説明

型成形板の成形装置および型成形板の製造方法

【課題】コンクリート等の非圧縮体スラリーを成形型枠に流し込んで成形する型成形板であっても、一方の板面に連続した平板を有し、他方の板面には複数の凹部を有し、かつ該凹部の開口縁に内方に張り出すフランジを有する型成形板を容易に形成することができる型成形板の成形装置を提供すること。
【解決手段】底板および該底板を囲うように前記底板から立設された側板を有する成形型枠と、該成形型枠の底板に所定間隔で多数配置したエラストマーパッドと、それらのエラストマーパッドを、その軸芯に対して半径方向外方へ弾性変形させる変形手段とを備えた型成形板の成形装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型成形板の成形装置および型成形板の製造方法に関し、詳しくは、板面に多数の凹部を形成するとともに、それらの凹部の開口縁に内方に張り出すフランジを有する型成形板の成形装置および該型成形板の製造方法に関し、特には、軽量かつ高強度のコンクリート板の成形に適した型成形板の成形装置および型成形板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
型成形板、即ち、成形型枠を使用して成形される板体として、板体の板面に、亀甲形状のリブを隆設して、六角形の凹部を多数形成したコンクリート板(例えば、特許文献1)や、成形圧縮外皮構造繊維板(例えば、特許文献2)等がある。
【0003】
特許文献1のコンクリート板は、上記凹部に対応する形状の突起を成形型枠の底面に多数立設させ、その型枠内にコンクリートスラリーを流し込み、養生することによって成形される。
【0004】
また、特許文献2の成形圧縮外皮構造繊維板は、先ず、例えば木材繊維、再生紙,再生木材製品等から得られる天然繊維、あるいは、種々のプラスチック,ファイバーグラス等の合成繊維および鉱物繊維を含む非セルロース材料からなる原料を水分濃度99%程度の繊維含有スラリーとする。続いて、該繊維含有スラリーを、多数のエラストマーパッドが幾何学的に配置固定された成形型枠上に流し込み、型枠の下面からの吸引及び/又は型枠の上・下面からの簡易なプレス(プリプレス)により脱水し、スラリーを水分濃度50%程度の脱水ケーキとする。その後、成形型枠をホットプレスに搬送し、加熱下において型枠に対して垂直方向の圧力を加えることにより脱水ケーキを加熱圧縮成形することによって得られる。
【0005】
そして、上記した型成形板は、例えば、外壁材として使用され、凹部が形成されている面を構築基材等に接着,釘着等によって設置され、また、床材として使用され、凹部が形成されている面を床基材上に接着,釘着等によって設置される。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−162601号公報
【特許文献2】特開平9−195440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示されたコンクリート板では、脱型を容易にするために、型枠の突起に抜き勾配を施さなくてはならないため、成形されたコンクリート板の亀甲形状のリブは、その基部に対して先端部の厚みが薄くなっており、軽量化を図るべく凹部の容積を大きくするには限界があった。
また、特許文献2に開示されているように、エラストマーパッドを変形させて凹部の容積を拡大させ、かつ、凹部開口縁に内方に張り出したフランジを形成する圧縮外皮構造繊維板の製造方法を、コンクリート板の成形に適用しようとした場合には、成形型枠内にコンクリートスラリーを流し込み、上方から加圧した場合には、エラストマーパッド上のスラリーはそこに留まることなく全て流れ出してしまい、連続した平板が形成されることなく、貫通した穴を有する板材が形成されてしまう。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑み成されたものであって、コンクリート等の非圧縮体スラリーを成形型枠に流し込んで成形する型成形板であっても、一方の板面に連続した平板を有し、他方の板面には複数の凹部を有し、かつ該凹部の開口縁に内方に張り出すフランジを有する型成形板を容易に形成することができる、型成形板の成形装置および型成形板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、請求項1の型成形板の成形装置は、底板および該底板を囲うように上記底板から立設された側板とを有する成形型枠と、該成形型枠の底板の内面に所定間隔で多数配置したエラストマーパッドと、それらのエラストマーパッドを、その軸芯に対して半径方向外方へ弾性変形させる変形手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、上記本発明のエラストマーパッドは、シリコンゴム,クロロプレンゴム等の合成ゴムが使用され、エラストマーパッドの形状は、円錐台,角錐台等の抜き勾配を備えた形状のものとすることが好ましい。
【0011】
また、請求項2の型成形板の成形装置は、上記請求項1の発明において、上記変形手段は、上記エラストマーパッド内に頭部を植設し、端部を上記型枠の底板から外方に貫設させたピンと、それらのピンの端部を係止した操作プレートと、該操作プレートを上記型枠の底板から離反する方向へ移動させる作動機構とを備え、上記作動機構によって上記ピンの頭部を上記型枠の底板方向に移動させることによって、上記エラストマーパッドをその軸芯から半径方向外方に膨出させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3の型成形板の成形装置は、上記請求項1または2の発明において、上記側板の内面に沿って摺動可能に配設された天板を備え、該天板の内面に所定間隔で多数のエラストマーパッドを配設し、それらのエラストマーパッドを弾性変形させる第2の変形手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項4の型成形板の成形装置は、上記請求項3の発明において、上記第2の変形手段が、上記エラストマーパッド内に頭部を植設し、端部を上記型枠の天板から外方に貫設させたピンと、それらのピンの端部を係止した操作プレートと、該操作プレートを上記型枠の天板から離反する方向へ移動させる作動機構とを備え、上記作動機構によって上記ピンの頭部を上記型枠の天板方向に移動させることによって、上記エラストマーパッドをその軸芯から半径方向外方に膨出させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、上記した課題を解決するため、請求項5の型成形板の成形装置は、底板および該底板を囲うように前記底板から立設された側板と、該側板の内面に沿って摺動可能に配設された天板とを備えた成形型枠と、該成形型枠の天板の内面に所定間隔で多数配置したエラストマーパッドと、それらのエラストマーパッドを、その軸芯に対して半径方向外方へ弾性変形させる変形手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項6の型成形板の成形装置は、上記請求項5の発明において、上記変形手段が、上記エラストマーパッド内に頭部を植設し、端部を上記型枠の天板から外方に貫設させたピンと、それらのピンの端部を係止した操作プレートと、該操作プレートを上記型枠の天板から離反する方向へ移動させる作動機構とを備え、上記作動機構によって上記ピンの頭部を上記型枠の天板方向に移動させることによって、上記エラストマーパッドをその軸芯から半径方向外方に膨出させるようにしたことを特徴とする。
【0016】
また、上記した課題を解決するため、請求項7の型成形板の製造方法は、上記請求項1〜6のいずれかに記載の型成形板の成形装置を使用し、上記変形手段によって上記エラストマーパッドを変形させる工程と、上記成形型枠内にスラリー状の板体素材を打設する工程と、前記スラリー状の板体素材を養生する工程と、上記変形手段による上記エラストマーパッドの変形状態を解除して、硬化した板体を上記成形型枠から脱型させる工程とを経て型成形板を得ることを特徴とする。
【0017】
ここで、上記本発明の型成形板の製造方法において、エラストマーパッドを変形させる工程と、成形型枠内にスラリー状の板体素材を打設する工程とは、いずれを先に実行するか、または、それらの工程を同時に実行するかは問わない。
【0018】
また、スラリー状の板体素材は、コンクリートスラリー、例えば普通コンクリート、繊維補強高強度コンクリート、レジンコンクリート等のコンクリートスラリーに限らず、各種セラミックススラリー、珪酸カルシウムスラリー、更には圧縮外皮構造繊維板の成形に使用される例えば木材繊維、再生紙,再生木材製品等から得られる天然繊維、あるいは、種々のプラスチック,ファイバーグラス等の合成繊維および鉱物繊維を含む非セルロース材料からなる繊維等を含有する繊維含有スラリーであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
上記した請求項1の型成形板の成形装置によれば、変形手段によってエラストマーパッドを変形させて成形型枠内にスラリー状の板体素材を打設し、または、成形型枠にスラリー状の板体素材を打設した後変形手段によってエラストマーパッドを変形させ、打設したスラリー状の板体素材を養生した後に、変形手段によるエラストマーパッドの変形状態を解除して、硬化した板体を成形型枠から脱型させることによって、凹部の開口縁に内方に張り出すフランジを有する型成形板を得ることができる。
このように凹部の開口縁に内方に張り出すフランジを有する型成形板は、凹部を画成するリブがフランジによって補強され、剛性の高い板体となるとともに、該板体を単独で使用することも可能であるが、二枚以上を張り合わせて多層の板体とする場合等には、両者の接着面積を増大させることができるなどの効果がある。
【0020】
また、上記した請求項2の型成形板の成形装置によれば、ピンを引き出すことによってエラストマーパッドを変形させるので、エラストマーパッドは、軸芯に対して半径方向外方へ確実に膨出され、開口縁に内方に張り出すフランジを有する均一な凹部を型成形板に確実に形成することができる。
【0021】
また、上記した請求項3の型成形板の成形装置によれば、型成形板の両面に、開口縁に内方に張り出すフランジを有する凹部を同時に形成することができる。
【0022】
また、上記した請求項4の型成形板の成形装置によれば、ピンを引き出すことによってエラストマーパッドを変形させるので、エラストマーパッドは、軸芯に対して半径方向外方へ確実に膨出され、開口縁に内方に張り出すフランジを有する均一な凹部を型成形板の両面に確実に形成することができる。
【0023】
また、上記した請求項5の型成形板の成形装置によれば、上記請求項1の成形装置と同様に、凹部の開口縁に内方に張り出すフランジを有する型成形板を得ることができるとともに、底板上に、スラリー状の板体素材を打設する前に、大理石,御影石等の化粧板を設置したり、鉄筋を配設したりすることにより、それらを一体的に有する型成形板を得ることができる。また、請求項1の成形装置と組み合わせて使用することにより、得られた型成形板を反転させることなく、凹部を有する面同士を接合した多層の板体を得ることができる。
【0024】
また、上記した請求項6の型成形板の成形装置によれば、ピンを引き出すことによってエラストマーパッドを変形させるので、エラストマーパッドは、軸芯に対して半径方向外方へ確実に膨出され、開口縁に内方に張り出すフランジを有する均一な凹部を型成形板に確実に形成することができる。
【0025】
また、上記した請求項7の型成形板の製造方法によれば、各エラストマーパッドを変形手段により強制的に変形させるので、エラストマーパッドの変形は均一かつ確実なものとなり、また、成形品の脱型時には変形手段による上記エラストマーパッドの変形状態を解除するため、コンクリート板等であっても、開口縁に内方に張り出すフランジを有する凹部を板面もった型成形板を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、上記した本発明に係る型成形板の成形装置および型成形板の製造方法の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1乃至図4は、本発明に係る型成形板の成形装置の第1の実施形態を概念的に示した断面図である。
【0028】
この実施形態の成形装置1は、成形型枠2を備えている。成形型枠2は、底板3と該底板3を囲うように立設された側板4とによって構成されている。底板3の内面(上面)には、所定間隔をもって複数のエラストマーパッド5が配置されている。
【0029】
上記エラストマーパッド5は、例えば弾性を有するシリコンゴムによって、高さ20mm程度、一辺の長さが15mm程度の正六角形を底面とした台形体として成形されている。
【0030】
また、上記成形装置1は、エラストマーパッド5を弾性変形させる変形手段6を備えている。この変形手段6は、エラストマーパッド5に植設されたピン7と、該ピン7の下端を支持する操作プレート8と、該操作プレート8を成形型枠2の底板3に対して離接させるプレート移動機構9とによって構成されている。
【0031】
上記ピン7は、軸7aの頭部に、その軸芯に対して半径方向に膨出させたフランジ7bを有している。そして、軸7aは、下部がエラストマーパッド5の底面から下方に突出しており、その下部には、雄ねじ部7cが形成されている。
【0032】
上記変形手段6では、各エラストマーパッド5のピン7が、成形型枠2の底板3に形成されたピン挿通孔3aから下方に延設され、さらに、操作プレート8に形成されたピン挿通孔8aから下方に延設され、ピン7の下端が、雄ねじ7cに螺合させたナット10a,10bによって操作プレート8に係止されている。
【0033】
上記プレート移動機構9は、成形型枠2の底板3における側板4から外方へはみ出した部分において複数箇所に形成した雌ねじ3bにボルト11を螺設させ、該ボルト11の下端を上記操作プレート8の上面に対向させることによって構成されている。
【0034】
以下に、上記した構成の成形装置1を使用して、本発明に係る型成形板の製造方法を説明する。
【0035】
図1に示す成形装置1において、先ず、プレート移動機構9のボルト11を回転させて、プレート8を成形型枠2の底板3から離反する方向に作動させる。すると、ピン7が下方に移動され、それに伴って、図2に示すように、エラストマーパッド5が軸芯に対して半径方向に膨出される。
【0036】
次いで、図3に示すように、成形型枠2内にコンクリートスラリーS1を流し込む。このコンクリートスラリーS1は、例えばセメントを基材として鋼繊維,有機繊維等の繊維を含有させたものである。
【0037】
次いで、自然養生または蒸気養生を行なって、コンクリートスラリーS1を硬化させる。
【0038】
次いで、図4に示すように、プレート移動機構9のボルト11を逆回転し、ボルト11の下端をプレート8から離反させるとともに、成形型枠2の側板4を底板3から取り外す。そして、コンクリート板A1を底板3から取り出す。その際に、エラストマーパッド5は、コンクリート板A1を成形型枠2から離脱するに伴って、その弾性力によって元の形状に復元される。
【0039】
なお、上記実施形態では、エラストマーパッド5を変形させてから、コンクリートスラリーS1を成形型枠2内に流し込んでいるが、コンクリートスラリーS1を成形型枠2内に流し込み、該スラリーS1の硬化前に、変形手段6によってエラストマーパッド5を変形させてもよく、それらを同時に行なってもよい。
【0040】
このようにして形成されたコンクリート板A1は、図5に示すように、一定間隔で凹部B1が形成され、それらの凹部B1間にリブR1が形成され、さらに、凹部B1の開口縁に内方に張り出すフランジF1が形成されたものとなる。
【0041】
そして、このようなコンクリート板A1は、例えば、外壁材として使用され、凹部B1が形成されている面を構築基材等に接着,釘着等によって設置され、または、床材として使用され、凹部B1が形成されている面を床基材上に接着,釘着等によって設置される。また、2枚のコンクリート板A1を、それらのコンクリート板A1の凹部B1が互いに向き合うようにして接合して使用される。このような使用に際し、凹部B1の開口縁に内方に張り出すフランジF1は、凹部B1を画成するリブR1を補強し、コンクリート板A1の剛性を高めるとともに、部材間の接着面積を増大させる等の効果を奏する。
【0042】
図6乃至図10は、本発明に係る型成形板の成形装置の第2の実施形態を概念的に示した断面図である。
【0043】
この実施形態の成形装置20の成形型枠21は、底板22と、該底板22を囲うように立設された側板23と、該側板22の内面に沿って上下動可能に配設された天板24とによって構成されている。そして、天板24の内面(下面)には、所定間隔をもって複数のエラストマーパッド25が配置されている。
【0044】
上記エラストマーパッド25は、例えば弾性を有するシリコンゴムによって、高さ20mm程度、一辺の長さが15mm程度の正六角形を底面とした台形体として成形されている。
【0045】
また、上記成形装置20は、図6に示すように、エラストマーパッド25を弾性変形させる変形手段26を備えている。この変形手段26は、エラストマーパッド25に植設されたピン27と、該ピン27の上端を支持する操作プレート28と、該操作プレート28を成形型枠21の天板24に対して離接させるプレート移動機構29とによって構成されている。
【0046】
上記ピン27は、軸27aの頭部に、その軸芯に対して半径方向に膨出させたフランジ27bを有している。そして、軸27aは、上部がエラストマーパッド25の底面から上方に突出しており、その上部には、雄ねじ部27cが形成されている。
【0047】
そして、各エラストマーパッド25のピン27は、成形型枠21の天板24に形成されたピン挿通孔24aから上方に延設され、さらに、操作プレート28に形成されたピン挿通孔28aから上方に延設されている。そして、ピン27の上端が、雄ねじ27cに螺合させたナット30a,30bによって操作プレート28に係止される。
【0048】
上記プレート移動機構29は、操作プレート28の周縁複数箇所に植設され、操作プレート28の外方(上方)に延び、端部に雄ねじ31aが形成されたボルト31と、成形型枠21の側板23の上端にボルト32によって固着されるブラケット33と、ボルト31に螺合させるナット34とによって構成されている。
【0049】
そして、このプレート移動機構29では、成形型枠21の天板24を底板22および側板23によって画成される空間内に収容した状態で、ボルト31にブラケット33のボルト挿通孔33aを嵌合させて、ブラケット33を側板23に固着し、ボルト31の雄ねじ31aにナット34を螺合させる。
【0050】
以下に、上記した構成の成形装置20を使用して、本発明に係る型成形板の製造方法を説明する。
【0051】
この実施形態では、図7に示す成形装置20において、成形型枠21の底板22および側板23によって画成された空間の底面に大理石,御影石等の化粧板35を設置し、その内側(上側)に鉄筋36を配設する。そして、その上にコンクリートスラリーS2を流し込む。
【0052】
次いで、エラストマーパッド25,変形手段26,プレート移動機構29のボルト31等を備えた天板24を、成形型枠21の底板22および側板23によって画成された空間内に落とし込む。
【0053】
次いで、図8に示すように、ボルト挿通孔33aをボルト31に嵌合させながらブラケット33を成形型枠21の側板23に取り付け、ボルト31の雄ねじ31aにナット34を螺合させ、該ナット34を回転させることによって操作プレート28を上方に移動させる。すると、ピン27が上方に移動され、それに伴って、図8に示すように、エラストマーパッド25が軸芯に対して半径方向に膨出される。
【0054】
次いで、自然養生または蒸気養生を行なって、コンクリートスラリーS2を硬化させる。
【0055】
次いで、プレート移動機構29のナット34を逆回転して、該ナット34をボルト31から取り外すとともに、ブラケット33を成形型枠21の側板23から取り外して、天板24,操作プレート28等の拘束を解除する。
【0056】
続いて、図9に示すように、天板24を上方へ引き上げて、成形型枠21の底板22および側板23によって画成される空間から離脱させる。その際、エラストマーパッド25は、その弾性力によって元の形状に復元される。
【0057】
次いで、図10に示すように、成形型枠21の側板23を底板22から取り外す。そして、コンクリート板A2を底板22から取り出す。
【0058】
このようにして形成されたコンクリート板A2は、図11に示すように、一方の板面に大理石,御影石等の化粧板35を一体的に有し、他方の板面に一定間隔で凹部B2が形成され、それらの凹部B2間にリブR2が形成され、さらに、凹部B2の開口縁に内方に張り出すフランジF2が形成されたものとなる。
【0059】
そして、このようなコンクリート板A2は、例えば、外壁材として使用され、凹部B2が形成されている面を構築基材等に接着,釘着等によって設置され、または、床材として使用され、凹部B2が形成されている面を床基材上に接着,釘着等によって設置される。
この際、凹部B2の開口縁に内方に張り出すフランジF2は、凹部B2を画成するリブR2を補強し、コンクリート板A2の剛性を高めるとともに、他部材との接触面積を増大させる等の効果を奏する。
【0060】
図12乃至図17は、本発明に係る型成形板の成形装置の変形例を示した断面図である。
【0061】
この変形例の成形装置40は、上記両実施形態の成形装置を合体させたものである。なお、この成形装置40において、上記両実施形態の要素と同一の要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
この成形装置40では、成形型枠41が底板3,側板23および天板24によって構成されている。
【0063】
そして、この成形装置40では、底板3の内面(上面)に、所定間隔をもって複数のエラストマーパッド5が配置され、天板24の内面(下面)に、所定間隔をもって複数のエラストマーパッド25が配置されている。
【0064】
上記エラストマーパッド5,25は、例えば弾性を有するシリコンゴムによって、高さ20mm程度、一辺の長さが15mm程度の正六角形を底面とした台形体として成形されている。
【0065】
また、この成形装置40は、エラストマーパッド5を弾性変形させる変形手段6を底板3の下方に備えており、変形手段6は、エラストマーパッド5に植設されたピン7と、該ピン7の下端を支持する操作プレート8と、該操作プレート8を成形型枠41の底板3に対して離接させるプレート移動機構9とによって構成されている。さらに、この成形装置40は、エラストマーパッド25を弾性変形させる変形手段26を天板24の上方に備えており、変形手段26は、エラストマーパッド25に植設されたピン27と、該ピン27の上端を支持する操作プレート28と、該操作プレートを成形型枠41の天板24に対して離接させるプレート移動機構29とによって構成されている。
【0066】
そして、上記変形手段6では、各エラストマー5のピン7が、成形型枠41の底板3に形成されたピン挿通孔3aから下方に延設され、さらに、操作プレート8に形成されたピン挿通孔8aから下方に延設され、ピン7の下端が、雄ねじ7cに螺合させたナット10a,10bによって操作プレート8に係止されている。また、上記変形手段26では、各エラストマー25のピン27が、成形型枠41の天板24に形成されたピン挿通孔24aから上方に延設され、さらに、操作プレート28に形成されたピン挿通孔28aから上方に延設され、ピン27の上端が、雄ねじ27cに螺合させたナット30a,30bによって操作プレート28に係止されている。
【0067】
上記プレート移動機構9は、成形型枠41の底板3における側板23から外方へはみ出した部分において複数箇所に形成した雌ねじ3bにボルト11を螺設させ、該ボルト11の下端をプレート8の上面に対向させることによって構成されている。また、上記プレート移動機構29は、操作プレート28の周縁複数箇所に植設され、操作プレート28の外方(上方)に延び、端部に雄ねじ31aが形成されたボルト31と、成形型枠21の側板23の上端にボルト32によって固着されるブラケット33と、ボルト31に螺合させるナット34とによって構成されている。
【0068】
以下に、上記した構成の成形装置40を使用して、本発明に係る型成形板の製造方法を説明する。
【0069】
図13に示すように、天板24を取り外した状態の成形装置41において、先ず、プレート移動機構9のボルト11を回転させて、操作プレート8を成形型枠41の底板3から離反する方向に作動させる。すると、ピン7が下方に移動され、それに伴って、エラストマーパッド5が軸芯に対して半径方向に膨出される。
【0070】
次いで、成形型枠41内にコンクリートスラリーS3を流し込む。このコンクリートスラリーS3は、例えばセメントを基材として鋼繊維,有機繊維等の繊維を含有させたものである。
【0071】
次いで、図14に示すように、エラストマーパッド25,変形手段26,プレート移動機構29のボルト31等を備えた天板24を、成形型枠41の底板3および側板23によって画成された空間内に落とし込む。
【0072】
次いで、図15に示すように、ボルト挿通孔33aをボルト31に嵌合させながらボルト32によって、ブラケット33を成形型枠41の側板23に取り付け、ボルト31の雄ねじ31aにナット34を螺合させ、該ナット34を回転させることによって操作プレート28を上方に移動させる。すると、ピン27が上方に移動され、それに伴って、エラストマーパッド25が軸芯に対して半径方向に膨出される。
【0073】
次いで、自然養生または蒸気養生を行なって、コンクリートスラリーS3を硬化させる。
【0074】
次いで、プレート移動機構29のナット34を逆回転して、該ナット34をボルト31から取り外すとともに、ブラケット33を成形型枠21の側板23から取り外して、天板24,操作プレート28等の拘束を解除する。
【0075】
続いて、図16に示すように、天板24,操作プレート28等を上方へ引き上げて、それらを成形型枠41の底板3および側板23によって画成される空間から離脱させる。その際、エラストマーパッド25は、その弾性力によって元の形状に復元される。
【0076】
次いで、図17に示すように、成形型枠41の側板23を底板3から取り外す。そして、コンクリート板A3を成形型枠41から取り出す。その際、エラストマーパッド5は、コンクリート板A3を成形型枠41から離脱するに伴って、その弾性力によって元の形状に復元される。
【0077】
このようにして形成されたコンクリート板A3は、図18に示すように、両面に一定間隔で凹部B3a,B3bが形成され、それらの凹部B3a,B3b間にそれぞれリブR3a,R3bが形成され、さらに、凹部B3a,B3bのそれぞれの開口縁に内方に張り出すフランジF3a,F3bが形成される。
なお、このコンクリート板A3では、上下の凹部B3a,B3bが上下方向に一致されて形成されているが、上下の凹部B3a,B3bの位置を互いに半ピッチだけオフセットさせてもよい。
【0078】
そして、このようなコンクリート板A3は、例えば、外壁材として使用され、凹部B3aが形成されている面に化粧板等が接着,釘着等によって添設され、凹部B3bが形成されている面が構築基材等に接着,釘着等によって設置され、または、床材として使用され、凹部B3aが形成されている面に床板が接着,釘着等によって添設され、凹部B3bが形成されている面が床基材上面に接着,釘着等によって設置される。
この際、凹部B3a,B3bのそれぞれの開口縁に内方に張り出すフランジF3a,F3bは、凹部B3a,B3bをそれぞれ画成するリブR3a,R3bを補強し、コンクリート板A3の剛性を高めるとともに、他部材との接触面積を増大させる等の効果を奏する。
【0079】
なお、上記各実施形態では、コンクリート板の製造について述べたが、本発明は、コンクリート板に限定されることなく、例えば、圧縮外皮構造繊維板等の他の型成形板にも適用することができる。また、各成形装置の構成部材をスケールアップし、例えば径が20cm程度の凹部が形成できる装置とし、高層建築物のスラブとして近年注目されている、中空部を有する所謂ボイドスラブを、本発明に係る型成形板の成形装置および型成形板の製造方法により形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る型成形板の成形装置の第1の実施形態を概念的に示した断面図である。
【図2】図1に示した第1の実施形態の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、コンクリートスラリーを流し込む以前の成形型枠を示している。
【図3】図1に示した第1の実施形態の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、コンクリートスラリーを流し込んだ状態の成形型枠を示している。
【図4】図1に示した第1の実施形態の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、硬化したコンクリート板を成形型枠から取り出す状態を示している。
【図5】図1に示した第1の実施形態の成形装置を使用して製造されたコンクリート板の部分斜視図である。
【図6】本発明に係る型成形板の成形装置の第2の実施形態の概念的な分解断面図である。
【図7】図6に示した第2の実施形態の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、コンクリートスラリーを流し込んだ状態の成形型枠を示している。
【図8】図6に示した第2の実施形態の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、エラストマーパッドを変形させた状態の成形型枠を示している。
【図9】図6に示した第2の実施形態の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、コンクリートスラリーを硬化させた後のコンクリート板を成形型枠から取り出す状態を示し、天板を取り外す状態を示している。
【図10】図6に示した第2の実施形態の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、硬化したコンクリート板を成形型枠の底板から取り出す状態を示している。
【図11】図6に示した第2の実施形態の成形装置を使用して製造されたコンクリート板の部分斜視図である。
【図12】本発明に係る型成形板の成形装置の変形例を概念的に示した分解断面図である。
【図13】図12に示した変形例の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、コンクリートスラリーを流し込んだ状態の成形型枠を示している。
【図14】図12に示した変形例の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、コンクリートスラリーを流し込んだ後に、成形型枠を組み付けた状態を示している。
【図15】図12に示した変形例の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、エラストマーパッドを変形させた状態の成形型枠を示している。
【図16】図12に示した変形例の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、コンクリートスラリーを硬化させた後のコンクリート板を成形型枠から取り出す状態を示し、天板を取り外す状態を示している。
【図17】図12に示した変形例の成形装置を使用して本発明に係る型成形板の製造方法の手順を示す断面図で、硬化したコンクリート板を成形型枠の底板から取り出す状態を示している。
【図18】図12に示した変形例の成形装置を使用して製造されたコンクリート板の部分斜視図である。
【符号の説明】
【0081】
1 成形装置
2 成形型枠
3 底板
3a ピン挿通孔
3b 雄ねじ
4 側板
5 エラストマーパッド
6 変形手段
7 ピン
7a 軸
7b フランジ
7c 雄ねじ部
8 操作プレート
8a ピン挿通孔
9 プレート移動機構
10a,10b ナット
11 ボルト
20 成形装置
21 成形型枠
22 底板
23 側板
24 天板
25 エラストマーパッド
26 変形手段
27 ピン
27a 軸
27b フランジ
27c 雄ねじ
28 操作プレート
29 プレート移動機構
30a,30b ナット
31 ボルト
31a 雄ねじ
32 ボルト
33 ブラケット
34 ナット
35 化粧板
36 鉄筋
40 成形装置
41 成形型枠
A1,A2,A3 コンクリート板
B1,B2,B3a,B3b 凹部
F1,F2,F3a,F3b フランジ
R1,R2,R3a,R3b リブ
S1,S2,S3 コンクリートスラリー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板および該底板を囲うように前記底板から立設された側板とを有する成形型枠と、該成形型枠の底板の内面に所定間隔で多数配置したエラストマーパッドと、それらのエラストマーパッドを、その軸芯に対して半径方向外方へ弾性変形させる変形手段とを備えたことを特徴とする、型成形板の成形装置。
【請求項2】
上記変形手段は、上記エラストマーパッド内に頭部を植設し、端部を上記型枠の底板から外方に貫設させたピンと、それらのピンの端部を係止した操作プレートと、該操作プレートを上記型枠の底板から離反する方向へ移動させる作動機構とを備え、上記作動機構によって上記ピンの頭部を上記型枠の底板方向に移動させることによって、上記エラストマーパッドをその軸芯から半径方向外方に膨出させるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の型成形板の成形装置。
【請求項3】
上記成形型枠は、上記側板の内面に沿って摺動可能に配設された天板を備え、前記天板の内面に所定間隔で多数のエラストマーパッドを配設し、それらのエラストマーパッドを弾性変形させる第2の変形手段をさらに備えたことを特徴とする、請求項1または2に記載の型成形板の成形装置。
【請求項4】
上記第2の変形手段は、上記エラストマーパッド内に頭部を植設し、端部を上記型枠の天板から外方に貫設させたピンと、それらのピンの端部を係止した操作プレートと、該操作プレートを上記型枠の天板から離反する方向へ移動させる作動機構とを備え、上記作動機構によって上記ピンの頭部を上記型枠の天板方向に移動させることによって、上記エラストマーパッドをその軸芯から半径方向外方に膨出させるようにしたことを特徴とする、請求項3に記載の型成形板の成形装置。
【請求項5】
底板および該底板を囲うように前記底板から立設された側板と、該側板の内面に沿って摺動可能に配設された天板とを備えた成形型枠と、該成形型枠の天板の内面に所定間隔で多数配置したエラストマーパッドと、それらのエラストマーパッドを、その軸芯に対して半径方向外方へ弾性変形させる変形手段とを備えたことを特徴とする、型成形板の成形装置。
【請求項6】
上記変形手段は、上記エラストマーパッド内に頭部を植設し、端部を上記型枠の天板から外方に貫設させたピンと、それらのピンの端部を係止した操作プレートと、該操作プレートを上記型枠の天板から離反する方向へ移動させる作動機構とを備え、上記作動機構によって上記ピンの頭部を上記型枠の天板方向に移動させることによって、上記エラストマーパッドをその軸芯から半径方向外方に膨出させるようにしたことを特徴とする、請求項5に記載の型成形板の成形装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の型成形板の成形装置を使用し、上記変形手段によって上記エラストマーパッドを変形させる工程と、上記成形型枠内にスラリー状の板体素材を打設する工程と、前記スラリー状の板体素材を養生する工程と、上記変形手段による上記エラストマーパッドの変形状態を解除して、硬化した板体を上記成形型枠から脱型させる工程とを経て型成形板を得ることを特徴とする、型成形板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2009−90478(P2009−90478A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260677(P2007−260677)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】