説明

型枠にシートを押圧するシート押え具

【課題】コンクリート構造物に模様を賦すためのシートを、生コンクリートの侵入を防止しながら型枠に押え付けることができて、取り付けや取り外し作業も容易に行え、しかも構造が簡単で容易に製造することのできるシート押え具を提供すること。
【解決手段】型枠20の上縁上に配置される基部11と、この基部11の一端からシート30上に延在する押え部12と、基部11の他端から型枠20の外面22に延在する係止部13とにより構成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠にシートを押圧するシート押え具に関し、特に、シートがコンクリート構造物の表面に模様を付すためのものの場合に適したシート押え具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物は、施工現場に組み立てた型枠間に生コンクリートを流し込んで形成されるものであるから、所謂「打ち放し」のコンクリート構造物の表面には、型枠の内面の形状が転写される。ところが、近年の、例えば、家屋の基礎等においては、その人目に付く表面について、単なる「打ち放し」で済ませるのではなく、種々な模様を付すことがなされるようになってきている。
【0003】
このように、コンクリート構造物の表面に、種々な模様を付す方法としては、特許文献1に提案されているような、表面を凹凸模様とした軽量コンクリートに固定連結部材を設けた「化粧用残存コンクリート型枠」(所謂残存型枠)や、特許文献2に提案されているような、多数の突起体を形成固定した凹凸模様付パネル(シート)を、コンクリート成形用型枠の内面の少なくとも一部に配置して、凹凸模様付パネル(シート)の模様が転写されたコンクリート構造物を製造する方法(所謂模様賦形方法)がある。
【0004】
これらの特許文献1及び2にて提案された技術は、それぞれメリットを有するものであるが、これらの技術を改善するものとして、特許文献3の「基礎型枠用表面装飾部材」及び特許文献4の「模様付け機能を備えたコンクリート型枠装置」も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−013232号公報
【特許文献2】特開2001−225306号公報
【特許文献3】特開2003−206628号公報
【特許文献4】特許第3559539号掲載公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3の「基礎型枠用表面装飾部材」は、「基礎型枠間に打設される基礎コンクリートのコンクリート面の美感を高めることができる基礎型枠用表面装飾部材を提供する」ことを目的としてなされたもので、図6及び図7に示すように、「表面装飾部材10は、金属製あるいは樹脂製の薄板製で、その表面側が凹凸の模様11aを有する装飾面11になっており、その裏面側が取付面12になっている。取付面には、固定手段であるボルト13が立設されている。基礎型枠20の成形板21の表面側にて、表面装飾部材の取付面が重ね合わされて、成形板に設けた取付孔21aに、取付面に立設されたボルトを挿入する。成形板に取付面が密着した状態でボルトにナット14を螺着させることにより、表面装飾部材が基礎型枠に取外し可能に固定される。ベースG上に垂直に立設された対向する2組の基礎型枠20間にコンクリートが打設される。」ようにしたものである。これにより、この特許文献3の「基礎型枠用表面装飾部材」は、基礎31のコンクリート表面31aに、装飾面の模様に対応する凹凸模様32を形成できるものと考えられる。
【0007】
しかしながら、この特許文献3の「基礎型枠用表面装飾部材」は、「ボルト13」を取り付けるための「取付孔21a」を「基礎型枠20の成形板21」に形成しなければならないため、この「基礎型枠20」自体が「表面装飾部材10」専用のものとなって、汎用性のないものとなる。
【0008】
一方、特許文献4の「模様付け機能を備えたコンクリート型枠装置」は、「コンクリート型枠側に取付ける模様付けシートを緊張させる構成、緊張状態を固定する構成を簡素化し、結果として、コンクリート型枠装置の構成を簡素化し、施工性を大幅に高め、併せて、模様付けシートを緊張させ固定する際に模様面を損傷するのを回避し、模様付けシートの再利用を容易とする模様付け機能を備えたコンクリート型枠装置を提供すること」を課題とするものであり、図8〜図10に示すように、「複数の型枠1…を連続させて構成したコンクリート型枠1Aの内面に模様付けシート2を取付け、打設したコンクリート表面に凹凸模様3を模様付けシート2より転写するコンクリート型枠装置であって、コンクリート型枠1Aは伸縮型枠4を備え、コンクリート型枠1Aの内面に模様付けシート2を長さ方向に間隔を隔てて複数箇所において着脱自在に取付ける取付け手段5と、模様付けシート2が取付けられているコンクリート型枠1Aの伸縮型枠4を伸張させてコンクリート型枠1Aの長さを仕上がり寸法に調整するとともに模様付けシート2を緊張させる伸張手段6と、伸縮型枠4の伸張状態を維持する固定手段12を備えた」ものである。
【0009】
そして、この特許文献4の段落0023には、上記取付け手段5に関して、「模様付けシート2に形成した突条7には上下全長にわたって押さえ材8が当てられ、押さえ材8の上下端部から延出した略L字状の抱持片9、9を型枠1及び伸縮型枠4の外面に抱持させることで、模様付けシート2を型枠1及び伸縮型枠4に取付けている。このように模様付けシート2を型枠1又は伸縮型枠4に取付ける構成を取付け手段5と総称し、その構成は変更することができる。」と記載されている。
【0010】
すなわち、この特許文献4の「取付け手段5」は、図10の(b)から分かるように、「押さえ材8の上下端部から延出した略L字状の抱持片9、9」は、これを「型枠1及び伸縮型枠4の外面に抱持させる」ようにしなければならないものであるから、これらの「押さえ材8」や「抱持片9、9」は、多数の「型枠1」を設置する前に施工しなければならないものであり、上下一対必要になっているものである。しかも、これらの「押さえ材8」や「抱持片9、9」で下側に位置するものは、図10の(b)にも示されているように、後に打設された生コンクリート内に部分的に埋設されることがあるから、例えばコンクリート基礎が完成してからは外しにくいものとなる。
【0011】
一般に、コンクリート構造物の表面に種々な模様を付すためのパネルやその固定具は、これを型枠に取り付けるに当たって、次のような条件を満たす必要がある。
(1)組立てられた型枠に簡単に施工(取り付け)できるものであること
(2)型枠は、模様を要しないコンクリート構造物をも形成できる汎用性を持たせたいから、これにパネル(シート)取付穴等のような加工部分は形成したくないこと
(3)コンクリート構造物の表面に種々な模様を付すためのシートには、図3の(a)に示すように、コンクリート構造物表面に模様を写す「賦形シート」と、図3の(b)に示すように、コンクリート構造物表面に模様を直接付加する「残存シート」とがあり、これら両タイプのシートの固定が同一のもので行えるようにできること
(4)当該シートと型枠との間に生コンクリート(のノロ)が入らないようにできること
(5)シートの固定具(押え具)は、簡単に製造できて、再使用ができるものであること
(6)シートの固定具(押え具)は、コンクリート基礎内に残存せず、模様を傷つけないこと
(7)シートの固定具(押え具)は、シートの型枠に対する押圧力が十分であること
【0012】
そこで、本発明者等は、コンクリート構造物に模様を賦形するシートを、型枠に押圧するシート押え具について、上記(1)〜(7)の条件を満たすことができるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0013】
すなわち、本発明の目的とするところは、コンクリート構造物に模様を賦すためのシートを、生コンクリートの侵入を防止しながら型枠に押え付けることができて、取り付けや取り外し作業も容易に行え、しかも構造が簡単で容易に製造することのできるシート押え具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する実施形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「コンクリート基礎40を形成するための型枠20の内側に配置されるシート30を、型枠20に押圧するためのシート押え具10であって、
型枠20の上縁上に配置される基部11と、この基部11の一端からシート30上に延在する押え部12と、基部11の他端から型枠20の外面22に延在する係止部13とからなり、
当該シート押え具10の不使用時において、係止部13が、押え部12を超えながら斜めに延在するとともに、押え部12から所定寸法離れていることを特徴とするシート固定具10」
である。
【0015】
すなわち、このシート押え具10は、図1及び図2に示すように、型枠20の上縁上に配置される基部11と、この基部11の一端からシート30上に延在する押え部12と、基部11の他端から型枠20の外面22に延在する係止部13とからなっているものであり、基部11の各端部から延在している押え部12及び係止部13が、基部11の各端部に連続的になっていることから、これらの間のものに対して互いに押圧力を発揮するように、弾力的になっているものである。
【0016】
特に、このシート押え具10においては、図1の右側に図示したもの、及び図2の(a)〜(c)に示すように、その不使用時において、係止部13が、押え部12を超えながら斜めに延在するとともに、押え部12から所定寸法離れていることによって、押え部12及び係止部13は、基部11に対して弾力的に連続したものとなっているのである。
【0017】
このシート押え具10によって、コンクリート基礎40を形成するための型枠20の内側に配置されるシート30を、型枠20に押圧するためには、図1の右側に図示したもののようにすればよい。すなわち、このシート押え具10の不使用時においては、上述したように、係止部13が、押え部12を超えながら斜めに延在するとともに、押え部12から所定寸法離れているから、これら押え部12及び係止部13の先端部がそれぞれ手で持ち易く、かつ広げ易くなっている。
【0018】
各押え部12及び係止部13を広げた状態で、図1の右側に図示したものでの仮想線のように、型枠20とこれに単に当接させてあるシート30の両側に差し込んで行くのである。そして、基部11が、図1の左側に図示したもののように、型枠20の上縁上になったとき、当該シート押え具10の押え施工は完了するのである。このシート押え具10による押え施工が完了した時点では、図1に図示した例では、押え部12はシート30を型枠20の内面21に押圧し、反対側の係止部13は型枠20の外面22に係止されることになり、結果的に、これらの押え部12及び係止部13は、その基部11に対する弾性力によってシート30を型枠20の内面21に押圧することになるのである。なお、これらの押え部12及び係止部13は、以上の説明とは逆の位置、すなわち押え部12が型枠20の外面22側にあって、係止部13が型枠20の内面21側にあってもよい。
【0019】
以上のようにして、各シート30を複数のシート押え具10を使用して型枠20の内面21側に押圧すれば、シート30と型枠20との間には、生コンクリートが侵入し得る隙間は殆ど形成されないから、図1に示した型枠20と、これの図示左側に配置されている型枠20(図示していない)との間に生コンクリートを打設しても、この生コンクリートがシート30と型枠20との間に流れ込むことはない。
【0020】
また、打設されたばかりの生コンクリートには流圧が存在するから、この流圧によってシート30は型枠20にさらに押圧されることになる。従って、例えばシート30の高さの半分程度まで生コンクリートを打設すれば、シート30は、生コンクリートの流圧によって型枠20に向けて押圧され、内側に倒れ込んだり、型枠20との間に隙間を形成したりすることはない。換言すれば、この段階で、各シート押え具10は、引き抜くことが容易にできるだけでなく、引き抜いてもシート30の型枠20に対する押圧力は、生コンクリートによる流圧によって代替されるのである。
【0021】
さて、各シート押え具10を引き抜いた後には、生コンクリートの流圧によって各シート押え具10が存在していた箇所に生コンクリートが流れ込むし、各シート押え具10はコンクリート基礎40となる部分に全く存在していないのであるから、コンクリート基礎40に形成されるべき模様41には何らの影響もないことになる。なお、各シート押え具10を引き抜いた後にも、コンクリート基礎40となるのに十分な量の生コンクリートをさらに打設することは言うまでもない。
【0022】
また、各シート押え具10は、差し込まれた際にも、引き抜かれた際にも、何らの損傷も変形も受けないから、引き抜かれた後には、その保存されていた弾性力によって、再び原形状に復帰する。つまり、このシート押え具10は、使用後においても何らの変化もないのであるから、別の施工場所で再び使用することができる状態が維持されたままとなっており、再使用可能になっているのである。
【0023】
勿論、この請求項1のシート押え具10では、図5に示すように、当該シート押え具10を正面から見た場合に、基部11の端部に連続的に形成される各押え部12または係止部13の折曲角度γについて鈍角にしても、他の折曲角度が鋭角であれば、当該シート押え具10の押圧力を十分なものにし得る。
【0024】
従って、この請求項1のシート押え具10は、コンクリート基礎40等のコンクリート構造物に模様を賦すためのシート30を、生コンクリートの侵入を防止しながら型枠20に押え付けることができて、取り付けや取り外し作業も容易に行え、しかも構造が簡単で容易に製造することのできるものとなっているのである。
【0025】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載のシート押え具10について、
「全体を、剛性のある1本の長尺材を折曲することにより形成したこと」
である。
【0026】
すなわち、この請求項2に係るシート押え具10は、鋼鉄からなる棒材のように、剛性のある1本の長尺材を、基部11と、この基部11の一端からシート30上に延在する押え部12と、基部11の他端から型枠20の外面22に延在する係止部13とからなるように折曲することにより形成したものである。
【0027】
これにより、この請求項2のシート押え具10は、長尺材を、基部11と、この基部11の一端からシート30上に延在する押え部12と、基部11の他端から型枠20の外面22に延在する係止部13との合計長さとなるように切断してから、基部11の一端にて押え部12を折曲し、基部11の他端にて係止部13を折曲すれば、非常に簡単に製造することができる。勿論、これらの折曲は、係止部13が押え部12を超えながら斜めに延在し、この押え部12が押え部12から所定寸法離れているようにすることは言うまでもない。
【0028】
従って、この請求項2のシート押え具10は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、その製造が非常に容易なものになっているのである。
【0029】
そして、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または2に記載のシート押え具10について、
「押え部12及び係止部13の基部11に対する各折曲角度α及びβを、90度より小さくしたこと」
である。
【0030】
この請求項3のシート長具10においては、各基部11の端部に連続的に形成される各押え部12及び係止部13について、図2の(a)に示した正面からみた場合の、押え部12の基部11に対する折曲角度α、及び係止部13の基部11に対する折曲角度βの両方を90度より小さくしたものである。
【0031】
このようにすると、各基部11の端部と、これに形成される各押え部12及び係止部13について、その基部11に対する連続部の剛性が高くなるから、これらの押え部12または係止部13の押圧力(弾発力)を十分なものとなる。特に、図2の(a)に示したように、折曲角度α、及び同βの両方共鋭角にすると、押え部12及び係止部13の押圧力がより高いものとなる。
【0032】
なお、各基部11の端部に連続的に形成される各押え部12及び係止部13については、その連続基部について直線状にすることによって、上記折曲角度α、及び同βを鋭角にし易い。
【0033】
従って、この請求項3のシート押え具10は、上記請求項1または2のそれと同様な機能を発揮する他、押え部12または係止部13の押圧力をより高めることができるものとなっているのである。
【発明の効果】
【0034】
以上、説明した通り、本発明に係るシート押え具10は、
「コンクリート基礎40を形成するための型枠20の内側に配置されるシート30を、型枠20に押圧するためのシート押え具10であって、
型枠20の上縁上に配置される基部11と、この基部11の一端からシート30上に延在する押え部12と、基部11の他端から型枠20の外面22に延在する係止部13とからなり、
当該シート押え具10の不使用時において、係止部13が、押え部12を超えながら斜めに延在するとともに、押え部12から所定寸法離れていること」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、コンクリート基礎40等のコンクリート構造物に模様を賦すためのシート30を、生コンクリートの侵入を防止しながら型枠20に押え付けることができて、取り付けや取り外し作業も容易に行え、しかも構造が簡単で容易に製造することのできるシート押え具10を提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るシート押え具10であって、施工後(図示左側)と、施工前(図示右側)との2種類の状態を示した斜視図である。
【図2】同シート押え具10を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図3】同シート押え具10によって型枠20に押圧されるべきシート30の種類を例示するもので、(a)は賦形型のシート30の断面図、(b)は残存シート30Aの断面図である。
【図4】同シート押え具10の他の実施例を示すもので、(a)は押え部12の一部に波状部12aを形成したシート押え具10の正面図、(b)は押え部12の先端部に曲げ部14を形成したシート押え具10の側面図、(c)は係止部13の先端部に曲げ部14を形成したシート押え具10の正面図である。
【図5】本発明のシート押え具10の他の実施例を示す正面図である。
【図6】特許文献3に示された賦形シートを示すもので、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図である。
【図7】同特許文献3に示された賦形シートを型枠に取り付けた状態を示すもので、(a)は型枠の外面図、(b)は型枠の内面図である。
【図8】特許文献4に示された技術を示す部分斜視図である。
【図9】図8中の一部を拡大して示すもので、(a)は取り付け手段を示す部分斜視図、(b)は同平面図である。
【図10】図9に示した部分を別の方向から見たもので、(a)は内面図、(b)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態であるシート押え具10について説明するが、図1には2つ状態のシート押え具10が示してある。この図1中の左側のシート押え具10は、型枠20の内面21に当接させたシート30を押圧しているものであり、また、図1中の右側のシート押え具10は、型枠20の内面21に当接させたシート30をこれから押圧しようとしているものである。
【0037】
ここで、各シート押え具10を説明する前に、型枠20及びこれに当接されるシート30について説明すると、まず、型枠20は、一般的なものであって、例えばシート30を取り付けるための穴や突起は全く形成されていないものである。換言すれば、本発明のシート押え具10は、その押圧施工をするに当たって、所謂「打ち放し施工」する場合に使用される型枠20をそのまま使用できるものであり、対象となる型枠20として特に制限を必要とするものではない。
【0038】
この一般的な型枠20の内面21に、シート押え具10によって押圧されるべきシート30としては、少なくとも2種類が考えられる。第1のシート30は、図1や図3の(a)に示したような、コンクリート基礎40に形成されるべき模様41を「賦形」するものである。この第1のシート30は、図1にも示したように、その模様面31が型枠20の内面21側でコンクリート基礎40側に向けて露出するように配置されるもので、この模様面31側に生コンクリートが流れ込むことによって、図3の(a)に示したような模様41をコンクリート基礎40に形成するものである。
【0039】
第2のシート30は、図3の(b)に示したような残存シート30Aである。この残存シート30Aは、コンクリート基礎40の表面に一体化されるものであり、この残存シート30A自体が有している模様面31が、コンクリート基礎40の模様41そのものになるものである。このため、このような残存シート30Aをシート押え具10によって型枠20側に押圧する場合には、その模様面31が型枠20の内面21に当接した状態となるようにするものであり、上述した賦形タイプのシート30とは、型枠20に対する設置方向が全く逆になるものである。しかしながら、このような残存シート30Aであっても、シート押え具10によって型枠20側に押圧しなければならないことには変わりはない。
【0040】
上記第1のシート30も、第2の残存シート30Aも、本発明に係るシート押え具10を使用すれば型枠20に確実に押圧できることになるから、型枠20に対する取り付けのための加工(例えば特許文献3のようなボルトを一体化すること)を全く施す必要がないし、非常に長尺なものを丸めて施工現場に運ぶことができるものとすることができ、これを施工現場で所定寸法に裁断して使用することもできるから、構造自体も簡単なものとすることができるのである。
【0041】
さて、シート押え具10であるが、本実施形態にあっては、鋼鉄からなる棒材(丸棒であっても角棒であっても構わない)を所定寸法に切断して、これを必要箇所で折曲することによって、図2に示したように、型枠20の上縁上に配置される基部11と、この基部11の一端からシート30上に延在する押え部12と、基部11の他端から型枠20の外面22に延在する係止部13とからなるものとしたものである。なお、本実施形態のシート押え具10は、直径が4mmの丸棒を採用して形成した。
【0042】
このシート押え具10の基部11は、図1の左側のそれにて示したように、型枠20の上縁の幅より長い長さを有した直線状のものであり、施工後において、型枠20の上縁上に載置されることになるものである。勿論、この基部11は直線状にした方が上縁上に載置され易いが、必ずしもそのようにする必要は無く、例えば円弧状にしてもよい。この円弧状にした場合には、この基部11に対する押え部12及び係止部13の弾力性を高めることができる。
【0043】
基部11の各端部には、押え部12及び係止部13がそれぞれ折曲されて一体的に連続させてあり、これにより、基部11の各端部に対する弾力性が確保できるようにしてある。勿論、これら各押え部12及び係止部13自体も、上述した丸棒材によって構成されているものであるから、各部分自身が弾力性を有していることは言うまでもない。本実施形態の押え部12は、図2に示したように、係止部13よりも長くしてあるが、係止部13より短くても良く、また基部11に対して係止部13とは反対側に折曲したものであってもよい。
【0044】
各基部11の端部に連続的に形成される各押え部12及び係止部13についても、その連続基部について直線状にするとともに、図2の(a)に示した正面からみた場合の、押え部12の基部11に対する折曲角度α、及び係止部13の基部11に対する折曲角度βの両方共に、90度より小さくすると、押え部12または係止部13の押圧力を十分なものにし得る。特に、図2の(a)に示したように、折曲角度α、及び同βの両方共鋭角にすると、押え部12及び係止部13の押圧力をより高めることができる。
【0045】
勿論、図5に示したように、当該シート押え具10を正面から見た場合に、基部11の端部に連続的に形成される各押え部12または係止部13の折曲角度γについて鈍角にしても、他の折曲角度が鋭角であれば、当該シート押え具10の押圧力を十分なものにし得る。
【0046】
各押え部12については、図2の(a)に示したように直線状に形成してもよいが、図4の(a)に示したように、シート30を押圧し得る部分に波状部12aを形成して実施してもよい。この波状部12aは、当該押え部12自身が弾力性を有していることもあって、当該シート押え具10を施工した場合に、シート30に対する押圧点(波の谷または山)を複数形成することになり、シート30の型枠20に対する押圧を複数個所で行うことになって、シート30の押えを十分なものにすることができる。
【0047】
また、図4の(b)または(c)にて示したように、押え部12または係止部13の先端部に曲げ部14を積極的に形成しておくと、当該シート押え具10の差し込み時あるいは引き抜き時に、この曲げ部14の「腹部」がシート30の模様面31に当たることになって、シート30の模様面31に傷を付けることが無くなる。
【符号の説明】
【0048】
10 シート押え具
11 基部
12 押え部
12a 波状部
13 係止部
14 曲げ部
20 型枠
21 内面
22 外面
30 シート
30A 残存シート
31 模様面
40 コンクリート基礎
41 模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート基礎を形成するための型枠の内側に配置されるシートを、前記型枠に押圧するためのシート押え具であって、
前記型枠の上縁上に配置される基部と、この基部の一端から前記シート上に延在する押え部と、前記基部の他端から前記型枠の外面に延在する係止部とからなり、
当該シート押え具の不使用時において、前記係止部が、前記押え部を超えながら斜めに延在するとともに、前記押え部から所定寸法離れていることを特徴とするシート固定具。
【請求項2】
全体を、剛性のある1本の長尺材を折曲することにより形成したことを特徴とする請求項1に記載のシート押え具。
【請求項3】
前記押え部及び係止部の基部に対する各折曲角度を、90度より小さくしたことを特徴とする請求項1または2に記載のシート押え具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate