から選択されるヌクレオチド配列を含む、項目7に記載の核酸。
(項目9)
高ストリンジェンシー条件下で、項目8に記載の核酸にハイブリダイズ可能である、核酸。
(項目10)
以下:
【化17−2】


【化18】


【化19】


【化20】


の配列番号の1以上に由来する10以上の連続するヌクレオチドのフラグメントを含む、核酸。
(項目11)
項目1〜4のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
(項目12)
(a)項目1〜11のいずれか1項に記載のポリペプチド、抗体、および/または核酸;ならびに(b)薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目13)
ワクチンアジュバントをさらに含む、項目12に記載の組成物。
(項目14)
医薬としての使用のための、項目1〜11のいずれか1項に記載の核酸、ポリペプチド、もしくは抗体。
(項目15)
患者を処置する方法であって、治療的に有効な量の項目12に記載の組成物を該患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目16)
H.influenzaeによって引き起こされる疾患および/または感染を処置または予防するための医薬の製造における、項目1〜11のいずれか1項に記載の核酸、ポリペプチドもしくは抗体の使用。
(項目17)
中耳炎、気管支炎、結膜炎、静脈洞炎、尿路感染、肺炎、菌血症、化膿性関節炎、喉頭蓋炎、肺炎、蓄膿症、心膜炎、蜂巣炎、骨髄炎もしくは髄膜炎を予防するための、項目15に記載の方法または項目16に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0139】
(本発明を実施する様式)
ゲノム配列決定は、低継代(low−passage)の臨床的NTHi単離物(86−028NP株;参考文献[146])において実施されている。計2540のコード配列を、ゲノムにおいて同定し、そしてこれらを、推定翻訳産物と共に配列表に示した。1489のポリペプチド配列の注釈を、表IIIに示す。配列決定した材料から、特定のポリペプチドコーディング配列が、ワクチン開発のための免疫原性タンパク質に特に注目して、さらなる研究のために選択された。
【0140】
(リポタンパク質)
2540の配列の、以下の39は、リポタンパク質として同定された:
【0141】
【化21−1】

リポタンパク質は表面に曝露されており、よって、例えば診断目的のためもしくは免疫化目的のための接触可能な免疫学的標的を提示している。その上、OspAタンパク質は、脂質化形態で免疫原性であるが非脂質化形態では免疫原性ではないことが、B.burgdorferiにおいて見出されており(参考文献[147])、この著者らは、翻訳後脂質付加がOspA免疫原性の重要な決定因子であると結論付けている。
【0142】
(外膜)
H.influenzaeは、グラム陰性菌であるため、その細胞壁は、外膜を含む。2540のコード配列の、以下の48は、この外膜中に局在すると同定された:
【0143】
【化21−2】

外膜タンパク質(OMP)は表面に曝露されており、よって、例えば診断目的のためもしくは免疫化目的のための、接触可能な免疫学的標的を提示している。OMPは、多くの場合、インベーシン、付着因子などであり、遮断された場合、細菌感染を予防する手段を提供する。
【0144】
NTH1845は、Aida様自己トランスポーター(「Lav」)であり、本発明の好ましいタンパク質である。これは、NTHi株の間で保存されており、髄膜炎を引き起こすことが公知であるものを含むが、Rd配列中もしくはR2846株中に対応する遺伝子は存在しない。これは、tmk遺伝子とholb遺伝子との間に存在する。NTH1845の好ましい形態は、Met−22で開始する(すなわち、配列番号5090である)。
【0145】
(ペリプラズム)
H.influenzaeは、グラム陰性菌であるため、その細胞膜とその外膜との間にペリプラズムを有する。2540のコード配列のうち、以下の105は、このペリプラズム中に局在すると同定された:
【0146】
【化22−1】

ペリプラズムタンパク質は、例えば、診断目的のためおよび免疫化目的のための、有用な免疫学的標的を提示する。
【0147】
(内膜)
H.influenzaeは、グラム陰性菌であるため、内膜を有する。2540のコード配列のうち、以下の740は、この内膜中に局在すると同定された:
【0148】
【化22−2】

【0149】
【化23】

【0150】
【化24−1】

内膜タンパク質は、例えば、診断目的のためおよび免疫化目的のための、有用な免疫学的標的を提示する。
【0151】
これらのタンパク質のうち、NTH1069は、毒性関連タンパク質Aとして特に同定されている。このタンパク質の好ましい形態は、Met−27で開始する(すなわち、配列番号5088)。別の好ましい形態は、Met−19で開始する(配列番号5089)。
【0152】
(付着因子)
配列番号5091のアミノ酸配列を有する付着因子は、髄膜炎の患者から単離されたNTHi株において同定されている。これは、N.meningitidis由来のHia付着因子に相同である。
【0153】
(H.influenzae Rd)
d血清型KW20株のゲノム配列(参考文献[1]、[3])は、1995年に発表された。d血清型株は一般に病原体ではないが、配列決定されたNTHi株が臨床的感染に由来し、d血清型において見られないNTHi配列発現は、病原性機構に関与するタンパク質であることが多い。従って、抗生物質処理もしくは抗体結合によるこれらのタンパク質の遮断は、治療可能性を有する。2540のコード配列のうちの以下の613は、Rdゲノム中には見られない:
【0154】
【化24−2】

【0155】
【化25】

【0156】
【化26−1】

(NTH0861〜NTH0867)
Neisseria meningitidisに由来するタンパク質NMB0419は、髄膜炎菌侵襲機構に関与することが見出されている(参考文献[2])。このタンパク質は、ヒト気管上皮細胞の単層との細菌相互作用を調節し、侵襲を促進することが示された。相同タンパク質BPF001は、H.influenzaeのaegyptius生物群において見られるが、このタンパク質の研究は可能ではなかった。
【0157】
NTHiゲノムは、1列の、NMB0419と強い相同性を有する4種のポリペプチド(NTH0861、NTH0863、NTH0865およびNTH0867)をコードする領域(配列番号5081)を含む。この領域および4種のポリペプチドは、以下に示される:
【0158】
【化26−2】

【0159】
【化27】

【0160】
【化28−1】

4つのコード配列は、以下に並列される(ClustalW):
【0161】
【化28−2】

【0162】
【化29】

【0163】
【化30−1】

コードされるポリペプチドは、bpf001配列およびNMB0419配列と共に以下に並列される:
【0164】
【化30−2】

4つの密接に関連した遺伝子の連続反復(細菌侵襲に関与する遺伝子にもまた関連する)は注目すべきものであり、そしてNTH0861、NTH0863、NTH0865およびNTH0867は、免疫化目的のために特に興味深い。特にNTH0867は、Rdゲノムには見られない外膜タンパク質であり、特別に興味深い。
【0165】
その上、NTHiによって引き起こされるように、急性中耳炎が、Moraxella catarrhalisおよびStreptococcus pneumoniaeによって頻繁に引き起こされる。M.catarrhalisゲノムにおいてホモログを有する4種のタンパク質が、NTHiゲノムにおいて同定されている。すなわち、NTH0861(配列番号1566)、NTH0863(配列番号1570)、NTH0865(配列番号1574)およびNTH0867(配列番号1578)である。従って、これらのタンパク質は、一般的なAOMワクチンのための抗原として使用され得る。対応するM.catarrhalis抗原もまた、単独でもしくはNTHi抗原と併用して使用され得る。
【0166】
配列番号1566の改変体は、配列番号5095として与えられる:
【0167】
【化31−1】

配列番号1570の改変体は、配列番号5094として与えられる:
【0168】
【化31−2】

配列番号1574の改変体は、配列番号5093として与えられる:
【0169】
【化31−3】

配列番号1578の改変体は、配列番号5092として与えられる:
【0170】
【化32】

好ましいNTH0861タンパク質は、配列番号1566および配列番号5095の両方に対する同一性を有する。好ましいNTH0863タンパク質は、配列番号1570および配列番号5094の両方に対する同一性を有する。好ましいNTH0865タンパク質は、配列番号1574および配列番号5093の両方に対する同一性を有する。好ましいNTH0867タンパク質は、配列番号1578および配列番号5092の両方に対する同一性を有する。
【0171】
本発明は、例示ためにのみ記載されており、そして改変がなされ得るが、本発明の範囲および精神の内に留まることが、理解される。
【0172】
(表I−NTH0001とNTH2832との間で失われたNTHnnnnの番号)
【0173】
【化33−1】

(表II−好ましいポリペプチド)
【0174】
【化33−2】

【0175】
【化34】

【0176】
【化35】

【0177】
【化36】

【0178】
【化37】

【0179】
【化38−1】

(表III−注釈)
aa=ポリペプチドの長さ
PSORT=PSORTアルゴリズムに従うポリペプチドの細胞内局在
【0180】
【化38−2】

【0181】
【化39】

【0182】
【化40】

【0183】
【化41】

【0184】
【化42】

【0185】
【化43】

【0186】
【化44】

【0187】
【化45】

【0188】
【化46】

【0189】
【化47】

【0190】
【化48】

【0191】
【化49】

【0192】
【化50】

【0193】
【化51】

【0194】
【化52】

【0195】
【化53】

【0196】
【化54】

【0197】
【化55】

【0198】
【化56】

【0199】
【化57】

【0200】
【化58】

【0201】
【化59】

【0202】
【化60】

【0203】
【化61】

【0204】
【化62】

【0205】
【化63】

【0206】
【化64】

【0207】
【化65】

【0208】
【化66】

【0209】
【化67】

【0210】
【化68】

【0211】
【化69】

【0212】
【化70】

【0213】
【化71】

【0214】
【化72】

【0215】
【化73−1】

(参考文献(その内容は本明細書中で参考として援用される))
【0216】
【化73−2】

【0217】
【化74】

【0218】
【化75】

【0219】
【化76】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の一発明。

【公開番号】特開2012−112(P2012−112A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166505(P2011−166505)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【分割の表示】特願2007−512595(P2007−512595)の分割
【原出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(592243793)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (107)
【Fターム(参考)】