説明

埋め込み用ペースト及びその使用

本発明は、低分子量ポリエチレングリコールの分子量と中分子量ポリエチレングリコールの分子量とが、少なくとも互いに80g/mol異なり、中分子量ポリエチレングリコールの分子量と高分子量ポリエチレングリコールの分子量とが、少なくとも互いに300g/mol異なることを条件として、50〜425μmのサイズ分布を有する生体活性ガラス球、200〜700g/molの分子量範囲を有する低分子量ポリエチレングリコール、700〜2500g/molの分子量範囲を有する中分子量ポリエチレングリコール、及び2500〜8000g/molの分子量範囲を有する高分子量ポリエチレングリコールを含む、埋め込み用ペーストに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における外科的使用のための生体活性ガラスを含む埋め込み用ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
生体活性ガラスは、既知の生体活性及び生体適合性材料である。数十年の間、生体活性ガラスは、骨と化学的にさえ結合する骨充填材料として研究されている。生体活性ガラスの優れた品質の近年の発見は、該材料をこれらの応用についてより一層興味深くさせている。特定の生体活性ガラスは、例えば、BonAlive(登録商標)、NovaBone(登録商標)、及びBiogran(登録商標)の商標名の下で市販されている。生体活性ガラスは、医学的応用のために様々な形態、例えば、整形外科、及び頭蓋顎顔面骨空洞充填、並びに骨再建のための顆粒及びペーストに用いられている。特定の生体活性ガラス製剤は、先行技術、例えば、EP802890、及びEP1405647に開示されている。生体活性ガラスのいくつかの組成物はまた、抗微生物効果を有することが知られている、例えば、US6,190,643、及びUS6,342,207。
【0003】
骨移植片置換物として生体活性ガラスを用いる主な利益は、二次部位から骨移植片を採取することが回避され得ることである。特定の組成範囲内で、生体活性ガラスは骨成長を刺激し、細菌増殖阻害特性を示す。
【0004】
ガラスが生体活性であり、上述の特性を有するために、ガラスは分解し、特定の分解速度を有し、特定の組成物を有する必要がある。組成物と生体活性との関係性は、Hench L.Bioactive ceramics:Theory and clinical applications.Bioceramics 1994;7:3−14に記述されており、ある意味で、それは、当業者に生体活性ガラスを設計するために十分なツールを与える。
【0005】
ガラス粒子の分解速度、ひいては合計分解時間に影響を与える一つの要因は、粒子サイズ、又は体積に対する表面積の比(A/V)である。言い換えると、より小さい粒子、より高いA/V比は、分解を速くし、全分解時間を短縮する。例えば、市販のガラス45S5/Bioglass(登録商標)は、90〜710μmのサイズ範囲で入手可能であり、それは1年以内に体において、分解することが主張される。商標名BonAlive(登録商標)の下で販売されるガラスS53P4は、53重量%のSiO2、23重量%のNa2O、20重量%のCaO、及び4重量%のP25の化学組成を有し、それは、45重量%のSiO2、24.5重量%のNa2O、24.5重量%のCaO、及び6重量%のP25の組成を有する45S5ガラスよりも明らかに緩徐に分解する。
【0006】
生体活性ガラスの使用を高め、外科的範囲を広げるために、成形可能なペースト、又はパテタイプの組成物は、開発されている。理想的な場合では、パテ製剤は、交差汚染、溢流、又は過剰投与のリスクなく、容易に投与可能であり、取り扱うことができ、骨欠損に直接的に投与可能であるべきである。実際には、医者は、骨空洞を充填するために、パテの投与及び成形に彼らの手、及び指及び/又はスパチュラ、又は同様のものを用いている。しかしながら、そのような製剤は、例えば、取り扱いの間の汚染リスクのために、多数の実際の不利益を有し、それは患者又は医者にとって最適ではない。
【0007】
一つの合成パテ/ペースト製剤は、US2008/0226688から知られており、NovaBone(登録商標)パテとして商業的に知られている。この文献は、ペースト又はパテの骨空洞充填剤種、すなわち、水性担体中に生体活性ガラス粒子を含む、骨欠損部分への適用のための滅菌された成形可能な埋め込み用組成物を記述する。生体活性ガラス粒子は、約68%〜約76%(wt/wt)に及ぶ濃度で粘性担体に添加される。担体は、約45:55〜約65:35に及ぶグリセロール対ポリエチレングリコールの比を有する24%〜32%(wt/wt)に及ぶグリセロールとポリエチレングリコール(PEG)の混合物を含む。
【0008】
しかしながら、この製剤は、多数の実用上の不利益を有する;物理的及び化学的特性、並びに担体と生体活性ガラスの割合のために、該材料は容易に注入することができない。加えて、比較的早く再吸収する45S5/Bioglass(登録商標)、及び細かい粉末、及び顆粒サイズのために、製剤は、迅速に治癒する欠損にのみ適しており、長期の骨成長適用には適していない。さらに、製品の粘性は、特定の適用のみに限定され、注入及びシリンジ用途のためには高すぎる。
【0009】
このような不利益に加えて、骨欠損に到達することを試みる間、誤って軟組織に移植片材料を溢流させるリスクは、注入用形態で移植片材料を有しない場合、著しく高い。さらなる不利益は、追加の道具、例えば、スパチュラが取り扱うために必要であることである。
【0010】
完全合成骨空洞充填剤パテ又はペーストに加えて、パテ又はペースト製剤の形態における特定の半合成混合物、例えば、同種移植片骨の混合物、脱塩された骨マトリックス、及びウシコラーゲン/ヒドロキシアパタイトは、幅広く使用されており、当該技術分野において知られている。加えて、脱塩された骨マトリックス組成物に関するいくつかの特許文献、例えばUS5,073,373は、知られている。Grafton(登録商標)脱塩された骨マトリックス(DBM)パテ及びゲル骨空洞充填剤、骨移植片拡張剤、並びに骨移植片置換物は、外科的骨修復に使用のために提供されている。US5,073,373に開示された組成物は、生体適合性液体担体、例えば、グリセロール中の脱塩された骨粉末に基づく。Exactech Resorbable Bone Paste(US 2004/091462)は、生体不活性ポリエチレングリコール(PEG)に基づくポリマー中の脱塩された骨マトリックスの混合物であり、単独のドナー由来のすぐに使用可能な埋め込み用デバイスとして、一回使用のための無菌製品として提供される。脱塩された骨マトリックスは、治癒プロセスの間、再吸収し、新しい骨と置き換わる。
【0011】
しかしながら、そのような同種移植片製剤は、疾患の伝搬のリスクが最も大きい不利益である多数の不利益を有し、決して完全に排除できない。
【0012】
定義
この明細書に用いられる用語は、他に定義されない場合、1987年及び1992年のバイオマテリアルに関するコンセンサス会議で合意されたものであり、Williams,DF(ed.):Definitions in biomaterials:Proceedings of a consensus conference of the European Society for Biomaterials,Chester,England.March 3−5,1986.Elsevier,Amsterdam 1987,及びWilliams DF,Black J,Doherty PJ.Second consensus conference on definitions in biomaterials.In:Doherty PJ,Williams RL,Williams DF,Lee AJ(eds).Biomaterial−Tissue Interfaces.Amsterdam:Elsevier,1992を参照のこと。
【0013】
この明細書では、生体活性材料とは、生体活性を導く又は調節するために設計された材料を意味する。生体活性材料は、しばしば、哺乳動物組織と化学的に結合することのできる表面活性材料である。
【0014】
この文脈において再吸収可能なる用語とは、哺乳動物の体に挿入される場合、及びそれが生理学的な環境と接触する状態になる場合、長期に亘る埋め込み物において、材料が崩壊される(disintegrated)、すなわち、分解される(decomposed)ことを意味する。特に、再吸収可能なガラスなる用語とは、生理学的な環境と接触する場合に、その表面上にヒドロキシル炭酸アパタイト層を形成することができないシリカに富んだガラスを意味する。再吸収可能なガラスは、再吸収を通して体から消失し、その分解プロセスの間、細胞又は細胞成長を著しく活性化しない。
【0015】
生体材料とは、任意の組織、器官、又は体の機能を評価する、治療する、増加する、又は置き換えるために、生物学的システムと相互作用することが意図された材料を意味する。生体適合性は、特定の場所において適切な宿主反応を引き起こすことにより、安全に、及び十分に実行される医療デバイスに用いられる材料の能力を意味する。再吸収とは、単純な分解のために、生体材料の分解を意味する。組成物とは、少なくとも二つの異なる成分、例えば、有機ポリマー、及びセラミック材料、例えば、ガラス、を含む材料を意味する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の目的及び概要
本発明の目的は、容易に、且つ安全に扱うことができ、骨充填効果として所望の性質を有する骨空洞充填剤として有用な組成物を提供することである。本発明の別の目的は、医者による臨床用途の手作業及び成形する問題を克服することである。
【0017】
特に、本発明は、上述の目的のための注入用ペーストの提供することを目的とする一方で、所望の長期間及び短期間の骨成長効果をさらに有する。本発明のさらなる目的は、シリンジパッケージにおいて放射線滅菌され得、3年の延長された自己寿命を有するパテ組成物を提供することである。
【0018】
本発明は、50〜425μmのサイズ分布を有する生体活性ガラス球、200〜700g/molの分子量範囲を有する低分子量ポリエチレングリコール、及び700〜2500g/molの分子量範囲を有する中分子量ポリエチレングリコールを含む埋め込み用ペーストに関する。
【0019】
本発明はまた、骨形成に使用のための埋め込み物の製造におけるこの発明のペーストの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、低分子量ポリエチレングリコールの分子量と中分子量ポリエチレングリコールの分子量とが、少なくとも互いに80g/mol異なり、中分子量ポリエチレングリコールの分子量と高分子量ポリエチレングリコールの分子量とが、少なくとも互いに300g/mol異なることを条件として、以下、
a)50〜425μmのサイズ分布を有する生体活性ガラス球、
b)200〜700g/molの分子量範囲を有する低分子量ポリエチレングリコール、
c)700〜2500g/molの分子量範囲を有する中分子量ポリエチレングリコール、及び
d)2500〜8000g/molの分子量範囲を有する高分子量ポリエチレングリコール、
を含む埋め込み用ペーストに関する。
【0021】
本発明は、従って、骨誘導性の、生体活性の、注入可能であり、成形可能である組成物を提供する。ペーストは、粘性有機担体溶液又はマトリックス中に生体活性ガラス球及び顆粒を含む。ペーストは、従って、粒子のための一時的な結合剤として作用するポリエチレングリコールからなる合成結合剤と混合されるカルシウム−リン−ナトリウム−ケイ酸塩粒子からなる。粒子及び結合剤は、事前に混合された粘性材料として典型的に提供される。埋め込みの際に、結合剤は、粒子間の組織浸潤を可能にし、粒子と結合した骨の正常な治癒プロセスを可能にするために、吸収される(生体活性ガラスの再吸収、及び骨再生)。一旦、埋め込み後すぐに結合剤が吸収されると、生体活性ガラス粒子のみが残る。本発明は、従って、低、中、及び高分子量ポリエチレングリコールの混合物に基づく粘性溶液中の完全合成生体活性ガラスの注入用混合物に基づく。これらの組成物の全ては、よく知られ、幅広く用いられ、医学、薬剤、及び化粧品分野、並びに食品及び飲料において許容される。
【0022】
上述の目的の少なくとも一部は、全てではないが、従って、本発明及びその様々な実施形態により達成される。実際、先のペースト製剤の流動性の問題は、球及び顆粒などの様々な形状を有する粒子を用いることにより克服され得ることが、驚くべきことに発見された。さらなる利益は、2又はそれ以上の画分における生体活性ガラスの粒子サイズ分布を変える場合に発見され得る。さらなる利益は、流動性及び使用温度が、2又はそれ以上の異なる分子量範囲のPEGを、任意でグリセロールを一緒に混合することによりさらに改良され得ることである。
【0023】
さらに、本ペーストは、実際に注入可能であり、従って、外科医との接触による汚染の何らかのリスクを回避する。ペーストは欠損に直接注入され得るので、例えば骨欠損に充填することはまた、容易であり、従って、徐々にそれを充填し、それ故、欠損へのペーストの均一な分布を制御することが可能である。
【0024】
本記述では、wt%なる略記は、重量百分率を表し、典型的に合計重量の重量百分率として表される。分子量は、ここでは数平均分子量である平均分子量であり、g/molとして表される。生体活性ガラス粒子のサイズ分布は、ふるい分けにより決定される。
【0025】
球とは、式:
【0026】
【数1】

【0027】
[式中、a及びbは、赤道半径(x及びy軸に平行)であり、cは、極半径(z軸に平行)であり、それらの全ては、楕円形の形状を決定する一定の正の実数である]
のxyx−デカルト三次元座標系において標準軸に平行な楕円体を表す粒子を意味する。
【0028】
3つの半径が等しい場合、立体は、球であり、2つの半径が等しい場合、楕円体は、回転楕円体である:
− a=b=c:球;
− a=b>c:偏球(円盤形);
− a=b<c:長球(ラグビーボール様);
− a>b>c:不等辺楕円体(scalene ellipsoid)(「3つの不等辺」)
【0029】
卵形(回転楕円形)、14未満の面を有する立体を除くアルキメデスの立体(高対称性、準正凸多面体)、及び12未満の面を有する立体を除くプラトンの立体(正凸多面体)である粒子は、また含まれる。
【0030】
顆粒とは、上記に表された以外の、任意の他の定形又は異形の形状を有する粒子を意味する。
【0031】
好ましい実施形態によれば、ペーストはまた、以下:
e)500〜3000μmのサイズ分布を有する生体活性ガラス球又は顆粒
f)グリセロール、及び/又は
g)治療的活性薬剤、
のうちの一つを含む。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、生体活性ガラス部分は、一つの画分が球状粒子からなるような、二つ又はそれ以上の粒子サイズ分布画分を含む。この球状画分は、他の方法で不可避であり、高い注入圧力、及び破裂効果又はアプリケーターチューブの妨害(jamming)をもたらす顆粒の架橋効果なく、アプリケーター(例えば、シリンジ)において生体活性ガラスを流出させることを可能にする潤滑剤として作用する。球状粒子はまた、最小限の侵襲的手法のために小さいアプリケーターノズルを使用することを可能にする。
【0033】
加えて、球状粒子は、従来の不揃いな形状の顆粒と比較して、欠損空洞の充填の自由体積を減少させ、生体活性ガラスの利益を最大化する。
【0034】
本発明のペーストはまた、好ましくはグリセロールを含む。
【0035】
ポリエチレングリコール(PEG)はまた、ポリエチレン酸化物として知られ、繰り返し単位(−CH2CH2O−)を含み、反応性水素原子を含む化合物へのエチレンオキシドの段階的付加により調製される。ポリエチレングリコールは、二官能性ポリエチレン構造HO(CH2CH2O)nH(nは、ポリエチレングリコールの分子量に応じて変化するサイズの整数である)を製造するために、エチレングリコールへのエチレンオキシドの付加により調製される。
【0036】
本発明に用いられるポリエチレングリコールは、一般的に直鎖のポリエチレングリコールであり、すなわち、100〜8000g/molの分子量を有する。また、分枝及び星型のポリエチレングリコールは、ペーストの粘性を減少させる、又はさらに調整するために用いられ得る。ポリエチレングリコールは、典型的に、数字とともにPEGとして称され、数字は、g/molでの平均分子量を意味する。従って、PEG400は、400g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールを意味し、PEG2000は、2000g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールを意味する。
【0037】
ポリエチレングリコール(PEGs)は、生体活性ガラス粒子を結合させ、湿らせることにより、ペースト様材料を形成するために用いられる。ペーストの好適な粘性を得るために、少なくとも二つのPEGは、一緒に混合されるべきである。PEGについて適切な分子量を選択する場合、低分子量PEG(<600g/mol)は室温で液体であるが、高分子量PEGはワックス状又は固体であることを心に留めておくべきである。
【0038】
その使用温度(室温及び体温)においてペースト様を維持するペーストを有するために、少なくとも3つのPEGは、典型的に上昇した温度において、一緒に混合される。高い分子量のPEGは結晶性材料であるので、それらの使用は、ペーストの使用温度の上限を上昇させ、ペーストの粘性を上昇させ、室温での保存の間において、生体活性ガラス粒子の沈殿を防ぐ。高分子量PEGは低温において結晶化しやすいので、使用温度の下限を減少させるために、すなわち使用温度範囲を広げるために、低分子量のPEGは、低温でのペーストの固化、すなわち、硬化を防ぐために有用である。
【0039】
一つの分子量のワックス状又は固体のPEGのみが用いられる場合、使用温度は、実用用途のためには狭くなりすぎる。800〜2000の平均分子量を有するPEGは、低い融解範囲でペースト状材料である一方で、PEG600(すなわち、平均分子量として600g/molを有するポリエチレングリコール)は、約17〜22℃の融解範囲を示し、従って、それは室温で液体であるが、低い室温においてペースト状である。3000の分子量を超えると、ポリエチレングリコールは典型的に固体である。
【0040】
グリセロール、すなわち、プロパン−1,2,3−トリオールは、一般的にグリセリン(glycerin)又はグリセリン(glycerine)と呼ばれる。それは,無色、無臭の医薬製剤に幅広く用いられる粘性液体である。グリセロールは、その滑らかさを向上させるために、PEGとグリセロールの物理的相互作用により、熱的及び粘性的特性を増強することにより、さらなるに潤滑化を提供するために、ペーストに添加され得る。PEG及びグリセロールは、互いに相溶性を有する。
【0041】
PEG400は、全ての割合においてグリセロールに混和性を有するが、グリセロール中のPEGの溶解力及び溶解性は、モル質量が増加するにつれて減少する。しかしながら、これらの性質の双方は、適度な加熱により改良され得、室温でのPEG400に溶解する物質は、溶融されたPEG4000(すなわち、60〜70℃の温度において)に、大体同じ程度に溶解できる。
【0042】
本発明の一つの実施形態によれば、生体活性ガラスの合計量は、ペーストの合計重量の50〜67wt%である。従って、50〜425μmのサイズ分布を有する生体活性ガラス球(a)の量は、生体活性ガラスの合計重量の10〜100wt%であり、500〜3000μmのサイズ分布を有する生体活性ガラス球又は顆粒(d)の量は、ペースト中生体活性ガラスの合計重量の90〜0wt%である。
【0043】
好ましくは、低分子量PEG(c)の量が2〜15wt%であり、中分子量PEG(d)の量が8〜48wt%であるように、ポリエチレングリコールの合計量は、ペーストの合計重量の23〜50wt%である。高分子量PEGが用いられる場合、その量は、ペーストの合計重量の最大10wt%までである。
【0044】
グリセロールが用いられる実施形態では、その量は、ペーストの合計重量の最大10wt%までである。いくつかの好適なペーストは、以下の組成:
− PEG(b+c+d) 23〜45wt%、
− グリセロール(f) 0〜10wt%、及び
− 生体活性ガラス(a+e) 55〜67wt%、
を有する。
【0045】
いくつかの好ましいペーストは、以下の組成範囲:
− 低分子量PEG(b) 4〜10wt%
− 中分子量PEG(c) 13〜18wt%
− 高分子量PEG(d) 1〜8wt%
− グリセロール(f) 8〜10wt%
− 生体活性ガラス球(a) 8〜12wt%
− 生体活性ガラス球又は顆粒(e) 48〜52wt%
を有する。
【0046】
本発明の実施形態によれば、治療的活性薬剤(h)の量は、ペーストの合計重量の最大40wt%までである治療的活性薬剤が、増殖因子、タンパク質、ペプチド、抗体、ムコ多糖、すなわちヒアルロン酸、幹細胞、過酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択され、骨成長を促進するために、又は抗菌効果などの抗微生物効果を有するために用いられ得る。
【0047】
本発明の実施形態では、生体活性ガラスの組成は、53重量%のSiO2、23重量%のNa2O、20重量%のCaO、及び4重量%のP25である。そのような生体活性ガラスは、BonAlive(登録商標)の商標名の下で販売されている。この実施形態は、BonAlive(登録商標)顆粒と結合した骨の正常な治癒プロセス(生体活性ガラスの再吸収、及び骨再生)を可能にする、早期にインビボで溶解する結合剤組成物を提供する。BonAlive(登録商標)生体活性ガラス化学組成物の緩徐な分解速度及び粒子サイズのために、長期間の骨成長効果は自然に達成されるが、BonAlive(登録商標)顆粒と一緒に著しく小さい粒子を用いることにより、短期間の骨成長はまた、達成され得る。
【0048】
範囲の極端において全ての成分を含むペーストは、最適な流動性、及び製品特性を必ずしも提供し得ない。例えば、十分な低分子量PEG及び/又はグリセロールを含まない高含量での高分子量PEGを組み合わせることは、室温又は体温において注入に適さない高い粘性製品を与え得る。当業者は、しかしながら、それぞれの一連の所望の特性について、いくつかの簡単な実験を通して、成分の理想的な割合を見つけ出すことができる。好適な組み合わせのいくつかの例はまた、下記の実験的部分に与えられる。
【0049】
本発明はまた、注入可能な、及び成形可能な骨空洞充填剤ペーストを製造する方法を提供し、それは制御された条件で原材料を混合及び溶融すること、並びに最終生成物を冷却すること、パッケージすること、調整することを含む。
【0050】
ペーストは、典型的に、5〜60分間、保護ガス、又は真空、又は大気圧条件下で、25〜95℃の温度において、バッチ混合器中で成分を一緒に混合、及び/又は溶融することより製造される。混合物は、その後、25〜45℃に冷却され、アプリケーターに移され、及び/又はさらなる使用のために保存される。あるいは、混合、溶融、及び/又は移送は、任意の種類の混合装置、例えば、開放又は密閉型バッチ式混合器、連続撹拌型タンク反応器又は混合器、押出機、射出成形機、管型反応器、又は当該技術分野において知られている他の標準的な溶融加工又は溶融混合装置を用いることにより、行われ得る。
【0051】
本発明はまた、骨形成、例えば、骨欠損部位に使用のためのインプラントの製造における本ペースト、すなわち、骨空洞充填剤ペーストの使用を提供する。
【0052】
加えて、本発明はまた、活性薬剤とともに上述の製剤を含む骨成長を促進する組成物を提供する。活性薬剤は、ヒト又は動物用途のための任意の医薬的活性薬剤でもよい。
【0053】
本発明の様々な実施形態は、下記の実施例により詳細に、記述される。出発物質の種類、量、及び割合、並びに処理及び保存条件の影響は、実施例、表、図に見ることができる。
【実施例】
【0054】
パテの汎用製造方法:
グリセロール、及び用いるのであればPEG400は、100RPM(1分間あたりの回転)混合速度を用いた加熱された反応器(60℃)に添加され、用いるのであればPEG1500、及びPEG3000は添加される。PEGは、Clariantにより供給され、グリセロールはUniqema、又はSigma−Aldrichから供給される。低粒子サイズBAGは、溶融混合物に添加され、混合物が均一になるまで混合され、高粒子サイズBAGは添加される。混合は、混合物が粘着し、柔軟になるまで続けられる。パテは、混合下で室温(RT)まで冷却され、ベッセルは放出され、充填され、さらなる使用及び試験のためにデシケーター中に保存された。
【0055】
実施例1 様々なパテ組成物の特性の比較
全て67%のガラス顆粒及び/又は球を含む4つの組成物は、調製された。組成物は、表1に示されるように、用いられるポリエチレングリコールの割合において異なる。この表では、BAGは生体活性ガラスを表し、粒子及び球の直径は、μmで与えられる。ガラスの全計含量は、様々なサイズの量を集計することにより計算され得、合計量は、重量百分率で与えられる。PEGは、ポリエチレングリコールを表し、後ろの数字は、g/molでの平均分子量を表す。PEG及びグリセロールの量はまた、重量%で与えられる。
【0056】
注入用及び成形用の双方の組成物を作るために、球状顆粒は、低分子量ポリエチレングリコール(ここでは、PEG400)と一緒に添加される必要があり、それは組成物4において実証される。実際には、組成物1、2及び3は、注入可能ではなかった。組成物3は、成形可能であったが、粘着性があった。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例2 注入用パテ組成物製剤(ノズル直径<2mm)
組成物は、上述のパテの汎用の製造方法に従って、実験室スケールの撹拌タンク反応器/混合器中で、20gのグリセロール、及び16gのPEG400、32gのPEG1500、及び12gのPEG3000で構成されている担体とともに、50〜425μmの粒子径を有する120gの生体活性ガラス球を混合することにより、製剤化された。組成物は、60重量%の合計ガラス百分率を有し、2mm未満のノズル直径を通して流動可能であった。
【0059】
実施例3 注入用パテ組成物製剤(ノズル直径<8mm)
組成物は、上述のパテの汎用の製造方法に従って、実験室スケールの撹拌タンク反応器/混合器中で、20gのグリセロール、及び16gのPEG400、32gのPEG1500、及び12gのPEG3000で構成されている担体とともに、50〜425μmの粒子径を有する24gの生体活性ガラス球、及び500〜800μmの粒子径を有する96gの生体活性ガラス粒子を混合することにより、製剤化された。組成物は、60重量%の合計ガラス百分率を有し、8mm未満のノズル直径を通して流動可能であった。
【0060】
実施例4 注入用パテ組成物製剤(ノズル直径≦8mm)
組成物は、上述のパテの汎用の製造方法に従って、パイロットスケールの撹拌タンク反応器/混合器中で、80gのグリセロール、及び72gのPEG400、136gのPEG1500、及び32gのPEG3000で構成されている担体とともに、90〜425μmの粒子径を有する96gの生体活性ガラス球、及び500〜800μmの粒子径を有する384gの生体活性ガラス粒子を混合することにより、製剤化された。組成物は、60重量%の合計ガラス百分率を有し、8mm未満のノズル直径を通して流動可能であった。
【0061】
実施例5 注入用パテ組成物製剤(ノズル直径≦8mm)
組成物は、上述のパテの汎用の製造方法に従って、パイロットスケールの撹拌タンク反応器/混合器中で、80gのグリセロール、及び64gのPEG400、128gのPEG1500、及び48gのPEG3000で構成されている担体とともに、90〜425μmの粒子径を有する96gの生体活性ガラス球、及び500〜800μmの粒子径を有する384gの生体活性ガラス粒子を混合することにより、製剤化された。組成物は、60重量%の合計ガラス百分率を有し、8mm未満のノズル直径を通して流動可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量ポリエチレングリコールの分子量と中分子量ポリエチレングリコールの分子量とが、少なくとも互いに80g/mol異なり、中分子量ポリエチレングリコールの分子量と高分子量ポリエチレングリコールの分子量とが、少なくとも互いに300g/mol異なることを条件として、以下、
a)50〜425μmのサイズ分布を有する生体活性ガラス球、
b)200〜700g/molの分子量範囲を有する低分子量ポリエチレングリコール、
c)700〜2500g/molの分子量範囲を有する中分子量ポリエチレングリコール、及び
d)2500〜8000g/molの分子量範囲を有する高分子量ポリエチレングリコール、
を含む埋め込み用ペースト。
【請求項2】
以下:
e)500〜3000μmのサイズ分布を有する生体活性ガラス球又は顆粒、
f)グリセロール、及び/又は
g)治療的活性薬剤、
のうちの少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のペースト。
【請求項3】
50〜425μmのサイズ分布を有する生体活性ガラス球(a)の量が生体活性ガラスの合計重量の10〜100wt%であり、500〜3000μmのサイズ分布を有する生体活性ガラス球又は顆粒(d)の量がペースト中の生体活性ガラスの合計重量の90〜0wt%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のペースト。
【請求項4】
生体活性ガラスの合計量がペーストの合計重量の50〜67wt%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項5】
200〜700g/molの分子量範囲を有する低分子量ポリエチレングリコール(b)の量がペーストの合計重量の2〜15wt%であり、700〜2500g/molの分子量範囲を有する中分子量ポリエチレングリコール(c)の量がペーストの合計重量の8〜48wt%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項6】
ポリエチレングリコールの合計量が、ペーストの合計重量の23〜50wt%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項7】
高分子量ポリエチレングリコールの量が、ペーストの合計重量の最大10wt%までであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項8】
グリセロールの量が、ペーストの合計重量の最大10wt%までであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項9】
治療的活性薬剤の量が、ペーストの合計重量の最大40wt%までであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項10】
治療的活性薬剤が、増殖因子、タンパク質、ペプチド、抗体、ムコ多糖、すなわちヒアルロン酸、幹細胞、過酸化物、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項11】
生体活性ガラスの組成が、53重量%のSiO2、23重量%のNa2O、20重量%のCaO、及び4重量%のP25であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項12】
骨形成に使用のための埋め込み物の製造における、請求項1〜11のいずれか一項に記載のペーストの使用。
【請求項13】
埋め込み物が骨空洞充填剤として用いられることを特徴とする、請求項12に記載の使用。

【公表番号】特表2013−510611(P2013−510611A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538343(P2012−538343)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067376
【国際公開番号】WO2011/058134
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512123994)
【Fターム(参考)】