説明

埋設管改築用掘進機

【課題】簡単な構成で、新たな駆動手段を設けること無く既設埋設管の鉄筋を効率よく細断することができ、細断した鉄筋がカッターヘッドに絡みつくのを防止して排出することが可能な埋設管改築用掘進機を提供。
【解決手段】埋設管改築用掘進機において、ジャッキにより切羽側に押圧されると共に、駆動手段により回転駆動され、先端の面板4に掘削ビットを配置したカッターヘッドと、前記面板の外周部に形成された円形の開口部7の周縁に固定切断ビット12を配置した鉄筋細断用カッター8と、前記円形の開口部に回転自在で回転切断ビット16を配置した鉄筋細断用遊星カッター14を備え、前記鉄筋細断用遊星カッターを前記駆動手段とのギア連結により前記カッターヘッドの回転より速い速度で回転駆動し、前記固定切断ビットと前記回転切断ビットとの間で生じるせん断力で埋設管の鉄筋を細断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されて老朽化した既設埋設管を新しい埋設管に改築するための推進掘進機に関し、特に、鉄筋コンクリート製の既設埋設管を構成する補強鉄筋を効率良く切断可能な埋設管改築用掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道等を含む各種用途に供される地中埋設管は、経年変化によって老朽化が進むため、適切な時期に新しい埋設管に交換する必要がある。この場合、既設埋設管が埋設されている個所の地盤を地表面から開削して既設埋設管を掘り出した後に新たな管を吊り込んで埋設し直す方法、あるいは掘設した立坑から水平方向に掘進しつつ既設埋設管を撤去して更新管に交換する方法が用いられる。
【0003】
既設埋設管がコンクリートおよび補強用の鉄筋から成る場合には、コンクリートの破砕と補強用鉄筋の切断を効率よく行う必要がある。そこで、下記特許文献1に記載されている「既設埋設管敷設替え用シールド機」は、コンクリートを破砕するためのローラビットと、鉄筋を切断するための高速カッターとを備えている。
【0004】
また、下記特許文献2に記載されている「コンクリート管破砕用カッターヘッド」は、ローラカッター、ディスクカッターおよびカッタービットを備え、これらのカッターによってコンクリートを破砕しつつ鉄筋を切断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−296687号公報
【特許文献2】特開平10−88974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている「既設埋設管敷設替え用シールド機」は、鉄筋を切断するための高速カッターを油圧モータによって回転駆動するものであり、その構造が複雑であり、さらに、切断した鉄筋が高速カッターに絡みつき高速カッターの駆動が困難になるという問題を有する。また、上記特許文献2に記載されている「コンクリート管破砕用カッターヘッド」は、ローラカッター、ディスクカッターおよびカッタービットを多数用いるものであり、その構造が複雑であり、さらに、切断した鉄筋がローラカッター、ディスクカッターおよびカッタービットに絡みつきカッターヘッドの駆動が困難になるという問題を有する。
【0007】
本発明は、前記従来技術の持つ課題を解決するもので、簡単な構成で、新たな駆動手段を設けること無く既設埋設管の鉄筋を効率よく細断することができ、細断した鉄筋がカッターヘッドに絡みつくのを防止して排出することが可能な埋設管改築用掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の埋設管改築用掘進機は、前記課題を解決するために、ジャッキにより切羽側に押圧されると共に、駆動手段により回転駆動され、先端の面板に掘削ビットを配置したカッターヘッドと、前記面板の外周部に形成された円形の開口部の周縁に固定切断ビットを配置した鉄筋細断用カッターと、前記円形の開口部に回転自在で回転切断ビットを配置した鉄筋細断用遊星カッターを備え、前記鉄筋細断用遊星カッターを前記駆動手段とのギア連結により前記カッターヘッドの回転より速い速度で回転駆動し、前記固定切断ビットと前記回転切断ビットとの間で生じるせん断力で埋設管の鉄筋を細断することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の埋設管改築用掘進機は、前記鉄筋細断用カッターを前記円形の開口部の前記面板の最外周部に対応する部分に配置しないようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の埋設管改築用掘進機は、前記回転切断ビットの先端位置を前記固定切断ビットの先端位置より切羽面側としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の埋設管改築用掘進機は、前記固定切断ビットと前記回転切削ビットの断面形状を逆台形状とし、それぞれの先端部の角度を鋭角としたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の埋設管改築用掘進機は、前記鉄筋細断用遊星カッターの回転方向を前記カッターヘッドの回転方向と逆方向に回転駆動したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
ジャッキにより切羽側に押圧されると共に、駆動手段により回転駆動され、先端の面板に掘削ビットを配置したカッターヘッドと、前記面板の外周部に形成された円形の開口部の周縁に固定切断ビットを配置した鉄筋細断用カッターと、前記円形の開口部に回転自在で回転切断ビットを配置した鉄筋細断用遊星カッターを備え、前記鉄筋細断用遊星カッターを前記駆動手段とのギア連結により前記カッターヘッドの回転より速い速度で回転駆動し、前記固定切断ビットと前記回転切断ビットとの間で生じるせん断力で埋設管の鉄筋を細断する構成により、カッターヘッドの回転で露出した既設埋設管の鉄筋をせん断力で効率よく細断することができ、露出した鉄筋がカッターヘッドの掘削ビット等に絡みつくのを防止して細かく切断して排出することが可能となる。また、鉄筋細断用遊星カッターをカッターヘッドの駆動手段とのギア連結により回転駆動することで、鉄筋細断用遊星カッターの駆動手段を新たに設ける必要がなく、低コスト、省スペースの埋設管改築用推進機とすることが可能となる。
鉄筋細断用カッターを円形の開口部の面板の最外周部に対応する部分に配置しないようにした構成により、鉄筋細断用カッターの地山との摩擦による摩耗を防止し長寿命化することが可能とすると共に、カッターヘッドの切削により露出した鉄筋を鉄筋細断用遊星カッターの回転により鉄筋細断用カッターとの間のせん断力が作用する細断箇所に引き込むことが可能となる。
回転切断ビットの先端位置を固定切断ビットの先端位置より切羽面側とした構成により、カッターヘッドによりコンクリートから露出した鉄筋を鉄筋細断用遊星カッターの回転により鉄筋細断用カッターとの間の細断箇所まで容易に引き込むことが可能となる。
固定切断ビットと回転切削ビットの断面形状を逆台形状とし、それぞれの先端部の角度を鋭角とした構成により、せん断力がより効率的に発揮することが可能となる。
鉄筋細断用遊星カッターの回転方向をカッターヘッドの回転方向と逆方向に回転駆動した構成により、露出した鉄筋のせん断力による細断がより効率良く実施可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の埋設管改築用推進掘進機の一実施形態の正面図であり、図2は、一部断面図である。
【0016】
埋設管改築用推進機1は、新設の埋設管の外径とほぼ同じ外径の円形断面の外殻を構成する掘進機本体2を備える。掘進機本体2の後端には新設埋設管(図示せず)が配置され、新設埋設管の後端に元押しジャッキ(図示せず)が配置され、掘進機本体2と新設埋設管が切羽面側に押圧推進される。
【0017】
掘進機本体2の前端に、推進機本体2とほぼ同じ外径の円筒形のカッターヘッド3が回転自在に配置される。円筒形のカッターヘッド3は前面に、カッターヘッドの外径とほぼ同じ外径の円形の面板4を設置する。円形の面板4の外径は撤去する既設埋設管の外径とほぼ同じか若干大きくする。
【0018】
カッターヘッド3の面板4には、既設埋設管を破砕する掘削ビット5を配置する。掘削ビット5としては、ローラビットタイプや平刃の切削ビットタイプがあるが、既設埋設管が鉄筋コンクリート製の場合、ローラビットタイプの掘削ビットが望ましい。面板4の外周部に位置する掘削ビット5は、新設埋設管の推進埋設を容易にする目的で新設埋設管の外径より若干大きな内径の穴を余掘りするため、面板4の外周部から若干突き出すように配置する。
【0019】
面板4の外周部には、コンクリート、鉄筋、地山等の掘削物を掘進機本体2内に取り込むための掘削物取り込用開口部6と、円形の鉄筋細断用開口部7が形成される。円形の鉄筋細断用開口部7の周縁には、複数の固定切断ビット12を配置した鉄筋細断用カッター8が配置される。鉄筋細断用カッター8は、円形の鉄筋細断用開口部7の面板4の最外周部に対応する部分に配置しないようにし、円形の一部が欠落した略馬蹄形の形状に配置される。鉄筋細断用カッター8を面板4の外周部に配置しないことで、カッターヘッド3の回転により鉄筋細断用カッター8と地山との接触による摩耗を防止することができる。その結果、鉄筋細断用カッターの長寿命化を実現することが可能となる。また、鉄筋細断用カッター8を面板4の外周部に配置しないことで、露出した鉄筋を細断箇所に引き込むことが可能となる。
【0020】
推進機本体2内には、カッターヘッド3を回転駆動するための油圧モータ等の駆動手段10が配置される。駆動手段10の出力は、ギヤボックスで減速され、その出力軸11がカップリング11を介してカッターヘッド3の駆動ギヤに連結される。
【0021】
図3は、鉄筋細断用カッター8と鉄筋細断用遊星カッター14を拡大した平面図であり、図4は、図3のA−A線の断面図である。
【0022】
面板4の外周部に形成された円形の鉄筋細断用開口部7の周縁に鉄筋細断用カッター8が、鉄筋細断用開口部7の最外周の周縁には配置しないように略馬蹄形状に配置される。鉄筋細断用カッター8は、固定切断ビット12が固定手段13により交換可能に面板4に取り付けられる。図5に示すように、固定切断ビット12は、上部が下部より幅広の逆台形状に形成され、固定切断ビット12の先端部の角度αを鋭角とする。
【0023】
面板4の外周部に形成された円形の鉄筋細断用開口部7に、鉄筋細断用遊星カッター14が配置される。鉄筋細断用遊星カッター14は、円形の鉄筋細断用開口部7の内径より若干小さい外径の回転円盤15を有し、回転円盤15の外周に回転切断ビット16が固定手段17により交換可能に取り付けられる。図5に示すように、回転切断ビット16は、上部が下部より幅広の逆台形状に形成され、回転切断ビット16の先端部の角度βを鋭角とする。
【0024】
図4に示されるように、鉄筋細断用遊星カッター14の回転切断ビット16の先端位置は、鉄筋細断用カッター8の固定切断ビット12の先端位置より切羽面側に位置するようにする。
【0025】
回転円盤14は、固定手段17により回転支持体18に連結される。回転支持体18は、カップリング19を介して、スプライン軸20に連結される。
【0026】
鉄筋細断用遊星カッター14の回転駆動について図1により説明する。鉄筋細断用遊星カッター14の回転駆動軸であるスプライン軸20の後端部は、カッターヘッド3に固定されたスラスト軸受21に支持される。スプライン軸20は、カッターヘッド3の回転駆動するギアとギア連結されて、カッターヘッドの回転速度より速い回転速度で回転駆動される。鉄筋細断用遊星カッター14は、カッターヘッド3の回転方向と逆方向に回転駆動される。
【0027】
鉄筋細断用遊星カッター14は、カッターヘッド3と一緒に回転しつつ、カッターヘッド3の回転方向と逆方向にカッターヘッド3の回転速度より速い回転速度で回転する。
【0028】
カッターヘッド3で掘削切断されたコンクリート破砕物、細断された鉄筋及び余掘りされた地山等の掘削物が掘削物取り込開口部6から推進機本体2内に取り込まれる。推進機本体2内には、取り込まれた掘削物を搬送する搬送コンベア22が配置される。
【0029】
本発明の埋設管改築用推進機1の作業状況を説明する。推進機本体2の前端に回転自在に配置されたカッターヘッド3は、切羽面に押圧された状態で、駆動手段9により回転駆動する。カッターヘッド3の回転駆動により、面板4に配置した掘削ビット5により既設の鉄筋コンクリート製の埋設管が破砕される。
【0030】
カッターヘッド3の掘削ビット5による鉄筋コンクリート製の埋設管のコンクリートが破砕され、鉄筋が露出する。露出した鉄筋が、カッターヘッド3の回転に伴い、鉄筋細断用カッター8と鉄筋細断用遊星カッター14の配置部に達する。
【0031】
カッターヘッド3の掘削ビット5の切削によりコンクリートから露出した鉄筋は、回転切断ビット16の先端が鉄筋細断用カッター8の固定切断ビット12より切羽面側に位置し、カッターヘッド3の回転速度より速い回転速度で、且つ、カッターヘッド3の回転方向と逆方向に回転する鉄筋細断用遊星カッター14により、鉄筋細断用カッター8の配置されていない箇所から、鉄筋細断用カッター8が配置された細断箇所に導かれる。鉄筋は、鉄筋細断用カッター8の固定切断ビット12と鉄筋細断用遊星カッター14の回転切断ビット16とのせん断力により細断される。固定切断ビット12と回転切断ビット16の形状を上部が下部より幅広の逆台形状とし、固定切断ビット12の先端の角度αと回転切削ビット16の先端の角度βが鋭角とされているため、せん断力が効果的に発揮される。
【0032】
細断された鉄筋は、掘削ビット5により破砕されたコンクリート及び余掘りされた地山等の掘削物と一緒に、掘削物取り込用開口部6から推進機本体2内に取り込まれ、掘削物搬送コンベア22により搬送される。露出した鉄筋が、鉄筋細断用カッター8の固定切断ビット12と鉄筋細断用遊星カッター14の回転切断ビット16とのせん断力により細断されるので、カッターヘッド3の掘削ビット5等の絡みつくことなく、効率よく鉄筋コンクリート製の既設埋設管を撤去し、新しい埋設管に改築することが可能となる。
【0033】
以上のように本発明の埋設管改築用推進機1によれば、カッターヘッド3の回転で露出した既設埋設管の鉄筋を鉄筋細断用カッター8の固定切断ビット12と鉄筋細断用遊星カッター14の回転切断ビット16との間で生じるせん断力で細断することができ、露出した鉄筋がカッターヘッド3の掘削ビット5等に絡みつくのを防止して細かく切断して排出することが可能となる。また、鉄筋細断用遊星カッター14をカッターヘッド3の駆動手段9とのギア連結により回転駆動することで、鉄筋細断用遊星カッター14の駆動手段を新たに設ける必要がなく、低コスト、省スペースの埋設管改築用掘進機とすることが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1: 埋設管改築用推進機、2:推進機本体、3:カッターヘッド、4:面板、5:掘削ビット、6:掘削物取り込用開口部、7:鉄筋細断用開口部、8:鉄筋細断用カッター、9:駆動手段、10:出力軸、11:カップリング、12:固定切断ビット、13:固定手段、14:鉄筋細断用遊星カッター、15:回転円盤、16:回転切断ビット、17:固定手段、18:回転支持体、19:カップリング、20:スプライン軸、21:スラスト軸受、22:掘削物搬送コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャッキにより切羽側に押圧されると共に、駆動手段により回転駆動され、先端の面板に掘削ビットを配置したカッターヘッドと、
前記面板の外周部に形成された円形の開口部の周縁に固定切断ビットを配置した鉄筋細断用カッターと、
前記円形の開口部に回転自在で回転切断ビットを配置した鉄筋細断用遊星カッターと、
を備え、
前記鉄筋細断用遊星カッターを前記駆動手段とのギア連結により前記カッターヘッドの回転より速い速度で回転駆動し、
前記固定切断ビットと前記回転切断ビットとの間で生じるせん断力で埋設管の鉄筋を細断することを特徴とする埋設管改築用掘進機。
【請求項2】
前記鉄筋細断用カッターを前記円形の開口部の前記面板の最外周部に対応する部分に配置しないようにしたことを特徴とする請求項1に記載の埋設管改築用掘進機。
【請求項3】
前記回転切削ビットの先端位置を前記固定切断ビットの先端位置より切羽面側としたことを特徴とする請求項1または2に記載の埋設管改築用掘進機。
【請求項4】
前記固定切断ビットと前記回転切削ビットの断面形状を逆台形状とし、それぞれの先端部の角度を鋭角としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の埋設管改築用掘進機。
【請求項5】
前記鉄筋細断用遊星カッターの回転方向を前記カッターヘッドの回転方向と逆方向に回転駆動したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の埋設管改築用掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−196041(P2011−196041A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61944(P2010−61944)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(598042574)株式会社推研 (10)
【Fターム(参考)】