説明

型締装置

【課題】電磁石を用いて型締力を発生させる型締装置において、磁気の漏洩を回避できる構造を採用し、電磁石が吸着板を吸着する吸着力が不均一及び劣化することを防止することができる型締装置を提供することができる。
【解決手段】電磁石49によって型締力を発生する型締装置10は、前記電磁石49が駆動されると前記電磁石49に吸着させられる吸着板22と、前記電磁石49と前記吸着板22との間に形成される磁路の外部に設けられ、前記磁路から漏洩される磁気を遮断する非磁性体60と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締装置に関し、より具体的には、電磁石によって型締力を発生する型締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機は、射出装置、金型装置及び型締装置を備え、樹脂を射出装置の射出ノズルから射出して金型装置のキャビティ空間に充填し、固化させることによって成形品を得るようになっている。そして、前記金型装置は、固定金型及び可動金型を備え、前記型締装置を作動させ、固定金型に対して可動金型を進退させることによって、型閉じ、型締め及び型開きを行うことができる。
【0003】
前記型締装置は、前記固定金型が取り付けられた固定プラテン、前記可動金型が取り付けられた可動プラテン、電動式のモータ、該モータの出力軸に連結されたボールねじ軸、及び該ボールねじ軸と螺合させられるボールナットから成るボールねじ、前記ボールナットと連結されたクロスヘッド、該クロスヘッドと可動プラテンとの間に配設されたトグル機構等を備え、前記モータを駆動することによってクロスヘッドを前進させ、前記トグル機構を伸展させることによって型閉じ及び型締めを行うことができる。
【0004】
ところが、前記構成の型締装置においては、型締力を発生させるためにトグル機構を使用するようになっているので、可動プラテンに曲げモーメントが作用し、可動プラテンにおける金型取付面に歪みが発生してしまう。
【0005】
また、トグル機構を伸展させることによって型締めが行われるので、型締力を制御するのが困難になってしまう。
【0006】
そこで、電動式のモータ及び電磁石を備え、型閉じ及び型開きの動作にモータのトルクを、型締めの動作に電磁石の吸引力を利用した型締装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図1に、このような型締めの動作に電磁石の吸引力を利用した型締装置の一例を示す。
【0008】
図1を参照するに、510は型締装置、519は金型装置を示す。
【0009】
型締装置510は、リニアモータ528、リヤプラテン513、リヤプラテン513と所定長さ離間して設けられた吸着板522、固定プラテン511、可動プラテン512、及び可動プラテン512と吸着板522とを連結する型締力伝達部材としてのロッド539等を有する。
【0010】
リニアモータ528上面には金属から成るスライドベースSbが設けられている。また、当該スライドベースSb上に吸着板522及び当該吸着板522の後方に接続された金属から成るリブ550が設けられている。但し、スライドベースSbとリヤプラテン513(電磁石549)との間は、所定長さ(例えば、5mm)離間し、両者間に空間555が形成されている。
【0011】
また、金型装置519は、固定プラテン511に固定された固定金型515と、可動プラテン512に固定された可動金型516とより構成される。
【0012】
図1では、型閉状態、即ち、固定金型515と可動金型516とが閉じた状態が示されている。
【0013】
型締装置510においては、型閉時に、リニアモータ528によって発生させられた推進力が、スライドベースSb及び吸着板522に伝達された後、ロッド539を介して吸着板522と一体的に連結された可動プラテン512に伝達され、当該可動プラテン512の中央部分が押される。その後、コイル548に電流が供給された、電磁石549によって吸着板522に働く吸着力がロッド539によって可動プラテン512に伝達され、型締めが行われる。
【特許文献1】国際公開WO/2005/090053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、図1に示す例では、電磁石549の後方に、所定長さ離間して(磁性体である空気層を介して)磁性体である金属から成る吸着板522が設けられ、当該吸着板522の後方には磁性体である金属から成るリブ550が接続され、更に、電磁石549の下方には、空間555を介して、磁性体である金属から成るスライドベースSbが設けられている。
【0015】
かかる構造の下、コイル548に電流を供給すると、図1において点線の矢印で示す方向に磁束が発生するが、リブ550において吸着板522を取り付けている面を介して、電磁石549の磁極と吸着板522とが磁気的に連結されてしまう。
【0016】
従って、電磁石549の磁極と吸着板522とが磁気的に連結している当該箇所が磁路となり、図1において実線の矢印で示すように磁気が漏洩してしまう。具体的には、吸着板522とリブ550との間、吸着板522及びリブ550とスライドベースSbとの間、及びスライドベースSbの上部等において磁気が漏洩してしまう。更に、リヤプラテン513と可動プラテン512との間や、ロッド539の周囲においても、磁気が漏洩する可能性がある。
【0017】
よって、電磁石549(リヤプラテン513)が吸着板522を吸着する面(吸着面)における磁束密度の均一性は妨げられ、電磁石549(リヤプラテン513)が吸着板522を吸着する吸着力は不均一且つ劣化した状態となってしまう。
【0018】
更に、電磁石549(リヤプラテン513)の下部とスライドベースSbとの間に形成された空間555に、前記磁気が漏洩することによって、電磁石549(リヤプラテン513)に、スライドベースSbを吸着する吸着力が発生してしまう。
【0019】
そうすると、磁束密度の不均一に起因して、リヤプラテン513と吸着板522との間のギャップ(間隔)の平行度が崩れ、吸着板522の縁部において大きな不要なモーメントが発生し、図2に示すように、吸着板522は傾斜してしまう。ここで、図2は、吸着板522が傾斜することによる問題点を説明するための図である。図2中、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
図2を参照するに、吸着板522が傾いたままの状態で型締工程が行われると、ロッド539にモーメントが生じ、可動プラテン512は、破線で示されるように変形する。その結果、当該可動プラテン512に設けられた可動金型516も、破線で示されるように撓んでしまい、成形品の形状に影響を与える可能性がある。
【0021】
また、所定の吸着力を得るために、コイル548に電流を供給しても、当該所定の吸着力を得ることができず、円滑な成形動作を行うことができない可能性もある。
【0022】
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、電磁石を用いて型締力を発生させる型締装置において、磁気の漏洩を回避できる構造を採用し、電磁石が吸着板を吸着する吸着力が不均一及び劣化することを防止することができる型締装置を提供することを、本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一観点によれば、電磁石によって型締力を発生する型締装置であって、前記電磁石が駆動されると前記電磁石に吸着させられる吸着板と、前記電磁石と前記吸着板との間に形成される磁路の外部に設けられ、前記磁路から漏洩される磁気を遮断する非磁性体と、を備えたことを特徴とする型締装置が提供される。
【0024】
前記非磁性体は、前記吸着板の、前記電磁石が設けられている側と反対側の端面に設けられていてもよい。前記非磁性体は更に、前記電磁石の、前記吸着板に面している側と反対側の面に設けられていてもよい。
【0025】
また、前記非磁性体は、前記吸着板を下方から支持する吸着板支持部材の一部に設けられていてもよい。例えば、前記電磁石は、前記吸着板支持部材の上方に設けられ、前記非磁性体は、前記吸着板支持部材のうち、前記電磁石に対向している面に設けられていてもよい。
【0026】
更に、前記非磁性体は空間形成部内に設けられた空気から構成されていてもよい。
【0027】
本発明の他の観点によれば、電磁石によって型締力を発生する型締装置であって、前記電磁石が駆動されると前記電磁石に吸着させられる吸着板と、前記電磁石と前記吸着板との間に形成される磁路の外部に設けられ、前記磁路から漏洩される磁気を打ち消す磁石と、を備えたことを特徴とする型締装置が提供される。
【0028】
前記磁石は、前記吸着板の、前記電磁石が設けられている側と反対側の端面に設けられていてもよい。
【0029】
前記磁石は、前記吸着板を下方から支持する吸着板支持部材の一部に設けられていてもよい。例えば、前記電磁石は、前記吸着板支持部材の上方に設けられ、前記磁石は、前記吸着板支持部材のうち、前記電磁石に対向している面に設けられていてもよい。
【0030】
更に、前記磁石は、永久磁石であってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、電磁石を用いて型締力を発生させる型締装置において、磁気の漏洩を回避できる構造を採用し、電磁石が吸着板を吸着する吸着力が不均一及び劣化することを防止することができる型締装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0033】
なお、以下では、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
【0034】
また、以下の説明では、型締とは、可動金型のパーティング面が固定金型のパーティング面と接触している状態から、可動金型に更に力が作用して、固定金型が可動金型によって押し付けられることをいう。
【0035】
図3は本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の概略構成図である。
【0036】
図3において、10は型締装置であり、Frは射出成形機のフレームである、Gdは、該フレームFr上に敷設されてレールを構成し、型締装置10を支持するとともに、案内する第1の案内部材としての2本のガイドである。図においては、2本のガイドGdのうち1本だけを示している。
【0037】
11は、第1の固定部材としての固定プラテンである。固定プラテン11は、被案内部材としてのガイドブロックGbを介して、前記ガイドGd上に載置されている。
【0038】
固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させて第2の固定部材としてのリヤプラテン13が配設されている。詳細は後述するが、リヤプラテン13はフレームFrに固定されている。
【0039】
固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバーのうちの2本だけを示す。)が架設される。
【0040】
該タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて第1の可動部材としての可動プラテン12が型開閉方向に進退(図において左右方向に移動)自在に配設される。そのために、前記可動プラテン12のタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させる図示されないガイド穴が形成される。可動プラテン12は、ガイドブロックGbを介して、ガイドGd上に載置されている。
【0041】
前記タイバー14の前端部(図において右端部)には、図示されない第1のねじ部が形成され、前記タイバー14は、前記第1のねじ部とナットとを螺合させることによって固定プラテン11に固定される。また、前記各タイバー14の後方(図において左方)の所定の部分には、タイバー14より外径が小さい第2の案内部材としてのガイドポスト21が、リヤプラテン13の後端面(図において左端面)から後方に向けて突出させて、かつ、タイバー14と一体に形成されている。
【0042】
各ガイドポスト21の、リヤプラテン13の後端面の近傍に、図示されない第2のねじ部が形成され、前記固定プラテン11とリヤプラテン13とは、前記第2のねじ部とナットとを螺合させることによって連結される。本実施の形態においては、ガイドポスト21がタイバー14と一体に形成されるようになっているが、ガイドポスト21をタイバー14とを別体に形成することもできる。
【0043】
また、前記固定プラテン11には第1の金型としての固定金型15が、前記可動プラテン12には第2の金型としての可動金型16がそれぞれ固定され、前記可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。
【0044】
なお、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に複数の図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された成形材料としての図示されない樹脂が前記各キャビティ空間に充填される。
【0045】
固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0046】
そして、前記可動プラテン12と平行に配設された第2の可動部材としての吸着板22が、ガイドブロックGbを介して、ガイドGd上に載置されている。
【0047】
吸着板22は、可動プラテン12を進退させるために、第1の駆動部としての、かつ、型開閉用の駆動部としてのリニアモータ128の上部に設けられた吸着板支持部材であるスライドベースSb上に配設されている。より具体的には、スライドベースSb上に吸着板22の下端が強固に固定されている。吸着板22の後方に接続された金属から成るリブ50も、当該スライドベースSb上に固定されている。
【0048】
吸着板22は、リヤプラテン13より後方において前記各ガイドポスト21に沿って進退自在に配設され、ガイドポスト21によって案内される。なお、前記吸着板22には、各ガイドポスト21と対応する箇所に、ガイドポスト21を貫通させるガイド穴(図示を省略)が形成される。
【0049】
ところで、リニアモータ128は、可動プラテン12とフレームFrとの間に配設され、吸着板22の下端に可動部材支持部としてのスライドベースSbを介して第2の駆動要素としての可動子131が取り付けられている。可動子131は、フレームFr上に、ガイドGdと平行に、かつ、可動プラテン12の移動範囲に対応させて形成された第1の駆動要素としての固定子129と対向して設けられている。
【0050】
スライドベースSbは、可動子131の上面を覆って、長手方向に、前方に向けて延在させられる。そのため、前記リヤプラテン13の下端には、リニアモータ128、ガイドGd、ガイドブロックGb、スライドスペースSb等を貫通させ包囲する空間215が形成される。その結果、リヤプラテン13は空間215の両側にスライドベースSbを跨ぐように形成される脚部(図示を省略)を介してフレームFrに固定される。
【0051】
前記可動子131は、図示を省略するコイルを備え、前記固定子129は、図示を省略するコア及び該コア上に延在させて形成された永久磁石を備える。従って、前記コイルに所定の電流を供給することによってリニアモータ128を駆動すると、可動子131が進退し、それに伴って、可動プラテン112が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。
【0052】
ところで、前記可動プラテン12が前進(図において右方向に移動)させられて可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが終了し、続いて、型締めを行われる。型締めを行うために、リヤプラテン13と吸着板22との間に、第2の駆動部としての、かつ、型締用駆動部としての電磁石ユニット37が配設される。
【0053】
また、型閉じ時及び型開き時に、可動プラテン12の進退に連動させて吸着板22を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生させられた型締力を可動プラテン12に伝達するために、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延び、可動プラテン12と吸着板22とを連結する型締力伝達部材としてのロッド39が、進退自在に配設される。
【0054】
固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ128、電磁石ユニット37、ロッド39等によって型締装置10が構成される。
【0055】
前記電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に配設された第1の駆動部材としての電磁石49、及び吸着板22側に配設された第2の駆動部材としての吸着部51から成る。
【0056】
吸着部51は、前記吸着板22の前端面の所定の部分、本実施の形態においては、吸着板22において前記ロッド39を包囲し、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、前記ロッド39よりわずかに上方及び下方に、水平方向に延在させて二つの溝45が互いに平行に形成され、各溝45間に矩形の形状を有するコア46、及び他の部分にヨーク47が形成される。そして、前記コア46に励磁コイル48が巻装される。
【0057】
なお、前記リヤプラテン13のコア46及びヨーク47、並びに吸着板22は、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成され、電磁積層鋼板を構成する。また、本実施の形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が配設されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を吸着板22の一部として吸着部を形成することもできる。
【0058】
従って、電磁石ユニット37において、前記溝45に設けられた励磁コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、前記型締力を発生させることができる。
【0059】
前記ロッド39は、後端部(図において左端部)において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。従って、ロッド39は、型閉じ時に可動プラテン12が前進するのに伴って前進させられて吸着板22を前進させ、型開き時に可動プラテン12が後退(図において左方向に移動)するのに伴って後退させられて吸着板22を後退させる。
【0060】
そのため、前記リヤプラテン13の中央部分に、ロッド39を貫通させるための穴(図示を省略)が形成され、また、前記ロッド39の後端部にねじ43が形成され、該ねじ43と、吸着板22に対して回転自在に支持されたナット44とが螺合させられる。

ところで、本実施の形態では、電磁石49の周囲に、吸着板と電磁石との間に形成される磁路の外部に非磁性体を設けて磁気の漏洩を遮断、又は、当該磁気を打ち消す磁石を設けて漏洩される磁気を打ち消し(キャンセルし)、その結果、電磁石49の吸着面に均一な磁束密度を発生させ、吸着板22を吸着する吸着力が不均一及び劣化することを防止している。これについて、図4乃至図13を参照して説明する。
【0061】
ここで、図4乃至図13は、図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第1乃至第10の例を示す図である。
【0062】
なお、以下の説明において、特に明示がない限り、「非磁性体」は、アルミニウム(Al)、セラミック、ガラス等、磁性を示さない材料から構成される部材を指し、当該材料に特に限定はない。
【0063】
図4を参照するに、磁気の漏洩磁路を切断する第1の例では、スライドベースSb上に設けられた吸着板22とリブ50との間に、非磁性体板60を設けている。従って、図4において矢印で示すように、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から漏れる磁気を、吸着板22とリブ50との間に設けられた非磁性体板60により遮断することができる(図4における「×」印参照)。
【0064】
次に、前記構成の型締装置10の動作について説明する。
【0065】
前記金型装置19の交換に伴い、新しい金型装置19が取り付けられると、まず、金型装置19の厚さに対応させて吸着板22と可動プラテン12との間の距離が変更され、型厚調整が行われる。
【0066】
続いて、距離調整工程で、リニアモータ128を駆動し、固定金型15に可動金型16を当接させて型タッチを行う。なお、このとき、型締力は発生させない。この状態で、型厚調整用モータを駆動してナット44を回転させ、リヤプラテン13と吸着板22との間隔、即ち、ギャップを調整し、あらかじめ設定された値にする。
【0067】
型閉時においては、リニアモータ128が駆動されると、リニアモータ128によって発生させられた推進力が、スライドベースSb及び吸着板22に伝達された後、ロッド39を介して吸着板22と一体的に連結された可動プラテン12に伝達され、当該可動プラテン12の中央部分が押される。
【0068】
続いて、型締時には、コイル48に電流が供給され、吸着部51を電磁石49の吸着力によって吸着する。それに伴って、吸着板22及びロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。
【0069】
この際、コイル48の周囲に発生した時期により、吸着板22とリヤプラテン13との間に図1に点線で示すように磁気回路が形成される。ここで、吸着板22における磁気は、機械的に接触しているリブ50に伝わろうとするが、本発明では、図4に示すように、非磁性体60がリブ50と吸着板22との間に配設されているので、型締力が加わっている最中に、吸着板12からリブ50に磁気が漏れることはない。
【0070】
そして、キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、制御部は、型開き時に、コイル48に電流を供給するのを停止する。それに伴って、リニアモータ128が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、可動金型16が後退限位置に置かれ、型開きが行われる。
【0071】
図5(a)に示すように、かかる非磁性体板を、吸着板22とリブ50との間のみならず、リヤプラテン13の可動金型12(図3参照)側の端面に設けてもよい。図5に示す例では、吸着板22とリブ50との間に非磁性体板60が設けられ、更に、リヤプラテン13の可動金型12側の端面に非磁性体板61が設けられている。かかる構造により、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から漏れる磁気を、図4に示す例よりも更に確実に遮断することができる。
【0072】
また、図5(a)及び(b)に示す型締装置は、リヤプラテン13をコイル固定部とリヤプラテンを固定するための図示を省略する脚部を備えるリヤプラテンベース部とに分けた構造を有する。図5(b)に示すように、非磁性体板を、吸着板22とリブ50との間のみならず、リヤプラテン13のコイル固定部とリヤプラテンベース部との間に設けてもよい。かかる構造により、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から漏れる磁気を更に確実に防止することができる。更に、リヤプラテンベース部からフレームに磁気が漏れることを防止することができるため、磁気漏れによる磁束の不均一を改善することができ、安定した成型を行うことができる。
【0073】
ところで、図6乃至図8に示すように、非磁性体をスライドベースSbの一部に設けてもよい。
【0074】
図6に示す例では、スライドベースSbが、吸着板22及びリブ50と接続している箇所に、非磁性体ブロック62が設けられている。従って、図6において矢印で示すように、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から漏れる磁気を、前記非磁性体ブロック62により遮断することができる(図6における「×」印参照)。
【0075】
また、図4に示すように、吸着板12とリブ50との間に非磁性体板61を設けると、吸着板12と同等の面積を有する非磁性体板61が必要となるが、図6に示す例では、スライドベースSbと接触部に非磁性体板を設けるだけでよく、小さな部材を用いることで効率良く磁気漏れを防止することができる。
【0076】
このような非磁性体ブロックを、図7及び図8に示すように、スライドベースSbにおける他の箇所に設けてもよい。
【0077】
図7に示す例では、非磁性体ブロック63は、スライドベースSbにおいてリヤプラテン13と吸着板22との間に形成されたギャップに対向する箇所に設けられている。
【0078】
通常、型締力が加わった状態では、ギャップδが最も小さくなった状態となる。また、ギャップδの距離は、リヤプラテン13とスライドベースSbとの間の空間215の間隔よりも小さくなる。このため、ギャップδ間を通過する磁束が最も大きくなるが、ギャップδ間に生じる磁束の増加の影響により、リヤプラテン13の吸着板側面の下角部からスライドベースSbへの磁束が発生してしまう。その結果、吸着板22とリヤプラテン13との間の磁束は不均一な状態となってしまい、吸着力のバランスもずれてしまう。
【0079】
このような磁気漏れを防止するために、ギャップδに対向する位置のスライドベースSbに非磁性体ブロック63は配設されている。この場合、非磁性体ブロック63として小さな部材をスライドベースSbに備えることで、磁束の不均一さを改善することができ、偏荷重による金型の損傷を効率よく防止することができる。
【0080】
また、図8に示す例では、非磁性体ブロック64は、スライドベースSbにおいてリヤプラテン13に対向する箇所に設けられている。
【0081】
図7及び図8に示すいずれの場合も、図6に示す例と同様に、非磁性体ブロック63又は64により、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から漏れる磁気を遮断することができる。
【0082】
なお、図7及び図8に示す非磁性体ブロック63又は64を空間形成部としてもよい。即ち、図7及び図8に示す非磁性体ブロック63又は64が設けられている箇所を、空気が設けられた空間(隙間)にしてもよい。空気は非磁性体であり、かかる場合も、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から漏れる磁気を遮断することができる。
【0083】
更に、空間に面した位置に非磁性体ブロック63,64は配設され、型締力が加わった際に荷重が加わることがないので、剛性の低い非磁性体を用いることができる。
【0084】
また、図7及び図8に示す例の場合、非磁性体ブロックではなく、空隙を非磁性体として設けてもよい。スライドベースSbに凹部を設けて、スライドベースSbとリヤプラテン13との距離を大きくとり、磁気抵抗を大きくすることもできる。この場合、型締力が加わった際のギャップ間の距離の2倍以上の空隙部を設けることが望ましい。
【0085】
このように、上述の、図6乃至図8に示す例では、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から漏れる磁気を遮断するために、非磁性体ブロック62乃至64を設けている。しかしながら、本発明はこれらの例に限定されず、図9乃至図11に示すように、非磁性体ブロック62乃至64の代わりに、磁石、例えば、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させて形成された永久磁石を設けてもよい。
【0086】
図9に示す例では、スライドベースSbが、吸着板22及びリブ50と接続している箇所に、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させて形成された永久磁石72が設けられている。従って、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から漏れる磁気を、永久磁石72により打ち消す(キャンセルする)ことができる。
【0087】
図10及び図11に示すように、かかる永久磁石を、スライドベースSbにおける他の箇所に設けてもよい。
【0088】
図10に示す例では、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させて形成された永久磁石73は、スライドベースSbにおいてリヤプラテン13と吸着板22との間に形成されたギャップに対向する箇所に設けられている。また、図11に示す例では、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させて形成された永久磁石74は、スライドベースSbにおいてリヤプラテン13に対向する箇所に設けられている。
【0089】
図10及び図11に示すいずれの場合も、図9に示す例と同様に、永久磁石73又は74により、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から漏れる磁気を打ち消す(キャンセルする)ことができる。
【0090】
なお、図示を省略するが、スライドベースSb上に設けられた吸着板22とリブ50との間に設けられた非磁性体板60(図4参照)の代わりに、また、リヤプラテン13の可動金型12側の端面に設けられた非磁性体板61(図5参照)の代わりに、上述の永久磁石を設けてもよく、この場合も、同様の効果を奏することができることはいうまでもない。
【0091】
ところで、上述したように、ロッド39の周囲においても、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から磁気が漏洩してしまうことがある。この場合、ロッド39は、リヤプラテン13と金型の開閉動作と共に摺動し、吸着板22ともナット44を介して機械的に接続した状態となる。即ち、型閉動作で狭められたギャップよりも磁気抵抗が小さい回路が形成されるようになるので、ロッド39への磁気漏れが発生してしまう。これに対応すべく、図12に示す構造を採用してもよい。
【0092】
図12に示す例では、リヤプラテン13の内部であってロッド39の周囲に、ロッド39に接するように非磁性体部材80が設けられている。ここで、非磁性部材80は、上述のように空間形成部であってもよい。
【0093】
非磁性部材80の厚さ、即ち、非磁性体部材80の外縁部分とロッド38の外周面の間の長さは、リヤプラテン13と吸着板22との間のギャップ(間隔)長さよりも大きく設定されている。この場合、ロッド39を通してリヤプラテン13と吸着板22との間に磁気回路が生じるのを防止するため、ギャップに生じる電気抵抗よりも大きな抵抗をリヤプラテン13とロッド39との間に設ける必要があるからである。
【0094】
かかる構造の下、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から磁気がロッド39の周囲に漏洩され得る場合であっても、ロッド39の周囲に設けられた前記非磁性部材80により、当該漏洩を遮断することができる。
【0095】
また、図12に示す構造のほか、ロッド39自体を非磁性体から構成してもよく、この場合も、図13に示す構造と同様の効果を奏することができる。
【0096】
ところで、上述の各例では、吸着板22及びリブ50はスライドベースSb上に設けられ、リヤプラテン13は空間215を介してフレームFrに固定されていた。しかしながら、図13に示すように、吸着板22及びリブ50がベースベースB上に設けられ、リヤプラテン13も空間215を介してベースフレームBに固定されている構造に対しても、本発明を適用することができる。
【0097】
この場合、吸着板支持部材であるベースフレームBの上面の一部に、非磁性体ブロック90が設けられる。なお、上述の例と同様に、非磁性体ブロック90として空間形成部を設けてもよく、また、非磁性体ブロック90の代わりに、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させて形成された永久磁石を設けてもよい。
【0098】
かかる構造の下、電磁石49(リヤプラテン13)と吸着板22との間に形成される磁路から磁気が漏洩される場合であっても、非磁性体ブロック90により当該漏洩を遮断することができ、また、非磁性体ブロック90に代わる永久磁石により磁路から漏れる磁気を打ち消す(キャンセルする)ことができる。
【0099】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、本実施の形態では、電磁石49の周囲に、吸着板と電磁石との間に形成される磁路の外部に非磁性体を設けて磁気の漏洩を遮断でき、又は、当該磁気を打ち消す磁石を設けて漏洩される磁気を打ち消す(キャンセル)ことができる。
【0100】
その結果、電磁石49の吸着面に均一な磁束密度を発生させることができ、吸着板22を吸着する吸着力が不均一及び劣化することを防止することができる。
【0101】
なお、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】型締めの動作に電磁石の吸引力を利用した型締装置の一例を示す図である。
【図2】図1に示す吸着板が傾斜することによる問題点を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態における金型装置及び型締装置の概略構成図である。
【図4】図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第1の例を示す図である。
【図5】図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第2の例を示す図である。
【図6】図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第3の例を示す図である。
【図7】図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第4の例を示す図である。
【図8】図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第5の例を示す図である。
【図9】図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第6の例を示す図である。
【図10】図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第7の例を示す図である。
【図11】図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第8の例を示す図である。
【図12】図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第9の例を示す図である。
【図13】図3に示すリヤプラテン13及び吸着板22等を拡大して示した図であり、磁気の漏洩磁路を切断する第10の例を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
10 型締装置
13 リヤプラテン
22 吸着板
49 電磁石
60、61、62、63、64、80、90 非磁性体
72、73、74 永久磁石
B ベースフレーム
Sb スライドベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石によって型締力を発生する型締装置であって、
前記電磁石が駆動されると前記電磁石に吸着させられる吸着板と、
前記電磁石と前記吸着板との間に形成される磁路の外部に設けられ、前記磁路から漏洩される磁気を遮断する非磁性体と、を備えたことを特徴とする型締装置。
【請求項2】
請求項1記載の型締装置であって、
前記非磁性体は、前記吸着板の、前記電磁石が設けられている側と反対側の端面に設けられていることを特徴とする型締装置。
【請求項3】
請求項2記載の型締装置であって、
前記非磁性体は更に、前記電磁石の、前記吸着板に面している側と反対側の面に設けられていることを特徴とする型締装置。
【請求項4】
請求項1記載の型締装置であって、
前記非磁性体は、前記吸着板を下方から支持する吸着板支持部材の一部に設けられていることを特徴とする型締装置。
【請求項5】
請求項4記載の型締装置であって、
前記電磁石は、前記吸着板支持部材の上方に設けられ、
前記非磁性体は、前記吸着板支持部材のうち、前記電磁石に対向している面に設けられていることを特徴とする型締装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項記載の型締装置であって、
前記非磁性体は空間形成部内に設けられた空気から構成されることを特徴とする型締装置。
【請求項7】
電磁石によって型締力を発生する型締装置であって、
前記電磁石が駆動されると前記電磁石に吸着させられる吸着板と、
前記電磁石と前記吸着板との間に形成される磁路の外部に設けられ、前記磁路から漏洩される磁気を打ち消す磁石と、を備えたことを特徴とする型締装置。
【請求項8】
請求項7記載の型締装置であって、
前記磁石は、前記吸着板の、前記電磁石が設けられている側と反対側の端面に設けられていることを特徴とする型締装置。
【請求項9】
請求項7記載の型締装置であって、
前記磁石は、前記吸着板を下方から支持する吸着板支持部材の一部に設けられていることを特徴とする型締装置。
【請求項10】
請求項9記載の型締装置であって、
前記電磁石は、前記吸着板支持部材の上方に設けられ、
前記磁石は、前記吸着板支持部材のうち、前記電磁石に対向している面に設けられていることを特徴とする型締装置。
【請求項11】
請求項7乃至10いずれか一項記載の型締装置であって、
前記磁石は、永久磁石であることを特徴とする型締装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−6649(P2008−6649A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178470(P2006−178470)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】